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人権侵害・人権相談の現状と人権相談機関の課題--職場におけるハラスメントの克服を含めて

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Academic year: 2021

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(1)/ 人権侵害 ・人権相 談の現状 と人権 相談機関の課題. 人 権 侵 害 ・人 権 相 談 の現 状 と人 権 相 談 機 関 の 課 題 一職場 にお けるハ ラス メ ン トの克服 を含 あて 一. 北. (1)は. 口. 末. 広. じめ に. ①人権侵 害事象 の背景 を明確 に. 差別 や人 権 侵 害 を克 服 し、 被 害 者 を救 済 す る と き、 社 会 の人 権 状 況 を正 確 に捉 え な けれ ば な らな い。 現 実 に発 生 して い る人 権 侵 害 事 象 を詳 細 に分 析 し、 そ こか ら導 き出 され る人 権 侵 害 事 象 の背 景 を も明 らか に し、 課 題 を明 確 に す る必 要 が あ る。 人権 相 談 を解 決 す る た め に は、 問題 に な って い る事 柄 を ど こま で深 く掘 り下 げ る こ とが で きる か に か か って い る。 医 師 が患 者 の病 状 を 的確 に把 握 し、 痛 み等 の症 状 を な くす た め に は、 痛 み の原 因 ・背 景 を正 し く捉 え、 そ の痛 み の原 因 で あ る患 部 を 治 療 しな け れ ば な らな い よ うに、 相 談 者 の相 談 内容 か らそ の原 因 ・背 景 を把 握 し、 そ れ らを ター ゲ ッ トに した解 決 方 策 や社 会 シス テ ム を創 造 して い く必 要 が あ る。 そ の原 点 が人 権 相 談 で あ る。. ②人権相談か ら政策提言を. 人 権 相 談 ・救 済 機 関 に人 権 侵 害 等 を受 け て相 談 に来 られ る人 が 、 そ の原 因 や 背 景 を正 確 に理 解 して い る と は限 らな い。 それ らの原 因 ・背 景 を 正 確 に捉 え 、 解 決 に導 くの も人 権 相 談 ・救 済 機 関 の役 割 で あ る。 ま た、 多 くの 人 権 侵 害 事 象 を で き る限 り 速 や か に解 決 へ 導 け る社 会 シス テ ム を創 造 す る た あの 政 策 提 言 を行 な うの も人 権相 談 ・救 済 機 関 の役 割 で あ る。 一1一.

(2) 、. 人権問題研究資料. 第19号. っ ま り、 人 権 相 談 ・救 済 機 関 の重 要 な役 割 の一 つ に人 権 相 談 事 例 や 人 権 侵 害 事 例 全 般 か ら見 え る問 題 点 や 背 景 を分 析 し、 それ らの 事 例 を で き る限 り速 や か に解 決 で き る社 会 シス テ ムへ の 政 策 提 言 が 必 要 なの で あ る。 「なぜ 人権 侵 害 事 象 が 深 刻 な状 態 まで 放 置 され て しま った の か 」、 「なぜ ス ムー ズ に解 決 で き なか っ たの か 」 等 を 掘 り下 げて い くこ と によ って、 原 因 が 究 明 され、 的 確 な対 処 が 可 能 に な る と いえ る。 そ う した視 点 に立 って、 今 日の 人権 相 談 を分 析 し て い くと い くっ か の キ ー ワ ー ドが 浮 か び上 が って く るが、 そ の重 要 な点 は深 刻 な問 題 の被 害 者 が 多 面 的 な 弱 者 で あ る とい う こ とで あ る。. ③ 一 つ の事 件 ・相 談 を掘 り下 げ る重 要 性. 現 実 の 人権 相談 は多 くの こ とを物 語 る。 事 件 を通 じて歴 史 は変 わ る とい わ れ る よ う に多 くの 事件 や相 談 は時代 を 映 す鏡 で あ り、 人 間 社 会 の営 み で あ る歴 史 を反 映 し て い る。 一 っ の相 談 が途 方 もな く大 きな背 景 を持 っ こ と もあ り、 一 っ の事 件 が 世 の中 を 大 き く変 え る こ と もあ る。 多 くの事 件 ・相 談 は国 際 社 会 と結 びっ いて い る こと も少 な くな い。 一 っ の事 件 が国 際 人 権 諸 条 約 と関 連 し、 一 っ の 相 談 が 国 際 機 関 の機 能 と結 び っ いて い る こ とす ら存 在 す る。 一 っ の事 件 ・相 談 か ら社 会 の矛 盾 や 問 題 点 を 発 見 す る能 力 は人 権 機 関 に求 あ られ る最 も重 要 な能 力 で あ る。 事件 ・相 談 へ の分 析 力 が問 題 の本 質 に迫 れ るか ど うか の 鍵 で あ る。 深 い分 析 力 が 取 り組 み に深 み を持 たせ 、 問 題 解 決 の政 策 立 案 に も反 映 し、 構 造 的 な問 題 に迫 れ る か ど うか に も直結 す る。 一 っ の相 談 か ら社 会 の多 くの矛 盾 が 見 え る こ と も少 な くな い。 事 件 や 相 談 は海 面 上 に少 しだ け姿 を あ らわ す 流 氷 の よ うな もの で 多 くの 見 え な い部 分 を 持 っ。 現 実 の 事 件 や相 談 は、 流 氷 以 上 に表 面 に 出て い る部 分 が 少 な く、 多 種 多 様 な 社 会 的 ・歴 史 的背 景 を持 っ。 一2一.

(3) 人権侵 害 ・人権相 談の現状 と人権相談機関の課題 そ れ らの 事 件 や 相談 と して 現 れ る社 会 現 象 の 背景 を追 求 す る力 が 、 事 件 や 相 談 の 根 源 的解 決 の度 合 い を決 定 付 け る。 但 し、 背 景 を追 求 す る力量 が あ って も、 そ の 背 景 を 克服 す る こ とは容 易 で はな い場 合 が 多 く、 柔 軟 な政 策 立 案 と粘 り強 い 取 り組 み が求 め られ る。. ④対症療法 的手法 も重要. しか し、 事 件 や相 談 に対 応 す る場 合 、 根 源 的解 決 が す ぐに で き る わ け で はな く、 具 体 的 な個 々 の事 件 や相 談 を解 決 す る た め の対 症 療 法 的 手 法 も強 く求 め られ る。 こ の対 症 療 法 を根 治 療 法 で は な い と い って軽 視 す る人 が い るが 、 こ れ は大 きな過 ち で あ る。 対 症 療 法 を軽 視 す る人 に根 治 療 法 は十 分 に で き な い。 対 症 療 法 と根 治 療 法 は一 体 の もの で あ り、 対 症 療 法 を行 な うこ と に よ って 根 治 療 法 が 発 見 され る場 合 も少 な く な い。 あ る面 で は対 症 療 法 も事 件 や相 談 を解 決 す る た め の根 治 療 法 の一 部 で あ る と い え る。 具 体 的 な問 題 を前 に して 、 一 般 論 や 根 源 的 解 決 の 重 要 性 だ けを 語 り、 具 体 的 な問 題 の解 決 方 策 を示 さ な い人 が い るが 、 それ で は根 源 的 解 決 を 推 進 す る こ と はで き な い。 根 源 的 解 決 を真 に推 進 す る ため に は、 常 に具 体 的 な 問 題 解 決 と セ ッ トで な けれ ば な らな い。 そ うで な けれ ば机 上 の 空 論 に な って しま い、 具体 的 問 題 の 解 決 を 遠 ざ け、 結 果 と して 根 源 的 解 決 を も時 代 の 彼 方 に や って し ま う こ と に な る。 「方 針 は現 実 か ら与 え られ る」 こ とを 事 件 ・相 談 へ の 取 り組 み の場 合 に も決 して 忘 れ て は な ら !. な い。. (2)あ. ら ゆ るハ ラ ス メ ン トを な くす た め に. ① ハ ラス メ ン トはセ ク ハ ラ だ けで は な い {. 一$一.

(4) 人権問題研究資料. 第19号. 以 上 の 諸 点 を踏 まえ っ っ 、 まず は じあ に職 場 等 に お い て頻 発 して い るハ ラス メ ン トに関 す る相 談 事 例 か ら見 え て くる現 状 と課 題 にっ いて 、 考 察 して お きた い。 閉 塞 した時 代 状 況 の 中 で 職 場 等 にお いて 、 さ ま ざ ま なハ ラ ス メ ン トが 横 行 して い る。 人 権 尊 重 と は正 反 対 の 動 きで あ る。 職 場 にお け るハ ラ ス メ ン トと い った 場 合 、 最 も関 心 が あ るの は セ ク シ ャル ・ハ ラ ス メ ン トで あ るが 、 ハ ラ ス メ ン ト(嫌 が らせ)は セ クハ ラだ けで はな い。 セ クハ ラ の 問 題 も非 常 に重 要 な 問 題 で あ るが 、 そ の 他 の ハ ラ ス メ ン トもそ れ に劣 らず 重 要 な 問 題 で あ る。 セ クハ ラの場 合 は、 改 正 男女 雇用 均 等 法21条. で 「事 業 主 の セ クハ ラ. 防 止 の 配 慮義 務 」 が規 定 され て い るが、 そ の他 の ハ ラス メ ン トは特 別 に法 律 で規 定 され て い る もの は な い。 職 場 で の い じめ が原 因 で会 社 を辞 あ た の な ら民 事 上 の損 害 賠 償 請 求 を す る ことが 可 能 で あ るが 、 「い じめ」 や 「嫌 が らせ 」 を 防止 す る た あ の特 別 の 法 律 はな く、 欧 州 の よ うに立 法 化 しよ う と い う動 き もな い 。 これ らの こ と も一 因 だ が 、 職 場 で の 「い じめ 」 や 「嫌 が らせ 」 が 後 を 絶 た ず 、 職場 環 境 を 悪 化 させ て い る現 場 も多 い。 これ らの 問題 はハ ラス メ ン トを受 け て い る職 員 だ け の問 題 で は な く、 そ の他 の職 員 に も悪 影 響 を与 え、 企 業 や組 織 に と って も大 き な マ イ ナ ス に な る。 職 場 環 境 の悪 化 は セ クハ ラと同 様 、 職 場 全 体 の力 量 を大 き く低 下 させ 、 職 員 、 組 織 に大 きな 負 担 を強 い る。. ② 職 場 にお け るハ ラ スメ ン ト. 職 場 にお け る い じあ は、 私 た ちが 考 え る以 上 に深 刻 な 問 題 で あ り、 い じめ に よ る 損 失 は労 働 者 だ けで はな く企 業 に と って も非 常 に大 きい とい え る。 近 年 、 和 製 英 語 で あ るが 、 「パ ワハ ラ」 い わ ゆ る 「パ ワー ハ ラ ス メ ン ト」 と い う 言 葉 が よ く使 わ れ る。 これ は簡 単 に言 え ば上 司 に よ る嫌 が らせ の こ とで、 上 司 か ら 仕 事 上 で 理 不 尽 な 扱 い を され 、 人格 を 否定 され るよ うな言 葉 を浴 び せ られ る こと で 一4一.

(5) 人権侵害 ・人権相談の現状 と人権相談機関 の課題 あ る。 上 司 が 部 下 に言 葉 や態 度 に よ る暴 力 を振 る った り、 で き も しな い こと を執 拗 に要 求 した り して精 神 的 に苦 痛 を与 え る こ とで あ り、 許 され な い もの で あ る こと は 言 う ま で もな い。 と き に は上 司 と部 下(あ. る い は部 下 の集 団)の 立 場 が 逆 転 して い る場 合 もあ るが 、. ほ とん ど の場 合 、 上 司 か ら部 下 で あ る。 パ ワ ーハ ラ ス メ ン トの定 義 を よ り厳 密 に行 な う とす れ ば、 ① 職 権 や ポ ス ト等 の力 を背 景 に して 、 ② 本 来 の仕 事 や 業 務 の範 疇 を超 え て 、 ③ 労 働 者 の意 に反 す る、 ④ 継 続 的 あ る い は計 画 的 に人 格 や 人 権 を侵 害 す る不 当 な言 動 を 行 い、 ⑤ 心 身 に損 傷 を与 え 労 働 者 の就 業 環 境 を 悪 化 させ る、 ⑥ あ る い は雇 用 不 安 を 与 え る こ と、 ⑦ そ して職 場 全 体 の雰 囲 気 を悪 化 させ る こ と、 と い う こ と に な る。 表 面 上 は指 導 育 成 や 業 務 上 の命 令 と い う形 態 を 取 って い る たあ 、 パ ワハ ラが 行 わ れ て いて も表 面 化 しに く く、 パ ワハ ラ を受 けて い る部下 の精 神 的 苦 痛 が ピー ク に達 す る まで 問 題 が 明 らか に な ら な い こ とが ほ とん どだ とい え る。 表 に現 れ た と き に は 問 題 が か な り悪 化 して い る。 目的 が 指 導 育 成 で はな く部 下 に精 神 的 苦痛 を与 え る こ と にな って お り、 パ ワハ ラ を 行 って い る側 は主 観 的 に は指 導 育 成 の っ も りで も、 客 観 的 に は明確 にパ ワハ ラで あ る と い う こ と も珍 し くな い。 あ る面 で は、 指 導 育 成 とい じめ ・パ ワハ ラ は紙 一 重 で あ り、 上 司 と部 下 の両 者 の 関 係性 もパ ワハ ラの判 断基 準 に大 きな影 響 を与 え る。 最 近 で は、 不 況 によ る経 営 悪 化 と雇用 不 安 の 中 で、 リス トラで解 雇 され るの で は な いか と い う焦 りが 問題 を よ り一 層 複 雑 に して い る。 本 来 な ら今 日の よ うな厳 しい 経 営 環 境 の 時 こそ パ ワハ ラや い じめ の な い職 場 環 境 を創 出 し、 職 員 の力 を十 二 分 に 発 揮 で き る よ うな状 況 を作 る こ とが重 要 だ とい え るが、 現 実 は逆 の場 合 が 多 い。. ③具体的相談事例 か ら. ネ ッ ト上 に紹 介 され て い る具 体 的 なパ ワハ ラ相 談 事 例 の20代 の 男 性 の 場 合 、 「上 一5一.

(6) 人権問題研究資料. 第19号. 司 に質 問 を す る と 『教 え るの に時 間 が か か って 仕 事 に な らな い』 と怒 鳴 る。 半 年 嫌 が らせ を され 耳 鳴 り と不 眠 に な った」、20代 の女 性 の 場 合 、 「セ クハ ラ を受 け た た め上 司 に注意 す る と仕 事 が与 え られ な くな っ た。 そ の後 『早 く辞 め れ ば 』 な ど と言 わ れ セ クハ ラが パ ワハ ラ にな った」。 30代 男 性 の ケ ー ス で は、 「上 司 に営 業 報 告 を す る と 『本 当 に行 った の か』 と疑 わ れ、 同僚 の前 で一 っ一 っ確 認 させ られ た」、 「手 が けて い た仕 事 の フ ァイ ル が休 暇後 、 上 司 の と こ ろ に。 『も う出 て こ な い の か と思 って 』 と上 司 に言 わ れ 、 うっ 病 で通 院 して い る」、40代 の ケ ー スで は 「短 期 で仕 上 げ な けれ ば な らな い仕 事 が 続 い て限 界 だ。 常 に だ る くボ ー と して仕 事 に集 中 で きな い。 軽 い うつ状 態 と診 断 され、 休 み を 申請 して も、 上 司 は 『気 合 いが 入 って い な い』 と認 め て くれ な い」 等 々 とな って い る。 逆 に、 パ ワハ ラを行 って い る40代 の 男 性 も悩 ん で い る。 「なぜ 部 下 にパ ワハ ラを は た らい て しま うのか 悩 ん で い る。 叱 責 して もス トレスが た ま る ばか りで 何 も解 決 しな い の に ・ ・」 と い った事 例 も存 在 して い る。 この よ うな具 体 的 事 例 を正 確 に把 握 す る ことが 職 場 に お け る セ クハ ラや パ ワハ ラ、 そ の他 のハ ラス メ ン トを克 服 して い く出発 点 で あ る。. ④ ハ ラ ス メ ン トの 結 果 生 じる こ と. 職 場 に お け るハ ラス メン トの結 果 は先 に も述 べ た よ うに個 人 だ けで はな く、 企 業 に と って も大 きな マ イ ナ ス の影 響 を与 え る。 ハ ラス メ ン トや い じめ 被 害 者 個 人 に と って 、 そ の結 果 は非 常 に深 刻 で あ る。 ス ト レス、 うっ 病 、 自尊 心 の 低 下 、 自 己非 難 、 恐 怖 症 、 不 眠 、 消 化 器 系 お よ び 筋骨 格 系 障 害 とい った身 体 的 ・精 神 的 な症 状 や 心 身 相 関 の 症 状 が 現 出 し、 心 的 外傷 後 ス トレ ス障 害 に な った りす る場 合 もあ る。 一 つ 一 っ の 症 状 が 犠 牲 者 に大 きな 負担 を 強 い る こ と に な る。 一6一.

(7) 人権侵害 ・人権相談の現状 と人権相談機関の課題 今 日、 うつ 病 で悩 む30代 、40代 は増 加 傾 向 に あ り、 悪 化 す れ ば 最 悪 の 事 態 に も な りか ね な い 。 当 事 者 にな って み な けれ ば そ の 苦 しみ は なか なか 理 解 で き な い。 職 場 に よ って はハ ラ ス メ ン トの 被 害 者 だ けで な く加 害 者 も精 神 的 に追 いっ め られ た状 況 で あ る とい う場 合 も少 な くな い 。 さ ら に、 精 神 的 な 問 題 が 身 体 的 な多 くの 問 題 を 引 き起 こ して い る。 以 上 の よ うな 症 状 が 、 休 職 や 解 雇 によ る社 会 的 孤 立 、 家 族 問 題 、 経 済 問 題 な どの 重 大 な 問 題 に発 展 す る可 能 性 もあ る。. ⑤ 企 業 に お ける マ イ ナ ス 面. また 、 企 業 レベ ル で は、 い じめ の結 果、 欠勤 率 ・離 職 率 の 上 昇 を 指 摘 す る こ とが で き る。 ハ ラス メ ン トが 横 行 して い る職 場 で は一 つ の 企 業 で あ って も、 そ の職 場 だ け欠 勤 率 や 離 職 率 が 高 い とい う こ と もあ る。 離 職 率 や 欠勤 率 が 高 い の はハ ラス メ ン トだ けが 原 因 で はな く、 職務 内容 や勤 務 条 件 等 も大 き く影 響 す るが、 職 務 内容 や勤 務 条 件 が ほぼ 同 じで特 定 の職 場 だ け に欠 勤 率 や離 職 率 の高 さが み られ る場 合 、 そ の 職 場 の い じあ や ハ ラス メ ン トが原 因 で あ る こ とが少 な くな い。 職 場 に お け るハ ラス メ ン トは効 率 や生 産 性 の低 下 な ど に つ な が る場 合 も多 々 あ り、 い じめ や ハ ラス メ ン トの犠 牲 者 だ け で な く、 労 働 環 境 に お け る マ イ ナ ス の心 理 社 会 的 環 境 に 苦 しむ ほか の 同僚 に もあ て は ま る。 い じめ や ハ ラス メ ン トか ら生 じる法 的 ダ メー ジ も高 く、民 事 上 の訴 訟 を提 起 さ れ た り、 時 に は刑 事 事 件 に発 展 す る こと も あ る。 そ れ だ けで は な く訴 訟 等 が提 起 さ れ る こと に よ って、 企 業 イ メ ー ジが大 き く 傷 つ く。. ⑥ ハ ラ ス メ ン トを 防止 す る た め に. そ れ で は職 場 に お け る ハ ラス メ ン トを ど の よ うに防 止 す れ ば よ い のか 。 欧 州 安 全 一7一.

(8) 人権問題研 究資料. 第19号. 衛 生 機 構 が 示 して い る内 容 を ふ まえ 解 説 して い き た い。 い じあ や ハ ラ ス メ ン トに反 対 す る規 範 と価 値 観 を も っ た企 業 文 化 を 醸 成 す る こ と は当 然 の こ とで あ るが、 ま ず 第 一 に、 全 員 が 「い じめ 」 ・ 「ハ ラ ス メ ン ト」 と は何 か を 認 識 す る こ とが重 要 な こ とだ とい え る。 例 え ば 「差 別 は い けな い 」 と い った 場 合 、 何 が 差 別 にあ た るの か 、 差 別 の 基 準 が 重 要 で あ るが 、 ハ ラ ス メ ン トも同 様 で あ る。 第 二 に、 現 状 の正 確 な 把 握 が 重 要 で あ り、 そ れ が あ らゆ る取 り組 み の 原 点 で あ る。 職 場 の ど こで 、 どの よ うな ハ ラ ス メ ン トが 行 わ れ て い るの か を 正 確 に 把 握 す る こ と な く して ハ ラス メ ン トの 防 止 はで きな い。 そ して 、 そ れ らの現 状 を も とに 第三 に、 明確 な 方針 を 策定 す る こ とで あ り、 そ の 中 に次 の よ うな点 を 明確 に す る こ とで あ る。 ① い じめ の な い環 境 を育 成 しよ う とす る、 事 業 者 お よ び従 業 員 の倫 理 的責 任 を 明確 にす る こ と。 ② 容 認 で き る行 為 とで きな い行 為 の概 要 を示 す こ と。 ③ 組 織 の規 範 と価 値 観 を侵 した場 合 の結 果 、 お よ び制 裁 措 置 を 明記 す る こと。 ④ 被 害者 が 支援 を受 け られ る場 所 と方 法 を示 す こ と。 ⑤ 「報 復 の な い」 苦 情 を確 実 に保 障 す る取 り組 み を展 開 す る こと。 ⑥ 苦 情 申 し立 て の手 順 を説 明 す る こ と。 ⑦ 管 理 職 、 上 司、 窓 口 とな る同僚 、 支 援 す る 同僚 の役 割 を明 確 にす る こ と。 ⑧ 犠 牲 者 と加 害 者 が利 用 で きる カ ウ ンセ リング お よ び支 援 サ ー ビス の詳 細 を明 らか にす る こ と。 ⑨ プ ライ バ シー保 護 及 び機 密 性 を保 持 す る こ と。 以上 の諸 点 を 明確 に した方 針 と と もに、 第 四 に、 従 業 員 マ ニ ュ ア ル、 社 内報 な ど を 通 じて、 組 織 の全 レベ ル に組 織 の規 範 と価 値 観 を効 果 的 に普 及 させ る こ と。 い く ら立 派 な ハ ラス メ ン ト防止 指 針 が あ った と して も、 それ らを従 業 員 が 知 らな けれ ば あ ま り意 味 が な い。 一8一.

(9) 人権侵 害 ・人権相談 の現状 と人権相談機 関の課題 第 五 に、 全 従 業 員 が 組 織 の規 範 と価 値 観 を確 実 に知 って い る と と もに、 遵 守 す る よ うに す る こ と。 第 六 に、 対 立 と コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの処 理 能 力 を改 善 す る こ と。 これ らの能 力 を 身 にっ け る こ とが ハ ラス メ ン トの防 止 に も大 き く役 立 っ。 相 手 を攻 撃 す る こ とな く、 自分 の 見解 を 相 手 に伝 え るア サ ー テイヴ ネ ス の能 力 は、 よ りよ い職 場 環 境 を作 る た あ に も大 切 な こ とで あ る。 第 七 に、 従 業 員 の た あ に独 立 した連 絡 先 を設 け る こ と も重 要 で あ る。 問 題 は必 ず 発 生 す る とい う前 提 で 考 え れ ば、 問 題 を早 期 に解 決 す る た あ に も独 立 した連 絡 先 を 設 置 す る こ とは非 常 に重 要 で あ り、 問 題 の早 期 発 見 、 早 期 治 療 につ なが る。 これ らを踏 まえ た上 で 、 職 場 の 点 検 が 必 要 で あ り、 企 業 を含 め た事 業 体 が 人 権 文 化 を築 いて い く出 発 点 で あ る と いえ る。. (3)人. 権相談事例全般から見えてきた問題点 と課題. ①被害者 は多面的な 「弱者」. 以 上 の よ う な職 場 にお け るハ ラス メ ン トを は じあ 、 今 日の 多 種 多 様 な人 権 相 談 事 例 等 の 深 刻 な問 題 に は、 い くっ か の キ ー ワ ー ドが 存 在 す る。 そ れ は 「弱 者 」、 「閉 鎖 的 空 間 」、 「心 の 問 題 」 等 で あ る。 人 権 侵 害 は多 種 多 様 で あ るが 、 よ り深 刻 な 問 題 にな る ほ ど被 害 者 は多 面 的 な 「弱 者 」 で あ る。 古 くて 新 しい問 題 提 起 で あ るが 、 そ こ に今 日の 人 権 侵 害 事 象 を 克 服 す る 「鍵 」 が あ る と いえ る。 「弱 者 」 とい う言 い方 を好 ま な い 人 も い るが 、 「社 会 的 に 弱 い 立 場 の者 」 とい う 意 味 で 、 こ こで はあ え て 使 う こ とに す る。 深 刻 な 人 権 侵 害 事 例 を 数 多 く分 析 す れ ば 、 よ り一 層 そ れ らの 事 実 が 明 確 にな る。. 一9一.

(10) 人権問題 研究資料. 第19号. ② 被 害 を 深 刻 に して い る原 因. 「被 差 別者 」 イ コー ル 「弱者 」 とい う単純 な捉 え方 は必 ず し も正 し くな い が、 多 くの面 で 重 な って い る。 例 え ば 、DVに. 苦 しむ女 性 、 近 親 者 か らの暴 行 や ネ グ レク トで病 ん で い く子 ど も、. 介護 施 設 や 家 族 内 で虐 待 を受 け る高 齢 者 や 障害 者 、 不 当 な労 働 条 件 で働 か さ れ て い る外 国 人 労 働 者 等 、 多 くの事 例 を並 べ る こ とが で き る。 こ の よ う に多 くの 社 会 的 「弱 者 」 が 人 権 侵 害 事 象 の被 害 者 で あ るが 、 そ れ らの 問 題 が 改 善 す る兆 しは なか な か 見 え て こな い。 な ぜ な ら、 被 害 者 が 多 面 的 な社 会 的 「弱 者 」 だ か らで あ り、 そ の こ と に よ っ て問 題 解 決 を よ り一 層 困 難 に して い るか らで あ る。 今 日、 そ れ らを克 服 す る社 会 シス テ ム や人 権 相 談 ・救 済 機 関 が 求 あ られ て い る の で あ る。. ③人権侵害事象が通報 ・把握 されな い問題点. 社 会 的 な 「弱 者 」 は、 一 般 的 に も多 くの面 で 「弱 者 」 で あ る。 こ こで い う多 面 的 「弱 者 」 と は、 肉体 的 、 精 神 的 、 政 治 的、 経 済 的 、 情 報 的、 教 育 的 等 の 「弱 者 」 の こと で あ る。 これ らの多 面 的 な問 題 点 が 人 権 侵 害 事 象 の 被 害者 を生 み 出 し、 問題 解 決 を困 難 に して い る ので あ る。 人 権 侵 害 事 象 が 解 決 に向 けて 取 り組 まれ る出 発点 は、 人権 侵 害 事 象 の認 知 か らで あ る が、 「閉 鎖 的空 聞 」 と い うキ ー ワー ドと も相 ま って 、 人 権 侵 害 事 象 が 発 生 して い る とい う事 実 が 通 報 ・把 握 され な い こ と で あ る。 「知 られ な い 人 権 問 題 は解 決 さ れ な い」 とい う言 葉 が あ るが 、 「知 られ な い人 権 侵 害 事 象 」 は統 計 数 字 にす ら掲 載 され な い。 明 らか にな って いな い無数 の 人権 侵 害事 象 が存 在 して い る。 っ ま り、 被 害 者 が情 報 的 ・教 育 的 「弱者 」 で あ る こ とに よ って、 最 悪 の場 合 、 自 身 が 置 か れ て い る状 態 が 人権 侵 害状 態 で あ る と認 識 され ず、 日常 的 な人 権 侵 害 が 継 一10一.

(11) 人権 侵害 ・人権相談の現状 と人権相談機 関の課題 続 され る こ とに な る。 これ らの 人権 侵 害 が顕 在 化 す る こ と は ほ とん どな い。. ④ 信 頼 と 明確 な ガ イ ドラ イ ンの必 要 性. この よ うな状 態 が 継 続 さ れ る原 因 は、 人 権 侵 害 事 象 の被 害 者 だ け で な く、 人 権 相 談 ・救 済 機 関 に もあ る。 これ らの機 関 が 人 権 相 談 ・救 済 機 関 と して信 頼 さ れ て い な け れ ば、 多 くの市 民 は相 談 に も来 な い。 2000年 に行 わ れ た大 阪 府 の部 落 問 題 実 態 調 査 の 中 の 「同 和 地 区 内 意 識 調 査 」 で は、 「差 別 を受 け た後 、 ど の よ うに対 処 した か」 とい う質 問 に対 し、 「行 政(人 権 擁 護 委 員 等 を含 む)に 相 談(連 絡)し. た」 と 回答 した 人 が1.2%に. 止 ま って お り、 百. 人 に一 人 強 しか 公 的 機 関 に相 談(連 絡)し て い な い。 部 落 差 別 を受 け た被 害 者 で あ る部 落 出 身 者 の …%が. 、 公 的 機 関 に対 処 ・救 済 を求 め て い な い こ とが 分 か る。. っ ま り、 これ まで の 人 権 相 談 ・救 済 機 関 が 部 落 出 身 者 か ら ほ とん ど信 頼 され て い な い と い う こ とで あ り、 これ が 部 落 差 別 以 外 の 分野 で も最 も深 刻 な 問 題 で あ る とい え る。 米 国 の 人権 救済 機 関 の一 っ が物 語 るよ うに、 実 効 的 な救 済 機 関 が で きれ ば持 ち込 まれ る人権 侵 害 事 案 は飛 躍 的 に増 加 す る。 米 国 の雇 用 機 会 均 等 委 員 会(EEOC) の セ クハ ラ事 案 の取 り扱 い が、 ガ イ ドライ ンの 明確 化 等 と と もに飛 躍 的 に増 加 して い る こ とを考 え る な ら、 日本 で も同様 の状 況 が考 え られ る。 米 国 の セ クハ ラの被 害 者 は、EEOCに. 救 済 を求 め た後 、 民 事 訴 訟 を起 こす こ と. が で きる よ うに な って い る が、1991年 で6883件 EEOCが. 、1996年 で15889件. セ クハ ラ の ガ イ ドラ イ ンを発 表 した の は1980年. と な っ て い る。. 、 そ の ガ イ ドラ イ ンが. 法 的禁 止 の レベ ル に な っ た の が、1991年 の公 民 権 法 改 正 か らで あ る。 この よ うな動 き と と もにEEOCが. 取 り扱 う セ クハ ラ案 件 が 飛 躍 的 に増 加 して い. る。 これ らの ことか らいえ る の は、 潜 在 的 な人 権 侵 害 は膨 大 な量 が あ り、 確 か な救 済 機 関 と明 確 な基 準 が あれ ば、 それ らの潜 在 的 な人 権 侵 害 事 案 が 救 済 機 関 に持 ち込 一11一.

(12) 人権 問題研究 資料. 第19号. ま れ て くる とい う こと で あ る。 人 権 相 談 に 関 して も同様 で、 人 権 相 談 シス テ ム の存 在 が広 く認 知 さ れ、 信 頼 さ れ る よ うに な れ ば潜 在 的 な人 権 相 談 は、 飛 躍 的 に増 加 す る。. ⑤人権相談機関が知 られ ていな い問題点. 現 状 は、 人 権 侵 害 事 象 と認 知 で き、 そ の よ うな状 態 か ら抜 け 出 した い と い う願 望 を抱 い て も、 ど の よ う に対 処 して よ い のか 分 か らず 、 ど こ に相 談 す れ ば よ い のか す ら理 解 して い な い市 民 が か な り多 い。 そ の よ う な情 報 「弱 者 」 に は、 人 権 侵 害 を解 決 す る た め の情 報 が 届 いて い な い ので あ り、 解 決 方 法 な ど知 れ る状 態 に な い ので あ る。 相 談 者 が も っと も困 る の は ど こ に行 け ば適 切 な 対 応 を して くれ る のか と い う こ と で あ り、 そ の意 味 で どの よ う な人 権 相 談 機 関 が あ る のか を 周 知 して お くこ と は人 権 相 談 の 原 点 で あ る。 そ れ だ け で は な い。 人 権 侵 害 を 受 け て い る人 の近 親 者 も情 報 「弱 者 」 で あ る場 合 、 問題 を よ り一 層 深 刻 に す る。 こ の よ う に情 報 ・教 育 的 「弱 者 」 が 、 被 害 者 や 関 係 者 で あ る場 合 、 深 刻 な 問 題 に 発 展 して い るケ ー スが 多 い。 この よ うな ケー ス をふ まえ るな らば、 それ らの 「弱者 」 を救 済 で き る よ うな 社 会 シ ス テ ムや 人 権 相 談 ・救 済機 関 を 如何 に 構 築 して い くの か が 重 要 な課 題 にな る。 人 権 侵 害 事 象 を 解 決 す る最 も重 要 な 課 題 が 、 人権 侵 害事 象 の早 期 発 見 ・早期 対応 で あ り、 的 確 な初 期 対 応 で あ るな らば な お さ らで あ る。 最 初 の一 言 に よ って 相 談 者 を 誤 った 道 に誘 導 して しま うケ ー ス や、 最 初 に紹 介 し た機 関 が どの よ うな 相 談 機 関 で あ るの か によ って、 相 談者 に大 きな影 響 を与 え る こ と も あ る。 相 談 者 が も っ と も困 るの は ど こに行 けば適 切 な対 応 を して くれ る の か と い う こ とで あ り、 そ の 意 味 で信 頼 で き る人権 相 談 機 関 の ネ ッ トワー クの構 築 も重 要 で あ る。 一12一.

(13) 人権侵害 ・人権相談 の現状 と人権相談機 関の課題 ⑥ 二 次 被 害 につ なが る誤 った初 期 対 応. 先 に述 べ た よ うに人 権 相 談 を は じめ とす る多 くの相 談 へ の対 応 で重 要 な こ との一 っ は、 初 期 対 応 で あ る。 近 親 者 の最 初 の一 言 に よ って相 談 者 を誤 った道 に誘 導 して しま うケ ー ス を は じめ相 談 者 に大 きな影 響 を与 え る。 なぜ な ら多 くの 人権 問 題 に悩 む人 々 が相 談 す る相 手 は、 家 族 や友 人 な ど身 近 な 人 々 が 最 も多 いか らで あ る。 そ れ らの人 々が 人 権 相 談 の 中 で も重 要 な初 期 対 応 を担 って い る場 合 が 少 な くな いか らで あ る。 それ らの相 談 者 の身 近 な人 々が 、 人 権 相 談 の初 期 対 応 を的 確 に行 な う こ とが で きれ ば、 相 談 内容 の克 服 の た め に大 き く前 進 す る。 重 傷 を負 った人 が 助 か るか 助 か らな いか は、 適 切 な応 急 措 置 が で き るか ど うか にか か って い る の と同 じで あ る。 夫 か らのDV被 けた 女性 が 、DV被. 害 者 で あ る女 性 が 、 親 しい女 性 に相 談 した と仮 定 す る。 相 談 を受 害 を受 けて い る女 性 に 「あな た の方 に も悪 い と ころが あ るん じ ゃ. な い」 と間 違 った 「助 言 」 をす れ ば、 こ の間 違 った 「助 言 」 が 二 次 被 害 にっ なが り 解 決 を さ らに遅 らせ 、 キ ー ワ ー ドの一 っ と して 上 げ た被 害 女 性 の 「心 」 の傷 は さ ら に深 ま る。 そ して 、 「心 」 の傷 を深 め た女 性 の立 ち 直 り は、 さ らに時 間 が か か る と い う事 態 に な る。. ⑦ 未 然 防 止 ・早 期 発 見 ・早 期 対 応 の シ ステ ム を. ま た、 早 期 発 見 ・早 期 対 応 を的 確 に行 な う こ とが で きれ ば 、 社 会 的 な コ ス トの 面 か ら も大 き な プ ラス に な る。 医 療 コス トを例 に上 げれ ば よ り一 層 理 解 で き る。 病 気 の 早 期 発 見 ・早 期 治 療 が 医 療 コ ス トを大 き く引 き下 げ、 多 くの 人 命 を 救 い、 快 適 で 健 康 的 な 生 活 に寄 与 す る こ とが で き る。 さ らに、 そ の 人 の能 力 を 社 会 の た あ に活 か す こ と もで き る。 人 権 侵 害 事 象 を克 服 した人 も同 様 で あ る。 自身 が 情 報 ・教 育 的 「弱 者 」 か ら解 き 一13一.

(14) 人権問題研究資料. 第19号. 放 たれ た プ ロ セ ス と 自信 は、 同 じよ う な 「弱 者 」 を サ ポ ー トす る大 き な力 に な る。 病 気 を 患 って か ら コ ス トを か け る よ り も、 病 気 予 防 の た め に コ ス トをか け た方 が 良 いの は多 くの 人 が 分 か って い る。 病 気 の 場 合 は、 い くら予 防 を して も発 病 リス ク が 下 が る ぐ らい で あ るが 、 人 権 侵 害 は、 未 然 防 止 が 病 気 以 上 に高 い確 立 で 可 能 で あ る。 そ れ らの観 点 か ら指 摘 す るな ら、 財 政 面 か ら も人 権 相 談 ・救 済 ・未 然 防 止 の シ ス テ ムが求 め られ て い る とい え る。. ⑧ 「弱 者 」 に焦 点 を あ て た シ ス テ ム を. と ころ で、 被 害 者 は 肉体 的 ・精 神 的 「弱 者 」 で あ る場 合 も多 い。 子 ど も、 女 性 、 高 齢 者 、 障害 者 が 被 害 者 で あ る人権 侵 害 事 象 を 分析 す れ ば、 肉 体 的 ・精 神 的 「弱 者」 で あ る こ とに よ って被 害 が 深 刻 に な って い る こ とが分 か る。 物 理 的 ・精 神 的 ・経 済 的 な虐 待 の被 害 者 で あ る子 ど も、 女 性 、 高 齢 者 、 障 害 者 等 の置 か れ た状 態 を詳 細 に 分 析 し、 それ らの分 析 結 果 をふ ま え た利 用 しやす い人 権 相 談 ・救 済 シス テ ムや 手 法 、 ネ ッ トワ ー ク を構 築 す る こ とが で きれ ば、 問 題 解 決 に大 き く貢 献 で き る。 ま た、 政 治 的 ・経 済 的 「弱 者 」 が 人 権 侵 害 事 象 の被 害 者 で あ る場 合 も多 い。 これ らの側 面 を 明 確 に捉 え る こ と に よ って 、 人 権 相 談 ・救 済 シス テ ム も よ り充 実 した もの に な る。 外 国 人 や 子 ど も、 高 齢 者 等 は政 治 的 ・経 済 的 「弱 者 」 で あ るが ゆ え に、 人 権 侵 害 が 発 生 した り、 解 決 が 困 難 に な って い る場 合 も数 多 く見 られ る。. ⑨ タイ ム リー で 被 害拡 大 を 防止 す る シ ステ ム を. 闇 金 融 か らの少 額 の借 金 によ って 自殺 に追 い込 まれ た高 齢 者 夫 婦 と親 族 の例 は そ の 典 型 で あ る。 経 済 的 「弱者 」 で な けれ ば この よ うな 問題 は発 生 して い なか った し、 政 治 的 「弱者 」 で もな け れ ば近 くの地 方 議 員 等 に相 談 で きた はず で あ る。 政 治 か ら 一14一.

(15) 人権侵害 ・人権相談 の現状 と人権相談機 関の課題 は遠 く、 解 決 す る た め の情 報 か ら も隔絶 さ れ て い た こ とが 自殺 とい う決 定 的 な不 幸 を招 い た の で あ る。 以 上 の よ うな視 点 に立 って、 多 面 的 な社 会 的 「弱 者 」 に焦 点 を据 え た人 権 相 談 ・ 救 済 シス テ ム を創 設 で き れ ば 「弱 者 」 で な い多 くの人 々 に も貢 献 で きる。 これ らの 課 題 が人 権 相 談 ・救 済 シス テ ム の 中 で も最 優 先 課 題 と い え る。 私 た ち の社 会 は、 これ ま で に他 の分 野 で 同様 の シス テ ム を創 設 して きた経 験 を持 っ。 例 え ば、 身 体 に関 わ って急 な重 い病 気 や交 通 事 故 等 の重 大 な事 故 で大 きな怪 我 を した場 合 、119番 通 報 す れ ば 速 や か に救 急 車 が 来 て くれ る。 私 た ち は それ を 当 た り前 だ と考 え て い るが 、 そ の よ うな社 会 シス テ ムが な い国 もあ る。 さ らに近 年 、 救 急 車 の 中 で も一 定 の医 療 行 為 が 医 師 の指 示 の下 に で き る よ うに救 急 救 命 士 の資 格 もで きて い る。 救 急 救 命 士 法 に よ って 設 置 さ れ た救 急 救 命 士 は、 一 刻 を争 って 瀕 死 の状 態 の人 々 の命 を救 う。 そ の た め に救 急 救 命 に関 わ る多 くの こ と を半 年 か けて 学 び、 国 家 試 験 に合 格 して初 め て救 急 救 命 士 に なれ る。 そ して 実 践 配 置 され 医 師 の指 示 を受 け なが ら救 急 車 の 中 な どで 一 定 の医 療 行 為 を行 な う。 僅 か な タ イ ム ロ スが 救 え る人 を死 な せ て しま った教 訓 か ら一 九 九 一 年 に救 急 救 命 士 法 が 成 立 した こ と に よ って で き た国 家 資 格 で あ る。 っ ま り、 急 な身 体 的 「弱 者 」 に な っ た場 合 、 それ らを サ ポ ー トす る社 会 シ ス テ ム が で き て い る の で あ り、 これ らの経 験 を 活 か せ ば 、 肉 体 的 ・精 神 的 「弱 者 」 で あ る 人 々 の人 権 侵 害 を克 服 す る社 会 シ ス テ ムを 構 築 す る こ と は不 可能 な こ とで はな い。 ま た部 分 的 に は現 実 に構 築 され っ っ あ る。. ⑩人権相談 の専門家養成を. 人 権 相 談 は一 般 的 に救 急 救 命 ほ ど緊 急性 はな いが、 的確 な相 談 と誘 導 が相 談 者 の 自 己実 現 を大 き くサ ポ ー トし、 相 談 者 自 らが 困難 を 克服 す る契 機 に もな って きた こ 一15一.

(16) 人権問題研究資料. 第19号. とを 考 え るな ら、 人 権 相 談 の 専 門 家 を 養 成 す る こ と は これ か らの 社 会 の大 き な課 題 で あ る。 米 国 に は弁 護 士 を 補 助 す る仕 事 と して パ ラ リー ガル と い う資 格 が あ るが 、 いず れ 日本 に もそ の よ うな 資 格 の 必 要 性 が 高 ま って くる と いえ る。 す で に司 法 書 士 が そ の 役 割 を 担 うべ く制 度 改革 が な され て い るが 、 弁 護 士 ・司 法 書 士 を 始 め とす る法 曹 関 係 者 に も法 律 的 な知 識 だ けで はな く、 相 談 対 応 へ の 高 度 な 知 識 と経 験 が 求 あ られ る 時 代 に 突 入 して い くだ ろ う。 人権 相 談 の難 しさ は法 律 相談 の よ う にパ ッケ ー ジで 答 え を 出せ るよ うなケ ー ス ワー ク型 の もの だ けで はな く、相 談 者 に 寄 り添 って導 くカ ウ ンセ リン グ型 の もの もあ り、 そ れ らを組 み合 わ せ た相 談 対 応 が求 め られ るか らで あ る。 また、 人権 相 談 は多種 多 様 な 内容 を 含 ん で い る。 部 落 問題 だ けで は な く、 多 くの ジ ャ ンル の人 権 相 談 等 が あ る。 例 え ば 多民 族 共 生 の課 題 の一 端 だ け で も在 日 コ リア ン、 在 留 資格 、 雇 用 ・労 働 、 医療 ・福 祉 、 暮 ら し、 婚姻 ・国籍 、 教 育 等 と多 様 な ジ ャ ンル を持 っ。 そ の他 、 障害 者 で は 「施 設 ・病 院、 介 護 ・ホ ー ム ヘ ル プ ・後 見 支 援 、 暮 ら し、 病 気 ・障 害 と治 療 、 社 会 参 加 ・仲 間 づ く り」、 高 齢 者 で は 「介 護 ・施 設 、 後 見 支 援 、 生 活 全 般 」、 子 ど もで は 「児 童 虐 待 、 不 登 校 、 い じめ 、 学 校 生 活 、 子 育 て 」、 ジェ ン ダー で は 「雇 用 ・職 場 ・セ クハ ラ、DV・. ス トー カ ー ・性 暴 力 、 家 族 ・家 庭 」、 性. で は 「同 性 愛 、 性 同一 性 障 害 」、 暮 ら しと生 活 で は 「個 人 情 報 ・プ ライ バ シ ー、 雇 用 ・労 働 、 野 宿 生 活 者 、HIV、. ハ ンセ ン病 、 犯 罪 被 害 者 、 悪 質 商 法 」 等 々 と一 部. を紹 介 した だ け で も多 くの詳 細 な ジ ャ ンル を含 ん で い る こと が理 解 で き る。 それ ら に対応 した専 門家 とネ ッ トワー クが必 要 な の で あ る。 す で に人 権 相 談 の専 門家 を養 成 す るた め に地 方 自治 体 職 員 な ど を対 象 に(財)大 阪府 人権 協 会 な ど が 中心 に な って、 充 実 した 内容 の 「人 権 相 談 員 養 成 基 礎 講 座 」 の 取 り組 み始 ま って い る が、 全 国 的 に は そ の よ うな講 座 は ほ とん ど な い。. 一16一. 「'郷.

(17) 人権侵害 ・人権相談 の現状 と人権 相談機 関の課題. ⑪情報化 時代 に対応 した システムを. と ころ で、 人 権 問 題 は社 会 の進 歩 、 科 学 技 術 の進 歩 と と もに、 よ り高度 で複 雑 で 重 大 な 問題 に な って い く。 そ れ らの よ り高 度 で複 雑 で重 大 な人 権 問題 に対 応 して い く こ と も求 め られ る。 今 日、 イ ン ター ネ ッ ト上 で 多 種 ・多 様 な 人 権 侵 害 事 象 が 発 生 して い る が 、15年 前 に は考 え られ なか っ た 問題 で あ り、 この よ うな 問題 に も的確 に対 応 す る シス テ ム が必 要 な の で あ る。 例 え ば イ ン ター ネ ッ トの特 色 は、 時 間 的 ・地 理 的 制 約 が な い こ と、 不 特 定 多 数 の 人 が 対象 で あ る こ と、 匿名 で証 跡 が残 りに くい ことで あ る。 ま た、 情報 発 信 や 複製 ・ 再 利 用 が 容 易 で あ り、 場 所 が 不 要 で あ る こ と等 で あ る。 こ う した特 性 を縦 横 に利 用 した イ ンタ ー ネ ッ ト環 境 下 の人 権 侵 害 事 象 に対 して は、 現 実 空 間 を前 提 と した こ れ ま で の取 り組 み 方 で は不 十 分 で あ り、 これ らの特 性 をふ まえ た新 た な取 り組 み方 が 求 あ られ て い る ので あ る。 情 報 化 の進 展 と と も に、 時 代 の ス ピー ドが 速 くなれ ば な る ほ ど それ に対 応 した人 権 相 談 シス テ ムが 求 め られ て い るの で あ る。 っ ま り情 報 化 時 代 の 人 権 侵 害 事 案 に対 応 した人 権 保 障 や 人 権 相 談 の シ ス テ ムが 求 め られ て い る ので あ る。. ⑫人権相談機関の情報分析力の向上を. 最 後 に、 人 権 相 談 機 関 の情 報 感 度 を 高 め る必要 が あ る。 悲惨 な 事 件 が 続 発 して い るが 、 それ らが 防 げな か っ た背景 に人 権 相 談 ・救 済 機 関 の情 報 に対 す る感 度 の 低 さ が 上 げ られ る こ とが 多 い。 また 、 正 確 な 人 権状 況 を把 握 す るた あ に も情 報 感 度 を 高 め る必 要 が あ る。 人 権 侵 害 の正 確 で最 新 の情 報 は、 実態 調 査 や意 識調 査 だ けで は不十 分 で あ る。 現 実 に生 起 して い る人権 侵 害事 件 や 差 別事 件 、 多 くの人 々 か ら もた ら され る人 権 や差 一17一.

(18) 人権 問題研究 資料. 第19号. 別 に か か わ る相 談 を 分析 しな い とよ り正 確 な差 別 の現 実 を 入 手 す る こ とは で きな い の で あ る。 これ らの事 件 や相 談 の 中 に 、 多 くの重 要 な情 報 が 含 ま れ て い る。 表 面 に は現 れ て こな い が、 情 報 を分 析 す る こ とに よ って明 らか に な る隠 れ た情 報 も数 多 く あ る。 そ の た め に も人 権 相 談 ・救 済 機 関 の分 析 力 を高 あ る必 要 が あ る。 人 権 侵 害 事 件 や人 権 相 談 は生 の情 報 で あ り、 日常 的 な人 権 相 談 で も巨大 な問 題 と 結 びっ い て い る こと もあ る。 そ れ らを見 つ け 出す こ とが 重 要 な ので あ り、 そ の こ と が 人 権 実 現 に大 き く貢 献 す る。 そ の た め に情 報 感 度 を高 あ る必 要 が あ る。 情 報 感 度 を高 め る た め に は、 まず 第 一 に、 予 断 や 経 験 に よ る思 考 の 壁 を 取 り除 く 必 要 が あ る と と も に、 明 確 な問 題 意 識 を持 って いな けれ ば 情 報 感 度 は高 ま らな い。 社 会 に はあ ら ゆ る情 報 が 氾 濫 して い る。 そ れ らの情 報 を す くい上 げ る問題 意 識 が、 人 権 相 談 ・救 済 機 関 に な くて は有 用 な情 報 は集 ま らな い の で あ る。 さ ら に、 問 題意 識 と も関 連 す るが 情 報 を分 析 す る力量 を高 あ な い と情 報 感 度 は高 ま らな い。 単 な る事 実 だ けを 見 て も情 報 の持 っ意 味 が理 解 で きな けれ ば情 報 の重 要 度 は分 か らな い の で あ り、情 報 の背 景 を理 解 す る こ とが大 切 な の で あ る。 人 権 相 談 も一 っ の情 報 で あ り、 そ れ らの相 談 の背 景 を的 確 に捉 えて こそ相 談 へ の 解 決 方 策 が提 示 で き、 政 策 提 言 が で きる の で あ る。 一 っ の小 さ な相 談 が 社 会 変 革 の 原 動 力 に な って い くか ど うか も、 そ の隠 れ た大 き な背 景 を捉 え る こ とが で き るか ど うか とい う情 報 感 度 にか か って い る。 情 報 収 集 、 情 報 選 別 、 情 報 分 析 、 情 報 判 断 、 情 報 対 応 と い った 全 て の 過 程 にお い て そ の力 量 を高 め る ことが 重 要 な ので あ る。. 以 上 、 職 場 にお け るハ ラス メ ン トを は じめ 、 今 日の 人 権 侵 害 や 人権 相 談 等 の現 状 をふ まえ た上 で 、 人 権 相 談 機 関 の 問 題 点 と課 題 を 明 らか に して きた。 あ くま で も今 日的 な問 題 点 と課 題 の 一 端 で あ るが 、 これ らの 課題 を 克服 す る こ とを通 じて、 人 権 状 況 の 改 善 に向 け た人 権 救 済 ・相 談 機 関 の 整備 を は じめ とす る取 り組 み が推 進 され る こ とを 期 待 して い る。 一18一. ・'3'電.

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参照