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貧血子豚の赤血球像について-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学農学部学術報彗 第35巻 欝2弓155∼157,1984

貧血子豚の赤血球像について

上 田 博 史・大 松

THE RED BLOOD CELL P工CTURE OF ANEMIC PIGLETS

Hiroshi UEDA and Kiyoshi OHMATsU

Theobjectiveo董thisexperimentwas toinvestigate thetypeofiron−deficientanemiainpiglets小Sixteen twelve−dayLOldcrossbredpigletsweredividedintotwogroups・Onegroupusedas a controIwasintra− muscularlyiniectedwithlOOmgofi‡OnaSdextraniron,andananemicgroupwasglVennOirontreatment Themeancorpuscularconstantswerecalculatedbytheformulas descIibedbyWINTROBEat7−dayinter−

vals up to54days ofage from the determinedvalues ofhemoglobin,hematocritand red blood ce11count・ Themean corpusculaICOnStantS O董theanemic pigletsweIelowas comparedwith those ofthecontrol Therefore,theiron−deficient anemiain pigletsis probably classified as amicrocytic,hypoch‡0micanemia。

子豚は出生後すみやかに鉄欠乏性貧血に陥る。本実験でほ,貧血時の子豚の赤血球像について調査した012日齢の 子豚16頭を2群に分け,一審を貧血区(無処置)とし,対照医には鉄として100mgのデキストラン鉄を筋肉内注射 した。54日齢まで7日ごとに,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリットおよび赤血球数を測定し,これらの測定値から W川TROBEの赤血球平均恒激を求めた。その結果,赤血球平均恒激は貧血区で低く,鉄欠乏性貧血時における子豚 の赤血球像は,小球性・低色素性の所見を示した○ 緒 言 豚の妊娠期間は平均114日と極めて短い。そのため糖新生や体温調蘭の不全など,生理的に未熟な状態で子豚は生 まれてくる(1)。しかし出生直後の発育は著しい。鉄は微温要素であるが,出生時の体内貯蔵鉄や母乳から供給される 鉄は,子豚の急速な発育に比して少ない。その結果,子豚は鉄欠乏性貧血に陥る(1 ̄3)0貧血子豚の皮膚や可視粘膜は 赤味を失い,歩様は不安定で,ときにほ動悸や呼吸数の増加がみられる0ひどいときには血液ほわら様の色を呈し, 食欲の低下や成長阻害がみられ,経営的にも不利を招く(1 ̄5)0 子豚の鉄欠乏性貧血は鉄剤の投与叱より予防あるいは治療できるが,1955年に開発されたデキストラン鉄の筋肉内 注射(8・7)が最も簡便で有効である。この効果は,M外部から鉄の汚染をできるだけ避けるようにつとめた’’実験的環 境下(さ)ばかりでなく,土や青草から鉄の摂取が可能な通常の飼養管理下(5)でもみられる0さらに鉄剤投与により成 長が促進され(5,8L9〉,経済的に有効であることも示されている。 貧血時の赤血球の様相を知るために,一・般にその容楕やヘモグロビン鼠に考慮が払われる○子豚の場合,鉄欠乏性 貧血時の赤血球像が小球性であることば劇致産みている(=0)○ しかし,正色素性く10〉 であるか低色素性($〉であるか については意見が分かれている。本試験では,貧血子豚と,対照としてこれにデキストラン鉄を投与した子豚のヘモ グロビン濃度,ヘマトクリットおよび赤血球数から,WINTROBEの赤血球平均恒数(平均赤血球ヘモグロビン意, 平均赤血球容積および平均赤血球ヘモグロビン潰皮)を求め,貧血時の子豚の赤血球像について調査した○ 材料と方法 香川大学農学部附属農場で生産されたランドレースとハンプシャ・−の交雑称2放から16頭の子豚を選び,試験に供 した。出生時体歪が10kg以上の同腹の子豚から8頭を選び,体重および件別を考慮して,鉄剤投与区と貧血区の 2群に,それぞれ4頭ずつを割りあてた○ 鉄剤投与区は12日齢にデヰストラン鉄1ml(鉄として100mg)を暫部に

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香川大学農学部学術報告 第35巻 第2号(1984) 156

筋肉内注射し,貧血区は無処理とした。子豚の飼養管理は当農場の慣行の方法(5〉 により行い,12日齢から54日齢ま で7日どとに,血液を前大静脈(Anterior vena cava)より採取し,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット(血球容 積)および赤血球数の測定に供した。採血法およびヘモグロビン濃度とヘマトクリットの測定法ほ前報(5〉に示した。 赤血球数は自動血球封数署護(ミクロセルカウンタ・−CCllO,東亜医用電子㈱)で測定した。さらにヘモグロビン濃度, ヘマトクリットおよび赤血球数から WrNTROBE の平均赤血球ヘモグロビン鼠(Mean corpuscular hemoglobin, MCH),平均赤血球容帯(Mean corpuscular volume,MCV)および平均赤血球ヘモグロビン濃度(Meancorpus・・ cularhemoglobin concentration.MCHC)を次式により求めた。 ヘモグロビン濃度(gノ100ml) MCH(pg)ニ ×10 赤血球数

MCV(仰3)=×10

ヘモグロビン濃度(gノ100ml) MCHC(%)= ヘマトクリット(%) 有意差の検定は,鉄剤投与の有無と腹の速いを要因とする分散分析法(11)で行った。 結果と考察 ヘモグロビン潰度,ヘマトクリットおよび赤血球数 の経時的変化をFig.1に示した0鉄剤投与を受けな かった子豚(貧血区)のヘモグロビン濃度およびヘマト クリットは,測定を開始した12日齢から離乳をした40 日齢まで,それぞれ8g/100mlおよび30%を下回り, 明らかに貧血と判断された。しかし鉄剤投与により, ヘモグロビン濃度およびヘマトクリットは著しく増加 し,54日齢まで仙定の水準を保った。■十方,貧血区で も40日瀞以降に両者の増加がみられたが,ヘモグロビ ン濃度は54日齢まで,ヘマトクリットほ47日齢まで, 鉄剤投与区が貧血区を有意(p<005)に上回った。 ZIMMERMANβf〃J.(9〉 ほ,離乳がヘモグロビン濃度を 増加させることを報告しているが,本試験後半でみら れたヘモグロビン濃度およびヘマトクリットの増加も, 離乳により飼料摂取屈が増加した結果であろうと考 える。赤血球数も40日齢まで鉄剤投与区が貧血区に比 して有意(p<’005)に高かったが,その増加は鉄剤 投与後2週間で著しく,その後は紋慢に終止した。同 様の傾向は他の報告(8・10)でもみられ,これらの結果 から子豚の正常赤血球数は700万/mm3前後とみられ る。この場合,一度鉄剤投与を受けた子豚にさらに 100mgの鉄を追加投与しても,赤血球数にも,また ︵ノ︼ 0 8 ︵lU 4 ︵盲雪\由壱30旬OEり〓 ●

.二て、−●・1

J O 5 0 0 0 0 0 0 J 3 2 2 0 0 0 0 0 ︵‖0765.−‖t ︵婆︼t︼¥︼巾∈む〓 ㌻呂仁恵一×こ弓8一層壷屋だ虔 12 19 26 33 40 47 5l Daysinage

Fig1.Time−COurSe Changes of hemog10bin COnCentration,hematocrit and red blood cellcountin pig1ets with(◆, ●)orWitbout(◇,○)100 mg of injectableiron

Twolitters represented by the di− fferent symboIs,工hombiand circles, Were uSed.Each point represents a

mean val11e O壬fourlitter−mateS

ヘモグロビン濃度およびヘマトクリットにも大きな影 響を与えなかった(上田・大松・寺尾,未発表)。しかし,子豚の離乳日齢がのびた場合や鉄剤投与時の注入もれを 考慮し,鉄剤の投与効果をより確実にするためには,2過齢までに100mgずつの鉄を1週間間隔で2回投与するこ とを推奨したい。 なお子豚の増体重は鉄剤投与区が貧血区を上回ったが,有意差はみられなかった。これは54日齢の変動係数が鉄剤 投与区で18%,一方,貧血区は32%で,掛こ貧血区の個体のばらつきが大きかったためと考える。 貧血時の赤血球像を検討するために,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリットおよび赤血球数から,MCV.MCHC お

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上田博史,大松潔:貧血子豚の赤血球像 157 k貞一】e川On \\(an】‖lg ●

、て,⊥!,ニ

. e O ◆ よびMCHを封辞し,その経時的変化をFig。2に示 した。MCVおよび MCIiほ,19日齢から40日齢ま で鉄剤投与区が貧血区に比して有意(pく0.01)に高 く,その後も前者が高い傾向を示した。またいずれの 場合も日齢が進むにつれて減少し,その後一定の水準 を保った。これらの結果はTALBOTand SwENSON(1の および古郡・戸原(8)の報告とm・致した。MCHCも鉄 剤投与区が貧血区に比して高い傾向を示したが,33日 齢のみ有意差(pく0。01)がみられた。口齢には影響 を受けなかった。鉄剤投与がMCHCに及ぼす影響に ついて,古都・戸原(8)は60日齢まで有意な増加を認 めているが,その測定値は鉄剤投与区で29%から31%, 貧血区で28%から29%で,両者の差は小さく,本試験 の結果と−・致した。本試験で有意差がみられなかった 原因の一ノつとして,特に貧血区で股の違いによる影響 が大きかったことが考えられる。1一方,Talbot and Swenson(10)は,鉄剤投与がMCHCに影響を及ぼ さないと報告して−いるが,その測定値は貧血区でも32 %以上で,本試験の恕果や古都・戸原(8〉の報告より も高い数値を示した。 上述した計算式からも明らかなように,MCVの減 少は個々の赤血球の容積の減少(小球性)を示し, MCH∴およびMCHC の減少ほ個々の赤血球中に含 まれるヘモグロビン患および赤血球の容積に対するへ 0 ハリ n︶ ‖︶ ︻〇 ︵U −D O ハ0 5 4 3 3 3 2 つこ ︵彗UH︺芸 ㌻∈、\︶A︺︼ld ︵ぎこ︼U言 l:∼19 26 3310 47 5LI Da5Sirlヱ灘

Fig2.Time−COurSe Changes of the mean COrpuSC111ar volume(MCV),mean COrpuSCular hemoglobin concentra・ tion(MCI寸C)and mean cor・puSCular hemoglobin(MCH)in piglets with (◆,●)oTWithout(◇,○)100mg Ofiniectableiron

TwolitteIS repreSented by the di一 王ferent symboIs,rhombiand circles, Wer−e uSed。Each point represents a mean value of王ourlitterI−・mateS モグロビン盈の減少(低色素性)をそれぞれ示す。したがって本試験の結果から,子豚の鉄欠乏性貧血は,古郡・戸 原(8)が指摘したように,小球性・低色素性貧血であると考える。TalbotandSwenson(10)も,貧血子豚でMCV と MCHの低下を認めたが,彼らは子豚の鉄欠乏牲貧血を小球性・正色素性貧血と分類した0この理由ほMCHC の砥が貧血区でも32%以上あったため,これを透視したものと考える0なお,子豚の哺乳開始直後に初乳の大鼻吸飲 による血液稀釈で生じる生理的貧血について,古郡・戸原(8)ほこれを小球性・高色素性貧血と分類し,鉄欠乏性貧 血と区別している0 引 用 文二 献 月βC.,67,348−349(1955)

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(19由毎10月31日凄痩)

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参照

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