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《書評》ラルフ・フレッチャー&ジョアン・ポータルピ著、小坂敦子・吉田新一郎訳『ライティング・ワークショップ―「書く」ことが好きになる教え方・学び方―』(2007年3月28日刊 新評論 A5判 184頁)

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横浜国大国語教育研究 No.42 (2017) - 55 - 《書 評》

ラルフ・フレッチャー&ジョアン・ポータルピ著、小坂敦子・吉田新一郎訳

『ライティング・ワークショップ―「書く」ことが好きになる教え方・学び方―』

(2007 年 3 月 28 日刊 新評論 A5 判 184 頁)

伊藤 朋葉

1.はじめに グローバル化や情報化等の変化が加速度的とな り、今の子どもたちが大人になるころには、社会 構造や生活が著しく変化していることが予想され ている。文部科学省『教育課程企画特別部会論点 整理』において、「これからの子供たちには、社 会の加速度的な変化の中でも、社会的・職業的に 自立した人間として、伝統や文化に立脚し、高い 志と意欲を持って、蓄積された知識を礎としなが ら、膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、 自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働 しながら新たな価値を生み出していくことが求め られる。」と記されている。子どもたちには、自 分の思いや考えをもち、友達との関係の中で思い や考えを深め、そしてそれを的確に表現していく 力が重要になってくる。 その表現方法の一つである「書くこと」を苦手 とする子どもが多い。平成 28 年度全国学力・学習 状況調査では、400 字詰めの原稿用紙 2~3 枚に感 想文や説明文を書くことは、約 60%の子どもが難 しいまたはどちらかといえば難しいと答えてい る。また、自分の考えを他の人に説明したり、文 章に書いたりすることは、半数の子どもが難しい またはどちらかといえば難しいと答えており、自 分の思いや考えなどを書いて表現することに課題 があることが分かる。 では、「書く」ことを通して、子どもたちの思 いや考えを高め、それを表現することのよさや楽 しさを子どもたち自身が実感できるようにするに はどのようにしたらよいのか。本書には、これか らの授業において、子どもたちに書く力を付けさ せるために取り入れるべき効果的な示唆が多く示 されている。 2.本書の概要と構成 ライティング・ワークショップとは、「米国に おいて 1980 年代から普及し始めた『書く』ことの きわめて効果的な教え方・学び方である」(p.1) と、著者のラルフ・フレッチャー&ジョアン・ポ ータルピは述べている。 本書の構成は、以下の通りである。 第一章 ライティング・ワークショップ 第二章 授業時間と教室のレイアウト 第三章 短期の目標 第四章 ワークショップ開始 第五章 書き手とのカンファランス 第六章 書くサイクル 第七章 ライティング・ワークショップのなか での本の使い方 第八章 校正と言語事項のスキルの学習 第九章 評価と評定 第十章 予想される問題とその解決法 第十一章 年間を通しての展望 ライティング・ワークショップにおける授業の 流れは、45 分間を 3 つの活動に分けている。 ①「ミニ・レッスン」(最初の 5~10 分)では、 子どもたちの現状を鑑みて、子どもたちに今何を 教えるべきかを判断して、情報、スキル、効果的 な書き方を教える。 ②書く時間とカンファランス(30 分間)では、 子どもたち一人ひとりが、自由に、書きたいもの を書きたいように書く。この時間では、子どもた ちの必要に応じて、教師によるカンファランスや 子どもたち同士のピア・カンファランスも行われ る。 ③共有の時間(最後の 5~10 分)では、書いた ものをみんなに発表し、それについての意見交換 をしながら、振り返り、次へとつなげる。 このように授業は、全体→個別→全体という流 れになっており、書く時間がしっかり保障されて いる。子どもたちそれぞれが、自分たちの書きた いものを自由に書くことができることが、子ども

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横浜国大国語教育研究 No.42 (2017) - 56 - たちの「書く」ことへの意欲付けに大きく関わり、 そして、自分から書くことを楽しむ「書き手」へ と成長させることができるのである。 本書の中で、ラルフ・フレッチャー&ジョアン ・ポータルピは「書く」ことが好きになるために どうしたらよいかについて、次のように述べてい る。 こどもたちが書く時間を好きになる第一歩 は、定期的に書く授業が確保されて、子ども たちが書きたい題材を自ら選んでそれに取り 組み、そして教師が子どもたちの書いている ものに対して、心からの興味や関心をもって 接することから始まります。(pp.38-39) 「好きこそものの上手なれ」ということわざが あるように、子どもたちには、まず「書く」こと が楽しい、好きだと思ってもらえるような指導が、 このライティング・ワークショップを取り入れる ことで可能になるのである。 3.本書の意義と課題 このように本書では、子どもたちの思いや考え を大切にしながら活動を展開し、各段階や時間に おいて子どもたちの状況を見極め、的確な指導を おこなっていくことで、子どもたちが主体的に「書 くこと」に取り組むことができるようになってい る。 しかし、今後ライティング・ワークショップを 効果的に取り入れていくにあたっての課題もあ る。年間を通してのカリキュラムをどう編成する かである。子どもに書く内容等の自由が保障され ているだけに、文種や内容が偏ることがないよう にすることが求められる。 また、好きだけどただ書いて終わりだったり、 自由に書くといっても書くことが見つからなかっ たりする子どもへの対応も必要になる。教師のき め細やかな指導は言うまでもないが、ライティン グ・ワークショップでは、教師や友達とのカンフ ァランスも大きな意味を占める。カンファランス とは、教師や友達に相談して助言をもらったり、 学び合ったりすることである。「書く」ことに意 欲的に取り組んでいる子どもたちは、あえて相談 の時間やグループ活動の時間を設けなくても、書 く時間の中で自分から進んでカンファランスを行 うといい、納得させられる。 欧米では、主流になりつつあるライティング・ ワークショップが、日本では「作家の時間」と名 付けて、実践が行われ効果が実証されている。主 体的・協働的な学習、深い学びが問われている今、 その点についても本書には学ぶべきところがたく さんある。子どもたちが受け身で学ぶだけではな く、自ら学んでいく力を付けていくために、そし て自分の思いや考えを表現していく力を確実に付 けていくために、ぜひこの本を一読し、これから の指導や授業改善に生かしてほしいと考える。 (横浜国立大学大学院 教育学研究科)

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