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教育実習を通した実習指導教員の学びと力量形成に関する探索的研究

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1. は じ め に 学校現場で実践を行う教育実習は,実践的な指導力 を培うだけでなく,自身の課題の発見や進路決定の契 機となるなど,教員養成において重要な学びの機会で ある.実習生にとっての教育実習の効果や影響につい てはこれまでいくつも研究がなされており(立石 2018, 三島 2008など),教育実習生にとって教育実習が学び の場であることは周知の事実と言える. そのような教育実習には,実習生を受け入れ,指導 や支援を担当する実習校の指導教員の存在が不可欠で ある.しかし,教育実習の指導教員に焦点を当てた研 究は少なく,指導教員がどのように実習指導を経験し ているのかは十分に明らかにされていない.その中で 池田ほか(2014)は,現場で実習生の指導にあたる教 師にとっても,自らの教育観や子ども観,指導法など, 自分自身を見つめなおす機会となると述べている.そ して,幼稚園教育実習における指導教員による実習生 とのカンファレンスの記録から,指導教員自身が実習 生との呼応関係に注意し実習生の理解に努めたり,自 身の保育観を再認識したりしていることを指摘してい る.また,磯﨑ほか(2002)は,国立大学附属の中学・ 高校の教師が教育実習を教師としての学びの一つの機 会と捉えていることを指摘している.さらに,一柳ほ か(2016)は,公立小学校に勤める1人の実習指導教 員へ,実習中に複数回にわたって継続的なインタビュ ー調査を行い,実際の実習指導にあたる教師にとって も,自身の実践を振り返るなど学びの機会となってい ること,実習を重ねる中で実習生の成長に気づいたり, 実習生と協働して実践を創ることで,同じ実践者とし て実習生から学び,その中で児童についての新たな理 解を形成したりしていることを指摘している.このよ うに指導教員の学びは,単に知識を獲得するのではな く,多様な様相が見られる. ただし,これらの先行研究には次のような課題が残 されている.第1に対象者が限定されている点である. 幼稚園(池田ほか 2014)や国立大学附属学校の中学・ 高校(磯﨑ほか 2002)の教師について検討されている が,とりわけ義務教育段階(小・中学校)を対象とし た研究は少数の教師への調査に限られており,実証的 な検討が十分になされていない.第2に,教育実習に 日本教育工学会論文誌 44(4),535-545,2021

教育実習を通した実習指導教員の学びと力量形成に関する探索的研究

三島知剛

*1

・一柳智紀

*2

・坂本篤史

*3 岡山大学*1・新潟大学*2・福島大学*3 本研究の目的は,教育実習において実習生の指導を担当する教員が,教育実習指導を通した自 身の学びや教師としてのその後の力量形成につながるかどうかについての認識を検討すること であった.その際,小学校及び中学校教員の認識の違いについても着目した.教育実習指導を経 験したことがある小中学校の教師を対象とした質問紙調査(有効回答133名)の結果,(1)全体 的に学びや力量形成に対する得点が高く,校種間では小学校教員の方が学びや力量形成を高く認 識していること,(2)実習指導における指導形態と学びや力量形成の関連が多く見られ,特に 実習生と協働して実習を進めるという指導形態が学びや力量形成と関連していたこと,(3)校 種別では,実習指導における指導形態と学びの関連については中学校教員の方が多く,実習指導 における指導形態と力量形成の関連については小学校教員の方が多いこと,等が示された. キーワード:教師教育,教育実習,現職教育,実習指導教員,質問紙調査 資 料 2020年3月10日受理

Tomotaka MISHIMA*1, Tomonori ICHIYANAGI*2 and

Atsushi Sakamoto*3 : Exploratory Resarch on the

Learning and Professional Development by Mentor Teachers Through Practice Teaching

*1 Okayama University, 3-1-1, Tsushima-Naka,

Kita-ku, Okayama,700-8530 Japan

*2 Niigata University, 8050, Igarashi 2 no-cho

Nishi-ku, Niigata,950-2181 Japan

*3 Fukushima University, 1, Kanayagawa, Fukushima,

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おける実習指導での学びが,教師としてのその後の力 量形成や成長にどのような意味があるのかが明らかに されていない点である.先行研究で指摘されている自 身の保育観や実践の振り返りは,教育実習終了後の実 践にも何らかの影響を及ぼすと考えられる.ただし, 教育実習の指導には負担を伴うことも指摘されている (柴山ほか 2003).「学び続ける教員」像(文部科学省 2015)に照らせば,教育実習における指導教員の指導 経験が単に負担となるだけでなく,その後の教師の力 量形成につながるかどうかを検討することは,教師と しての生涯にわたる学びに教育実習における実習指導 を意味づける点で意義がある. そこで,本研究では教育実習の指導教員が実習指導 を通して何をどのように学んでいるのか,また教育実 習での指導経験が教師としてのその後の力量形成にど のような意味を持つと認識しているかについて明らか にすることを目的とする.その際,先行研究では十分 検討されていない小・中学校の教師を対象とする.た だし,学級担任制をとる小学校と教科担任制をとる中 学校では,実習内容も異なり指導教員の指導経験や学 びも異なると予想される.そこで,小学校及び中学校 教員の認識の違いにも着目する. 2. 方 法 2.1. 調査時期・協力者 2017年5月~2018年6月にかけて,小学校及び中学 校の教師を対象に調査を実施(回収率70%)し,教育 実習指導を経験したことのある教師133名の有効回答 (小学校69名,中学校64名)が得られた.調査は複数 の学校や教師に依頼し,郵送または手渡しにより配 布・回収を行った. 2.2. 調 査 内 容 1)教育実習における指導形態の重要度に関する項目 一柳ほか(2016)を基に計22項目作成した.リード 文は,「教育実習指導に際し,以下の項目をどの程度重 視しますか?それぞれ5段階で考え,当てはまる数字 の一つに〇をつけてください.」とし,回答は「1.全 く重視しない」「2.あまり重視しない」「3.どちら とも言えない」「4.重視する」「5.とても重視する」 の5件法1)で求めた. 2)教育実習指導を通した学びに関する項目 一柳ほか(2016)を基に作成した.なお,実習生指 導における教師の負担についても想定されることから, 負担に関する項目も加え,計24項目作成した.リード 文は,「教育実習の指導経験について以下のことは指導 の先生にどの程度当てはまると思いますか?以下の項 目について5段階で考え,当てはまる数字の一つに〇 をつけて下さい.」とし,回答は「1.全く当てはまら ない」「2.あまり当てはまらない」「3.どちらとも 言えない」「4.当てはまる」「5.とても当てはまる」 の5件法で求めた. なお,「教育実習における指導形態の重要度」「教育 実習指導を通した学び」の項目作成に関して,一柳ほ か(2016)を基にしたのは,調査時から考えると近年 の研究であることや,指導教員の学びを指導内容との 関連に着目して,詳細に検討されていることから,そ こでの知見やカテゴリ―が項目作成において参考にな ると考えたからである. 3) 教育実習指導で身についた教師としての力量に 関する項目 米沢(2010)で用いられている小学校教員としての 力量に関する調査項目を基に,教育実習指導教員向け に改変した.具体的には,文末表現を変えたり(例:「教 具やワークシートの準備ができること」を「教具やワ ークシートの準備」に改変),表現を一部修正(例:「学 級目標を構造化し,設定できること」を「学級目標の 設定」に,「各教科内容の知識を持っていること」を「各 教科内容の知識を増やしたり深めたりすること」と改 変),「子ども」という表現を「児童・生徒」とするな どした.また米沢(2010)において連携・協働に関す る力量とされていた項目(例:PTA や地域の行事に積 極的に参加すること)は保護者や家庭との連携や協働 に関する内容であり,実習指導教員の回答が困難であ ると考え,本調査項目には含まないこととした.この ようにして最終的に26項目とした.リード文は「教育 実習生の指導経験が指導の先生にどの程度活かされる と思いますか?以下の各項目についてそれぞれ5段階 で考え,当てはまる数字の一つに〇をつけてくださ い.」とし,回答は「1.全く活かされない」「2.あ まり活かされない」「3.どちらとも言えない」「4. 活かされる」「5.とても活かされる」の5件法で求め た.最後に,調査の実施前に調査項目の表現や文言に ついて,現職教師2名による確認を経て完成版とした. なお,米沢(2010)で用いられている調査項目は, 小学校教員の力量として「教授に関する力量」「評価に 関する力量」など複数の観点で構成されていることや, 米沢(2008)において因子分析を行い信頼性(α係数) も十分な値が得られていることから,本研究において

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参考になると考えた. 2.3. 分 析 方 法 まず,本研究で作成した「教育実習における指導形 態の重要度」「教育実習指導を通した学び」「教育実習 指導で身についた教師としての力量」に対してそれぞ れ探索的に因子分析を行う.「教育実習指導における指 導形態の重要度」「教育実習指導を通した学び」は先行 研究において因子分析を行い下位尺度を定めたもので はなく,先行研究の知見を基に本研究において項目を 作成したものである.そのため,各尺度の関連を検討 していく上で,それぞれがいくつの下位尺度に分かれ るのかを検討する必要があると考えた.また,「教育実 習で身についた教師としての力量」は,本研究用に改 変を行っているため,先行研究の下位尺度と異なる可 能性も考えられ,改めて下位尺度を検討する必要があ ると考えた. 次に,因子分析の結果を受け,実習指導教員の指導 や学び,その後の力量形成についての認識を検討する. まず,教師が各指導形態の重要度を高く認識している のか,あるいは低く認識しているのか,各学びやその 後の力量形成を高く認識しているのか,あるいは低く 認識しているのかを因子ごとに検討した.具体的には 各項目で5件法を採用していることから,理論的中位 点である3より高いまたは低いといえるかどうかを検 討(1サンプルのt検定)した.次に,校種間で実習 指導形態の重要度,学び,力量形成の認識について差 があるのかどうかを検討するために,各因子について 小中間でt検定を行った. 最後に,実習指導教員の指導と学び,その後の力量 形成との関連を検討するために「教育実習における指 導形態の重要度」と「教育実習指導を通した学び」,「教 育実習指導で身についた教師としての力量」の相関分 析を行う.さらに,指導と学び,力量形成との関連を より詳細に検討するために,各尺度を統制した偏相関 係数を求めることとした. 3. 結 果 3.1. 各尺度構成 3.1.1. 教育実習における指導形態の重要度 全22項目を用いて,因子分析(主因子法・プロマッ クス回転)を行った.各因子に対する負荷量が.40以下 の項目と複数の因子に.40以上の負荷量を示した項目 を除き,因子分析を行ったところ,最終的に4因子14 項目が得られた(表1). 第1因子は,全5項目からなり(項目例:学級経営 について,内容や進め方を実習生と一緒に考える),実 表1 「教育実習における指導形態の重要度」の因子分析結果 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ.実習生との協働(α=.86) 学級経営について,内容や進め方を実習生と一緒に考える .87 .05 .00 -.11 学級経営について,実習生から内容や進め方の提案を出してもらう .87 -.08 .13 -.05 児童・生徒への関わり方について,実習生から意見を出してもらう .73 -.01 -.03 .07 児童・生徒への関わり方について,実習生と一緒に考える .68 .07 -.23 .12 授業の実施に関して,実習生から内容や進め方の提案を出してもらう .55 .01 .06 .01 Ⅱ.具体的方法の提示(α=.77) 授業の実施に関して,具体的な方法を教える -.05 .94 -.05 -.09 授業の実施に関して,自分の用いている指導方法を提案する .08 .66 .04 -.02 授業の実施に関して,実際に授業をやって見本を見せる .00 .53 .09 .15 Ⅲ.指示(α=.86) 児童・生徒への関わり方について,やり方や手順を伝えて実習生に実施するよう求める -.07 -.08 .91 .01 学級経営について,やり方や手順を伝えて実習生に実施するよう求める .06 .05 .76 .08 授業の実施に関して,やり方や手順を伝えて実習生に実施するよう求める .01 .38 .60 -.05 Ⅳ.実践説明(α=.79) 授業の実施に関して,自身の行った実践や意図について説明する -.02 .23 -.13 .80 児童・生徒への関わり方について,普段自分が行なっていることの意図を説明する -.04 -.09 .04 .75 学級経営について,自身の行った実践や意図について説明する .09 -.13 .16 .67 因子間相関 Ⅰ ― -.07 .14 .31 Ⅱ ― .45 .31 Ⅲ ― .24

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習生との協働を表す項目が含まれていると考えられる ため,「実習生との協働」と命名した.第2因子は,全 3項目からなり(項目例:授業の実施に関して,具体 的な方法を教える),具体的な方法について実習生に提 示していると考えられる内容が含まれているため「具 体的方法の提示」と命名した.第3因子は,全3項目 からなり(項目例:児童・生徒への関わり方について, やり方や手順を伝えて実習生に実施するよう求める), 作業内容や手順を実習生に示して実施を求めている項 目が含まれていると考えられることから「指示」と命 名した.第4因子は,全3項目からなり(項目例:授 業の実施に関して,自身の行った実践や意図について 説明する),自身の実践や意図について実習生に説明す る項目が含まれていると考えられることから「実践説 明」と命名した. また下位尺度のα係数を算出したところ全ての因子 で.75以上の値が得られたため,ある程度の信頼性は確 認されたと判断し,4因子構造を採用した. 3.1.2. 教育実習指導を通した学び 全24項目を用いて,因子分析(主因子法・プロマッ クス回転)を行った.各因子に対する負荷量が.40以下 の項目と複数の因子に.40以上の負荷量を示した項目 を除き,因子分析を行ったところ,最終的に7因子21 項目が得られた(表2). 第1因子は,全3項目からなり(項目例:指導は負 担である),実習指導の負担感を表す因子であると考え られるため「負担感」と命名した.第2因子は,全5 項目からなり(項目例:実習生が直面している課題を 捉えることができる),実習生の課題や経験,既有知識 を理解している項目が含まれていると考えられるため, 表2 「教育実習指導を通した学び」の因子分析結果 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅰ.負担感(α=.86) 指導は負担である .92 .00 -.03 .05 .11 -.06 -.07 実習指導により自分の時間が減り困る .90 -.07 .03 .10 -.03 .07 -.07 教育実習指導により苦痛を感じる .60 .08 .01 -.21 -.20 .01 .22 Ⅱ.実習生の課題・経験・既有知識の理解(α=.75) 実習生が直面している課題を捉えることができる -.04 .78 .00 .11 -.06 .23 -.22 実習生のつまずきを理解することができる -.02 .67 -.18 .15 -.11 .06 -.08 実習生がどのような学びをしているのかを推察することができる .01 .59 .00 -.13 .11 .04 -.01 実習生がどの程度の知識を持っているのかを知ることができる .00 .55 -.04 .02 .10 -.25 .11 実習生の経験にはどのような意味があるのかを考えることができる .07 .46 .14 -.20 .27 .00 .11 Ⅲ.実践の振り返り・意欲の喚起(α=.76) これまでの教員自身の実践を振り返る契機になる .04 -.06 1.00 .00 .00 .08 -.08 教員自身も頑張らなくてはいけないと思う -.04 -.13 .60 .04 .18 .02 .06 教員自身が行なっている実践を見直す機会にはならない .04 -.06 -.43 -.28 .10 .21 -.09 Ⅳ.児童生徒の理解深化・教員自身の学びの見取り(α=.71) 実習生との関わりを通して,児童・生徒の成長を感じることができる .01 .03 .16 .72 .00 -.01 -.06 実習生との関わりの中で,普段とは異なる児童・生徒の一面を知ることができる .00 -.04 .00 .65 .01 .08 .09 実習生の実践を通して,新たな実践のあり方に気づくことができる .07 .04 -.05 .43 .19 .05 .24 Ⅴ.実習生の意欲・頑張り・成長の理解(α=.68) 実習生の意欲の高さを知ることができる -.05 .03 .13 -.10 .74 .12 -.17 実習生が頑張っていることを知ることができる .04 .01 -.09 .28 .62 -.07 -.05 実習生の成長を見ることができる -.02 .16 -.02 .02 .43 -.04 .28 Ⅵ.実習指導体制の省察(α=.65) 学校全体の実習体制の必要性を感じる -.15 -.03 -.01 .06 .08 .72 .23 学校の実習体制に対して課題を認識する .20 .15 .05 .01 -.02 .58 .08 Ⅶ.実習生指導のあり方の再考(α=.60) 自身の実習生指導のあり方について悩む .04 -.23 -.11 .07 .02 .22 .72 自身の実習生指導のあり方を見直すことができる -.08 .18 .20 .04 -.22 .03 .60 因子間相関 Ⅰ ― -.24 -.34 -.37 -.33 .15 .03 Ⅱ ― .24 .48 .25 .11 .24 Ⅲ ― .40 .42 .07 .41 Ⅳ ― .42 .16 .27 Ⅴ ― -.07 .29 Ⅵ ― .03

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「実習生の課題・経験・既有知識の理解」と命名した. 第3因子は,全3項目からなり(項目例:これまでの 教員自身の実践を振り返る契機になる),教員自身の実 践の振り返りや意欲喚起を表す因子であると考えられ ることから「実践の振り返り・意欲の喚起」と命名し た.第4因子は全3項目からなり(項目例:実習生と の関わりを通して,児童・生徒の成長を感じることが できる),児童生徒の理解を深めることや,教員自身の 学びを見取る内容を含んでいると考えられることから 「児童生徒の理解深化・教員自身の学びの見取り」と 命名した.第5因子は,全3項目からなり(項目例: 実習生の意欲の高さを知ることができる),実習生の意 欲や頑張り,成長を理解することを表す因子であると 考えられることから「実習生の意欲・頑張り・成長の 理解」と命名した.第6因子は全2項目からなり(項 目例:学校全体の実習体制の必要性を感じる),学校と しての実習指導体制についての省察を表す因子である と考えられることから「実習指導体制の省察」と命名 した.最後に第7因子は,全2項目からなり(項目例: 自身の実習生指導のあり方について悩む),実習生指導 のあり方を見直す内容が含まれていると考えられるこ とから,「実習生指導のあり方の再考」と命名した. また,下位尺度のα係数を算出したところやや低い 因子も見られたが,項目数の少なさや解釈可能性を考 慮して,7因子構造を採用した. 3.1.3. 教育実習指導で身についた教師としての 力量 全26項目を用いて,因子分析(主因子法・プロマッ クス回転)を行った..40を基準に因子分析を行ったと ころ,3因子23項目が得られた(表3). 第1因子は,全12項目からなり(項目例:授業のねら いに沿った児童・生徒の学習成果の評価),米沢(2010) における「教授に関する力量」「評価に関する力量」の 項目が多く含まれており,教えるという実践にかかる 総体的な内容を含むと考えらえることから「授業実践 及び実践に関する知識」と命名した.第2因子は,全 8項目からなり(項目例:児童・生徒の個性,性格, 人間関係の理解),米沢(2010)における「子ども理解 表3 「教育実習指導で身についた教師としての力量」の因子分析結果 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ.授業実践及び実践に関する知識(α=.96) 授業のねらいに沿った児童・生徒の学習成果の評価 1.02 .05 -.20 評価の観点を持った客観的な授業評価 .94 .04 -.14 授業の反省・分析に基づく次の改善策や課題の提示 .83 -.05 .09 児童・生徒自身が自発的に活動するような指導 .83 .02 .04 相互評価や自己評価を通した児童・生徒の評価能力の育成 .81 .11 -.08 児童・生徒に学習課題を持たせる指導 .75 .09 .10 授業研究や授業改善に取り組むこと .71 -.07 .14 児童・生徒の実態を踏まえた指導案(板書や発問の計画を含む)の立案 .65 -.01 .31 単元毎のねらいやその位置づけ,系統性の理解 .60 -.01 .32 学習指導要領の内容理解 .57 -.05 .30 準備した教材や教具の有効な活用 .47 -.01 .37 教育者としての素直さ,謙虚さ,協調性 .45 .33 -.04 Ⅱ.児童生徒理解(α=.95) 児童・生徒の個性,性格,人間関係の理解 -.25 .97 .15 児童・生徒との相互理解を通した信頼関係の構築 -.05 .94 .05 学級内の友だち関係とその性質の把握 -.07 .90 .06 児童・生徒と接する中での,個々の児童・生徒の特性や違いの理解 .14 .84 -.12 すべての児童・生徒への平等公平な関わり .07 .73 .11 児童・生徒と接する機会を多く設け,ありのまま理解しようとすること .29 .71 -.16 社会人としての常識,ルールの遵守と適切な言葉遣いの使用 .18 .62 .02 学級目標の設定 .14 .56 .04 Ⅲ.授業設計・展開(α=.90) 教材研究 -.06 .03 .94 教具やワークシートの準備 .04 .10 .73 一時間の授業のねらいを明確にした学習指導 .21 .06 .67 因子間相関 Ⅰ ― .67 .70 Ⅱ .62

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に関する力量」に関する項目が多く含まれていること から「児童生徒理解」と命名した.第3因子は,全3 項目からなり(項目例:教材研究),米沢(2010)の「教 授に関する力量」の一部が含まれていた.これら3項目 は,授業の設計や展開に関する事柄であると考えらえ るため,「授業設計・展開」と命名した. また下位尺度のα係数を算出したところ全ての因子 で.90以上の値が得られたため,信頼性は確認されたと 判断し,3因子構造を採用した. 3.2. 各尺度の因子ごとの平均値の検討 3.2.1. 教育実習における指導形態の重要度 各因子の平均値,標準偏差,並びにt検定の結果を 表4に示す.4因子のいずれも3以上の値を示し,有 意な結果が得られた(p<.01).また,得点を見ると「実 践説明」及び「具体的方法の提示」の得点が比較的高 かった. 次に校種ごとの得点の結果を見ていくと,「実践説 明」においてのみ有意差が見られ(p<.05),小学校教 員の方が中学校教員よりも得点が高かった. 3.2.2. 教育実習指導を通した学び 各因子の平均値,標準偏差,並びにt検定の結果を 表5に示す.まず,因子ごとに全体の平均値を見ると, 「負担感」を除く6因子について3以上の値を示し, 有意な結果が得られた(p<.01).また,「実践の振り返 り・意欲の喚起」は平均値が4以上を示していて得点 が最も高かった.「負担感」については,高いとも低い とも言えない結果であった. 次に,校種ごとの得点の結果を見ていくと,いくつ かの因子において有意差が見られ,「負担感」において は,中学校教員の方が小学校教員より得点が高かった (p<.01).また,「実践の振り返り・意欲の喚起」「児 童生徒の理解深化・教員自身の学びの見取り」「実習生 の意欲・頑張り・成長の理解」の3因子においては, 小学校教員の方が得点が高かった(p<.05). 3.2.3. 教育実習指導で身についた教師としての力 量 各因子の平均値,標準偏差,並びにt検定の結果を 表6に示す.まず,因子ごとに全体の平均値を見ると, 3因子のいずれも3以上の値を示し,有意な結果が得 られた(p<.05). 次に校種ごとの得点の結果を見ていくと,「授業実践 及び実践に関する知識」「児童生徒理解」において小学 校 教 員 の 方 が 中 学 校 教 員 よ り も 得 点 が 高 か っ た (p<.05). 表4 「教育実習における指導形態の重要度」の因子ごとの平均値,標準偏差及びt検定結果 全体 t値 小学校 中学校 t値 実習生との協働 3.65(0.80) 9.32 ** 3.68(0.81) 3.61(0.79) 0.46 具体的方法の提示 4.02(0.68) 17.26 ** 4.08(0.64) 3.96(0.73) 0.96 指示 3.26(0.87) 3.45 ** 3.29(0.82) 3.23(0.93) 0.33 実践説明 4.26(0.56) 26.24 ** 4.37(0.50) 4.15(0.59) 2.39 * ※( )内は標準偏差, ** p<.01 , * p<.05 表5 「実習指導を通した学び」の因子ごとの平均値,標準偏差及びt検定結果 全体 t値 小学校 中学校 t値 負担感 2.92(0.97) 0.90 2.68(0.91) 3.19(0.96) 3.19 ** 実習生の課題・経験・既有知識の理解 3.77(0.56) 15.90 ** 3.73(0.50) 3.82(0.61) 0.94 実践の振り返り・意欲の喚起 4.18(0.77) 17.77 ** 4.34(0.62) 4.01(0.88) 2.49 * 児童生徒の理解深化・教員自身の学びの見取り 3.67(0.77) 10.05 ** 3.88(0.68) 3.43(0.79) 3.55 ** 実習生の意欲・頑張り・成長の理解 3.98(0.60) 18.69 ** 4.09(0.56) 3.85(0.63) 2.31 * 実習指導体制の省察 3.39(0.83) 5.44 ** 3.44(0.75) 3.34(0.91) 0.63 実習生指導のあり方の再考 3.52(0.80) 7.49 ** 3.59(0.70) 3.45(0.90) 1.06 ※( )内は標準偏差, ** p<.01 , * p<.05 表6 「教育実習指導で身についた教師としての力量」の因子ごとの平均値,標準偏差及びt検定結果 全体 t値 小学校 中学校 t値 授業実践及び実践に関する知識 3.49(0.81) 7.00 ** 3.63(0.71) 3.34(0.88) 2.14 * 児童生徒理解 3.20(0.91) 2.59 * 3.47(0.78) 2.92(0.95) 3.67 ** 授業設計・展開 3.48(0.91) 6.11 ** 3.62(0.83) 3.33(0.96) 1.88 ※( )内は標準偏差, ** p<.01 , * p<.05

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3.3. 相関分析による検討 3.3.1. 全体的な「教育実習における指導形態の重 要度」と「教育実習指導を通した学び」,「教 育実習指導で身についた教師としての力 量」の関連 「教育実習における指導形態の重要度(以下,【指 導】)」と「教育実習指導を通した学び(以下,【学び】)」, 「教育実習指導で身についた教師としての力量(以下, 【力量】)」について下位尺度ごとの相関を求めたとこ ろ表7,8のような結果が得られた. 【指導】と【学び】の関連に着目すると,【指導】の 「実習生との協働」が,【学び】の「負担感」を除くす べての因子と有意な正の相関(p<.01)がみられた.【指 導】の「具体的方法の提示」が,【学び】の「児童生徒 の理解深化・教員自身の学びの見取り」「実習生の意 欲・頑張り・成長の理解」と有意な相関がみられた (p<.01).また,【指導】の「指示」が,【学び】の「実 習生の課題・経験・既有知識の理解」「児童生徒の理解 深化・教員自身の学びの見取り」「実習生の意欲・頑張 り・成長の理解」と有意な相関がみられた(p<.05). 【指導】の「実践説明」は,【学び】の「実践の振り返 り・意欲の喚起」「児童生徒の理解深化・教員自身の学 びの見取り」「実習生の意欲・頑張り・成長の理解」「実 習生指導のあり方の再考」と有意な相関がみられてい た(p<.01). 【指導】と【力量】の関連に着目すると,【指導】の 「実習生との協働」は【力量】のすべての因子と有意 な正の相関(p<.05)がみられた.また【指導】の「具 体的方法の提示」「指示」は【力量】の「児童生徒理解」 と,【指導】の「実践説明」は【力量】の「授業実践及 び実践に関する知識」と有意な相関がみられた(p<.05). 一方で,偏相関係数に着目すると,【力量】を統制し ても【指導】と【学び】の有意な相関は概ね維持され ている一方で,【学び】を統制した場合,【指導】と【力 量】の有意であった相関は有意ではなくなっていた. 3.3.2. 校種別に見た「教育実習における指導形態 の重要度」と「教育実習指導を通した学び」, 「教育実習指導で身についた教師としての 力量」の関連 次に,校種別に【指導】と【学び】,【力量】につい て下位尺度ごとの相関を求めたところ表9,10のよう な結果が得られた. 【指導】と【学び】の関連に着目すると,【指導】の 「実習生との協働」と【学び】の「実習生の課題・経 験・既有知識の理解」「児童生徒の理解深化・教員自身 の学びの見取り」,【指導】の「実践説明」と【学び】 表7 「教育実習における指導形態の重要度」と「教育実習指導を通した学び」の関連 教育実習指導を通した学び 負担感 実習⽣の 課題・経験・ 既有知識の 理解 実践の振り返 り・意欲の喚起 児童⽣徒の 理解深化・教員 ⾃⾝の学びの ⾒取り 実習⽣の 意欲・頑張り・ 成⻑の理解 実習指導 体制の省察 実習⽣指導 のあり⽅の 再考 教育実 習にお ける指 導形態 の重要 度 実習⽣との 協働 -.09 (-.03) .31** (.25**) .22* (.16) .29** (.20*) .27** (.21*) .26** (.23**) .25** (.19*) 具体的⽅法 の提⽰ -.04 (.02) .16 (.14) .07 (.03) .29** (.25**) .30** (.29**) .09 (.06) .01 (-.02) 指⽰ -.04 (.01) .18* (.18*) .07 (.03) .18* (.13) .18* (.18*) .16 (.14) -.02 (-.03) 実践説明 -.17 (-.14) .14 (.06) .41** (.37**) .29** (.23**) .31** (.26**) .15 (.13) .27** (.22*) ※カッコ内の数値は「教育実習指導で⾝についた教師としての⼒量」の尺度得点を統制した時の偏相関係数 ※ ** p<.01 , * p<.05 表8 「教育実習における指導形態の重要度」と「教育実習指導で身についた教師としての力量」の関連 教育実習指導で⾝についた教師としての⼒量 授業実践及び実践に関する知識 児童⽣徒理解 授業設計・展開 教育実習 における 指導形態 の重要度 実習⽣との 協働 .23** (.00) .19* (.04) .18* (-.01) 具体的⽅法 の提⽰ .10 (-.12) .18* (.03) .16 (-.02) 指⽰ .08 (-.04) .18* (.12) .06 (-.04) 実践説明 .22* (-.06) .14 (-.10) .15 (-.11) ※カッコ内の数値は「教育実習指導を通した学び」の尺度得点を統制した時の偏相関係数 ※ ** p<.01 , * p<.05

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の「実践の振り返り・意欲の喚起」,【指導】の「具体 的方法の提示」と【学び】の「実習生の意欲・頑張り・ 成長の理解」に,小・中学校の教師に共通して有意な 相関が見られた(p<.05).しかし,中学校ではその他 にも多くの因子と有意な相関が見られた(p<.05).た だし,小学校では【指導】の「指示」と【学び】の「実 践の振り返り・意欲の喚起」に有意な相関が見られた (p<.01)が,中学校では有意な相関が見られなかった. また,【力量】を統制した偏相関係数に着目すると, 小学校では【指導】の「実習生との協働」と,【学び】 の「児童生徒の理解深化・教員自身の学びの見取り」 との相関が有意ではなくなっていた.さらに,【指導】 の「指示」と【学び】の「実践の振り返り・意欲の喚 起」との相関も有意ではなくなっていた.一方,中学 校においても【指導】の「実習生との協働」及び「実 践説明」と【学び】の「実習生指導のあり方の再考」, 並びに,【指導】の「具体的方法の提示」と【学び】の 「実習生の意欲・頑張り・成長の理解」との相関が有 意でなくなっていた.しかし,小学校に比べると中学 校では【指導】と【学び】の有意な相関は概ね維持さ れていた. 一方,【指導】と【力量】の関連に着目すると,小学 校では【指導】の「実習生との協働」と【力量】の全 ての下位尺度,【指導】の「指示」と【力量】の「授業 実践及び実践に関する知識」と「児童生徒理解」に有 意な相関が見られた(p<.05).中学校では,【指導】の 「具体的方法の提示」と【力量】の「授業設計・展開」 に有意な相関が見られた(p<.01)のみであった. また,【学び】を統制したところ,小学校では【指導】 の「実習生との協働」と【力量】の「児童生徒理解」 との有意な相関のみ維持され,他の相関は有意ではな くなっていた.中学校では【指導】と【力量】の相関 は有意でなくなり,かつ多くが負の相関に転じていた. 表9 校種別にみた「教育実習における指導形態の重要度」と「教育実習指導を通した学び」の関連 教育実習指導を通した学び 負担感 実習⽣の課 題・経験・既 有知識の理解 実践の振り返 り・意欲の喚起 児童⽣徒の理解 深化・教員⾃⾝ の学びの⾒取り 実習⽣の意 欲・頑張り・ 成⻑の理解 実習指導体制 の省察 実習⽣指導の あり⽅の再考 ⼩ 学 校 教育実 習にお ける指 導形態 の重要 度 実習⽣との 協働 -.04 (.02) .33** (.26*) .11 (-.08) .26* (.07) .20 (.15) .10 (.05) .18 (.12) 具体的⽅法 の提⽰ .07 (.08) .11 (-.01) .14 (.07) .19 (.12) .30* (.28*) .12 (.12) -.08 (-.07) 指⽰ -.05 (-.02) .20 (.05) .33** (.23) .19 (-.01) .13 (.07) .11 (.09) .01 (.01) 実践説明 -.12 (-.09) -.06 (-.16) .34** (.29*) .20 (.09) .17 (.13) .05 (.03) .21 (.19) 中 学 校 教育実 習にお ける指 導形態 の重要 度 実習⽣との 協働 -.13 (-.14) .30* (.25*) .30* (.28*) .31* (.35**) .34** (.32*) .40** (.39**) .30* (.24) 具体的⽅法 の提⽰ -.09 (.01) .21 (.21) .00 (.00) .36** (.28*) .28* (.22) .06 (.05) .06 (.13) 指⽰ -.01 (.03) .18 (.22) -.11 (-.10) .16 (.15) .21 (.24) .20 (.20) -.04 (.00) 実践説明 -.12 (-.12) .32* (.26*) .41** (.39**) .28* (.29*) .37** (.32*) .21 (.20) .29* (.25) ※カッコ内の数値は「教育実習指導で⾝についた教師としての⼒量」の尺度得点を統制した時の偏相関係数 ※ ** p<.01 , * p<.05 表10 校種別にみた「教育実習における指導形態の重要度」と 「教育実習指導で身についた教師としての力量」の関連 教育実習指導で⾝についた教師としての⼒量 授業実践及び 実践に関する 知識 児童⽣徒理解 授業設計・展開 ⼩ 学 校 教育実習 における 指導形態 の重要度 実習⽣との協働 .25* (.05) .37** (.27*) .29* (.19) 具体的⽅法の提⽰ .16 (.05) .16 (.08) -.07 (-.20) 指⽰ .24* (.14) .33** (.24) .05 (-.09) 実践説明 .18 (-.06) .19 (.03) .11 (-.16) 中 学 校 教育実習 における 指導形態 の重要度 実習⽣との協働 .20 (-.08) .02 (-.16) .06 (-.24) 具体的⽅法の提⽰ .02 (-.24) .16 (.00) .33** (-.14) 指⽰ -.06 (-.23) .07 (-.02) .07 (-.10) 実践説明 .19 (-.10) .00 (-.19) .12 (-.17) ※カッコ内の数値は「教育実習指導を通した学び」の尺度得点を統制した時の偏相関係数 ※ ** p<.01 , * p<.05

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4. 考 察 各尺度の因子ごとの平均値の検討(3.2.)から,教 育実習の指導教員が,実習指導を通して学びがあるこ とや,力量形成につながることを高く認識しているこ とが示された.教育実習指導の負担感が課題として指 摘されてきた(柴山ほか 2003)が,質問紙調査結果か ら高いとは言えないということが示唆された.磯﨑ほ か(2002)は,教育実習における附属学校指導教員の 心配事項について検討する中で,上位2つのうち1つ が「教育実習生の授業を援助するために十分な時間を 取ること」であることを示している.先行研究の知見 を踏まえると,負担感については課題の一つとして考 えられるものの,本研究では高くは認識されなかった ことから,実習指導教員が実習指導を肯定的に捉えて いることや,力量についての認識も見られたという本 研究の結果も踏まえると,実習指導教員が,負担感を 軽減するだけの意義があると捉えている可能性が考え られる.ただし,校種間の比較においていくつかの因 子において小学校教員の方が中学校教員より学びや力 量について高く認識されている一方で,負担感につい てのみ中学校教員の方が高い結果であったことから, 中学校教員の方が小学校教員より負担感を高く認識し ていることが明らかとなった.また,小学校教員の方 が実習指導を通した学びや力量形成を高く認識してい ることが明らかとなった.こうした本研究の知見は, 教育実習指導のあり方が実習指導教員の学びや力量形 成にどのような影響を与えるかを量的に捉えていくた めの基礎資料となるものである. さらに以下では,校種別の相関分析(3.3.2.)の結果 から,教育実習指導を通した学びと力量形成について 考察する. 4.1. 教育実習の指導教員が何をどのように学んで いるのか 「教育実習指導を通した学び」と「教育実習におけ る指導形態の重要度」との相関分析から,次の2点を 考察として述べる. 第1に,小学校と中学校で共通して,「実習生との協 働」と「実習生の課題・経験・既有知識の理解」「児童 生徒の理解深化・教員自身の学びの見取り」との間に 有意な正の相関が示された.有元(2016)は,学生が 学校現場に入って学ぶ学校インターンシップを,学生 個人の体験としてではなく学習者と現場実践家との相 互作用の機会であり,単に学習者個人の変化としてで はなく,みなが発達する場として捉えることを提起し て い る . そ し て , そ う し た 発 達 す る 場 を 共 創 (co-creation)することで学校もまた変化しうること を指摘している.有元の指摘を踏まえると,教育実習 もまた実習生個人が体験し学ぶ場としてではなく,実 習指導教員との相互作用の機会であると捉えられる. そして,実習生とともに学級経営や授業について検討 し,実践することで,実習指導教員と実習生の関係が 指導的なものから,共に学ぶ関係へと移行する可能性 が考えられる.こうした知見は,教育実習における実 習指導教員の学びを検討する際,実習指導教員と実習 生との関係に着目することが重要であるという新たな 視点を提起していると言える. 第2に,小学校と中学校で共通して,「実践説明」と 「実践の振り返り・意欲の喚起」との間に有意な正の 相関が示された.ここから,実習指導教員が自身の実 践を言語化することで,省察が深まり,自身の実践に さらに取り組む意欲が育まれることが推察できる.こ のことは,幼稚園教諭を対象とした池田ほか(2014) や中学・高校教師を対象とした磯﨑ほか(2002)でも 指摘されていた.本研究により,教育実習指導におい て自身の実践を実習生に説明することは,どの学校種 における指導教員にとっても学びにつながることが示 唆された. 4.2. 教育実習での指導経験が教師としての力量形 成にどのような意味を持つと認識しているか 「教育実習指導で身についた教師としての力量」と 「教育実習における指導形態の重要度」との相関分析 から次の2点を考察として述べる. 第1に,小学校では,「実習生との協働」とすべての 「教育実習指導で身についた教師としての力量」の下 位尺度との間に有意な正の相関が示された.このこと から,先述のように,実習生とともに実践について検 討し,実施することは,実習指導における学びに止ま らず,その後の力量形成にもつながることが示唆され る.ただし,「教育実習指導を通した学び」を統制した ところ,実習生との協働と児童生徒理解の相関のみ維 持された.学級担任制である小学校では,実習生は基 本的に実習指導教員が担任する学級に配属され,その 学級を中心に実習を行う.そのため,授業や学級経営 などを指導教員と協働する機会が必然的に多くなると 予想される.そうした協働の中で,実習生とともに考 えた実践を通して児童と関わることが,実習後の実践 につながる児童の個性や友だち関係,関わり方など,

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児童についての理解を深める契機になっているのでは ないかと考えられる. 第2に,中学校では,「具体的方法の提示」と「授業 設計・展開」との間に有意な正の相関が示された.教 科担任制である中学校では,同一内容の授業を複数の 教室で実践する機会がある.そのため,指導において は同じ内容の授業について改善点を具体的に提示する ことがあると予想される.そうした実習生への指導を 通して,実習指導教員はその後の実践につながるよう 教材研究やねらいを明確にするといった力量を形成し ている可能性が考えられる.ただし,「教育実習指導を 通した学び」を統制したところ,有意な相関は見られ なくなった.さらに,ほとんどの尺度間の相関は負の 相関となっていた.こうした傾向は小学校より中学校 でより見られた.ここから,中学校においては,実習 指導を通して学びが得られていると感じられるかどう かが,その後の力量形成につながるという認識に関わ っていることが示唆される. 5.ま と め 本研究では,教育実習の指導教員が実習指導を通し て何をどのように学んでいるのか,また教育実習での 指導経験が教師としてのその後の力量形成にどのよう な意味を持つと認識しているかについて,教育実習指 導の経験がある小中学校の教師を対象とした質問紙調 査により実証的に検討した. 主な結果として,実習指導教員は実習指導を通した 学びや力量形成を高く認識しており,小学校教員の方 がその傾向が強いこと,指導形態と学びや力量形成の 関連が見られ,特に実習生との協働との関連が見られ たこと,指導形態と学びの関連は中学校教員の方が, 指導形態と力量形成の関連は小学校教員の方が多い, といった結果が得られた. 実習指導教員の学びや力量形成についての実証的な 研究が十分でない中,本研究において質問紙調査によ って量的に検討し,実習指導教員の学びや力量形成の 一端を明らかにできたことは意義深いと思われる.ま た,実習指導教員と実習生との関係の在り方が指導教 員の学びや力量形成と関連する可能性を実証的に示し た点は,本研究による新たな知見であり,今後,教育 実習指導のあり方を学校種に応じて検討する必要があ ると言える.さらには,本研究において作成した調査 項目についても,今後同様の研究を行っていく上での1 つの参考資料となると考えられる. 最後に,今後の課題として4点挙げる.第1に,本 研究では,実習指導形態と指導教員の学びや力量形成 に関し,様々な相関関係が見出されたが,考察につい ては部分的な考察に留まっている.解釈を深めるため に,量的データをさらに収集していくことが必要であ る. 第2に,上記と関わって小中で違いが生まれる要因 をより詳細に検討することである.本研究では小学校 よりも中学校において「教育実習における指導形態の 重要度」と「教育実習指導を通した学び」との間に有 意な正の相関が多いこと,偏相関において有意差が見 られなくなることなど,学級担任制と教科担任制の違 いだけでは説明しきれない結果も得られた.今後,そ うした違いが生まれる要因を想定した調査,検討を行 う必要がある. 第3に,実習指導教員の学びのプロセスを明らかに することである.教育実習における実習内容は週によ っても変化し,それに伴い指導内容も変化するため, 実習指導教員の学びも実習の時間的経過に伴い変化す ると考えられる. 第4に,このような教育実習指導教員の学びと,実 習生の学びとの関連を明らかにすることである.教育 実習の主目的は,実習生の学びにある.実習指導教員 の学びは実習生の学びにポジティブな影響を与える可 能性が考えられるが,どのような関係にあるのかを実 証的に解明する必要がある. 註 1)本調査で用いた5件法はいずれも順序性を備えて いると考えられることから,量的変数として捉えられ るものと判断し,分析にあたって得点化した.なお, 質問紙でよく用いられる5段階評定値は厳密には順序 尺度であるが,心理尺度作成においてこれを間隔尺度 とみなして扱うことが多い(鎌原 1998).本研究にお いても便宜的に間隔尺度と見なし,量的変数として得 点化を行うこととした. 付 記 本論文は,日本教育工学会第34回全国大会において 発表した研究の一部を再検討し,まとめたものです. 謝 辞 ご多用の中,本調査にご協力いただきました先生方 に心よりお礼申し上げます.なお,本研究は JSPS 科研

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費18K02562の助成を受けたものです. 参 考 文 献 有元典文(2016)学校インターンシップ受け入れ学校・ 大学および地域の変化:学校インターンシップに おいて学習する(べきな)のは誰か.田島充士, 中村直人,溝上慎一,森下覚(編著)学校インタ ーンシップの科学:大学の学びと現場の実践をつ なぐ教育.ナカニシヤ出版,京都,pp.210-228 一柳智紀,三島知剛,坂本篤史(2016)教育実習にお ける実習指導教師の学び―指導内容との関連に着 目して―.日本教育心理学会第58回総会発表論文 集:508 池田明子,掛志穂,君岡智央,中山芙充子,広兼睦ほ か(2014)教育実習指導による指導教員の成長に 関する研究―幼稚園教育実習における指導教員の 成長に関する研究―.広島大学学部・附属学校共 同研究機構研究紀要,42:217-222 磯﨑哲夫,磯﨑尚子,木原成一郎(2002)教育実習に 対する国立大学附属学校指導教官と教育実習生の 意識調査―教育実習におけるメンタリングの可能 性を探る―.日本教科教育学会誌,25(2):21-30 鎌原雅彦(1998)心理尺度の作成.鎌原雅彦,宮下一 博,大野木裕明,中澤潤(編著)心理学マニュア ル 質問紙法.北大路書房,京都,pp.64-74 三島知剛(2008)教育実習生の実習前後の授業観察力 の変容―授業・教師・子どもイメージの関連によ る検討―.教育心理学研究,56:341-352 文部科学省(2015)これからの学校教育を担う教員の 資質能力の向上について―学び合い,高め合う教 員養成コミュニティの構築に向けて―(答申). http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/t oushin/__icsFiles/afieldfile/2016/01/13/1365896_01. pdf(参照日:2020.03.06) 柴山直,高橋桂子,鋤柄佐千子,五十嵐由利子(2003) 受入校からみた教育実習の実態調査に関する報告. 新潟大学教育人間科学部附属教育実践総合センタ ー研究紀要 教育実践総合研究,2:63-74 立石力斗(2018)教育実習での知的障害のある児童・ 生徒との関わりによる授業・教師・子どもイメー ジの変容.日本教育工学会論文誌,42(Suppl.): 189-192 米沢崇(2008)実習生の力量形成に関する一考察―実 習校指導教員の指導的かかわりとの関連を中心に ―.日本教師教育学会年報,17:94-104 米沢崇(2010)教育実習における教師としての力量形 成に対する教職志望学生と初任者の意識の検討. 奈良教育大学紀要,59(1):237-244 Summary

The purpose of this study is to investigate the mentor teachers’ learning and professional development through coaching student teachers in practice teaching, focusing on the differences between elementary school teachers and junior high school teachers. In total, 133 mentor teachers participated in a questionnaire. Major findings were as follows: (a) Scores for the “learning” and “professional development” were high. The elementary school teachers recognize higher on “learning” and “professional development” than junior high school teachers; (b) Several factors related to “teaching practice instruction” and “learning”, and “teaching practice instruction” and “professional development” were correlated. Especially, collaboration with student teachers were correlated to many factors on “learning” and “professional development”, (c) The elementary school teachers had a strong relationship between “teaching practice instruction” and “learning”. The junior high school teachers had a strong relationship between “teaching practice instruction” and “professional development”.

KEYWORDS: TEACHER EDUCATION, PRACTICE TEACHING, IN-SERVICE TEACHER TRAINING, MENTOR TEACHER, QUESTIONNAIRE SURVEY

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