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学外実習を通しての栄養士養成教育の充実 : 事後指導を中心として(自然科学系)

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要 約 一層多様化する栄養士業務と近年とみに変化しつつある学生資質との間で、栄養 士資質の向上をめざし、より良い「学外実習(校外実習)」の実施を検討すること は急務である。 現在行っている「学外実習(校外実習)」の事後指導である「学外実習(校外実 習)報告会」までの教授法を中心に提示しつつ考察し、今後の課題についても述べ た。 結果として、「学外実習(校外実習)」後に多数の学生に対して、課題のまとめ作 業を一斉に進行させる為には、道具、システム(しくみ)、ルールの活用が有効で あった。さらに意欲の向上やレベルアップを目指すためには、繰り返しの学習や作 業が有効であった。 1

学外実習を通しての栄養士養成教育の充実

―事後指導を中心として―

矢 島 麻 由 美・児 玉 ひ ろ み

(2009年10月30日受理)

はじめに

筆者らが栄養士コースの学外実習(校外実習)担当となってから6年が経過した。 この間の各実習施設の教育プログラムの変化や格差という問題は、栄養士・管理栄養 士をめぐる変化に伴い、以前よりさらに増した感がある。そしてさらに問題なのは近 年とみに変化してきた学生資質の問題である。この二つの問題の間で、栄養士の資質 向上をめざし、よりよい「学外実習(校外実習)」の実施を検討することは急務であ る。 以前、現在行われている「学外実習(校外実習)」の現状分析を行い、問題点を明 らかにするために調査1)を実施したことがある。その時の結論としては「実習がたっ た1∼2週間であるならば、せめてその前に行う事前指導を充実させることで、短期 間の実習を補うことは十分に可能なことだと考える。」というものであった。 本稿では以前の結論を踏まえ、現在淑徳短期大学食物栄養学科で行っている「学外 キーワード 校外実習、実習施設、給食の運営、事前・事後教育、教育プログラム

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実習(校外実習)」の事後指導である「学外実習(校外実習)報告会」までの授業法 を中心に紹介しつつ考察し、今後の課題についても述べる。

1.校外実習報告会(給食管理実習Ⅱ)の位置づけと「目的」

(1)「校外実習」と「臨地実習」(表1) 現在、学外実習は平成14年4月文部科学省、厚生労働省より通知された「管理栄養 士養成施設における『臨地実習』および栄養士養成施設における『校外実習』要領」 によって実施されている2)、3)。これによると「学外実習」を管理栄養士養成では「臨 地実習」といい、栄養士養成では「校外実習」ということになっている。(これ以後 は「学外実習」を「校外実習」とする。)新カリキュラム4)になって「校外実習」は 「給食管理実習」から独立した実習科目となり、学内での実習を「給食管理実習Ⅰ」、 「校外実習」のための科目を「給食管理実習Ⅱ」としている。 この「給食管理実習Ⅱ」という科目を表す名称も、多様化する栄養士業務とそれに 伴う校外実習のカリキュラムの変化によっては、変更する必要があると考える。 また、専門分野の教育内容としては、「校外実習」では「給食の運営」、「臨地実習」 では「給食経営管理論」「臨床栄養学」「公衆栄養学」となっている。 (2)「給食の運営」、「給食経営管理」の教育目標および実習内容(表1) 「給食の運営」(校外実習)の教育目標は「給食業務を行うために必要な、食事の計 画や調理を含めた給食サービス提供に関する技術を習得する。」となっている。 これに比べると「給食経営管理論」(臨地実習)の目標は「給食運営や関連の資源 を総合的に判断し、栄養面、安全面、経済面全般のマネジメントを行う能力を養うこ ととし、マーケティングの原理や応用について理解するとともに、組織管理などのマ ネジメントの基本的な考え方や方法を習得する。」となっている。 さらに実習内容については「給食の運営」(校外実習)では「給食の運営に必要な、 給食費、献立作成、材料発注、検収、食数管理、調理作業。配膳などの基本的業務に 関する実習。」となっている。 「給食経営管理論」(臨地実習)では「給食全般のマネジメントができるように視野 を広げ、特定の業務を深く探求する実習。例えば喫食者訪問、調理作業の分析、衛生 管理、従業員への衛生教育、食事オーダー、経営分析などを通して課題を発見し、問 題解決策を検討するなどが考えられる。」となっている。 そして、実習の組み立ては表13)のようにそれぞれで異なっている。 (3)受け入れ施設の諸事情による実習教育プログラムの格差 校外実習の「給食の運営」だけではなく、臨地実習の「給食経営管理論」の内容を 2

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一部プラスさせた教育プログラムを実施する施設が増えている。さらに、その施設の 特徴を生かした独自のオリエンテーションやプログラム作りを実施している施設もあ った。 特にオリエンテーションについては責任者自らが先頭にたち各部の責任者やスタッ フが一丸となって行っている施設もあった。その施設ではあらゆる部署での「実習生 受け入れ」により、オリエンテーションを実習生に対する施設アピールの機会と捉え、 施設への理解を深める為の共通内容を盛り込んで、施設の地域での役割・特色・目標・ 3 表1「給食経営管理論」と「給食の運営」の比較3)  給食業務を行うために必要な、食事 の計画や調理を含めた給食サービス提 供に関する技術を修得する。 教   育   目   標 実   習   内   容 実 習 の 組 み 立 て の 例 給食経営管理論(臨地実習) 給食の運営(校外実習)  給食運営や関連の資源を総合的に判 断し、栄養面、安全面、経済面全般の マネジメントを行う能力を養うことと し、マーケティングの原理や応用につ いて理解するとともに、組織管理など のマネジメントの基本的な考え方や方 法を修得する。  給食の運営に必要な給食費、献立作 成、材料発注、検収、食数管理、調理 作業、配膳などの基本的業務に関する 実習。  給食全般のマネジメントができるよ うに視野を広げ、特定の業務を深く探 求する実習。例えば喫食者訪問、調理 作業の分析、食材料の重点管理、栄養 士業務の分析、衛生管理、従業員への 衛生教育、食事オーダー、経営分析な どを通して問題を発見し、問題解決策 を検討するなどが考えられる。 給食システムの解説と見学 ↓ 献立作成 ↓ 食数処理 ↓ 食材料管理 ↓ 調理・配膳 ↓ 討論会・反省会 給食システムの解説と見学 ↓ 課題の計画づくり ↓ 課題への取り組み ↓ 整理と検討 ↓ 検討会・意見交換会 ↓ 発表会

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ポリシーなどをわかりやすくかつ熱心に説明する態勢ができつつあるようであった。 栄養士養成における校外実習の規定実習時間は45時間以上であり、実際には事前の オリエンテーションと一週間の実習で充足する。しかし、一週目は「給食の運営」 (校外実習)に沿った内容にし、二週目は「給食経営理論」(臨地実習)に沿った内容 にして、二週間であれば実習生を受けるという施設も出てきている。また、一週間の 予定の「給食の運営」(校外実習)の実習でも「給食経営管理論」(臨地実習)の一部 を加えた内容にしている施設も増えてきている。これらは受け入れ施設の諸事情によ ることが多い。そしてこれらの施設は主に病院に多い。受け入れの標準カリキュラム を臨地実習用に合わせているが、たとえ校外実習の学生が来たとしても内容をカット するなどして、校外実習用にも合わせられる態勢にしてあるということである。これ によりたとえ、校外実習と臨地実習の学生が日程上で重なったとしても、調整がつき やすくなるということである。このように受け入れ施設としての苦労も垣間見られる が、また一様に栄養士・管理栄養士の資質向上の為に、カリキュラムの工夫も感じら れた。 そして、平成19年度には三週間でなければ受け入れないという施設(病院)まで現 れた。「臨地実習」は、「臨床栄養学」「公衆栄養学」「給食経営管理論」で4単位以上 (うち、校外実習に係る「給食の運営」1単位を含む)が必要であるが、「臨床栄養学」 中心と明示されており、4単位中最大限3単位(三週間)を病院での「臨床栄養学」 とすることができる3)。病院側が「臨床栄養学」重視の「臨地実習」の受け入れを可 能とするように準備を整えていることがうかがえる。さらに、そこにはその施設独自 の理論と理由が存在している。「学生たちは、一週目で施設の雰囲気になれ、二週目 で自分の立場を理解し、三週目でやっと自発的に動けるようになる。」というもので あり、最低三週間実習しなければ、学生自身にもその施設の特徴がわからないだろう し、何よりも学生自身の資質を見極められないというものだった。そこにはその施設 の、若年層の離職、中間層の人材不足という切実な事情が存在した。「栄養士養成の 学生でも管理栄養士養成の学生でも、有能でやる気のある人は、管理栄養士の資格取 得後に、即戦力として、いつでもほしいのです。」というものであった。 本校においては、栄養士養成としての「校外実習」の準備をした学生を送り出して きたわけだが、「臨地実習」の実習内容が含まれてきたため、ついて行くのが大変だ ったという声を学生から聞くことが多くなってきた。病院においては、この傾向は今 後益々広がっていくものと思われる。実習施設が病院の場合は、より一層それらに対 応するための事前指導が必要になってくる。しかし、その為の指導時間が確保されて いない現在、それをどうするかがこれからの課題となってくる。 (4)「給食管理実習Ⅱ」の動機づけとしての「目的」 学生への動機づけとして、校外実習の位置づけを卒業論文の代わりとしている。 そして以下の7項目を事前指導としての「校外実習の目的」とした。 4

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1)テーマを見つけて調べ、まとめるおもしろさを知る(問題意識力、企画力、 まとめる力) 2)協力する喜びを知る(チームワーク力、協力関係、調整力) 3)コミュニケーションの大切さと喜びを知る(情報交換力) 4)社会との関わりを体験し、自分の位置を確認する(自己管理力) 5)関わってくださる方々のありがたさを実感する(感謝する心) 6)プレゼンテーション力の大切さを知る(表現力、アピール力) 7)以上の事を通して、二年間のまとめをすると共に卒後教育の基礎を養うこと を目的とする。 以上のことは、学内で前期に行う事前指導の「校外実習オリエンテーション」1回 目において説明している。ここでの目的としては、これから行う校外実習の心構えを させることである。 さらに事後指導として行う後期授業「給食管理実習Ⅱ」の1回目においてもほぼ同 様の内容を、今度は以下のような二つの目標および最終目標に分けて示している。 「学外実習報告会(給食管理実習Ⅱ)は以下のAとBの二つの目標を遂行しながら 学んで行くことにあり、Cを最終目標とする。」 A.学習目標 1)実習の研究テーマのまとめ方を学ぶ(手法を体験する) 2)情報交換(他の施設を知る、共通テーマとして他のケースを知る) 3)プレゼンテーションの練習(表現力、アピール力、手法を学ぶ) B.態度目標 1)チームワーク(グループを通しての協力関係、調整力を学ぶ) 2)コミュニケーション力(意思疎通を高める、表現力、想像力、理 解力を高める) 3)自己管理能力(自分をコントロールしながら責任感、調整力を養う) C.最終目標 1)学外実習発表会を二年間の総まとめとする 2)このことで培った自信を卒後教育の基礎とする 以上のように、特に動機づけには力を入れ、前期と後期二回にわたって喚起するよ うにしている。 5

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2.

「給食管理実習Ⅱ」

(実習事後指導)の内容

(1)学外実習(校外実習)報告会について 学外実習(校外実習)報告会は年に一度、学外実習の総まとめとして各施設へ行っ た班ごとに行っている。実際に発表している内容は「実習の報告」ではなくて「研究 課題」であり、名称としては「校外実習・研究課題発表会」としたほうが適するとい える。以前は実習内容および実習施設の紹介であったようだが、我々が実習担当にな った時から研究課題の発表会とした。その理由は二つあり、一つは学生達に研究課題 (研究テーマ)を持って実習に臨んでもらうためと、もう一つは実際の「実習報告要 旨」と「研究テーマ」の二つを発表することが時間的に不可能なためである。 (2)「A研究テーマ」と「B実習報告要旨」の抄録作成 実際の校外実習ではこの二つが各学生の課題となっており、実習直後にレポートと してそれぞれ「A研究テーマ」「B実習報告要旨」としてまとめて提出させている5) その後、事後指導として、このA・B二つのレポートを各自が持ち寄り、班ごとに内 容を点検し、まとめ直し、清書したものを、それぞれ「A研究テーマ」と「B実習報 告要旨」の2種類の抄録として作成させている。そしてこの2冊の抄録を学生全員に 配って発表会に臨んでいる。

3.給食管理実習Ⅱの進め方と「システム」と「道具」について

この授業では毎年、学生数約100名、14∼15施設、25∼30班ができる。ちなみに2008 年度は施設別に、病院7施設で9班、小学校1施設で2班、保育園1施設で3班、老 人福祉施設1施設で1班、事業所3施設で10班、最後に自衛隊1施設で2班である。 さらにこの給食管理実習Ⅱは学外実習報告会までは15回の授業(各90分)、発表練 習、発表会(1∼4時限・360分)という日程構成になっている。 以上の班数と日程を教員2名で率いていくためには、いくつかの「システム」(し くみ)、そして「道具」(仕掛け)をつくっておく必要がある。後期の事後指導におい ては授業が1週間に1時限取れるので、ここではこの時間を活用して様々な方法を試 しながら実施してみた。 以下はこの授業(給食管理実習Ⅱ)での学外実習(校外実習)報告会までの進め方 である。 毎回、授業は次の順序で進められている。 1. 全員そろって開始のミーティング → 作業の注意事項の説明・連絡事項・出 欠確認 6

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7 表2 給食管理実習Ⅱ計画表(日程表) 平成20年度 後期 回 金曜日 9.26 10. 3 10.10 10.17 10.24 10.31 11. 2 11.14 11.21 11.28 12. 5 12.12 12.19 1. 9 1.16 1.23 1.30 2. 6 内   容 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 オリエンテーション 報告会資料について説明 B 実習報告要旨 下書き提出(手書き) 下書き返却・訂正・再提出 内容修正繰り返し  パソコン使用開始 印刷原稿最終提出 A 研究テーマ 第一稿提出 内容修正 第二稿提出 絵コンテ(スクリプト+媒体)作成 スクリプトチェック、媒体チェック 各班で発表準備 報告会   10:00∼16:10  5−1教室  *必ず出席すること  (実習報告書・日誌貸し出し開始・研究レポート)→貸し出し簿に記録 B実習報告書が終了して いる班はA研究テーマへ

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8 表3 作業進行報告表記入例 回 金曜日 作業進行予定 作業進行状況 コメント(印) 役割を決めました。今後の進行 について先生から説明がありま した。 報告書B下書きの続き(量が多 くなってしまいそうです)次回 はまとめ・感想を記入して提出 する予定です。 下 書 き が 終 了 し て 1 回 目 の 提 出 を し ま し た 。 時 間 が 空 い て し ま っ た た め 、 班 の 研 究 テ ー マ A を 決 め ま し た ( 「 献 立 作 成 方 法 」 、 サ ブ テ ー マ 「 給 食 を楽しくする要素」) 10/16の修正点を直しました。 下書きが完成しました。最後の 感想は、もう少し考えてパソコン に入力しながら書きたいと思う のですがよろしいでしょうか。 PC入力を開始し、Ⅲ6)給食 数まで進みめました。Ⅲ実習内 容、Ⅳの感想を考えました。次 回は入力の続きを進めます。 (検印) ページ数を増やす予定で すので大丈夫ですよ。順 調に進んでいます。あせ らずに進めてください。 原 稿 が 重 な り こ の 班 の 原 稿 を チ ェ ッ ク で き ま せ ん で し た 。 し か し 時 間 を 無 駄 に せ ず 次 の 作 業 を 行 っ て い た の は 感 心 で す 。 分 か り や す く 書 い て い ま す 。 修 正 点 をみてください。 修 正 す べ き 点 、 付 け 加 え た と こ ろ を 1 つ ず つ 着 実 に 行 っ て い ま す 。 う ま く 文 章 に 付 け 加 え て く だ さ い 。 感 想 に つ いてはOKです。PC入 力後の提出は10/23の原 稿を入れてください。 班長(  ) 副班長(  ) 作業進行報告表 オリエンテーション 班長交代しました。(授業時間 以外は副班長が班長の役割担当 します) 報告書B下書き開始 (Ⅰ実習目的∼Ⅲ5献立作成方 法まで)10/9には終える予定 です。 了解しました。協力して 進めてください。次回の 予定、コメントなども入 れてみてください。頑張 って! 報告会資料について 説明 (実習報告書・日誌 ・研究レポート貸 し出し開始) B実習報告要旨 下書き提出 下書き返却・ 訂正・再提出   内容修正繰り返し   パソコン使用開始 9.26 10.3 10.10 10.17 10.24 10.31 11.7 1 2 3 4 5 6 7

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2. 給食管理実習Ⅱ計画表の確認 → 全員で各班の作業日程・予定の確認(表2) 3. 各班による作業開始 → 資料調べ・内容のまとめ・文章化・清書・発表準備(絵コンテ・原稿・媒 体つくりなど)、各班の必要に応じて場所を移動して作業する。 4.教員は学生からの質問、添削、相談などに応じる。 5.途中から教室が3カ所に分かれる → 1)一般教室、2)パソコン室、3)媒体作成室(栄養指導実習室)、そ れぞれの進路に必要な場所で作業を行う。 6.「作業進行報告表」(その年度特有の色彩がついている厚紙を使用)を「連絡ファ イル」(両開き形式)のファイル左側に挟み込み、学生とやりとりをする。(表3) →・各班で学生のコメント(作業進行状況)、それに対する教員のコメントを それぞれ書き込む ・A、Bそれぞれの原稿を「連絡ファイル」に入れて提出させる(ファイル 右側へ) ・原稿を添削したものを「連絡ファイル」に入れて返却する ・原稿の添削回数と完成度をチェックする為に「報告資料作成進行チェック 表」を別につくり活用する(ファイルの右側へ挟む) ・「連絡ファイル」は「専用容器」に保管する。 担当教員によって、「連絡ファイル・専用容器」の色彩を変えて区別する 7.「保存ファイル」の活用 → 現時点で必要のない資料は全てここに保管して共有する 8.「連絡ファイル」の「役割」「システム」を確認し、使用方法の「ルール」を徹底 させる ①作業の進行状況を報告させる(予定との誤差を常に確認させ、出来たこと・やり 残したこと・次回の予定・コメント等を短文で書かせる練習も兼ねる)(表3) ②コミュニケーション(進行状況に対しては適切な指示を出し、コメントに対し は、学生をひたすら励まし・誉めることを心がける)(表3) ③原稿添削の繰り返し(方向性・整合性・方法・文章・レイアウト・発表原稿など に対して、毎回赤ペンを入れ、それを修正させて新原稿に書き換えさせる) 上記のように「システム」「道具」「ルール」等を駆使して授業を進行させていった。

4.作業内容と進行について

給食管理実習Ⅱにおいては年度末に行う学外実習発表会(研究課題発表会)をめざ して下記の内容と順序で作業を進めている(表2)。 9

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(1)B実習報告要旨 一番はじめに作成するのが、B実習報告要旨である。 これらについてはすでに述べたが、各自が校外実習後にレポートとしてすでに内容 をまとめ提出している。後期にそれを持ち寄り班ごとに内容を項目に沿って過不足な くまとめる。決められ書式に沿って指定の用紙(B4)で2ページ以上4ページ以内 にまとめる。 項目:各班の名称・実習期間・班員の氏名・施設の名称・沿革・施設の規模・特 徴・組織と運営・給食の運営全般・実習の内容・実習のまとめと感想   班ごとに以下の要領で作業をする。 ①下書き作成(手書き) (決められた用紙に鉛筆書きでまとめる。) ②清書(パソコン使用) (原稿を添削して返却し、チェック表が合格するまで 修正を繰り返し続ける。その為に「連絡ファイル」 を活用する。) ③要旨集の抄録を作成  (最終原稿を提出すると、それを原簿にして印刷する。 印刷したものを学生達が製本して抄録を作成する。) (2)A研究テーマ B実習報告要旨を先に作成し、班としてのまとめ方、指定の書式で書くことなどの 要領をつかんだ後A研究テーマの作業に入る。A研究テーマについては各自が実習前 に第1テーマ、第2テーマとして二つの興味あるテーマを持って校外実習に臨んでい たものである。最終的にはその時点でより興味があるテーマ一つに絞り、実習後にレ ポートとしてBと同様に提出させた。後期に各班でそれらを持ち寄り、それぞれが調 べてきたことから今度は各班のテーマとして一つに絞ってまとめ直し、あるいは調べ 直して作成する。 項目:各班の名称・実習期間・班員の氏名・表題・サブテーマ・目的・方法・結 果・考察・まとめ・参考文献 班ごとに以下の要領で作業を進める。 ①テーマを決める     (誰かがまとめた研究をたたき台にしたり、班員の まとめたものを合体させたり、あるいは全く別の テーマにしたり、などと各班で異なる。) ②下書き作成(手書き) (決められた用紙に手書きでまとめる。) ③清書(パソコン使用) (Bと同様に原稿を添削して返却し、チェック表が 合格するまで修正を繰り返し続ける。その為に 「連絡ファイル」を活用する。) ④研究テーマ集の抄録を作成(最終原稿を提出すると、それを原簿にして印刷す る。印刷したものを学生達が製本して抄録を作成 する。) 10

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11 図1 学外実習発表案 用紙 (使用媒体案:          ) (使用媒体案:          ) (使用媒体案:          ) (使用媒体案:          ) (使用媒体案:          ) (使用媒体案:          ) 施設名 No. 班名 班長

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B実習報告要旨の途中から、時間の合間にA研究テーマを始めている班もあり、ま たBが完全に完成してから、Aに取りかかる班もある。各班ともそれぞれの進度に合 わせて作業を進めて行く。 (3)発表会の準備 ①絵コンテとスクリプト(台本)作成(図1) (絵コンテには、表題・サブテーマ・目的・方法・結果・考察 ・まとめ等の内容や図・表・イラストなどの媒体の下書き を、左側の四角の中に書き込む。 スクリプト(台本)として発表原稿のセリフを右側の大か っこ内に書き込んで行く。) ②媒体作成   (絵コンテに描き込んだ内容を、A4用紙に書き写して書画カ メラ使用の媒体を作成する。) ③発表練習   (練習日を何日か決め、各班が必ず1回以上の練習をするよう にした。出欠もチェックするようにした。 実際に発表練習をすることにより、媒体の作り直しや調整、 さらに発表時間の調整、演技のやり方などに大きな変更が生 じることもある。) (4)発表会(9:00∼17:00まで 各班発表5分・質疑応答5分)(図2) (2年生全員の出席を原則としている。大きな会場をとり、1年生の見学 を義務づけている。他の学科のいろいろな方々にも声をかけて会場に発 表を聴きにきていただいている。各班の発表の順番と予定時間、休憩時 間などを決め、その予定に従って進める。質疑応答を活発にする工夫が 必要である。教員からのコメントも短い時間内で必要になる。各班の持 ち時間を守らせること。各自の評価表を基礎にしてベスト5の班を後に 発表する。)

5.抄録作成作業および発表会についての「ルール」

(1)抄録作成 近年以前と比べ予定通りに抄録作成が進む理由としては以下のようなことが挙げ られる。 1)事前課題および実習レポートの作成 ①B実習報告要旨については、前段階とも言うべきレポートを校外実習後に提 出させていたが、 平成19年度からは前々段階として春休み中に課題レポー トの宿題としても提出させている。(この段階では、教科書から関係事項を 12

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13 図2 校外実習報告会・評価表 実習施設名・班 ○○病院 1班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 実習施設名・班 ○○病院 1班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 実習施設名・班 ○○本社営業所 3班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 実習施設名・班 ○○学校 2班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 実習施設名・班 ○○病院 2班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 実習施設名・班 ○○保育園 1班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 実習施設名・班 ○○本社 ○○店 3班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 実習施設名・班 ○○本社営業所 2班 研究テーマ 1 研究テーマの目的、結果が良く理解できた 2 進行の時間的配分は適切だった 3 媒体の提示により要点を理解しやすくなった 4 媒体は見やすいものだった 5 知識、情報として役立つものだった 6 プリントは後から参考資料となるものか 自由記述(気づいたこと、感想など) 計 5.良い 合計 3.普通 1.悪い 4.やや  良い 2.やや  悪い 5 5 5 5 5 5 4 4 4 4 4 4 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 班名        クラス  NO.     氏名 1 2 3 4 5 6 7 8

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ノートに書き写すだけである。) 班としてまとめる段階では三度目であるため、さすがにどの学生も取りか かりが容易であった。平成18年まではこうは行かず、もっと難航していた。 ②A研究テーマについては、校外実習前に班単位で決めていたが、これを個人 単位の課題に移して各自に責任をもたせて実習に臨ませている。 ③平成20年度から校外実習後に、それまでなかった前段階課題として、A研究 テーマのレポートも提出させている。 (①∼③によって作業の流れが格段にスムーズになったといえる。) 2)B実習報告要旨から作成させる 取り掛かりやすいものから先にさせることにより徐々に調子が上向き、作業 が順調にいく。 (2)発表会 1)発表の「場」をつくる (非日常的で儀式ばった場をつくり、少しの緊張と大きな不安を乗り越えて、 協力しながら、大勢の前で発表することがどのようなものかを体験させる。) 2)発表の形式や方法・順番・質問方法・時間・予定・など事前に決めておく (これらのことで、30チームが滞ることなく発表を実施できる。) 3)発表会当日の質問を、少しつっこんだ質問や角度を変えた疑問点にして聞く (少しの緊張感を与えることと、発表自体をおもしろくするために有効である。) 4)静かに聴かせる (自分達の発表をするだけではなく、他の施設の様子や他の班の発表を聞くこ とで、興味が倍増する) 5)各個人に各班の発表評価表を書かせる(図2) 評価項目は、①∼⑥までの6項目あり5段階評価とし、合計点で算出する。 ①聞き取りやすい話し方だった ②媒体は見やすく、要点を理解しやすいものであった ③研究テーマの目的、結果が良く理解できた ④知識、情報として役立つものだった ⑤進行の時間的配分は適切だった ⑥プリント(抄録)は後から参考資料となるものだった ⑦自由記述(気づいたこと・感想など) (合計点を人数で割り、平均点の上位のものからベスト5の班を決める基礎資 料とする。これにより発表会への意欲を高め、評価をつけながら聴くことで 集中力も高めることができる。) 14

(15)

6.学生の反応について

学外実習報告会終了直後にアンケートを実施した。 その結果、以下のようなことがわかった。 ⃝学外実習報告会を体験してどう思ったか。 a. よかった (47名) b. 少しよかった (28名) c. どちらともいえない (11名) d. よくなかった (0名) a + b (よかった・少し良かった) (87.2%) c (どちらともいえない) (12.8%) 上記のように体験しておおよそよかったと思った学生は87.2%にのぼった。 これは発表会の意図としては成功したといえる。 さらに肯定的な意見としては以下のようなものがあった。 ⃝自由記述・感想  ・他の施設の内容をいろいろ知ることができた。 ・協力してやりとげて絆が深まった ・人前で発表する体験ができた ・まとめたことで理解が深まった ・社会に出て役にたつ ・発表の仕方を学んだ ⃝その他の意見・感想 ・工夫すると見てくれる人も楽しんでもらえることがわかった ・1年生には見せる前にもっと事前学習をさせるべき ・もっと深い内容にしたかった     など 上記のように、かなり建設的で肯定的な意見が多かったことは、途中の経過が順調 に行ったことによるものなのか、それとも発表自体を楽しめた結果によるものなのか、 その両方によるものなのかは、定かではない。ただ、この後期の給食管理実習Ⅱの授 業が学生にとって、意義深い授業になったということは信じられるものである。 ただし「結果よければ全てよし」ということでは、数々の途中経過の問題点を見逃 してしまう。もう一度様々な箇所の注意深い見直しが必要といえる。 15

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7.今後の課題とまとめ

一番の課題はどのような栄養士・管理栄養士を養成したらよいのかが、定まってい ないということである。栄養士法に照らしてみても、栄養士・管理栄養士の定義は書 かれていても、方向性、目指すところ、ポリシー、心構えなどについてはどこにも書 かれてはいない。それは栄養士・管理栄養士業務が多様化し変化を遂げる中で、職務 そのもの、業務そのものが未だ定まりきれていないということを意味しているのかも しれない。日本栄養士会、全国栄養士養成協会においても、筆者が知る限りにおいて は、目指すべき栄養士像6)は明確となってはいない。そのため本校、本学科において も、めざすべき栄養士像が未だ定まらないまま現在に至っている。 それが定まらぬことには、学生に何を身につけさせ、どのような方向に導いて行け ばよいのかが、今ひとつ不明確なままである。本学科の教育の中では、栄養士として の部分と社会人としての部分があるが、現状では社会人としての教育に力を入れるこ とが学生の為になると思われる。 いずれにせよ、本校、本学科独自の目指すべき栄養士像というものをつくる必要が ある。この共通認識にたった上で、一致した教育を行うことこそ、養成校の教育力と して、最も効果を上げることになると思うからである。 また、給食管理実習Ⅱの科目に限らず、毎日の授業で学生を集中させるためにはど うすればよいかということは、これからも必要な視点である。 まずは、現在手がけている給食管理実習Ⅱの科目から、実習のまとめ方、発表をス ムーズに行う方法の模索を続けて行きたい。 ところで「給食管理実習Ⅱ」という名称は、「研究課題(研究テーマ)の発表会」 を実施した時を機会に別の名称に変えるべきだったかもしれないが、従来通りの名称 にしてしまった。 初年度は、指導方法、抄録のまとめさせ方、作り方、報告会の仕方など、わからな いままに、ただ発表会の形を整えることに精一杯であった。その為次年度からは、 「学外実習(校外実習)報告会」までの教授法を充実させるための、試行錯誤が始ま った。 また、良い学外実習をめざすのであれば、良い実習先すなわち、そこで働く栄養 士・管理栄養士の指導によって、学生たちが最終的に栄養士・管理栄養士を目指すよ うな意欲を持てる施設を選んで行く必要がある。 受け入れ施設との折り合いや条件もあると思うので、この課題についても今後検討 して行きたいと思っている。 校外実習の事前指導・事後指導・発表までの作業を通じて見えてきたことは、繰り 返しながらスパイラル(らせん)方式で進めて行くことが、一時は時間がかかるが、 最終的には一番効率がよいやり方だということである。学生達はエンジンのかかりが 遅い。その為早くウォーミングアップ状態にさせることが有効である。ウォーミング 16

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アップ状態をつくるためには、繰り返しの学習・作業をさせることが肝要である。 それも全く同様ではなくスパイラル方式に少しずつレベルを上げてゆくやり方が有 効であると感じた。これを繰り返していると、ある時期に急に伸び出す学生達がいる。 これらのことは、データー的に検証できた訳ではないので、今後の研究課題としたい。 たとえささやかであっても、「道具」、「システム(しくみ)」、「ルール」は教育効果 を上げる為の重要な要素であると感じた。今後も効果的なものを見つけ出しては利用 して行きたい。 引用文献 1)矢島麻由美・児玉ひろみ『淑徳短期大学紀要』第47号、2007、p17-33 2)管理栄養士養成施設における臨地実習及び栄養士養成施設における校外実習要項(平成 14年4月1日文部科学省・厚生労働省通知) 3)臨地・校外実習の実際 ― 改正栄養士法の施行にあたって(平成14年10月(社)日本栄 養士会(社)全国栄養士養成施設協会 編) 4)「管理栄養士・栄養士養成施設カリキュラム等に関する検討会」報告書(平成13年2月 5日 厚生省) 5)豊瀬恵美子他:四訂給食管理実習・校外編2006、p1-7 6)井上浩一:栄養士制度改正に向けた施策の基本的考え方 ― 課題解決のための施策の方向 性をまとめた栄養士制度検討会報告より―(栄養日本 第50巻9号 2007年 7-16) 17

参照

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