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日本金属学会誌第 73 巻第 2 号 (2009)65 73 依頼解説論文 金属材料の照射効果と格子欠陥研究の最前線 点欠陥集合体の 1 次元運動とボイド成長を中心に 義家敏正 京都大学原子炉実験所 J. Japan Inst. Metals, Vol. 73, No. 2 (2009), pp.6

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金属材料の照射効果と格子欠陥研究の最前線

―点欠陥集合体の

1 次元運動とボイド成長を中心に―

義 家 敏 正

京都大学原子炉実験所

J. Japan Inst. Metals, Vol. 73, No. 2(2009), pp. 6573  2009 The Japan Institute of Metals

INVITED REVIEW

Recent Progress in Radiation Damage and Lattice Defects in Metals ―One Dimensional Motion of Point Defect Clusters and Void Growth― Toshimasa Yoshiie

Research Reactor Institute, Kyoto University, Kumatori 5900494

The generation and accumulation of point defects and their interaction with preexisting defects in crystalline solids under energetic particle bombardment are important subjects for nuclear materials developments and also in the field of crystalline lat-tice defects. This review gives recent results obtained in the study of radiation damage of metallic crystals, mainly concerning movements of point defect clusters and void growth.

(Received June 3, 2008; Accepted October 27, 2008)

Keywords: radiation damage, voids, interstitial type dislocation loops, movement of clusters, bias factor

1. 序 言 材料中に存在する結晶の乱れ(結晶格子欠陥)は材料の力学 特性だけでなく多くの物性に影響を与える.格子欠陥の材料 中への導入方法には,高温からの急冷や塑性変形などの方法 がある.高エネルギー粒子を結晶に照射して欠陥をつくる照 射損傷もその 1 つである.有名な Corbett ら1)の,極低温電 子照射により生成した Cu 中の格子間原子の移動ステージを 同定した実験を挙げるまでもなく,格子間原子の性質を実験 的に調べるためには照射損傷が唯一の方法である. 照射損傷では材料が非晶質でなく,また照射中に相変態が 起こらなければ,結晶中に同数の格子間原子と原子空孔を生 成する.格子間原子と原子空孔が相互消滅すれば,元の状態 に戻る.しかし,点欠陥は周囲にひずみ場をもつため,孤立 した点欠陥よりも集合体を形成した方がひずみエネルギーが 低下する.そのため点欠陥集合体が形成される.分子動力学 法に基づくシミュレーションによると,照射の極初期,ピコ 秒の間に既に点欠陥集合体を形成している場合もあることか ら,点欠陥の拡散がなくても集合体を形成できることが分か る. もし格子間原子と原子空孔が同じように振る舞えば,照射 欠陥の発達は顕著ではない.実際は格子間原子と原子空孔の 挙動,それらと他の欠陥との相互作用は同等ではない.点欠 陥反応のアンバランスは格子間原子集合体や原子空孔集合体 が成長するための重要な要因となる.例えば一般の金属では 格子間原子の移動の活性化エネルギーは原子空孔よりもはる かに低い.格子間原子の移動の活性化エネルギーは多くの場 合 0.1 eV 以下なので,その移動速度は室温でも 600 K 程度 でも殆ど変わらない.一方,鉄鋼材料のように原子空孔の移 動の活性化エネルギーが 1 eV 程度の材料では,室温と 600 K では移動度が大幅に変化する.そして,原子炉材料の使 用温度 560 K 付近は原子空孔集合体の成長が活発になる温 度に対応する.点欠陥周囲のひずみ場は格子間原子が原子空 孔よりはるかに大きい.そのため格子間原子の他の欠陥との 反応性は原子空孔のそれよりも高くなる2,3).最近,格子間 原子集合体や原子空孔集合体も移動できることが明らかにな った.しかしその移動頻度にも差があり,これも点欠陥反応 のアンバランスを引き起こす要因となる.これらの知見は照 射損傷が材料に大きな影響を与える原子力材料学の分野だけ でなく,広く格子欠陥が関与する分野に寄与することが期待 できる.本論文では最近の照射損傷による欠陥反応,特に点 欠陥集合体の移動とボイド成長を中心に述べる. 2. 格子間原子型転位ループの 1 次元運動 2.1 1 次元運動の実証 格子間原子は集合体として格子間原子型転位ループを形成 する.高エネルギー粒子を照射した FCC 金属では{111}面 上に積層欠陥をもつバーガスベクトル b=1/3〈111〉タイプの 転位ループと,積層欠陥が解消(unfaulting)した形である b =1/2〈110〉タイプの転位ループが,BCC 金属では b=〈100〉 と b=1/2〈111〉の 2 種類の転位ループが存在する. これらの金属の照射後の透過電子顕微鏡観察では,Fig. 1

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Fig. 1 Alignment of interstitial type dislocation loops in a thin foil of Ni irradiated with fission neutrons in the JMTR at 573 K to a dose of 0.13 dpa. Arrows indicate〈110〉directions.

Fig. 2 Distribution of interstitial type dislocation loops near an edge dislocation in fusion neutron irradiated Ni2 atCu by the RTNS at 563 K to 3.1×10-3dpa, revealed by stereo pair micrographs (a), and measured distribution (b).

Fig. 3 Movement of interstitial type dislocation loops in electron irradiated Fe at 300 K with 0.08 dpa/s using HVEM JEMARM 1250 with an accelerating voltage of 1250 kV (courtesy of Dr. Y. Satoh).

のように格子間原子型転位ループがある方向に整列している 構造や,Fig. 2 のように刃状転位の膨張側に密集している構 造が観察された.JMTR(Japan Materials Testing Reactor)

は 日 本 原 子 力 研 究 開 発 機 構 の 50 MW の 材 料 試 験 炉 , RTNS(Rotating Target Neutron Source)は米国ロー レンス・リバモア国立研究所にあった 14 MeV の DT 中性 子源である.Fig. 1 は,予め透過電子顕微鏡観察可能に研磨 した薄膜を照射したものであり(thin foil irradiation),一部 の転位ループは表面に逃げて消滅している.また照射試料の 観察中に,小さな点欠陥集合体の移動がしばしば観察され た.更に超高圧電子顕微鏡による電子照射下での損傷構造そ の場観察では,格子間原子型転位ループの 1 次元運動(主に 一方向への移動や往復運動)が観察されていた4,5).Fig. 3 は 東北大学佐藤裕樹博士提供による,室温で鉄の超高圧電子顕 微鏡を用いた照射中に観察される,格子間原子型転位ループ の動きを示す組み写真である.しかしこのような転位ループ の移動についてはその機構が長い間分からなかった.転位は 滑り面上 を移動できる.しかし,転位ループの場合 Fig. 4(a)のようにバーガスベクトルは同じ方向を向いている. そのため,Fig. 4(b)のようにループの左右にせん断応力が 加われば,転位ループは応力方向に変形し,転位ループの重 心は移動できない.Fig. 4(c)に示すように,もし転位ルー プ全体にバーガスベクトル方向の応力が働けば移動は可能で

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Fig. 4 Schematic illustration of the movement of an intersti-tial type dislocation loop under stress. The cylinder indicates the slip plane of loop.

Fig. 5 Schematic illustration of a crowdion (upper figure) and a bundle of crowdions (lower figure) in FCC structure.

Fig. 6 Dislocations and voids in fission neutron irradiated Ni by the JMTR to a dose of 0.11 dpa at 573 K.

ある.移動が可能なプリズマティック転位ループの場合,塑 性変形中に生成し,転位の増殖などにより後方から押されて 転位ループが移動する機構は知られていたが68),照射下で 殆ど孤立している転位ループに,そのような力が働くとは考 えられなかった. 移動の機構は照射損傷の分子動力学法によるシミュレーシ ョンにより明らかになった.照射損傷の結果,原子空孔と格 子間原子の対(フレンケル対)が生成するだけでなく,格子間 原子の集合体が直接カスケード内で生成し移動することが見 出された9).集合体はクラウディオンの束であり,移動方向 は原子の稠密方向である.従って,FCC 金属では b=1/2 〈110〉,BCC 金属では b=1/2〈111〉の完全転位ループとなる. Fig. 5 に FCC 中のクラウディオンの束の模式図を示す.そ の後 Kuramoto10)により静的緩和法に基づく格子間原子型 転位ループの移動の活性化エネルギーが求められ,転位ルー プが小さい場合格子間原子の活性化エネルギーよりも低いこ とが判明した.従って転位ループの移動は熱活性過程での原 子の集団運動であることが示された. しかし,これで全てが解明したわけではなかった.室温で も透過電子顕微鏡で,移動している格子間原子型転位ループ が観察できる.その速度は数万倍の観察倍率でも目視で追え る程度であり,もし転位ループの移動が熱活性過程で活性化 エネルギーが 0.1 eV 以下ならば,原子間距離の移動はほぼ 格子振動の速さになり透過電子顕微鏡では到底観察できない はずである.またその移動距離も室温で 1 秒間に mm 近く になる.転位ループの 1 次元運動が不純物に影響されるこ とは Satoh ら11)の純度の異なる鉄における超高圧電子顕微 鏡観察により示された.彼らは超高圧電子顕微鏡観察中の移 動は,転位ループを捕獲している不純物が高速電子により弾 き出されるためとして解析した.また Sato ら12)も不純物と 転位ループの相互作用を計算し,不純物が 1 次元運動の障 害となることを見出している. 2.2 ボイド成長と格子間原子型転位ループの 1 次元運動 格子間原子型転位ループの 1 次元運動の発見は,格子欠 陥分野への新しい知見の提供だけでなく,原子力材料の照射 効果の研究にも大きな影響を与えた.原子力材料の劣化の一 番大きな原因はボイドの成長である.中性子の重照射により 原子力材料に発生するボイドは,材料の強度特性に大きな影 響を与える.ボイド成長は原子空孔の集合により起こるが, それは最終的な結果である.その前に点欠陥反応のアンバラ ンスが起きている. 現在幾つかのボイド成長機構が提唱されている.刃状転位 が原子空孔より格子間原子を吸収し易いために原子空孔がマ トリックスに残りボイド成長が起こる,とする転位バイアス による機構2,3)が主である.多くの場合 Fig. 6 に示すよう

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Fig. 7 Voids with few dislocations in fission neutron irradiat-ed Cu by the JMTR to a dose of 0.11 dpa at 573 K. (a) near Bragg condition, (b) void contrast.

Fig. 8 Schematic illustration of the cascade localization in-duced bias effect. (a) a cascade and a void. (b) a cascade near a void.

Fig. 9 Comparison of defect structures in fission neutron irradiated Ni and Ni alloys by the JMTR to a dose of 0.11 dpa at 573 K. Voids with dislocations (Ni and Ni2 atGe), and no voids with few interstitial type dislocation loops (Ni2 atSi and Ni2 atSn). The figures in the parentheses are volume size factor to Ni.

に,格子間原子型転位ループから成長した転位とボイドが同 時に観察されることから,この機構は支持されてきた.しか し,刃状転位が存在しなくてもボイド成長が起こることも知 られていた.その例を Fig. 7 に示す.(a)は転位の観察でき る条件,(b)はボイドの観察できる条件で撮影したものであ る. 刃状転位が無くてもボイドが成長することを説明するため に,カスケード局在誘起バイアス効果(Cascade Localization

Induced Bias Effect)1317)や生成バイアス機構(Production

Bias Mechanism)1822)などが提唱された.前者はカスケード 内の点欠陥初期分布に起因するものである.Fig. 8 に示すよ うにカスケード内では高濃度の原子空孔が中心部に,格子間 原子が周辺部に局在する.このような初期条件で点欠陥の拡 散が開始した場合,(a)のようにボイドがカスケード領域の 外に存在すれば,ボイドは平均して同数の格子間原子と原子 空孔を吸収する.もし(b)のようにボイドがカスケード内に あれば,格子間原子よりも原子空孔を必然的に多く吸収する というものである.ボイドが成長するためには,カスケード から逃れた格子間原子はシンクで消滅しなければならない.

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Fig. 10 Damage structures near grain boundaries (upper parts) in fission neutron irradiated Ni by the JMTR at 563 K. Near Bragg condition (Upper photos) and voids contrast (low-er photos). もしそれが他のボイドで消滅すれば,実質的なボイド成長は 起こらない.そのためには,Fig. 8(b)に示すように表面や 粒界あるいは転位が必要であるが,バイアスは必要でない. 生成バイアス機構では格子間原子型転位ループの 1 次元 運動がボイド成長に重要な役割を演じる.即ち,原子空孔は 単体や空孔対としてランダム運動により格子点ごとに拡散 し,格子間原子は集合体となり直線的にカスケード領域から 拡散すれば,原子空孔がよりカスケード領域に残り易く,ボ イドが成長し易くなるというものである.この機構が提唱さ れた当時は,転位ループの 1 次元運動は純金属では起こる ことが確かめられていたが,ステンレス鋼のように添加元素 を多く含む実用合金では不明であった.しかしようやく最近 Satoh ら23)により,オーステナイト系ステンレス鋼である SUS316 鋼でも 1 次元運動の存在が確認された. 格子間原子型転位ループの 1 次元運動とボイド成長の関 連を示す直接的な実験結果は,初期には結晶粒界近傍のボイ ドの成長21)や,転位バイアス機構ではスエリングが量的に 説明できないぐらいしかなかった.その後,ニッケルとニッ ケル合金との比較によりボイド成長と転位ループの 1 次元 運動との相関が見出された24).ニッケルを 573 K 付近の温 度で原子炉の高速中性子を照射すると,Fig. 9 のニッケルの 明視野像と挿入された暗視野像から分かるように,よく発達 した転位とボイドが観察される.この転位は格子間原子型転 位ループが成長・合体したものである.ニッケルにシリコ ン,ゲルマニウム,スズの第 14 族元素を 2 atまで添加し た 2 元合金では,欠陥構造は Fig. 9 に示すように 2 種類に 分かれる.図中括弧内の数字は,合金中での添加元素のニッ ケルに対する体積比,即ち原子寸法因子(Volume size fac-tor)である.NiGe はニッケルとほぼ欠陥構造が同じであ る.一方 NiSi と NiSn では極わずかの転位ループが観察 されるだけでボイドは存在しない.格子間原子型転位ループ の 1 次元運動があることの判別方法としてここでは◯結晶 粒界近傍に転位ループが存在しないこと,◯刃状転位近傍に 転位ループが集合することを用いた.結晶粒界近傍では転位 ループは 1 次元運動により容易に結晶粒界に吸収される. また転位ループは,1 次元運動により刃状転位の引張り応力 場に引き寄せられる.ニッケル,NiGe では何れもこの 2 つの条件を満足するため,1 次元運動があると結論される. Fig. 10 はニッケルの例で,結晶粒界近傍に転位ループが存 在しないことが分かる.また Fig. 11 は刃状転位近傍の転位 ループの様子を調べたもので,ニッケル,NiGe は転位 ループの集合が見られる.一方 NiSi と NiSn では転位近 傍の転位ループの集合はなく,結晶粒界近傍に格子間原子型 転 位ル ープ が 存在 する . Fig. 12 に Ni2at Sn の 例 を示 す.転位ループは積層欠陥をもつことから b=1/3〈111〉であ る. 以上の結果を Table 1 に示す.ボイドの成長と格子間原子 型転位ループの 1 次元運動には相関があることが分かる. 同様の結果は銅合金でも得られている24) 2.3 格子間原子型転位ループの 1 次元運動の温度依存 次にボイド成長の温度依存について格子間原子型転位ルー プの 1 次元運動との関連で説明する.0.1 dpa 程度まで中性 子照射した鉄中のボイド生成の温度依存は複雑である25) Fig. 13 に示すように 473 K で照射後,透過電子顕微鏡では 小さな格子間原子型転位ループが観察されるだけである. Table 2 に示すように,陽電子消滅寿命測定の結果から, 400 ps 程度の長寿命をもつ欠陥,即ち原子空孔 30 個程度の ナノボイド26)が存在することが分かる.573 K では転位ルー プが成長するが,照射量が 0.19 dpa に増すとボイドは陽電 子消滅寿命測定でも検知されない.623 K では Fig. 13 に示 すように,よく発達した転位とボイドが透過電子顕微鏡で観 察される.673 K 照射ではよく発達した転位のみが観察され ボイドは陽電子消滅寿命測定でも検出されない. 前節 2.2 で用いた格子間原子型転位ループの 1 次元運動の 判別法を用いると,473 K では Fig. 14 に示すように,転位 の片側に格子間原子型転位ループの集合が観察されることよ り,1 次元運動が存在する.Fig. 15 に示すように,573 K

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Fig. 11 Decoration of edge dislocations by interstitial type dislocation loops in fusion neutron irradiated Ni alloys by the RTNS at 563 K to a dose of 0.017 dpa.

Fig. 12 Damage structures near grain boundaries (upper parts) in fission neutron irradiated Ni2 atSn by the JMTR at 573 K.

Table 1 The correlation between void formation and inferred one dimensional (1D) motion of interstitial type dislocation loops in Ni and Ni alloys irradiated with fission neutrons at 573 K. ○ and × denote existence and no existence of defect clusters and motions, respectively.

Specimen Voids loops Loops nearG.B. dislocationsLoops near motion1D Ni2 atSi × ○ ○ × ×

Ni ○ ○ × ○ ○

Ni2 atGe ○ ○ × ○ ○ Ni2 atSn × ○ ○ × ×

Fig. 13 Damage structures in Fe irradiated with fission neu-trons by the JMTR. The insert in the third figure (from left) is a dark field image.

Table 2 Two component positron lifetime analysis in Fe neu-tron irradiated in the KUR and the JMTR.

Temperature (K) () Damage (dpa) Mean lifetime (ps) Short lifetime (ps) Long lifetime (ps) Intensity of long lifetime 473 0.0046 294 136 396 60 0.019 325 154 403 69 0.098 291 113 380 61 573 0.021 117 112 342 6.4 0.10 123 114 285 14 0.19 109 ― ― ― 673 0.066 114 ― ― ― 0.13 113 ― ― ― 0.42 109 ― ― ―

Fig. 14 Decoration of an edge dislocation by interstitial type dislocation loops in fission neutron irradiated Fe by the JMTR at 473 K to a dose of 0.061 dpa. では結晶粒界に転位ループが存在することより転位ループの 1 次元運動は存在しない.623 K では転位ループが存在しな いので 1 次元運動は存在する.673 K では転位ループが存在 することより 1 次元運動が存在しないと結論される.従っ て転位ループの 1 次元運動がある場合,常にボイドが存在 することになる.ここで問題は,なぜ格子間原子型転位ルー プの 1 次元運動が温度依存をもつかである.比較的低い温 度である 473 K では転位ループは不純物があっても移動度 は下がるが移動できる.中温度領域,573 K では不純物の集 合体ができ強力な捕獲サイトとなるため移動できない.高温

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Fig. 15 Damage structures near grain boundaries (upper parts) in fission neutron irradiated Fe by the JMTR.

Fig. 16 Motion of He bubbles in Cu at 915 K (courtesy of Dr. K. Ono). の 623 K ではその捕獲サイトからも転位ループは離脱でき 移動できる.更に高温の 673 K では不純物が転位ループの 周囲に偏析し転位ループの移動を妨げるなどが考えられる が,今後のより詳細な研究が必要である. 3. 原子空孔集合体の運動 原 子 空 孔 集 合 体 で あ る ボ イ ド も 移 動 で き る こ と が , Mukouda ら27)による透過電子顕微鏡観察で示された.しか しその移動量は極わずかである.ガス原子が存在する条件下 で照射損傷によりボイドが生成すると,一般的にガス原子は 結晶中の固溶度が低いため,容易にボイドに入り込みバブル になる.ヘリウムなどの不活性ガスが入ったバブルの動きは 非常に顕著である.Ono や Miyamoto らのグループ2830) 金属中のヘリウムバブルの動きを詳細に研究した.アルミニ ウム,銅,金,Fe16Cr17Ni,鉄,Fe9Cr などの多くの 金属で観察し,その動きがランダム運動であることを示した. Fig. 16 に島根大学小野興太郎博士により撮影された,915 K における純銅中のヘリウムバブルのブラウン運動を示 す.バブルが移動するためにはかなりの量の原子が,バブル 内である方向に向かって表面拡散しなければならない.1 つ 1 つの原子の運動はランダムであると考えると,それらが集 団運動するとは考えにくいため,何らかの力がバブルに働く ことが必要である.周囲の欠陥の存在や透過電子顕微鏡観察 領域の電子ビームによる加熱などがその原因と考えられる が,その機構については解明されていない. 最近 Matsukawa ら31)は,塑性変形や急冷により導入した 金中の原子空孔集合体(おそらく原子空孔型転位ループ)が 1 次元運動することを透過電子顕微鏡観察で見出した.移動す る格子間原子型転位ループの場合はクラウディオンの束で, クラウディオン自体は非常に移動し易いことから理解し易い が,原子空孔型転位ループの場合はそれ自体がエネルギーの 高い状態ではないため,その移動は理解しにくい.Ohsawa ら32)は格子間原子型転位ループの移動を線張力モデルに基 づいて解析した.転位ループが小さいときは転位ループ全体 が一度に動くような運動を行い,移動の活性化エネルギーは そのサイズに依存して大きくなった.一方臨界サイズを越え ると,サドルポイント構造として二重キンクを形成する方が 移動の活性化エネルギーは低くなり,転位ループの大きさに よらないことを見出した.彼らの方法では原子空孔型転位 ループでも同じ結果になる.従って格子間原子型,原子空孔 型を問わず,大きな転位ループの 1 次元運動を,二重キン ク形成による転位の運動と捉えることは妥当と思われる. Mastukawa ら31)は更に,原子空孔型転位ループの移動と 同時に転位ループが積層欠陥四面体に変換することも観察し ている.従来,照射損傷で形成する積層欠陥四面体はカス ケ ー ド か ら 直 接 生 成 する と 考 え ら れ て い た (Cascade col-lapse).しかし,Shimomura や Fukushima ら33,34)による 14 MeV 中性子を液体ヘリウム温度で照射した金,銅などの低 温における透過電子顕微鏡観察の結果では,積層欠陥四面体 は殆ど観察されず,焼鈍して原子空孔が動く温度(低温で導 入された格子欠陥の回復ステージ)で積層欠陥四面体の数 が増加した.これらの実験結果は,積層欠陥四面体がカス ケードから直接形成していないことを示唆する. 4. ボイド成長と刃状転位 ボイドあるいはバブルが成長するためには,原子空孔の集 合が必要である.従ってボイドあるいはバブルに含まれる原 子空孔と同数の格子間原子は,集合体を形成するかシンクで 消滅しなければならない.転位バイアス機構では刃状転位は 格子間原子と原子空孔の両者の消滅サイト(シンク)であり, 格子間原子をより多く吸収することでボイドの成長を助けて いる.最近,刃状転位が原子空孔の完全なる消滅サイトでは なく,原子空孔が転位から放出されることが見出された. Kamimura ら35)は鉄中で刃状転位に捕獲された原子空孔の 陽電子消滅寿命を計算し,140 ps 程度で転位(117 ps)と原子 空孔(181 ps)の中間にあることを報告した.これは 1 個の原

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Fig. 17 Annealing behavior of positron annihilation lifetime of Fe deformed with high strain rate (4.3×105/s-1) and low

strain rate (67/s-1).

Fig. 18 Calculated migration energy, formation energy and positron annihilation lifetime of vacancies near an edge disloca-tion in Fe. P1 and P2 are two paths of pipe diffusion.

子空孔が刃状転位に捕獲されたときに,単純なジョグが形成 されないことを意味する. 一方室温で塑性変形させた鉄やニッケルにおいて,焼鈍中 に陽電子消滅の強度が一定なのに長寿命が増加することが観 察された36).Fig. 17 は鉄の例である.陽電子消滅の強度は 消滅サイトの数に比例するので,特に高速変形の結果は,ボ イドの数が一定でそれらが成長していることを意味する.即 ち焼鈍中に原子空孔が転位より解離し,ボイドの成長に寄与 したと解釈できる.更に Sato ら36)は刃状転位に捕獲された 原子空孔の結合エネルギーを計算した.Fig. 18 に示すよう に,刃状転位より十分離れた場所における原子空孔の移動の 活性化エネルギーは 0.78 eV である.転位芯に近づくに従っ て,移動の活性化エネルギーは低くなる.常に転位芯に近づ く方向への移動エネルギーは,離れる方向への移動エネル ギーよりも低い.また,転位芯に沿っての拡散(いわゆるパ イプ拡散)は,結晶構造上直線的に転位芯上を移動できず, Fig. 18 の P1 と P2 の経路を交互に通過する必要があり,そ の活性化エネルギーは,0.97 eV(P1),1.64 eV(P2)とかな り高い.以上のことから,低温では原子空孔は刃状転位近傍 に捕獲される.ある程度高い温度では原子空孔は転位から離 脱する.更に高温では転位芯に沿っての拡散が可能になり原 子空孔はジョグに捕獲されるため,刃状転位は原子空孔の安 定なシンクになると結論される.この結果は転位のバイアス 因子を計算するとき,単に刃状転位と点欠陥との相互作用エ ネルギーを計算する37)だけでは不十分であることを意味し ている. 5. 結 言 結晶格子欠陥の分野で重要な位置を占める転位論の基礎は 1960 年代までに弾性論と透過電子顕微鏡法,X 線回折法な どの実験手法の発展によりほぼ完成した.転位ループの移動 についても,例えばプリズマティック転位ループの運動につ いては Seitz6)により 1950 年に論文が発表されている.そ の後,プリズマティック転位ループの運動により結晶の一面 に起こる突き出しや引っ込みの研究はなされたが,転位を動 かすにはパイエルスポテンシャルを越すせん断応力が必要で あるとの認識が,格子間原子型転位ループの 1 次元運動の 解明を遅らせた.更に金,アルミニウム,銅,ニッケルなど FCC 金属を超高圧電子顕微鏡を用いて 1~3 MeV 程度の電 子で照射を行うと,積層欠陥をもつ b=1/3〈111〉タイプの格 子間原子型転位ループが成長することが知られていた38,39) このことから,中性子やイオンなどの高エネルギー粒子によ る FCC 金属のカスケード損傷で多量の点欠陥が局所的に生 成しても,b=1/3〈111〉タイプの転位ループがまず生成する と長い間考えられてきた.しかし,クラウディオンの束であ る b=1/2〈110〉タイプの転位ループがカスケードから生成 し,それが不純物の捕獲などで動けなくなり b=1/3〈111〉タ イプの転位ループになると考えるべきかもしれない.あるい は積層欠陥エネルギーの高い金属では,b=1/3〈111〉タイプ にならず,b=1/2〈110〉タイプのまま粗大化して転位網を発 達させている可能性もある. また,前節の最後に述べた刃状転位からの原子空孔の放出 についても,材料を高温にしたとき原子空孔濃度が平衡濃度 に達する時間は,試料表面から入ったとするには短すぎ,材 料中の転位を中心とする欠陥から放出されているとの考え は,転位論の教科書(例えば文献 40))にも書かれており,よ く知られている.一方,刃状転位に吸収された原子空孔は, パイプ拡散で簡単にジョグに吸収され,ジョグを成長さすた め容易に解離されないとの考えもあった.確かにパイプ拡散 は存在するが,パイプ拡散の実証は自己拡散の実験で行われ ている41,42).実は,転位芯に沿っての原子空孔の拡散の活性 化エネルギーは前節で紹介したようにそれほど低くはな い36).パイプ拡散では転位近傍での原子空孔の生成エネル ギーが低いため,自己拡散がし易かったのである. 以上述べてきたように,照射損傷の研究は格子欠陥研究で 得られた知見を背景として発展してきたが,従来の常識的知 見が当てはまらない場合が多々存在した.それらを解明する

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ことにより新たな欠陥反応に関する機構を知ることができ た.原子力材料の寿命に照射欠陥は重要な影響を及ぼす.長 寿命化を目指した原子炉の炉内構造物,動力炉用の核融合炉 第一壁,核破砕中性子源や加速器駆動未臨界炉のビーム入射 窓などの材料開発は今後の重要な課題である.それらの開発 のためには更なる照射損傷の研究が必要である.そして照射 欠陥生成や損傷構造発達過程の解明は,格子欠陥の分野にも 多くの知見を与えることが期待される. 文 献

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Fig. 2 Distribution of interstitial type dislocation loops near an edge dislocation in fusion neutron irradiated Ni2 atCu by the RTNS  at 563 K to 3.1×10 -3 dpa, revealed by stereo pair micrographs (a), and measured distribution (b).
Fig. 6 Dislocations and voids in fission neutron irradiated Ni by the JMTR to a dose of 0.11 dpa at 573 K.
Fig. 8 Schematic illustration of the cascade localization in- in-duced bias effect. (a) a cascade and a void
Fig. 10 Damage structures near grain boundaries (upper parts) in fission neutron irradiated Ni by the JMTR at 563 K.
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参照

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