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高齢マウスの下顎に特徴的な細胞外マトリックス分解酵素の発現に関する研究

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Academic year: 2021

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高齢マウスの下顎に特徴的な細胞外マトリックス分

解酵素の発現に関する研究

著者

影山 曜子

52

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

歯博第879号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130033

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- 14 -

論 文 内 容 要 旨

組織は細胞と細胞外マトリックスから成り,細胞外マトリックスは細胞に外部環境を提供して細胞 の分化や機能を制御している。細胞外マトリックスには多様なタンパク質が含まれ,細胞はそのタン パク質の産生と分解を通して細胞外環境をリモデリングする。皮膚等では,組織の老化に細胞外マト リックスの分解が関与することが示唆されているが,歯や歯周組織の老化に関する情報は乏しく,細 胞外マトリックス分解酵素の老化への関与については不明である。そこで本研究では,歯と歯周組織 の老化に関わる細胞外マトリックス分解酵素の特定を目的とし,定量性に優れたcap analysis of gene expression (CAGE)法を用いて,若齢マウスと高齢マウスの下顎を対象に発現遺伝子を網羅的に解析 した。生後10週齢(若齢)と生後50週齢(高齢)のC57BL/6系雄性マウスの下顎を摘出し,皮膚と筋 を除去して,歯根・歯根膜・歯槽骨を含む下顎臼歯部を採取した。採取した試料を破砕後,トータル RNAを抽出してCAGE法による網羅的遺伝子解析を行い,高齢で発現の高い細胞外マトリックス分解 酵素を同定した。さらに,同定した細胞外マトリックス分解酵素について,Real-time PCR法を用い, 10週齢と50週齢のマウス下顎臼歯部におけるmRNA発現量を調べて統計学的に解析した。また,同定 した細胞外マトリックス分解酵素の組織における分布を免疫組織化学的に検討した。 CAGE法による解析の結果,検出された23,290個の遺伝子のうち,362個の遺伝子が10週齢よりも50 週齢で発現が増加した(FDR < 0.01)。さらに,高齢で発現の高い362個の遺伝子の中に,細胞外マト リックス分解酵素であるMMP3,MMP10およびMMP12が含まれていた。また,これらのMMPについ てReal-time PCR法で定量解析を行ったところ,MMP3とMMP10のmRNA発現量は10週齢より50週齢 で有意に高かった。MMP12については,50週齢でmRNA発現量が高くなる傾向がみられたものの,統 計学的に有意差は認められなかった。免疫組織化学的な検討では,歯槽骨周囲の結合組織や根尖部の 歯根膜に,MMP3の免疫反応が散在性にみられた。さらに,歯槽頂付近の歯根膜細胞にもMMP3の免 氏 名(本籍)   : 影かげ 山やま 曜よう 子こ(福島県) 学 位 の 種 類  : 博 士  ( 歯 学 ) 学 位 記 番 号  : 歯 博 第 8 7 9 号 学位授与年月日  : 令和 2 年 3 月 25 日 学位授与の要件  : 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻  : 東北大学大学院歯学研究科(博士課程)歯科学専攻 学 位 論 文 題 目  : 高齢マウスの下顎に特徴的な細胞外マトリックス分解酵素の発現に 関する研究 論 文 審 査 委 員  : (主査)教授 髙 橋 信 博 教授 笹 野 泰 之   教授 服 部 佳 功

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- 15 - 疫反応が認められた。MMP10の免疫反応は,歯槽骨とセメント質の歯根膜側表層やセメント質と象牙 質の境界部に局在し,10週齢と比較して50週齢でより広範で強い免疫反応が認められた。 以上のことから本研究により,マウスの下顎におけるMMP3とMMP10の発現量は加齢に伴って増加 し,細胞外マトリックスの分解を亢進することで,歯と歯周組織の老化に関与する可能性が示された。

審 査 結 果 要 旨

超高齢社会の日本において,生涯にわたり口腔機能を健全に保ち,健康寿命を延伸することは,歯 学における喫緊の課題である。しかし,その課題解決ために必須である高齢者の口腔領域,とくに歯 や歯周組織の老化に関する組織学的,分子生物学的情報は極めて乏しい。そこで本研究では,歯と歯 周組織の老化に伴う細胞マトリックスの分解に関わることが予想される細胞外マトリックス分解酵素 を対象に,若齢マウスと高齢マウスの歯根・歯根膜・歯槽骨を含む下顎臼歯部を用いて,対象酵素遺 伝子の発現を網羅的に検討した。遺伝子発現の検出には,cap analysis of gene expression (CAGE)法 を用いて定量性を高め,さらに,発現上昇が見られた遺伝子については,Real-time PCR法を用いて発 現上昇を検証している。加えて,発現上昇の見られた細胞外マトリックス分解酵素については,実際 の組織において,免疫組織化学的手法を用いて,その発現分布を検討している。 本研究の結果,CAGE法にて23,290の遺伝子が同定され,内362の遺伝子が,若齢マウスよりも高 齢マウスにおいて,発現が増加していることが明らかになった。その遺伝子の中に,細胞外マトリッ クス分解酵素であるMMP3,MMP10およびMMP12が含まれていることが判明している。このことは Real-time PCRで確認され,そのmRNA発現量はMMP3およびMMP10で有意な増加を示していること も明らかになっている。さらに,免疫組織化学的手法により,MMP3が歯槽骨周囲の結合組織や根尖 部の歯根膜細胞に,MMP10はMMP3と比べて広範囲,すなわち,歯槽骨とセメント質の歯根膜側表層 やセメント質と象牙質の境界部に局在することが明らかになり,これらの発現は高齢マウスで強くな ることが明らかになった。 これらの研究結果は,マウスの下顎骨,とくに下顎臼歯部において,加齢とともにMMP3とMMP10 といった細胞外マトリックス分解酵素の発現が増加し,下顎臼歯部の老化に関与することを示唆する。 老化による細胞外マトリックス分解酵素の増加は,老化に伴って劣化した細胞外マトリックスの分解 の亢進とそれに引き続くリモデリングを意味し,高齢者の歯や歯周組織を如何に健全に維持するかに おいて,重要な情報となるものと思料される。 以上のことから,本研究論文は博士(歯学)の学位に値するものと判断する。

参照

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