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炎症反応を介した発癌機構に対する細胞周期調節因 子に関する研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

炎症反応を介した発癌機構に対する細胞周期調節因 子に関する研究

柿本, 啓輔

http://hdl.handle.net/2324/1441170

出版情報:Kyushu University, 2013, 博士(薬学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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(様式 9‑ 3) 

氏 名 柿本 啓輔

五両岡& 

文 名 The study on the r o l e  o f  C e l l  c y c l e  r e g u l a t o r y  f a c t o r  i n  the development  o f  h e p a t o c e l l u l a r  c a r c i n o g e n e s i s  v i a  inflammatory response 

(炎症反応を介した発癌機構に対する細胞周期調節因子に関する研究)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

癌は、日本における死因第 1 位の疾患であり、世界中でも癌による死者数は増加している。肝臓 癌は慢性炎症を原因とし、慢性肝炎、肝硬変を経て発症する。肝臓癌は初期には自覚症状もないた め、早期発見が難しく、進行した状態で発見されることなどから、死亡率も高く、 3 番目に多い癌 死となっている。肝臓癌の代表的な治療法としては、肝切除手術、エタノール注入療法、冠動脈塞 栓術などがあるが、手術の適応は初期のみであることや、再発が起こりやすいなどという問題もあ る。化学療法に関しても、肝臓癌が抗癌剤に抵抗性を示しやすいなどの理由から標準的な療法が確 立されていないのが現状である。そのため、肝臓癌では画期的な診断薬や新たな治療・予防戦略の 開発が求められている。また、慢性炎症反応は、癌以外にも生活習慣病、神経変性疾患、自己免疫 疾患などの病態の発症や進展とも深く関わっていることが知られている。

一方、地球上の多くの生物には、体内時計と呼ばれる生体機能システムが備わっている。哨乳類 における体内時計の中枢は、視床下部の視交文上核( Suprachiasmaticn u c l e i ;   SCN )に存在し、

時計遺伝子と呼ばれる一連の遺伝子群による転写・翻訳のフィードパックルーフ。機構によって、様々 な生体機能に約 24時間周期の変動(日周リズム)が生じている。近年、体内時計機構が癌、生活 習慣病、精神疾患などの様々な疾患の発症に関わることが明らかにされている。しかしながら、体 内時計機構が慢性炎症から発癌に至る過程をどのように制御しているかについては明らかにされて いない。

本研究では、炎症反応および発癌の標的分子として細胞周期調節因子に着目をした。まず細胞周 期調節因子の炎症反応に対する影響およびマウス肝臓における細胞周期調節因子発現の日周リズム 制御機構について解析を行った。続いて、ジエチルニトロソアミン(DEN )による肝臓癌モデ、ルマ

ウスを用いて、その発癌過程における細胞周期調節因子の影響について解析を行った。

体内時計機構は多くの遺伝子の発現を制御することによって、様々な生体機能に日周リズムを生 み出している。また、疾患の発症に関わる遺伝子や、薬物の標的となる遺伝子の発現にも日周リズ ムが認められており、疾患の発症そのものや薬物に対する感受性も時刻によって変化することが明 らかにされている。一方、細胞は DNA 損傷や炎症反応といった種々の刺激を受けることにより、

それに応答する反応として、細胞の脱分化を起こし、増殖シグナルが活性化され細胞周期を進行す る。この細胞周期の進行に関しても、体内時計機構によって制御されることが明らかにされている。

しかしながら、これらの関連は DNA 合成期( S 期)や分裂期(M 期)に関するものであり、休止 期( GO 期)から増殖期への移行と体内時計機構との関連は明らかにされていない。

そこで GO 期から Gl 期の移行に関与する細胞周期調節因子に着目をし、細胞周期調節因子の炎

症シグナルに対する機能およびその日周リズム制御機構の解析を行った。肝初代培養細胞を用いた

実験から、細胞周期調節因子のノックダウンは脱分化マーカーの Afp および細胞周期マーカーの

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C y c l i n  Dl の発現を抑制することが明らかになった。さらに細胞周期調節因子のノックダウンによ る C y c l i nDl 発現低下は炎症に関連する種々の転写因子のうち、 NF・KB シグナルを介したものが最 も影響を受けていた。また細胞周期調節因子はその活性化因子である炎症関連因子と相互作用する ことによって NF・KB シグナルを制御することが明らかになった。これらの結果より、細胞周期調 節因子は NF‑KB シグナルを介した炎症反応を制御することによって、細胞の増殖や脱分化を制御 していることが示唆された。一方で、細胞周期調節因子の発現はマウス肝臓において明瞭な日周リズ ムを刻んでいた。ルシフエラーゼ、アッセイ、高濃度血清処理、クロマチン免疫沈降などの結果から、

細胞周期調節因子発現の日周リズムは RAR/RXR を介して a l l ・ t r a n s   r e t i n o i c  a c i d   (ATRA )によっ て制御されることが明らかになった。さらに細胞周期調節因子発現の日周リズムが NF‑KB シグナ ルに及ぼす影響を検討するため、 1 3 : 0 0 と 1 : 0 0 の 2 時点で l i p o l y s a c c h a r i d e (LPS )を腹腔内投与 して死亡率による影響を見た。その結果、 LPS による死亡率は細胞周期調節因子発現の高い時刻で の投与で高くなっていた。以上の結果から、 NF‑KB シグナルを介した炎症反応は、細胞周期調節因 子の発現リズムに合わせて時刻依存的に変化することが示唆された。本研究結果より、細胞周期調 節因子が NF‑KB を介して炎症シグナルを調節し、炎症に関連する生体リズムに影響している可能 性が示唆された。

肝臓癌は世界での癌死の約 9% を占めており、死亡率の高い癌である。肝臓癌は慢性肝炎、肝硬 変といった慢性的な炎症による肝疾患を背景に発症する。死亡率や再発率の高い難治性の癌の一つ であり、また標準的な化学療法も確立されていない。それゆえに発癌を防ぐ新たな治療・予防戦略 が求められている。

そこで DEN 誘発性肝癌モデルマウスを用いて、発癌に対する予防および治療標的として細胞周 期調節因子の解析を行った。モデルマウスは DEN の飲水によって作製した。マウスに対して DEN

を飲水した結果、発癌が認められたが、その病巣である f o c i の形成より前には時計遺伝子および細 胞周期調節因子の発現リズムの変容が認められた。さらに DEN 誘発性肝癌は、 ATRA を同時に飲 水投与することによって有意に抑制された。この ATRA による DEN 誘発性肝癌の予防効果は、発 癌初期段階における投与によって、より効果的にもたらされた。 DEN による発癌初期段階におい て細胞周期調節因子の発現は ATRA によって抑制されており、この抑制効果は n u c l e a rf a c t o r  o f   a c t i v a t e d  Tc e l l s  (NFAT )による転写抑制が原因となっていた。また、発癌初期段階において NF‑KB シグナルは ATRA によって抑制されており、この抑制効果は少なくとも 1 週間は持続していた。細 胞周期調節因子の siRNA を i nv i v o で投与した実験においても、 ATRA 同様に発癌初期段階での NF‑KB シグナルを抑制することができた。さらに、細胞周期調節因子の siRNA によって DEN 誘 発性肝癌を抑制することができた。これらの結果から、 DEN 誘発性肝癌の初期段階において細胞 周期調節因子を介した NF‑KB シグナルの制御が発癌抑制に重要であることが示唆された。

本研究では、細胞周期調節因子に着目をし、体内時計機構による制御および炎症反応、発癌 に対する新たな知見を得ることができた。本研究で得られた成果や方法論は癌の時間薬物療法の 構築のみならず、慢性炎症に起因する生活習慣病など様々な疾患についても応用することができ、

新規の治療薬の開発や治療法の構築が期待できる。これらのことから、申請者は博士(薬学)の

学位に値すると認める。

参照

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