補助参加の訴訟構造に関する一考察 : 補助参加人 の参加の利益と被参加人・相手方の訴訟についての 固有の利益
著者 上北 武男
雑誌名 同志社法學
巻 60
号 3
ページ 89‑115
発行年 2008‑08‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011458
補助参加の訴訟構造に関する一考察 八九同志社法学 六〇巻三号
補助参加の訴訟構造に関する一考察
︱
補助参加人の参加の利益と被参加人・相手方の訴訟についての固有の利益︱
上 北 武 男
︵九九九︶ 目 次
一 問題の所在
二 判例等具体的事案の分析
三 学説の検討
︱
補助参加論の論理構造を中心として︱
四 補助参加の訴訟構造についての一試論
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九〇同志社法学 六〇巻三号 ︵一〇〇〇︶
一 問題の所在
補助参加に関する研究が近時著しく進み︑特に︑補助参加の利益に関する重要な論文が公にされた ︵
︒これらの諸研究 1︶
によって︑補助参加の利益の判断基準をめぐる議論の対立点がほぼ明らかにされたと思われる︒その対立点を例示する
とつぎのようになるであろう︒⑴訴訟の結果についての利害関係を判決主文に示された判断について利害関係を有する
場合に限定するが︑理由中の判断についての利害関係を有する場合も含ませるか︒⑵この利害関係は第三者である補助
参加人を当事者とする第二の訴訟において前訴の判断がこの者の不利に働くおそれがある場合のみに限定する伝統的考
え方によるか︑近時︑強調されるようになった﹁後訴との関係ではなく︑補助参加人の法律上の地位自体に対する判決
の事実上の影響力 ︵
﹂があるかぎり補助参加の利益を肯定してよいか︒⑶補助参加の利益の有無の判断基準として︑判決 2︶
主文の第三者への影響にせよ︑判決理由中の判断が第三者になんらかの影響を及ぼすにせよ︑統一的︑画一的な基準を
追求するか︑事件類型あるいは第三者と訴訟との具体的な関係を基準として多元的なものを追求するか︒
更に︑これまでの研究では︑前述の補助参加の利益の問題を補助参加人の訴訟上の地位と関連づけて論ずることも試
みられている︒補助参加人は被参加人に対して従属的地位にあるか︑あるいは独立した地位が認められるかの問題であ
る ︵
︒ 3︶
また︑訴訟の結果につき利害関係を有する第三者には補助参加が認められるとされているが︑この趣旨は︑判決効が
第三者に及ぶ場合のみならず︑事実上の不利益で補助参加の利益を肯定する︒この議論は反射効ないし既判力の拡張を
唯一の根拠とするものではない︒例えば債権者の主債務者に対する金銭支払請求訴訟に保証人が補助参加できるかにつ
いては︑おそらく現在どのような立場にたっても肯定されているのではないだろうか︒その理由について︑木川統一郎
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九一同志社法学 六〇巻三号 博士はつぎのような多面的な根拠をあげる︒保証人は主債務者が勝訴すれば︑その判決の反射効を受ける地位にあるから当然に補助参加の利益があるとされる ︵
︒ 4︶
さらに︑木川博士の指摘によれば︑反射効なる範疇を認めない立場にたつとしても︑一般に法律上の利害関係の有無
の判定に際して︑第三者の実体法上の地位が他人間訴訟の先決問題をなしているかどうかという基準を用いるならば︑
保証人の法的地位は主債務の存在を論理上前提としているのだから︑保証人は補助参加の利益を有することになる︒こ
こで﹁法律上の利害関係﹂とは言っているが︑木川博士の分析によれば︑主債務者勝訴の判決が保証人に影響を与える
というのも︑事実上の影響であって︑それはむしろ事実上の利害関係と考えるべきである︒それにもかかわらず︑保証
人の補助参加の利益が認められることについては異論があるわけではない ︵
︒ 5︶
ここで紹介した議論も︑訴訟が第三者にどのような影響を与えるかという広義の判決効との関係︵例えば︑前述の反 射効あるいは判決の証明効など︶で補助参加の利益を考えようとするものである ︵
︒ 6︶
本稿では︑補助参加の利益についてこれまでとは考察の視点を少し変えて︑参加の対象とされた訴訟の当事者︵被参
加人︶の当該訴訟を自己の紛争解決のための手続として支配することについての利益︑換言すれば︑当事者の訴訟手続
の支配権に配慮して検討する︒訴訟による紛争解決は︑個々の訴訟手続は限定された範囲での紛争解決をはかるもので
あるから︑当然限界があるので︑利害関係人をすべて一つの訴訟手続に取りこんで解決をはかることは困難である︒こ
のような見通しをもって補助参加の訴訟構造を検討する︒以下ではこれまでも検討の対象とされた判例や具体例を訴訟
当事者の立場から再検討し︑その後に︑諸学説の補助参加論の論理構造の解明を試みることとする︒
︵一〇〇一︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九二同志社法学 六〇巻三号
二 代表的判例・具体例の検討
補助参加の利益が争われた事例は少なからずある︒ここでは通常の方法による判例の検討ではなく︑判例研究として
は異例ではあるが︑具体例にそくして補助参加の利益と被参加人ないし相手方の補助参加が認められることによる不利
益ないし手続上の負担を考察する︒判決の規範性を追究する点では不十分になるが︑本稿の目的にそうように︑補助参
加人側のみならず︑被参加人および相手方当事者側からも検討を試みる︒
㈠ 演習事例としてしばしばとりあげられる債権者の債務者に対する貸金返還請求訴訟に︑右消費貸借の保証人が補 助参加の申立てをする例がある ︵
︒類似のものとして︑債権者の保証人に対する保証債務の履行請求訴訟に主たる債務者 7︶
が補助参加の申立てをする例がある︒これは補助参加の典型例とされているものである︒
主債務者に対する貸金返還請求訴訟にこの消費貸借の保証人が補助参加の申立てをすることについては︑木川博士の
解説にもあるように︑保証人は主たる債務者勝訴の判決によって利益を受ける立場にある︒その根拠を反射効に求める
のか︑否かは争いがあるが︑少なくとも保証人として︑債権者からの請求に対して主債務不存在の主張︵保証人に対す
る保証債務履行請求の後訴に主債務者勝訴の前訴判決を援用︶することができるはずである︒逆に︑主債務者敗訴によ
り主債務の存在が債務者との関係で確定した場合︑保証人が後訴で主債務の不存在を主張しうるかについては︑判決効
は保証人には及ばないことから︑保証人として主債務そのものの不存在を主張することができる︒ただ主債務者との間
で主債務の存否について弁論がつくされていることから︑保証人を当事者とする訴訟において主債務の不存在の判断に
至ることは困難であろう︒この趣旨で︑前訴判決の事実上の影響は否定することはできない ︵
︒ 8︶
では︑保証人が補助参加することによってどのような有利な結果を期待しうるのであろうか︒主債務の存否について ︵一〇〇二︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九三同志社法学 六〇巻三号 は債権者と主債務者間で審理を尽すのが通常の姿であろう︒保証人として債権者に対して主張することができるのは︑
主債務者が主張していない抗弁等であるが︑これについても主債務者の意思に反して提出することはできず︑保証人が
補助参加しても許される訴訟行為は限られる︒もし主債務者が詐害的訴訟行為︑たとえば保証人にとって不利となる自
白︑請求の認諾等がなされたとしても︑保証人として詐害訴訟防止の参加の方法があるいは考えられるであろうが︑補
助参加の方法では十分に自己の利益を守ることはできない︒前述の主債務者不利の判決が保証人に事実上不利に作用し
うることを考慮に入れても︑保証人に対する保証債務の履行請求訴訟で主債務の不存在の主張をする場合と保証人の負
担は特に差異はないように思われる︒参加人にとって被参加人の訴訟の結果が有利にも不利にも影響するというのであ
れば︑補助参加人のリスクからいずれかに決しなければならないのであれば︑債権者と主債務者の訴訟に保証人が補助
参加する利益はほとんどないと思う︒
主債務者の保証人に対する保証債務の履行請求訴訟に主債務者が補助参加の申立てをする例では︑保証人が敗訴した
場合︑主債務の存在を前提として保証債務の存在が認定されるので︑保証人は保証債務を履行した後に主債務者に求償
することになる︒主債務者としては主債務の不存在を主張するために保証人側に補助参加する利益があると解されてい
る︵現在の通説か︶︒
この事案についても︑主債務者の補助参加は保証人を勝訴させることはできても︑自らが債権者との関係で債務がな
いという判決の効力はない︒これまでも主債務者と保証人が各自別々の訴訟手続を経て判決を得た事案において︑結果
的には主債務が存在しないのに保証債務が認められた事例があった ︵
︒保証人と主債務者がそれぞれ当事者になった訴訟 9︶
においてさえ︑矛盾した紛争解決を是認しなければならないのが︑訴訟による紛争解決の姿ではないか︒
㈡ 第二の事件類型としてつぎのようなものがある︒
︵一〇〇三︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九四同志社法学 六〇巻三号
① 一方の権利が認められることにより他方の権利が否定されるおそれがある者の補助参加の申出︵最判昭和四五年
一〇月二二日判例時報六一三号五二頁︶︒
本件は旧民事訴訟法七〇条︵現四六条︶の判決の効力に関するものであるが︑補助参加の利益に関しても興味ある問
題を提起するものである︒事実関係の概要はつぎのとおりである︒
ビルの所有者であると信ずるXはYに対してビルの一室を賃貸したところ︑第三者Zが本件ビルは自己の所有である
と主張して︑Yに対して貸室部分の明渡しと明渡しまでの賃料相当額の損害金の支払いを求めて訴えを提起した︒Yは
本件貸室をXから賃借し占有している旨の主張とあわせて︑Xに訴訟告知をしたところ︑第四回口頭弁論期日より補助
参加をした︒なお︑YがXに訴訟告知をする前にXはYとの賃貸借契約を解除していた︒ZのYに対する訴訟は本件ビ
ルが賃貸当初からZの所有であると判断され︑上告審まで争ったがこの判決は確定した︒
しかしながら︑Xは右訴訟の控訴審係属中に︑Yを被告として賃貸借契約期間中の賃料とXが契約を解除した後︑明
渡しまでの賃料相当損害金の支払いを求めて訴えを提起した︒本件最高裁判決はこの訴えについてのものである︒
本件控訴審判決はZのYに対する判決が確定した後に出された︒つぎのように判示した︵②大阪高判昭和四四年一〇
月三〇日高民集二二巻五号七二九頁︶︒
﹁以上の事実関係によれば︑Xは前記訴訟︵ZY間の訴訟︶の第一審の段階でYから訴訟告知を受け︑遅くともその
第三回口頭弁論期日には補助参加することができたと解されるから︑その時から右訴訟に参加したものとみなされるの
みならず︵民訴法七八条︶︑第四回期日には現実に参加し以後上告審に至るまでYのため訴訟を追行したものであり︑
その間被参加人たるYが参加人たるXの訴訟行為を妨げ︑またはこれに抵触する如き所為に出たり︑Xがなしえざる訴
訟行為を自ら怠ったと認められる事情はなく︑かえって︑YX両者は右訴訟の唯一の争点である本件建物所有権の帰属 ︵一〇〇四︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九五同志社法学 六〇巻三号 について共同してZと争ったことが認められる︒
そうすると︑Xは以後Yとの関係でY敗訴の裁判の効力を受けることは明らかである︵民訴法七〇条︶︒従って︑本
件訴訟においてはもはやYに対し︑右裁判の理由中で説示された判断に反し﹃本件建物所有権はXに存する﹄旨の主張
をなしえないものといわなければならない︒﹂
また︑控訴審判決ではX・Z間で本件ビルの所有権が争われた事情についても明らかにされている︒つぎのように判 示した︒ ﹁また︑本件のように前訴においてひとたび本件建物所有権がZにあり︑従ってXにはないと判断された以上︑たと
え本訴においてXが自己の所有権取得を理由あらしめる事実として前訴で主張しなかった新たな事実を主張したとして
も︵Xは当審で︑自己の前主とするAの出来形所有権取得原因として附合の事実等を新らたに主張している︶︑もはや
右参加効を覆えすことはできない︒けだし︑本件のような場合︑参加効の及ぶ前訴裁判理由中の事実及び判断とは本件
建物所有権の帰属がZにあるか否かの点であって︑相手方であるY︑X側において右所有権帰属と相反する事実︵いわ
ゆる積極的否認事実︶としてXに所有権がある旨主張するにつき︑それを理由あらしめる事実として如何なる主張をし
たかは何ら問うところではないと解すべきであるからである︒﹂
︿最高裁判決の要旨﹀ ﹁民訴法七〇条の定める判決の補助参加人に対する効力の性質およびその効力の及ぶ客観的範
囲について考えるに︑この効力は︑いわゆる既判力ではなく︑それとは異なる特殊な効力︑すなわち︑判決の確定後
補助参加人が被参加人に対してその判決が不当であると主張することを禁ずる効力であって︑判決の主文に包含され
た訴訟物たる権利関係の存否についての判断だけではなく︑その前提として判決の理由中でなされた事実の認定や先
決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶものと解するのが相当である︒けだし︑補助参加の制度は︑他人間
︵一〇〇五︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九六同志社法学 六〇巻三号
に係属する訴訟の結果について利害関係を有する第三者︑すなわち︑補助参加人が︑その訴訟の当事者の一方︑すな
わち︑被参加人を勝訴させることにより自己の利益を守るため︑被参加人に協力して訴訟を追行することを認めた制
度であるから︑補助参加人の訴訟の追行に現実に協力し︑または︑これに協力しえたにもかかわらず︑被参加人が敗
訴の確定判決を受けるに至ったときには︑その敗訴の責任はあらゆる点で補助参加人にも分担させるのが衡平にかな
うというべきであるし︑また︑民訴法七〇条が判決の補助参加人に対する効力につき種々の制約を付しており︑同法
七八条が単に訴訟告知を受けたにすぎない者についても右と同一の効力の発生を認めていることからすれば︑民訴法
七〇条は補助参加人につき既判力とは異なる特殊な効力の生じることを定めたものと解するのが合理的であるから
である︒﹂
本判決は︑前述のとおり︑直接には旧民事訴訟法七〇条︵現四六条︶の効力をどのように理解すべきかを問題にする
ものである︒かねてから論ぜられているように︑本条の効力については参加的効力と解する説が多数説であるが︑現在
は理由中の判断の拘束力についても既判力と解する説もあって︑補助参加人が拘束されるのは被参加人・相手方の訴訟
の主文中の判断︵訴訟物に関する判断︶に限られるのではなく︑理由中の判断として示される前提たる権利や法律関係
の存否あるいは請求原因と位置づけられる事実の存否についての判断である︒判決効についての理解が多様になったこ
ともあって︑補助参加人を拘束する効力についても︑特に相手方と補助参加人間に認められる効力を既判力と解する説
も有力になりつつある ︵
︒ 10︶
この説によれば﹁補助参加訴訟における参加人の関心事は⁝⁝第二の訴訟との関係で判決理由中の法律上または事実
上の主張であるばあいが多い︒したがって︑補助参加訴訟において参加人は被参加人と同等の︑あるいはむしろ被参加
人以上の緊張度でこの点についての主張立証活動を行なうのが通常であり︑また︑それを期待しても酷でない︒補助参 ︵一〇〇六︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九七同志社法学 六〇巻三号 加人が判決理由中の判断に拘束される理由はここにあるのであり︑それは⁝⁝手続権の保障を代償としての不可争性である︒﹂それゆえに既判力を排斥して異別の構成を持ち出さなければならない必然性は存しないという ︵
︒ 11︶
ここでは﹁理由中の判断﹂に拘束されることが重要とされている︒結果から推論することになるが︑補助参加人とし
てはこのような影響が考えられるがゆえに補助参加し︑独自の主張︵所有権が自己に帰属すること︶を展開したのであ
る︒井上︵治︶教授のその後の見解によれば補助参加人を当事者とする第二の訴訟を予定しなくても自己の所有権を主
張する機会を確保するためにも︑補助参加が肯定されることになるであろう︒
では︑このような状況下で補助参加人は手続上の利益であれ︑実体上の利益であれ︑自己の利益を守ることができる
のか︒またこの者に他人間の訴訟に参加するだけの必要性が認められるのか︒控訴審が他の理由として掲記している点
を考慮する必要がある︒X・Z間で所有権の帰属が争われたのは︑請負契約における出来形部分の所有権の帰属であっ
て︑この点について控訴審判決は﹁本件のような場合︑参加効の及ぶ前訴裁判の理由中の事実及び判断とは本件建物の
所有権がZにあるか否かの点であって︑相手方であるY・X側において右所有権帰属と相反する事実︵いわゆる積極否
認事実︶としてXに所有権がある旨主張するにつき︑それを理由あらしめる事実として如何なる主張をしたかは何ら問
うところではない﹂と断定した点は疑問とせざるをえない︒X・Z間で所有権の帰属が争われたとすれば︑控訴審の判
決理由がはたして妥当と評価されうるであろうか︒
このような視点から本件判決をみると︑既に指摘されていることであるが︑山本研助教授のつぎのような考察 ︵
は注目 12︶
に値する︒﹁共同関係にあった被参加人との間に生ずる参加的効力と敵対関係にあった相手方との間に生ずる争点効と
の関係を統一的に説明しうるのか︑民訴法四六条各号の除外条件を付された効力を既判力として一元的に把握しうるの
か︑補助参加の一事をもって相手方との関係で独立の裁判を受ける権利を実質的に失ってしまうのは行き過ぎではない
︵一〇〇七︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九八同志社法学 六〇巻三号
か等の問題が﹂ある︒最後の当事者として独立して訴訟を行なう意義を強調される点は賛成できる︒
本件においてXの補助参加の申立てが認められたとしても︑XはY・Z間の訴訟においてなにを主張することができ
るのか︒YがXの利益に反する主張をする場合︑あるいはYの意思で手続を終了させた場合︑Xとして自己の利益を守
る手段がないのではないか︒補助参加人の地位を被参加人から独立したものと考えても︑独立性そのものは補助参加制
度からの制約がある︒本件の事案に即して言うと︑XはY側に補助参加し︑Yのために自己の所有権を主張したとして
も︑Xが訴外Aから所有権を取得したとの主張はZのYに対する明渡請求との関係では積極否認でしかない︒この否認
の理由について審理を尽すことは期待できない︒もしX・Z間の訴訟で当該建物︵ビル︶の所有権確認が問題になるの
であれば︑Xは自己の所有権を根拠づけるためにAに帰属する所有権を譲り受けたとの事実を主張することになる︒主
要事実または当事者が主張しなければならない事実は訴訟物との関係で定まる︒各事実の位置づけは各訴訟で解決が求
められているのが何かによって異なることに留意しなければならない︒
㈢ 同一の原告ないしこれと同じ事情にある者から同じ理由で同権の請求をなされるおそれのある者が被告側に補助
参加することが許されるか︒
③ 東京高決昭和四九年四月一七日下級民集二五巻一︱四号三〇九頁
︿事実関係﹀ 原告スモン病患者が国および製薬会社を被告として︑キノホルム剤がスモン病の原因であるとして損害
賠償請求訴訟を提起したが︑この訴訟に薬剤を投与した医師らが補助参加の申出をした︒この医師らは別訴において︑
別のスモン病患者から本薬剤の使用の責任を問われ︑損害賠償請求訴訟を提起されている︒この事件で補助参加が認
められるか争われた︒
︿決定要旨﹀ ﹁﹃訴訟ノ結果ニ付利害関係ヲ有スル﹄場合とは︑⁝⁝訴訟物たる権利関係の存否についてだけではなく︑ ︵一〇〇八︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 九九同志社法学 六〇巻三号 その判決理由中で判断される事実や法律関係の存否について法律上の利害関係を有する場合も含まれるといえるが︑
当該他人間の訴訟の当事者の一方︵被参加人︶の敗訴によってその当事者︵被参加人︶から第三者︵参加申出人︶が
一定の請求を受ける蓋然性がある場合及びその当事者の一方︵被参加人︶と第三者︵参加申出人︶を当事者とする第
二の訴訟で当事者の一方︵被参加人︶の敗訴の判断に基づいて第三者︵参加申出人︶が責任を分担させられる蓋然性
のある場合でなければならず︑第一の訴訟で︑当事者の一方︵被参加人︶が相手方から訴えられているのと同じ事実
上または法律上の原因に基づき第二の訴訟で第三者が右相手方から訴えられる立場にあるというだけでは︑﹁補助参
加の要件を充足しない﹂︒﹁判決の正確性を高め利害関係者の便宜をはかるためには︑広く補助参加を認め証人尋問等
の機会を与えるのがよいように思われるのが︑他方︑訴訟が遅延し︑複雑化するのを避ける必要があるので︑これら
の両者の関係を合理的に調整するには﹂︑その要件を上記のように解するのが相当である︒
﹁キノホルム剤がスモン病の原因であるかどうかという因果関係についての判断が本訴と別訴とを通じて共通の前
提問題となっているというのは︑所詮本訴と別訴が同一の事実上の原因に基づいているというものにすぎず︑本件に
おいて本訴の被告ら︵被参加人︶の敗訴によってZらが右被告ら︵被参加人︶から請求をうけ責任を分担させられる
蓋然性がうかがえないばかりか﹂︑Zらの補助参加を認めても︑本訴における判決中の右因果関係の存否についての
判断がいわゆる参加的効力として︑別訴における原告らとZらの間に及ぶものではないので︑Zらは補助参加の要件
を充足するとは認めがたい︒
本決定を論評された新堂教授はつぎのような理由から補助参加の利益を肯定された︒これまでも多くの論者に指摘さ
れていたことではあるが︑判決主文の判断であれ︑判決理由中の判断であれ︑第三者になんらかの判決の効力が及ぶか
︵一〇〇九︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇〇同志社法学 六〇巻三号
否かによって補助参加の利益の有無を判断すべきではなく︑補助参加人の訴訟手続における地位を重視すべきであると
する︒特に︑補助参加人に被参加人=訴訟当事者と同等かあるいはそれ以上の役割を期待する︒このような補助参加人
の地位の独立性の尊重は井上︵治︶教授と共通の考えに基くものと思われる︒新堂教授はつぎのように主張される︒
﹁補助参加人が当事者と同等か︑場合によってはそれ以上の時間と費用等を費やして︑訴訟追行している事実を重視
し︑補助参加人の利益を最大限に尊重する一方その責任も当事者に近いものにする理論を提唱し︑補助参加人と訴訟の
相手方との間にも︑争点効が生ずることを認めるべしと説いた︒⁝⁝私見からすると︑補助参加の利益は︑判旨のよう
に限定する必要はない︒少なくとも本訴の一方当事者と別訴の一方当事者とが同一人であり︑かつ︑両事件において主
要な争点が共通であるかぎり︑本訴の他方当事者のために︑別訴の他方当事者のために︑別訴の他方当事者が補助参加
することを認めて差し支えない︒別訴がいまだ係属する前であっても︑解決すべき紛争が予想され別訴の可能性が考え
られる場合にも同様に補助参加が許されるべきであろう︒﹂
新堂教授が補助参加を広く認めるについては︑いくつかのメリットをあげられる︒その一は︑広く補助参加を認めて
補助参加人にも反対尋問等の機会を与えて審理の密度を濃くし判決の正確性を高める︒その二は︑主要な争点について
の審理を一か所に集中させることができる︒訴訟遅延︑煩雑化の懸念もあるが広く紛争解決の視点からはこの欠点は補
うことができる︒その三は︑補助参加人と相手方との間に和解の可能性が生ずる ︵
︒ 13︶
補助参加人に具体的な事件のなかでどこまで独自の訴訟活動を許容することができるかが先決問題であって︑補助参
加人の訴訟活動によって審理の充実や広範囲の紛争解決を期待するのは︑補助参加人を当事者とみなすことにもなりか
ねない︒ ④ 類似の事例として大決昭和八年九月九日民集一二巻二二九四頁がある︒ ︵一〇一〇︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇一同志社法学 六〇巻三号 電鉄会社の停留場の設置の実現のために会社に寄付をすることとし︑住民への寄付の割当ての決議をした︒この決議に基き出納員Xが住民の一人であるYに割当金の支払請求訴訟を提起した︒この訴訟にZほか二二名が補助参加の申出
をした︒補助参加の理由は︑同一地区の住民であって︑右住民大会の決議が有効に成立したのもと認められてYが敗訴
すれば︑同一の理由により他日Xから割当金の支払いを請求される虞れがあるから︑訴訟の結果につき利害関係がある
とのことであった︒大審院は参加の理由があるとして︑決定で次のように述べた︒
︿決定要旨﹀ ﹁民事訴訟法第六十四条ニ所謂訴訟参加ノ許サルヘキ為メニハ参加人カ加入セントスル当該訴訟ノ結果
ニ付法律上利害関係ヲ有スルコトヲ必要トスヘク換言スレハ参加人カ其ノ加入セントスル訴訟ニ於ケル判決ノ効力
又ハ内容ニ付法律上利害関係ノ影響ヲ被ルヘキ地位ニ在ル場合タルコトヲ要シ且之ヲ以テ足ルモノト解スヘク必シ
モ右訴訟ノ判決カ直接参加人ニ対シテモ其ノ効力ヲ及ホシ其ノ実体権ニ影響ヲ生スル場合ニ限ルモノト解スヘキニ
非ス本件ニ付之ヲ観ルニ参加人ノ参加理由トシテ主張スルトコロハ畢竟本訴訟ニ於ケル控訴人︵原告︶ノ請求原因ハ
被控訴人︵被告︶等ノ居村大字五位堂ノ住民大会ニ於テ各住民ハ本訴賦課金ヲ支払フヘキ旨協議ヲ遂ケタルヲ以テ該
協議費ノ支払ヲ求ムル旨主張セルモノニシテ参加人等ハ何レモ右居村大字ノ住民ナルヲ以テ若シ被控訴人等ニ於テ
敗訴センカ参加人等モ同一理由ニ依リ他日控訴人ヨリ右協議費ノ請求ヲ受クルニ至ルヘキ虞アリト謂フニ在ルカ故
ニ参加人等ハ右本訴訟ニ於ケル判決ノ内容ニ付法律上利害関係ノ影響ヲ受クヘキ地位ニ在ルモノト解スヘク従テ縦
令右判決ノ効力カ直接参加人等ノ権利ニ影響ヲ及ホスコトナシトスルモ参加人等カ被控訴人ヲ補助スヘキ参加理由
タルニ充分ナルモノト解セサルヲ得ス﹂
︵一〇一一︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇二同志社法学 六〇巻三号
三 学説の検討
︱
補助参加論の論理構造を中心として︱
これまでの補助参加に関する議論は︑被参加人と相手方の訴訟の結果が補助参加人にいかなる影響を与えるかを論
じ︑なんらかの影響を受ける場合に補助参加を肯定することを視野に入れて論ずるものである︒補助参加人の手続保障
を目的としたり︑手続保障を与えたから不利益も甘受せよと論じたり︑また︑補助参加人という理由で当事者に劣後す
る地位を押しつけるべきではなく︑当事者と同等ないしそれ以上の地位さえ認められると論ずるものもある︒これらは
紛争解決手続のなかで当事者間でなされる紛争解決と補助参加人が関与した場合の被参加人あるいは相手方との関係を
どのように構成すべきかに意を払っていないように思われる︒補助参加の控訴構造論も考慮すべきではないだろうか︒
以下︑いくつかの論点において学説の検討を試みるなかで問題点を明らかにしたい︒
一 補助参加人の利益・不利益概念
︱
訴訟物限定説と訴訟物非限定説の対立︱
㈠ 補助参加の利益も訴えの利益と同様︑法律上の利益であるといわれてきたが︑補助参加の利益は訴訟の結果が補 助参加人たる第三者に事実上不利益を及ぼす場合に認められるとする見解が有力になってきている︵実質的利害関係説 ︵
14︶
︶ ︒
この立場では︑理由中の判断との利害関係でも補助参加の利益ありとされる︒ただ理由中の判断について利害関係を有
する場合といっても︑事実の存否あるいは法律関係の存否について︑当該裁判所の判断が後訴の参加人を当事者とする
訴訟にどのように影響するかについてはかならずしも明らかでない︒たとえば︑債権者の債務者に対する金銭支払請求
訴訟に当該債務を保証した第三者が債務者側に補助参加したとする︒この訴訟で主債務なしとの判断が出たとすると︑
保証人の保証債務も︑実体法上︑保証債務の附随性が認められているので︑保証人も債権者に主債務の不存在を理由に
保証債務の不存在を主張することができる︒この場合は訴訟物についての判断が補助参加人の法的地位に有利に影響し ︵一〇一二︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇三同志社法学 六〇巻三号 た場合である︒他方︑主債務者が敗訴した場合︑それにより後訴の保証債務の履行請求において前訴の主債務存在の判断は保証人にどのような影響を与えることになるのか︒主債務者敗訴の責任を保証人も負担しなければならないとの参加的効力は考えられない︒主債務の存在と保証債務は関連があるとは言っても︑それぞれ独立した契約のもとに成立しているのであって︑判断対象および訴訟資料も異にする︒ここで主債務の存在が保証人によって後訴で否定することができないという趣旨であれば︑訴訟物についての判断が第三者である保証人の法的地位に影響を及ぼすことになる︒請求原因レベルで考えるならば︑債権者と債務者の間で金銭消費貸借の合意と金銭の授受についてはもはや争いえないということになる︒では︑さらに︑主要事実の存否を推認させる間接事実︑例えば︑債務者がまとまった金銭を必要とする諸事情が理由中で明らかにされている場合︑そのことを保証人は後訴で争うことはできないのか︒他の反対の間接事実から債務者の金銭借入の必要性がなかったことを明らかにすることは可能であり︑これを否定する根拠は見出しえない︒このように考えるならば︑理由中の判断は主文の結論を導き出すための前提事実の存否に関する判断であり︑この事実が補助参加人を当事者とする訴訟に影響する場合︑事実上︑利害関係ありとみることができる︒理由中の判断である事実が存在するとされても︑後訴の裁判官は別の請求について判断をするさいに別の事実にもとづいて︑その存否については改めて自由心証によって異なる判断なしうる︒この場合︑間接事実について別逆に拘束力がないがゆえに︑後訴の当事者になんの影響もないとしなければならない︒債権者の主債務者に対する債務の履行請求訴訟と補助参加した保証人に対する保証債務の履行請求訴訟との関係では︑後訴の保証債務の存在の前提として主債務の存在が不可欠であるが︑後訴裁判所として考慮しなければならないのは︑前訴裁判所が一定の証拠あるいは間接事実から主債務の成立原因事実を認定したというその成立原因事実について保証人は利害関係ありとする︒ここでは反射効とか既判力の拡張は考えられていないのも確かなことである ︵
︒ 15︶
︵一〇一三︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇四同志社法学 六〇巻三号
㈡ 過程志向の必要から第三者の弁論要求を参加の適否の基準とする説 ︵
16︶
この学説では補助参加人を当事者とする後訴に現在の訴訟の結果がいかなる影響を与えるかが重要なのではなく︑現
在︑当事者間で争われている争点に第三者がどのような関係を有しているかが重要であるという︒第三者がその争点に
つき弁論を要求できるだけの当該争点に主体的に関与しうる地位を有しているかが︑補助参加の利益を基礎づけること
になる︒この利益は争点について﹁議論する利益﹂であり︑紛争主体としての関与の利益である︒なにが争点になって
いるか︑あるいはなにが争点になるかとの︑紛争・手続の展開の具体的態様との関連で決められるという︒この考えは
補助参加の目的と機能を攻撃防御方法を展開すること自体に求めているので︑補助参加人の将来の訴訟での有利な展開
は予定されていない︒
この説の評価はむずかしいが︑補助参加人として手続関与の機会さえあれば参加の目的を達したことになるので︑補
助参加の機能についても︑従来のように後訴での有利な結果を確保する手段とみることはできなくなるであろう︒それ
では︑なぜ第三者は他人間の訴訟に入って本来の訴訟手続を補雑化しようとするのか︒第三者が他人間の訴訟に介入す
る根拠を示す必要はあると思う︒
㈢ 主文の判断との利害関係を有する場合にのみ補助参加の利益を肯定する見解がある︒この見解は現在でも有力と
思われる ︵
︒ 17︶
笠井教授が訴訟物限定説の立場から補助参加の利益が肯定されるとしたものはつぎの五例がある︒
債権者の保証人に対する保証債務履行請求訴訟に主債務者が補助参加する︒将来︑求償訴訟の提起を予想して参
加する︒
と類似の事例で︑債権者の主債務者に対する貸金返還請求訴訟に保証人が補助参加する︒主債務者勝訴であれ ︵一〇一四︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇五同志社法学 六〇巻三号 ば保証人はこの判決を援用して履行を拒むことができる︒ただ敗訴の場合は債権者から請求されると事実上不利になる︒
追奪訴訟に売主が買主側に補助参加する︒
土地所有者の土地賃借人で建物所有者に対する建物収去土地明渡請求訴訟に建物の賃借人が補助参加する︒
民法第七一七条一項本文の責任を問う土地の工作物の占有者に対する損害賠償請求訴訟の原告側に工作物の所有
者が補助参加する︒
これらの事例は訴訟物に関する判断が第三者の法的地位に影響を与えるので︑笠井教授は補助参加の利益を肯定され る︒ この趣旨は既に︑奈良次郎元判事によって明らかにされていた ︵
︒ 18︶
﹁本訴訟の原・被告間の訴訟が係属した結果︵これは訴訟物についの判断を予定していると思われる⁝⁝筆者のコメ
ント︶補助参加人の法的地位が実体法上その変動を生ずるおそれが生じ︵これは訴訟物についての判断が補助参加人の
法的地位に不利に作用する場合を想定していると思われる︒﹁法的地位﹂ということは法律的にみて影響ありとされる
場合に限る趣旨と解される⁝⁝筆者のコメント︶不安定になること︑すなわち︑原告または被告の主張に従えば︵その
法的拘束力が及ばないにしても
︱
反射効を肯定する見解に立てば︑反射効が及ぶべきときはもちろんということになる︶当然︑補助参加人の法的地位に変動を生ずるおそれがあり︑将来の紛争が予想されるがゆえに︑その法的関係を未
然に明確にして将来の紛争に備えることを可能にするのが相当とされる︒
笠井教授の見解において︑訴訟物についての判断が第三者たる補助参加人が当事者となる後訴にいかなる影響を与え
るかを補助参加の利益の判断基準とされた︒前訴の訴訟物についての判決の後訴への影響を考えるにあたって︑前訴の
︵一〇一五︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇六同志社法学 六〇巻三号
訴訟物に関する判決が後訴の訴訟物とどのような関連を有するかを検討する必要がある︒︵A︶︵B︶に掲記されている
主債務者に対する主債務の履行請求訴訟に保証人が補助参加する場合と︑保証人に対する保証債務の履行請求訴訟に主
債務者が補助参加する場合では︑問題状況は異なる︒前者において主債務者敗訴の場合︑保証人に対する参加的効力は
考えられないのに対し︑後者において保証人敗訴の理由は︑主債務の存在を前提として保証債務の存在を認めるもので
あり︑主債務の存在は理由中の判断であるとはいえ保証債務の存在の直接前提とされる義務である︒後者の場合︑前訴
の訴訟物に関する判決︵保証債務ありとの判断︶が後訴の求償権訴訟に直接影響するわけではない︒後訴の求償訴訟に
おいて判断されなければならないのは︑保証債務を履行したことと債務者の求償義務の存否である︒このような理由中
の判断が求償請求訴訟において重要な役割を担っているのである︒ところが前者の例では被参加人・補助参加人間では
第二の訴訟は考えられないので︑相手方当事者である債権者の保証人に対する後訴で︑保証人が再度主債務の不存在を
主張することができるかが問題になる︒債権者の主たる債務者に対する主債務履行請求訴訟において主債務者は自己の
債務の存否を主体的に争うことができたが︑その訴訟の結果を補助参加人である保証人は補助参加していたということ
だけで︑対債権者との関係で主債務の不存在の主張はできないということにならないのではないか︒保証人が当事者と
して保証債務の不存在を主張する場合︑その根拠となる事由は保証人として当然提出できるのではないか︒これによっ
て主債務の存否の判断に矛盾が生じたとしても︑保証人は前訴で補助参加人として訴訟に関与していたにすぎないの
で︑前訴の訴訟物と後訴の訴訟物が異なる以上︑合一確定の問題は生じないものと考える︒理由中の判断は第二の訴訟
でも自由心証のもとで評価されるので︑判断基準として不安定なものがある︒ただ︑事実上の影響で補助参加の利益を
判断すると﹁訴訟物限定説﹂の意義が減殺されるのではないか︒ ︵一〇一六︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇七同志社法学 六〇巻三号 二 補助参加の利益の補助参加の要件のなかでの位置づけ 補助参加の要件のうち補助参加の利益がしばしば重要な要件としてとりあげられる︒訴訟の結果について法律上の利
害関係あることをもって補助参加の利益があるとされている︒また︑ここで法律上の利害関係というのも︑訴えの適法
要件としての訴えの利益に準じて説いたものである︒
補助参加の利益は訴えの利益と異なり︑被参加人あるいは相手方からの異議がないかぎり判断されないというのが判
例︑通説である︒職権調査事項ではないとされている︒補助参加の利益を補助参加の要件の一つとして論ずる場合︑こ
れまで補助参加の利益=利害関係の内容の検討が中心であって︑しかも補助参加の利益を広義に解するのが通例である
ということもあって︑補助参加の要件としての機能をはたした例は少なかったと思われる︒これで補助参加の利益がそ
の役割をはたしていると言っていいのかは疑問である︒補助参加の利益と訴えの利益はその機能を異にするので︑同一
に論ずることは適切ではないが︑補助参加の要件としての参加の利益を考えるとき︑補助参加によって参加人が目的と
している自己の法的地位の保護を達成するのに︑補助参加が適切であるかとの観点が必要ではないか︒このような観点
から︑⑤東京高決平成二年一月一六日判例タイムズ七五四号二二〇頁の決定要旨は興味がある ︵
︒ 19︶
遺産をめぐる兄弟間の争いで︑公証人作成の遺言公正証書がかえ玉による公正証書作成嘱託があったのではないかと
の問題が生じ︑公証人が遺産をめぐる訴訟に補助参加した事件である︒公証人は︑公証人法上の懲戒処分を回避するた
め︑また名誉侵害をおそれ︑さらには国家賠償請求をおそれて補助参加したのではあるが︑これらの問題は既に解決ず
みであったり︑事実上の利害関係でしかないとの理由で︑補助参加の申出を却下した︒本決定は理由中の判断との利害
関係でもって補助参加の利益を判断すべきであるとしたが︑この点は現在の多数説に従ったものといえる︒注目したい
のは︑理由中の判断が予想される後訴にどのような影響を与えるかを分析し︑補助参加の目的からみて参加を認めるだ
︵一〇一七︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇八同志社法学 六〇巻三号
けの必要性があるかを検討した点である︒補助参加の要件論にとって重要な意義を有する事案であると思う
三 訴訟当事者の訴訟手続への支配権
︱
処分権主義の尊重この論点は︑⑥最判昭和五一年三月三〇日判例時報八一四号一一二頁において顕在化した︒事実の概要はつぎのよう
なものである︒Y運転の自動車が交差点で︑Zの運転する自動者と衝突し︑そのあおりで附近を通行中のXにZの車が
衝突し︑瀕死の重傷を負わせた︒XがY・Zを共同被告として損害賠償を請求したところ︑一審では︑Zに対する請求
は︑Zに過失がないとの理由で棄却され︑Yに対する請求だけが認容された︒Yに対するこの認容判決は控訴もなく確
定した︒他方︑XのZに対する棄却判決についてはXは控訴せずにいたところ︑YはX側に補助参加して控訴を提起し
た︒補助参加の理由はXのZに対する請求棄却判決はZの損害賠償義務なしとの趣旨であって︑Yが損害賠償義務を履
行した後に︑Zに損害賠償の分担を求めて求償する場合に︑この判断がYに事実上不利に作用するという点にあった︒
最高裁も﹁本件訴訟においてZのXに対する損害賠償責任が認められれば︑YはXに対しZと各自損害を賠償すれば
足りることとなり︑みずから損害を賠償したときはZに対し求償しうることになるのであるから︑Yは本件訴訟におい
て︑Xの敗訴を防ぎ︑ZのXに対する損害賠償責任が認められる結果を得ることに利益を有するということができ︑そ
のために自己に対する第一審判決について控訴しないときは第一審において相手方であったXに補助参加することも許
されると解するのが相当である︒﹂
この事件においてXの控訴がないのにYがX側に補助参加し︑XのZに対する請求棄却判決に対してYが控訴するこ
とができるとすれば︑控訴提起も処分権主義に服する以上︑X自身の判断に委ねるべきではなかったか︒このような視
点から分析してみるとつぎのような見解には疑問がある︒ ︵一〇一八︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一〇九同志社法学 六〇巻三号 ㈠ 鈴木重勝教授はつぎのような立場にたって本件補助参加を肯定される ︵
︒Zも有責であるとの判決を得ることが︑ 20︶
Y・Z間の求償訴訟における不利益作用を排除する唯一の手段でないにしても︑決定的に有力な手段である︒それゆえ
にYはX側に補助参加して控訴を提起したのであるが︑そのようにせざるをえなかったのは︑Xの共同訴訟の結果であ
るから︑ここにX自身とのかかわりあるといえるだろう︒
鈴木教授の見解については︑Xの控訴提起の自由を損うことになるのではないか︒X自身がZに対する敗訴判決に服
するとしている以上︑第三者はXの意思に反して控訴提起はできないとすべきではないか︒
㈡ 住吉博教授は︑Xの控訴提起によって︑XがZに対して勝訴すれば︑Xからする執行の標的を一つ増やし︑それ
だけ満足の可能度は高まるはずである︒たとえばYが無資力である場合を考えると︑全額賠償を可能にするための︑せ
っかくの不真正連帯債務の履行請求が確実になるのであるから︑Yの補助参加による控訴の提起は︑Xにとっても決し
て無意味ではない ︵
︒ 21︶
住吉教授のこの見解も︑Xの控訴の自由を害するものである︒何人に対して強制執行の手段をとるかは債権者の判断
に委ねるべきであろう︒
四 補助参加の訴訟構造に関する一試論
これまでの学説の流れは︑補助参加人の利益を守り︑実現する方向であった︒訴訟の結果について利害関係を有する
第三者の範囲を決めるについても︑法律上の利害関係のみならず︑事実上の利害関係を有するにすぎない者まで取り込
んできた︒この立場では︑補助参加人の訴訟活動の目的があいまいになる︒事実上の利害関係となると︑補助参加人の
︵一〇一九︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一一〇同志社法学 六〇巻三号
訴訟活動はどの点で︑どのように有効であったのか判断がつかず︑補助参加して︑事実を主張し︑証拠を提示しておけ
ば︑あるいは被参加人に有利な判決が期待できるかもしれないということになる︒このように考えると︑補助参加人と
訴訟との利害関係の内容を明らかにし︑文言どおり︑訴訟の結果=判決主文の判断内容が補助参加人の法的地位に直接
影響を及ぼす場合に限って補助参加を認めるべきであろう︒
また︑補助参加人の地位を強化する点も種々の問題を含むものである︒現在︑学説の一般的傾向として︑補助参加人
を従たる地位に置くことは消極的にならざるをえないであろう︒しかしながら︑被参加人・相手方の訴訟を維持し︑い
かなる問題をどのような手続で解決していくかは当事者の自治に委ねなければならない︒例えば︑⑦最判昭和六三年二
月二五日民集四二巻二号一二〇頁は共同訴訟参加ができるにもかかわらず補助参加をしたため被参加人の控訴の取下げ
を阻止することができなかった︒これを当事者の手続支配権︑あるいは処分権主義と称することができるが︑補助参加
においても︑このような訴訟当事者の主体性を尊重してかからなければならない︒
訴訟告知と被告知者の補助参加を論じた井上治典教授も同様の問題を提起されている︒つぎのような判例が検討の対
象とされている︒訴外A所有地がAからBへ︑BからCへ所有権移転登記がなされている︒Aの相続人XはAからBへ
の売買の仲介をしたYには代理権がなかったと主張して︑Cを相手に所有権確認及び共有持分権移転登記請求訴訟を提
起するとともに︑もしXが敗訴したらAには代理権を与えていないことを理由中︑Yへの損害賠償請求を保全するため
Yに訴訟告知をした︒そこでYはC側に補助参加した︒CはYの代理権の存在を主張し︑予備的に表見代理の成立を主
張した︒前訴ではYに代理権を授与したとまではいえないが表見代理は認められるとした︒
その後︑第二の訴訟でXはYに対して無権代理行為を原因とする不法行為にもとづく損害賠償請求訴訟を提起し︑こ の訴えに関する判決が⑧仙台高判昭和五五年一月一八日高民集三三巻一号一頁︑判例時報九六三号五五頁である ︵
︒この 22︶ ︵一〇二〇︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一一一同志社法学 六〇巻三号 事件の第一審判決は︑訴訟告知の場合に被告知者が参加的効力を受けるのは︑被告知者において告知者と協同して相手方に対して攻撃防御を尽すことにつき利害が一致し︑そうすることを期待できる立場にあることが前提となるので︑そのような場合告知者と利害が一致し協同しうる争点に限って訴訟告知の効力が被告知者に及ぶものと解すべきであるとした︒この前提からYの代理権の有無については前訴判断に拘束されないとしてAのYに対する代理権の授与を認定
し︑Xの請求を棄却した︒控訴審は第一審と異なり︑Xらは訴訟告知によりYの代理権及び代理行為の存否につきYに
参加的効力を及ぼす主観的︑客観的利益を有し︑かつYは右争点につき前訴において︑代理権が存在しないと信ずると
きはXらのために︑存在すると信ずるときはCのため補助参加することによってその主張︑立証を尽すことができる地
位にあったから︑前訴判決理由中の判断は本件訴訟においてYを拘束するとした︒
また︑井上治典教授は交通事故の被害者の遺族が加害者と保険会社を相手に不法行為にもとづく損害賠償請求訴訟を
提起したところ︑被告らは本件被害者の死亡は事故後の医療過誤によるものであるとして︑病院に訴訟告知をした事件
を検討する ︵
︒この事件で控訴審は異時的共同不法行為として各自全損害を賠償すべきであるとして︑このようなケース 23︶
では賠償義務者間での分担割合を確定する必要はないから訴訟告知自体実益のないものであるとした︵⑨東京高判昭和
六〇年六月二五日判例時報一一六〇号九三頁︶︒
これらの判例を検討し︑井上治典教授が導き出した結論はつぎのようなものである︒﹁この事案とこれまで分析して
きた仙台高裁のケースとは︑問題状況が酷似している︒一方は︑告知を受けた医療機関が自らの過失の存否や割合につ
いて︑どこまで前訴の中で弁論を展開する必然性があったのかであり︑他方は被告知者が前訴で表見代理ではなく有権
代理をあくまで主張しつづけることが期待できたのかどうかであり︑いずれも消極的結論になるべき点では︑共通項を
もっとみられるからである︒参加的効力が及ばないのは︑それぞれの参加人に固有の争点について︑あらためて主張・
︵一〇二一︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一一二同志社法学 六〇巻三号
立証の機会を与えることが公平かつ公正であるからであり︑参加人と相手方との間には効力が及ばないからである︒﹂
手続保障に関する井上治典教授の立場を考慮するとき︑手続のあり方に関する教授の見解をその基礎にたち返って検
討する必要があるが︑ここではこの問題を棚上げにして考えると︑いかなる問題を何人と何人との間で解決すべきかと
いう︑訴訟手続の基本を維持する必要があることを教授自身肯定されるものと評価できる︒
このような観点から補助参加を考えると︑補助参加の訴訟構造は独立当事者参加や共同訴訟とは異なった姿を見せる
ことになる ︵
︒ 24︶
︵
既判力の主観的拡張の純化︱︱﹂金沢法学四六巻一号︵二〇〇三年︶一頁︑堀野出﹁補助参加の機能と参加の利益の判断構造﹂福永有利 1︶ 伊藤眞﹁補助参加の利益再考﹂民事訴訟雑誌四一号︵一九九五年︶一頁︑福本知行﹁ドイツ民事訴訟法における補助参加の利益論の形成 先生古稀記念﹃企業紛争と民事手続法理論﹄︵二〇〇五年 商事法務︶一五三頁︑笠井正俊﹁補助参加の利益に関する覚書﹂河野正憲=伊藤 眞=高橋宏志編井上治典先生追悼論文集﹃民事紛争と手続理論の現在﹄︵二〇〇八年 法律文化社︶これらの諸研究は必ずしも共通の問題を
扱っているわけではない︒伊藤︵眞︶教授は参加人の法律上の地位自体に対する判決の事実上の影響力を補助参加の利益の基礎とする︒福
本助教授はこの論文において補助参加の利益の理論的基礎固めを意図する︒堀野教授は補助参加申出人の実体的利益がドイツ法由来のもの
についてはこれまでの理論が妥当するとしながらも︑アメリカ法などに由来するもの︵例えば︑株主が取締役の責任を問うために提起する
訴訟に会社が取締役側に補助参加︶については補助参加の利益の存否の判断基準を異にせざるをえないとする︒笠井教授は補助参加の利益
につき兼子一博士の説をはじめとする伝統的通説︵訴訟物限定説︶の意義を再評価する︒その他︑多数の補助参加論があるが︑最近のもの
に限って例示の意味でこれらの文献を掲記するにとどめた︒
︵
olfgang Lüke: Die Beteiligung Dritter am Zivilprozess W1993, Mohn, S. 3842︶ 伊藤︵眞︶・前掲一八頁︒︵︶は補助参加の目的として︑第三者の保
護機能も有力に主張されている︒この見解では︑主たる訴訟の判決が補助参加人に不利に作用するとき︑一方当事者側に立って有利な判決
を得るよう補助し︑自己の有利になるように手続を進めることが主たる目的となる︒なお︑Rosenberg/SchwabやWieserの見解として︑この
主たる目的の他︑補助参加によって主たる当事者と補助参加人との間の紛争を回避するとか︑矛盾した理由のついた判決を回避するなどの
目的もあるとの見解も紹介されている︒ ︵一〇二二︶
補助参加の訴訟構造に関する一考察 一一三同志社法学 六〇巻三号 ︵ 3︶ 補助参加人は主たる当事者に対して従属的地位にたつと考えるのが通常の理解と思えるが︑意図的な否かは明らかでないが︑上田徹一郎・
民事訴訟法︵第五版︶五三七頁では︑補助参加人の地位の独立性を論じ︑その後に従属性を論ずる︒他方︑高橋宏志・重点講義・民事訴訟
法︵下︶三〇三頁以下は補助参加人の地位の従属性をまずとりあげ︑その後に独立性を論ずる︒民事訴訟法の規定では︑補助参加人は被参
加人の訴訟行為や参加のときの訴訟状態などに制約されているとはいえ︑被参加人のすることのできる行為は補助参加人もすることができ
ることになっているので︑条文の文言としては補助参加人の訴訟上の地位は被参加人から独立しているとみるべきかもしれない︒他方︑印
象でしかないが︑補助参加制度は当事者を補助する第三者がこれによって自己の利益を守ろうとするので︑補助参加人は被参加人に従属し
ていると解するのがあるいは素直な理解かもしれない︒
ただし︑この問題はそれほど重要ではなく︑独立性を強調するとき補助参加を広く認めて︵第三者に補助参加の機会を広く認めても主た
る当事者の行為が制約されることはないと理解する︶︑補助参加の利益を緩やかな要件のもとに肯定する傾向がうかがえる︵井上治典﹁訴訟
参加の利益﹂民事訴訟雑誌一六号一五〇頁︒当事者として訴訟を追行するのでないから︑換言すれば︑あくまで従たる当事者であるから手
続への参加を緩やかな要件のもとに認める︒なお︑その後︑井上治典教授は︑参加の利益にとってより本質的ファクターは︑いま当事者間
で争われている︑あるいは争われるであろう事項について︑第三者が紛争主体としてみずからの立場から主張・立証を行う利益と必要性が
あるかどうかという視点であって︑純粋な意味での第三者の弁論要求︑手続保障の要求こそが参加を認めるかどうかの核心をなすと主張さ
れる︵井上治典﹁第八章 補助参加の利益・再論﹂同︑﹃多数当事者の訴訟﹄︵一九九二年 信山社︶一八三頁︶︒当該訴訟手続において主体
的役割を補助参加人に認めながらも︑補助参加の利益の判断基準を緩和するとの立場を明らかにした︒
︵
4︶ 木川統一郎﹁訴訟参加の利益と形態﹂中田淳一=三ヶ月章編民事訴訟法演習Ⅰ判決手続
⑴六八頁︒
︵
5︶ 前掲︑中田淳一=三ヶ月章編民事訴訟法演習Ⅰ六八頁︒
︵
6︶ 井上治典﹁補助参加の利益﹂民事訴訟雑誌一六号一七二頁には︑ここで考察したような﹁法的判決効の種別化によっても︑とうてい補助
参加の実際的要請をみたすことはできない︒かといって︑現在のわが国の通説のように︑参加人の地位と訴訟物たる権利関係の存否との実
体法上の先決関係といってもこれまた十分とはいえないように思われる︒﹃法律上の利益﹄と﹃事実上・経済上の利益﹄なる標識とても同様
である﹂と批判されている︒それにもかかわらず︑この基準は現在でも補助参加の利益の判断基準として用いられている︒
︵
7︶ 中田淳一=三ヶ月章編﹃民事訴訟法演習Ⅰ判決手続
⑴﹄問題︹七︺解説・木川統一郎の設例参照︒
︵
8︶ 木川・前掲︑民事訴訟法演習Ⅰ六八頁︒
︵一〇二三︶