1 契約弱者としての中小事業者の保護の拡充を求める決議 従来、消費者概念は事業者概念と表裏の関係にあり、事業者には、消費者契約法や特定 商取引法、割賦販売法等による保護は及ばない、と解されてきた。しかしながら、電話機 等の提携リース取引において、多くのユーザーが消費者と同様に悪質な提携販売店による 不当訪問「販売」によるトラブルに巻き込まれ、フランチャイズ契約におけるフランチャ イザー(本部事業者)とフランチャイジー(加盟店)との間での圧倒的な情報量や交渉力 等の格差に起因するトラブルや、不動産のサブリースによるトラブルも問題となってきて いる。いずれの場合も、不利益を被る被害者的立場にある者は、事業規模の小さいいわゆ る中小事業者がほとんどである。したがって、事業者間の取引であっても、情報の質及び 量並びに交渉力の格差等により、中小零細事業者(以下、「中小事業者」という。)が不当 な契約を強いられるなど、「契約弱者」たる状況が認められる場合に、これら中小事業者の 保護を拡充するため、以下の立法措置を講ずることを求める。 1 提携リース契約について、下記内容を取り入れた立法措置をとること。 (1) リース会社とサプライヤーを一体的に扱う規定(サプライヤーの勧誘・説明をリ ース会社の行為とみなす規定、取消権付与、抗弁接続の規定) (2) リース物件の市価と乖離したリース料総額設定の禁止 (3) 役務提供リースの禁止(リース物件を動産及びソフトウェアに限定) (4) 残リース料上乗せリースの禁止 (5) 適切な契約内容の説明義務 (6) クーリング・オフ制度 (7) 支払能力調査義務の設定と過量販売の禁止 (8) 登録制度、報告徴求、立入検査、業務改善命令等の厳格な行政ルールの導入 2 フランチャイズ契約について、下記内容を取り入れた立法措置を講じること。 <事前開示規制> (1) 契約締結前の書面交付・説明義務
2 (2) 契約における権利義務内容、売上・収益予測、リスク情報の徹底した開示 (3) 書面不交付の場合の解約権付与と違約金の禁止 <内容規制> (1) 契約締結時の書面交付義務 (2) 優越的地位の濫用禁止、加盟店の自主性を著しく制約し、不利益を強制する契約 等の禁止 (3) 必要な限度を超える守秘義務及び競業避止義務の禁止 (4) 著しく高額なロイヤルティ等の禁止 (5) 既存加盟店の商圏内に、本部事業者による新規出店等を行う場合の既存加盟店と の協議規定 (6) 加盟店に一定の場合に解除権を付与する規定、現実に生じた費用を超える違約金 の禁止 (7) 加盟店による契約更新、契約解除の申出を正当な理由なく拒絶することの制限 (8) 本部事業者による契約期間中の中途解約の禁止(加盟店の重大な契約違反その他 信頼関係の破壊を除く) (9) 契約終了後、合理的期間及び範囲を超える守秘義務及び競業避止義務の禁止 (10) 同種事業の加盟店による集団交渉の保護 3 不動産サブリース契約について、下記内容を取り入れた立法措置を講じること。 (1) 管理主任者登録制度、営業保証金制度を含む義務的登録制度 (2) 誇大広告の禁止 (3) 貸主に対する重要事項説明及び転貸条件開示義務 (4) 不実告知・重要事項の不告知、断定的判断提供の禁止と違反の場合の取消権付与 (5) 預かり財産を確実かつ整然と分離保管する制度 (6) 招請勧誘・不招請勧誘を問わない一定期間のクーリング・オフ制度 (7) 事業収支計画と現実の収支が齟齬した場合の差額を損害と推定する規定の導入 (8) 貸主からの解約・解除の制限禁止と契約終了時の転借人の保護
3 (9) サブリース業者と一定の提携関係にある建築業者の連帯責任 4 現行の特定商取引に関する法律第26条1項1号、同法第58条1項、割賦販売法 第8条、同法第35条の3の60等の消費者保護規定の適用を営業行為等について除 外する規定を改正し、契約弱者としての事業者の保護を拡大する観点から、それら規 定の適用除外の対象を、事業者が既に行っている事業に直接関連するものに限定すべき こと。 以上のとおり決議する。 2011年(平成23年)11月25日 近 畿 弁 護 士 会 連 合 会
4 提 案 理 由 1.消費者概念と中小事業者保護の位置づけ 消費者法において擁護・支援の対象とされている「消費者」の概念は、個々の法律によ って必ずしも一様ではないが、消費者契約法(第 2 条 1 項・2 項)においては、消費者概 念は、事業者概念と表裏の関係のものとされ、事業者は、消費者契約法上の保護を受ける ことはできない。また、特定商取引法(第 26 条 1 項 1 号等)や割賦販売法(第 8 条・同 法第 35 条の 3 の 60)は、「営業のため若しくは営業として締結するもの」について、同 法の適用を除外している。 すなわち、従前の消費者概念は、事業者概念と表裏の関係のものとされ、事業者は、一 部例外を除いて、消費者関係法上の保護を受けることはできないとされてきた。 しかしながら、たとえ事業者であっても、中小事業者においては、直接には事業目的に 関わらない補助的な取引や、勧誘により開業をする事業勧誘型の取引、さらには、市場や 事業形態の構造上、当事者間に不均衡の認められる取引等においても、同様の格差が存在 することは否定しがたいところである。 これらの場合には、その中小事業者は、「消費者」に類する立場にあるのであって、い わば「契約弱者」ということができる。契約当事者間に現実に情報の質及び量並びに交渉 力の格差等が存在しているにもかかわらず、事業者間の契約であるということで、安易に 救済を拒み、不当な勧誘や不当な契約条項を追認してしまうことは、契約における正義の 観点から是認できるものではない。 事業者間取引にあっても、従前の「消費者」概念に拘ることなく、取引の類型・特質・ 態様に基づき、消費者取引と同様の事情がある場合には、契約・取引が、不正義を実現す る手段に堕することを防止していく必要がある。 2.提携リース契約の規制について(決議の趣旨1項) (1) はじめに ファイナンス・リース契約とは、ユーザーが企業設備を調達するにあたって、リー
5 ス会社が目的物をサプライヤーから購入してユーザーに貸与し、物件の調達費用を基 礎として計算したリース料を所定の期間分割して支払うという取引をいい、昭和40 年代以降、広く企業間取引として普及して来た。 近年、このファイナンス・リースの仕組みを利用し、リース会社と提携関係にある サプライヤーの販売員が、中小事業者の自宅や事業所を訪問して、「今使っている電話 機はいずれ使えなくなる」「この電話機に交換すれば電話代が今よりも安くなる」 「(リース料の総額が高くなることは全く告知せずに)新たにリース契約をした方がリ ース料が安くなる」などといった虚偽や誤解を生ぜしめる内容の勧誘を行い、ユーザ ーにとって必要でない、あるいは極めて高価格のビジネスフォンやOA機器のリース 契約を締結させられる事例が多発している。中には、リース契約書に記載のないホー ムページ制作等の役務がリース契約の事実上の対象とされているケースも多数見受け られる。 後日、ユーザーが、リース会社に対して解約を申し入れても、リース会社は、サプ ライヤーの勧誘行為については関知しない、中途解約は認められない、事業者である から特定商取引法が適用されずクーリング・オフは認められない、などとして一切解 約に応じようとしないため、トラブルが急増している。 中小事業者は、商品及びファイナンス・リース取引についての知識経験に欠ける点 では消費者と全く異ならない。本来不要のリース物件を虚偽勧誘によって導入させた り、しかもリース物件の時価と乖離した高額なリース料を支払わせながら、サプライ ヤーによる不適切・違法勧誘の抗弁がリース会社に対し切断される約定となっている ため、リース契約という法形式が、濫用されている。しかも、「事業者」であるという 理由で消費者保護法制の適用には困難が伴うので、事態はいっそう深刻である。 悪質リース被害において、ユーザーの救済が図られた裁判例は一定数存在している ものの(たとえば、名古屋高裁平成 19 年 11 月 19 日判決(判例時報 2010 号 74 頁)は、 通信機器販売会社が印刷画工を行っていた者にビジネスフォンのリース契約を勧誘し た事案について、「営業のために若しくは営業として締結されたもの」(特定商取引法
6 第 26 条 1 項 1 号)であるとは認められないとして、クーリング・オフを認めた。)、ユ ーザーが敗訴する場合もある。しかも、救済裁判例は、特定商取引法が適用されると した場合におけるクーリング・オフが認められる範囲に限定され、リース契約の契約 締結過程の問題点に基づいて救済を肯定する裁判例は少数である。ユーザーが、リー ス会社とサプライヤー間の内部関係を把握するには限界があり、ユーザーが過重な主 張立証責任を負担させられる現状にある。また、特定商取引法上のクーリング・オフ の主張についても、事業の規模、リース物件の使用状況及びリース物件の必要性等に よって結論が左右されている。そして、何よりも被害者である中小事業者自身が、自 らは事業者であるから救済されないと諦めて泣き寝入りをするという状況にある。 したがって、これら悪質リース被害を根絶し、かつ防止するためには、以下に述べ る内容等について、新たな法律をもって明確に規定する必要がある。 (2) 提携リースによる被害の拡大 ① 一般に、提携リースとは、サプライヤーとリース会社との間に提携関係があるた めサプライヤーがファイナンス・リース契約締結の交渉・申込手続を代行するリー ス契約のことである(なお、経済産業省は、このような提携リースのうち、訪問販 売の形式が取られるものを「リース提携販売」と呼んでいる。以下においては、フ ルペイアウト方式のファイナンス・リースでリース会社とサプライヤーとの間に提 携関係があるものを「提携リース」という。)。 本来、リース契約が予定している契約形態は以下のようなものである。まず、ユ ーザーが自らの事業に使用する機器について導入すべき動機を有し、これを取り扱 っているサプライヤーと、物件の価格を含めた協議を行う。これについて一括で購 入できない場合に与信を得る方法として、金銭消費貸借や割賦販売、延払等いくつ かの選択肢の中からリース契約を選択する。このように、本来のファイナンス・リ ース契約では、ユーザーは、機器の必要性についても、その価格(リース料総額) の相当性についても知識と経験を有していることが多い。 ところが、電話機や複合機、パソコン、インターネット設備、ホームページ等の
7 小口物件を対象とした提携リースにおいては、上記のような契約形態とは全く異な る経過をたどる。まず、ユーザーが機器についての必要性を感じてサプライヤーに 連絡をとるというケースは極めて少ない。ほとんどの場合、訪問販売の方法により 事業所や自宅を突然訪れたサプライヤーが、ユーザーに機器を紹介し、その導入の 必要性について欺罔し、誤解を生ぜしめるような態様で勧誘を行うので、機器の必 要性についてユーザーがじっくりと熟慮検討する余地が少ない。また、契約方式に ついてはリース契約以外についてはほとんど説明をせず、機器の市価がどの程度の ものかも説明しないため、リース料総額が妥当かどうかの検討機会は奪われたまま である。また、サプライヤーは、月額リース料のみを強調し、リース料総額を認識 しないように説明を行うケースが多い。よって、リース契約が本来予定しているよ うな、リース物件の選定や価格設定についてユーザーとサプライヤーが対等に協議 するという環境がまったく保証されていない。 サプライヤーは、リース契約によってリース会社から物件購入費用を一括で取得 するという利益を得ることになるが、他方、リース会社もまた、リース契約の法形 式上のメリットを享受することになる。すなわち、中途解約の禁止と抗弁の切断で ある。後日、当該機器を導入する必要がなかったことや、あまりに高額なリース料 総額を知ったユーザーがリース会社に対して解約を申し入れたとしても、リース会 社は、サプライヤーの勧誘行為はリース会社には無関係である、リース契約上中途 解約が認められない、ユーザー(事業者)には特定商取引法が適用されずクーリン グ・オフは認められない、などとしてこれを拒絶しうるのである。 このようなサプライヤーとリース会社のいわば共存共栄の関係が、提携リース被 害を拡大させているのである。 また、近年、100万円を超えるホームページ作成、管理という役務提供の対価 を実質的な目的としながら、形式的には、市販の安価なホームページ作成ソフトと 同等以下のソフトウェア等をリース物件としている事案や、警備契約という役務提 供を実質的な目的としながら、形式的には、安価な警備機器類(防犯カメラ、録画
8 システム等)等をリース物件に設定している事案が発生している。サプライヤーが ホームページを作成しないまま倒産したり、あるいはホームページ作成後の更新サ ービスをリース料に実質的に含めながら、サプライヤーが倒産したために更新サー ビスが受けられないのに、未だにリース会社に対するリース料を支払わされ続けて いる被害者も少なくない。 このように、リース契約という法形式が、悪質商法のための道具として濫用され ている実態が長年続き、近年は被害件数も増加し、被害態様も多様化してきている。 ② このような提携リースの特質を利用した悪質なリース契約に関する相談件数は、 国民生活センターの集計によると、平成12年から平成17年にかけて年々増加し、 平成12年度には2618件であった相談が、平成13年度3511件、平成14 年度4853件、平成15年度5830件、平成16年度7352件、平成17年 度8696件と急増してきた。 その後、平成18年度5498件、平成19年度3807件、平成20年度29 73件と徐々に減少はしているものの、未だ決して少なくない相談件数である。ま た、国民生活センター及び各地の消費生活センターは消費者の相談窓口であって、 悪質リース被害の被害者である事業者の相談を全てすくい上げていないものと思わ れる。他方、リース会社の同業者団体である社団法人リース事業協会に対する相談 件数は平成19年度が3778件、平成20年度が4249件、平成21年度が4 532件であり、むしろ未だに増加傾向にある(同協会公表資料)。なお、同協会に 全てのリース会社が加盟している訳ではなく、加盟各社も同協会に全てのトラブル を報告する法的義務を負う訳でもないことを考えれば、同協会が把握した上記件数 も被害の全体を表すものではないと思われる。 近畿弁護士会連合会内で確認されている被害はといえば、本年に入ってからも、 大阪では、ほぼ毎月必ず複数件の被害相談が寄せられている。京都においては、問 題商法を繰り広げたサプライヤーが複数社倒産し、極めて多数の集団的被害が噴出 している。兵庫県においても、110番を実施したところ多数の被害情報が寄せら
9 れた。被害はいっこうに減少しておらず、むしろ増加傾向にある。 ③ 更に、リースの契約対象として、電話機等から事務用機器以外の物件、ホームペ ージ作成用ソフトやSEO対策ソフトに変化し、リース契約を巧妙に利用した新た な被害事案が増加している。リース事業協会の平成21年度苦情相談のうち、ホー ムページソフト、SEO対策ソフト、セキュリティ関連機器の3つの相談は164 6件にもなっている。 (3) 立法の必要性 ① 特定商取引法の通達改正と苦情相談傾向 経済産業省は、個人事業者等を狙った電話機リース訪問販売に係る苦情相談の増 加をふまえ、平成17年12月6日、特定商取引法の通達を改正し、リース提携販 売のように、一定の仕組みの上での複数の者による勧誘・販売等であるが、総合し てみれば一つの訪問販売を形成していると認められるような場合には、いずれも販 売業者等に該当することを明示(同法第2条「販売業者」)するなどして、一定限度 内で特定商取引法、特にクーリング・オフ規定による救済の途を開いた(同法第2 6条1項1号「営業のために若しくは営業として」。経済産業省平成 17 年 12 月 6 日 付「悪質な電話機等リース訪問販売への対応策について」http://www.meti.go.jp/ press/20051206002/20051206002.html)。 同省は、同日、「社団法人リース事業協会に対する指導」として、「電話機等リー スの審査強化、提携販売事業者の総点検及び取引停止を含めた管理強化、苦情相談 体制の整備等の取組」等の指導を行った。 しかしながら、特定商取引法のクーリング・オフによる解決は、中小事業者の被 害すべてに適用されるわけではない。その結果、上記のとおり提携リース被害は沈 静化しているとはいえず、リース事業協会の苦情相談はむしろ増加傾向にある。し かも、リース被害は対象物件を変え、多様化、拡大の傾向がみられる。リース事業 協会は、ホームぺージ等において業務の適正化を目指した告知を繰り返し行ってい るが、あくまで任意団体に過ぎず、上記被害の拡大という事実からしても十分な実
10 効性が確保されているとは到底言い難い。 ② 司法的救済の限界 ユーザーは、サプライヤーの虚偽の説明等の不適切な勧誘についてリース会社の 責任を追及するためには、リース契約の瑕疵を主張して同契約からの拘束を解放す るか、リース会社自身の説明務違反、不法行為ないしは使用者責任に基づく損害賠 償責任等の法的責任を追及するほかない。 しかし、提携リース契約に関し特定商取引法が適用される場面は、営業行為を適 用除外としている関係で限定的である。また、リース会社がサプライヤーの行為に ついて負うべき義務規範は、例えば割賦販売法における加盟店調査義務、業務適正 化義務等とは異なり、法の明文規定がないため、個々の裁判所の判断によって司法 的救済が受けられない場合もあり、その救済には限界もある。 ③ 立法の必要性 提携リース被害がこのように多発する原因は、いわゆる物品の与信販売に適用さ れる法体系の欠陥にある。すなわち、物品購入の対価を一括で支払うことができな い場合、第三者の金融によってこれを可能とする方法は、金銭消費貸借、割賦販売、 そしてリースの三種類が考えられるが、このうち前二者については貸金業法、利息 制限法、出資法及び割賦販売法といういずれも監督官庁を有する業法・規制法が存 在している。にもかかわらず、リースについてのみ規制法が全くなく、野放しなの である。このような状況下では、与信を伴う取引に基づく被害は、規制が存在しな いリースの分野で多発することは容易に推測できるところであり、まさに、リース が、貸金業法や利息制限法、割賦販売法の適用を回避する手段として用いられてい るのが被害の実情である。そして、リース会社とサプライヤーの関係及びこれに基 づきリース会社が負うべき義務について、立法によって明確化されない限り、現実 には、実効的な救済方法は限定されている。このように、貸金業法や割賦販売法等 の規制を潜脱する形式で生じている提携リース被害の増加を防止する上で、提携リ ース契約の適切な法規制を行うことは、まさに急務であるところ、以下の内容を含
11 む法規制を行う必要がある。 (4) 規制の具体的内容とその理由 ① リース会社とサプライヤーとを一体的に取扱う規定 提携リースにおいては、サプライヤーの不当勧誘が行われた場合、あるいはリー ス物件に瑕疵があった場合、ユーザーは抗弁事由をリース会社に主張できない旨約 定されている。しかし、リース会社は、自らは営業活動を行うことなく、提携して いるサプライヤーを手足のごとく使い、リース契約の締結に関する事実行為のほと んど全てを委ねているのであるから、両者は密接不可分な関係にあり、サプライヤ ーの不当勧誘やリース物件の瑕疵に関し、ユーザーの抗弁事由はリース会社に対抗 できることを原則とすべきである。 そこで、サプライヤーがユーザーに対して行なった説明はリース会社が行ったも のと扱うという明文の規定を設け、サプライヤーによる不適切な勧誘行為等があっ た場合には、ユーザーはリース契約を取り消すことができることを明文で定めるべ きである。 ② リース物件の市価と乖離したリース料総額設定の禁止 ア 提携リースにおいては、機器購入の動機がユーザーにあるかどうかが疑問であ る事例が多く、そのため、リース料総額が、サプライヤーにとって一方的に有利 に設定される危険性が高い。 よって、リース会社は、リース物件の市場価格の調査義務を負い、これを著し く超えるリース料総額になるリース契約の締結を禁止すべきである。 イ また、リース契約の本質は設備の売買及び賃貸借なのであるから、設備ではな い役務を含ましめることは、そもそもリース契約の本質に反する。しかしながら、 役務提供をリース契約の法形式をとって行う被害が拡大していることは上記述べ たとおりである。役務提供リース契約は、とくにソフトウェアリースの形態をと って偽装されることが多い。ソフトウェアの価格の適正性はユーザーにとってわ かりにくいためである。
12 このような役務提供リース契約による被害を防止するためには、リース契約の 対象がソフトウェアであることや、他に容易に入手し得る同種ソフトウェアに比 して価格が高額である場合には、当該リース物件となるソフトウェアが高額であ る事実や、特にその比較において高額なソフトウェアをリース物件とする理由に ついてユーザーに説明すべきである。 ウ そして、リース会社は、一般に、相応の規模を有する大企業であることが多く、 リース物件の市場価格の調査は容易であり、かつ、リース物件を不当に高額にし たり、不当に高額なホームページ作成ソフトをリース物件とするリース契約につ いての苦情が多発していることを熟知しているのであるから、このような調査義 務を負わせても何ら不合理ではない。 さらに、リース会社がこの調査を怠った結果、リース物件価格が不適切であっ たり、リース契約の対価としてソフトウェアないしその使用許諾権以外の役務提 供の対価が実質的に含まれていた場合には、ユーザーに取消権を付与すべきであ る。 ③ 役務提供リースの禁止(リース物件の限定)④残リース料上乗せリースの禁止 等 提携リースにおいて、リース物件は、動産及びソフトウェアに限られるものとし、 役務はリース対象とはできないことを明示するとともに、実質的にリース料に役務 提供の対価を含める脱法的な扱いを明示的に禁止する必要がある。 すなわち、設備の売買及び賃貸借というリース契約の本質上、リース物件の適格 性が認められるためには、それが返還されること、移動できるものであること、汎 用性があるものであると、そして特定できるものであることが必要なのであり、リ ース料の算定基準は、ア 基本額(物件購入価格。残存価格が生じている場合は物 件購入価格− 残存価格)、イ 金利、ウ 固定資産税、エ 保険料、オ 販売管理 費用(手数料)及びカ 利益等であり、これらの合計がリース料総額となる。 よって、悪質なリース被害を防止し、適切なリース契約を締結するには、提携リ
13 ースにおいて、上記のような役務提供費用を実質的に含ませることを禁止するほか、 既存のリース契約の解約を伴う場合において、その残リース料を清算するための費 用を新たなリース契約のリース料に上乗せするという残リース料上乗せリースをも 禁止しなければならない。 このような残リース料上乗せリースは、期間中に不要な中途解約を繰り返して、 リース料総額を雪だるま式に増加させ、他方、サプライヤーはリース契約の実績を あげるという「次々リース」の温床となっており、とくに規制が必要である。 ⑤ 適切な契約内容の説明義務 リース契約の仕組みは複雑であり、事業者といえどもこれを理解することは容易 ではない。しかしながら、現在の提携リース契約で用いられている契約書には、リ ース物件(これも物品の型式等が記載されていないケースがしばしばである)と月 額のリース料が記載されているだけで、いかなる物件をリースし、なぜこのリース 料総額となるのかの内訳すら記載されていない。悪質な提携リース被害を防止する には、リース契約の内容、仕組み、中途解約の可否等の重要な事項について、リー ス契約書上に明示し、かつリース会社に厳格な説明義務を課すべきである。 したがって、提携リースのリース会社及びサプライヤーは、リース契約書の内容 について、ア 動産及びソフトウェアの名称及びその価格、当該動産等に附帯する 損害保険費用がある場合はその内容及び価格、当該動産等の設置・設定のための費 用がある場合はその内容及びその価格、イ リース契約の対象がソフトウェアであ り、同様の用途とする他に容易に入手し得るソフトウェアに比して価格が高額であ る場合、それが高額である事実及び特にその比較において高額なソフトウェアをリ ース物件とする理由、ウ 中途解約の可否、及びエ 契約書面を受領した後相当期 間はリース契約のクーリング・オフができること(クーリング・オフについては⑥ で述べる)を明示し、またその内容についての説明義務を負うべきである。 ⑥ クーリング・オフ制度 ユーザーは、前述した契約書面を受領した後相当期間は、リース契約のクーリン
14 グ・オフができるようにするべきである。 何故なら、提携リース契約におけるユーザーの地位は、事業者であったとしても、 上記の法に定められた「消費者」の地位と同様に、リース会社との間に構造的な格 差が存し、契約時に、契約内容についての熟慮がなされないままに締結に至ってい るケースが多く、熟慮期間を設けることが必要であり、かつ、勧誘者側にも、適切 な内容の契約書面を交付させ、説明義務を十分に果たさせる契機となるからである。 ⑦ 支払能力調査義務の設定と過量販売の禁止 リース会社は、割賦販売法と同様に、ユーザーの支払能力調査義務を負い、その 額を超える契約の締結や過量販売を禁止すべきである。 リース被害においては、ユーザーの資力からして極めて不相当な金額(例えば年 間の所得の半分以上の年間リース料を支払わせるものもある)をリース料総額とす る契約が締結されていたり、また、リース物件も、ユーザーが真に必要とするもの に比して、質的にも量的にも過剰な事案が多々存在するのであるから、リース会社 は、ユーザーの支払能力調査義務を負い、その額を超える契約や、あるいは、ユー ザーにとって不必要なリース物件について質的量的に過剰な販売が行われないよう に配慮する義務を負うとすべきである。 ⑧ 登録制度、報告徴求、立入検査、業務改善命令等の厳格な行政ルールの導入 上記述べたような規制について、これを真に実効あらしめるためには、行政によ る責任ある監督が必要不可欠であり、リース業については経済産業省等への登録制 とし、立入検査、改善命令等の行政監督権限に服することにするべきである。 リース業については、貸金業登録をしているリース会社もあるが、リース業自体 については、現在は、特段何らの登録も必要とされてはいない。しかしながら、上 記のとおりリースによる被害は拡大しており、リース事業協会による自主規制は期 待できないから、経済産業省等への登録制とし、立入検査、改善命令等の行政監督 権限に服させ、もって、不当勧誘の排除を目指すべきである。
15 3.フランチャイズ契約の規制について(決議の趣旨2項) (1) 問題点 一般的にフランチャイザー(以下、「本部事業者」という。)とフランチャイジー(以 下「加盟店」という。)との間において、事業に関するノウハウ・知識・経験等に著し い格差があり、このことがトラブルの背景にある。 すなわち① 十分な情報開示がなされていないことにより、収益予想やリスクの検 討が不十分 なまま契約を強いられる ② 契約内容についても著しく加盟店にとって不利益な条項による負担を強いられる といった問題が生じている。 (2) 問題解消の方向 フランチャイズ契約については、契約弱者たる加盟店ないしその希望者の保護の見 地から統一的な法規制が必要である。 法規制の方向であるが、契約締結に必要十分な検討の機会を与えるための事前の開 示規制と、不当な契約条項を排除するための内容規制が検討されるべきである。 この点、開示義務に関しては、中小小売商業振興法にフランチャイズ取引等の情報 開示規定があり、また公正取引委員会が「フランチャイズ・システムに関する独占禁 止法上の考え方について」(「FCガイドライン」)をつくり、一応の対処がなされて きた。しかし、中小小売商業振興法は、本部に対して販売条件や経営指導、契約期間、 解除、加盟金に関する事項等について書面交付と説明を定めているものの、①フラン チャイズ契約に関する本部事業者と加盟店間の紛争の有無等、本部の不利な事項を開 示する義務がないこと、②法律の適用範囲が、小売業だけで、サービス・飲食業等の フランチャイズ取引には適用されないこと、③違反者に対する厳しい罰則がないこと 等極めて不充分なものであり、また「FCガイドライン」は、公正取引委員会の法運 用に関する「考え」を表明しただけで適用事例はほとんど無く、公正取引委員会が取 り締まろうとしても限界がある。結局、いずれも加盟店の権利・利益を保障するもの
16 としてはきわめて不十分である。 また、契約内容の不当性についても、たとえば、高額なロイヤルティあるいは合理 性を欠くその算定方法、加盟店に対する広汎な(不正競争防止法上の秘密の範囲を遙 かに超える)守秘義務の強要、加盟店からの中途解約申し入れに対する高額な違約金 条項、契約終了後の加重な競業禁止義務等、現実に加盟店にとって不当に不利益な条 項がフランチャイズ契約において見受けられるにも拘わらず、これを規制する法律は 民法の一般条項以外には存在せず、契約弱者たる加盟店の救済はきわめて不十分と言 わざるを得ない。 よって、フランチャイズ契約に関して、事前開示規制と内容規制を2本の柱とする、 以下の内容を含む法規制を行う必要がある。 (3) フランチャイズ契約の規制内容 ① 事前開示規制について 次のとおり、本部事業者の加盟店に対する契約締結に先だっての情報開示義務を 徹底化する必要がある。 ア 法律上、一定の事項を記載した開示書面を契約締結の14日以前に加盟店希望 者に交付しなければならない。 イ 開示書面が交付されないまま契約締結した加盟店は、当該契約を解約すること ができる。その際、本部事業者は解約に伴い発生した損害及び違約金を加盟店に 請求することはできない。 ウ 本部事業者が開示すべき事項であるが、以下のものがあげられる。 (ア) 本部事業者の氏名又は名称、住所及び常時使用する従業員の数並びに法人に あっては役員の役職名及び氏名 (イ) 本部事業者の資本金の額又は出資の総額及び主要株主(発行済株式の総数又 は出資の総額の100分の10以上の株式又は出資を自己又は他人の名義をも って所有している者をいう。)の氏名又は名称並びに他に事業を行っているとき は、その種類
17 (ウ) 本部事業者が、その総株主又は総社員の議決権の過半数に相当する議決権を 自己又は他人の名義をもって有している者の名称及び事業の種類 (エ) 本部事業者の直近の三事業年度の貸借対照表及び損益計算書又はこれらに代 わる書類 (オ) 本部事業者の当該事業の開始時期 (カ) 直近の三事業年度における加盟店の店舗の数の推移に関する事項 (キ) 直近の五事業年度において、本部事業者がフランチャイズ契約に関し、加盟 店又は加盟店であった者に対して提起した訴えの件数、及び加盟店又は加盟店 であった者から提起された訴えの件数、並びにそれぞれの訴訟の当事者名及び 事件番号、及び民事訴訟法第91条第1項に基づく訴訟記録の閲覧請求権の存 在 (ク) この法律で認められている範囲内の加盟店の店舗の営業時間並びに営業日、 及び定期又は不定期の休業日の規定と営業時間についての加盟店の自由裁量の 有無 (ケ) 本部事業者が、加盟店の店舗の周辺の地域において当該加盟店の店舗におけ る小売業と同一又はそれに類似した小売業を営む店舗を自ら営業し、又は当該 加盟店以外の者に営業させる旨の規定の有無及びその内容 (コ) 契約の期間中における他のフランチャイズ事業への加盟制限、類似事業への 就業制限その他加盟店の営業活動を禁止又は制限する規定の有無及びその内容 (サ) 契約の期間中又は契約の解除若しくは満了後、加盟店がフランチャイズ事業 について知り得た情報の開示を禁止又は制限する規定の有無及びその内容 (シ) 加盟店から定期的に金銭を徴収するときは、当該金銭に関する事項 (ス) 加盟店から定期に売上金の一部を送金させる場合にあっては、その時期及び 方法 (セ) 加盟店の店舗の構造又は内装について加盟店に特別の義務を課すときは、そ の内容
18 (ソ) フランチャイズ契約の申込みの撤回又は解除に関する事項 (タ) 本部事業者又は加盟店が契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他の 業務の内容 (チ) 経済情勢の変化に伴う契約見直し条件の有無 エ 本部事業者は開業後の加盟店の利益の見込に関する適格な情報を加盟希望者に 提供しなければならない。 ② 内容規制について ア 契約継続中における当事者の義務 (ア) 本部事業者は、契約締結時にフランチャイズ契約の書面(付随文書がある場 合はそれも含む)を加盟店に交付しなければならない。 (イ) 以下に該当する契約条項を本部事業者は加盟店に強要してはならない。 a. 本部事業者が優越的地位を利用して、加盟店の経営の自主性を著しく制約し、 あるいは加盟店に不利益を強制するおそれのある条項 b. 必要の限度を超えて加盟店に守秘義務及び競業避止義務を課す条項 c. 本部事業者の債務不履行及びフランチャイズ事業に関してなされた不法行為 により、加盟店に生じた損害を賠償する責任の全部又は一部を免除する条項 d. 紛争の解決手段としての裁判に際し、不当な専属管轄等の裁判の機会を不当 に制限する条項 (ウ) 前項の契約条項はこれを無効とする。 イ ロイヤルティ等の適正化 (ア) 本部事業者は、加盟店から徴収するロイヤルティの額、家賃、加盟店への商品 資材の販売価格、役務の対価等について、通常支払われる対価に比して、著しく 高額な対価を設定し、これを加盟店に強要してはならない。 (イ) 政令で定める業種については、ロイヤルティの上限率を定めることができる。 ウ 本部事業者の商圏確保について 本部事業者が、既存の加盟店の商圏を侵害する可能性のある新規出店(他の加盟
19 店及び直営店)を行う場合には、事前に既存の加盟店との間で協議を行うことを要 する。 エ 契約の解除及び契約の更新 (ア)加盟店は、契約締結の日から60日以内であれば、無条件で契約を将来にわた って解除することができる。 (イ)加盟店の経営責任の範囲を超えた経営環境の変化、重病等により、フランチャ イズ経営の継続が極めて困難である等、合理的な理由がある場合は、加盟店は契 約を解除することができる。 (ウ)前2項の場合、本部事業者は加盟店に対し、フランチャイズ契約の履行過程に おいて現実に生じた費用を超える違約金の請求その他の損害の賠償を加盟店に 対し請求することはできない。 (エ)本部事業者は、正当な理由なく、加盟店からの契約更新又は契約解除の申し出 を拒否してはならない。 (オ)本部事業者は、契約期間中、加盟店の重大な契約違反、その他信頼関係を破壊 した場合を除き、中途解約をすることはできない。 オ 契約終了後の守秘義務・競業避止義務について (ア) フランチャイズ契約終了後、本部事業者は加盟店に対して、合理的期間及び 範囲を超える守秘義務及び競業避止義務を負わせてはならない。 (イ) 前項に反する契約条項はこれを無効とする。 カ 紛争解決のための加盟店の集団交渉について 本 部事 業者 は、 加盟店 と の紛 争解 決に 当たり 、 当該 加盟 店が 同種営 業 を行 う他の加盟店と集団で交渉することを妨げてはならない。 4.不動産サブリース業の規制について(決議の趣旨3項) (1) 不動産サブリース業にまつわるトラブルと問題の所在 不動産サブリース業とは、不動産業者が、オーナーから建物を一括で借り上げ、テ
20 ナントに転貸して賃料を取得する事業を指す。同事業では、典型的には、サブリース 業者が建物を一括で借り上げて、オーナーに対して、テナントの有無にかかわらず一 括で賃料を支払う一方で、転貸人としてテナントに対する転貸や賃料請求を含めた建 物管理の全般を行うことが特色である。 一方で、この種の契約は、不動産業者が、遊休地を保有するオーナーに、賃貸アパ ート等の建築を勧めるための勧誘とセットで締結されることも多くみられる。すなわ ち、この遊休地に収益物件を建築すれば、自社ないし提携する関連会社において一括 借り上げしてサブリースするので、オーナーは、空室や家賃滞納といった賃料収入減 少のリスクを避け、安定した賃料収入が得ることができる、相続税対策にもなるとい った勧誘文言で契約を迫られることが多い。 しかるに、バブル崩壊以降、不動産価格と賃料相場の大幅な下落により、サブリー ス業者の多くが倒産したり、あるいは賃借人であるサブリース業者からオーナーに賃 料減額請求がなされるなどの係争が頻発した。この点、平成15年10月の最高裁判 決によって、不動産サブリースにも借地借家法第32条の賃料増減額請求が認められ る旨判示されたが、他方、具体的な増減額の認定においては、契約締結に至る事情を 考慮すべしとして、不動産業者による収益予測等も加味すべきである、とした裁判例 も存する。 ところが、近年の不動産サブリース契約では、バブル期の賃料増額特約や固定賃料 保証を改め、2年間程度ごとに契約期間を区切って、その更新において賃料の見直し を求めるなど、サブリース業者のリスク負担をオーナーに転嫁するような、賃貸人に 不利益な条項等が数多くみられる。そのため、長期間の賃料収入を保証するという勧 誘によって賃貸アパート等を建築しながら、当初収支計画が過大に見積られていたこ とにより、その後の賃料を大きく切り下げられ、建築時に設定した住宅ローンの返済 にも苦慮し、不動産を手放さざるを得ないなどの深刻なトラブル事例もみられるよう になった。サブリース業者は、賃貸不動産のプロであるのに対してオーナーは素人で あり、情報・交渉力の格差が明らかであるにもかかわらず、そのリスクがオーナー側
21 に押しつけられているのである。 (2) 賃貸住宅管理業との関係 不動産業者が、オーナーから委託を受けて、賃料収入の数パーセントの手数料を得 て、オーナーのテナント募集や賃貸借契約手続を仲介することは、宅地建物取引業法 上の媒介業に該当するが、これに加えて、オーナーから委託を受けて、テナントに対 する賃料請求や督促、契約終了時の原状回復や敷金の精算等の賃貸管理全般を行うサ ービスも行われてきた。いわゆる賃貸住宅管理業である。 この賃貸住宅管理業者が、賃貸住宅管理委託契約に基づいて、オーナーに代わって、 多くのテナントから賃料や敷金を預かりながら、経営破綻してしまうと、預かってい た賃料や敷金がオーナーに返還されないというトラブルが発生することになるが、サ ブリース業者の場合であっても全く同じ問題状況がみられる。 サブリース業者は、不動産賃貸業及び賃貸住宅管理業務に関する知識・経験が豊富 な専門業者であり、一般に賃貸業の経験も少ない一個人にすぎないオーナーに比して、 情報量・交渉力において圧倒的に勝る立場にある。にもかかわらず、不動産サブリー ス契約にも借地借家法の適用が認められる結果、このような「専門家としての賃借人」 (最高裁平成16年11月8日判決における滝井判事の補足意見)の方が保護される 反面、オーナーには、十分な保護が与えられない構造となっている。 (3) 国土交通省の取組 サブリース業及び賃貸住宅管理業は、宅地建物取引業(宅地建物の売買、交換、又 は宅地建物の売買・交換・貸借の代理若しくは媒介)に該当しないため、宅建業法の 適用がなく、現行法においては、何ら規制する法律がない。 このような状況下で、国土交通省は、平成23年9月30日付告示により、賃貸住 宅の管理業務の適正化を図るための「賃貸住宅管理業登録制度」を同年12月1日か ら施行することを発表した。賃貸住宅管理業務に関して一定のルールを設けることで、 借主と貸主の利益保護を図り、また登録業者を公表することによって、消費者が管理 業者や物件選択の判断材料として活用することが可能になるとしている。
22 確かに、「賃貸住宅管理業登録制度」では、受託管理型(貸主の委託をうけて管理業 務を行うもの)に加えて、サブリース型(貸主から賃借し、転貸人として管理業務を 行うもの)に対しても賃貸住宅管理業としての任意の登録を促し、登録業者に対して は、貸主に対する重要事項説明と書面交付、借主に対する重要事項説明と書面交付、 賃貸借契約の更新・終了時における書面交付や敷金精算額の書面交付等を義務づけ、 財産の分別管理、帳簿作成と保存を義務づけるとともに、断定的判断や重要事項の不 告知、不正行為を禁止し、誇大広告を禁止すること等を盛り込んだ登録規程及び業務 処理準則によって規制を行うことが予定されている。 (4) さらなる規制の必要性 しかしながら、国土交通省の予定している「賃貸住宅管理業登録制度」は、あくま で任意の登録制度に過ぎず、登録制度を利用しない賃貸住宅管理業者やサブリース業 者には何ら規制を及ぼすことができない。貸主や借主に対する重要事項説明ないし書 面交付の違反や各種行為規制の違反に対する罰則や制裁は予定されておらず、唯一、 賃貸住宅管理業登録規定に違反するなどした場合に、国土交通大臣が業務改善に関す る勧告や登録取消ができるというにとどまる。また、受領する家賃・敷金等の財産の 分別管理も法律上の規定でないために、現実の倒産が生じた場合に確実に保全される 保証はない。 そもそも、この制度は、あくまでも賃貸住宅管理業という業態に着目した規制にす ぎず、冒頭に紹介した建築請負の受注とセットになった提携サブリースに関するトラ ブルの予防・救済を想定したものではなく、極めて不十分な制度である。 (5) そこで、不動産サブリース業にまつわるトラブル防止のための抜本的対策として、 以下の内容を含む法規制を行う必要がある。 ① 管理主任者登録制度、営業保証金制度を含む義務的登録制度 宅建業法に倣い、宅地建物取引主任者制度と同様の有資格者の登録制度(同法 第15条)、及び、営業保証金制度(同法第25条)と同様の損害賠償責任の履行 を担保する制度が導入されるべきである。
23 ② 誇大広告の禁止 有利・優良誤認表示の禁止等の誇大広告を禁止する宅建業法第32条に倣った 広告規制も必要である。 ③ 貸主に対する重要事項説明及び転貸条件開示義務 サブリース業者が、貸主たるオーナー及び転借人に対して、宅建業法第35条 に倣った事前説明としての重要事項を説明する義務を負うべきは当然として、ト ラブル防止の観点からは、さらに、サブリース業者が転借人に転貸する際の契約 条件についても、オーナーたる貸主に対して情報を開示する義務を認める必要が ある。 ④ 不実告知・重要事項の不告知、断定的判断提供の禁止と違反時の取消権付与 宅建業法第35条に倣って、不実告知・重要事項の不告知、断定的判断提供が 禁止されるべきは当然として、さらに、消費者契約法第4条に倣って、これらに 違反した場合の取消権も認められるべきである。 ⑤ 預かり財産の確実かつ整然と分離保管する制度 商品先物取引業法第210条に倣って、受領する家賃・敷金等の財産の分別管 理を規定し、サブリース業者が倒産した場合にも確実に保全される倒産隔離の制 度を導入すべきである。 ⑥ 招請勧誘・不招請勧誘を問わない一定期間のクーリングオフ制度 宅建業法第37条の2及び特定商取引法に倣ったクーリングオフが認められる 必要がある。特に提携サブリースの場合、建築行為がなされた後の原状回復が極 めて困難であることに鑑み、勧誘態様が招請勧誘であると不招請勧誘であるとを 問わず、クーリングオフを認めるものとすべきである。 ⑦ 事業収支計画と現実の収支が齟齬した場合の差額を損害と推定する規定の導入 損害立証が困難であることに鑑み、サブリース業者が示した事業収支計画と現 実の収支が齟齬した場合の差額を損害と推定する旨の規定を置くべきである。 ⑧ 貸主からの解約・解除の制限禁止と契約終了時の転借人の保護
24 実際のサブリース契約においては、貸主からの解約・解除を制限するものが散 見されるが、貸主保護のため、かかる制限は禁止すべきである。また、契約終了 時には、3者間の関係からサブリース業者が離脱し、貸主と転借人との直接契約 になるが、その際、原賃貸借と転貸借の契約条件の齟齬等を理由として転借人が 害されることのないよう、サブリース業者の責任において、転借人を保護するた めの措置を義務づけるべきである。 ⑨ サブリース業者と一定の提携関係にある建築業者の連帯責任 提携サブリースにおけるサブリース業者と建築業者の提携関係に鑑み、損害を 与えた場合の賠償責任につき、両者に連帯責任を課すべきである。 5.特定商取引法・割賦販売法の改正について(決議の趣旨4項) 現行の特定商取引に関する法律・割賦販売法においては、消費者保護規定を営業行 為等については適用除外とする規定がいくつか存在する(特定商取引法第26条1項 1号・割賦販売法第8条・同法第35条の3の60「営業のため若しくは営業として 締結するもの」、特定商取引法第58条1項「事業所等によらないで行う個人に限る」 等)。 これら規定の背景には、「事業者は、自らの事業に関連した取引経験・専門知識が豊 富であり、損得勘定について俊敏で抜け目なく、たとえば時間の節約の観点や保険によ るリスク分散も図りながら事業全体としてのバランス・シートを考慮して当該取引をす るかどうかを選択するものであり、このような事業者にとって『保護』は逆に『足かせ』 であり、市場での取引機会を奪われる結果になりかねない」というような、ステレオタ イプな「事業者」のとらえ方があると思われる。 しかし、現実の事業者は、事業の規模も取引の習熟度も千差万別であり、事業者間で、 情報力・交渉力格差がないとは到底いえないし、かえって消費者保護法による救済がな いことを良いことに悪質業者の標的にされる中小事業者も見受けられる。 このような観点からすれば、事業者間取引であっても、特に一方当事者が他方当事者
25 に比較し、情報力や交渉力において構造的に劣位に立たざるを得ないような取引類型に おいては、劣位に立つ事業者に対して法的保護が考慮されなければならない。 そして、特定商取引法や割賦販売法は、まさに「一方当事者が他方当事者に比較し、 情報力や交渉力において構造的に劣位に立たざるを得ないような取引」を類型化したも のであると考えられる。そうであれば、これらの法律による保護は、同様の事情が存在 する場合には、事業者であっても基本的には与えられるべきである。 ところが、現実には、前述の適用除外規定の存在によって、本来保護されるべき者が 保護されない事例がみられる。平成17年12月の特定商取引法の通達改正によって、 「一見事業者名で契約を行っていても、事業用というよりも主として個人用・家庭用に 使用するためのものであった場合は、原則として同法が適用される。」こととなった。 判例にはこれを拡大して解釈するものもあるが、救済範囲は極めて限定的である。例え ば、電話機やOA機器、ホームページ等に関する「提携リース」トラブルが数多く発生 しているが(当該事業者の営業に直接関連するものではないものがリース契約として勧 誘される場合がほとんどである)、これらの事例では、特定商取引法の訪問販売に該当 するとされながら、特定商取引法第26条1項1号によって、「契約弱者」たる「事業 者」が保護対象から外されてしまう場合が生じているのである。 したがって、現行法における適用除外規定は、可能な限り制限的に解釈されるべき であり、具体的には、適用が除外される「営業」は、「当該事業者が既に開始しており、 その営業に直接関連するもの」に限定すべきである。しかしながら、法解釈による保護 では安定性が欠けるため、その趣旨を明確にするための法改正がなされるべきである。 以 上