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系統農協の農村管理体制への発展(下の1) : 1970年代の日本の農業問題(4)

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系統農協の農村管理体制への発展(下の1)

―1970年代の日本の農業問題(4)―

日 次 l 序説 農協の理論的解明の課題 Il 農村 の変貌 と農協組抜 目 農村 経済の変化 と農協運営 (1)肥 大 した事業の停滞局面 (2) 農協事業の停滞局面 (3) 金 融事業依存の経営構造 (4)農協の財務不均衡の構造 (5)農協信用事業 と系統金融 (以上,前号掲載) (6)農協経済事業 と連合会 (7)系統農協 における資本形成 (以上,本号掲載) lV 流通機構 としての系統農協 V 農村 管理体制への発展 以上

Ⅰ 農協経済の変化 と農協運営

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)

農協経済事業 と連合会 農村経済の変化 と農協経済事業

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年代 の初 期 に完成 した,いわゆる 「農協整備促進体制」の もとで,農協経済事業は,農家の農協 に対す る委 託の形式 を とっている。つ ま り,農協経済事業 は 組合員農家 の農産物販売 と農家用品購買の委託代 行の関係 にある。食管法 にもとづ く米の販売があ る意味でその典型である。 この法制では政府 によ る米の集荷 はあるが,農協の米販売 は存在 しない。 政府 は全農 を通 じて農家の米を集荷す るのであ る が,全農,県経済連,農協は政府 による米集荷の 代理業務機関にす ぎない。言いかえると,系統農 協の

3

段階の内部では,米の売買は存在 しない。 米以外の農産物,例 えば青果物や畜産物 のばあ

い,系統農協各3段階は農家の販売 を委託 され, 販売業務を代行す る形式を とる。 したがって,農 家 と農協の関係,農協 と県経済連 の関係,県経済 連 と全農の関係 は,それぞれが一つの販売業務の 一部分を担当す るにす ぎない形式 となっている。 しか し,現実 には農家の販売は農協の側 において は,農協の仕入れ,集荷であ り,その本質 は農家 と農協 とい う二つの取引主体のあいだの売買関係 であ る。農協 と県経済連,県経済連 と全農のそれ ぞれの関係 も,事実上,売買関係である。したがっ て,農協経済事業を考察す るはあい,売買関係 と い う現実 に立脚 して,農家,農協,県経済連 およ び全農の四者の取引主体の事情 に注意 しな くては ならない。

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年代後半期か ら

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年代前半期にいた る経済の高度成長は,その本質 は巨大独占の支配 す る重化学工業 の高度成長であ り,農業 との関係 か らみ ると,重化学工業の肢行的発展であった。 工農業問の不均等発展 はその極限 まで進み, 国民 経済の奇形性 は否定 しえない現実 となった

。1

9

7

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年代 の農協経済事業を考察す るとき, この基本的 事実を看過す ることはで きない。 なぜ ならば,坐 産者農家 に とって割安 であ るが消費者労働者 に とって割高 とい う農産物価格問題,農家購入の工 業製品の独占価格問題,全農を頂点 とす る系統農 協の企業的発展 といった諸現象のすべてが,重化 学工業 の巨大化 と鼓行的成長を意味す る経済 の高 度成長 と無関係でないか らであ る。 (2) 工業 と農業,労働者 と農民の問の所得格差。 工農業部門間の労働生産性の格差 を反映 して,両 部門間の所得格差が拡大 し,労働者賃金 と農家の 農業所得 との格差が拡大 した。例 えば,年間の賃 金所得

3

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万 円 (月給

2

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万円)の労働者 に匹敵す る 農民 は,米作の場合,経営規模

3ha

以上

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キ ロ

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1.7万円米価,10

a

当 り収量600キ ロ,所得率60%) の ものであ り,米作農家数の5%にも満たない。 すなわち,大部分 の農家の農業所得 は都市労働者 の平均賃金水準 に及ばない。

(

3

)

農家経営の破産 と一般的な兼業化.下層農 家か らはじまった農業経営収支の赤字 と破産の傾 向は,漸次中層農家 に波及 し,兼業化を促進 した。 1970年代を通 じて兼業農家が農家の支配的部分を しめるに至 った。これを農家経済の面か らみ ると, 農家所得 に しめ る農外 の兼業所得 の割合 が向上 し,いまや支配的 な部分を しめるに至 り,兼業所 得 を得 ることによって,農家所得 は都市賃金労働 者世帯の所得 に接近 し均衡す るようになったので ある。 これを言 えかえると,工農業間の所得格差が拡 大す るにつれて, 農家の兼業化が促進 され,農家 所得 に しめる兼業所得の割合が高 くなったのであ る。 こうした兼業化の過程の基礎 をな したのが, 下層農家か らはじまって中層,上層農家に波及 し た農家生活様式 と生活水準 の都市化 の傾 向であ る。 これは農産物価格問題が新局面を迎 えた こと を意味す る。す なわち,郡市 と農村の生活水準の 懸隔,労働者 と農民の労働力価値の懸隔を前提 と した農産物価格の低水準 とい う局面が変化 して, 農産物価格 は労働者 と農民の間の労働力価値の平 準化傾 向を所与 の条件 とす る局面 を迎 えたのであ る。 (4)農業従事者 の高齢化。1970年代の10年間を つ うじて,農業従事者の年齢構成が大 きく変化 し た。「農業基本調査」結果 によると, 自家農業だけ に従事す る者 は1970年283万人か ら1980年207万人

-

,27%も減少 した。その うち30歳以下の労働, 生殖 の世代の減少がいち じるしく,農業専業従事 者 に しめる割合は18%か ら13%に低下 した。他方 65歳以上が29%か ら38%に増加 した。 この傾向は 1980年 に専業農家57万戸 (都府県)の うち男子生 産年齢人 口のいない農家が19万戸に達 した ことに もみ られ る。 こ うした高齢化専業農家の増加は,農業生産, 流通主体の変化 を意味す る。各種の生産組織や作 業依託の増加,各種 の省力栽培技術の普及 は,そ れぞれ技術の進歩を意味す るのであるが,反面, 高齢化専業農家 による技術選択の結果で もある。 流通面では農家の参加による共販活動が後退 し, 農協 によ争集荷事業が前進す るのも,高齢化 と密 接 な関係があ る。例 えば,農協 による農産物集荷 地点が農家庭先か ら圃場に移 行 し,選別,規格化, 包装,出荷の作業のすべてが農協集出荷施設 に全 面的 に委託 され る傾 向も高齢化 に伴 なって促進 さ れた とみ るべ きであろ う。 生産資材購入において農協 の戸別配送 に依存す る傾 向は,一面では農協の事業推進,売込み競争 の結果であ るが,反面では農家 の高齢化 に伴な う 購買労働の省略 の結果でもあ る。総 じて農家の農 業専従者の高齢化 に伴 なって,共同販売,共同購 入の活動 が後退 し,農協の農産物集荷事業,農家 用品の売込事業が前面 に出て きた と言 うことがで きる。 (5) 政府の農産物流通,価 格政策 の展開。農業 近代化政策の一環 として,政府 の農産物流通,価 格政策の対象品 目が増加 し,農業生産額 の70%に 及 んだ とされ る。この政策対象品 目は18品員のうち, 対象 として指定 され るか,本格的に政策が展開 さ れた ものが,1960年代に10品 目,1970年代 に5品 日に及 んでいる。 この流通,価 格政策 は,多 くの 場合,農協を指定集荷団体 ない し生産者団体 とし て指定 し,各種の手数料,価 格差補給金,基金積 立て補助金な どの支払いを行 なっている。 政府の流通,価格政策の指定 団体 と化 した こと による,農協の経済事業の変化 は重要である。第

1

に,農協の農産物集荷流通 における占有率を高 め,多 くの品 目分野において農協 は独占的地位を 維持す るようになった。ちなみ に鶏卵の一部,疏 薬の一部において,一般業者 が政府の指定団体 と なっているが, これは例外的現象をなす にす ぎな い。第2に,農産物流通にお け る農協の独占的地 位 は,対抗業者 との関係だけで な く,農協の事業 運営その ものに影響をあたえている。すでに指摘 した よ うに,農家の農産物販売 が農協に よる集出 荷事業 に転化す る傾向が存在 している。 この傾向 は政府の流通,価格政策の影響下で進み,農協が 連合会の在村の集荷機構 と化 し,完結 した出荷販 売団体ではな く,出荷販売の一 部の扱能 を遂行す るにす ぎない もの としている。 (6)農業生産構成の変化。1970年代の10年間に 農業総生産額 は1970年 の4兆5507億か ら80年 の10

(3)

兆1962倍に増加す るとともに,その生産構成がいち じるしく変化 した (農水省統計情報部,農業総産 出額)。す なわち,総産出額 の内訳でみ ると,耕種 農業 の比重 は75%か ら68%に低下 し,反面,畜産 は22%か ら30%に上昇 した。耕種農業の うち青果 物 は24%か ら35%に上昇 した。つ ま り,本来 自給 部分をふ くむ米作の比重 の低下,商品化率の高い 青 果 物,畜 産 物 の 比 重 の 上 昇 で あ り, と く に青果物 と畜産物を合計す ると,その産 出額割合 は46%か ら55%に上昇 し,総産 出額の過半数を し め るにいた ったのである。 生産構成 の変化の農村流通お よび農協経済事業 にあたえる影響はす こぶ る大 きい。 まず,米産 出 額 の絶対的 減少 は1970年 か らは じまった生産制 限,転作政策 の直接の結果である。従来,食管法 のもとで独 占的 な米集荷団体 としての地位 にあ り その信用,購買,販売お よび倉庫の諸事業が米集 荷事業 に依 存 した農協 が こ うむ った影響 は大 き い。そ してその反面,青果物,畜産物 な どの生鮮 食品農産物 の比重が高 まった ことは, これが輸入 農産物 の影響を直掛 こうける分野であることとあ いまって,農村流通および農協経済事業 は歴史上 の新 しい局面 を迎 えた と言 える。 新 しい局面の特徴は,農村流通および農協経済 事業の中心課題が,流通費用の節約か ら価格水準 に移 った ことである。第

1

に,農業の産出,商品 化の過半数 を しめ るにいた った青果物,畜産物 の 分野は,果実,畜肉,乳製品など,輸入品の比重 が高 まった分野であ り,現状の外貨 レー トお よび 輸入政策の もとでは,農業が直接に輸入品価格の 圧迫を うける関係にある。 第2に, この分野はまた牛乳,畜肉,鶏卵,食 鶏,果汁 な ど,国内の巨大お よび中少規模の加工 資本による,独占的あるいは系列的な集荷活動が 活発な分野であ る。 これ らの加工原料農産物 は加 工資本が,各産地の生産者団体 と集荷,買付契約 を結 んで,取引を個別に支配す る傾向が強 く,連 合会の介入が難 しい。 この取引の核心 は専 ら価格 問題であ り,流通費用の節約ではない。 第3に,青果物 とくに疏菜 は水稲の生産制限, 転作促進 の影響 を うけて作付面積が増加 し,総 じ て供給 「過剰」の傾向があると指摘 されてい る。 青果物 は農協や任意出荷組合 な どの産地出荷団体 が,卸売市場に向けて出荷販売を行 な うのが,主 要 な流通経路である。価格形成は卸市場 における セ リ取引によるが,出荷量 占有率が野菜,果実 と もに52%をしめ る中央卸売市場の価格が地方卸売 市場にたい して強い影響力をもっている。 市場流通の中心 にある中央卸売市場 (90市場) の価格形成がセ リ取引であ り,鮮度 を至上 とす る 取引であるため,価格形成 において大量出荷 の優 位 を発揮す ることは困難である。政府 は1966年7 月野菜生産出荷安定法を制定 し,価格低落 に対す る保証措置 を講 じ,現在 きゃべつ119, きゅ うり 196,とまと127,は くさい103など計1113の指定産 地 を指定 している。 しか し, この行政措置 は市場 出荷の平準化に貢献す ることはあっても,価格の 安定,価格水準の高位保証 の効果 はない。 (7) 新たな農産物流通問題。かつて1930年代の 初頭に農村協同組合が流通改善を提起 して登場 し た とき,その流通問題は地方的な局地市場 を支配 した買 占め資本の投機利潤の解消を意味す るもの であった。それ と比べて今 日の流通問題 は,消費 都市か ら遠隔地 に産地が拡散 し,輸送距離がいち じるしく延長 した ことに由来す る。水稲の転作政 策 によって疏菜産地が よ り一層遠隔地に拡散 して 分布す るに至 った こと,牛乳,畜 肉,果実 の生産 「過剰」 に伴ない,東京,大阪な どの大消費都市 に向けての競争 出荷が激化 した ことなどの要田が 加わ って,小売価格にしめる流通費用比率の上昇, 高率が流通問題 の核心 となった。1980年11月の農 水省 「青果物流通段階別価格形成追跡調査報告」 によると,小売価格 にしめ る流通費用比率はダイ コ ン81%, /、ク サ イ59%, キ ャベ ツ90%, タ マ ネ ギ50%, ミカン56%, リンゴ60% とい う異常 な状 況 にある。 青果物,畜産物にみ る輸送距離 の延長 は, 日本 社会における消費地点 と産地 との結合の不合理 な 構造の表現である。遠距離出荷の要請 にこた えて, 農村産地は出荷規模 (ロッ トおよび期間)の拡大, 生産品 目の単一化の傾向を強めてい る。農協 の「営 農団地」構想はその所産である。 また,出荷距離 の延長 に伴 なって,市場 における出荷競争 を回避 す るために,大消費地の入荷地点 における上場調 節の機能が必要 とな り,産地県経済連の郡市駐在 員制度が一般化 した。連合会の役割 は主 として競

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-3-令,安値回避 の上場調節 に向け られている。 (8) 農家用工業製品の流通。重化学工業 を中心 とした高度成長 は,農家 の全般的兼業化 を促進 し, 一万 で は省力的 な生産 資材 の農 村 へ の普及 を進 め,他方では郡市勤労者世帯 に準 じた生活様式の 農村への波及,生活用品の普及 の新 しい局面 をつ くりだ した。 「農家経済調査」によると,農家 の平 均1戸当 りの購入額 は,1970年 の170万 円か ら80年 の541万へ3.2倍 にふ えた。その うち生産資材 は3 倍強,生活資材 は3.2倍の増加であ った。兼業化 に よる賃金所得 の増,商品化率の向上 による農産物 販売収 入の増 に よって,農家の現金取得がふ え, 農村購買市場 を拡大 した。農村購買市場,工業製 品の農村流通 に新 しい局面が生 まれた ことは明 ら かであ る。 この新局面 には

2

つの重要 な特徴があ る。 その 第

1

は農家 の購入支出の主要 な部分 を,家計費支 出,つ ま り生活消費財支 出が占めてい ることであ る。「農家経済調査」によると,農家購入支 出の う ちの家計費支 出は,1970年72%,1980年73%であ り,農業経営費支 出,つ ま り生産財支 出はそれぞ れ28%,270/.であ って,絶対坊 は48万 円か ら147万 円へ

3

倍増 となったが,支 出割合 は低下 した。農 村経済 はよ り一層,消費経済化 した。 これ は農家 労働力の商品化,賃労働化 を反映 した ものであ る。 農協購 買事業 は この変化 を注 目せ ざるを得 ない。 特徴の第

2

は,農家購 入の工業 品生産 の集中が 進み,独占的支配 が顕著 になった ことであ る。品 目別の生産 もしくは出荷額 の集中度 は,1980年 に つ ぎの とお りであ る。配合飼料生産 は全農39.7%, 以下 の10社39%,合計78.8%。化学肥料出荷量 の 上位5社集中度 は高度化成50.6%,硫安64.1%, 尿素81%,過燐酸石灰47.3%,熔成燐肥81.3%。 農薬 の出荷額 の上位5社集中度 は59%, うち トッ プの ク ミアイ化学 が17.4%。農業機械生産 の上位 4社集中度 は トラクター78.4%,耕 うん機49.4%, 田植機82%, コンバイン97%, バ イソダー96%。 以上 の集中状況 のなかで注 目され るのは,配合 飼料生産 で全農が第 1位 を占め,40%弱の占有率 を誇 る独 占の地位 を得ている ことであ る。 しか も 農家購入の生産資材の うち,戦前 と戦後 にわた っ て首位 を しめていた化学肥料 に代 り,飼料が首位 に立 った ことであ る。 その飼料 と肥料,農機具, 農薬 の購 入支 出 は1980年 に,農 家 の購 入支 出 の 14.6%を しめ,農業経営費支 出の53.8%を しめた。 つ ま り農家 の生産資材購 入は, その生産 を4- 5 社が支配的地位 を しめ るとい う独 占体 との取引で あ る。 この ことは農協購 買事業 が直面す るのが独 占価格問題であ り,独 占支配 に如何に対す るかの 問題であ ることを しめ している。 農協の市場 占有 と農家経済。農協経済事業 は政 府の農産物流通,価格政策 の影響 を受 け, また農 家用工業製品生産 の独 占体 の影響 を うけて展開 し ている。 これ は主観的願望 を超 えた客観的現実で ある。農協 の経済事業 は466万戸農家の経済的利害 に立脚す るか,あ るいは4528組合の個別 の農協 の 経営的利害 に立脚す るかのいずれか, もしくは双 方 の利害 を勘案す るか して営 なまれ る。 これが一 つの側面 であ る。 もう一 つの側面 は,農協 が継続 的 に経済事業 を営 なむか ぎ り,それ は社会的 な流 通機構 として機能す る必要 があ るとい うことであ る。農協 の外部経済の動向に照応 して,流通の近 代化,大量流通 の機能 を遂行す る必要 があ る。 こ の よ うな戟 能 を はたす こ とに よって,農協 は流 過 -商業企業 として存続す ることが可能である。 農協の経済事業 が政府 の農産物流通,価格政策 や工業独 占体 の流通戦略 の影響 を うけるのは,主 として社会的 な流通機構 の側面 においてであ る。 その よ うな影響 の一つの帰結 を しめすのが,農村 流通 における農協 の市場 占有率の高水準である。 1979年,1980年 の品 目別 にみた占有率 はつ ぎの と お りであ る。 米95%,野菜52.7%,果実49%, 肉牛55.2%, 肉豚35.6%,生乳57.1%,鶏卵20.7%。 飼料48.3%,肥料92.3%,農機具47.2%,農薬

7

2

.

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%。

農産物流通 については,大規模飼育の普及 した 採卵養鶏や養豚が一部 に単独出荷能力を有す る生 産者がい るために,農協 の占有率 は低 いが,総 じ て農協 の占有率は高い。 また農業生産資材 では肥 料,農薬 の市場 占有率が高 く,飼料,農機 の占有 率 はやや低 い。 しか し,飼料 は全農建値 が市場規 制 力を もっていることを考慮す ると,市場動向に 対す る影響力 はその占有率の しめす以上 の ものが あ る。農機 も全農出資の農機 メーカーを通 じて,

(5)

市場動 向に影 響力 を行使 し うることを考慮す る と,影響力 は占有率の数値以上である。総 じて農 協経済事業 の市場 占有率は高 く,その占有率を基 礎 に して, 農村市場 に規制的 な影響力を保持 して いると言 うことがで きる。その影響力は農村市場 で農協 と競争 関係にある他の業者が,一般に零細 企業であるとい う事情 によって,よ り強力であ る。 この市場占有 率 と経済的影響力については,い く つかの考察 を加 える必要がある。 第

1

に農協 は総体 として農村市場における占有 率が高 く,農村の奉 も有力な商企業であるo この 市場的地位 は政府の農産物流通,価格政策の対象 が拡大 され,農協が政策機構 としての地位を与 え られた ことと関係がある。 しか し,農協が農家の 単 なる出荷 団体 としてばか りでな く,農村市場 に おける流通椀横 として一定の能力をもっていた こ とによって,政策機構 の位置を与 えられた理 由で もある。 この点で農協 と政府 は相輔相成の関係 に あると言 うべ きであろ う。 また農協 の農村市場 における地位 は,全農 を頂 点 とす る連合会体制 と不可分である。全農 は飼料, 肥料,農薬流通の事実上の独 占体であ り, 自主流 通米取引において官許の地位を待てお り,130社 に 及ぶ協 同会社,関連会社に対す る持ち株団体であ る。 こうした経済上,行政上の地位,持ち株支配 力を有す る全農の存在があってはじめて,農協 の 農村市場における地位が出現 した と言 うべ きであ る。 つ ぎに農協 の農村市場 における地位 は,農家の 兼業化,高齢化 による農協依存の傾向 と関係があ る。兼業化,高齢化 に伴 なって,農家の技術上, 質金上,流通上の農協依存が強 ま り,農家 は有志 結合による独 自な流通上の活動 は困難である。農 協が農家の依存傾向に対応 して,営農上の機能の 一部,例 えば農業機械,施設 などの固定資本投下 を代替 して,営農過程に進出す る例 もけっして少 な くない。 こうした農協の営農過程への進 出が, 農協の市場流通上の地位 の強化の基礎 にあ る。 第

2

に考察すべ きことは,市場 占有率の高位 な ど,農協 の農村市場 における高い地位 が形成 され るにつれて,農協経済事業の戦略が変化 した こと である。す なわち,戦略上の 目標が中間費用の節 約 による有利 な価格の実現か ら,販売,購入の価 格水準の実現へ転換 した とされ ることである。購 買事業 は購入価格の抑制 を,販売価格 は農産物 の 生産費,所得の実現を戦略 目標 とす ると言われ るU この戦略 目標の転換は,農家が農産物 にふ くまれ る労働価値の実現を 目ざす とい う価格問題 と照応 す るかのようである。 しか しこれ は事物 の一側面 であって,農産物 については政府の政策価値 の浸 逮,購入品については独占価格の実現 と表裏す る 側面のあることも看過で きない。 市場 占有率の高位 もしくは農村市場 における高 い地位 に関 して,吟味 し考察すべ き問題がある。 その第

1

は高い占有率の現実の意味であ る。 この 高 占有率は連合会 において実際上の意味をもつ も のであ る。例 えは肥料流通の92%の占有率は,逮 合会 が肥料独 占に対す る ときに意 味 を もつ ので あって,その

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5

2

8

組合の一つにす ぎない個別農協 は零細 な一片である。高 占有率が連合会 において 意味があるとすれば,その有意性 は政府や産業独 占に対 して発揮 されるだけでな く,農協 に向けて も発揮 され うるとみ るべ きであろ う。 そ こか ら考察すべ き第

2

の問題が生ず る。連合 会 と農協の関係 には,二つの側面がある。連合会 の高い市場 占有率は単位農協事業量の総和 として 形成 され その総和が経済上の実態 となるのほ, 農協事業 の連合会利用-系統利用 を通 じてであ る。系統利用率の高 さが連合会の市場 占有率の高 さを決定する。 これが一つの側面である。 連合会 において実態 をなす高い占有率 は,政府 や産業独占に対 してその意味を発揮す るが,農協 に向けても意味を もつ。 これが も う一つの側面で ある。連合会は農協に対 しても高い市場 占有率 に 由来す る力量 となる。 そ こでの問題 は高い市場 占 有率が もた らす経済性を,農協 に対 して移譲す る か,それ とも一種の独 占体 として農協 に対 し,そ こか ら独占体 としての経済性を取得す るかであろ う。 この問題 と系統農協

3

段階における損益の不均 衡 とは関係があ ると思 う。す なわ ち,連合会経済 事業が剰余を生み,農協 の購買販売両事業が欠損 を生ず るのは,連合会 と農協 との問の労働生産性 の差に由来す る面 もあるが,取引価格の決定に由 来す る面 も否定で きないであろ う。例 えは連合会 は高い占有率 とい う物質的基礎 によって,その経

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営 コス トを農協 との取引価格に転嫁す ることがで きる。 しか し, その ような物質的基礎 を欠 く一段 下級の連合会や農協 は, コス トを価格に転嫁す る 自由をもたない。 とくに農協 は業者末端価格 との競争条件のため に,競争価格を超 えた農家にとって不利な価格を 決定す ることは許 されない。この点に農協の購買, 販売事業の部門別損益結果が赤字 となる理 由があ ると思 う。 こ うした事態 は農協や県連合会の上級 連合会 に対す る利用率低下の潜在的要因をなす。 その顕在化,つま り農協や県連合会が系統不利用, 独 自な購入,販売活動に向 うならは,結局,上級 連合会の高占有率を訂正 し,高占有率の基礎をは り崩 しかねない。 農協経済事業 と連合会 (1) 農産物流通。すで に考察 した よ うに,農協経済事業 は農協の企業経 営上 の利害 もし くは組合員農家 の利害 に立脚 し て,農産物販売,農家用品の購入事業を営 なむの であるが,その反面では社会的流通機構 としての 機能を問われ るとい う二重性をもつ。 また,農家 と農協,農協 と連合会の関係で言 うと,例 えは農 協の販売は連合会 の集荷であ り,連合会の購買品 供給 は農協の仕入れである。それ は単純 な3段階 一貫の販売事業,購買事業ではあ りえない。 この 観点で実情 をみ る。 農水省調査 によると.

1

9

8

0

年度の農協販売事業 は 総 額

5

4

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億 円,内 訳 は 米

1

8

9

8

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億 円

(

3

4.

7

%)

青果物

1

3

8

4

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億円

(

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5.

3

%)

,畜産物

1

5

1

5

1

億 円

(

2

7.

7

%)

である。販売事業量の う ち米の割合が

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0

%

にみたず,代 って青果物,畜産 物 の割合 が合計

5

3

%

と過半数 を しめ るにいた っ た。 この ことは食管制度 を背骨 として

,3

段階を 貫通 した米穀取扱体制 を うち立て,それを基礎に して信用,購買事業を営 なんで きた系統農協制度 が変化 しは じめた ことを示唆す る。 米は制度上,その全量が全農に集積 され る系統 利用関係にある。 したが って農協販売事業 にしめ る米の割合が高ければ,事実全体の系統利用率が 高 くなる。逆 は逆 であ る

1

9

7

0

年代を通 して農協販 売事業 は県連 合会利 用率

9

1

%

の水準 を保 って き た。 しか し

,1

9

8

0

年 に

8

9

%

に低下 した。それは青 果物 の系統利用率 は

9

3

%

の利用率 を保 ったが,畜 産物が生乳

8

5

%

,肉牛

7

5

%

,鶏卵

8

6

%

であ って, その低い系統利用率の影響 を受けたためである。 県経 済連 の

1

9

8

0

年 度 販売 事業量 は

4

9

9

3

7

億 円,内訳 は米

2

4

2

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0

億円

(

4

8.

6

%)

,青果物

1

0

6

6

9

施円

(

2

1.

4

%)

,畜産物

1

5

3

3

7

億円

(

3

0.

7

%)

であった。 その全農利用率 は

1

9

7

0

年度の

7

6

%

か ら

6

3

%

に低下 した。経済連 の事業量の うち,全農利 用率の高い米が

4

9

%

を占めるにもかかわ らず,紘 体 として全農利用率が低いのは,青果物,畜産物 の全農利用率がいち じるしく低率だか らである。 ちなみ に野菜

5

0

%

,果実

4

9

%

,生乳

2

5

%

,肉牛

3

5

%

, 鶏卵

5

7

%

とい う状態である。 総 じて農協の県連利用率が高 く,経済連の全農 利用率が低 く,内訳でみて青果物,畜産物の過半 数が,系統利用による事業量集積において経済連 止 ま りである。 これは相当数の経済連が農産物販 売において,独 自な販売主体 として活動 し,全農 の県段階集荷機構 となっていない こと,言いかえ ると米を除 く農産物販売 において,その事業量の 全農集積 に経済性を見出 していない ことを しめ し ている。 米取扱いを除 くと,県経済連 は産地出荷団体 と してある程度 まで自立 している。青果物や畜産物 の取扱いにおいて,品 目によって

2

5

%

ない し

5

0

%

の全農利用があることは,全農利用に経済性 を見 出す ことので きる余地 のあ る ことを しめ してい る。取扱量の規模,出荷時期などによって,全農 利用が相対的に有利 な条件のあ ることを物語 って いる。 しか し,経済連が このよ うな条件による選 択 を試み ることの意味は重要である。経済連が「整 促体制」の もとで求め られた,全農全利用,流通 上の集荷中継機能を脱 して, 自立的 な産地出荷団 体 として発 展す る傾 向を しめ してい るか らであ る,

1

9

7

0

年代 に現われた農協経済事業 と連合会の関 係の焦点の一つは,県経済連の問題である。つ ま り,農協の販売事業 に経済連 はいかに対す るのか, 経済連 は全農にいかに対す るのか とい う問題であ る。 この問題の生ず るきっかけは,第

1

に米作制 限 と転作奨軌 政府の全量買付けの回避 ない し緩 和 とい う内容を伴なった食管制度の改変であ る。 第

2

1

9

6

0

年代に完成 した 「整促体制」 とその背 骨 をなす系統全利用体制が

,1

9

7

0

年代における農

(7)

-6-業生産構成 の変化 (米作の後退,青果物,畜産物 の前進),輸 入増 に規定 された総体 としての農産物 の需給緩和,産地間競争 の激化 とい う状況の もと で,改変を迫 られた ことである。 食管制度 の事実上の改変 は, 自主流通米,超過 米, 自由米 の流通を生 じ,農協お よび経済連 の産 地出荷団体 としての活動 を期待す るものであ り, 「整促体制」下の中継機能か らの脱皮 を必至 とし た。 また,青果物,畜産物生産 の前進,主産地形 成を基礎 とした農協 は,輸入農産物の増加による 需給緩和の状況のもとで, きびしい産地間競争 に 立た された。その農協の経済連 に対す る要求 は, 教条的 な全農全利用のための中継機能ではな く, 強力 な市場 開拓,販売力であ り

,

「整促体制」か ら の脱皮であ った。 この状況の もとで,経済連 は

かなる機能 をはたすべ きか,その経済連 の新たな 機能 に呼応す る全農の新 しい機能 は何か

。1

9

7

0

年 代 を通 じて蓄積 され,提起 された問題 はこの よ う なものであ った。

1

9

7

0

年代 をつ うじて得 られた一つ の結論 が あ る。 この

1

0

年間,農村をゆるが した変事 は,食管 制度の事実上の改変であった。米作制限に象徴 さ れ る政府の米取扱方式の変更 は,食管制度 はもは や農協運営 が依拠 しうる唯一 の支柱ではな く, こ れに唯一の もの として依拠す る限 りは,政府買付 米の数量削減の影響を うけて,農協の前途 は 日を 追 って狭陰 なものとなる。他方,青果物,畜産物 な どの鮮度要求の高い農産物 は,本来,機敏 な販 売活動を要求 した。 これに加 えて,米作か らの転作 による野菜作 の 増加,果実,畜産物,畜産加工品の輸入増加は, 青果物,畜産物の需給を緩和 し,産地間競争 を激 化 させた。 このような生産構成 と市場条件の変化 の もとで,農協 にもとめ られた市場販売 の機能 は, す こぶ るきびしいものであった。農協 と経済連 は この分野でい くらかの前進を とげた。 その前進 に つれて経済連の全農利用率は低下 した。 これは経 済連の従来 の中継機能か らの脱皮,産地 出荷団体 としての発 展を しめす ものであった。 しか し,そ のよ うな経済連の発展は, 自由に して活発 な自立 的 な産地出荷団体 としてのものではなか った。 そ の発展は例 えは野菜法,牛乳不足払い法,畜安法 などにもとず く,行政上の指定団体 とい う地位 に 由来す る集荷力の強化の側面のあった ことも看過 で きない。 (2) 農業生産資材 と農家生活資材 の流通。農協 購 買事業 は歴史的に二つの要田によって規定 され た。第

1

は農家組合員の需要動向 と選択であ り, 第 2は全農を頂点 とす る連合会の供給であって, 主 として全農の供給力に規定 されて きた。つ ま り, 全農の農村市場 に向けての売 り込み事業であ った と言 って も過言ではない。

1

9

7

0

年代に農家の購入需要は大 きな変化を しめ した。家計費支 出,つ ま り生活資材購入が購 入需 要 の

7

3

%

を しめ,生産資材購入が

2

7

%

を しめ ると い う具合に,農村は消費市場 として膨張 した。生 産資材の分野では畜産の発展を反映 して飼料購入 が トップに立ち,省力機械化を反映 して農機購入 が

2

位 とな り,伝統的 な農協商品であった肥料が 3位 に低落す るとい う変化をしめ した。農村市場 の需要構造の変化 と比べて,農協購買事業の対応 は数歩 のお くれをしめ した。 このずれは農協購買 事業が全農供給力の影響下 にあ るために生 じたも のであ る。 すなわち

,1

9

8

0

年度の農協購買事業量 は総額

4

7

0

0

4

億 円, 内 訳 は 生 産 資 材

3

2

0

2

5

億 円

(

6

8.

1

%)

,生活資材

1

4

9

7

9

億円

(

3

1.

9

%)

であ る。事業量 は

1

9

7

0

年度 と比べて

3.

8

倍 にふえた。ま た,内訳構成は

1

9

7

0

年度の生産資材

7

3.

3

%

,生活 資材

2

6.

7

%

と比べて,生活資材事業量が

4.

5

倍 に増 加 したために,その構成比 は一段 と高 まった。 し か し,農家の購入支出にしめる家計費の比率

7

3

%

と比べていちじるしく低い。農家の支出構成比 と 農協の事業量構成比 とでは,生産 と生活の比率の 逆の関係にある。すなわち,農家支出が生活消費 的であ るのに対 して,農協購買事業 は生産資材に 重点を置いている。 その生産資材購買事業

3

2

0

2

5

億 円の内訳 は, 飼料

8

2

3

2

億円

(

2

5.

7

%)

,石油類

5

8

9

4

億円

(

1

8.

4

%)

, 肥料

4

5

4

6

億円

(

1

4.

3

%)

,農機

3

6

6

0

億円

(

l

l.

2

%)

, 農薬

2

7

2

7

億円

(

8.

5

%)

である

。1

9

7

0

年度実績 の内 訳,飼料

3

2.

6

0/.,石油類

7.

4

%

,肥料

1

8.

7

%

,農琉

1

4.

2

%

,農薬

8%

と比べ ると,飼料 と石油の取扱 比重が群をぬいて高 く,肥料 は往年 の比重 はもは や見 られない。飼料 と石油 は購 買事業の分野で全 農の取扱が急伸 している品 目であ る。

(8)

農協購買事業 と連合会の関係を,系統利用率を 指標 としてみ ると,い くつかの特徴がある。全農 調査 に よると総体 として系統利 用率 は向上 し, 1975年 の74%か ら1980年 の78.7%に達 した。その うち生産資材 は79.5%か ら83.5%-,生活資材 は 59.6%か ら66.7%へ上昇 した。 これは農協販売事 業 の系統利用率の低下傾 向 と対比 され る。 また, 販売事業のはあい,農協の経済連利用率は低下傾 向にあ るとはいえ,なお90%前後の水準にあ り, 県経済連の全農利用率 は63%の水準にあ り,米を 除 くと過半数の事業量が県経済連 の独 自販売にゆ だね られている。これ と比べて購買事業 のはあい, 農協の県経済連利用率 は上昇傾向をた どって79% 水準にあ り,県経済連 の全農利用率は低下傾向に あるとはいえ68%の水準 にあって,販売事業 と比 べて高 い水準 を しめ している。 とくに生産資材 は 1980年 に78.7%とい う高い全農利用率である。生 産資材 は県経 済連 において1978年 を底 に して以 降,事業量を伸 ば しなが ら全農利用率を高めてい る。 しか し, この ことは逆 に表現すべ きであろ う。 つ ま り,全農の競争力の強い品 目,例 えは飼料, 石油な どを,全農の供給 に依存 しなが ら,県経済 連が事業を拡大 したのである。 これは農協 も同傾 向であ って,全農,県経済連の供給に依存 しなが ら,農協が事業 を拡大 したのである。それにひき かえて,全農の競争力の弱い生活資材については, 農協 も県経済連 も系統利用率 は低 く,1980年度農 協66.7%,県経済連42.4%の水準 にとどま り,購 買事業量にしめる割合 も農協32%,県経済連29% に とどまっている。 この ことは総 じて農協,県経 済連の購買事業が生産資材 を重点 とした,全農の 供給事業の中継機構,末端小売機構の地位 にあっ て,供給事業 として運営 されていることを物語 っ ている。 この判断は全農の経済事業の実績の検討 によっ て も裏づけられ る。 まず販売事業 についてみる, 1980年度の全農の販売事業量3兆2747億円の うち 米が58%を しめ, その他が42%である。 これは全 農がいぜ ん として政府 の米集荷 の代理機構 であ り, また 自主流通米制度の実務機構であることを しめ している。県経済連 の米以外の販売事業量3 兆円の うち全農販売にゆだね られ るものが

1

.

4

兆, 45%であることは,米以外の農産物 の販売におけ る全農の機能が少 ないことを しめ している。他方, 全 農 の購 買事業量 は1980年 度 に2兆9320億 円で あ ったが,その うち生産資材91%,生活資料9%で あ った。この事業量構成が県経済連71%,農協68% と,それぞれの購買事業量 に しめる生産資材の割 合の高 さに影響をあたえてい る。 1970年代 をつ うじて,食管制度の事実上の改変, 「整促体制」か らの脱皮などの事情に よって,農協 経済事業 と連合会 の関係に,多 くの面で変化が生 じた。 その変化 は農協 の伝統的 な取扱品 目であっ た 「米 と肥料」 の位置が後退 した ことに現われ, 販売事業 においては青果物,畜産物 の取扱いが増 加 し,その増加につれて県経 済連の独立 した販売 機能が強化 された ことにみ る ことができる。 また 購買事業 においては生産資材 がいぜ んとして重 き を しめ るものの,農協 と県経済連で は生活資材の 取扱高が漸や く30%前後にた っし,生産資材では 飼料,石油類,農機,農薬 の比重が高ま り,主要 品 目の交替がみ られた。 これ が1970年代における 主 な変化 である。 しか し, この10年 間 に農 協 経済事業 と連合会 において,変 らざ る側面 の あ った ことも看過 で きない。販売事業 においては, その事業量 は農協 5兆4651億,県経済連4兆9973倍,全農3兆2747 億 であ った(1980年度)。つ ま り,農協販売事業量 の60%が連合会を経由 して全農 に集積 されたわけ であ る。同年の購買事業量 は全農2兆9320億,県 経済連3兆7357億、農協4兆6853億であった。つ ま り,農協事業量の うちの63%は県経済連経由で 全農か らの供給 に依存 した ものであ る。 これをま とめて言 うと、農村市場の取 引 に登場 した農産物, 農家用工業品のそれぞれ60%に,全農が関与 した ものである。このことは農村市場取引にたい して, 県経済連 と農協を経由する全 農 の影響力がなお強 力であること,全農を頂点 とす る系統3段階の関 係が強固な系列関係を保 ってい ることを物語 って いる。 農村市場取引における全農 の影響力の存在,全 農を頂点 とした系統3段階の強 固な系列関係の存 在 を基礎づけているものは, 第

1

には政府の農業 政策, とくに食管法をはじめ とす る農産物流通, 価格政策,肥料価格安定等臨時措置法,飼料需給

(9)

安定法な どによる農業生産資材流通,価格政策で ある。 これ らの立法お よび行政 は直接間接 に農協 と連合会 を指定団体 として,農牽物お よび農業生 産資材取引 の農協および連合会への集中を促進 し た。 第2は全農お よび県経済連による直接間接の, 農産物流通加工施設の取得,農業生産資材工業 に たいす る投資お よび取得である。例 えば,全農 は 1960年代か ら70年代にわた って,総額152億の投資 をお こない,147の関連会社,団体を設立 した。こ れには農産物加工,卸売,販売会社,飼料畜産資 材製造会社,原料等輸入関連会社および輸送会社 がふ くまれ てい る。全農に準 じて県経済連 も配合 飼料会社,産地食肉セ ンタ-,乳業会社,肥料会 社,エーコープ店舗会社 な どの協同会社 に投資, 設立 した。 こうした連合会による流通,加工,製造施設 の 取得 は,連合会 の農産物流通,農家用工業品流通 における占有率 を高め,流通における地位 を補強 した。 これ は連合会事業 の新分野であ り,1960年 代以降,連合会 が 「整促体制」 を脱皮 し,新たな 経営戟略 に移行 した ことを象徴す るものである。 す なわち,連合会全利用,事業量の連合会への集 積 による大量取引の有利性の実現 とい う 「整促」 原則が,専 ら流通分野に限定 された戦略であった とす るならば,新戦略 は流通上の占有率の向上を 補強す る,流通,加工,製造施設の積極的 な取得 に重点をお くものであ った。 全農を頂点 とす る連合会の新戦略 は,商業分野 か ら工業企業分野への進出を意味 した。 それは個 別農協が もはや代替 しえない分野への連合会の移 行である。連合会全利用,事業量の連合会への集 積 は,農協 の事業機能の量的延長線上に位置 した。 しか し連合会の流通,加工,製造施設の取得,経 営 は,すでに農協 の事業機能の量的延長 にはな く, 加工,製造 といった新 しい機能 の発生を意味 した。 また,肥料,飼料原料の輸入は,商業的 にも法制 的にも農協事業 の集積 とは異質の事業である。 新戦略 に もとづ く連合会の流通,加工,製造施 設 の取得 は,農協がその事業の集積によって対抗 した り代替 した りす ることので きない意味におい て,それ は農協経済事業 と連合会の関係の本質的 変更をもた らす。 また,それ らの施設が連合会の 全額出資, もし くは一般営利企業 との合弁 出資に ょる協同会社の企業形態を とった ことは,法制的 にも農協の関与 しうる範囲外に置かれた施設 であ る。 この ような性質の施設 と企業形態の出現 は, 1960年代 と1970年代における農協経済事業 と連合 会 の関係の変化 を しめす最大の象徴である。 (7) 系統農協 における資本形成 経済成長 と系統農協の企業的発展。1960-70年 代 の経済高成長 は,一方で農産物需要 を拡大 し, その一部を輸入によって解決 し,他方では農業経 営の破産を深刻 なもの とし,農家の兼業化を促進 した。零細地片 の土地所有 はすでに,農家労働力 の商品を妨害す るものでない状況が出現 し,農外 賃労働所得によって労働力の再生産が保証 され る 条件のもとで農業を営 なむ構造が形成 された。 農村経済のプ ロレタ リア化が進行 し,現金収支 か らみ る限 りで は,農村経済 は消費経済化 した。 こうした農村経済は農協 の信用,購買,販売 といっ た主要事業の動 向に影響をあたえた。1970年代の 10年間を とってみ る 事業量の肥大化がつ烏 ,農協事業 はその前半期に き,後半期 に停滞局面 を迎 えた。 これは後半期に国民経済の全般 にわた って 停滞をもた らした経済恐慌の現象の一部をなす も のである。 この期間に農協 と連合会 は各種分野の市場競争 をつ うじて,企業的発展を とげた。企業的発展を 促進 したモメソ トとしては,信用事業におけ る貯 金吸収競争,購買事業における生産資材売 り込み 競争,販売事業 における集出荷の産地間競争,共 済事業 における契約獲得競争 などを指摘で きる。 また

,

「農協合併助成法」 による合併 と大型化 が, 企業的発展を促進 した ことを指摘 しなければなら ない。 1972年 の全購連,全販達 の合併 による全農 の成 立 は,連合会の企業的発展の最大 の象徴 とも言 う べ き出来事であ った。本来,市場分野を異に した 購販両連合会の合併 は,購販両事業 の連携,協調 では説明がつかず,合併 によって生みだされ る資 本の力の追求に よって説明 しうるものであ る。合 併が生みだす資本力 とは何か。 例 えば 「販売面ではとくに大都市消費市場 に対 す る系統経済路線の拡大」であ り

,

「系統 内に付加

(10)

-9-価値を確保す るための加工対策 に資本,技術,組 織 の総合力」 を発揮す ることである。前者 はさら に 「青果,畜産の販売事業 と消費生活物資の購買 事業 とを結合 した大消費対策の具体化」および「購 販両事業の物資を総合的に対象 とした物流事業の 具体化」 と説 明され る。つ ま り,販売事業の卸売 段階か ら小売段階への進出であ り,販売事業の加 工原料集荷事業化,加工農畜産物の小売段階-の 進 出である。 この方向の必然性を しめすのは,皮 協 における都市的農協,都市近郊農協の大量発生, 兼業化 に伴な う農村市場の消費地市場化であ る。 具体的事業 として指摘すれば,牛乳直販,米の都 市所在地 での大規模精 白加工 と卸売 な どで あ る (『農協年鑑』1973年版第 8章参照)0 農協 と連合会の企業的発展を しめす指標 は,一 つ は固定資産 の膨張 であ る。農協 の固定資産 は 1960年度末に全国合計768億,1970年度末5806億, 1980年度末 2兆5343億二と増加 し,20年間に33倍に たっした。 もう一つの指標は雇用職員労働者の増 加であ る。農協職員数 は1970年末24万7379人 (1 農協平均41人),か ら79年末28万2825人(1農協平 均63人)に増加 した。 この期間に経済連職員数 は 全国計 2万1521人か ら2万4691人にふ え,全農職 員は3186人か ら4053人にふえた。 農協 と連合会 は固定資産規模 と雇用労働力規模 の拡大 によって,農村 の商業,金融市場 における 占有率を高め,企業体 としての発展の道 を歩 んだ。 1970年度か ら80年度にいたる10年間における農協 の事業量規模の拡大 はつ ぎのとお りである。 購買事業 12.398 46,853 販売事業 21,088 54,651 貯金吸収 59,399 268,455 貸 付 金 30,366 106.371 預 金 29.849 153,928 有価証券 2.147 19,404 8 6 5 5 2 0 3 2 4 3 5 9 列挙 した数字 にみ られ るよ うに,事業量規模の 拡大はいちじるしい。 しか し,そこにみ られ る特 徴は,農協事業 の部門間の不均等発展が顕著 なこ とであ る。例 えは,農協の販売事業量 は2.6倍増 に とどまったが,購 買事業 は生産資材の新分野の開 描,生活資材 の伸 びによって3.8倍 となった。農民 の賃労働老化による現金収入の増 と貯蓄性向の強化 を反映 して,農協貯金 は4.5倍にやえたoLか し農 協に吸収 された貯金の貸付運用は停滞 し,貯貸率 は1970年の51%か ら1980年 には40%に低下 した。 農協に巨筋 の余裕金が形成 され,多 くは信連預金 となって農村か ら流 出 した。同期間に農協 の預金 は2・9兆か ら15・4兆へ5・2倍を記録 した。有価証券 運用が急増 して,1970年 か ら80年 にいた る期間に 9倍 にふ えて,1・9兆円にたっした。ちなみに,農 協,県信連,農林中金の3段階の有価証券取得額 は2・4兆か ら

1

1・8兆にふ えた。約5倍の増加であっ た 。 総 じて農協信用事業 は農村資金の吸収,農村外 流出を促進す る方 向で機能 した。 さきに考察 した 農協購買事業が,独 占資本工業製品の全農 による 仕入れ,その農村市場への売 り込み促進の方向に 向って,系統農協が機能 したの と,ち ょうど逆の 方向にある。県信連 による資金の農村外流出,農 林中金の預金の形態をとった郡市金融市場への供 給 は,農協信用事業 と比べて一段 と促進 の傾向に ある。1970年度 と80年度の県信連 (全国合計) に ょる資金の吸収 と運用は,つ ぎの とお りである。 貯 金 33,785 166,733 4.9 貸 付 金 16,483 44,023 2・7 貯貸率(%) 48.8 26.4 預 け 金 13,499 76,862 5.7 有価証券 16,483 44,023 2.7 信連が吸収 した貯金 は,基本的に農村外流出の 軌道にのっていると考 えられ る。その うち農村 に 還流 され る部分 をふ くむ貸付金 は,吸収貯金が

4

9倍増であ るのに対 して,2・7倍増である。貯貸率 は49%か ら26% に低下 した。農林中金預 け金 を主 とす る預金 は,同期中に

1

3

兆か ら

7・

7

兆へ と

,5・

7倍 とい う急増であ った。これは県信連が吸収 した 貯金 の県段階での貸付運用の余地が狭 まった こと を反 映 し,預金,有価証券の合計12兆円弱の膨大 な余裕金が発生 した ことをしめ している。 以上のような農協,県信連の

2

段階における余 裕金の発生は,農協 における一方での農業経営の 破綻,農業資金需要の停滞,他方での兼業農家の 一般化,賃金所得 の増加 にもとづ く,貯蓄性資金 の発生に由来す るものである。問題 はこ うした農 村事情 に由来 して発生 した流出資金 -余裕金が県

(11)

信連 を経 由 して農林 中金 に集中す る体系 であ る。 これ は農協 系統金融 の内部 におけ る特別金利, 刺 用高配 当 に よる剰余 の還元 とい う金融施設 にそ の 基礎 があ る こ とは言 うまで もない。 しか し,経 済 事業 に随伴 す る資金循環 が形 成 した資金流通径 路 を看過 で きない。 まず

,2

兆 円を こえる米代金 の流通。具体的 に は 食管制度の もとでの農協 の米穀集荷,全農経 由の政 府- の売渡 し,政府 の米代金支払 にお け る系統 金 融機構振込 み。農協 にお け る米代金か らの貸 付 回 収,購 買売 掛金 の回収。 つ ぎに,年 間3兆 円近 くに達す る全農供給 の購 買品の代金 の系統金融機構 に よる回収。 第3に, 農協 におけ る貯金 吸収,その余裕金 化 を促進す る農林漁業資金 の貸付 と長期低利条件 に よる回収。 第4は,系統農協 の基底をなす単位農協 の総合 経営方式 で あ る。す で にのべた よ うに,食管制 度 に もとづ く米 の農協 に よる集荷,米代金 の受払 い, 米代金 か らの信 用事業貸付金 お よび購 買売掛金 の 回収,残余歩留 ま り米代金 の貯金化 とい う各種事 業 の総合経 営 が,歴史的 に組み立 て られ て きた。 その事業運 営 は総合損益計算方式 に よる。兼業 農 家 の一般化 に ともない,農協 吸収貯金 の資金 的来 源 の60-70%が,兼業所得 に よって しめ られ る傾 向が生ず るにつれ て, この事業運営方式 は漸 次訂 正 を迫 られ てい るが,現状で は まだ生命力 を保 っ てい ると考 え られ る。 この よ うな経済事業 に随伴す る資金循還 の構 造 紘,系統農協 に独特 な資金流通径路を形 成 し,農 外兼業 に よる現金所得 を源泉 とす る貯金 の流通 に 影響 をあた え, 総 じて9兆円 (1980年度末) に達 す る農林 中金預金 を創造す るのであ る。系統 農協 に独特 な資金 流通径路 を律す る,農協経済事業 の 全 農 を頂点 とす る系列関係 につ いては,前節 で考 察 した とお りであ るが, さらに一歩進 めてその系 列関係 を規 定す る基礎 的条件 として,系統3段 階 におけ る資 本形 成 の状況 を考察す る必要 があ る。 系統農協 の資本形成 と施設体係 1980年度末 現 荏,系統 農協3段階 におけ る固定資産 の配置 は, 農協1兆6213億,県連3110億,全 国達792億,合 計 2兆0115億 に達す る。 この固定資産額 に見合 う自 己資本 は, 農協1兆1176倍,県連6385億,全 国連 1178億,合計1兆8739億 であ る。 総計でみ る と, 固定資産額 に見合 う自己資 本額 は1376億 の不 足 で あ る。 また, 自己資 の うち出資金 は農協6250億, 県連2720億 ,全 国連523倍,合計9493億 であ って, 自己資本 の うちの50.7%にす ぎない。 これ は残 り 49.3%の資金が,諸準備,積立金 の形成 に よる経 営余剰 の内部留保 に依存 す ることを しめす。 つ ま り, 自己資本 の内訳 は出資金 と利益 の内部留保金 がほぼ半額 を しめ る状態 にあ る。 自己資本不 足 も きび しいが,出資金 もいち じるし く少 ない。この こ とは系統農協 がそれぞれ利益 の内部留保 に よる自 己資本形成,そ の 自己資本 による固定資産 の形成 とい う,企業 内閉鎖的 な資本関係 を形 成す る傾 向 にあ る ことを しめ してい る。 系統農協の自己資本,固定資産概況 (1980年度) (単位 :百万 円) 自己資本 内出資金 固定資産 内外 部質 出 固定資産 農 協 1,117.弧 625,0091,621,334302,9721,318.362 県経済連 118,602 72,192 166,324 51,418 114,906 県 信 連 444.088172.949 104,842 57,539 47.303 県共済連 75.761 26.821 39,805 23,703 16,102 (県連計) 638.451271.962 310.971132,660 178,311 全 農 27,783 16.926 54.993 16,1.024189 38.952 農林中金 71.360 30.000 19.882 19,882 全 共 連 18,686 5.381 4.276 2.987 (注)農水省 「農協統計表」による。ただし農協は全中 「農協経 営分析調査速報」による 他方,固定資産 の内訳 をみ ると3段階の総計 2 兆0115億の うち,有形固定資産 は農協 1兆3184億, 県連1783億,全 国連618億,合計1兆5595億で あ る。 各段階 の外部 出資が農協3030億, 県連1327億,全 国連173億,合計4530億であ る。3段階合計 の固定 資産額 の内訳構 成 は,有形 固定資産77.5%,外部 出資22.5%であ る。 3段階合計 の固定資産 にたい す る自己資本不足1376億 とい う実 情 にて らす と, 外部 出資4530億 の負担 は重 い。 しか し, その外部 出資金 の うちの相 当額 が, 出資相 手,例 えば 農協 の相手 の 経 済 連,経 済 連 の相手 の全 農 によ る,

(12)

利益配当の出資振替 とい う操作 によることを考慮 す ると,問題の核心 は有形固定資産 に対す る自己 資本, とくに出資金の過少にあるとい うことにな る。 自己資本, と くに出資金 と有形固定資産の不均 衡 は,一般に自己資本不足,出資金過少 として理 解 され る。取得 された固定資産 の有用性 とい う前 提 に立てば,その理解 は妥当であ る。 しか し,そ の有用性が,農協お よび連合会のそれぞれの企業 発展における有用性であ るはあい, また,連合会 の事業推進 にこたえた農協の施設取得 としての有 用性であるはあい,別の性質の評価が生ず る。総 じて自己資本能力を超 えた固定資産取得 は,農協 お よび連合会のそれぞれにおける企業間競争 に由 来す るもので, たえず 自己資本の増成が立 ちお く れ る結果 をともな う。言いかえると,組合員農家 の要求による農協の,あるいは農協の要求による 連合会の固定資産取得のはあいは,出資金の増成 が容易であ るか ら,長期にわたる構造的 な固定比 率の低下 は回避 できる。 現在,農協,経済連,全農の固定比率 はいち じ るしい低水準にある。表示の数値 によって,固定 資産に対す る自己資本の充足率,つ ま り固定比率 をみ ると

,1

9

8

0

年度 において農協

6

9%

弱,経済連

71

%

,全農

51

%

であ る。農協の 自己資本不足額 は

5

0

3

7

億,経済連

4

77億,全農

2

7

2

倍,合計

5

7

8

6

億に 達す る。 この不 足番 は何 らかの形 の長 期借 入 に よって解決 されてい るわけであ る。その 自己資本 不足状況のもとで, 出資金増成は遅 く,多 くを利 益の内部留保に よる資本増成に依存 している。 このよ うな主 として農協経済事業の分野 におけ る自己資本不足,利益の内部留保,出資金の過少 の原因は何か。言いかえると利益の内部留保を強 行 させ,出資金造成 のテンポを超 え, 自己資本能 力をはるかに超 えて進め られる固定資産取得の動 因は何か。 このはあい農協財務 は経済事業 に限定 された ものではないが,経済事業資産が相 当額を しめ,金融,利用事業 な ども経済事業 と密接に関 係す ることを考慮 して考察 をすすめ る。 経済事業分野 における財務内容の悪化 は,販売 事業関係は産地間競争に由来す る固定資産装備, 農家の営農固定資産 の代替取得,食管制度の もと での保管施設 の整備近代化,構造改善事業施行に 伴 な う農業近代化施設 の取得 な どに由来す る。購 買事業関係は一方では全農 を頂点 とした連合会の 農協にたいす る工業品供給 の事業推進の要請,他 方では農村の末端市場 における市場競争が,農協 の購 買事業 固定資産 の増強 を必要 とした と言 え る。 こうした固定資産額の増毛酌も ただちに組合 員農家の増資協力を期待 しうるものではないため に,利益の内部留保 による自己資本増成に拍車を かけ, これを一般的 な傾 向 とした。農協 自己資本 にしめる諸準備金,積立金 の比重の上昇はまさに 構造的 なものであって,偶然ではない。 ここで留 意す る必要 のあるのは,全農固定資産の増加, と くに外部出資の増加である。 す で に全購連 の時代 に は じまった ことであ る が

,1

9

72年春,全農の成立 したのち,固定資産 は 膨張 をつづけ

,1

97

0

年間の

1

0

年間に

1

8

8

億か ら

5

5

0

億へ3倍 にふ えた。 この期間中,全農は経済連に 対す る利益配 当の出資振替 え,利益の内部留保に ょって自己資本の充実に努めたが,固定資産の膨 張 に追いつ くことがで きず,固定比率 は低下傾向 をた どった。全農が取得 し保有 している固定資産 は,つ ぎの とお りである。 園芸農産関係。生鮮食品集配施設,青果物出荷 調整横桟 などO 米穀関係。 自主流通米販売機構O 畜産関係。種豚飼育施設,畜産物集荷販売較構, 鶏卵,食鳥の卸売施設。 生活資材部門。油槽施設

,LP

ガス施設,生活資 材供給施設。 上記 の全農直営施設のはかに,全農出資の協同 会社形式の施設がある。 全農農協食品,組合貿易,エーコープライン倉 庫運送業,近畿酒造精米,石川協同食糧,全印東 京世 田谷青果,協友青果,全農東京花 き流通セン ター,間 々田 くみあい飼料,全農サイロ,科学飼 料研究所,全農 グレイン,全国農協乳業,新東バー ス,全農燐鉱,全農燃料 ター ミナル, ク ミアイゴ ム,全国農協直販,全農紀文 フーズ,コープ食品, 東 日本,東海および近畿の くみあい飼札 全国養 鶏セソクー,全農鳥市,全農キ ューピーエ ッグス テーシ ョン,近畿協同鶏卵,九州協同食肉,全農 -イ/ミック,その他。

-1

(13)

2-全農の財務概況の推移 (単位 :百万円,%) 1971年 1976年 1980年 増 加 年 率 1971-76年 1976-80年 固 定 資 産 16,198 25.123 38,478 9.2 ll.3 外 部 出 資 9,300 ll,449 16,515 4.3 9,6 繰 延 資 産 770 1,047 1,775 68.5 14-.1 固 定 資 産 計

)

26.268 37,619 56,768 7.5 10.8 長 期 借 入 金 10,332 6,823 5,617 △8.0 △4.7 退 給 引 当 金 2,782 6,421 8,937 18.2 8.6 払 込 済 出 資 金 8,272 12,406 16,926 8.4 8.1 準 備 .積 立 金 1,187 2,169 5,229 12.8 24.6 繰 越 利 益 剰 余 金 108 128 217 3.5 14.1 固定 負 債 .資 本 計(B) 22,896 27,946 36.926 4.1 7.2

(

C

)

-A-B

3,372 9,673 19,842 23.5 19.7 流 動 資 産 (D) 220,274 814,644 678,397 29.9 △4.4 流 動 負 債 (E) 223,428 821,519 692,829 29.8 △4.2 (

F

)

-D-E

△3,154 △6,875 △14,432 16.9 20.4 当 期 純 利 益 218 2,799 5,410 66.6 17.9 自 己 資 本 10,000 17,502 27,783 ll.8 12.2 (荏)全国農協中央会 F連合会の経営動向」1982年 1月による。なお外部出資には若干の長期未収金を, 長期借入金には若干の未払金をふくむ。 ここに列挙 した事業諸施設,つ ま り有形固定資 産 と外部 出資をふ くむ固定資産 は,増加の傾向を た ど り,1971-76年 の平 均 年 増 加 率 は7.5%, 1976-80年 には10.8%であった。 とくに1976-80 年 は事業量 の伸 び年率が購買8.1%,販売4.1%と 低下 した ときに,固定資産 は逆 に高率で増加 した。 しか し,固定資産 に見合 う固定負債,資本 はそれ ぞれ4.1%,7.2%の増加に とどま り,資本 (出資 金,準備金,積立金,繰越利益剰余金の計) と当 期総利益か らなる自己資本 は11.8%,12.2%の増 加をみた。 自己資本 の うち増加率の高か ったのは準備金, 積立金であ って,それぞれ12.8%,24.6%の増加 率であった。出資金 は 8%強の増加を しめ したが, この相当部 分 が利益配 当 の出資金振替分 であっ た。 したが って, 自己資本の増加の大部分が, さ まざまの形を とった利益の留保 によってしめ られ た と言 うことがで きる。1980年度末現在の 自己資 本277億8300万 円の内訳構成比 をみ る と,出資金 60.9%,準備金,積立金18.8%,当期利益金19.5% である。出資金の増額が主 として利益配当の出資 振替 によることを考慮す ると,全農の自己資本の 大部分が,利益の留保に依存 してい ることにな り, それによって固定資産 を取得す るとい う循環が成 り立 っていると言 うことがで きる。全農の資本調 達 と固定資産取得 はいわば自己完結的であ る。 全農のこうした 自己完結的 な資本蓄積方式 は, 系統農協の経済事業において,全農が資本的に独 立 した企業 としての性質 を強めていることを しめ す指標である。す なわち,全農が独 自な資本蓄積 によって,流通,加工施設を取得 して,農産物 と 農村向け工業品の流通 においてはたす機能は,農

(14)

家の農産物販売,工業品購入の単純 な集合体 とし ての琉能を脱却 した ことを意味す る. これ らの流通,加工施設の存在は,全農がすで に農産物の産地出荷団体の単 なる中央取 り継 ぎ機 構ではな く, また農村の工業品購買の単なる中央 仕入れ機構ではな く,農産物 の加工枚能を伴なっ た,都市卸売 り機構であ り,農村用工業製品の製 造壊能 を伴なった元卸売機構であるところの社会 的 な流通機構 と化 したのである。 農産物 の郡市卸売 り機構 としては,主 として農 村市場 に位置す る経済連,農協 に対 して,専 ら呉 荷出荷機能を要求す る。 この場合,売買取引の接 点 は全農 と経済連 の問ではな く,経済連 と全農の 地方集荷機構 として位置づけた うえで,農協 と農 家の間の取引に移行せ ざるを得ない。農村用工業 品の製造,元卸売機構 としては,経済連,農協を 地方卸売 り,小売機構 として位置づけて,商品の 在庫,分荷,配合の機能をはた しつつ,売 り込み 推進機能を要求す る。 この場合,商品の売買取引 の接点 は全農 と経済連 の間か ら,農協 と農家の間 に移行す る。経済連 と農協 は実質上,全農系列下 の商品供給機構 となる。 系統農協の固定資産,自己資本の増加 単位 :百万 円 固定資産

) 自己資本(B)(B/A.%) 1970年度 農 協 513.294 252,764 49.2 県経済連 65,054 37,751 58.9 全 農 18,791 9,651 51.4 計 596,139 300,166 50..4 1975年度 農 協 1.102.796 568,157 51.5 県経済連 120,518 66,776 55.4 全 農 33,144 15,226 46.0

1.256.458 650,159 51.7 1980年度 農 協.1,621,334 1.117.603 68.9 県経済連 166,324 118.602 71.3 全 農 54,993 27,783 50ー5 (荏)農水省.「農協統計表」による。ただし1980年度農協は 全中 「農協経営分析調査速報」による。1970年度全農 は当時の全購連,全敗達の合計をしめす。 したがって,農協 と経済連 は形式上は企業 とし ての独立性を保つが,社会経済的 には農産物集荷 と農村用工業品の流通 における系列機構 となる。 農協 と経済連 は実質的には全農系列下 において流 通機能をはた し,形式的な企業 としての独立性 に もとづいて,財務 と損益を自己の責任 において解 決 をもとめ られ ることになる。 1970年代の10年間に,農協,経済連,全農の3 段階 にお け る固定資産 総額 は,5961億 か ら1兆 8427億 に増加 した。約3倍増であ る。固定資産の 増毛酎i, この際,農協 の金融事業 などの固定資産 を度外視す ると,全農系列下の流通機能を遂行す る必要 にこたえた もの と言える。 1980年度 におい て,全農 自体 は550億の固定資産 を保有す るにす ぎ ないが, これを以て1兆8427億にた っす る3段階 合計の固定資産 を,その事業方針によって駆使す ることになる。 各3段階は膨張す る固定資産 に見合 った 自己資 本の増成に努めた。 1970年度の3段階合計の自己 資本総額3002億 は1980年度に1兆2640f酌こ,約4 倍増加 した。固定比率 は若干の好転をみた。すで に考察 した よ うに,農協の自己資本蓄積 は県信連, 経済連 な どの利益配 当の外部 出資金振替 えに よ り, また信用事業利益 を主 とす る剰余の内部留保 によるところが大であ る。 この10年間に農協の自己資本は4倍以上 に,県 済連 は3倍強に増加 したが,全農は2・9倍増 にとど まった。しか し,全農はその自己資本278億 を以て 550億の固定資産 を運用す るに とどまらず,その事 業方針の もとに1兆8427億の3段階合計の固定資 産を運用す ることがで きるのであ る。 これが,農 協,経済連が全農の系統機構 をなす ことの核心の 意味である。 連合会「協同会社」の発展 すでに再度 にわた っ て論及 したが,全農および経済連 の投資による「協 同会社」が設立 された。 1981年6月末現在で 「協 同会社」は100社,関連会社30社,合計130社を数 える。全農が投資主体 として経営責任 を有す る「協 同会社」は31社,その出資街 は89億弱である. 普 た,全農出資 もあるが,主 として県経済連が投資 主体 として経営管理す る 「協同会社」が69社,出 資額16億である。 その事業内容は前者が農畜産物加工,卸売,販

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全農,県経済連出資協同会社等概況 (1981年6月末現在) 出資先数 出資金額 受取配当額 受取配当率 備 考 協 同 会 ∵社 Ⅰ 31 8,861,千円338 222,千円147 2.%5 未稼動会社未稼動会社31社社 うち農産物加工 .卸 .販売会社 14 2,453,200 9,510 0.4 飾 料 畜 産 資 材 製 造 会 社 6 675,000 28,740 4.3, 原 料 等 輸 入 関 連 会 社 6 4,753,468 134,913 2.8 輸 送 会 社 〈参考〉 1 588,390 28,288 4.8 上 記 の うち 未 稼 動 会 社 4 3,653,808

.

0 -既 稼 動 会 社 27 5,207.530 222,147 4ー3 協 同 会 社 ⅠⅠ 69 1.660.801 53.563 3.2 末稼動会社未稼動会社52社社 うち飼 料 会 社 26 187,500 13.733 7.3 産 地 食 肉 セ ン タ ー 13 810,000 1,200 0ー1 肥 .料 会 社_ 4 40,000 1,025 2ー6 エ - コ - プ 店 舗 会 社 (参考〉 15 140,000 4.400 3.1 〟 1-社 上 記 の うち 末 稼 動 会 社 8 379.000 0 -既 稼 動 会 社 61 1.281.801 53,563 4.2 関 連 会 社 30 1,930,216 167,615 8.7 合(参考〉 計 130 12,452,355 443,325 3,6 上 記 の うち 末 稼 動 会 社 12 4,032,808 0 -荏(1) 協 同会社 Ⅰ:全農が主 として経営責任をもつ会社 (2)協 同会社ⅠⅠ:県連等が主体 となって設立 し経営管理を行 う会社 (3) 関 連 会 社 :事業の取扱関連から出資をしている会社 (4) 末稼動会社 :操業後1年未満の会社 (5)全農 r会員討議における意見 要望事項 と全農の見解,対応策について」1982年6月による 売会社(14社 ),飼料 な ど畜産資材製造会社(6社), 原料等輸入 関連会社 (6社),輸送会社 (1社)で あ る。後者 は配合飼料製造会社(26社),産地食 肉 会社 (13社 ),乳業 加工会社 (2社),肥料製造会 社 (4社), エ ー コー プ店舗会社 (15社)であ る。 この ほか関連会社 は全農が取 引関係 を有す るた め に出資 してい る会社 で,30社, 出資金19臆 であ る。 その うち資本金

1

億 円以上 の会社 は,全農紀 文 フーズ,東 京食品 ター ミナル,神奈川臨海鉄道, サ ング レイ ン,石巻埠頭 サ イ ロ,西 日本 グ レイ ン, 南 日本 グ レイン,苫 小牧埠頭,鹿 島都市開発,皮 島臨海鉄道,大宮食 肉荷受,東急 フーズ,東京食 肉市場 ,協 同乳業, サ ン化学, 日本燐酸, ク ミア イ化学, 八洲化学,三笠化学,北 興化学 ,東北 肥 料,三 菱化成,三菱農機, 山印醸 造, ライオ ン。 上記 の 「協 同会社

「関連会社」のはか に,全 国 野菜需給調整機構,全 国配合飼料供給 安定基金 を は じめ とす る, ブ ロイラー,鶏卵, 野菜,果実, 肉 牛 の 安 定 基 金 な どの 関 連 団 体19団 体 に29億 の出資 があ る。 4種 の会社,団体 に対す る出資 の 合計 は153.8億 にた っし,全農 の外部 出資 の大部 分 を しめ る。

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