West症
候 群 の 発 作 時脳 波 に関 す る研 究
岡 山大 学 医 学 部 小 児 神 経 学 講 座(指 導:岡鍈 次 教 授)
浅 野 孝
(平成10年3月24日 受 理)
Key words: West症 候 群,発 作 時 脳 波,Tonic spasms,部 分 発 作
緒 言 West症 候 群(以 下WSと 略 す)に お け る hypsarrhythmiaお よび 全 般 発 作 に属 す るtonic spasms(以 下TSと 略 す)の 発 現 に は,脳 幹 を 主 とす る皮 質 下 構 造 が 重 要 な 役 割 を果 た して い る と考 え られ て い た1∼4).し か し近 年,WSの 中 に 脳 腫 瘍,皮 質 形 成 異 常 な どの 皮 質 病 変 の 切 除 術 に よ り発 作 が 抑 制 さ れ る もの が あ る こ とが 知 ら れ5∼8),と くに 部 分 発 作 を合 併 す るWSに お い て,TS発 現 へ の 大 脳 皮 質 の 関 与 が論 じら れ て い る9∼16). WSの 症 例 に お け る部 分 発 作 の 発 現 の 様 相 に は い くつ か の パ ター ン が あ る16).そ の 中 でWS の 時 期 に,TSが 連 発 す る シ リー ズ 形 成 性TSと 部 分 発 作 と を併 せ もつ 症 例 で は,両 者 が 近 接 し て 一 連 の 発 作 中 に 出 現 す る い わ ゆ る複 合 型 シ リ ー ズ発 作 が 認 め ら れ る こ と が 多 く,こ れ らの 症 例 で はTSの 発 現 へ の 大 脳 皮 質 の 関 与 が 特 に大 き い と推 測 さ れ る. 一 方,発 作 時 脳 波 は て ん か ん の 病 態 を 直 接 表 現 す る 現 象 と して 重 要 で あ り,発 作 時 脳 波 の 検 討 に よ りWSの 病 態 生 理 解 明 へ の 手 が か りが 得 られ る と考 え られ る.WSの 発 作 時 脳 波 に 関 す る研 究 は これ までに もい くつ か 認 め られ るが17∼20), 最 近 の 知 見 を加 味 した 詳 細 な 分 析 は 未 だ 乏 しい. そ こ で 多 数 のWSの 発 作 時 脳 波 を分 析 し,そ れ とWSの 病 態 生 理 との 関 連,な ら び にTSの 発 生 機 序 に つ い て 検 討 した.と くにWSの 時 期 に 部 分 発 作 を合 併 しな いWSと,WSの 時 期 に 部 分 発 作 を合 併 す るWSに お け るTSの 発 作 時 脳 波 所 見 を比 較 し,TS発 現 に お け る大 脳 皮 質 の 関 与 に つ い て詳 細 に 検 討 した. 対 象 と 方 法 対 象 は1975年1月 か ら1995年12月 の 間 に 岡 山 大 学 小 児 神 経 科 に 入 院 したWSの うち,シ リー ズ 形 成 性 お よ び単 発 性 のTSの 発 作 時 脳 波 が30 回 以 上 得 ら れ た53例(男 児35例,女 児18例)で あ る.脳 波 検 査 時 年 齢 は,生 後1ヶ 月 か ら1歳 7ヶ 月 で あ っ た. WSの 診 断 基 準 は,発 作 間 歇 時 脳 波 上hypsar rhythmiaを 認 め,か つ 発 作 型 と し てTSを 認 め る もの と し た. こ れ らの 症 例 を以 下 の3群 に 分 類 し た. Ⅰ群:潜 因 性WS 5例,Ⅱ 群:症 候 性WSで WSの 時 期 に 部 分 発 作 を 認 め な い もの29例,Ⅲ 群:症 候 性WSでWSの 時 期 に部 分 発 作 を認 め る もの19例.な お,潜 因性WSは 以 下 の6項 目の 条 件21,22)を満 た す 症 例 で あ る.(1)基礎 疾 患 が な い,(2)TS発 症 前 の 発 達 が 正 常,(3)神 経 学 的 診 察 所 見 に 異 常 が な い,(4)TS発 症 に 先 行 す る発 作 が な い,(5)hypsarrhythmiaに 左 右 差 が な い,(6) 神 経 画 像 所 見 に 異 常 が な い. 表1に3群 の 成 因 を示 し た.Ⅱ 群,Ⅲ 群 と も に 出生 前 要 因 が 多 い が,と くに Ⅲ 群 で は,原 因 が 明 らか な12例 中11例 が 出 生 前 要 因 で あ っ た. 皮 質 形 成 異 常,Aicardi症 候 群 な どの 大 脳 形 成 異 常 は,5例 中4例 が Ⅲ 群 に 属 し て い た. 3群 に つ い て,TS出 現 に 関 連 す る臨 床 的 事 項 お よ び,TSの 発 作 時 脳 波 所 見 の 比 較 検 討 を行 っ た.な お 合 成ACTH療 法 開 始 後 の 脳 波 は 除 外 し た. 発 作 時 脳 波 の 検 討 項 目 に は,波 型,単 発 性TS 39
の 比 率,非 対 称 の 比 率,シ リー ズ 形 成 発 作 中 の 発 作 間 隔,脳 波 上 確 認 され たTSの 持 続 時 間 を と りあ げ,Ⅲ 群 で は,複 合 型 シ リー ズ 発 作 に つ い て も検 討 した. 表1 成 因 追 跡 期 間 は,2年11ヶ 月 か ら23年0ヶ 月 で あ り,有 意 差 検 定 に は,x2検 定,Student's t検 定 ま た は,Mann-Whitney検 定 を用 い,p≦0.05 を も っ て有 意 と した. 結 果 1. TSの 出 現 月 齢 53例 のTSの 出 現 月 齢 は,生 後0ヶ 月 か ら生 後10ヶ 月 で あ っ た.Ⅰ 群 で は5例 全 例 が 生 後4 ∼6ヶ 月 で あ っ た .Ⅱ 群 では,生 後3ヶ 月1例 (3.5%),生 後4∼6ヶ 月17例(58.6%),生 後 7∼10ヶ 月10例(34.5%),不 明1例(3.5%) で あ っ た.Ⅲ 群 で は 生 後3ヶ 月 以 前10例(52.6 %),生 後4∼6ヶ 月7例(36.8%),生 後10ヶ 月2例(10.5%)で あ っ た.全 体 で は 生 後5ヶ 月 が 最 も 多 か っ た が,生 後3ヶ 月 以 前 の 早 期 発 症 例 は Ⅲ 群 に 多 く,生 後7ヶ 月 以 後 の 乳 児 期 後 半 発 症 例 は Ⅱ群 に 多 か っ た. 2. 左 右 非 対 称 に 関 す る臨 床 事 項 Hypsarrhythmia, TS,神 経 画 像 所 見 の 非 対 称 は,Ⅰ 群 で は 定 義 上 み ら れ な か っ た.Hypsarr hythmiaに 非 対 称 を 認 め た の は,Ⅱ 群13例(44.8 %),Ⅲ 群10例(52.6%)で あ り,TSに 非 対 称 を認 め たの は,Ⅱ 群6例(13.8%),Ⅲ 群8例(42.1 %),頭 部CTま た は 頭 部MRI上 非 対 称 性 の 異 常 を示 し た の は,Ⅱ 群10例(34.5%),Ⅲ 群9 例(47.4%)で あ っ た.い ず れ も Ⅱ群 とⅢ 群 の 間 に は,有 意 差 は 認 め られ な か っ た. 3. 部 分 発 作 の 出 現 追 跡 期 間 中 に 部 分 発 作 を 認 め た 症 例 は,Ⅰ 群 の1例(20.0%),Ⅱ 群 の7例(24.1%)で あ っ た.定 義 上 Ⅲ 群 の19例 は 全 例 に お い てWSの 時 期 に 部 分 発 作 を認 め た.Ⅰ 群 の1例 で はWS消 退 後 に 部 分 発 作 が 出現 した.Ⅱ 群 の7例 の う ち 1例 で は,WS発 症 以 前 に 部 分 発 作 を 認 め た が WSの 時 期 に は 認 め ず,他 の6例 で はWS消 退 後 に 部 分 発 作 が 出 現 し た. 4. 発 作 時 脳 波 所 見 合 計527シ リー ズ,7,283回 のTSの 発 作 時 脳 波 に つ い て 検 討 し た. 群 毎 の 内 訳 は,Ⅰ 群43シ リー ズ,756回,Ⅱ 群 323シ リー ズ,4,145回,Ⅲ 群161シ リー ズ,2,382 回 で あ っ た. 1) 波 型 TSの 発 作 時 脳 波 に は,以 下 の4種 類 の 波 型 が 認 め ら れ た.(1)持 続 約0.3秒 か ら1秒 の10∼150
μV, 16∼20c/s速 波(fast waves,以 下fと 略 す),(2)100∼250μV, 2∼3c/s高 振 幅 徐 波
(high voltage slow waves,以 下hと 略 す), (3)広 汎 に 低 圧 化 を 示 す い わ ゆ る 脱 同 期(desyn chronization,以 下dと 略 す),(4)棘 徐 波 複 合 (spike-and-wave complex,以 下sと 略 す) で あ る.こ れ ら が 単 独 で 出 現 す る 場 合 と,い く つ か が 連 続 し て 出 現 す る 場 合 と が あ っ た .い く つ か が 連 続 す る 場 合,出 現 順 に 個 々 の 波 型 の 略 号 を並 べ て 記 した.例 え ば 速 波(f),高 振 幅 徐 波(h),脱 同期(d)が 続 い て 出 現 し た 場 合, こ れ をfhdと 記 し た.図1に そ の例 を 示 し た. 図1 発 作 時 脳 波 波 型 Tonic spasmsの 発 作 時 に,速 波(f),高 振 幅 徐 波(h),脱 同 期(d)が 続 い て 出 現 し て お り,こ れ を"fhd"と 表 記 す る.こ の 図 で は,発 作 時 脳 波 波 型 の 振 幅 は 右 半 球 に 比 し て 左 半 球 で 高 く,非 対 称 を 示 し て い る. Calibration: 50μV, 1sec. 2) 各 波 型 の 出 現 率 上 記 の 表 記 に従 っ て,発 作 時 脳 波 はf, fh, fd, fhd, h, hd, s, sd, dの9種 類 に 大 別 さ れ た. こ れ ら9種 の 波 型 に つ い て,そ れ ぞれ が 出 現 す る 割 合 を症 例 毎 に 求 め,こ れ を群 毎 に 平 均 し, 波 型 出 現 率 と した.ま た こ の 発 作 時 脳 波 波 型 を
構 成 す る4種 の 各 単 独 波 型(f, h, d, s) に つ い て,こ れ らがTSの 総 回 数 に 対 し て 出 現 す る 割 合 を症 例 毎 に 求 め た.こ れ を群 毎 に 平 均 し,延 べ 出 現 率 と し た.表2に 示 す ご と く,発 作 時 脳 波 波 型 に は 各 群 に特 異 的 な もの は な く, 各 波 型 の 出 現 率 に は3群 間 に 有 意 差 は 認 め られ な か っ た.延 べ 出 現 率 をみ る と全 て の 群 でhが 最 高 で,次 い でf, d, sの 順 で あ っ た.dの 延 べ 出 現 率 は Ⅰ群 で 有 意 に 高 か っ た(P<0 .05) が,そ の 他 の波 型 の 延 べ 出 現 率 に つ い て は3群 間 に 差 は 認 め ら れ な か っ た. 3) 各 波 型 の 出 現 様 式 f, h, sは い ず れ もTSに 一 致 して 単 独 で も み ら れ た.dはTSに 一 致 し た単 独 出 現 も あ る が か な り稀 で あ り,そ の 殆 どがfd, fhd, hd, sdの ご と く他 の 波 型 に 後 続 し て み ら れ た. fは,シ リー ズ起 始 部 お よ び 終 盤 のTSに 対 応 し て 出 現 す る こ とが 多 か っ た.す な わ ち,シ リー ズ起 始 部 のTSに 対 応 し てf, fhま た はfhd が み ら れ,シ リー ズ 中 盤 のTSで は 次 第 にfが 不 明 瞭 に な り,hま た はhdを 示 し,終 盤 に 再 びf, fh, fhdが 出 現 す る シ リー ズ が 多 か っ た. こ の よ うにfとhの 間 に は,密 接 な 関 係 が 認 め ら れ た. 4) TSに 後 続 す る 「律 動 波 型 」 対 象53例 中18例 の計3,305回 のTSの うち,105 回(3.2%)のTSに お い て,TSの 発 作 時 脳 波 に 続 い て,特 異 な律 動 波 型(以 下,「 律 動 波 型 」 と記 す)を 認 め た.こ の 「律 動 波 型 」 の 各 症 例 毎 の 出 現 率 は,0.2%∼16.7%で あ っ た.こ れ は 単 発 性,シ リー ズ形 成 性 い ず れ のTSに もみ ら れ,シ リー ズ形 成 性 発 作 の 場 合,シ リー ズ の 前 半,中 盤,後 半 い ず れ に も み ら れ た. こ の 「律 動 波 型 」 の 持 続 時 間 は0.7∼10秒 間, 振 幅 は30∼250μVで あ り,周 波 数 は16例 で は θ 帯 域(4∼7Hz),1例 で は δ帯 域(2∼3Hz), 1例 で は α 帯 域(9∼10Hz)で あ っ た.こ の 「律 動 波 型 」 の 波 型 は 規 則 的 で,症 例 毎 に ほ ぼ 一 定 し て い た.図2,図3に そ の 例 を示 し た. こ の 「律 動 波 型 」 は,一 側 局 在 性 に 出 現 す る 場 合(図2)と,両 側 局 在 性 ま た は 広 汎 性 に 出 現 す る場 合(図3)が あ り,一 側 局 在 性 活 動 の み を認 め る症 例 が1例(5.6%),一 側 局 在 性 活 動 と両 側 局 在 性 活 動 の 両 方 を認 め る症 例 が9例 (50.0%)両 側 局 在 性 活 動 の み を認 め る症 例 が 4例(22.2%),広 汎 性 活 動 の み を認 め る症 例 が 2例(11.1%),両 側 局 在 性 活 動 と広 汎 性 活 動 の 両 方 を 認 め る症 例 が2例(11.1%)で あ っ た. こ の18例 の概 要 を表3に 示 した. こ の 「律 動 波 型 」 は,両 側 局 在 性 ま た は広 汎 性 に 出 現 す る場 合 に も,振 幅 の と くに 高 い部 位 が あ る こ とが 多 く,こ れ を優 位 部 位 と し た.こ の 「律 動 波 型 」 の 出現 部 位 お よ び優 位 部 位 は 症 例 毎 に 一 定 して い る こ とが 特 徴 的 で あ っ た が, 全 体 的 に み て と くに好 発 部 位 は な か っ た. 表2 発 作 時 脳 波 波 型の 出 現率
註: f: fast waves fh: fast waves-high voltage slow waves
h: high voltage slow waves fd: fast waves-desynchronization
d: desynchronization fhd: fast waves-high voltage slow waves-desynchronization s: spike-and-wave complex hd high voltage slow waves-desynchronization
sd: spike-and-wave complex-desynchronization
同 一 症 例 で 一 側 局 在 性,両 側 局 在 性,広 汎 性 活 動 の う ち い くつ か 併 せ もつ 場 合 に も,そ の 出 現 の 範 囲 に よ っ て 振 幅,周 波 数,波 型 に 差 は な
か っ た. 図2 Tonic spasmsに 後 続 す る 「律 動 波 型 」 Tonic spasmsの 発 作 時 脳 波(fhd)に 引 き続 い て,下 線 で 示 し た よ うに 右 中 心 部 に θ 帯 域 の 律 動 波 型 を 認 め る. Calibration: 50μV, 1sec. こ の 「律 動 波 型 」 の 平 均 持 続 時 間 は 一 側 局 在 性 の もの で は1.9秒,両 側 局 在 性 の もの は2.4秒 で あ っ た が,広 汎 性 の もの は4.0秒 で あ り,他 に 比 較 して 長 か っ た. 5) TSに 後 続 す る 「律 動 波 型 」の 臨 床 的 背 景 この 「律 動 波 型 」 に 先 行 す るTSの 発 作 時 脳 波 波 型 をみ る と,前 記 の9種 類 の う ちs, sd, d を 除 く全 て の 波 型 が み られ,と く に こ の 「律 動 波 型 」 を併 い や す い 波 型 は な か っ た.ま た 先 行 す るTSの 発 作 時 脳 波 上 に 非 対 称 を認 め た のは, Aicardi症 候 群1例 の3発 作 の み で あ っ た. こ の 「律 動 波 型 」 は,そ の 殆 ど がTSの 発 作 時 脳 波 終 了 直 後 に 引 き続 い て 出 現 す る が,3例 の11発 作 で は,hd, fdのdの 起 始 部 に 出現 し た.発 作 時 の 筋 電 図 との 対 応 をみ る と,大 半 の 発 作 で この 「律 動 波 型 」 は 筋 電 図 の 放 電 終 了 後 に み られ る が,2例 で は 筋 収 縮 終 了 前 に 出 現 し て い た. ビデ オ-脳 波 同 時 記 録 お よび 直 接 観 察 に よる と,
こ の 「律 動 波 型 」 に 伴 う臨 床 的 変 化 は と くに 認 め られ な か っ た. 図3 Tonic spasmsに 後 続 す る 「律 動 波 型 」 Tonic spasmsの 発 作 時 脳 波(f)に 引 き 続 い て,広 汎 性 に θ 帯 域 の 律 動 波 型 を 認 め る.右 中側 頭 部 で 振 幅 が 最 高 で あ る. Calibration: 50μV, 1sec. 表3に 示 す ご と く,こ の 「律 動 波 型 」 は,Ⅰ 群 の5例 中1例(20.0%),Ⅱ 群 の29例 中4例 (13.8%),Ⅲ 群 の19例 中13例(68.4%)に み ら れ,Ⅲ 群 に 最 も 多 か っ た. Ⅰ群 の1例 お よ び Ⅱ 群 の4例 中1例 で はWS 消 退 後 に 部 分 発 作 を認 め た た め,こ の 「律 動 波 型 」が み られ た18例 中合 計15例(83.3%)にWS 期 間 中 ま た はWS消 退 後 に部 分 発 作 を認 め た こ とに な る.ま た 見 方 をか え れ ば,対 象53例 の う ち経 過 中 に 部 分 発 作 を認 め た27例 中15例(55.6 %)と,経 過 中 に 部 分 発 作 を 認 め な か っ た26例 中3例(11.5%)に こ の 「律 動 波 型 」 が み ら れ, 前 者 で 有 意 に(P<0.01)高 率 で あ っ た. 合 併 す る部 分 発 作 の 焦 点 が 明 らか な9例 で,
この 「
律動 波 型」 の 出現 部位 と部 分発 作 焦点部
位 とは一致 したが,そ の波 型 は合 併 す る部 分発
作 のそれ とは異 な って い た.
表3 Tonic spasmsに 続 発 す る 「律 動 波 型 」 註: * は 成 因 不 明 で あ る が,出 生 前 要 因 が 疑 わ れ る ものBilat.:Bilateral F: Frontal Rt.: Right C: Central Lt.: Left P: Parietal ant.: anterior O: Occipital post.: posterior mT: mid-Temporal「律 動 波 型 」 を 認 め た18例 の 頭 部CT, MRI 所 見 は,異 常 な し5例,軽 度 大 脳 萎 縮 な ど対 称 性 異常 が7例 で,非 対 称 性 の 異 常 は6例 の み で あ っ た.3例 で は 「律 動 波 型 」 の 出現 部 位 に一 致 してMRI画 像 上 に局 在 性 異 常 を 認 め,こ の う ち1例 で はMRI画 像 上 局 在 性 皮 質 形 成 異 常 が 認 め ら れ,後 に そ の 部 分 の 切 除 術 が 行 わ れ, 組 織 検 査 の 結 果 異 所 性 灰 白 質 と診 断 され た.他 の2例 で は 組 織 検 査 は行 わ れ て い な い が,MRI 画 像 上,1例 で は 局 在 性 皮 質 形 成 異 常 を 認 め, も う1例 で は 皮 質 に 小 さ な局 在 性 の石 灰 化 を伴 う病 変 を認 め た. 6) 単 発 性TSの 比 率 対 象53例 に つ い て,発 作 時 脳 波 の得 られ たTS の う ち 単 発 性TSの 占 め る 比 率 を算 出 した.3 群 と もに10%未 満 の 症 例 が 大 半 を 占め た.単 発 性TSの 比 率 が10%以 上 の 症 例 は,Ⅰ 群1例 (20.0%),Ⅱ 群12例(41,4%)と Ⅲ 群4例(21.1 %)で あ り,Ⅱ 群 に や や 多 く,Ⅱ 群 と Ⅲ群 で は 80%以 上 の 高 率 例 が 各1例 あ っ た が,3群 間 に 有 意 差 は 認 め られ な か っ た. 7) 発 作 時 脳 波 の 非 対 称 の 比 率 発 作 時 脳 波 の 波 型 ま た は振 幅 に,左 右 非 対 称 が み ら れ る こ とが あ る.振 幅 に つ い て は,一 側 が 対 側 の1.5倍 以 上 あ る場 合 を非 対 称 あ りと した. 個 々 の 症 例 毎 に,発 作 時 脳 波 の 得 られ た 全 て のTSの う ち 発 作 時 脳 波 に 非 対 称 を 認 め た 発 作 の 占め る比 率 を算 出 した. 非 対 称 の 比 率 の 群 毎 の 内 訳 は,Ⅰ 群 で は,5 例 全 例 が10%未 満 で あ り,Ⅱ 群 で は,10%未 満 が29例 中22例(75.9%), 10∼40%が4例(13.8 %), 40%以 上 が3例(10.3%)で あ り,Ⅲ 群 で は,10%未 満 が19例 中11例(57.9%), 10∼40% が7例(36.8%), 100%が1例(5.3%)で あ っ た.非 対 称 の 比 率 が10%未 満 の 症 例 は Ⅲ 群 に 最 も少 な か っ た が,3群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た. Ⅱ群,Ⅲ 群 の 非 対 称 の 比 率 が40%以 上 の4例 で は,全 例 でMRI画 像 所 見 上 大 脳 半 球 に 粗 大 な 非 対 称 性 異 常 を 認 め た. 8) 発 作 間 隔 TSの 発 作 時 脳 波 起 始 部 か ら次 のTSの 発 作 時 脳 波 起 始 部 ま で の 時 間 を 計 測 し,こ れ を発 作
間 隔 と した.発 作 間 隔 と そ の 度 数 に つ い て,2 秒 幅 で ヒ ス トグ ラ ム を 作 成 し,症 例 毎 に検 討 し た.図4に そ の 例 を示 し た.全53例 中,発 作 間 隔 が ほ ぼ 一 定 し,図4のaの ご と く ヒ ス トグ ラ ム 上 に 明 瞭 な ピー ク を形 成 す る 症 例 は39例 あ り, 間 隔 が 一 定 せ ず,図4のbの ご と く ヒ ス トグ ラ ム 上 に ピー ク を形 成 しな い症 例 は14例 で あ った. 発 作 間 隔 が 一 定 し た39例 の 群 毎 の 内 訳 は,Ⅰ 群5例 中5例(100%),Ⅱ 群29例 中19例(65.5 %),Ⅲ 群19例 中15例(78.9%)で あ り,そ の 発 作 間 隔 は4∼16秒 で8秒 前 後 の 症 例 が 最 も 多 か っ た.発 作 間 隔 が 一 定 し な い14例 は 全 て Ⅱ群, Ⅲ 群 に 属 し て い た. 図4 発 作 間 隔 a.は 発 作 間 隔 が 一 定 し,ヒ ス トグ ラ ム 上 明 瞭 な ピ ー ク を 示 す.一 方b.は 発 作 間 隔 が 一 定 せ ず ピ ー ク を 示 さ な い. 発 作 回 数 は,a.が350回,b.が450回 で あ る. 9) 脳 波 上 の 発 作 持 続 時 間 脳 波 上 の 発 作 持 続 時 間 は1.0∼4.4秒 で,全 体 の 平 均 は2.1秒 で あ っ た.3群 間 に 差 は 認 め られ な か っ た. 10) 複 合 型 シ リー ズ 発 作 一 連 の 発 作 中 に,TSが 部 分 発 作 と近 接 して 出 現 す る,い わ ゆ る 複 合 型 シ リー ズ発 作 の 発 作 時 脳 波 は Ⅲ群 の19例 中12例 で得 られ た.複 合 型 シ リー ズ 発 作 を示 す 症 例 で は,部 分 発 作 を伴 わ な いTSも あ り,こ れ を 単 独 型 シ リー ズ発 作 と称 す る こ とに す る.こ の12例 の 複 合 型 シ リー ズ 発 作 に は,部 分 発 作 とTSと の 時 間 的 関 係 か ら以 下 の4種 類 が 認 め られ た.(1)部 分 発 作 がTSに 先 行 す る もの(以 下 「先 行 」 と略 す),(2)部 分 発 作 が シ リー ズ 形 成 性 発 作 中 に 挿 間 す る もの(以 下 「挿 間 」と略 す),(3)部 分 発 作 がTSに 先 行 し, さ ら に シ リー ズ 形 成 性 発 作 中 に も挿 間 す る もの (以下 「先 行 → 挿 間 」と略 す),(4)部 分 発 作 がTS に 後 続 す る もの(以 下 「後 続 」 と略 す).12例 の 内 訳 は,「 先 行 」 の み が3例,「 挿 間 」 の み が3 例,「 先 行 → 挿 間 」 の み が1例,「 先 行 」 と 「挿 間 」 が2例,「 挿 間 」 と 「後 続 」 が2例,「 先 行 」 と 「挿 間 」 と 「先 行 → 挿 間 」 が1例 で あ っ た. 単 独 型 シ リー ズ 発 作 は11例 で み ら れ た. 複 合 型 シ リー ズ 発 作 のTSと 単 独 型 シ リー ズ 発 作 のTSの 発 作 時 脳 波 を い ず れ も30回 以 上 記 録 し え た4例 に つ い て,両 者 のTSの 発 作 時 脳 波 所 見 を比 較 し て,部 分 発 作 がTSに 及 ぼ す 影 響 を検 討 した. こ の4例 に み られ た 複 合 型 シ リー ズ 発 作 に は, 以 下 の もの が 認 め ら れ た.「 先 行 」:2例,9シ リー ズ,116回 のTS,「 挿 間 」:3例,4シ リー ズ,131回 のTS,「 先 行 → 挿 間 」:1例,4シ リ ー ズ,30回 のTS. 単 独 型 シ リー ズ 発 作 のTSの 発 作 時 脳 波 は, 4例 合 計 で34シ リー ズ,415回 得 られ た. 表4に は4例 全 体 の 複 合 型 シ リー ズ 発 作 と単 独 型 シ リー ズ発 作 のTSに つ い て,表2と 同 様 の 方 法 で 算 出 し た値 を示 し た.単 独 型 シ リー ズ 発 作 と複 合 型 シ リー ズ発 作 のTSの 発 作 時 脳 波 上,非 対 称 の 比 率,持 続 時 間,TSに 続 発 す る 「律 動 波 型 」 の 出 現 率 に は 差 は み ら れ な か っ た.発 作 時 脳 波 の 各 波 型 の 出 現 率 は,複 合 型 シ リー ズ 発 作 で は 単 独 型 シ リー ズ 発 作 に 比 し て,fが 有 意 に低 く,単 独 波 型 の延 べ 出 現 率 は,複 合 型 シ リ a. 症 例K.N.7ヶ 月(女 児) b. 症 例T.W.6ヶ 月(女 児)
ー ズ発 作 で は単 独 型 シ リー ズ 発 作 に 比 してhが 有 意 に 高 か っ た(P<0.05). 表4 Tonic spasmsに お け る複 合 型 シ リー ズ 発 作 と単 独 型 シ リー ズ 発 作 の 発 作 時 脳 波 の 比 較 註: f, h, d, s:表2参 照 発 作 間 隔 は,4例 と も一 定 し,単 独 型 シ リー ズ発 作 と複 合 型 シ リー ズ 発 作 との 間 で 差 は 認 め られ なか っ た.シ リー ズ 形 成 性TS中 に 部 分 発 作 が 挿 間 し て も,発 作 間 隔 は 一 定 して お り,変 化 し なか っ た. な お,個 々 の 症 例 毎 に 複 合 型 シ リー ズ 発 作 と 単 独 型 シ リー ズ 発 作 のTSを 比 較 検 討 した 結 果 も表4に 示 す もの と よ く類 似 して い た. 5. 治 療 後 の 転 帰 発 作 転 帰 に 関 して は,追 跡 時 に 少 な く と も1 年 以 上TSが 抑 制 され て い た の は,Ⅰ 群 全 例, Ⅱ群22例(76.9%),Ⅲ 群13例(68.4%)で あ り, Ⅱ群 とⅢ群 間 で 差 は 認 め ら れ な か っ た. 発 作 時 脳 波 波 型 の 脱 同 期(d)の 延 べ 出 現 率 が50%以 上 の 症 例 は,Ⅰ 群3例,Ⅱ 群7例,Ⅲ 群3例 の 計13例 で あ り,こ れ らで は全 例 で 追 跡 時 にTSは 抑 制 さ れ て い た. 追 跡 時 のIQま た はDQが50以 上 の もの を 知 能 良 好 とす る と,知 能 良 好 は Ⅰ群 全 例,Ⅱ 群7 例(24.1%),Ⅲ 群6例(32.6%)で あ り,Ⅱ 群 とⅢ群 間 で 差 は 認 め られ な か っ た. 前 述 の発 作 間 隔 が 一 定 しな い Ⅱ群 と Ⅲ群 の14 例 は全 て知 能 転 帰 が 不 良 で あ っ た. 考 察 TSの 発 作 時 脳 波 波 型 に は,こ れ ま で高 振 幅 徐 波,速 波,棘 徐 波 複 合,脱 同 期 な どが 報 告 さ れ て お り17∼20),本研 究 で も同 様 の 波 型 を認 め た. Fuscoら19)は,発 作 時 脳 波 波 型 と発 作 症 状 と を対 応 させ て,速 波 は 無 動 凝 視 状 態 と,高 振 幅 徐 波 はTSと,脱 同 期 は 発 作 後 現 象 と 関 連 す る と述 べ て い る.今 回 の 研 究 で は,速 波,高 振 幅 徐 波,棘 徐 波 複 合 は い ず れ もTSに 一 致 し て 単 独 で もみ ら れ,こ れ らは 全 てTSと 関 連 し た も の と考 え ら れ た.脱 同 期 は 単 独 出 現 も あ るが 稀 で あ り,殆 どが 他 の 波 型 に 後 続 し て 出 現 し て い た.脱 同 期 が 他 の 波 型 に 後 続 して 出 現 す る場 合 に 脳 波 ・筋 電 図 同 時 記 録 を し て み る と,脱 同期 に 一 致 してTSが 始 ま る こ と は な く,ま た 多 く の 場 合,筋 放 電 の 終 了 後 に も脱 同 期 は 持 続 して い る の で,脱 同期 はTSそ の もの よ り も,発 作 後 現 象 との 関 連 が 強 い こ とが 示 唆 され た.ま た 脱 同 期 の 出 現 率 は,器 質 的 脳 障 害 が 明 らか で な く,予 後 良 好 な潜 因性WS(Ⅰ 群)の 症 例 で 有 意 に 高 く,3群 全 て に お い て,脱 同 期 の 延 べ 出 現 率 が 高 い(50%以 上)症 例 に 難 治 例 は 認 め ら れ なか っ た.こ れ らの 事 実 か ら,脱 同 期 が 出 現 しに く い こ ど は器 質 的 脳 障 害 の 存 在 を示 唆 す る もの と考 え ら れ た. 発 作 時 脳 波 に 引 き続 く 「律 動 波 型 」 に つ い て の 報 告 は稀 に み ら れ るが18,23,24),詳細 な 検 討 は さ れ て お ら ず,そ の 意 義 に つ い て は全 く言 及 され て い な い.本 研 究 で は,TSに 続 発 す る「律 動 波 型 」 は Ⅲ群 に 高率 で,こ の 波 型 を 示 す 症 例 の 大 半 が 経 過 中 に 部 分 発 作 を示 して いた.「律 動 波 型 」 の 周 波 数 は 主 に θ帯 域 で,出 現 部 位 は 症 例 毎 に 一 定 し て い た.ま た 合 併 す る部 分 発 作 の 出 現 部 位 と同 一 の 部 位 か ら 出現 す る こ とが 多 く,皮 質 病 変 部 位 と の 関 連 が 示 唆 さ れ た.ま た,こ の 「律 動 波 型 」 を示 し た 症 例 の う ち3例 で は 「律 動 波 型 」 出 現 部 位 に 一 致 してMRI画 像 上 に 局 在 性 異 常 を認 め,う ち2例 は 皮 質 形 成 異 常 で あ っ た. WSの 病 因 の な か で 皮 質 形 成 異 常 は,そ の 切 除 に よ りWSが 治 癒 す る 可 能 性 が あ る た め,と くに 重 要 視 さ れ て い る7,8).し か し皮 質 形 成 異 常 の な か に は,病 変 が 非 常 に 微 細 で あ る た め に, MRI検 査 な どの通 常 の 画 像 検 査 で は 検 出 され ず, 切 除 組 織 の 組 織 学 的 検 討 に よ りは じめ て 診 断 さ
れ る も の も多 い.Chuganiら は,MRI画 像 上 に 異 常 が な く,潜 因 性WSと されて いた13例 にPET を行 な い,5例 に 片 側 性 低 代 謝 域 を認 め,こ の う ち 特 に 発 作 が 難 治 で あ っ た4例 で 皮 質 脳 波 異 常 を 指 標 に 皮 質 切 除 を行 な っ た と こ ろ,術 後 に 全 例 で 発 作 は 抑 制 さ れ,切 除 組 織 の 組 織 学 的 検 討 に よ り,そ の 全 例 に 皮 質 形 成 異 常 を 認 め た と 報 告 し て い る7). 本 研 究 で は こ の 「律 動 波 型 」 が 認 め られ た18 例 中13例 は 病 因 不 明 で あ り,12例 では 頭 部MRI, CT上 に粗 大 な 異 常 を認 め な か っ た.し か し, こ れ ら の な か に は,そ の他 の 臨 床 所 見 よ り局 在 性 皮 質 形 成 異 常 の 存 在 が 疑 わ れ る症 例 が 含 まれ て お り,MRIで 明 ら か に し え な い微 細 な 皮 質 形 成 異 常 の 症 例 が 混 在 し て い る 可 能 性 は 大 き い と 思 わ れ た. 発 作 時 脳 波 の 非 対 称 は,皮 質 の 関 与 の 強 い こ と を 示 唆 す る所 見 と考 え られ る.今 回 の 研 究 で は,発 作 時 脳 波 の 非 対 称 の 比 率 は3群 と も10% 未 満 と低 率 の 症 例 が 多 く,3群 間 に は 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た.し か し非 対 称 の 比 率 が40% 以 上 の 高 値 を 示 し た4例 で はMRI画 像 上 大 脳 半 球 に 粗 大 な 非 対 称 性 異 常 を認 め た.以 上 よ り, 皮 質 の 関 与 の な か で も,小 さ な 皮 質 形 成 異 常 な ど の 比 較 的 微 細 な 異 常 で は,発 作 時 脳 波 の 非 対 称 は 出 現 し に くい の で は な い か と推 測 さ れ た. 発 作 間 隔 に つ い て,従 来 の 報 告 で は4∼25 秒18∼20,25)と一 定 して い な い.5∼10秒 を典 型 と した 報 告25)も あ るが,他 の報 告 で は 発 作 間 隔 の 規 則 性 に つ い て は 言 及 さ れ て い な い. 本 研 究 で は 発 作 間 隔 が ほ ぼ 一 定 の 症 例 と,一 定 し な い症 例 とが あ る こ と を 明 らか に した.発 作 が 一 定 の 間 隔 で 出 現 す る こ とは,そ の起 源 が 皮 質 下 に あ る こ と を示 唆 す る所 見 と考 え られ る. 発 作 間 隔 が 不 規 則 に な るの は,他 の 要 因 の 関 与, と く に 皮 質 障 害 を含 む 器 質 的 脳 障 害 の 関 与 を 示 唆 す る もの か も し れ な い.事 実,潜 因 性 の Ⅰ群 の 症 例 で は 全 例 で 発 作 間 隔 は 規 則 的 で,発 作 間 隔 が 不 規 則 な 症 例 は全 て Ⅱ群 と Ⅲ 群 に 属 し て い た.し か し部 分 発 作 の 有 無,す な わ ち Ⅱ群 とⅢ 群 の 間 で は 発 作 間 隔 の 規 則 性 に 差 は 認 め られ な か っ た.発 作 間 隔 が 一 定 し な か っ た症 例 で は全 例 で知 能 転 帰 が 不 良 で あ っ た こ とは,皮 質 障 害 との 関 連 に お い て 興 味 深 い. 以 上 の 所 見 よ りWSに お け る基 盤 の 病 変 と発 作 時 脳 波 との 関 連 に つ い て ま とめ る と,皮 質 の 粗 大 な 異 常 は 発 作 時 脳 波 の 非 対 称 に 関 連 し,皮 質 の 比 較 的 微 細 な 異 常 は 「律 動 波 型 」 に 関 連 し て い る こ とが 推 測 さ れ た.ま た 皮 質,皮 質 下 を 問 わ ず 脳 障 害 の 強 い症 例 で は,発 作 間 隔 の 規 則 性 が 失 わ れ る こ と も示 唆 され た. さ て,い わ ゆ る複 合 型 シ リー ズ 発 作 に お け る 部 分 発 作 とTSと の 関 係 に つ い て は,従 来,相 互 に 影 響 を 及 ぼ す10∼12)とす る見 解 と,関 係 が な い14)とす る見 解 とが あ る.今 回,部 分 発 作 がTS に 先 行 ま た は シ リー ズ 形 成 発 作 中 に 挿 間 す る複 合 型 シ リー ズ 発 作 のTSと,部 分 発 作 を伴 わ な い 単 独 型 シ リー ズ 発 作 のTSに つ い て 詳 細 に 比 較 検 討 し た.そ の 結 果,両 者 の 発 作 時 脳 波 波 型 に は あ る程 度 の 差 異 が 認 め られ た が,皮 質 の 直 接 関 与 が 想 定 さ れ る発 作 時 脳 波 の 非 対 称 や,前 述 し たTSに 続 発 す る 「律 動 波 型 」 の 出 現 に は 差 は 認 め ら れ な か っ た.ま た 興 味 深 い こ と は, 複 合 型 シ リー ズ発 作 に お い て もTSの 発 作 間 隔 は 同 一 症 例 の 単 独 型 シ リー ズ 発 作 の そ れ と変 わ りな い 点 で あ る.こ れ らの 事 実 は,複 合 型 シ リ ー ズ 発 作 に お い て もTSの 起 源 は 基 本 的 に は 皮 質 下 に あ る こ と を示 唆 して い る.し か し,複 合 型 シ リー ズ発 作 を示 す Ⅲ群 の 症 例 の な か に は, 部 分 発 作 が シ リー ズ形 成 性TSに 先 行 す る型 の み を 認 め る症 例 が あ る.こ れ らの 症 例 で は 部 分 発 作 がTS出 現 の い わ ば 引 き 金 の 役 割 を果 た し て い る可 能 性 が あ る と考 え ら れ る.一 方,部 分 発 作 が シ リー ズ 形 成 性TSに 挿 間 す る 型 や 部 分 発 作 がTSに 後 続 す る型 の 発 作 で は,部 分 発 作 がTSに ど の よ う な影 響 を与 え る の か は 明 らか で な い.し か し 経 過 中 に部 分 発 作 を示 す 症 例 の 大 半 で,TSの 発 作 時 脳 波 に ひ き続 い て,皮 質 病 変 と密 接 な 関 係 を有 す る と思 わ れ る特 異 な 「律 動 波 型 」 を 認 め た こ と は,部 分 発 作 を伴 うWS で は,発 作 時 に 皮 質 下 と皮 質 と の 間 に何 らか の 相 互 作 用 が あ る こ と を推 測 させ る.こ の 相 互 作 用 に つ い て さ ら に 研 究 をす す め る こ とに よ り, WSの 病 態 生 理 解 明 の 新 た な 手 が か りが 得 ら れ る と考 え ら れ る.
結 論 WSに み られ るTS527シ リー ズ,7,283回 の 発 作 時 脳 波 を分 析 し,以 下 の 結 論 を得 た. 1. WSを3群 に 分 類 し,そ の 類 型 別 に 発 作 時 脳 波 波 型 の 組 み 合 わ せ を示 し た. 2. 各 類 型 に 特 異 的 な 発 作 時 脳 波 波 型 は み られ な い が,潜 因 性 群 に 脱 同期 が 多 く認 め ら れ た. 3.発 作 時 脳 波 の 非 対 称 は,皮 質 の 粗 大 な病 変 と関 連 し て い た. 4. シ リー ズ 発 作 の 経 過 中 に部 分 発 作 を伴 う症 例 の 多 くで は,発 作 時 脳 波 に 引 き続 き 「律 動 波 型 」 が 認 め られ,こ れ は皮 質 の微 細 な 局 在 性 病 変 と の 密 接 な 関 係 が 示 唆 さ れ た. 5. 発 作 間 隔 を計 測 し,こ れ が 一 定 し な い 症 例 が 全 て 症 候 群 に属 す る こ とに よ り,器 質 的 脳 障 害 と発 作 間 隔 の 規 則 性 との 関 連 が 推 測 さ れ た. 6. 複 合 型 シ リー ズ発 作 と単 独 型 シ リー ズ発 作 と を 比 較 検 討 し た と こ ろ 発 作 時 脳 波 波 型,発 作 間 隔 に 大 き な 差 異 は 認 め られ ず,複 合 型 シ リー ズ 発 作 に お い て も,TSの 起 源 は皮 質 下 に あ る と考 え られ た. 7. 発 作 時 脳 波 の 非 対 称,TSに 後 続 す る 「律 動 波 型 」 は,皮 質 の 関 与 を 示 唆 す る現 象 と考 え ら れ,TSの 発 作 時 に は 皮 質 と皮 質 下 構 造 の 間 に何 らか の相 互 作 用 が あ る こ とが 推 測 さ れ た. 稿 を終 え るに あた り,御 懇切 な る御 指 導 と御 校 閲 を賜 っ た恩 師大 田原俊 輔 名 誉教 授,岡鍈 次教 授 に 心 よ り深 謝致 します. また研 究 に あ た り直接 の 御 指 導 を頂 い た大塚 頌 子 助 教 授,御 協力 を頂 い た吉 永 治 美 講師 をは じめ 教 室 員 各 位に 心 よ り感 謝致 します. 文 献 1) 大 田 原 俊 輔,志 茂 実,向 井 幸 生,高 畠 美 人,大 野 稔,岡 鍈 次:点 頭 て ん か ん の 脳 波 に 関 す る研 究.小 児 科 診 療 (1965) 28, 1140-1156.
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