ぐっすり眠って健康に
~食事・運動と睡眠の深い三角関係~
山仲勇二郎(北海道大学)
現代の日本が抱える逼迫した課題
国民の約7割
が抱えている約6兆円/年
の経済損失 うつ病 認知症 アルツハイマー病 肥満 高血圧糖尿病 がん 健康寿命の短縮睡眠障害
生活習慣に関する悩みや疑問 はやく寝るためにお酒を飲む 夜勤中に眠くて辛い 夜勤後眠れない 疲れがとれない 食事時間がバラバラになってしまう 朝食の欠食や遅い晩御飯 夕方に作業があるので晩御飯の時間が遅い 朝早くから仕事があるので晩御飯から寝るまでの時間が短い 余暇時間の過ごし方 寝る前のスマホは良くないと聞くが、 ついつい見てしまう
睡眠にまつわるウソ・ホント 1. 睡眠時間は8時間が健康に一番 2. 寝る前に牛乳を飲むとよく眠れる 3. 90分周期で目覚ましをかけるとスッキリ起きれる 4. 22時~2時がお肌のゴールデンタイム 5. 早寝早起が健康にとって一番 6. 本人のやる気次第で朝型人間になれる 7. 週末の寝だめで睡眠不足を解消できる
本日のお話し
1. 睡眠と健康の深い関係
2. 睡眠に関わるからだの仕組み
3. 質のよい睡眠をとるための3条件
4. 食事のタイミングと健康の関係
5. カフェイン・アルコールと睡眠
国民のおよそ7割が睡眠に不満を抱えている
睡眠時間と肥満度の関係
Taheri et al. PLoS Med. 1(3):e62. 2004より作図
睡眠時間 5時間以下で2型糖尿病の発症リスク上昇
Kita et al. Diabetes Care 2012
札幌在住の地方公務員3570人を4年間調査 2型糖尿病を発症した121名の睡眠時間
Prather et al. SLEEP 2015より作図 睡眠時間 5時間以下で風邪をひきやすくなる 睡眠不足 自律神経の乱れ 交感神経活動の増加 生体防御機構 免疫機能の低下 感染リスクの増加
こころの健康にとっても適度な睡眠は大事
日本人24,686名の睡眠時間と抑うつ度の関係を調査
睡眠時間だけでなく睡眠の満足度も大事
日本人24,686名の睡眠の満足度と抑うつ度の関係を調査
睡眠を調節する2つの仕組み 恒常性維持機構 ( 体内砂時計 ) 活動量・覚醒時間に依存した睡眠 運動した日はいつもより長く寝る 徹夜した翌朝は朝でも眠ってしまう 毎日決まった時刻に眠くなる 毎日決まった時刻に起床する 時刻に依存した睡眠 生物時計機構
質のよい睡眠をとるための3条件 (生理学的側面) ① メラトニンの分泌増加 ② 深部体温の低下 ③ 副交感神経活動の増加 睡 眠 睡眠ホルモン ( メラトニン ) 深部体温 皮膚体温 カラダの調子を整える自律神経 交感神経→覚醒度上昇・興奮 副交感神経→休息・リラックス
睡眠ホルモンを制御する生物時計は脳内にあり 朝方の太陽光(明るい光)で調節される 起床後の太陽光で体内時計をリセット • 本来は25時間周期の生物時計を約1時 間早めて24時間リズムにリセット • 起床後4時間以内に光を浴びましょう • 夜の光は生物時計を遅らせる • 毎日リセットすることが必要
生物時計は朝方に光を浴びた時刻をてがかりとして 睡眠ホルモンの分泌時刻を決めている • 朝方に明るい光を浴びると14~15時間後にメラトニンが分泌される • 朝7時に起床して光を浴びると夜9~10時頃に分泌がはじまる • いつもより早く起きたい時は、早起き早寝の順番を意識しましょう 夜 昼
夜間・就寝前(2-3時間前)のブルーライトは要注意
• 生物時計は赤色光より青白光によく反応する
• 就寝3~4時間前からのスマートホン・パソコン等の利用は避けるべき • 夜間&寝室の照明は白色よりも電球色を選びましょう
青白光 vs 赤色光
質のよい睡眠をとるための3条件 (生理学的側面) ① メラトニンの分泌増加 ② 深部体温の低下 ③ 副交感神経活動の増加 睡 眠 メラトニン 深部体温 皮膚体温 カラダの調子を整える自律神経 交感神経→覚醒度上昇・興奮 副交感神経→休息・リラックス
体温の部位差 と 睡眠中の変化
Aschoff. J Therm Biol. 1983
深部体温を下げるには皮膚の体温 をあげて深部の熱を逃がす
外気温20℃の時の体温
外気温 20℃
深部体温を下げる仕組み~体温は血液と共に運ばれる~
• 温かい血液は動脈によって体幹部から全身に運ばれる • 皮膚から外気に熱が移動して深部の体温が低下する
手足には特殊な血管があり交感神経の調節を受ける 交感神経活動 低下 リラックス・中性温 交感神経活動興奮・低温環境上昇 動静脈吻合 どうじょうみゃくふんごう 細動脈と細静脈の直接短絡 皮膚の血液量 多くなる 少なくなる 皮膚体温 あがる・手足ポカポカ さがる・冷え症 深部体温 下がる 下がらない 血管拡張 (広がる) 血管収縮 (狭くなる) • 就寝前には交感神経活動を高めないようにリラックスして過ごしましょう • 冷え症の方は足浴・おしぼりで手足を温めてからお布団に入りましょう
質のよい睡眠をとるための3条件 (生理学的側面) ① メラトニンの分泌増加 ② 深部体温の低下 ③ 副交感神経活動の増加 睡 眠 メラトニン 深部体温 皮膚体温 カラダの調子を整える自律神経 交感神経→覚醒度上昇・興奮 副交感神経→休息・リラックス
自律神経を整えて体内砂時計を調節しよう
運動
緊張
興奮
ストレス
日中
睡眠
休息
感動
リラックス
夜間
副交感神経
ブレーキ
交感神経
アクセル
軽運動で体温と自律神経にメリハリをつけましょう • 朝・昼間の時間帯の運動は睡眠中の副交感神経活動を増加させる • 夜の軽い運動で体温をあげると熱放散が促進されスムーズに入眠できる • 特別な運動よりも継続できる運動内容で運動習慣をもつことが重要 朝の運動 夕方の運動 夜の運動 小林 2002
食事時刻をみなおして健康的な体形を維持しましょう
食 事
• 夜は朝に比べインスリンの働きが悪くなる → からだに脂肪がたまりやすい • 寝る3~4時間前には夕ごはんを食べるようにしましょう
Jarrett et al. Br Med J 1974
夕食が遅くなりそうな日は分食がおすすめ
夕食① 主食+副菜
夕食② 主菜+副菜
よく噛んで食べることによる
血糖値の調節作用は朝と夜で異なります
Sato A, Ohtsuka Y, Yamanaka Y. Tohoku J Exp Med 2019
朝にしっかり噛むと ☆インスリンが増加 ☆血糖値がすみやかに低下 ↓ 肥満・糖尿病の予防 改善に効果あり 白米 200g 10回 vs. 40回 血糖値 インスリン
就寝前のカフェイン摂取で寝つきが悪くなる
発現時間 摂取のおよそ30分後 持続時間 摂取後4~5時間
Drapeau et al. J Sleep Res (2006)より作図
コーヒー 1杯 カフェイン 60mg
カフェインが含まれるのはコーヒーだけじゃない
寝る前は麦茶・そば茶・とうもろこし茶・ハーブ ティー等のノンカフェイン飲料でリラックス