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日本語における"談話主題"の省略に関する実験的研究

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(1)日本語における``談話主題''の省略に関する実験的研究 雨宮朋子* An. experimental. study Tomoko. ・林部英雄**. the. ellipsis. AMEMIYA. and. on. of "discourse. tbeme”. in. 、Japanese. HAYASHIBE. Hideo. I.姓じめに. 従来より,文中の「主題+. (theme)や「話題+. な研究がなされており(Gruber,. 1965;. (topic)については言語学において様々. Cbomsky,. 1965),またそれに呼応して,言語心 1972;. 理学おいても多くの検討がなされてきた(Ⅲornby,. Li, 1976)。主題にせよ話題に \. 「何につい せよ,文中での形式的な相違もしくは意味論的相違はあ・るものの,ある文あゞ て語られているか+ということに関する概念だと考えられる。また,`上述の研究のほと. んどのものは,特に久野(1978)等に見られる通り,最終的には談話全体において「琴 ら●れていること+に結びつけることを目標に進められてはいるが,実質的には1文中で Rumelbart(1975,. の分析にとどまっているように思われる。しかし,. 1977)の指摘を待. 「何について語られているか+ということは,文脈に密接に関係したこ七. つまでもなく,. であり,談話レベルでの分析無しには解明できない部分が大きいと考えられる。例えば, 次の例で, (1). A:みんな懇談会Iこ行くのかい? B:少なくとも,花子は行くと思うよ。 A:あゝ.彼女は律儀だから行くだろうな. B:いつだっけ?. 最初のBの発話及び2番目のAの発話の話題は,. 1文のみのレベルで考えこる限り,花子. もしくは彼女であろうが,これらの談話全体としては, ていることは内観的には明かである。勿論, いて,. 「懇談会+のことについて語られ. 2文目及び3文目だけが花子を話題として. 1文目と4文目が「懇談会+を話題としていると見ることもでき.ようか,それで. もやはり2,. 3文日も「懇談会+になんらかの形で結びっいていることは否定できない.. そこで本研究では,く談話全体として語られていること〉を``談話主題''と呼ぶことに し,それが談話または文にどのように反映されるかということ,及びその習得について,. できる限り実証的に検討することにする.但し,本論文中では由れ'c)ない場合血・`談話 *本学大学院教育学研究科障害児教育専攻平成4年度修了 *. *特殊教育教室.

(2) 266. 雨宮朋子・林部英雄. 主題”を単に"主題”と略記することにする。 2.金時分析. 実験に克立って,主題が文にどのように反映されるかについて概略の展望を得るため に,現実の食詰をテープレコーダーで収録し,転記したものの内観的な分析を行なった。 但し,会話は,口頭で話されていること以外の環境の影響をできる限り少なくするため に,電話を通じて行なわれたものとした。以下の会話例を御覧項きたい。 B:うーんと,南伊豆はどうでした。カッター訓練できた? A:カッター訓練? しましたよ。. カ ッ. 波. B:だって,墜高かったでしょ。 :えー,全然連なんかないですよ。. A. 蘇. B:そおお,ほ,ほ。 A:はい。. B:どうして。どうしてってことはない,台風きてたじゃない。 A:台風-? B. タ I 訓. _h 口. :宣昼,すぐ近くにいたんだよ。. A:いや,波は全然なくって, B:おお。 A. :おだやかな, B:ああ,そうお?. A:なんか,いりくんだ主主なんですけど。 B:うーん,うん,なんか浅い土主なんだって?すごく。. 訓 練 の. A: 3mぐらいとかいってた。 B:ええ? A:. 場 節. 3mか4mくらいの主主だった。. B:浅くないじゃない。いやなんか, S君か誰から開いたか知らないけどさ, さんの話かな, A君の静かな,あの-,なんか,ひざ,ひざってことはない. A. かな,腰ぐらいの土主だっていってたよ。 A:いや3mか4mくらいのところ。 ☆B. :ふーん。なに,それでみんなやったわけ A:みんなやりましたよ。 B:へっへっへっ。きみもやったわけ? A:やりましたよ。. B:はっはっはっ。 A: 2回もこぎましたよ。. B:あ,ほんと。どのくらいの距離でやるわけ? :時間で40分。 B:あー,そりゃ長いね。 A:うん。 B:そりゃ,すごい長いじゃない。. A. A:きつかった。. ≡;墓恵'…言三言ろ三三ot :三言ま芸8L='b、三,D=oe大 慧.

(3) 267. 日本語における"談話主題”の省略に関する実験的研究. 文の右側に,筆者らの内観による主題を付したが,概ね賛同していただけるであろう。 これを見ると,主題に関するいくつかの特徴が現われている。まず第一に,主題は一時 ☆印を. に一つとは限らず,大主題・小主題ともいうべき鰐層構造をなしている。また, 付した文で「みんなやった+のはカッター訓練であると考えられるが,この例でも解る 通り,一般に主題は省略きれろ傾向がある。しかし,大主題の中に埋め込まれた小主題, 「台風+, 「訓練の場所+等については,下線で示したように,省略され ここでは「波+, ずに残されることが多いようである。さらに,主題が変更される箇所には,疑問文が用 いられたり,例の中には現われていないが,. 「-の話だけど,. --+のような旬が用いら. れることもある。. 3.鼓缶主長に関する優艶 実際の会話についてのこれらの観察をもとに,作業仮親としての談話主題の定義を次 のようにしておく.勿論,これは変更の可能性のある定義であり,むしろ本研究は談話 主題の定義をするために行なわれたものとお考え頂きたい。 まず最初に主題の定義に用いられる語句の定義をしておく。 Ⅰ. アズフォー旬(As・forpbrase) 「一についていえば+ 「-の話だが+という旬,及びこれらで代置しても,文全体の 意味が全く変化しないと判断される旬をアズフォー旬と呼ぶ。またこの-の部分をア ズフォー旬の内容項と呼ぶ。. ⅠⅠ疑問文の内容項 「-はどこだ?+ 「-は何だ?+. 「-はいつだ?+のような疑問詞を含む文をwh疑問文. と呼ぶ。またwh疑問文中の-の部分を疑問文の内容項と呼ぶ。さらにyes・no疑問文中 の即知情報に相当する部分も疑問文の内容項と呼ぶことにする。 III省略文 ここでいう省略文とは,文の主節の動詞がとるべき必要最低限の項(義務項(obligatory argument)と呼ぶ)のうちで欠けているものがあるものをいうo但し,談話当事者, 即ち文中で1人称及び2人称で表現されるべきものが省略されていても,省略文とは みなさない。. Ⅳ. 主題導入文と主題展開文 ○主題導入文とは以下のような文である。 1.アズフォー旬を伴った文 2.疑問文 ○主題展開文とは省略文のことである。.

(4) 268. 雨宮朋子・林部英雄. 以上の定義のもとで,談話主題を次のように定義する。 Ⅴ. 談話主題. 淡酷主題とは,主題導入文におけるアズフォー旬及び疑問文の内容項の名詞または 旬,もしくは主題展開文において省略されている名詞または旬のことである。 4.疑似舎括分析 上述の食詰分析は量的にも充分なものではなく,また当然のことながら条件が統制さ れているわけでもない。そこで上記の仮鋭をさらに精製するために,以下の実験を行な つた。これは,被験者に一つの文を与えて,それに続くと考えられる会話文を自由に作 らせるというもので,最初の文が所与のものであることと,口頭ではなく筆記による点 が,現実の食詰と侶異なっている.そのようなわけで,疑似食詰分析と呼んでおくム 4-1.方法 4-1-1.被験者. 19歳から22歳までの女子大学生32名。 4-1-2.手続き 最初の1文を刺激として与え,それに自然に L以下の教示に見られるような設定で, 続くと考えられる会話を自由に記述させる。例えば, A:アイスクリームのことだけど. おいしかったね。. B: A: B:. のように, 通りである。. 1文とそれに続く空欄を捷示し,空欄に適当な文を書かせる。教示は次の 「以下の各ページの文は,. A,. Bという二人の,日常的な食詰の一部を想. ノ定しています。この文の後にどのような食詰が続くか,想像して記入して下さい。会 話が長くなっても構いませんが,最低3文は記入して下さい。+反応時間の制限はしな かったが,概ね15分以内に終了している。 以下の結果の項では,被験者の最初の反応,即ち上例の最初のB 2文目と呼び,以下同様に3文目,. :に対する反応を. 4文目と呼ぶことにする。. 4-1-3.刺激 最初の1文として与えるのは,アズフォー旬を含む文が4種類,yes-no疑問文が2種 類, wh疑問文が4種類(なに,いつ,どこ,どう)で,合計10種類の文である。但し, 被験者の半数には上記のうち半分の5種類を,残りの半数には同じく残りの半分の5 種類を提示して反応させた。.

(5) 269. 日本語における"談話主題”の省略に関する実験的研究. 4-2.結果 反応として現われた文を,基本的には省略の有無の観点から,以下の6種類に分類し た。分類は,後述の主題変更も含めて,訓練された評定者2名によって独立になされた。 EAとEOSについて. 一致率は,以下に述べるEAとEOSの分類を除いてほぼ100%であり, も評定者閤で定義を明確にさせたところ,最終的にはほぼ100%となった。尚,以下の分 析ではこの分類のことを「文タイプ+と呼ぶことにする。 省略文 、. EA. 独立の文としてはアズフォー旬が存在しか-と文意が理解できない文で, そのアズフォ-旬が省略されているもの.但し,このうちのほとんどの ・ものが文法上の主語も省略されており,EOSの下位分類とも考えられる。 即ち, EOS中で本来なら主語の名詞がアズフォー旬として現われるのが 自然であるものがEAである。例えば, A. :この間の山登りのことだけできれいだったね。. B. (EOS) :この季節だから特にいいよね。 (EA) :紅葉もきれいだったしね。. A. EOS. 文の文法上の主語が省略されているもの。但し1,. 2人称の省略は含. まない。上例参照 EOO. 文の文法上の目的語もしくは主語以外の義務項の省略されているもの。 EOSと同様1,. 2人称の省略は含まない。例えば,. A. :PKOって何?. B. :私もはっきりとは分からないや。. (EOO). 非省略文 AF. pA. アズフォー旬を伴う文。例えば, A. :与の間の山登りのことだけできれいだったね.. B. :やっぱり自然っていいよねム′(AF)、. アズフォー旬を伴い,その内容項が代名詞であるもの-.例えば, A. :PKOって何?. B. :軍事協力の事だよ。. (PA) :それって戦争に協力するって事? 義務項が全て出現しており,省略がない文。例えば, A. NE. A. :この間の山登りの事だけどきれいだったね.. B:そうだねo その他 oTH. でも少し疲れたよ.. 、A:日頃運動してないからだよ。. (NE). yes-nd健闘文に対する返答やあいづち等で,上記に属さないものo A. :この間の山登りの事たけどきれいだったね.. B、:そうだね。. (OTH).

(6) 270. 雨宮朋子・林部英雄. また,この文タイプの分類とは別に,当該の文において主題が変更されたか否かを評 定した。主題が変更された場合をTC,賓更きれなかった場合をNTCとする。 このような分類をもとに刺激種別ごとに分析を行なったが,刺激種別による差は,本 研究においては特別に意味を持つようなものではなかったので,以下の分析では全ての 刺激種別に対する反応を一括して取り扱うことにする。 図1に2-4文日全てにおいて現われた各文タイプの合計を示す。これを見ると,症 倒的に省略文が多く,主題が明らかな場合には省略文が用いられることがうかがえる。 非省略文のうちではNEが若干他のタイプよりも多いがこれは以下の分析で明らかになる ように,主題が変更される場合に用いられることが多いのである。 また図2には各文タイプのうちで主題の変更が起こった割合を示す。各項目のNTCと TCとを加えると100%になる。これを見ると,省略文ではほとんど主題の変更は起こら ず,非省略文でも特にAFとNEにおいて主題変更が起こりやすいこと,逆にいえば,主 題を変更するときにはAFもしくはNEが用いられる傾向があることが解る。同じアズフ ォー句でも内容項が代名詞である場合には,主題変更が起こりにくいことは代名詞の用 法を考察する上でも注目に催しよう。 さらに,何文日で主題変更が起こったかを示すのが図3である。これは省略文,非省. 一oo. 50. EA. EOS. EOO. AF. PA. NE. 図1壌似合話分析において現われた各文タイプの個数. OTH.

(7) 日本語における"談話主題竹の省略に関する、実験的研究. ○/。. 一oo. 50. EA 図2. EOS. EOO. AF. PA. NE. 疑似会話分析において各文タイプで主題変更が起こった比率 白抜きは主題変更無し,影付きは主題変更有り. 一oo. 非省略文. 50. 省略文. -一一. 2文日. 図3. _一一一一一一一-一一々----I------I------・8. 3文目. 4文目. 疑似食詰分析において主題変更の起こった文の主題導入文(刺激文)からの距離. 271.

(8) 272. 雨宮朋子・林部英雄. 略文に分けて,そのうちのTCの割合を示したものである。省略文では談話が進行しても あまり主題変更が起こらないが,談話カチある程度進行して非省略文が用いられた場合, 主題変更の可能性が高くなることが解る。特に4文目ではPAの分を差し引いて考えると, AF,. NEが用いられるとほとんど必ず主題変更が起こると考えてよいであろう。勿論,. ここでは実験者が被験者に,いわば唐突な主題を提示しているわけで,自然な状況で必 ずしもこれと同様のことがいえるとは限らないが,一つC)主題が提示されてからの間隔 が長くなれば長くなるほど主題変更の確率が高くなるとの推測は可能であるし,当然の ことともいえよう。 4-3.疑似会話分析のまとめ 以上の実験では刺激文として主題導入文が提示されていて,反応として省略文が多か つたこと,また反応文タイプの分析によっても,全体として3.の談話主題に関する仮 親が指示されていることは明らかであろう。仮鋭に含まれていない事実は主題変更が上 記のNEで起こることが多いということくらいである。しかしNEはそれ自体が主題を決 定しているわけではなく,むしろ主題の選択はNEの次の文に任されていると見ることが できるので,仮親の変更の必要は今のところないものと考えられる。 5.選択実験 5-1.方法 5-1-1.被験者 横浜市内の小学校児童,. 2年生29名,. 3年生37名,. 4年生30名, 5年生27名, 生29名,横浜市内に在住の中学生23名,大学生47名,合計222名を被験者とした。. 5-1-2.刺激 会話文の中の+文を(. 6年. )で空白にし,下に提示した,主題が省略されている文(省. 略型)と主題が省略されていか一文(非省略型)の二つから,. 「自分が言うとしたら+ という条件で一つを選択させる。また,会話文中の名詞二つを捷示し,どちらが主題. であるか問う。次の例を参照されたい。 A. おさいふ. B. 落とした人. A. (. B. それなら. A. いい?. じゃあ. お願いするね。. 1うん。 2 うん。. 交番に. おさいふ ̄ 届けたいんだけど. 交番に. 届けたいんだけど. ひろっちゃった。 困っているかも. しれないね。. ) ぼくが. かわりに. 届とこうか?. 選択肢 時間. 時間.なくて。. なくて。.

(9) 日本語における. 273. 瓜親許主題”の省略に関する実験的研究. 刺激は主題が変更されない会話文(以後「変更なし+と呼ぶ)と主題が変更される 前者が5から 会話文(以後「変更あり+と呼ぶ)の2種類に大別される。会話文は, 6文,後者が11文からなっており,概ね次のように構成されている。 「変更なし+ A. :主題の明示. (主題導入文). B. :主題の省略. (主題展開文). 1. A. :主題の省略. (主題展開文). 2. B. :主題の省略. (主題展開文). 3. 「変更あり+ A. :主題の明示. (主題導入文). B. :主題の省略. (主題展開文). A. :主題の省略. (主題展開文). B. :主題の省略. (主題展開文). A:別の主題の明示. (主題導入文). (4). B:その主題の省略. (主題展開文). (5). 空白にした箇所は,第1文目を除く,. (1)から(5)までの5か所である。しかし,. (5)の. 箇所は, (4)の文を省略した形と省略しない形の2種類を作成し,計6種類の刺激文で 行なった。問題は,用いられた単語の影響等を考え,. 3種類を用意した。. また,以後(1)の部分を空白にした刺激を「展開文一1+-(図中では1-1とするo以 (1-3)とし, (1-2), (3)を「展開文一3+ 下同様),同様に(2)を「展開文一2ノ+ (4)を「導入文+. (2-1),. (5)で(4)が省略文であるものを「省略導入文後+. 非省略文であるものを「非省略導入文後+. (2-2),. (2-3)と呼ぶこととする。. 5-1-3.手続き 「次の文はA君とB君の食 5の用紙に印刷された問題冊子を配布する。表紙には, )の部分があります。あなたが言うとしたらどのように言いま 詰です。文の中に( B. すか?下の二つの文から選んで○をつけてください。+と書いてある。教示を読み,練 「この会話はなんのこ 習を1間行い,課題を理解したら始める。また,各刺激の後に, とについて話していると思いますか?、次の二つから選んでください。+という教示をし, 主題を問う。尚,刺激の漢字にはすべてルピを振り,分かち書きにした。また,制限 時間は設けなかったが,概ね15分で終った。 5-2.結果 まず,主題を問う問題の回答として主題ではない方を選んだ者については全て別に取 り扱った。その割合は図4に示す。 また,主題の熟答の回数を「変更なし+と「変更あり+に分けてみると,前者が13で 後者が45であり,明かに「変更あり+の方が愚答率が高い。それは,小主題と大主題の どちらが全体の主題であるか判断することが難しいためであろう。.

(10) 274. 雨宮朋子・林書β英雄. ○/。. 一oo. 50. 0 2 図4. 3. 4. 6. 5. J. A. 選択実験において主題を敵った者の比率の学年による推移 横軸の数字は小学生の学年,. Jは中学生,. Aは成人を表わす. 図5は,成人の回答で,省略型を選んだ割合を示したものである。. 「導入文+では, 100 %の割合で非省略型を選ぶことがわかる。そして, 「省略導人文後+を除いたその他の主 題展開文では省略型が80%以上を占めている。「省略導人文後+は50%にとどまっている。 疑似会話分析から,主題が変更されるときは,主題を省略しない傾向があることがわか つていたが,あえて,第5開日で,主題変更のときに主題を省略した文を捷示した。第 5間目が, 50%なのは,このようなときには,そのまま,主題を省略しようとする傾向 と,確認のために主題を提示する傾向が同等の割合で存在することを示している。つま り,第5間日は,どちらでも可能ということになる。 大学生の結果から次のように仮の正答を決め,これに従って分析を行なった。 「展開文一1+. (1-1). 省略型. 「展開文一2+. (1-2). 省略型. 「展開文-3+. (1-3). 省略型. 「導入文+ (2-1) 「省略導入文後+ 「非省略導入文後+. 非省略型 (2(2. 2). 省略型. 省略型 3) 図6は,各刺激の正答率の学年による推移を示している。 -. 2年生で50%を越えている.

(11) 275. 日本語における"談話主題”の省略に関する実験的研究. ○ん. 一oo. 50. ト】. 図5. のは,. 2-1. ト3. 2-2. 2-3. 選択実験における成人の反応で,各刺激に対し省略型を選んだ者の比率. 「主題展開文一2+と「主題導入文+のみである。. 下がっているが, べて,. ト2. 3年生では,全般的に正答率は. 「主題導人文+だけは上昇する。そして,. 3年生から4年生にかけて急上昇している。. 「主題展開文一1. 2. 3+はす. 「省略導入文後+は年令が上がるに従. って,省略傾向が増している。 「主題展開文+ \「主題導入文+「省略導入文後の展開文+の3タイプにまとめて,正答率 を示したのが図7である。. 次に上記の正答に従って反応群による分析を行なった。全開正答者とは「省略導入文 級+ (2-2)以外の全てに正答しているものである。. 2-2については他の群の場合も. 正教は問わないことにする。全開正答者率の年齢による推移を図8に示す。 では,ほとんど,全開正答者は見られない。 率は上昇するが,. ・. 3年生. 3年生から4年生にかけて,急激に正答者. 5年生でやっと50%に達する程度である。その後,徐々に,上昇して. いく。主題表現について, れる。. 2. 3年生から4年生にかけてが重要な時期であることが推察さ.

(12) 276. 雨宮朋子・林部英雄. o/.. 2-1. 一oo. J}-ll ∫-. -. -■、. \\. /. /ヽ、. /.  ̄ヽ△ 1-3. 2-3. ヽヽ. / \.J′. 刀: ㍗. ㌢. /・JL・・-t. a... 50. 1-1. ′/A ′. /. ′. 1-2. ロ'. ゝ. 21. 2. / ′■トーーー■r. /. \. ./. 、t/. 2 図6. 3. 4. 5. 6. J. A. 選択実験における各刺激に対する正答率の学年による推移. γ。 一oo. 主題導入文 一A. ′ ′. ・--ム、・、. ′一′Å、・ ヽ、ヽ. ′. ′ ∫. ヽ、廿′. a. 主薦展開文. /}L--・匂. 50. メナーー・{r /一. D<. ′省略導入文後の展開文. ヽヽ. 0 2 図7. 3. 4. 5. 6. J. A. 選択実験における各刺激タイプごとの正反応率の学年による推移.

(13) 277. 日本語における"談話主題廿の省略に関する実験的研究. ○ん 一oo. 50. 0 2 図8. 3. 4. 5. 6. J. A. 選択実験における全問正答者率の学年による推移. 察. ¢.考. 6-1.主題の省略について 図5の結果等からみて,. 「主題が明白な時は主題が省略される+といえるであ・ろう。ま. た,選択実験の成人の主題展開文の省略率が全て80%以上ということからも,主題は省 略される傾向が強いといえる。即ち,主題は通常,文の要素としては表現されず,省略 されるのが自然であるということが明らかであろう。きらに言えば,省略されるペき主 題を明示する時にはいわゆる「含意+を含んでいると捉えられる可能性も考えられる。 例えば, A:生まれは. どちらですか?. 他の所です) ・(が育ちは )、内を含意するであろう。 といった場合, Bの発話は明らかに( B. :生まれは. 大阪です。. また,主題が変更される場合について言えば,図2,■. 3が示すように,ほとんど省略. 文は用いられず,非省略文,アズフォー旬が伴う文が用いられる傾向があると言える. しかし,同じアズフォー句でも内容項を代名詞で置換した文は主題の変更には用いられ ない。このことは,代名詞の用法を考察する上で注目すべき点であろう。 主題が変更されるときには非省略文が用いられることは,選択実験の「主題導人文+ の結果からも裏付けられる。. 「主題導入文+では,. 100%非省略型が選択されている。.

(14) 278. 雨宮朋子・林部英雄. 図3から,省略文では談話が進んでも主題が変更されないが,談話が進んで非省略文 が用いられるとほとんど主題が変更されることが解る。特に4文日では,非省略文が用 いられると必ずといって良いほど主題が変更されるといえるであろう。このことから, 主題が変更される時には,非省略文が用いられることが多いといえよう。 また,主題熟答率から言えば,. 「省略導人文後+について特筆すべきことはない。つま. り,導入文で,新しい主題を省略しても主題は理解されていると言える。推測できる範 囲であれば,主題導入文を省略文にしても,談話を中断させることは少ないのではない かと思われる。例えば,話されてきた主題と変更しようとする主題の関係が「サッカー+ と「(サッカーの)チーム+などのように推測が容易である場合には,省略文でも主題の 変更が可能なのではないかと思われる。 主題が変更される時に用いられる文タイプについては,本実験からははっきりとした ことはわからない。しかし,疑似会話分析のように統制された条件下で,疑問文での主 題の変更が20%あったことは一考に催するかもしれない。 以上のことから,倣鋭は支持されたといえるであろう。主題表現についてまとめると, 主題を省略することによって, 省略によって,. 「語られていること+を示し,主題を変更するときには非. 「これから語られること+を明示するといえる。. 6-2.主題表現の発達について 図6より主題表現は年齢を追って習得されることがわかる。特に3年生から4年生に かけてかなり伸びることがわかる。しかし,それでも,主題表現が確立されたとは言い 難く,その後も徐々に伸びていき,中学生でやっと大人とほぼ同等になる。このことか ら,主題表現の習得は,かなり遅いと言える。これは,主題表現が省略を基本としてい るところにその習得の難しさがあるのではないかと思われる。必要なことだけを選択し 伝えるということは,高い技術が必要であることは推測できるであろう。本実験では3. 年生から4年生にかけて,省略をするという技術を身に付けるといえる。村由(1972) は, 「3年生で必要な情報内容を簡潔に情報化する能力があらわれる+と述べているが,. それとほぼ一致する.この.ような能力が現れ,洗練されることにより,. 4年生で主題を. 省略するという技術を習得するのであろう。 本実験から最も早く習得されると思われるのは,. 「主題導入文では主題を省略しない+ ということである。これは,前述のように,必要な情報を選択することができないとい うことと,主題導入文では,全てが必要な情報であるために省略できないということが 一致するために2年生でも習得されているのではないかと思われる.それは, ら3年生にかけて省略率が低下することから,この時期は,いわば「非省略傾向期+な のではか-かと考えられる。非省略傾向であることは,. 2年生か. 「省略導入文後+の問題はどちら. でもよいはずなのに,この時期は,省略しない方を選択する割合が高いことからもいえ るように思われる。さらに言えば,. 2年生では,主題導人文での非省略は理解されてい るわけではなく,理解されるのは3年生からではないかと考えられる。.

(15) 日本語における"談話主題廿の省略に関する実験的研究. 主題導入文に遅れて,. 279. 「主題展開文では主題を省略する+ということが習得される。し. かし,主題展開文も主題導入文からの距離によって微妙に省略率も,習得の早さも異な る。筆者は導入文に最も近い展開文の省略率が最も高く,習得も早いと予測していたが, 結果は違っていた.省略率が高く,習得が早いのは,導入文から少し離れた展開文であ った。さらに,導人文から離れると,省略率は下がり,習得も遅くなる。これは,まず, 年齢が低いと主題を理解するのに時間がかかることを示唆している。つまり,成人は一 文から主題を理解することができるが,子供はできないことを示唆していると思われる。 そして,主題が理解でき,主題を省略して話していても,談話が進むと,再び主題を提 示する。これは,確認のためであろう。成人でも一つの主題で長く話していればこのよ うなことが起こりうることは想像できる。 丁'.終りに. 本研究の結果をまとめると,以下のように談話主題の構造を考えることができるだろ う。主題は基本的に「省略文+によって表わされる。また,主題の設定,変更等は, 略のない疑問文+. 「非省略文+ 「アズフォー旬を伴う文+によってなされる。これらをTC. 文と呼ぶことにする。また,主題にはいくつかのレベルが存在する場食がある。. 本研究は主題に関する一端を取り上げたに過ぎず,これからの研究に期待することは 大きい。例えば,代名詞の問題,主題変更の時の文型,また,主題はどこで決定される のか,と言った問題があげられるであろう。. 「省.

(16) 280. 雨宮朋子・林部英雄. 最後に,本実験を行なうにあたり,快く協力して下きった横浜市立中川西小学校の諸 先生方,被験者になってくださった児童,生徒,学生のみなさんに心より感謝いたしま す。 文. 克た N.. CHOMSKY,. A由ects of GRUBER,. the Theoq. ∫.S.. Studies ⅢORNBY, Child. of Synh2X.. Ⅰ.T.. Press. Rekltions. Unpublished. Ph.. D. dissertation.. (M.. Ⅰ.T.). 1972. stmcture. the. and. Development,. topic. comment. distinction:. a. developmental. study.. 42, 1975-1988.. 噂1978 統括の文法. 大修館書店. LI, C. N. (Ed.) 1976 Subject and 7Topics. Academic. 村田. M.. 1965. in Lexical P. A.. Surface. 久野. 1965. 孝次1972 幼稚園期の言語発達 on. a. schema Rゆy7eSenh2tions and RUMELⅢART,. ates.. for stories. In D. G. Bobrow & A. M. Collins (Eds.) Undeyshmding.・Studies in Cognitive Science. Academic. Press.. D. E. 1977. Understanding 蝕ic. 培風館. D. E. 1975. RUMELHART, Notes. Press.. Pr10CeSSeS. brief stories. In D. LaBerge & S. J. Samuels (Eds.) and summarizing in Reading.・ PrleC勿tion and Combylehension. Lawrence Erlbaum Associ-.

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