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Academic year: 2021

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全文

(1)

概要

現在、多くのワクチンが「予防薬」として使用されている。ワクチンによって体の中につくられる抗体が、 細菌やウイルスとどのように反応し、白血球がどのように作用するのか、これらについて講義を行った。さ らに、抗体を使った実験、白血球を顕微鏡観察することで、抗原抗体反応の重要性、種類の異なる白血 球の役割について理解をはかった。

高校生

担当者: 辻 宏、赤﨑健司、道原明宏

協力学生: 2 名

場所: 薬学部 31 号館 2 階実習室、3 階講義室

ワクチンと免疫

~ 抗体があなたを守る ~

第 8 回 Science Lab 参加高校生と実施担当者

(2)

(1)講義

私たちの身の周りには細菌、ウイルスなど多数の 微生物が存在している。これらの微生物はいつも、 私たちの体の中に入り増殖しようとしている。こ れらの微生物は体の中に一度入って増殖する(感 染する)と、様々な症状を引き起こす。しかし、 健康なヒトでは免疫系が働いて、感染症は短期間 に終息する。免疫系を 利用した感染症予防薬としてのワクチンの歴史、 免疫系の仕組み、免疫系の主役である白血球、抗 体について説明した。 白血球には体内に侵入してきた細菌やウイルス を食べる好中球とマクロファージがある。好中球 は食欲旺盛である。しかし、満腹になると死んで しまう。細菌を食べた好中球の残骸が膿(うみ) である。一方、細菌やウイルスに特有のタンパク 質(抗原)がリンパ球を刺激するとリンパ球が抗 原と結合する抗体と呼ばれるタンパク質を作り 出し、抗体がウイルスや細菌に抗原を介して付着 して、これらの動きを封じるのである。 ジェンナーの天然痘ワクチンの発見

学習内容

白血球の働き 予防接種 自然感染 ワクチン 病原体 免 疫 応 答 一次免 疫応答 二次免 疫応答 獲得免 疫 予防接種 自然感染 ワクチン 病原体 免 疫 応 答 一次免 疫応答 二次免 疫応答 獲得免 疫 B 抗原 刺激 抗体の産生 B 抗原 刺激 抗体の産生 B リンパ球による抗体の産生 種々の白血球の顕微鏡写真

(3)

(2)実習

オクタロニー二重拡散法による抗原抗体反応の分析

オクタロニー二重拡散法(オクタロニーテスト)に用いた抗原と抗体を以下に示す。 抗原: ラットリソソーム膜タンパク質 抗体: 10 倍(10)、20 倍(20)、40 倍(40)、80 倍(80)、160 倍(160)希釈したウサギ血清 (ラットリソソーム膜タンパク質に対する抗体を含む) 抗原と、それに対応する抗体を含む血清が接触 すると、抗体は抗原と特異的に結合する。抗原抗 体反応を調べる最も一般的で簡単な方法が、オク タロニー二重拡散法である。平板上の寒天ゲル(1 ~1.5%寒天)に一定の間隔をおいて穴(we11)を 開ける。中央の穴に抗原液、外側の穴に血清(抗 体を含む液)を入れて一定時間拡散させて反応さ せると、対応する抗原と抗体との間に免疫複合体 が形成され、不溶性の沈降反応線として観察され る。 寒天培地の穴のあけ方、溶液を入れる場所、ピ ペットエースを使った溶液の採り方などの操作を 説明した後(写真 1)、実際に生徒たちに操作をし てもらった(写真 2)。 沈降線が観察されるのに 2~3 日かかることか ら、あらかじめ沈降線が形成されている寒天培地 を学生に観察してもらった。また、各自行ったオ クタロニーテストは、家に持ち帰ってもらい、後 日、沈降線を確認してもらうことにした。

抗原

抗体(希釈した血清)

10 20 40 80 160 写真 1 オクタロニーテストの説明 写真 2 寒天培地に穴をあける操作 抗体(希釈した血清) 抗原

(4)

ギムザ染色による白血球の観察

血液は全身に網の目のように張り巡らされた血 管の中を流れる液体であって、物質の運搬、生理 条件の調節、感染防御など、生命維持に重要な役 割を演じている。血液中の各成分はそれぞれの役 割分担があるが、その中で感染防御や異物処理を 行う白血球について、その形態と種類を顕微鏡に よって観察し、スケッチしてもらった。 マウスをジエチルエーテルで麻酔後、固定器に 入れ、尾静脈をカッターで切ることにより血液を 採取した。血液 1 滴をスライドガラスの端、中央 部に滴下した後、引きガラスで滴下した血液を薄 く広げ、塗抹後、ただちに乾燥させた(15 分)。 メタノール固定後(1 分)、ギムザ染色液 2~3ml をかけ染色し(15 分)、蒸留水で脱色した(1 分)。 乾燥後、得られた末梢血塗抹標本を用いて、顕微 鏡で白血球の観察を行った。 マウスの麻酔から血液の塗抹までの操作を、デ モンストレーションとして教員が行い(写真 3)、 学生にはあらかじめ血液を塗抹しておいたスライ ドガラスを渡した。固定、染色、脱水、乾燥の操 作を説明してから、実際に生徒たちに末梢血塗抹 標本を作成してもらった(写真 4)。 末梢血塗抹標本中の白血球を観察するために、 顕微鏡の基本的操作を説明した後、400 倍の倍率 で白血球を観察してもらった(写真 5)。血液細胞 の染色に使用されるギムザ染色液は、細胞核を赤 紫色に染め、さらに細胞質の各種顆粒を好酸性(赤 色)と好塩基性(紫青~青色)に染め分けること が出来る。そこで、染色された白血球の色合い、 形により異なる白血球をスケッチしてもらい、別 紙の見本から白血球の種類(好中球、好酸球、好 塩基球、リンパ球、単球)を考察してもらった。 写真 3 マウス尾静脈から血液を採取 写真 4 ギムザ染色 写真 5 白血球の顕微鏡観察

(5)

(3)高校生からよせられた質問

回答:

白血病とは、腫瘍化した造血細胞が無制限に増殖して血液中に出現する疾患の総称です。 白血球系の細胞の腫瘍であることが多いため白血病と呼ばれますが、実際には赤血球系や血小板系の 細胞が腫瘍化したものもあり、これらも白血病と呼ばれます。白血病細胞が増加し、正常な血球が減 少するため、白血球減少に伴う感染症(発熱)、赤血球減少(貧血)に伴う症状(倦怠感、動悸、めま い)、血小板減少に伴う出血症状(歯肉の腫脹や歯肉出血など)が引き起こされます。これらの症状が みられたときには、病院で検査を受けてみてください。 白血病では、しばしば白血病細胞が血液を凝固させる物質を作り出します。すると、血管の中で通 常はあり得ないはずの血液凝固が置きます。しかも局所的なものではなく、全身のあちこちの微少な 血管で起こります。血管の中で血液が固まると、血流が途絶え、その血管が血液を送り込んでいる臓 器に障害を引き起こします(脳・肺・心筋梗塞)。それだけではなく、血液が凝固する際、血小板が使 いつくされてしまううえ、血液を凝固させる働きのある凝固因子も無くなってしまいます。出血を止 める働きをする血小板と凝固因子が減った結果、出血がおき、止まらなくなってしまいます。 白血病の死因として重大なのは感染症です。感染症の原因になるのは、細菌、真菌(カビの一種)、 ウイルスなどの病原微生物です。こうした病原菌は口や皮膚、粘膜、血液などから侵入します。私た ちの身体は、これらをなるべく侵入した局所にとどめ、追放しようとします。この働きをするのが白 血球です。白血病になると、正常な白血球が減ってしまっています。つまり、病原菌の侵攻を阻止す る働きをするものがいないのです。すると、病原菌は身体の中に入り込み、肺炎、腸炎、髄膜炎など の感染症を引き起こします。感染症を防ぐために、白血病患者の治療は無菌室で行われます。 (回答:道原明宏)

質問: 白血病になると、どんな症状がでるのですか?

(6)

¥

感想

◆高校生の感想

・学校でできない実験ができて、楽しかったです。中3 で血液について習ったとき、血液実験が できなかったから、今回できてよかったです。また来たいです。 ・学校では実験がなかなかできないので、できて良かったです。白血球がいっぱいみれて良かっ たです。また来たいと思いました。 ・マウスを使っての実験は、実際に生きているマウスの血液を使って実験できたことが凄いなと 思いました。 ・楽しんで実験することができて良かったです。 ・白血球にこんなに種類があることは知らなかったので、今回見ることができたのでよかったで す。 ・学校で使えない器具が使えて良かった。先生がとても親切で良かった。 ・ねずみが元気になったから良かった!!標本が薄くて見れなかったけど楽しかったので良かっ たです。分からなくなった時に先生がいつも親切に教えてくれたので良かった。 ・きれいな白血球が見れて良かった。 ・人間の体はやっぱり凄いと思った。身体の中に無害の微生物(?)と共生していると言われた けど、その微生物はどこから取り込んだのかが不思議でした。白血球の観察が楽しかったので、 機会があればまたやりたいと思った。 ・マウスを使って実験をするのが怖かったけど、実験のやり方など分かっておもしろかったです。 学校ではこんなにくわしく実験しないので、今回できてよかったです。また参加したいです。 ・学校で白血球や赤血球は習いましたが、実際に自分の目で見たことがなかったので良い体験が できました。白血球を見つけるのは難しかったです。これからは実験が手際よくできるように なりたいです。 ・学校では使えない器具を一人ずつ使えてうれしかったです。実験の前にスライドでいろいろ説 明をしてもらえて、わかりやすくて良かったです。 ・光学顕微鏡を初めて使う事ができて良かったです。あとマウスから血をとるのが楽しかった。 ・光学顕微鏡を初めて使うことができたのでよかった。マウスがかわいかったです。

(7)

◆高校引率教員の感想

実験前の解説が的をえてわかりやすいものでした。ワクチンについてその歴史をふくめて非常に スピィーディに理解できたのが良かったです。 実験は抗原抗体反応を実際に肉眼で確かめるものと、マウスの血液を実際に光学顕微鏡によって 観察するものでしたが、高校ではできないものであり、その手法や実際の観察をおこなうことを体 験できたことは生徒たちにとって有意義で、こういった学問を学ぶモチベーションを高める時間と なったと思います。ありがとうございました。

◆担当者の感想(道原明宏)

雪が降る寒い中、免疫というあまり親しみのない難しい題材に対して、たくさんの高校生にお集 まりいただき深く感謝いたします。理科離れが進む昨今において、熱心に講義および実習に取り組 む高校生の姿を見ることができ、大変うれしく思いました。今回の体験学習において、ワクチンと いう言葉を覚えている高校生の多さに驚きました。しかし、ワクチン、予防接種の言葉を知ってい る高校生も、その言葉の意味、重要性、作用メカニズムについて、大半の学生が知りませんでした。 今回の体験学習をとうして、ワクチン接種、抗原抗体反応の重要性、白血球の種類や働き、それら を含む免疫応答に、すこしでも興味を持っていただければ幸いです。「白血球の観察」で使うマウ スを可愛がる高校生にとって、マウスの尾静脈から血液を採取する操作は、少し抵抗があったよう に思います。今後の反省点として改良していきたいと考えております。今後もこのような活動を行 いながら、免疫のすばらしさをわかりやすく高校生に伝えていくことにより、実験、研究に少しで も興味を持っていただきたいと思います。

参照

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