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(1)

売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質 が存在する土地の瑕疵担保責任

著者 米谷 壽代

雑誌名 同志社法學

巻 63

号 6

ページ 2791‑2816

発行年 2012‑01‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014059

(2)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一三九

平 成 二 二 年 六 月 一 日 最 高 裁 判 所 第 三 小 法 廷 判 決  平 成 二 一 年 ( 受 ) 第 一 七 号 、 土 地 瑕 疵 損 害 賠 償 請 求 事 件 ( 足 立 区 ) 裁 判 所 時 報 一 五 〇 八 号 二 頁

――

破 棄 自 判

米    谷    壽   

【 事 実 の 概 要 】

 X(買主:東京都足立区土地開発公社。原告・控訴人・被上告人)は、平成三年三月一五日、Y(売主:旭硝子株式会社の子会社(株式会社)。被告・被控訴人・上告人)から、鉄道駅敷設に伴う用地買収のための代替地とするため、本件土地を二三億円余りで買受けた(以下、本件売買契約という)。本件土地の土壌には売買契約締結当時からふっ素が含まれていたが、その当時、土壌に含まれるふっ素については法令に基づく規制の対象になっていなかった。また、取引観念上も、ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず、Xの担当者らも同様の認識であった。平成一三年三月二八日、環境基本法一六条一項に基づき、人の健康を保護し、

二七九一

(3)

(    )同志社法学 六三巻六号一四〇 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任及び生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準として、土壌の汚染に係る環境基準(平成三年八月環境庁告示第四六号)が改正され、新たに土壌に含まれるふっ素に関する環境基準が告示された。加えて、平成一五年二月一五日、土壌汚染対策法及び土壌汚染対策法施行令が施行された。そこで、土壌に含まれると人の健康に係る被害を生ずるおそれがある同法二条一項にいう﹁特定有害物質﹂の中に、鉛、ヒ素、カドミウムとともに、ふっ素及びその化合物が含まれると定められた。これらの特定有害物質については、法(平成二一年法律第二三号による改正前の)五条一項所定の﹁環境省令で定める基準﹂として、土壌汚染対策法施行規則(平成二二年環境省令第一号による改正前)一八条において、土壌﹁溶出量基準値﹂、及び土壌﹁含有量基準値﹂が定められた。 この間、土壌汚染対策法の施行に伴い、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(平成一二年東京都条例第二一五号)一一五条二項に基づき、汚染土壌処理基準を定めた都の条例施行規則が改正され、ふっ素及びその化合物に係る汚染土壌処理基準を上記環境省令の﹁施行規則﹂と同一の溶出及び含有量基準値の規定が行われた。これらの改正をうけ、平成一七年一一月二日頃、本件土地につき、都は、上記条例一一七条二項に基づく土壌の汚染状況の調査を行った。その結果、当該土壌に上記の溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていることが判明した。一審(東京地判平成一九・七・二五金判一三〇五号五〇頁)において、Xは、平成一三年一〇月に施行された東京都条例等に基づく土地改変者の義務の履行に伴い、土地利用の制限(具体的には、ボーリング調査の実施や汚染拡散防止措置など)をうけ、そのことが民法五七〇条にいう﹁瑕疵﹂にあたると主張した。 これに対し、裁判所は、﹁法令等による制限について瑕疵担保責任の規定の適用が問題となる場合において同規定(民法五七〇条)が適用されるためには、売買契約締結時において、法令等により、目的物の利用が制限されていることが必要である。すなわち、売買契約締結時において、現に目的物の利用を制限する法令等が施行され、又は同法令等の施 二七九二

(4)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一四一 行が確実に予定され、売買契約締結後に実際に施行されることが必要である。けだし、売買契約締結時において、目的物の利用を制限する法令等の施行が確実に予定されていない場合においても、売主に瑕疵担保責任を負わせるとすれば、売主に過大な負担を課するものであり、かえって売買契約当事者間の公平を失する結果となる﹂と判示し、﹁Xの主張は、売買契約締結時に存在しない瑕疵を﹁瑕疵﹂と主張するものであり、主張自体失当である。⋮なお、本件においては、売買契約締結時において、目的物の利用が法令等により制限されておらず、これを制限する法令等の施行が確実に予定されるという事情を認めるに足りない﹂として、Xの主張を棄却した。これを不服としてXが控訴。控訴審(東京高判平成二〇・九・二五金判一三〇五号三六頁)では、本件売買契約締結当時、本件土地の土壌がふっ素で汚染されていたことが本件土地の隠れた瑕疵であるとの主張をXが追加し、この瑕疵が上記東京都条例の制定、施行により顕現化された旨の主張をした。一方、Yは、控訴人の上記主張が時機に後れた攻撃防御方法に当たるとし、民事訴訟法一五七条に基づく却下の決定を求める旨の申立てをした。これに対し、裁判所は、売買契約目的物に含まれていた物質が、契約後に有害であると社会的に認知された場合の﹁隠れた瑕疵﹂認定の可否について、一審の判決を再検討した。そのなかで、目的物の物理的な内容が変わらなくても、売買契約締結当時の当事者間での有害性の認識、もしくは規制を受けることに伴い、隠れたる瑕疵の認定の基準が異なってくることが妥当か否かを以下の三段階の場面に分けて検討した。すなわち、(ア)﹁売買契約締結当時は取引上相当な注意を払っても発見することができず、その後売買契約の目的物である土地の土壌に売買契約締結当時から当該有害物質が人の生命、身体、健康を損なう危険がないと認められる限度を超えて含まれていたことが判明した﹂場合、(イ)﹁当時の取引観念上は有害であると認識されていなかったが、売買契約締結後に有害であると社会的に認識された場合において、売買契約の目的物である土地の土壌に当該物質が人の生命、身体、健康を損なう危険がないと認められる限度を超えて含まれていたことが判明した﹂場合、(ウ)﹁当時の取引観念上は有

二七九三

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(    )同志社法学 六三巻六号一四二 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任害と認識されていなかったが、売買契約後に有害であると社会的に認識されたために、当該物質を、土壌を汚染するものとして、これを規制する法令が制定されるに至った﹂場合である。そのうえで、﹁民法五七〇条に基づく売主の瑕疵担保責任は、売買契約の当事者間の公平と取引の信用を保護するために特に法定されたものであり、買主が売主に過失その他の帰責事由があることを理由として発生するものではなく、売買契約の当事者双方が予期しなかったような売買の目的物の性能、品質に欠ける点があるという事態が生じたときに、その負担を売主に負わせることとする制度である。このことに鑑みると、民法五七〇条の適用上、(ア)の場合と(イ)の場合及び(ウ)の場合とで区別することは、相当ではないというべきである﹂として、﹁上記売買契約の目的物である土地の土壌に実際には有害物質が含まれていたが、売買契約締結当時は取引上相当な注意を払っても発見することができず、その後、売買契約の目的物である土地の土壌に実際には有害物質が人の生命、身体、健康を損なう危険がないと認められる限度を超えて含まれていたことが判明した場合﹂には、当該土地における上記有害物質の存在を民法五七〇条にいう隠れた瑕疵と認定することを否定できないとの立場を示した。なお、ここで評価された損害、およびその額とは、土壌汚染対策費用として、平成一八年三月三一日のボーリング調査による土壌汚染調査の追加調査の委託費用(一八四八万五二五〇円)、平成一八年九月八日の土壌汚染対策工事費用(五一九万七五〇〇円)、平成一八年一二月二六日の土壌汚染の除去等の拡散防止措置の実施費用(四億二五二五万円)であった。以上が、上記の隠れた瑕疵と損害との間に相当因果関係が存在するとして認められた賠償額である。 一方、都条例一一七条一項、及び同上二項に基づく対策費用である平成一七年八月四日の土壌汚染調査に関わる地歴等調査費用(五万二五〇〇円)、同年九月二七日の土壌汚染調査のための委託契約金(九四五万円)、同年一〇月四日の追加委託契約金(二五二万円)の合計一二〇二万二五〇〇万円は、本件売買契約の目的物である本件土地の土壌中に、 二七九四

(6)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一四三 ふっ素が人の生命、身体、健康を損なう危険がないと認められる限度を超えて含まれていたという隠れた瑕疵の存在との間に相当因果関係はないと判断されたため認められなかった。また、Y側の消滅時効の主張も認められなかった。 これに対し、Yは、原審判決に対し、①その社会的影響、②五七〇条の﹁隠れた瑕疵﹂の認定基準、③損害賠償責任についての判断基準、④消滅時効の抗弁の否定等を不服として上告した 1

。最高裁は、これらの主張のうち、②五七〇条の﹁隠れた瑕疵﹂の認定に対するYの主張を認容して、次のように判示した。

【 判 旨 】

――

破 棄 自 判

 ﹁売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべきところ、前記事実関係によれば、本件売買契約締結当時、取引観念上、ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず、Xの担当者もそのような認識を有していなかったのであり、ふっ素が、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるなどの有害物質として、法令に基づく規制の対象となったのは、本件売買契約締結後であったというのである。そして本件売買契約の当事者間において、本件土地が備えるべき属性として、その土壌に、ふっ素が含まれていないことや、本件売買契約締結当時に有害性が認識されていたか否かにかかわらず、人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが、特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれない。そうすると、本件売買契約締結当時の取引観念上、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されていなかったふっ素について、本件売買契約の当事者間において、それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず、本件土地の土壌に溶出量

二七九五

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(    )同志社法学 六三巻六号一四四 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても、そのことは、民法五七〇条にいう瑕疵には当たらないというべきである。以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決中Y敗訴部分は破棄を免れない﹂。

【 研 究 】

 本判決は、土壌汚染をめぐる不動産取引の場面で、契約締結後に有害性が示されたふっ素の除去費用を原因者である過去の所有者に負わせることの是非について初めて最高裁で争われた事件である。本件で、最高裁判所が明らかにした民法五七〇条の﹁瑕疵﹂の捉え方については、今後、民法と環境法の交錯領域として、理論上も実務上も重要な意義を有すると思われるので、本稿で取り上げることにしたものである

)2

。また、﹁瑕疵﹂を判断する前提となる﹁売買契約の目的物である土地が通常備えるべき品質・性能﹂について、いかなる段階で、どのような品質・性能を具備しておくことが求められているのかという点でも、従来の学説や下級審判例の展開を分析しておく必要がある。もっとも、すでに法定責任説、契約責任説の立場から、それぞれ多くの評釈において本判決での瑕疵の分析・評価が試みられている 3

。そのため、本稿では、瑕疵担保責任の法的性質や効果等に関する近年の学説の動向については要点の紹介・検討にとどめ、本判決の特徴である土壌汚染をめぐる不動産取引の現状について重点を置き、本件と類似する土壌汚染をめぐる瑕疵担保責任が争われた下級審裁判例の分析を試みることにする。したがって、以下では、有害物質の含まれている土地の取引を規制する立法の概観と、行政規制と民事上の問題として今後に委ねられている課題を順次確認したうえで、本判決と類似した場面で、民法五七〇条の﹁瑕疵﹂をめぐって争われてきた、近時の下級審裁判例を数件少し詳しく取り上げて分析する。その後、本判決の射程、および、今後懸念される問題についても若干の考察を加える。 二七九六

(8)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一四五

一  本 件 の 背 景 事 情

( 1 ) 土 壌 環 境 保 全 対 策 に 関 す る 政 策 の 概 要

 我が国における土壌・地下水汚染の調査や処理についての対策は、一九七〇年制定の﹁農用地の土壌の汚染防止等に関する立法﹂に始まる。その後、一九七五年には六価クロム事件 4

が問題となったことをきっかけとして、市街地の土壌汚染について注目が集まった。しかし、土壌汚染の環境基準の設定は、一九九〇年代になるまで、ほとんど行われてこなかった 5

。一九九四年になり、﹁重金属等に係る土壌調査・対策指針及び有機塩素系化合物に係る土壌・地下水汚染調査・対策暫定指針﹂が旧環境庁から提示される。一九九九年に﹁土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針及び運用基準﹂が旧環境庁から提示される 6

。この時に制定されたダイオキシン類対策特別措置法において、市街地についてはダイオキシン類に限った対策が講じられた。二〇〇二年、土壌汚染対策法が制定され、翌年の二〇〇三年二月一五日に同法が施行される 7

。五年後の二〇〇八年には土壌汚染対策法の改正が行われ 8

、改正前に問題とされていた①法律に基づく土壌汚染把握の機会の拡大、②掘削除去の回避と﹁制度的管理﹂の明確化(規制対象区域を分類し、講ずべき措置の内容を明確化する)、③搬出される汚染土壌の適正処理の確保について、現在の対策につながる方向性が示された。なお、ここで紹介した土壌汚染対策の各種法制度は、現在(二〇一一年四月)までのところ、平時における健康被害の防止の観点からの規制であることに留意しておく必要がある 9

(東日本大震災以降の立法の動向については、今後の研究を通じての検討課題としておきたい)。

二七九七

(9)

(    )同志社法学 六三巻六号一四六 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任

( 2 ) 土 壌 汚 染 対 策 法 制 定 に お け る 「 汚 染 者 負 担 原 則 」 を め ぐ る 議 論

 土壌汚染対策法の制定をめぐって、﹁汚染者負担原則﹂についても数々の議論が行われた ((

。なかでも注目されるのは、リスク低減措置の実施主体について、汚染者を主とするのではなく、﹁土地所有者等﹂を主たる対策の実施者とする条項が採用されたことである。二〇〇九年の改正においても、﹁土地所有者等の申出等に基づき、汚染原因者が判明する場合であって、汚染原因者がリスク低減措置を実施することにつき土地所有者等に異議がないときは、汚染原因者をリスク低減措置の実施主体とすることが適当である﹂という趣旨の条文が規定されたが、この段階では、あくまでも土地所有者を主たる実施者とし、汚染原因者の責任を補充的に捉えていた。この考え方は、二〇〇一年の土壌汚染対策法の中間報告書とりまとめ案のなかでも見てとれる ((

。 ここで、土地所有者を優先するとした理由は、以下の三点である。①土地所有者等こそが、その土地を実質的に支配しており、原因者が土壌のリスク低減措置をとるためには、当該土地所有者等の許諾を得なければならないこと、②原因者についてはこれを特定できない場合があること。原因者主義をとると、汚染低減措置の実施主体がいなくなってしまい制度に穴が開く恐れがあること、(これに対し、土地所有者主義をとれば、土地所有者等がいないことはまずない)原因者を特定しうる場合でも、特定する間、迅速な対応ができないこと、③原因者主義をとると、土壌の完全浄化を直ちにすべき結果に直結するため、当該土地の利用状況に応じたバラエティに富んだリスク低減措置をとりにくいことである。 この三点の理由に対する批判としては、①は汚染拡散防止対策のためであり、その土地の所有者への許諾をとる必要性は必ずしも原因者主義をとらない理由にはなりえない。②の問題については、仮に原因者主義を採用した場合、原因者が特定できない場合に限り、土地所有者等にリスク低減措置の実施をさせることも考えられるが、この場合にのみ所 二七九八

(10)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一四七 有者が補充的責任を負う理由付けが難しい ((

。③の意見については、当面のリスク低減措置を取ればいいと考えて、原因者主義でも問題はないだろうとの判断を優先したもので、異なるカテゴリーに属する複数当事者の責任関係を行政庁が裁量によって命令の対象者を選択できるという立法例がないのに、あまりに便宜的な考えで(消極的な理由から)土地所有者を主たる実施者としたものにすぎない、などの意見が提示されている ((

。 また、求償については、土壌汚染対策基本法第八条 ((

に基づき、それが認められると規定された。ただし、汚染原因者が既に費用を負担し、または負担したものとみなされる場合には認められない。なお、具体的な請求権の成立の有無及び請求できる費用の範囲については、請求者、被請求者間で合意がない限り、最終的な判断は裁判により行われるものと規定されている ((

( 3 ) 小 括

 このように農用地から始まった土壌汚染対策が、一九九〇年代に入り、市街地の汚染対策に拡張されてきたなかで、土壌汚染の認められる土地に関する調査の実施が政策上も喫緊の課題となっている。二〇〇九年の改正では、リスクの段階に応じて土地を活用させることができるようにすることと、汚染物質の除去に伴う再汚染を防止するための政策的な方向性が示された。立法の背景にこのような課題を抱える中で、これまで議論されてきた汚染者負担原則の修正の議論が本判決に与えた影響がないとは言えないのではないだろうか ((

。前項でふれた所有者主義を採用した議論のなかで、特に②の問題では、原因者主義を採用した場合の所有者の補充的責任について、説明が困難であることから、所有者主義をとるべきとの議論が行われていた。この議論を仮に受け入れるとするなら、善意の所有者が偶然その土地の権利者となってしまったがために、調査その他の対策を講じる義務が課され、土地の購入時には想定していなかった支出が発

二七九九

(11)

(    )同志社法学 六三巻六号一四八 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任生する危険性を回避することができなくなってしまう (₇

。二〇〇九年の改正では、併せて、土地の汚染拡散防止対策を汚染物質の完全除去のための掘削ではなく、当面の土地利用に差支えのない範囲で、その土地の中に残したまま利用することを促進する規定を置いている。所有者が自主的に完全除去を行った場合には、土地の売主でも汚染原因者がその費用を負担するのではなく、所有者の自己負担とすることを定めている。また、当面のリスク低減措置を取ればいいので、原因者主義でも問題ないだろうという議論も展開されている。③の点についても、異なるカテゴリーに属する複数当事者の責任関係を行政庁が裁量によって命令の対象者として選択するという前例がなかったという消極的な理由のために、まず原因者を追及するという責任論を避け、当面の所有者に負担を課すため、﹁土壌汚染対策法﹂が定められた。 この法律の功罪をめぐって、本件で争われたような民法五七〇条における﹁瑕疵﹂にあたるか否かの問題、及び、売買契約締結後に、規制により汚染物質と定められた物質が含まれている土地を購入した事例において、それに伴う財産的損害、もしくは身体的損害を不法行為法のもとで請求することができるのかとの問題などは、訴訟等において今後も繰り返し問われる可能性が残されている、といえよう。むしろ、近時の学説の動向(後述﹁二﹂)からしても、本法の下では政策としての土地取引の促進に重きが置かれ、そのために瑕疵担保責任の適用範囲を制限し、汚染に伴い生じる責任追及は不法行為法の領域に委ねられているようにも見て取れる (₈

二  「 瑕 疵 」 を め ぐ る 学 説 の 展 開

 従来の伝統的学説において、瑕疵担保責任の法的性質をめぐり、これまで法定責任説と契約責任説が、鋭く対立してきたことは上述した (₉

。本稿では、土壌汚染の土地取引における﹁瑕疵﹂の評価に関係のある範囲のみの言及にとどめて 二八〇〇

(12)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一四九 諸学説を概観する。まず、これらの学説では、民法五七〇条にいう﹁瑕疵﹂が、客観的瑕疵か主観的瑕疵かの争点が責任追及の根拠となる要素として考えられてきた ((

。潮見教授は、﹁瑕疵担保責任の法的性質について契約責任説をとる場合には、責任の正当化根拠という点では主観的瑕疵概念を採用しなければならないのに対し、法定責任説をとる場合には、客観的瑕疵概念を支持するか、主観的概念を支持するかは開かれている﹂と言及される ((

。そのうえで、契約責任説の立場から、﹁売買契約の対象の性質(したがって、契約適合性︹物の瑕疵︺)を判断するにあたっては、売買契約が締結された時点で、売主と買主とが当該契約対象である物の性質としていかなるものを観念し、契約上での意味を付与していたのかが探求されなければならないとの考え方――主観的瑕疵概念を支持する立場――﹂を表明されている ((

。これに対し、本件評釈において、半田教授は、﹁学説上は、物の瑕疵の基準として、客観説ではなく、主観説をとるべきだあるいは主観説が妥当だとするものも見られるが、客観説と主観説が相俟って物の瑕疵を定める基準となるとみるべきではないかと思われる﹂という見解を示し、さらに踏み込んで具体的な基準を提示される ((

。 もっとも、この点、本最高裁判決および後述する一部の下級審裁判例の立場の理解としては、契約責任説、法定責任説のいずれかを支持して決着をつけるものではなく、主観的瑕疵概念と客観的瑕疵概念についても対立的に捉えられたものではないと評価する学説が支配的になっている ((

。この点でむしろ重要なのは、﹁瑕疵の意義について、具体的な契約を離れて抽象的に捉えるのではなく、契約当事者の合意、契約の趣旨に照らし、通常又は特別に予定されていた品質・性能を欠く場合をいうことで、ほぼ異論がないように思われる﹂という榎本調査官の解説が注目に値する ((

。 とはいえ、瑕疵の判断枠組みについては異論がなくても、個別の事例における瑕疵の存否の評価の場面での議論は分かれている。半田教授は、﹁本事例のように売却された不動産の土壌に有害物質が含まれている場合において当事者が特に有害物質の有無について合意をしていない場合も、一般的には物に瑕疵があるとみるべきであろう ((

﹂、﹁ただし、当

二八〇一

(13)

(    )同志社法学 六三巻六号一五〇 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任事者が有害物質の除去費用を勘案したような場合は、瑕疵担保責任の免除があるとみる余地もあるが、端的に物に隠れた瑕疵がないということができよう﹂との定式を提示している。また、加えて、﹁物の瑕疵は、その物について売買時にすでに隠れた形であるが存在し、または少なくとも瑕疵の原因または素因が内在していれば認められるのであって、もともと売主がその瑕疵を認識しえたかどうか、あるいはそれを回避ないし除去することができたかはどうかといった事情は関わりがないといえるのではないか﹂、﹁売買当事者がその(有害物質が含まれること)ことを知らないで土地の価額を定めたのであれば、事後的に土地の価額から有害物質が含まれることによる原価を算定し、場合によっては民法五七〇条(民法五六四条)により売買契約を解除しうるという結果になってもやむを得ないといえよう﹂として、売主にとって厳格な立場を採用している。 これに対し、﹁現代の科学的知見では、有害物質と認識できなくても、将来有害物質だと判明すれば、いつまでも瑕疵担保責任にさらされるという理由で、民法五七〇条の瑕疵の有無は、売買契約締結当時の知見、法令等を基礎として判断すべきだ﹂と主張する見解も多く提示されている (₇

。この点について、潮見教授は﹁両当事者が具体的な契約のもとで当該目的物の性質に対していかなる意味を付与していたのかが探求されなければ﹂ならず、﹁契約締結に際して両当事者により主題として取り上げられなかった以上、その性質に対して契約上は何らの意味も付与されなかったのであり、瑕疵(契約適合性)の評価の対象となりえない﹂として、本件最高裁判決を支持している。その代わり、この場合の不法行為責任の追及については妨げないとしている (₈

。 二八〇二

(14)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一五一

三  下 級 審 裁 判 例 の 展 開

 以下では、売買契約目的物に含まれていた物質が、契約後に有害であると社会的に認知された場合、その事実を﹁隠れた瑕疵﹂があると評価することができるのか、という点を争った土壌汚染をめぐる土地取引に関する近年の下級審裁判例を七件取り上げ、時系列に沿って、各事例の特徴を紹介・分析する (₉

( 1 )  土 壌 汚 染 を め ぐ る 近 年 の 判 決 例 の 紹 介 ( ア )  東 京 地 裁 平 成 一 四 年 九 月 二 七 日 判 決

((

 この事例では、地中に存在したオイル類の処分をめぐって争われた。判決において、売買目的物に関する瑕疵は、買主の法的義務の存否ではなく対象物が取引通念上通常有すべき性状を欠くか否かによって決定されるべきものであるとされ、﹁宅地の売買において、地中に土以外の異物が存在することが即土地の瑕疵に当たるとはいえないのは当然であるが、その土地上に建物を建築するについて支障となる質、量の異物が地中に存在するために、その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備、改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合は、宅地として通常有すべき性状を備えないものとして、土地の瑕疵に当たるというべきである﹂との要件が明示された。そして、本件で、問題となったオイルはいずれも環境基準値を下回るものではあったが、﹁本件土地上にマンション建物を建築、販売するにあたって、その地中の比較的浅い部分に多量のオイル類が存在していることは、買手に建物ひいては本件土地の安全性、快適性に対する疑義を生じさせ、購買意欲および価格のマイナス要因となることは明らかである﹂として、﹁取引通念上通常有すべき性状が欠けており、原告が本件土地の汚染土壌を処理したことは本件土地の欠陥を補正するために当然

二八〇三

(15)

(    )同志社法学 六三巻六号一五二 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任必要な措置であるというべきである﹂とした。

( イ )  東 京 地 裁 平 一 六 年 五 月 二 六 日 判 決

((

 この事例では、土地に重金属(全シアン、六価クロム)及び揮発性有機化合物(ジクロロメタン、ベンゼン、シス︲1、2︲ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン)のみならず、コンクリート片などの地中埋設物が埋設されていた事実、及びその状況について﹁本件土地の瑕疵という余地がある﹂と判示されたが、契約書にあった﹁売主は本件物件に対する瑕疵担保責任を負わないものとした﹂売主に対する瑕疵担保責任を免責する特約を考慮し、その適用を免れないとした。

( ウ )  東 京 地 裁 平 成 一 八 年 九 月 五 日 判 決

((

 この事例は、本稿評釈の最高裁の事例と同じく、土壌汚染対策基本法制定以前に売買契約が締結され、後にふっ素及び鉛が検出されたものであった。しかし、同法施行以前から定められていた環境基準についてそれを満たしていなかった。裁判所は﹁経済的取引の見地からしても、鉛及びふっ素について、各基準値を超える含有量ないし溶出量を検出した本件土地については、その経済的効用及び交換価値は低下していることが明らかであり、売買代金との等価性が損なわれているから、瑕疵の存在が肯定される﹂と判示している。また、﹁平成一一年八月当時において、買主がたとえ不動産取引業者であったとしても、当然に土壌汚染の有無について専門的な調査を行うという取引慣行が存在して﹂いなかったとして、土壌汚染につき、売主の説明義務違反に基づく債務不履行責任および瑕疵担保責任が肯定された事件であった。この事件で特徴的だったのは、買主が購入前に目視による土地の見分を行ったのみで、専門的な調査を行わな 二八〇四

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(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一五三 かったことが買主の過失にあたるか否かが問題とされた点である。裁判所は、売主の説明義務違反があったために調査を行わなかったのであるから、瑕疵担保責任を否定するに足りる買主の過失はないと判断した。

( エ )  東 京 地 裁 平 成 一 八 年 一 一 月 二 八 日 判 決

((

 本件は、被告から信託受益権の譲渡を受けた原告が、本件土地の汚染が判明したため、被告に対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求した事件である。ここでも、﹁表層土壌が、土壌汚染対策法の指定物質である鉛の含有量基準を超過しており、そのため本件土地をそのまま使用した場合、直接摂取による健康被害の危険が認められ、油分の溶出量も海洋投棄の基準を超過し、この点でも使用・集積・処分に制約がある。﹂とされた。そして、本件では、﹁不動産が通常有すべき品質を欠いている﹂と判示された。また、本件信託契約の開示事項において、地歴に車両解体を行っていたことが記載されていたが、土壌汚染の有無は調査をしなければ判断することができず、買主による調査が可能となるのは契約締結後になるため、被告(売主)の過失は認められなかった。

( オ )  東 京 地 裁 平 成 一 九 年 二 月 八 日 判 決

((

 本件は、売買契約目的物に土壌汚染が認められ、売買契約上の瑕疵担保責任約款に基づき、原告が被告に損害賠償の支払いを求め、和解で決着した事案である。

( カ )  東 京 地 裁 平 成 一 九 年 七 月 二 三 日 判 決

((

 この事例では、産業廃棄物の埋設につき、同土地の地中には建築資材、ガラ、ビニール紐等の大量の廃棄物が埋設さ

二八〇五

(17)

(    )同志社法学 六三巻六号一五四 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任れていたとして、原告らが瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求として除去費用相当額につき、原告らの共有持分に応じた金額等の支払いを求めたものである。裁判所は﹁本件土地の地中には本件廃棄物が存在し、そうすると、本件土地は、本件廃棄物の存在によりその使途が限定され、通常の土地取引の対象とすることも困難となることが明らかであり、土地としての通常有すべき一般的性質を備えないものというべきであるから、本件廃棄物の存在は本件土地の瑕疵に当たる﹂と判示し、腐食土は、廃棄物の処理および清掃に関する法律施行令二条に定める産業廃棄物に直接当たらないにもかかわらず、本件土地の瑕疵担保責任を認めている。

( キ )  東 京 地 裁 平 成 二 一 年 六 月 一 〇 日 判 決

((

 本件は、共同住宅を建設して分譲する目的で購入した本物件から建物を解体した後に、その土地が、土壌汚染対策基本法で規定されるヒ素(自然的由来のもの)および鉛(人的由来の盛土及び埋土由来)を含むものと判断された事例である。そこで、原告(買主)は、本件での不動産売買契約書に基づき、被告に土地の土壌汚染対策工事の発注および支払いを求めた。しかし、原告等への具体的な人体への被害が発生していないこと、瑕疵担保責任を負う旨の約定は自然発生的な有害物質が含まれる土壌には適用されないこと、汚染につき責任のない中小企業である売主に責任を負担させるのは正義・公平に反すると被告が主張して応じなかった。裁判所では被告のすべての主張が退けられ、瑕疵担保責任が認められた。

( 2 )  小 括

 以上の七件の事例のうち、契約時に土壌汚染の瑕疵担保責任に関する特約の適用のあったものは、上記(ア)、(イ)、 二八〇六

(18)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一五五 (エ)、(オ)、(キ)の五件である。一方、契約時の特約も法律上の制限もないが、契約当時の取引観念および社会通念によって瑕疵が認められた事例としては(ウ)、(カ)がある。(ウ)の事例では、本件最高裁判決と同様のふっ素が問題とされ、契約後に成立した新しい立法に伴う調査を行った結果、有害物質であるふっ素、鉛ともに含有量が基準値を上回っていることが判明している。もっとも、この事例では、買主である不動産会社の態様にかかわらず、売主には、当該物質が含まれている可能性があることについての説明義務違反が認められ、その結果、瑕疵担保責任が認められている。(カ)の事例でも、廃棄物の埋設につき法律違反はないが、埋設物の存在に伴い、通常の土地取引の対象とすることが困難であることが明らかであり、﹁土地としての通常有すべき一般的性質を備えないものというべき﹂であるという理由で、瑕疵担保責任が認められている。 また、﹁特約﹂の適用によって判断された上記の五例の中でも、特約の内容および土地の利用用途に違いはあるが、(ア)では、宅地の売買において、地中にオイルがあることに伴い建物の建築に支障となる点を評価し、﹁土地の外見から通常予測されうる地盤の整備、改良の程度を超える異物除去工事等を必要とする場合は、宅地として通常有すべき性状を備えないもの﹂という基準が示されている。(エ)では、土壌汚染対策法の指定物質である鉛の含有量および、油分の溶出量も多く、土地の使用・集積・処分に制約がかかってくるため、土地が﹁通常有すべき品質を欠いているもの﹂と判示された。(オ)では、売買契約上の瑕疵担保責任約款に基づく和解がなされ、両当事者の合意による﹁リスクの分配﹂が行われている。(キ)では、土壌汚染対策基本法で規定されているヒ素(自然的由来のもの)および鉛(人的由来の盛土及び埋土由来)を含むものについて、例外なく、不動産売買契約書の文言に従って瑕疵担保責任が認められている。 これに対し、(イ)では、売買契約時の特約により、法律の基準を上回る物質が埋設されていたにもかかわらず、売主の瑕疵担保責任が免責されている。

二八〇七

(19)

(    )同志社法学 六三巻六号一五六 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任

四  本 件 最 高 裁 判 決 の 分 析

( 1 )  本 件 の 射 程

 本件の第一審、原審、最高裁で、特に評価が分かれたのは、ふっ素によって土壌汚染された土地が﹁隠れたる瑕疵﹂にあたるか否かという点であった。本件においてXは、新たな科学的な知見のもと、これまで身体・健康に有害だとはあまり考えられていなかったふっ素という物質の混入のみに着目して瑕疵を争っていた。一審で、Xは、有害物質の含まれている本件土地の汚染を﹁隠れたる瑕疵﹂にあたると直接主張しておらず、法規制に伴い講じなければならなくなった措置を損害と考えて、法律上の瑕疵の主張をしたため、請求が棄却された。控訴審で、Xは主張を変え、法規制に伴い新たに生じた措置の経費だけではなく、土地の有害性を含めて﹁隠れたる瑕疵﹂であると主張した。これについては、瑕疵の認識時を条例の制定時としたⅩの主張が認められ、瑕疵担保責任が認容された。また、Ⅹの損害額も、ふっ素が特定有害物質として規定された後の追加調査費用及び汚染拡散防止費用について認容された。これに対し、本件最高裁判決は、原審で認められたふっ素が基準値を超えて含まれていたことは瑕疵には当たらないとした上で、﹁当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき﹂であるとした。 本件最高裁判決は、契約責任説、法定責任説のいずれの立場に立つのか明示していないが、瑕疵の判断をする上で、﹁売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべき﹂との基準を示したことの意義は大きいと評価する者が多い (₇

。筆者も(当事者間の取引観念を形成する上で、適切かつ十分な情報提供がなされていたという前提条件を満たした上で)このような理解を支持するものである。前述﹁三﹂において紹介した近時の下級審裁判例によると、不動産取引 二八〇八

(20)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一五七 の場面では、近年、土壌汚染をめぐる取引について瑕疵担保責任の特約を付している事案が増えているようである。また、土壌汚染の事実があったとしても、特約がある限り、そこで合意している事項に従って裁判所による瑕疵担保責任の存否の判断が行われている。時には(イ)の事案のように、売主免責の特約があることは珍しいことではない。この点は、本稿﹁一﹂で見てきた改正・土壌汚染対策法の趣旨にも合致するようである。一方で、特約がない場合においても、契約の目的物に対して﹁土地としての通常有すべき一般的性質を備えない﹂ことが瑕疵であると評価する(ウ)、(カ)のような事例も見られる。特に、(ウ)では、本件と同じく契約後に規制対象となったふっ素が含まれることについて、売主の説明義務違反を認める判断が示されている。この点、本件では、売主Yによって、契約締結時に、土地に含まれるあらゆる物質について報告書が添付されており、買主にすべて開示されていたことが認められている。そのため、売主による説明義務違反の有無は問題とならなかった。また、売主が売買契約締結時に委託して行った土壌調査によると、本件土地には、すでに東京都の定める公用地取得にかかる重金属等による汚染土壌処理基準値を超える量の鉛、ヒ素及びカドミウムの含有されている部分が存することが判明していた (₈

。もっとも、本件最高裁判所の論理では、土壌汚染があるか否かという問題と、その土壌汚染が本件契約における瑕疵に該当するかという評価の問題は、分けて考えなければならないことを再度確認しておく必要がある (₉

。平成三年の報告書を確認したうえで当該土地を購入した買主について問題となるのは、契約後に明らかとなった有害物質であるふっ素を含むために課された様々な義務を損害として瑕疵担保責任として追及することであった。しかし、本件は、最高裁判決の文中には現れていないが、下級審の事実認定をみると、本件Xの行動・態様には他にもかなり特殊な事情が多く見受けられる。XはYから本件土地を購入後も、公園として、九年間、区民にその土地を開放していた ((

。また、本件土地の管理担当者の変更によって、偶然、ふっ素のほかにも、鉛、カドミウムなどが基準値を大幅に上回って含有されているというY作成の︹平成三年︺報告書が発見され、慌

二八〇九

(21)

(    )同志社法学 六三巻六号一五八 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任てて公園の閉鎖に踏み切ったという経緯も見られる。その後の区民の健康被害の調査報告の存在は見受けられない。そのため、最高裁の契約締結当時の取引観念を重んじる見解も、YからXへの適切な情報提供、並びに当該不動産購入後のXの杜撰な態様を暗黙裡に当時の取引観念の内容に含みこんで評価している事例判決としての側面があるのではないだろうか ((

。本件で提示された﹁取引観念をしんしゃく﹂する瑕疵の評価基準については今後の実務上も重要な意義を持つことには変わりない。

( 2 )  土 壌 汚 染 を め ぐ る 「 瑕 疵 」 の 評 価 の 問 題 点

 以上、土壌汚染をめぐる裁判例を概観してきたが、そこでの特徴としては、一般に汚染は視認性に欠けるため、調査をしない限り、汚染の事実は判明しない。多くの場合、買主が土壌汚染を意識せずに土地を購入し、当該土地を転売処分する段階になってはじめて土壌汚染が判明する事態が生じやすい傾向にある。このため、当初の売買から数年以上経過して、土壌汚染に関する請求が買主からなされ、売主としてもすでに当該取引は完了済みであることを理由に買主の請求を拒絶することになる。場合によれば、汚染原因者を特定できず、あるいは、調査の結果、汚染原因者が判明したとしても当該企業はすでに消滅して拡散する可能性もある ((

。これは、最初﹁一﹂において見てきた土壌汚染対策防止法をめぐる改正の議論でも、繰り返し指摘されてきた問題である。このような特質を踏まえ、土壌汚染をめぐる土地取引における瑕疵担保責任の﹁瑕疵の評価﹂や責任を追及するための法理について、事例ごとにその特徴を抽出して、事例に則した詳細な分析をすることが今後もますます求められるであろう。また、そのためには、土壌汚染をめぐる﹁瑕疵﹂は、その評価が極めて困難であることについて、充分に留意しておかなければならない。太田弁護士は、このような評価の実務上の困難性について、六点指摘されている ((

。すなわち、①ある土壌汚染を瑕疵か否か﹁評価する﹂判断は、科 二八一〇

(22)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一五九 学的知見によっても変わること。②既存有害物質の基準値が環境リスクの観点からより低い基準値で有害とみなされるように、基準値自体が変わることがありうるということ。③土壌汚染をめぐる瑕疵の﹁評価﹂は、法令の制定や改正によっても変わること。すなわち、対象物質が時代とともに変更されること。④土壌汚染対策法及びその他の法令の定める土壌汚染の基準は、あくまで日本における行政法上の基準に過ぎない。したがって、一般的に瑕疵を判断するのに用いられてきた﹁通常の性質・性状﹂という観点は、日本という地域的に限定された土壌の評価を指すので﹁通常の﹂という表現は正確とは言い難いこと。⑤揮発性有機化合物のように土地の含有物質としてそもそも自然界に存在しないものであれば、その物質の存在する事実から当該土地は、﹁汚染﹂され﹁瑕疵﹂であると容易に判断できるが、火山や地質の歴史から自然由来のヒ素、水銀、ふっ素などの物質が、土地の含有物質として比較的多く含まれている特定の地域もある ((

。こうした土壌の自然由来の物質が含まれた状態を、土壌汚染の﹁瑕疵﹂に該当するか否かは、瑕疵の評価の問題としてとらえられるべきこと。⑥土壌汚染の対象となるのは、土壌汚染対策法をはじめとする法令の定める調査方法をもって調査した範囲の土壌である。仮に、この調査方法が後に法律によって改正されると、有害物質が新たに判明することが起こりうるのである。これらの点の評価の困難性を前提としたうえで、両当事者の主観的事情に基づく﹁取引観念にしんしゃく﹂して、﹁瑕疵﹂を評価することが今後ますます必要となろう。また、同時に不動産の地歴、ならびに、政府もしくは専門の仲介人による適切な情報提供のあり方、行政規制の位置づけをあわせ検討することも重要な作業となろう。

( 3 )  不 法 行 為 責 任 等 の 追 及 可 能 性

 また、ここで筆者が注目しておきたいのは、本件最高裁判決が採用した﹁取引観念にしんしゃく﹂して﹁瑕疵﹂を判

二八一一

(23)

(    )同志社法学 六三巻六号一六〇 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任断する理論は、上記の(ウ)、(カ)の事例のように、規制の有無にかかわらず﹁土地としての通常有すべき一般的性質を備え﹂なければならないと解釈できる点である。その点で、上記の太田弁護士が提示される①、②の困難な問題が克服できると思われる。また、土壌が汚染されていること=﹁瑕疵﹂とするのではなく、﹁取引観念にしんしゃく﹂することが瑕疵担保責任を認める上での正当化の根拠として、重要な要素として位置づけられることにより、予め、私的当事者の間で、厳格な基準を設定することも可能となる。この点、一審では、その土地から直接的に第三者に与える健康被害の有無が不明とされたまま、規制に伴う調査費用及び利用制限などの影響からのみ﹁瑕疵﹂を追及する議論が行われていた。原審では、売り主の瑕疵担保責任自体は認められているが、汚染原因者としての不法行為責任については追及されなかった ((

。これには、土壌汚染が視認性に欠け、ただちに健康に影響を与えるのでないという性質があることの影響も大きいと思われる。仮に、本件が瑕疵担保責任ではなく、七〇九条以下の不法行為責任を追及して争われていたなら、結論が異なった可能性があったのではないだろうか ((

。このような議論に対する解答の手がかりとして、近年の公害等調整委員会の平成二〇年五月七日責任裁定で示された土壌汚染と不法行為責任に関する事件がある (₇

。この事件は、土壌汚染に汚染原因者に汚染の除去等を行う義務があるとして、かかる義務を怠ったことで、不作為による不法行為があったといえるか否かが争われ、裁定では、本件土地の購入者に生じた土壌汚染対策工事に係る費用支出等の損害賠償請求が認められた (₈

。この事件は、売主=汚染原因者という本件最高裁判決の事例とは異なり、売主は汚染原因とは無関係な第三者であった。そのため、瑕疵担保及び契約責任の追及以前に、まず、原因者である市に対する不法行為責任の追及が問題とされた。本件最高裁判決が同様の構成をとった場合、ふっ素による損害を引き起こすべき危険状態を招いた先行行為者(売主)は、その先行行為により重大な結果を生ぜしめる蓋然性が高い場合、条理上その危険を除去すべき作為義務が課せられることになる (₉

。大塚教授らの指摘によると、本件最高裁判決によって、土壌汚染対策基本法の趣 二八一二

(24)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一六一 旨に従い、買主から売主へ瑕疵担保責任の追及が困難となったが、その代わりに、不法行為責任を認めさせる可能性が出てくるとの見解が示されている ((

。おそらく、その場合、上記の責任裁定事件と同様の構成をとることになると思われる。しかし、その際に問題となる除斥期間の問題については、土壌汚染対策法に制定された措置命令が出された時から進行することとなり、短期に失する可能性も否めない。この点については、今後、さらなる考察が必要であろう。また、汚染除去の方法については、市場の要請を考慮しつつ損害額を判断することが望ましいとの見解が多数示されている ((

。この点も、立法及び社会情勢の動向を見ながら慎重に検討することが求められよう。

1大四ついて﹂ジュリ一〇疵七号七〇頁を参照。に瑕塚す直﹁土壌汚染に関る) 不法行為及び汚染地の

2吉一。頁〇八四号三四商政) ﹂批判件本﹁広知民

3潮六吉信﹁判批﹂判評二半五号一〇頁以下。田。見リ佳男﹁本件判批﹂マ) ークス四三号四〇頁

4最集。頁〇〇五一号七巻五五民判) 三一月二一年三一成平日

5大有)。年〇一〇二、閣斐(塚) 六九三﹄法境環﹃直頁

。汚一﹄実現の染と頁法策対染汚壌土八以照〇参を)年四〇二染、社想思界世(下 6対例いてれさ定制てに綱要導指や条土、に前以定制の法策対染汚壌土た壌策拡法の詳細については、畑) 郎﹃大・する土壌・地下水汚染汚水下地明

( て。るいてし介紹 7下例市街地土壌・地下水汚染の事をし詳細に調査し以頁一一上同・畑た明で(は、土壌汚染対策法の制定前後二判〇〇一年~二〇〇三年) の間に)

( 九﹂判自三三六号四判頁以下など参照。批 8様国しくは、加藤了﹁本件もで内は。ていつに論議るぐめを正改のこ詳る々法な研究会が開催され、諸外国の制いについて) 細な紹介が行われて詳

( 。下以頁七一号月四 9法環制度改善を中心に染汚﹂産二ど〇一一年壌土正改﹁介泰垣柴のなの向円滑な施行と制度の定着化にけ応て策対自然由) 重金属への対来 10てする立法を素材とし﹂に法教二五七号八九頁以下関対策所大塚直﹁原因者主義か有) 者主義か土壌環境保全。

二八一三

(25)

(    )同志社法学 六三巻六号一六二 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任

11) 大塚・同上八九頁以下。

12現九成一一年度末まで二五件ら中三四件にすぎない。平か実難に、原因者の特定が困だ) った事例は、昭和五〇年度 13) 大塚・前掲注(

( 照の体治自種各、はでここ。参制)年八九九一、店書波岩(規を〇則。るいてし示を解見るすと原列を担負者染汚、で上たし挙頁八二 10か地見的学済経、し対に則原の担負者有所のこ。下以頁四九ら)問廃﹄学済経治政の染汚と物棄﹃を和文田吉。るあも解見す呈疑

( かとこるせさじ講をれこ、つれつらめ認とるあで当相がとこるに、いなて。いなでり限の、はきといこ当有が該土地の所者等に異議 合者(相続、よ併又は分割にしたらを為行のそ、てっあで合場なかそり下のに地さじ講を置措の等去除の染汚せ。)者じを承継した位をむ。以同含 の、当該土地者所有等以外だのしこた命のべきことをず。るとができる者の行物為がとこたじ生が染汚るよに質明害土有よって当該に地土壌特の定 の、当該汚染、除去当該汚め染て、定を限期の当相し対に等者有所のの拡散ののず講を)ういと﹂措の等去除置染要汚止その他必防な置(以下﹁措 そ止防を害被のに、りよろことるすめたい地土該当、ておめに度限な要必る定るのめる基準に該当す指定区域で内土る令政、はき地とめ認とるあが 壌の特定有害人物質による汚染、土 は七よ  同法第条事:都道府県知に害りのそれが、るもとるして政令で定おあずる生健康に係の被生じ、又はが のの除去等要措置にする費染該汚当に既が者たしを為行のそを用る負れ担。いなでり限のこはきと、さししな又は負担、たのとみも 者為命をしたしに対、当該の行行そものに為によるの、であるときは令た係求の、しだた。るきでがとこるす請るの汚染の除去等措を置に要し費用者 14外第所の地土たけ受を令命の項一条者前:条八第法本基策対染汚壌土有等以に等者有所の地土該当が染汚るよ質は物害有定特の壌土の地土該当、) 

( 有村喜宣﹃環境ケースブック﹄(法斐)閣。頁八一八年六〇〇二、 ﹄染応対のへ題問土汚壌土と引取地﹃七二大~三北、直塚監)。年〇三〇二・政行(頁一修室交資 国土画通省土地・水源 局土地政策課土地市場企  15http://www.env.g/lao.jp/water/dojol#wtm_q1_Q6.h06/daanー環境省のホ参ムページ。照を) 

( 。下以頁四七一 に汚染対策法務伴う実土上の壌下、はで題以頁八四同。るいてれ問にとい時判)3(注掲前・田半。るて効れさ析分く広幅もていつ行果わが説条解 16小﹄二、社揚白(頁七九一~六六任澤責〇民と法策対染汚壌土﹃明英事) 一い逐法策対染汚壌土るよに者筆たて年しを人理代の主売件本、はで)一

( 批九年〇二成平判高京東(判二﹁明輝田内。るいてし及言月五い政。頁五八四)2(注掲前・吉日。頁五四号二巻一五研不)﹂て 17険ラるけおに法新ドルーィフンウブA﹁子則坂黒、はていつに点のこAI制頁度) 充実につ保境環、ていおに二規四三号三巻〇六法同﹂義意の則の

18半時。下以頁四七一判田) 3(注掲前・)

19男一九五四年)。柚木馨・高木多喜(店旧版)編﹃注釈民法(一四)﹄二、書) 栄この議論に関する詳細は、我妻﹃波債権各論・中巻﹄二八四頁(岩 二八一四

(26)

(    ) 売買契約締結後に土壌汚染の規制対象となった物質が存在する土地の瑕疵担保責任 同志社法学 六三巻六号一六三 四三頁(有斐閣、一九六六年)。三宅正男﹃契約各論上巻﹄三一八頁(青林書院新社、一九七八年)、高森八四郎﹁瑕疵担保責任と製造物責任﹂遠藤浩[ほか]監修、淡路剛久[ほか]編﹃現代契約の法理﹄一六三~一六四頁(有斐閣、一九八三年)ほかを参照のこと。(

20潮・。下以頁四七一)3(注掲前田見) 、下以頁〇四)3(注掲前・半 21とを支持される文献し概て、柚木・前掲注念疵) 任この点で、法定責説瑕の立場から、主観的(

( 号〇一〇[Ⅰ]二一頁がある。八 献沢野、てしとと文く説るあで種充正教﹁・トクレセ例判冊本別の法﹂批判件一傷でがか損、瑕疵担保責任の本質危の険負担の法理にあり瑕疵もな 19者ま二四三頁がある。た論、法定責任説を採る)

22潮頁)。年二〇〇二、社山信(七見) 二﹄Ⅰ論各約契﹃男佳一

23半一。下以頁五七)田) (注掲前・3

24吉潮。頁一四)3(注掲前・見。政) 参頁二八)2(注掲前・照

( 四前注(2)掲八頁参照。一 方正の基本冊針﹄︺別NB法改委権債・﹃編会員一討検正改)法L二二支・政吉、てしとのもるす持を六点のこ。頁八七債、頁二九号権(民︹案提の法 25法八五頁。民法(債権六)改号リ一件榎本光宏﹁本判四解﹂ジュ検一正) 討と﹂針方本基の正改法建再﹁ためま委二員による平成一り年三月末にと会

26こ経リスクの分配と民法解釈﹂横国法汚一二巻三号一二一頁以下参照。染壌のと見解に立つ多くの裁判例の紹介し) ては、松尾弘﹁土地取引における土

( 金二〇・九・二五﹂商平一三一七号二〇頁。成 27タ九﹁判批・東京高判判﹂五二・・里〇二成平判高京東:批判﹁孝岡亜麻一判二九一号四七頁、中村肇﹁本件批知﹂法セ) 六七〇号一三六頁。和ミ

( 中に関する裁判例を手がかりに﹂央契以。いし詳に下頁ロ三号四巻七ー約 28地直為行法不るす関に染汚壌土﹁塚び大、頁〇四)3(注掲前・見潮及汚の号瑕疵について﹂ジュリ一四〇) 八染〇頁。太田秀夫﹁汚染土地取引七

29太四に﹂中央ロー七巻号か三頁以下に詳しい。りが田引秀夫﹁汚染土地取契) 約に関する裁判例を手

30竹、五七巻二号六一頁太ろ田・同上四~五頁。ばひ内久俊雄監修、松田佳﹁) 民事法判例実務講座﹂ 31) 太田・前掲注(

29)一〇頁。

32) 判時一九七三号八四頁。 33) 太田・前掲注(

29)一〇頁。 34) 太田・前掲注(

29)一二頁。

二八一五

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