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奈 紀 要 43 号 ン ガ 為 等 ノ 番 號 ヲ テ ソ ノ 箇 處 ヲ 示 シ タ リ 省 社 局 ニ エ タ ル ノ 朱 筆 ヲ 別 ニ 整 理 シ テ 處 ニ 収 セ リ 而 シ テ ハ 仏 教 太 ノ ニ カ ヽ ル 分 太 具 検 証 疑 問 点 太 省 社 局 : 江

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(1)

文 治 二 年 ( 一 一 八 六 ) 「 円 位 上 人 勧 進 之 」 と い う 「 二 見 浦 百 首 」 は 太 神 宮 法 楽 百 首 と し て 、 和 歌 史 的 に 重 要 な 意 味 を 有 し て い る 。 中 で も 定 家 は 詩 的 実 験 を 試 み 、 彼 の 出 発 点 と な り 、 同 時 に 家 隆 ・ 寂 蓮・慈円らの新進歌人にとっても画期的な作品となっている。 前 稿 「 西 行 周 辺 の 人 物 考 証 ¦『 二 見 浦 百 首 』 作 者 の こ と 」 〈 1 〉 を 平 成 二 五 年 秋 の 仏 教 文 学 会 大 会 ( 専 修 大 学 ) で 口 頭 発 表 し た 際 に 、「 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 」 に つ い て の 新 た な 報 告 を し 、 そ の 全 容 を 明 ら か に す る こ と を 約 し た の で 、 今 回 の 翻 刻 を 基 に 検 証 す る こ と に し た の で あ る 。 そ こ で は 「 二 見 浦 百 首 」 作 者 の う ち 不 明 と さ れ た 「 蓮 上 ・ 蓮 位 」 と い う 人 物 に つ い て の 考 証 を 行 っ た が 、 特 に 「 蓮 上 」 成 良 説 の 根 拠 と な っ た 薗 田 守 良 著 『 神 宮 典 略 ( 十 四 ) 』 所 載 の 「 神 宮 正 権 禰 宜和歌」目録の信憑性について言及している。 『 神 宮 典 略 』 は 戦 前 の 『 太 神 宮 叢 書 』 に 収 録 さ れ 、 そ の 「 歌 之 部 ( 十 四 ) 」 所 載 の 「 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 」 は 、「 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 」 と 「 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 補 遺 」 か ら 成 る 。 そ の 頭 註 に 拠 る と 「 ○ 左 ノ 頭 註 ハ 内 務 省 神 社 局 本 所 載 ノ 薗 田 守 宣 補 註 に カ ヽ ル 」 ( 目 録 上 部 の 頭 註 ) ・ 「 ○ 内 務 省 神 社 局 本 ニ ハ 、 薗 田 守 宣 朱 筆 ヲ 以 テ 増 補 書 入 セ ル 歌 多 シ 。 今 是 ヲ 一 六 〇 頁 已 下 ニ 補 遺 ト シ テ 収 録 シ 、 彼 此 照 覧 ニ 便 セ

  

『神宮正権禰宜和歌』検証

−附.翻刻

* 石

 

   

    

  

  

大 神 宮 叢 書 所 載 『 神 宮 典 略 ( 歌 之 部 ) 』 中 の 『 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 』 は 、 「 二 見 浦 百 首 」 作 者 考 証 に 先 行 す る 研 究 者 が 参 考 に 使 用 し た も の で あ る が 、 最 近 、 内 務 省 神 社 局 本 『 神 宮 典 略 』 写 本 ( 宗 務 ― 39 9 ) 十 冊 が 国文 学 研 究 資 料 館 史 料 館 に 宗 務 課 引 継 文 書 と し て 収 蔵 さ れ て い る こ と が 判 明 し た 。 該 書 は 薗 田 守 良 著 で 、 薗 田 守 宣 に 拠 る 頭註 が 付 さ れ て い る 。 さ ら に こ の 底 本 を 『 大 神 宮 叢 書 』 に 転載 す る に あ た り 守 宣 の 頭 註 お よ び 書 入 の 部 分 を 「 補遺 」 と し て 叢 書編 者 が 校 訂 し た こ と が 判 明 し て い る 。 し か し 、 頭 註 お よ び 書 入 の 付 さ れ た 位 置 が 精 確 で な く 、 翻 刻 上 の 過 誤 も 見 受 け ら れ る の で 、 守 宣 の 頭 註 お よ び 書入を 本 文 中 に 戻 し 、 そ れ ら を ゴ チ ッ ク 体 で 表 記 し た も の で あ る 。 【キーワード】 神宮典略、二見浦百首、神宮正権禰宜和歌

(2)

ン ガ 為 ( 一 )( 二 )( 三 ) 等 ノ 番 號 ヲ 以 テ ソ ノ 箇 處 ヲ 示 シ タ リ 」 ( 歌 本 文 上 部 の 頭 註 ) ・ 「 ○ 内 務 省 神 社 局 本 ニ 見 エ タ ル 守 宣 ノ 朱 筆 書 入 ヲ 作 者 別 ニ 整 理 シ テ 此 處 ニ 収 録 セ リ 。 而 シ テ 目 録 ハ 今 校 訂 者 ( 稿 者 注 。 前 稿 『 仏 教 文 学 』 で は 薗 田 守 良 と し た が 、『 太 神 宮 叢 書 』 校 訂 者 ) ノ 作 成 ニ カ ヽ ル 。」 ( 補 遺 上 部 の 頭 註 ) と い う こ と が 分 か り 、 そ の 『 太 神 宮叢書』を具に検証すると、かなり疑問点が見られる。 し ば ら く し て 、『 太 神 宮 叢 書 』 の 底 本 と な っ た 内 務 省 神 社 局 本 ( 薗 田 守 良 : 江 戸 末 期 写 ) が 国 文 学 研 究 資 料 館 史 料 館 に 「 宗 務 課 引 継 文 書 」 〈 2 〉 と し て 収 蔵 さ れ て い る こ と が 判 明 し た の で 、 そ の 当 該 写 本 を 閲 覧 する機会を得たのである。 当 該 写 本 を 閲 覧 し た こ と に 拠 る 疑 問 点 を 詳 述 す る 前 に 、「 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 」 の 翻 刻 を 掲 げ る こ と に し た い 。 た だ し 、 該 本 を 『 太 神 宮 叢 書 』 と し て 刊 行 す る 際 に 、 特 に 目 録 な ど で は 、 守 宣 の 頭 註 の 位 置 に つ い て 致 命 的 な 混 乱 が 生 じ て い る の で 、 そ の 頭 註 の 示 す 精 確 な 位 置 を 示 す よ う に 意 を 尽 く す こ と に す る 。 ち な み に 、『 太 神 宮 叢 書 』 凡 例 に 「 内 務 省 神 社 局 本 、 第 一 二 三 八 號 は 荒 木 田 家 舊 蔵 本 に し て 、 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 の 部 に 薗 田 守 宣 の 書 入 あ り 。 そ の 数 両 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 氏 人 の 和 歌 六 十 餘 首 に 上 れ り 。 其 等 は 又 以 て 本 書 閲 読 上 参 考 に 資 す べ き も の な れ ば 、 今 之 を 作 者 別 に 整 理 し 、 神 宮 正 権 禰 宜 和 歌 補 遺 と し て 、 巻 尾 に 併 せ 収 録 す る こ と ゝ せ り 。」 と あ る が 、 守 宣 頭 註 を 「 補 遺 」 と す る の で は な く 、 頭 註 の 付 さ れ た 位 置 を も 併 せ て 精 確 に 反 映 す る よ う に したい(その理由は後述する)。 翻刻に際して、次の点に注意して作業を行うことにしたい。 1   目 録 の 頭 註 は 人 物 の 右 上 に 付 さ れ て い る の で 、 そ れ を 反 映 し 、 必 要 に 応 じ て 「 稿 者 注 」 の コ メ ン ト を 入 れ る こ と に す る 。 例 え ば 、 荒 木 田 「 氏 良 」 の 頭 註 「 元 満 神 主 一 男 、 家 田 一 祢 宜   千 載 集   新 古今集」は該本と同様、次のように表記する。 元満神主一男、家田一祢宜   千載集   新古今集 一祢宜荒木田氏良神主作歌 十一首 2   守宣の頭註はゴチック字体で表記する。 3   守 宣 書 入 の 和 歌 も 、 底 本 の 和 歌 と 同 様 に 通 し 番 号 を 付 し た 上 で 、 「 補○ 」 と併記する。 例えば、 17(補4) の場合、 同集   女郎花をよみ侍ける 黒姫 17( 補 4 ) を み な へ し 色 め く 野 邊 に あ く が れ て あ は れ い く よ か た   びねしつらん 4   た だ し 、 底 本 と 同 じ 歌 を 頭 註 で 重 複 す る 場 合 は 表 記 せ ず 、 底 本 の 歌 下 部 に ( 補 ○ ) と 表 記 し 、 頭 註 の 内 容 を (   ) で 後 に 補 足 す る 。 御裳濯和歌集第五(○千載集第四) 題しらず(不知) 6   木の葉だに色づく程は有物を秋風ふけばちる涙かな (補1) (御裳濯集にも   初秋の心をよめる   よみ人しらず) ( 此 歌 御 裳 濯 和 歌 集 秋 の 部 の 上 に   題 し ら ず   荒 木 田 氏 良 と あり)

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5   守宣の朱字以外の註は、 (墨書補入)として朱註と区別する。 6   守 宣 頭 註 内 に 散 見 す る 「 御 製 」 は 「 後 鳥 羽 院 」 詠 の こ と で あ る か ら、その箇所は で囲むことにする。 (後で詳述) 7   そ の 他 、 疑 問 に 思 わ れ た り 、 頭 註 の 内 容 に つ い て 誤 解 を 受 け 易 い 箇所には「稿者注」として補足する。

翻刻「神宮正権禰宜和歌」

(『神宮典略(十四)』歌之部:宗務・ 39 9 ―5) 元満神主一男、家田一祢宜   千載集   新古今集 一祢宜荒木田氏良神主作歌 十一首 忠成神主一男、岡田   新勅撰集 一祢宜正四位上成長神主作歌 四首 六   荒木田神主氏實作歌 一首 四祢宜隆範神主作歌 二首 成長四女   続後撰 荒木田成長女作歌 一首 一祢宜整定神主作歌 三首 俗 名 荒 木 田 満 良 神 主 、 元 満 神 主 二 男   続 後 撰 。 西 行 談 抄 に 、「 蓮 阿 、 千 載 集 に 歌 一 首 ま じ り た れ ど も 名 字 か ゝ れ ず 。 又 新 古 今 に も れ た り 。 遺 恨 な る べ け れ ど も 、 閑 に お も ふ に 恨 な く て 和 歌 を 大 事 と し て 六 十餘廻の春秋をゝくりき。 」 ( 稿 者 注 。 蓮 阿 が 俗 名 荒 木 田 満 良 で あ る こ と を 示 し 、 西 行 談 抄 の 一 文を補足) 権祢宜正四位上満良入道蓮阿法師作歌 十一首 作 者 部 類 、 俗 名 荒 木 田 成 定 。 按 系 図 、 成 定 神 主 、 成 長 二 男 。 長 延 兄   千載集 ( 稿 者 注 。『 叢 書 』 で は 「 成 定 」 神 主 の 補 註 と し て い る が 、 付 さ れ て い る 位 置 か ら み て 「 蓮 上 」 法 師 の 補 註 。 補 註 の 意 味 は 「 蓮 上 」 法 師 が『勅撰作者部類 』 〈 3 〉 では「成定」であるということを伝えるのみ) 六祢宜正四位下成良入道蓮上法師作歌 二首 権祢宜成實入道蓮位法師作歌 二首 ( 稿 者 注 。「 蓮 位 」 法 師 が 荒 木 田 「 成 實 」 で あ る と し て い る が 、 そ の 根 拠 は 示 さ れ て い な い 。 底 本 の 表 記 に は 単 に 「 蓮 位 法 師 」 と し か 記 されておらず、その表記内容を直ちに信用できない) 定季入道行専法師作歌 三首 権祢宜荒木田神主成實神主作歌 一首 ( 稿 者 注 。 目 録 に は 「 蓮 位 法 師 」 と 荒 木 田 「 成 實 」 と の 間 に 「 行 専 法 師 」( 底 本 で は 「 行 専 法 師 」「 上 法 師 ( 蓮 上 の 誤 り か )」 ) が 入 っ て い る 。 も し 「 蓮 位 」 法 師 が 「 成 實 」 な ら ば 、 連 続 し て 収 め ら れ て い な け れ ば 辻 褄 が 合 わ な い こ と に な る 。 少 な く と も 、 こ の 表 記 を 以 て 「 蓮 位」法師が「成實」であるとするのは疑問) 権祢宜従四位上元延作歌 六首 同   従四位上荒木田成延神主作歌 三首

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六祢宜満忠神主作歌 一首 権祢宜荒木田守方作歌 一首 権祢宜成實女作歌 四首 荒木田俊長神主作歌 一首 六祢宜長光神主作歌 十一首 荒木田有成神主作歌 一首 一祢宜成定神主女作歌 二首 六祢宜正四位上荒木田永元神主作歌 四首 荒木田實元神主作歌 一首 成長神主二男、岡田   新古今集 権祢宜長延作歌 一首 荒木田長光乙女作歌 一首 延 ( 成 歟 ) 定 神 主 一 男 、 岡 田 二 祢 宜 。 作 者 部 類 、 成 長 ( 定 歟 ) 子   新勅撰集   続後撰集   続古今集   続拾遺集   後撰集 ( 稿 者 注 。「 後 撰 集 」 は 「 新 後 撰 集 」 の 間 違 い 。「 延 成 」 は 「 成 定 」 神主一男) 二祢宜荒木田延成神主作歌 十六首 荒木田仲能神主作歌 三首 延 長 神 主 三 男 、 家 田 。 作 者 部 類 、 正良子   続 後 撰 集   続 古 今   続 拾 遺 (稿者注。 「正良子」は「氏良子」の間違い) 一祢宜延季神主作歌 十二首 延廣神主二男、岡田   続古今 権祢宜 延秀 神主作歌 一首 ( 稿 者 注 。「 御 裳 濯 和 歌 集 で は 「 延 秀 」 で は な く 「 延 季 」 詠 。 守 宣 も 「 延 季 」 詠 と し て 註 記 。 し た が っ て 「 延 秀 」 に 関 す る 「 延 廣 神 主 二 男」以下の補註は不要) 一祢宜成行神主作歌 二首 延季神主、家田   新後撰   続千載   新千載   新拾遺 (稿者注。 「氏忠」は「延季神主一男」で、脱字あり) 四祢宜氏忠神主作歌 四首 一祢宜尚良神主作歌 九首 六祢宜成言作歌 九首 権祢宜成宗作歌 九首 権祢宜荒木田長興作歌 九首 荒木田氏行神主作歌 九首 経茂神主二男   玉葉   新続古今 権祢宜経顕神主作歌 十一首 同   定顕神主作歌 九首 延行( 「 成 」 傍記)神主一男、岡田   新後撰 (稿者注。 「延行」は「延成神主一男」。 「延成」が正しい) 五祢宜荒木田延行神主作歌 十首 氏忠神主一男、家田   続千載   風雅   新千載 権祢宜氏之神主作歌 三首 氏成神主三男、家田   続千載

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一祢宜季宗神主作歌 一首 行世神主三男、薗田   新千載 四祢宜守藤神主作歌 一首 権祢宜季長作歌 一首 氏継神主一男、家田二   風雅 荒木田房継神主作歌 一首 経賢神主一男、粟野一   新後拾遺 一祢宜経直作歌 一首 作者部類、荒木田之子   新勅撰   続後撰 寂延法師 ( 稿 者 注 。 守 宣 の 頭 註 は 「 寂 延 法 師 」 が 「 権 祢 宜 荒 木 田 長 延 」 の 法 名 で あ り 同 一 人 物 〈 4 〉 で あ る こ と が 明 ら か に な る 以 前 の 段 階 で 付 さ れ た も の な の で 、 別 人 と し て 補 註 を 付 け て い る 。 こ れ も 守 宣 に 拠 る 朱 書 補 註 が混乱を来している原因の一つである)    右歌人四十四人和歌百九十首 (稿者注。底本には「右歌人四十三人和歌二百首」とある) 二祢宜度會神主興房作歌 一首 五祢宜度會春章作歌 一首 一祢宜度會氏彦神主作歌 一首 度會神主雅長作歌 一首 権祢宜度會利忠作歌 一首 度會生光女作歌 二首 行 継 神 主 一 男 、 西 川 原   新 後 撰   続 千 載   新 続 古 今   建 久 三 年 二 月 任祢宜、嘉元三年卒。 一祢宜度會行忠神主作歌 三首 貞 常 神 主 二 男 、 檜 垣   玉 葉   続 後 拾 遺   新 千 載   新 拾 遺   正 応 五 年 五 月 廿 日 任 祢 宜 、 元 徳 二 年 四 月 十 七 日 叙 従 三 位 、 上 階 始 也 。 延 元 四 年 七月廿七日卒、七十七歳。 一 祢 宜 従 三 位 常 昌 作 歌 ( 割 注 。 始 名 常 良 、 後 改 常昌) 十二首 朝 親 神 主 一 男 、 宮 後   続 千 載   風 雅   新 千 載   永 仁 四 年 六 月 任 祢 宜 、 興 国 元 年 叙 従 三 位 、 自 吉 野 帝 。 興 国 二 年 八 月 十 七 日 卒 、 七 十 七 歳 。 一祢宜朝棟神主作歌 十三首 有 家 神 主 一 男 、 村 松   風 雅   嘉 元 四 年 三 月 四 日 任 祢 宜 、 興 国 四 年 叙 従三位、自吉野帝。延元四年七月廿七日卒、七十八歳。 一祢宜家行神主作歌 十首 四 祢 宜 延 雄 神 主 二 男 、 河 崎   作 者 部 類 、 一 祢 宜 常 良 子   続 千 載   風 雅。権祢宜正○位上 (稿者注。 「延誠」は「権祢宜正四位上」が正しい) 権祢宜延誠神主作歌 十首 一祢宜家行男、正四位下 七祢宜盛行神主作歌 十首

(6)

四祢宜度會貞蔭作歌(後改良尚) 九首 一祢宜貞香神主作歌 九首 五祢宜度會神主延明作歌 九首 度會延良神主作歌 九首 同   秀長神主作歌 九首 同   行俊神主作歌 九首 権祢宜雅蔭神主作歌 九首 同   冨行神主作歌 九首 権祢宜度會延親神主作歌 九首 同   雅冬神主作歌 九首 同   朝名作歌 九首 朝泰神主一男、宮後   新後拾遺、一祢宜朝棟嫡孫。 同祢宜朝勝神主作歌 一首 教 王 山 三 寶 院 所 蔵 大 般 若 経 ( 第 四 百 六 十 二 ) 跋 云 、 応 安 二 年 己 酉 四 月 廿 五 日 書 之 訖 。 執 筆 豊 宮 河 東 畔 、 岩 淵 図 書 助 度 會 通 詮 ( 七 十 有 餘) 、本名権神主實相。 度會神主通詮作歌 一首 三祢宜、七祢宜盛行男 同   行治作歌 一首 八祢宜度會朝英神主作歌 一首    右歌人廿七人載歌百六十七首 (稿者注。底本には「右歌人廿七人百六十八首」とある)

「 神宮正権禰宜和歌

此 歌 は 二 宮 の 祢 宜 権 祢 宜 の 歌 ど も 、 中 古 の 撰 集 其 外 に も あ る を 集 め 記せり ○新古今集(第三)夏部 題しらず(五月雨のこゝろをよめる) 荒木田氏良 1   五月雨の雲の絶まを詠めつゝ窓より雨に月を見る(まつ)哉 (御裳濯集に五月雨の歌とてよめるトアリ) 拾玉集第五 春日拾五十鈴川吉橋艮山御百首神感有瑞忽詠三首和歌 一祢宜正四位上荒木田氏良 2   みちといへば君が心に敷島やふるき行ゑはいすゞ川波 3   しらせばやねがひをみつの長柏なびくにしるし神風の空 4   ちりもゐじ清き手向を哀とてそなたになびく神風の声 夫木抄 百首歌の中 5   卯の花の波立まよふいなせ川月のやどりや流れ成らん

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御裳濯和歌集第五(○千載集第四) 題しらず(不知) 6   木の葉だに色づく程は有物を秋風ふけばちる涙かな (補1) (御裳濯集にも   初秋の心をよめる   よみ人しらず) (此歌御裳濯和歌集秋の部の上に   題しらず   荒木田氏良とあり) 鹿の歌とてよめる 7   武士のたちし野原の秋風に残るを鹿の夕暮の聲 百首歌の( 「 の 」 見せ消ち)中に 8   風わたる野原の真葛葉をしげみ恨み多かる秋の夕ぐれ 虫(歌とてよめる)を読侍にける 9   我宿は人とふこともなき物をいつならひける松虫の聲 九 月 十 三 夜 の ( 「 の 」 見 せ 消 ち ) 月を 見 て よ め る ( よ み 人 し ら ず ) 10   秋の月ちゞに心をくだき来て今宵一夜にたえずもあるかな (補2) (○千載集) (千載集第五   十三夜のこゝろを読る   よみ人しらず) (御裳濯集に   九月十三夜の月を見て読る   荒木田氏良と記せり) 此歌は千載集に読人しらずとあり(墨書補入) 百首歌の( 「 の 」 見せ消ち)中に 11   月かげに野中の庵はほの見えて尾花の末に衣打なり 御裳濯和歌集 荒木田成長 九月尽の心を 12   けふのみと秋の名残を思ふにも馴てくやしき夕暮の空 題不知 13   いにしへに色もかはらぬ梅の花あるじからにや人もこひこぬ 社頭にてをの〳〵山初花といふ事をよみ侍ける 14   神路山峯の桜は咲にけり日ごろも見えぬ雲の色かな ○新勅撰集 題不知 15   かきつむる神路の山の言の葉を空しく朽ん跡ぞ悲しき (補3) (○新勅撰集第十七) (文治の比ほひ、千載集えらび侍し時よみ侍ける   荒木田成長) 御裳濯和歌集 題不知(墨書補入) 荒木田氏實 16   時鳥まつにしるしのなきかとて尋ぞきつる三輪の杉村 同集   女郎花をよみ侍ける 黒姫 17   ( 補 4 ) を み な へ し 色 め く 野 邊 に あ く が れ て あ は れ い く よ か た び ねしつらん 同和歌集

(8)

荒木田隆範 (女郎花をよみ侍ける) 18   女郎花わするゝ名をたてしとて昨日の野邊にけふも来にけり 19   夕風のさびしきまゝに花薄とまらぬ人を猶まねくかな 続後撰集   雑(第十六) (題しらず) 荒木田成長女 20  物思ふ袂に似たる紅葉かな時雨や何の涙なるらん (直云   萬代集ノ秋ニ題不知   読人不知トテ此歌ヲ載ス) 拾玉集第五 荒木田神主成定 春日拾五十鈴河吉橋艮山御百首の時詠三首 21   神垣や百枝の松に契り置言の葉ごとに恵あるべし 22  敷島やみちくる塩の大淀やみるめもあかずあまの釣船 23  榊葉のさしてぞ祈る思ふことならずはあらじ五十鈴川波 同集 おなじ時詠三首和歌 権祢宜正四位上満良 24   七そぢにかゝる波路の浜荻の朽ばの身にもあかぬ言の葉 25   神風もさぞおもふらん幾春も匂ひおこせよ志賀の花園 御裳濯和歌集 題不知(墨書補入) 満良入道蓮阿 26   山風にまづたぐふなり花よりも猶はかなきや匂ひなるらん (蓮阿法師   俗名満良。千載集ニモ満良、右西行談抄ニミエタリ) 題不知(墨書補入) 27   桜花盛になればしら雲のたえまぞかすむ三吉のゝ山 題不知(墨書補入) 28   友とするおりしもあらむ山風を花ゆゑいたく恨みつるかな 題しらず 29   いづみ川すゞむ此夜は明ぬらし遠方波の岩こゆるみゆ 二 見 百 首 ( 歌 ) の う ち ( 「 う ち 」 に 「 中 」 ) に ( 秋 た つ 心 を) 30   小山田の稲葉わけきてほのかにも音づれ初る秋の初風 なげくこと侍けるころよめる(墨書補入) 31   忍ばるゝ昔にかへるよなりともかなしかるべき秋の夕ぐれ 山月といへるこゝろをよめる 32   はれやらぬ雲は吉野のよそめにて高間のおくぞ月ぞすみける 物 へ ま か り て 侍 け る に 、 何 と な く 故 郷 思 ひ や ら れ け る に 月 い と あ か く 侍 け れ ば ( 「 月 い と あ か く 」 以 下 、 墨 書 補 入 ) 33   うたゝねの夢をもまたじうつゝにも月はさやかに故郷の空 題不知(墨書補入) 34  行秋のさそはゞいなんと思ふこそ別れんよりもかなしかりけれ

(9)

続後撰集第十八 出家の後よめる 蓮阿法師 35   ( 補 5 ) そ む き ぬ と い ふ ば か り に や 同 じ 世 の け ふ ぞ 心 に 遠 ざ か る らむ 新後撰集第九 題しらず 寂延法師 36  (補6)紅葉ばのあけの球がき幾秋のしぐれも雨に降りぬらむ 新勅撰集第十二 恋歌読侍けるに 寂延法師 37   ( 補 7 ) は る が す み た な ゝ し 小 船 入 江 こ ぐ を と を の み き く 人 を 恋 つゝ 新勅撰集第十六 題しらず 寂延法師 38   ( 補 8 ) 幾 秋 を な れ て も 月 の あ か な く に の こ り す く な き 身 を う ら みつゝ 新勅撰集第十六 年の暮の心を読侍ける 寂延法師 39   ( 補 9 ) 筏 士 の こ す 手 に つ も る 年 な み の け ふ の く れ を も し ら ぬ わ ざ哉 新勅撰集第十九 寄露恋をよめる 寂延法師 40  ( 補 10) し の ぶ 山 木 の 葉 し ぐ る ゝ 下 ぐ さ に あ ら は れ に け る 露 の 色 かな 続後撰集第五 薄を 寂延法師 41   ( 補 11) 武 士 の や た 野 の す ゝ き う ち な 引 を じ か 妻 よ ( と イ ) ぶ 秋 は来にけり 続後撰集第十二 題不知 寂延法師 42   ( 補 12) 逢 こ と も た が た め な れ ば 玉 の を の い の ち も し ら ず 物 お も ふらむ (寂延法師、 俗名荒木田満良神主 。作者部類、荒木田之子) ( 稿 者 注 。「 寂 延 」 の 俗 名 が こ の 時 点 で 不 明 で 、 荒 木 田 満 良 か と し ている) 同集 題不知(墨書補入) 成實入道 蓮位 43   深草やうづらなく野の夕暮をとへかし人の秋は来にけり ( 稿 者 注 。 御 裳 濯 和 歌 集 で は 単 に 「 蓮 位 法 師 」 と あ る の み 。 目 次 と 共に「成實入道」が「蓮位」とする根拠は示されていない) 二見百首歌中に(墨書補入) 44  女郎花は山が裾に木がくれて独も秋を涼(すぐイ)しがほなる

(10)

題不知 蓮位法師 45  (補 13)春の夜の明行風にさそはれて谷のと出る鶯の聲 同集 定季入道行専 柳の歌とてよめる 行専法師、俗名定季(墨書補入) 48   朝みどり霞に染る青柳のはなだの糸に春風ぞ吹 49   立かへり春になぐさむ心こそよに故郷の名残なりけん (補 16) ( 世 に の が れ て 修 行 に 出 て 年 を へ て は る ご ろ も と す み 侍 け る 所 に 帰 まうできて花をみてよみ侍ける   行専法師) 題不知(墨書補入) 50   昔にもかはらぬ秋の月を見てあらましかばの人ぞ恋しき 同集 (二見百首歌中に)藤袴をよめる 連上 法師 51   藤袴秋の野もせに立霧の絶間に見れば綻びにけり 旅宿落葉といふことをよみ侍ける(墨書補入) (稿者注。御裳濯和歌集により、 「連上」は「蓮上」の誤り) 52   木の葉ちる外山の里に旅ねして夢も嵐にさそはれにけり 二見百首歌中に(墨書補入) 53   から衣打手やたゆくなりぬらんふくればすさむ槌の音かな 千載集第十九 神力品、如日月光明能除諸幽冥の心を読る   蓮上法師 54   (補 17)日 の ひ か り 月 の 影 と ぞ 照 し け る く ら き 心 の や み は れ よ と て 同集 花の歌とてよめる 権祢宜 成實 55  ちらば又物や思はん山桜花にかぎらぬ浮世なれども ( 稿 者 注 。『 叢 書 』 で は 43番 歌 の 前 に 「 権 祢 宜 成 實 」 と し て 翻 字 さ れているが、御裳濯和歌集では「成實女」の詠作となっている) 拾玉集 吉橋艮山百首の時 従四位上荒木田元延 56   色染て幾しほ深し難波津やけふ神垣に匂ふ此花 57   哀みのためしはそれぞ神路山見ゆらん物を面影の空 58  神垣やおのがときはに成ぬらんけふの手向を松風の聲 御裳濯和歌集 題不知(墨書補入) 伊勢にたてまつらせ給ける二百首の 御製 の中に 蓮位法師 46   (補 14) 谷風の鶯さそふたよりにや山ざと人の春をしるらん 47   (補 15) 鶯のはね白妙のあは雪をきえねと春の風は吹つゝ (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作)

(11)

59   里はあれて思ひも霧も深草や我身うづらの鳴かひもなし (霧中女郎花といふこゝろをよめる) 60   女郎花何ゆゑ我を隔つらん霧のまがきのSきの夕ぐれ 虫をよみ侍ける(墨書補入) 61   浅ぢふの露になくなるきり〴〵す聲も夜寒に秋風ぞふく 拾玉集 吉橋艮山御百首の時 従四位上荒木田 成延 63  手向まで詞の花に色そへて桜の宮にめぐみあるらし 64   吹をくる手向の風のことはりになびくもうれし伊勢の浜荻 65   頼らん心の空はくまもあらじてらせ神路の山のはの月 ( 稿 者 注 。「 成 延 」 は 「 延 成 」 の 誤 り 。 伊 藤 正 雄 『 伊 勢 の 文 学 』 (昭 29)に拠る) 御裳濯集 行路霞といへる事を 荒木田満忠 66   東路や霞も草もはる〴〵と同じみどりを武蔵野の原 同集 雪中女郎( 「 郎 」 墨書補入)花といふ心を(よめる) 荒木田守方 67   咲しよりめかれぬ物を女郎花いかなる霧の立隔つらん 郭公をよめる 寂延法師 68  (補 19)郭公待夜いたくもふけにけり山のはちかく月はのこりて 田家秋近といへる心をよめる 寂延法師 69   (補 20)夕すゞみ門田のおもに吹風の音にもちかく秋はきにけり 同集 題しらず( 「 しらず 」 に見せ消ちで 「 不知 」 ) 成實女 71   春来ても猶かきくもりしら雪の故郷寒しみよしのゝ山 題不知(墨書補入) 72   石上ふるきは花も哀なり我身につもる春をおもへば 花歌とてよめる(墨書補入) 伊せにたてまつらせ給ける二百首 御製 の中に(墨書補入) 62   18) 聲(墨書補入) (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作。初句 「 たかまどの」) 伊勢にたてまつらせ給ける二百首 御製 中に 寂延法師 70   21) よふ秋風 (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作)

(12)

73  ちらば又物や思はん山桜花に限らぬ浮世なれども (稿者注。 『叢書』では「権祢宜成實」詠とする 54番歌と同じ) 紅葉をよめる(墨書補入) 74   山めぐり夜寒の衣うす紅葉しぐるゝ秋を人のとへかし 御裳濯集 和歌所にて春山月といふ心をつかふまつりける 越前 76   (補 23) 山 ふ か み な ほ か げ さ む し 春 の 月 そ ら か き く も り 雪 は ふ り つ 同集 三月尽の心をよめる(墨書補入) 荒木田俊長 79   行春を我のみをしむけふならばうき身からとや詠かねまし 同集 題不知(墨書補入) 荒木田長光 80   みよしのは空まで花の色なれや桜にかゝる峯のしら雲 (水邊花といふことをよめる) 81   棹 (ヲトメゴ歟) 姫 の袖よりあまる花の香のみもすそ川に匂ふ夕かぜ 題不知(墨書補入) 82   をのづから咲をくれたる花をだに心とちらせ春の山かぜ 題不知(墨書補入) 83   時鳥常盤の山はおのれもや鳴て五月の空をしるらん (花橘歌とてよめる) 84  いにしへも猶むかしとや匂ひけん五月わすれぬ軒の立花 伊勢にたてまつらせ給ける二百首の 御製 中に 荒木田成實女 75  22) あけぼの (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作) 集の定めなれば、是も成實女のうたなるべし(墨書補入) 伊勢にたてまつらせ給ける六十首の 御製 の中に 越前 77  (補 24) (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作) 伊勢にたてまつらせ給ける六十首の 御製 の中に (墨書補入) 78  25) このは哉 (墨書補入) (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作)

(13)

(題不知) 85   鵜かひ船はやせをくだす篝火の跡にともえて飛螢かな 雨後のはぎといへる心を(よみ侍ける) 86   庭のはぎしほれてをける朝霧に跡もかくれぬ夜半の村雨 雁歌とてよみ侍ける(墨書補入) 87   鳴てゆく雲居の雁の聲寒み浅茅色づく野邊の夕霧 月 の ( 「 の 」 見 せ 消 ち ) 歌 と て よ め る ( 「 め る 」 左 に 「 み 侍ける 」 ) 88   嵐山さぞ群雲をはらふらん更行まゝにすめる月かげ 駒迎をよみ侍ける(墨書補入) 89   霧原の駒ひく宵の空はれて月も出けり逢坂のせき (第五句 「 せき 」 に 「 山一本 」 ) 擣衣をよめる(墨書補入) 90  山里は夜寒のあらし吹かさねちたびやいそぐ衣打声 91   松風の音ばかりする山里に独ぞ月は見るべかりける ( 稿 者 注 。 こ の 歌 の 作 者 は 御 裳 濯 和 歌 集 に 拠 れ ば 荒 木 田 「 延 成 」 。 『叢書』にも同じ   頭註あり) 同集 題不知 寂延法師 92   ( 補 26) み よ し 野 や む ら ぎ え の こ る あ は 雪 の し た ぐ さ か け て 春 風 ぞふく 百首歌の中に 寂延法師 93   ( 補 27) ふ じ の 根 や つ れ な き 雪 も 時 し あ れ ば し た に は 春 を お も お ひしるらん 題不知 寂延法師 94   ( 補 28) 鶯 の 聲 せ ぬ 野 邊 は な き も の を い か に つ む べ き 若 な ゝ る ら ん 題不知 寂延法師 95   ( 補 29) 春 霞 た て る が う へ に み よ し の ゝ よ し の ゝ 雪 は な ほ も ふ り つゝ 梅をよみ侍ける 寂延法師 96   ( 補 30) 梅 の 花 さ く や 春 邊 の あ さ ぼ ら け な ほ ふ る 雪 に 色 は ま が ひ ぬ ○旅ニ載ス(墨書補入) す み け る 山 ざ と の 花 み る べ き よ し い へ り け る 人 ま う で こざりければ、つかはしける 寂延法師 97   ( 補 31) か ず な ら ぬ 身 は た の め し も た の ま れ ず 花 を よ す る が に 君 をこそまて 花歌とてよめる 98  ( 補 32) う つ せ み の よ し な き 花 に な れ き つ ゝ む な し き い ろ に 年 の へにける 題不知 越前

(14)

99  ( 補 33) 山 里 の に は よ り ほ か の み ち も が な 花 ち り ぬ や と 人 も こ そ とへ 寂延法師 100  (補 34)天川紅葉の橋やみだるらん秋風ふきぬ夕暮のそら 題不知 寂延法師 10 1  ( 補 35) も の ゝ ふ の や た の ゝ す ゝ き う ち な び き を じ か つ ま ど ふ   秋はきにけり (稿者注。 41番歌と同一) 海邊秋風といふ心をよめる 寂延法師 10 2  ( 補 36) と ふ 人 も な ぎ さ の と ま や あ れ は て ゝ あ し の は そ よ ぎ 秋   風ぞふく 雁歌とてよみ侍ける 寂延法師 10 3  ( 補 37) か ど た ふ く 風 の け し き を お も ふ ま に お と づ れ ゆ く は は   つ雁の聲 題不知 越前 10 4  (補 38)秋 は た ゞ 心 よ り お く 夕 露 を 袖 の ほ か に も お も ひ け る か な 同 寂延法師 10 5  ( 補 40) そ で の う へ の 霧 は な み だ の お く も の を し り が ほ に ふ く   野邊の秋風 題不知 寂延法師 10 6  ( 補 41) い く 秋 を な れ て も 月 の あ か な く に の こ り す く な き 身 を   うらみつゝ 海浜重夜といへる心をよみ侍ける 越前 10 7  ( 補 42) い く よ か は 月 を あ は れ と な が め き て な み に を り し く い   せのはま荻 題不知 黒姫 10 8  ( 補 43) き ゝ わ た る な の み な り け り く ら は し の 山 も さ や か に す   める月かな 同集 旅月といへる心をよめる(墨書補入) 荒木田有成 10 9  あくがれて幾よになりぬ草枕空に馴ぬる月にとはゞや 同集 題不知(墨書補入) 成定女 11 0  いづくともしらぬ山路の花のかにさそはれ出る春の明ぼの 時鳥(見せ消ちで「郭公」)をよめる (荒木田成定女) 11 1  里かれずこととふばかり時鳥まつはくるしといかでしらせむ

(15)

同集 題不知(墨書補入) 荒木田永元 11 2  我宿の梅の匂ひやしたふらん遠かた人の行もやらねば 花橘歌とてよめる 11 3  あはれなる花立花の匂ひかな昔に似たる宿もなき世に (題不知) 11 4  秋来ぬといはぬばかりぞ荻のはに夕風わたる岡野邊のさと 月歌とてよめる(墨書補入) 11 5  見るたびや心をのみやくだくべきなぐさめもせよ秋の夜の月 同集 水 邊 の 山 吹 と い へ る 心 を よ み 侍 け る ( 「 よ み 侍 け る 」 墨 書補入) 荒木田實元 11 6  山吹のうつれるかげをみな底に波の折しく花かとぞ見る 新古今集(第十八)雑 題しらず 荒木田長延 11 7  つく〴〵と思へばやすき世の中を心と歎く我身なりけり ( 稿 者 注 。 底 本 著 者 の 薗 田 守 良 及 び 頭 註 者 の 薗 田 守 宣 共 に 「 長 延 」 が 「 寂 延 法 師 」 と 同 一 人 物 と す る 研 究 史 以 前 な の で 、 そ う い う 認 識 の配列になっていない) 御裳濯集 題不知(墨書補入) 長光乙女 11 8  ゆく秋のかたみにひろふ紅葉ばを袖にもためず吹嵐かな 題不知 寂延 11 9  (補 44)あだしのゝ露ともしらで月影のやどる草葉を秋風ぞ吹 12 0  ( 補 45) 秋 の 月 袖 に は い か に く も る ら ん 野 は ら も お な じ 露 の よ   すがを 旅月といへる心をよめる 寂延 12 1  ( 補 46) ふ る さ と の そ ら ま で す め る 心 哉 た び ね ふ け 行 月 を な が め   て 二見百首歌中に 寂延法師 12 2  ( 補 47) 月 は す む ま が き の 虫 は す だ く 也 い づ れ か 宿 の あ る じ な   るらん 12 3  ( 補 48) 心 さ へ あ れ ゆ く 宿 の つ ま な れ や の こ る く ま な く 月 の す   むらん 12 4  ( 補 49) い づ か た の や ま の お く に か お も ひ い で ん あ は れ な る べ   きふるさとの月 ( 稿 者 注 。 12 2 ~ 12 4 の 三 首 は 天 理 本 『 御 裳 濯 和 歌 集 』 で は 「 寂 蓮」詠となっている)

(16)

世をのがれて山ざとに侍けるに月をみて 寂延法師 126   (補 51) う き よ を ば し ば し と お も ふ 山 里 に 行 末 か け て す め る 月 か な 昔を( 「 を 」 見せ消ち)おもひいでられて 12 7  ( 補 52) い に し へ の 秋 こ そ さ ら に こ ひ し け れ た も と に く も る 月   をみるにも 12 8  ( 補 53) な が め じ と お も ふ に つ け て む か し の み わ す れ が た み の   秋のよの月 月歌とてよめる 寂延 12 9  ( 補 54) わ す る な よ 月 よ り ほ か に と も は あ ら じ 野 に も 山 に も す   む身なりとも 13 0  ( 補 55) 秋 の よ は お も ひ や ら れ ぬ く も ぞ な き と ら ふ す 野 邊 も 月   はすむらし 月歌とてよめる 越前 13 1  ( 補 56) う づ ら 鳴 く に は の あ さ ぢ に 月 さ え て 秋 の あ は れ は ふ か   くさのさと 暁擣衣といふことをよめる 寂延法師 132   (補 57) と り の ね も 野 中 の さ と は と ほ け れ ば あ く る も し ら ず 衣 打 也 二見百首歌中に 寂延法師 13 3  ( 補 58) い ま さ ら に 庭 の あ さ ぢ を わ け そ め て と へ と は た れ を ま   つむしの聲 題不知 寂延法師 134   (補 59) 秋 の 行 す そ の ゝ み ち の し る べ し て 花 吹 わ た る 山 お ろ し の 風 帰雁をよめる 寂延法師 135   (補 60)帰 る 雁 し ほ り も み え ぬ 大 ぞ ら に い か に こ し ぢ を わ す れ ざ   る ら ん 花歌とてよめる 136   (補 61)高原のみやの桜も咲にけりしらぬ昔の春ぞこひしき 題不知 寂延法師 137   (補 62)吉野川ながるゝ花の白波のはやくもすぐる春の暮かな ○新古今集雑 二祢宜荒木田延成 13 8  八重榊しげき恵みの数そへていや年のはに君を祈らむ (補 63)    (新勅撰集第九)    (述懐の歌よみ侍けるに   荒木田延成) ○続後撰集(第十二)恋 (恋( 「 のイ 」 )歌の中に   荒木田延成) 13 9  せきかぬる涙の川のうき枕うきてみなはのよるぞけぬべき (続後撰集第十七   荒木田延成) 伊勢にたてまつらせ給ける二百首 御製 の中に 成定女 12 5 ( 50) きこえて (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作)

(17)

月の歌の中(に)雑 14 0  老にける身にこそかこて秋の夜の月見るたびににもくもる涙を ○続古今集(第七)神祇 (神祇の歌の中に   荒木田延成) 14 1  祈 置 し 我 か ね ( き ) 言 の い や ま し に さ か ゆ く 御 代 は 神 ぞ し る ら ん ○続拾遺集(第八)雑秋 (初秋風といふことを   荒木田延成) 14 2  色毎にうつろひゆけばいかゞせんなびく浅茅の秋の初かぜ (○続拾遺集第二十) 神祇を(題しらず   荒木田延成) 14 3  濁りなき御代の流の五十鈴川波も昔に立帰るらむ 新後撰集(第十)神祇(墨書補入) (題しらず   荒木田延成) 14 4  榊もて八つの石つぼふみならし君をぞ祈る内の宮人 御裳濯和歌集 題しらず( 「 しらず 」 に見せ消ち) 14 5  足引のこなたかなたを尋ね来て山のかひある花を見る哉 題不知(墨書補入) 14 6  花さそふ風のたよりにをのづから春の色しる谷の埋木 題不知(墨書補入) 14 7  吹まよふ夜半の嵐の山ざくら明なばなげのかげぞかなしき 題不知(墨書補入) 14 8  をのづから新やかよふ時鳥宿の梢の過がての声 (題不知) 14 9  初秋は時雨もまたじ天の川もみぢの橋をいかにそめけん (月歌とてよめる) 15 0  常磐木のつれなき色も置露に宿かる月の秋は見えけり (題不知) 15 1  山のはのをくりむかへて見る月の我身につもる秋ぞかなしき 題不知 荒木田延成 15 2  ( 補 64) 松 風 が 音 ば か り す る 山 里 に 獨 ぞ 月 を ( 「 を 」 見 せ 消 ち で   「 は 」 ) み る べ か り け る 題不知(墨書補入) 15 3  をのづから涙のよそに詠めばや空はくもらぬ秋よの月 擣衣をよめる(墨書補入) 15 4  ふけにけり遠里小野の秋風に夫かとばかり衣うつこゑ 同集 荒木田仲能 題不知(墨書補入) 15 5  詠めじと思ひすてゝもいかゞせんうつろふ花の夕暮の空 題不知(墨書補入) 15 6  尋けん心ぞつらき山桜ちりぬとばかりきかまし物を

(18)

続後撰集(第九)神祇 太神宮(の)一祢宜にて年久敷つかへ まつる事を思ひてよめる 荒木田延季 15 7  しばしだに立もはなれず瑞垣の久しかるべき御代祈るまで (○続後撰集第九) 神祇を (題しらず   荒木田延季) 15 8  神路山峯の朝日の限なくてらす誓や我君のため ○守宣補フ 続古今秋下   荒木田延季 15 9  (補 65)紅葉ばのちるをぬさとや手向らん嵐吹なり神なびの杜 ( 稿 者 注 。『 叢 書 』 で は 作 者 名 を 「 荒 木 田 延 秀 」 と す る が 、 御 裳 濯 和 歌 集 は 「 延 季 」 詠 。 守 良 が 「 延 秀 」 と し た も の に 守 宣 が 「 延 季 」 として訂正) 続古今集(第七) 文永二年八月十五夜、内宮の御柱立 にあたりて侍(ければ読る)りければ よめる (荒木田延季) 16 0  宮柱立る今宵の夜の月又幾度かめぐりあふべき ○続拾遺集(第八)雑秋 (冬歌の中に   荒木田延季) 16 1  袖ぬらす物とはきけど槙の屋に過るはをしき初時雨哉 (○続拾遺集第二十) 社頭月といふ事(見せ消ちで 「 こと 」 )を (荒木田延季) 16 2  跡 た れ て 郁 代 へ ぬ ら ん 朝 熊 や み 山 を て ら す 秋 の 月 か げ ( 「 月 か げ 」 に 「 よ の 月 イ 」 ) 新拾遺集(第十六)神祇 (神祇歌の中に   荒木田延季) 16 3  神もさぞあかず見るらん桜ちるしめの宮守朝清めすな 拾玉集 吉橋艮山百首の時 16 4  月影のさしも神路の山べには住むかひあれやけふの圓居は 16 5  ためしぞとけふの手向に色そへて朝日もうつる神垣の空 16 6  神路山君が手向を松が枝にかさねてなびく雲の白ゆふ 御裳濯和歌集 夏歌とてよめる 16 7  し ば し と て 詠 む る 程 の や す ら ひ に は か な く あ く る 夏 の 夜 の 空 ( 「 夜の空 」 墨書補入) (月歌とてよめる) 16 8  まつ人のあらば心をつくさまし月すむ宿の荻の上かぜ 続古今集(第六) (題しらず) 荒木田延秀 16 9  紅 葉 ば の ち る を ぬ さ と や た む く ら む 嵐 吹 な り 神 な び の 杜 ( 15 9 番

(19)

歌と同一) ( 稿 者 注 。 薗 田 守 良 は 「 延 秀 」 と し 、 守 宣 も 「 目 録 」 の 該 当 箇 所 に 「 延 廣 神 主 二 男 、 岡 田   続 古 今 」 の 頭 註 を 付 し て い る が 、『 叢 書 』 校訂者が「延季」詠と訂正) ○新後撰集第十 題不知   よみ人しらず 17 0  (補 66) 神 路 山 ひ く し め 縄 の 一 す ぢ に た の む ち ぎ り は 此 世 の み か は 此 歌 姓 名 を し る さ れ ず と い へ ど も 、 嘉 元 二 年 十 一 月 十 一 日 に 延 行 神 主 父 延 成 為 に 作 れ る 遺 稿 に 、 被 撰 入 新 後 撰 和 歌 両 首 中 といひて、此歌を載られたり。是によりて今こゝに是をのす 守 宣 云 、 此 歌 、 廿 一 代 集 抜 粋 伊 勢 神 宮 作 者 ト 題 セ シ 書 ヲ 以 テ 載 る 。 但 荒 木 田 延 季 ノ 次 ニ 載 セ ア ル ニ 依 テ 此 所 ニ 記 ス ト 雖 モ 、 右 延 行 神 主 父 延 成 ノ 為 ニ 作 ル 遺 稿 ト ア レ バ 、 作 者 延 成 神 主ノ歌歟(墨書補入) (稿者注。 『廿一代集抜粋伊勢神宮作者』が如何なるものか未詳) 御裳濯和歌集 題しらず( 「 しらず 」 に見せ消ちで 「 不知 」 ) 荒木田成行 17 1  村雨の過るを野邊の雲間より山時鳥声もらすなり 題不知(墨書補入) 17 2  木のまもる月より外の友もなし槙たつ山の椎柴の庵 新後撰集(第十二)雑 荒木田氏忠 (題しらず) 17 5  をくれじと思ふ心やなき人のまよふ闇路の友と成らむ 続千載集(第九)神祇 (題しらず   荒木田氏忠) 17 6  神路山かげの小草は萌にけり末葉ももれぬ春の恵に 新千載集(第十) 都にのぼりて月を見てよめる (荒木田氏忠) 17 7  我たのむ神路の山を出るより身をはなるべき月の影かは ○新拾遺集(第九)別 (題しらず   荒木田氏忠) 17 8  ふり捨て誰かは越む鈴鹿山関屋は夜半の月ももりけり 成行(墨書補入) 伊勢にたてまつらせ給ける二百首 御製 中に 17 3  (補 67) 伊勢にたてまつらせ給ける二百首 御製 中に 17 4  (補 68)誰 (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作)

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伊勢新名所歌合

  大納言為世卿判あり(墨書補入) 桜木里 一祢宜尚良 17 9  朝熊や神代より咲花を見て心ぞとまる桜木の里 泉水杜 18 0  五十鈴川ながれ涼しく成にけり清水の森に通ふ秋かぜ 岩波里 18 1  ぬれてこそ光りもまされ行秋の月に宿かせ岩波の里 打越濱 18 2  蜑の住友とやは見る波あらき打越の濱の冬の夜の月 藤波里 18 3  契り置春は来て見む松が枝の千とせにかゝる藤波の里 河邊里 18 4  住人や暮れば窓にあつむらん河邊の里に飛螢かな 岡本里 18 5  「(本文欠落)」また打もねぬ岡本のさと 三津湊 18 6  夢なれやみつの湊のうき枕波のうつゝにとふ人もなし 大沼橋 18 7  わたらひや大沼の橋もとだへせず秋田かりあげ治まれる世は 同歌合 祢宜荒木田成言 18 8  尾上より麓をかけて桜木の名に あ (ママ) ふ里にかほる春風 18 9  影きよき清水の森のしたはれて鳴音涼しき時鳥かな 19 0  詠めつゝねぬ夜の月の影ふけて河音高し岩波の里 19 1  沖津風塩干を遠み月さえて浪も音せぬ打越の濱 19 2  春深きみまきの小野の浅ぢふに松原こめてかゝる藤波 19 3  湊入の河邊のまこもこす波に里かたかけて飛螢かな 19 4  瀧なみの山越にきく鹿の音にね覚わひしき岡本の里 19 5  我袖ぞみつの湊をいる船のよするばかりに浪はかけける 19 6  明ぬとて庵もる賤や帰るらん大沼の橋をわたる里人 同歌合 権祢宜成宗 19 7  桜木の名におふ里の春風に折らぬ袂も花の香ぞする 19 8  風通ふしみづの森の松かげに聲も涼しきほとゝぎすかな 19 9  月すめば打ぬる程の夜半もなし河音高き岩浪の里 20 0  打越の波にしばなくさよ千鳥濱風さむみ友したふなり 20 1  里人や千とせをかけて契るらん松に花さく池の藤なみ 20 2  五月雨にけたぬ思ひも程見えて河邊の里にもゆる夏むし 20 3  岡本の里は外山の近ければ聞馴にける棹鹿のこゑ 20 4  よそにのみ人をばみつの湊船うきてこがるゝ恋ぞ苦しき 20 5  立渡る大沼の橋の朝霧に行来の人や道まよふらん

(21)

同歌合 権祢宜荒木田長興 20 6  花の香を霞みこめても桜木の里とはしるし匂ふ春風 20 7  待人の心くみてや時鳥しみづの森に初音啼らむ 20 8  月も猶住こそまされ宮川や清き流の岩波の里 20 9  打越の濱松がえは浪かけて雪げにさゆる沖津塩かぜ 21 0  幾千代を松に契りて藤波の里のあるじも春を経ぬらむ 21 1  水まさる河邊の里の五月雨に入り江もちかくよする船人 21 2  岡本の里隔つる秋霧に妻をこめてや鹿の鳴らむ 21 3  いつかきて三津の湊のしほれ芦のねになきぬらす袖もほすべき 21 4  朝霧の立や大沼の浮橋のうきて思ひも晴るまぞなき 同歌合 権祢宜氏行 21 5  里人もたのめし春と桜木の花咲ころや我を待らん 21 6  初音なく清水の森の時鳥ぬれてもきかん村雨の空 21 7  松に吹秋の河かぜ音さえて月すみわたるいはなみの里 21 8  打越の濱風あれてよる湊にやどり定めぬ冬の夜の月 21 9  此里のあるじや折てかざすらんちとせの春を松の藤なみ 22 0  さびしさも誰かとふべき水まさる河邊の里の五月雨の頃 22 1  時雨つゝ紅葉かつちる岡本の里もさびしく打衣かな 22 2  ほのかなる三津の湊のいさり船幾世こがれて恋わたるらん 22 3  浮事は大沼のはしに立霧のはれぬ思ひに世をわたる哉 同歌合 権祢宜経顕神主 22 4  おのづからまじる梢も埋れてさながら花の桜木のさと 22 5  手に結ぶ清水の森の時鳥あかぬはおのが鳴音のみかは 22 6  影やどる月も夜寒の秋ふけて河音さびし岩波の里 22 7  霜きゆる汀の真砂きわ見えて跡なる波の打越の濱 22 8  咲かゝる木々の梢もをしなべて同じ名にたつ藤波の里 22 9  夕されば河邊をかけてこす塩に里も涼しく松風ぞ吹 23 0  岡本の里も夜寒に時雨れつゝ紅葉がさねの衣打なり 23 1  またいつか三津の湊のうき枕夢にも結ぶ契りなるべき 23 2  うき事は大沼のはしの朝霧に猶立まよふ世をやわたらん 同歌合 権祢宜荒木田定顕 23 3  春といへばよそにもしるく桜木の花こそ里の名にたてりけれ 23 4  夕すゞみしみづの森の時鳥影をば手にも結び馴けり 23 5  いねがてに月みよとてや秋風に聲打そふる岩浪の里 23 6  風はやみ浪打こしの濱あれてしば啼千鳥かたも定めず 23 7  末長く松にむかひの里までも咲かゝりたる岸の藤波 23 8  水まさる河邊の里の五月雨にからぬまこもは波ぞ敷ける 23 9  風よはるそとものならに音そへて時雨降なり岡本の里

(22)

24 0  ほのかにも人をばみつの湊江におきふし芦の音こそなかるれ 24 1  霧深き大沼の堤行くれて渡りわづらふ槙の継はし 同歌合 祢宜荒木田 祢 (ママ) 宜 延行 24 2  桜木を梢に見せて咲にけり花もや里の名をばしるらん 24 3  影をだにむすびもとめぬ時鳥清水の森に鳴過ぬなり 24 4  幾秋の月やどりきて岩波の立よる里に名をとゞむらん 24 5  伊勢嶋や浪の打越に月さえて塩風あらき冬の濱荻 24 6  此さとに幾千代かけて藤波の花さく松も春を経ぬらん 24 7  浦近き河邊の里のなびき藻に入塩見せて飛螢かな 24 8  岡本のすそ田に秋の雁鳴て夜深き里に衣うつなり 24 9  くれねたゞおなじ湊のかたし貝みつといひてもあはぬ名ぞうき 25 0  明わたる霧の晴間にとだえして大沼橋をふるす秋風 ○新後撰集(第十二) 恋の歌の中に (荒木田延行) 25 1  思ひ川いつまで人になびきもの下に乱れて逢せ待らん (補 69) \重複(墨書補入) (新後撰集第十二   恋の歌の中に   荒木田延行) 続千載集(第十五)恋 荒木田氏之神主 (恋歌の中に   荒木田氏之) 25 2  うき人の心のたねの忘草いつ我中にしげり初めけむ 風雅集(第十九) 社頭の( 「 の 」 見せ消ち)月を (荒木田氏之) 25 3  すむ月も幾とせふりぬいすゞ川とこよの浪の清き流に 新千載集(第十) 神祇を( 「 を 」 に 「 歌に 」 ) (荒木田氏之) 25 4  幾秋を送りむかへて神路山月も天てる光なるらむ 玉葉集(第二十) 神祇に(題しらず) 荒木田経顕神主 (此人系ニ見エズ。糺スベシ) 25 5  曇 り ( 「 り 」 見 せ 消 ち ) な く ( 「 く 」 に 「 き 」 ) 今 も ま す み の 鏡 と は 天照空の影にもしれ 新続古今集(第十七)雑 (題しらず   荒木田経顕) 25 6  初瀬山月に淋しき鐘の音をひ原におくる夜はの山( 「 あき 」 )風 (稿者注。 25 5 ・ 25 6 番歌共に『叢書』にナシ。その理由は不明) 続千載集(第十二) 恋の( 「 の 」 見せ消ち)歌の中に 荒木田季宗 25 7  い か ゞ ( 「 ゞ 」 見 せ 消 ち で 「 に 」 ) せ ん あ は で の 浦 に よ る 波 の よ る だに人を見る夢もがな

(23)

新千載集(第十) 神祇を(題しらず) 荒木田守藤 25 8  水上は深き神路の山ぞともみもすそ川の流にぞしる 新葉集 荒木田季長 25 9  我袖に涙もいつか春の夜の霞むを月のならひとも見ん 風雅集(第十九) 神祇の歌の中に(題不知) 荒木田房継 26 0  ふして思ひあふぎて頼む神路山深き恵をつかへてぞまつ ○新後拾遺集(第十九)神祇 荒木田経直 (題不知) 26 1  五十鈴川瀬々の岩波かけまくもかしこき御代と猶祈る哉 御裳濯和歌集 (行路霞といへる心をよみ侍ける) 度會神主興房 26 2  旅 衣 い く へ の 露 わ け つ ら ん 今 ゆ く 末 は ( 「 は 」 見 せ 消 ち で 「 も 」 ) 武蔵のゝ原 同集 題不知(墨書補入) 度會春章 26 3  桜さく山とび越て帰る雁くもがくれゆく心ちこそすれ 同集 題しらず( 「しらず 」 みせけちで 「 不知 」 ) 度會神主氏彦 26 4  あはれいかに吉野の奥に住人の心のまゝに花を見るらん 同和歌集 題しらず(不知) 度會雅長神主 26 5  秋 風 は 野 邊 の あ さ ぢ ( 「 あ さ ぢ 」 に 「 あ る じ 」 ) に あ ら は れ て ち ゞ の草ばのなびかぬぞなき 同 題不知(墨書補入) 度會神主利忠 26 7  思ひやれあれたる宿の寂しさに松吹風の秋の夕ぐれ (題不知) 度會生光女 26 8  をのづから花の折のみとふ人の心の色をいかゞたのまん (卯花をよめる) 伊勢にたてまつらせ給ける六十首 御製 中に 26 6  70) なしき (稿者注。御製は「後鳥羽院」の詠作)

(24)

26 9  卯の花のさくやみ山の夕月夜この下かげも残らざりけり ○新後撰集(第十) 神祇を(題不知   度會行忠) 祢宜度會行忠神主 27 0  曇りなき天照神のます鏡昔を今に移してしかな ○続千載集(第九)神祇 おなじ意を(題しらず   度會行忠) 27 1  皇 の あ ま の ( す へ ら ぎ の 天 の ( 「 の 」 に 「 つ イ 」 ) 御 祖 の み こ と のり傳て祈る豊の宮人 ○新続古今集(第十) 旅(の歌の中に   度會行忠) 27 2  旅衣すそのゝ尾花露分て袖に乱るゝ月のかげ哉 ○玉葉集(第十) 恋の心を(題しらず   度會常良) 度會神主常昌(始名常良) 27 3  逢事の空しき名のみ残し置て身はなき数に聞やなされん ○続後拾遺集(第二十)神祇 (題不知   度會常良) 27 4  民の為世の為祈る神わざのしげき御国は猶ぞさか え へ ん ○新拾遺集(第十六) 題不知 従三位常昌 27 5  ( 補 71) 君 が 代 を い の る 心 の ま こ と を ば い つ は り な し と 神 や う くらむ 新千載集(第十) 神祇(題しらず   従三位常昌)   従二(三歟)位常昌 27 6  これやこの天照神の天地をまもるしるしの千木の片そぎ

( 割 注 。 元 享 (ママ) 元 年 冬 、 判 者 小 倉 中 納 言 入 道公雄) 落葉 27 7  もろくちる木葉ばかりや槙の屋に過る時雨の音残すらん 冬月 27 8  木葉のみ荒木田氏の音に時雨れ来てくもらぬ空にさゆる月かな 朝雪 27 9  はらはねば朝たつ袖も白妙の雪をかさぬる旅衣かな 不逢恋 28 0  つれなさもはてしあらばと頼む身の心長さや命なるらん 待恋 28 1  かはるやと人をうたが ふ (ママ) と はで更るもいとゞかなしき 恨恋 28 2  つらさをもたへて命のながらへば世にためしある恨とやせん

(25)

山家松 28 3  とふ人は絶てあらしの音信て松にのみきく山かげの庵 懐旧夢 28 4  はかなしと思ひながらもたのむ哉昔は夢の外に見えねば 神祇 28 5  みしめ縄頼をかくるかひあらば神の心もさぞなびくらん ○続千載集(第) 題しらず 度會朝棟 28 6  行末の名をこそ思へもしほ草かき置跡のくちぬたのみに ○風雅集(第十九)神祇 (題しらず   度會朝棟) 28 7  片そぎのちぎは内外にかはれどもちかひはおなじ伊勢の神風 ○新千載集(第十六)雑 (秋の歌の中に   度會朝棟) 28 8  見るまゝに世のうき事も忘られて秋の心ぞ月にはれゆく (○新千載集第二十) 賀のうたとて (題しらず   度會朝棟) 28 9  芦 原 の く に つ 神 ( 「 く に つ 神 」 左 に 「 地 祇 わ ざ 」 ) わ ざ し げ ゝ れ ば とこよに君が御代ぞさ   かゆく 北御門歌合 詠九首歌合に 29 0  浮雲の晴ても猶ぞ時雨ける木葉をさそふ峯のあらしに 29 1  浅ぢ う (ママ) の露の跡とふ月のみや霜にもかれぬ秋の面かげ 29 2  水茎の岡のやかたは跡もなしねての朝げの霜のふかさに 29 3  つれなさをいつまでとてかしたふらん命は人のかぎりある世に 29 4  待宵も誰あらましに更ぬとてとはれば人のうきになすらん 29 5  うきを身の咎とばかりは知ながらつらさぞ人に猶残りける 29 6  堪てすむ友としきけば淋しさもうきになされぬ峯の松風 29 7  面かげはさらでも残るいにしへを猶忍べとや夢にみゆらん 29 8  あめの下まもるちかひも神風のおさまれる世の恵にぞしる ○風雅集(第十九) (割注。此歌机右抄にも出たり) 度會家行神主 豊受大神宮にて立春の日よめる (度會家行) 29 9  をしほ井をけふ若水に汲初て御あへ手向る春は来にけり 北御門歌合 九首題に 30 0  とひ過る跡にももろき泪かな木の葉の音はよそにしぐれて 30 1  露ならで玉とぞ見ゆる置霜のこほれば移る浅ぢふの月 30 2  我跡を人もとめてや帰るらん今朝ふみ分る雪の下道 30 3  まてといふたがあらましにながらへてうきに命の猶残るらむ 30 4  更てうき影ともなるは待事のまた身に残る山の端の月

(26)

30 5  よしやたゞ風の便りの真葛原恨みしかひも有身ならねば 30 6  年を経て幾世の夢を残しけん枕になるゝ峯の松風 30 7  有とても猶行末ぞたのまれぬ過にし方を夢と見るにも 30 8  天照す御かげや更にうかぶらん心の水のすむにまかせて 続千載集(風雅集に神祇歌とあり。墨書補入) (風雅集第十九   神祇を) 度會延誠 30 9  世々を経てくめどもつきじ久堅の天より移す忍穂井の水 続千載集第十七   述懐歌の中に 度會延誠 31 0  ( 補 72) か く て 世 に う き を む く ひ と 思 ひ し る こ ゝ ろ の な き を 身 にかこつかな 北御門歌合 詠九首和歌 31 1  時雨かと聞ばかりにや吹風にさそふ木の葉も袖ぬらすらん 31 2  霜結ぶ尾花が袖をよすがにて露の跡とふ野邊の月かげ 31 3  うき宿のならひになさぬ雪ならばとはるゝ跡も今朝やまたなむ 31 4  つれなさの程をしらずは同じ世にながらへばとも頼れやせん 31 5  とはれけるいつの夕のならひとて契れば人の猶またるらん 31 6  さのみとていはぬ日数の移るをも恨みよはると人やおもはん 31 7  なれなばと何思ひけん淋しさは同じみ山の松の夕かぜ 31 8  夢のうちに通ふばかりの面かげは見るもはかなき昔なりけり 31 9  君が代を常盤に祈る榊葉にゆふしでなびく伊勢の神垣 ○新葉集 冬のうた 度會盛行神主 32 0  梢をばさそひつくして山かぜの落ばに残る音の淋しさ 北御門歌合 九首題 32 1  槙の屋に時雨てもらぬ音づれや嵐にたぐふ木葉なるらん 32 2  時雨ぬる雲をばよそに吹すてゝ嵐にこほる冬の夜の月 32 3  雪の中に心かよはゞ問やとて我をも人の今朝や待らん 32 4  数ならぬ身をかこてとや偽の情にだにも猶もらすらん 32 5  とはれずは後のつらさとなりやせん今宵は頼む人の言のは 32 6  心には残る恨のありとだにことに出ねば知人やなき 32 7  たゆむ間はしばしまぎるゝ淋しさも猶忘られぬ軒の松風 32 8  をのづから見る俤もとまらぬは昔にかへる夢路なりけり 32 9  五十鈴川神代久しく住そめて流れの末ぞ限しられぬ 北御門歌合 祢宜度會貞蔭 九首をよめる 33 0  吹よはる方にや深く積るらん嵐にもろき峯の紅葉ば 33 1  見るまゝにさえこそまされ山風の氷りて更る冬の夜の月 33 2  霜 が れ し 跡 さ へ 今 朝 は 絶 に け り 雪 の 下 な る 野 べ の 緑 ( 「 草 葉 歟 」 墨書)は 33 3  猶ざりのつれなさならば数ならぬ身を忘てもしたはれやせん

(27)

(稿者注。一首欠) 33 4  偽のつらさにこりぬ心かな契れば人の猶またれつゝ 33 5  心をもすめとてしめし宿なれど淋しき松の風もいとはず 33 6  面かげの人だのめなる昔かな見てもとまらぬ夢にかよひて 33 7  ます鏡今もくもらぬ御かげこそ神代をうつす鏡成けり 同じ題にて 祢宜度會神主貞香 33 8  吹さそふ風のまゝなる木葉にもをのれと散や猶まじるらん 33 9  霜結ぶ尾花は朽て我袖の涙を露とやどる月かな 34 0  明わたる外山も雪の深しとや出る日影の猶氷るらん 34 1  こりず猶したふ心よつれなさのはてもやありと何頼むらん 34 2  せめてなど来ぬ夜あまたの偽をまたじとだにも思はざるらん 34 3  心にやさても残らん言の葉にいひ尽すべきつらさならねば 34 4  絶ずとふ松の嵐の音づれは馴ても淋し山かげの庵 34 5  見ても猶はかなき物は思ひねの夢路にかへる昔なりけり 34 6  天照す神の恵は久かたの月日とともにつきじとぞ思ふ 同じ九首題にて 祢宜度會延明 34 7  散しくも又さそはるゝ朝風に霜のとだえを見る木の葉哉 34 8  木のまもる心づくしの秋よりも猶さえまさる冬のよの月 34 9  今朝の間をとふべき人は誰なればたのめぬ跡を雪に待らん 35 0  いたづらにうき名ながして妹兄川隔つる中は逢瀬だになし 35 1  うき人の偽しるく更る夜に猶待すてぬ猶もつれなし 35 2  数ならぬ身のことはりのしられずは人のつらさも猶や増らん 35 3  松風のふかぬ絶間も淋しさの猶かこたるゝ山かげの庵 35 4  古をかへして見つるうたゝねの夢の名残を又したふ哉 35 5  跡たれて流たえせぬ五十鈴川深き誓の程もかしこし 権祢宜延良 35 6  定めなくしぐるゝ頃もおもはずは何に木葉の音まがへまし 35 7  冬に見し秋の形見を浅ぢふの袖に残して氷る月かげ 35 8  今朝も猶人のとはずは庭の雪に我跡をしむかひやなからん 35 9  つれなさをしたひ忘れぬ年月の積れる程は人もしるらん 36 0  偽もいつの限にたのめとて今宵も更る契なるらん 36 1  ことはりを思ひしらずは数ならぬ身を忘れてや猶恨みまし 36 2  淋しさをいかに忍べど松風のとひもわすれぬ軒端なるらん 36 3  さめぬれば又今さらに忍ぶ哉夢を昔の面影にして 36 4  ちかひをば神も隔てじ瑞垣の内外にかはる宮井なりとも 権祢宜秀長 36 5  吹風にもろき木葉を時雨れかと聞まがへてもぬるゝ袖哉 36 6  時雨くる森の木の葉の跡とめてもりくる月の影の淋しさ 36 7  とはれなば我出がての跡をのみ今朝はつげつる庭の雪かな 36 8  逢事にかへばと思ふあらましの末もたのまぬ我命かな

(28)

36 9  よひの間とおもはゞせめて偽の契もたのむかたやあらまし 37 0  身をしれば人の心のつらさをも恨むる迄のことの葉ぞよき 37 1  山里のならひと思ふ淋しさも分てしらるゝまつの夕風 37 2  面影も有しばかりに見る程の夢ぞ昔のかたみなりける 37 3  岩戸明し四方の神わざなかりせば光あまねく世を照さめや 権祢宜行俊神主 37 4  もろくちる程もしられて吹風の絶間にも猶ちる木の葉哉 37 5  更る夜の嵐にこほる池水にやどらぬ月の影ぞさえゆく 37 6  今朝は又庭にやつまぬ雪なれどとはればいかゞ跡もいとはん 37 7  恋しなん命より猶なき跡におしかるべきはうき名なりけり 37 8  頼めぬを我あらましに待よひの更るは人の偽もなし 37 9  かきくらす涙にまけてつらさをも思ふ斗はいひぞしらせぬ 38 0  山陰の柴の庵はしばしにて軒端の松や千年をも経む 38 1  なき人の面影見せてぬるがうちの夢は昔も隔ざりけり 38 2  動きなき下津岩ねの宮柱いくたび同じ跡にたつらむ 権祢宜度會雅蔭 38 3  音たてし木葉やうすく成ぬらんさそふにつけてよはる風哉 38 4  問馴し露の名残をしたひてや枯野の月の霜にさゆらん 38 5  今朝も猶とふ人をそき庭の雪にまたぬ日影の跡やいとはん 38 6  かひなしや後の世とだに逢事を契らぬ中にすてん命は 38 7  偽と思ふ心も誰なれば猶まちすてぬゆふべなるらん 38 8  うき身ぞと思ひしりぬる心をば誰になしてか又恨むらん 38 9  淋しさをうきになしても山里に聞すてられぬ松の夕風 39 0  夢路にもかよふたよりやなからまし現にしたふ昔ならずは 39 1  仕へても神の恵はしらゆふのかけて心にたのむばかりぞ 権祢宜度會冨行 39 2  時雨つる音はつれゆく山風に又音づれて降木の葉哉 39 3  さゆる夜の光を霜に置そへてひとつに氷る冬の月かげ 39 4  夜もすがら積れる程もかつ見えて雪にぞしらむ窓の曙 39 5  言の葉の情もあらばをのづからうきにや残る涙ならまし 39 6  さりともとまつに頼を残夜のふくるもつらき鐘の声かな 39 7  人をのみつらきになして恨むるや身の咎しらぬ心なるらん 39 8  ならひぞと思ひなすにも山里の猶淋しさはまつの夕かぜ 39 9  はかなしやさむればもとの古に又立帰るゆめのおもかげ 40 0  神代より恵はしげき芦原の国のさかへは今もかしこし 権祢宜度會延親 40 1  吹風のさそはぬひまもをのづから心ともろくちる木葉かな 40 2  さやけさは秋にかはらぬ月影のこほるぞ冬のしるし成ける 40 3  旅衣朝たつ道の行末もまよふばかりの野邊のしら雪 40 4  何事もむくひとならばうき人のつれなさも又身にや帰らん

(29)

40 5  待あかす我暁の鐘の音を誰別れにかなして聞らむ 40 5  しらせばや真葛の原の秋風にたへぬ恨の有とばかりも 40 7  庵はまた身をもかくさぬ山里に心こそすめ軒の松風 40 8  今更に昔を忍ぶね覚かな名残を夢の末に残して 40 9  真言ある人をや神も守らん恵はおなじちかひなりとも 権祢宜雅冬神主 41 0  聞たゆむひまこそなけれ木葉ちる宿は時雨の幾廻りとも 41 1  影までも秋にかはりて氷る夜の月のかつらに霜や置らん 41 2  いづくをか干潟とも見ん朝ぼらけ波につゞきて積るしら雪 41 3  つれなさのうつゝに限る中ならば夢にや人の逢と見えまし 41 4  有明の月は雲井に出ぬれどまたれてとはぬ人ぞつれなき 41 5  つらからば思ひもたえて何とたゞしたふ恨の猶残るらん 41 6  いつとても問人はなき山里の心とたれを松の夕かぜ 41 7  遠ざかるむかしを今と見る夢の覚るたゞちも現なるかは 41 8  内外とて分べき神のちかひかは同じ恵にてらす月日を 権祢宜朝名 41 9  とひすつる時雨の跡の山風にまた音づれてちる木葉かな 42 0  時雨つる雲間に出て定めなき空のならひは月もしりけり 42 1  草の原朝たつ野邊の行末を誰にとはまし雪の下道 42 2  うき身をば人もゆるさぬ命もてあふにかへばと何頼むらん 42 3  とはるべき頼を何に残してか思ひもすてぬ行末なるらん 42 4  したひてもかひなき身こそかこたるれ人の心のつらきのみかは 42 5  馴なばと思ひし峯の松風に猶淋しさをかこつ宿哉 42 6  たのまずよ見るもはかなき夢路より面影ばかり通ふ昔は 42 7  やはらげて光をちりにまじへしや世をてらすべき始なりけり 新後拾遺集(第十九) 神祇(題しらず) 度會朝勝 42 8  御祓する豊宮川のしき波の数より君を猶祈るかな 新葉集(秋) (秋歌の中に) 度會通詮 42 9  初時雨降にけらしも外山なる柞の梢色附にけり 恋( 「 の 」 墨書)うたとて 度會行治 (系、三祢宜とあり。南朝宣旨ノ祢宜歟。他書ニ不見) 43 0  数ならぬみのゝ中山中々に隔て果なば恋しからじを 雑 度會朝英 43 1  君が代の春にあはずは青柳の糸かく眉を開けざらまし

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