• 検索結果がありません。

RC発振器の歪率の改善 利用統計を見る

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "RC発振器の歪率の改善 利用統計を見る"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

論   文

RC発振器の歪率の改善

橋口住久

(昭和50年8月29日受理)

Reduction of the Higher Harmonic Distortion

of the RC Oscillator

SumihisaHASHIGUCHI AbS.tract  Anew method to reduce the harmonic distortion of the RC oscillator is presented. The output signal of the RC oscillator is delayed byπ/ωand subtracted from the original signal so that the fundamental components are summed up and the second harmonic components are annihilated. The third harmonic components can also be reduced in a similar manner. The delay of the signal is performed utilizing a phase・10cked RC oscillator,  The total harmonic distortion of about O. OOOI%is obtained. は じ め に  一般に,発振回路には非線形要素が含まれているの で,発振出力は,高調波成分を含んでいる。RC発振 器では,非線形素子としてサーミスタを用いて,歪率 0.01%程度を比較的容易に実現することができる。  しかし,たとえぽ,ノッチ減衰量が100dBを越える ノッチフィルタの特性を測定する目的などには,この 程度の歪率では十分でなく,0.0001%(−120dB)の歪 率の信号源が必要である。市販の発振器では,0.001 %弱の歪率が実現されている。  歪率を改善する一つの方法は,フィルタを用いて高 調波成分を除去することである。この方法は,高次の 高調波に対しては有効であるが,2次,3次など,低 次の高調波に大きな減衰を与えることは,必ずしも容 易ではない。  ここでは,複数個の発振器を同期運転し,これらの 出力を組み合わせて2次,3次の高調波成分を除去す る方法について述べる。 同期差動方式 高調波成分を含む波形は,一般に, f(の=Σa。C・S(ntot+0。) (1) とかかれる。ここで,ア2は高調波次数,a,θはそれぞ れ,振幅,初期位相で,ともに時間によらない一定値 である。 f(t)をπ/ωだけ遅延させてf(り自身との差を作る と,n≧4を省略すれば,   9(t)i・f(t)・−f(t一㌃)     =2alcos(ω’十θ1)十2a3 cos(3ω『十θ3)   (2) となり,2次高調波を消去することができる。さら に,このg(のを2π/3ωだけ遅延させてg(の自身との差 を作ると,   h・(・)三9(t)・−9(t一嘉)     =3aicos(ωτ十θ])      (3) となって,3次高調波をも消去することができる。  上記の方法では,周波数によらず一定の遅延を与え るような素子が必要である。ここでは,同期された発 振器を遅延素子として用いる。  発振器を外部信号に同期させて動作させ,出力の基 本波と入力の基本波との間に一定の位相差をもたせる ことができる。入力に含まれる高調波成分の大きさが 小さけれぽ,出力に含まれる高調波成分は,その発振 器自身の歪特性のみによって決定され,入力の高調波 成分の影響を受けない。したがって,同期信号源の発 一44 一

(2)

RC発振器の歪率の改善 振器と,被同期発振器の特性が相似のものであれぽ, 基本波と高調波との間の振幅や初期位相の関係は,保 存されることになる。それゆえ,基本波を,たとえぽ, π/ωだけ遅延させれば,高調波成分も同じ時間だけ遅 延することになる。  各発振器のan,θ。が一致するとはかぎらないので, 差を作るときには,高調波成分が最小となるように, 遅延時間や振幅比を選ぶ必要がある。いま,2つの発 振器A,Bにおいて, ム(り=ΣαA。COS(ntot+θA。)    7ψ    fA(り=ΣaB。COS(ntet十θBn)       ’n       aA2<aB2 であれば, 9(t)・−fA (t)一B・(t−z!=’:rgA°t.2.+促・) (4) (5) (6) を作ることによって,2次高調波を消去することがで きる。3次高調波についても,同様に考えればよい。 供試発振器  図一1に実験に用いた発振器を示す。比較的容易に 安定な動作が得られるウィンブリッジ発振器を用い た。R,, R3による負帰還回路と, R, Cによる正帰還 回路で,ウィソブリッジを構成している。増幅器に は,741形汎用演算増幅器を用いた。R,には,振幅安 定用非線形素子として,サーミスタを用いている。発 振周波数は1kHzに選んだ。実験に使用した4個の発 振器の歪率を表一1に示す。  図一2は,この発振器の移相(遅延)素子としての 特性である。同期入力端子に8Vpp一定の電圧を加え, その周波数f,、を変えたときの入出力の位相差を示して いる。横軸は,自由発振周波数ffで正規化された入力 信号周波数fsである。  この図から,π,2π/3の遅延を生じるのは,fs/f∫ が,それぞれ1.00,1.06のときであることがわかる。        表一1        Table 1 Thermistor

CI

Output   図一1 供試発振器 Fig.1 RC Ocillator under test   0.95      1      1.05      Normalized Frequency fs/ff      図一2 発振器の移相特性 Fig.2 Phase Shift Characteristic of the Oscillator 同期差動運転  図一3は,同期差動運転のブロック図である。OSC 1 は,同期信号源で,周波数は1kHzである。 OSC2は, OSC 1とπの位相差をもたせるために, OSC 1と同じ自 由発振周波数をもつようにする。   同期差動方式による高調波歪の改善 Reduction of the Higher Harmonic Distortion 発  振  器  単  体 2次高調波消去 3次高調波消去

測 定 点 lA

B C

D

E F

G

自由発振周波数Hz

発振振幅VPP

1001 8、0 1001 8.2 948 8.1 1001 8.1 歪 率 % 2 3 4 5 次10.014

 1

次io・007 次  0.0015 次  0.0002 0.013 0.011 0.0015 0.0015 O.011 0.004 0.0008 0.0004 0.014 0.006 0.0008 0.0007 0.0004    0.0003 0.0065    0.0040 0.0006 0.0005 0.0008 0.0004 0.0001 0.0001 0.0008 0.0008

一45一

(3)

昭和5C年12月 山梨大学工学部研究報告 第26号 OSC 1 A    図一3 同期差動運転による高調波消去 Fig・3 Experimental Configuration for Higher Har−    monics Reduction  OSC3は, OSC 1と2π/3の位相差をもたせるために, 自由発振周波数を943Hzに選ぶ。 OSC4の自由発振周 波数はOSC 1と等しくして, OSC3(同期運転時には OSC 1の周波数で発振)とπの位相差をもつようにす る。  OSC 1とOSC 2の出力を差動増幅器に加えて,2次高 調波を消去する。OSC3とOSC4についても同様にす る。2つの差動増幅器の出力は,2π/3の位相差をもっ ている。これらをさらに差動増幅器に加えて3次高調 波を除去する。  差動増幅器は,741形汎用演算増幅器に負帰還をか けて,利得1として用いている。歪率は一130dB以下 である。 歪 率 測 定  歪率の測定は,ウィンブリッジと選択増幅器とを組 み合わせて行った。  一定振幅(1Vpp)の信号をウィソブリッジに加えて 基本波を約80dB減衰させ,その出力を,2∼5次高調 波を中心周波数とする狭帯増幅器で40∼50dB増幅し て,オシロスコープで観測する。  この方法の測定限界は,約一130dBである。 実 験 結 果  表一1に,同期差動運転による歪率の改善のようすを 示す。A∼Gは,図一3の測定点A∼Gに対応する。  A∼Dは,4個の発振器の個々の特性である。2次 高調波は0.01%程度,3次高調波は,2次と同程度か ら約1/3であり,4次,5次高調波は,1けた少ない。  E,Fは,2次高調波を除去した結果である。2次 高調波が,約1/30に減少している。3次高調波も,や や減少する。 OSC 1  図一4 同期差動運転の変形例 Fig.4 Simplified Version of Fig.3  Gは,E,Fから3次高調波を除去した結果である。 3次高調波は,約1/40に減少している。2次高調波も 1/3程度になっている。4次,5次高調波の方が,2 次,3次よりも大きくなっているが,これらは,単純 なRC低域フィルタを,たとえぽ, E, F, Gの各点 に挿入すれぽ,1/10程度に減少させることができる。  Eで,2次高調波を消去する際には,式(6)を満足す るようにするために,まず,被同期発振器OSC2の自 由発振周波数を変えることによって位相差を調整して 2次高調波の極小点を求め,つぎに,歪率の大きい方 の発振器OSC 1から差動増幅器への入力を次第に減少 させて2次高調波を最小にする。  これらの操作が完全であれば,2次高調波を零にす ることができるが,歪率測定器の測定限界が一130dB であることや,残留雑音があることなどから,極小 点,最小点に完全に合わせることは困難である。  最終結果Gの2次,3次歪率は測定限界に近く,残 留雑音レベルとほぼ同じである。 お わ り に  同期差動方式とよぶ方法を用いて,RC発振器の2 次,3次高調波歪率を一120dB以下にすることができ ることがわかった。さらに,簡単なRCフィルタを付 け加えることによって,−120dB以下の全高調波歪率 も実現できよう。  この方式は,4個の発振器が同じような歪特性をも てば,その形式によらず,いかなるRC発振器につい ても応用できる。  この方式では,2つの発振器の位相差を最適値に保 つことが必要であるので,温度変化の影響を受けない ように考慮しなければならない。

一46一

(4)

RC発振器の歪率の改善  なお,図一3では3個の差動増幅器を用いているが, 図一3のGにおいて得られる出力は,{(OSC 1)+(OS C3)}一{(OSC2)+(OSC4)}であるので,これを,図一4 のように1個にまとめることもできる。  謝 辞  発振器の試作,測定に協力された天野智行氏,片岡 太一氏,中込清氏,歪率測定器を試作された久保田一 氏に感謝する。

一47一

参照

関連したドキュメント

医師の臨床研修については、医療法等の一部を改正する法律(平成 12 年法律第 141 号。以下 「改正法」という。 )による医師法(昭和 23

関東総合通信局 東京電機大学 工学部電気電子工学科 電気通信システム 昭和62年3月以降

土肥一雄は明治39年4月1日に生まれ 3) 、関西

A Historical Study of Playing Basketball on the Itabari Court“A Japanese Wooden Court for Playing Outdoors” (the Taisho Era to the Early Showa Era).. 及 川 佑 介 Yusuke

水道施設(水道法(昭和 32 年法律第 177 号)第 3 条第 8 項に規定するものをい う。)、工業用水道施設(工業用水道事業法(昭和 33 年法律第 84 号)第

「二酸化窒素に係る環境基準について」(昭和 53 年、環境庁告示第 38 号)に規定する方法のう ちオゾンを用いる化学発光法に基づく自動測

令和元年 12 月4日に公布された、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及 び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第

c・昭和37(1962)年5月25曰,東京,曰比谷公会堂で開かれた参院選の