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要旨一般的に脚長差が3cm 以下であれば 著明な跛行は呈しにくいと考えられているが客観的な根拠を示すような報告は非常に少ない 本研究の目的は 脚長差が体幹加速度の変動性に与える影響を 加速度センサーを用いて定量化することである 対象者は 健常若年成人男性 12 名とした 腰部に加速度センサーを装着し

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Academic year: 2021

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影響について

柿本 信一・西村 拓真

林  尚孝・秀村 碧斗

Ⅰ.はじめに ……… 71 Ⅱ.対象と方法 ……… 71 Ⅲ.結果 ……… 73 Ⅳ.考察 ……… 74 目 次

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要旨  一般的に脚長差が3cm 以下であれば、著明な跛行は呈しにくいと考えられて いるが客観的な根拠を示すような報告は非常に少ない。本研究の目的は、脚長 差が体幹加速度の変動性に与える影響を、加速度センサーを用いて定量化する ことである。対象者は、健常若年成人男性 12 名とした。腰部に加速度センサー を装着し、補高なし、および2cm、3cm、4cm の補高を装着してトレッドミ ル歩行を行った。結果は、側方方向の加速度データより算出された RMS(Root MeanSquare)は、0cm 脚長差(1.04±0.19m/s2)と比較して、2cm 脚長差 (1.37±0.25m/s2)、および4cm 脚長差(1.82±0.43m/s2)で有意差が大きかった (p<0.05)。しかし3cm 脚長差(1.46±0.31m/s2)との間には、有意な差を認め なかった。垂直方向の RMS は、0cm 脚長差(2.41±0.16m/s2)と比較して、2 cm 脚長差(2.70±0.22m/s2)および4cm 脚長差(3.21±0.48m/s2)で有意に大 きかった(p<0.05)。しかし3cm 脚長差の RMS(2.81±0.18m/s2)とは有意な差 を認めなかった。前後方向加速度の RMS は、0cm 脚長差と各脚長差モデルの 間では有意な差を認めなかった。本研究より、健常者であっても2cm 脚長差で 体幹加速度の変動性が有意に大きくなったことは、3cm 未満の脚長差であって も、身体機能に影響を与える可能性があり、二次的合併症を予防するための補高 などのアプローチの必要性が示唆された。 キーワード:脚長差、RMS(RootMeanSquare)、加速度センサー

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Ⅰ.はじめに  片側の変形性股関節症や大腿骨骨頭壊死、股関節臼蓋形成不全、変形性膝関節 症を有する、あるいはそれらに整形外科的手術療法が行われると、脚長差が生じ ることが多く、腰痛や脊柱疾患、神経痛を招きやすいとされている1−4)  一般的に脚長差が3cm 以下であれば、身体各部の代償で著明な跛行は呈しに くいと考えられているが客観的な根拠を示すような報告は非常に少ない。臨床に おいて、異常歩行の診断や治療の判断材料として測定機器を用いて跛行の客観的 定量化することは少なく、主観的な歩行評価に留まることが多い。山田ら5)は、 その理由として、従来からの赤外線カメラや床反力などの設置型歩行解析装置は 高価な機器であり、また測定空間を移動することが困難で、なおかつ準備を含め た測定が煩雑で比較的長時間を要し、対象者の負担となりやすいことを挙げてい る。それに対して、近年着目されている加速度センサーを用いた歩行評価は比較 的安価で簡便、測定場所を指定する必要がないこと、動作における身体的拘束が ないことなどの利点を有する。そして加速度データの散布の程度として算出でき る二乗平均平方根(RootMeanSquare:RMS)は、歩行中の姿勢変動性を示す。 つまり RMS の値が大きいほど姿勢動揺の程度が大きく、不安定な歩行であると されている。このように加速度センサーは臨床で容易に歩行異常の定量化が可能 であると考える。  脚長差が歩行に及ぼす影響について言及した先行文献は非常に少なく、加速度 センサーを用いた脚長差と歩行中の姿勢変動性の関係について検討した報告を見 つけることができなかった。今回我々は、脚長差が歩行中の周期的な身体重心の 移動である体幹加速度の変動性に与える影響を、加速度センサーを用いて定量化 することを目的とした。 Ⅱ.対象と方法  対象者は脚長差を有しない、また歩行に影響を与えるほどの整形・中枢疾患 を既往歴に有しない健常若年成人男性 12 名(身長 169.8±4.1cm、体重 66.2± 11.3kg、平均年齢 22.1 歳:範囲 21−26 歳)とした。全員に対して研究の趣旨を 説明し理解した上で、同意を得た。   測 定 に は MicroStone 社 製 の 3 軸 加 速 度 計 測 シ ス テ ム(WirelessData

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Bluetooth 送信でパソコン側に送信される。受信された加速度データは3次元 モーション解析ソフトウェアで読み込んだ後、ファイルに記録される。加速度 データは、Ax(側方方向)、Ay(垂直方向)、Az(前後方向)で記録される。対 象者は第3腰椎レベルに3軸加速度センサーを装着し(図1)、補高なし(以下、 0cm 脚長差)、右脚に2cm の補高(以下、2cm 脚長差)3cm の補高(以下、 3cm 脚長差)4cm の補高(以下、4cm 脚長差)を装着して、脚長差モデルを 仮定した。対象者は事前に、各補高を装着し、平地歩行を行った。脚長差歩行に 慣れたことを確認し、トレッドミル歩行を行った。トレッドミル歩行のスピード は、成人男性の平均歩行速度である5km/時とした6)。歩行中の目線を統一す るために壁に設置した目印を見ながら歩行するように指示した。そして対象者が トレッドミル歩行に慣れたと判断したところから加速度の測定を開始した。測定 は0cm 脚長差、2cm 脚長差、3cm 脚長差、4cm 脚長差の順に行った。各測 定が終了し、次の脚長差モデルに移行する際に、裸足で2分間快適速度での平地 歩行を行い、脚長差に対する運動学習を消去できるように配慮した。測定時のサ ンプリング数は 1000Hz とした。  山口ら7)は、踵接地(InitialContact=IC)は、腰部に装着した加速度セン サーから得られた VT 波形(垂直波形)における上方ピークの直前の下方ピー クと一致していると述べている。本研究においてもこの方法を参考に 10 歩を特 定し、解析の対象とした(図2)。10 歩間の加速度データから RMS を算出し、 t検定を用いて、0cm 脚長差と各脚長差モデルの RMS の平均値を比較した。 すべての解析には Excel2013 を使用し、危険率5%未満をもって有意とした。 図1.加速度センサーの取り付け位置(L3) 図2.垂直波形上での踵接地期の特定

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Ⅲ.結果 1)X軸(側方波形)(表1)   X軸方向加速度データより算出された RMS は、2cm 脚長差 1.37 ± 0.25m/s2 で0cm 脚長差 1.04±0.19m/s2と比較して有意に大きかった(p<0.05)が、 0cm 脚長差と3cm 脚長差 1.46±0.31m/s2の間には、有意な差は認めなかっ た。また4cm 脚長差の RMS は 1.82±0.43m/s2で0cm 脚長差よりも有意に大 きかった(p<0.05)。 2)Y軸(垂直波形)(表2)   Y軸方向加速度データより算出された RMS は2cm 脚長差 2.70±0.22m/s2 で0cm 脚長差 2.41±0.16m/s2と比較して有意に大きかった(p<0.05)。しか し0cm 脚長差と3cm 脚長差 2.81±0.18m/s2の間には有意な差は認めなかっ た。4cm 脚長差の RMS は 3.21±0.48m/s2で0cm 脚長差と比較して有意に大 きかった(p<0.01)。 3)Z軸(前後波形)(表3)   Z軸方向加速度データより算出された RMS は、0cm 脚長差と各脚長差モ デルでは有意な差を認めなかった。 脚長差モデル RMS(m/sec2 0cm 1.04±0.19 * * 2cm 1.37±0.25 3cm 1.46±0.31 4cm 1.82±0.43 平均値±SD RMS=RootMeanSquare *;p<0.05 脚長差モデル RMS(m/sec2 0cm 1.54±0.38 2cm 1.85±0.24 3cm 1.92±0.32 脚長差モデル RMS(m/sec2 0cm 2.41±0.16 * * 2cm 2.70±0.22 3cm 2.81±0.18 4cm 3.21±0.48 平均値±SD RMS=RootMeanSquare *;p<0.05、**;p<0.01 表1.X軸(側方方向)の RMS 表3.Z軸(前後)方向の RMS 表2.Y軸(垂直)方向の RMS

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Ⅳ.考察  脚長差が生じると、歩行中の前額面の骨盤の運動に影響を与え、立脚側股関節 の前額面での過度な動きはよくみられる現象であり、体重心は側方へ大きく偏位 する原因の一つとなる。また両脚支持期では、長い下肢側の腸骨稜は、短い下肢 側の腸骨稜より高い位置にある。この骨盤の傾斜は、全歩行周期で起こり、矢状 面においても周期的な腰椎の前彎を増大させる8)。一般的には脚長差が3cm 未 満の場合は、特に補高を処方する必要がないとされているが、本研究では脚長 差が2cm であっても通常歩行と比較して、体幹加速度の変動性が有意に大きく なった。  神先ら9)は若年健常者を対象に、脚長差が快適速度での歩行中の重心動揺の 影響を、床反力計を用いて測定した結果、脚長差が3cm 以上になると床反力の 垂直成分のみが上昇する傾向にあったと報告している。また竹井ら10)は、健常 男性において、脚長差が3cm 以上になると、エネルギー消費が増大する傾向に あったとしている。本研究は2cm の脚長差であっても、有意に体幹の変動性が 増大したことのは、神先らや竹井らの研究では、快適歩行速度や最大速度でも平 地歩行で測定され、本研究では、歩行周期を一定にするためにトレッドミル上で 5km/h の歩行速度を設定したため、個人が日常的に行っている歩行と乖離が生 じ、結果として2cm の脚長差であっても歩行時の姿勢動揺が増大した可能性が ある。  0cm 脚長差と2cm 脚長差の体幹加速度の変動性に有意な差を認めたにもか かわらず、0cm 脚長差と3cm 脚長差の間に有意差を認めなかった理由として、 全対象者の測定を0cm 脚長差、2cm 脚長差、3cm 脚長差、4cm 脚長差と一 定の順序で行ったため運動学習の影響が考えられる。しかし4cm 脚長差では有 意性が認められたことに関しては、運動学習で制御できないほどの姿勢動揺が出 現した可能性が考えられる。  前後方向の RMS が脚長差に影響を受けなかった原因について、以下のことが 考えられる。まず、本研究ではトレッドミル上で歩行速度を5km/h に設定した ために、平地歩行とは異なり、対象者は受動的に一定の歩行速度を保持しなけれ ばならず、一定の歩幅を強制されたために、前後方向の RMS が一定になったと 考えられる。また脚長差モデルでは、歩行中、各面において股関節、膝関節、足 関節のストラテジーが作用したことが推測される。矢状面では、前額面と比較し て、下肢の関節の運動範囲が大きいために股関節や足関節ストラテジーが作用し やすかったことが、前後方向の RMS が脚長差に影響を受けにくかった1つの要

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因になったとも考える。  本研究より、健常者であっても2cm の脚長差で体幹加速度の変動性が有意に 大きくなった。これは変形性股関節症などのために脚長差を有する患者では、複 数の機能障害が跛行に関与する可能性があるため、3cm 未満の脚長差であって も、二次的な合併症を予防するために補高を処方する検討を行うことが重要であ ると考える。  今後の課題としては、以下のことを挙げる。本研究では体幹加速度の変動性を 測定したが、その左右差の程度を特定することができなかった。またどの歩行周 期に変動性が増大するのかは明らかではない。今後は筋電図計や三次元解析装置 を用いて、これらを明らかにすることで、脚長差を有する患者に対する適切なア プローチ方法を検討していくことができると考える。また患者を対象とした臨床 的な応用が必要である。  本研究の反省としては、各対象者が0cm 脚長差から4cm 脚長差まで一定の 順序で測定を行ったことで、運動学習効果が現れたと考える。脚長差モデルをラ ンダムに設定することで、運動学習効果を妨げたのではないかと考える。  本研究の限界として、脚長差モデルでは足底より遠位の長さを延長させている が、臨床で股関節疾患・外傷などで脚長差が生じるのは、股関節部あるいは大腿 長であることが多い。また、補高を装着することは足底に通常とは異なる感覚を 生じさせた可能性もある。これらは本研究の結果が、臨床に応用する際の限界と して、配慮されるべきである。  本研究を通して、井上由里先生、本学の学生には、多大なるご協力をいただき ました。このご協力に感謝し、ここにお礼を申し上げます。 参考文献 1)山田 実,他.体幹加速度由来歩容指数による歩容異常の評価−歩容指数の変形性股関節症患者と健常者 との比較,および基準関連妥当性−.理学療法学 第 33 巻第1号 14-21 頁,2006. 2)大浦徹男,他.脚長差が生じた人工関節置換術後患者における下肢荷重バランスについて−補高前後の下 肢荷重バランスの検討−.東北理学療法学 第 20 号,56-60,2008. 3)本多裕一,他.補高による脚長差歩行が股関節周囲筋に及ぼす影響−筋電図を用いた検討−.理学療法福 岡 27 号,2014. 4)寺本喜好,他.脚長差が直立姿勢に与える影響.運動生理 9,171-175,1997. 5)山田 実,他.加速度計を用いた女性変形性症疾患における歩容異常の客観的評価法の検討−歩容指数の 妥当性および機能障害との関連について−.日本臨床バイオメカニクス学会誌 Vol.26,2005. 6)8)GUYSIMONEAU.歩行の運動学.DonaldANeumann(編),筋骨格系のキネシオロジー,東京, 医師薬出版株式会社,707,695,2012. 7)山口良太,他.体幹加速度波形を用いた歩幅推定における妥当性と信頼性の検証−健常若年成人における

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