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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

没水水平版による波の分裂現象とその波浪制御法へ の応用に関する研究

小島, 治幸

https://doi.org/10.11501/3054273

出版情報:Kyushu University, 1990, 工学博士, 論文博士 バージョン:

権利関係:

(2)
(3)

没 水 水 平 版 に よ る 波 の 分 裂 現 象 と そ の 波 浪 制 御 法 へ の 応 用 に 関 す る 研 究

平 成 2 年 1 2 月

小 島 治 幸

(4)

目 次

1 序論

1.1 本研究の背景

1  1 

1.2 既往の研究 . . . • . . . ..  5  1.3 本 研 究 の 内 容 . . . . • . . . • . . . •. 9 

2 没水水平版による波の分裂現象とその特徴 11 

2.1  まえがき. . . . ..  11  2.2  水 理 実 験 の 方 法 と 条 件 .. . . ..  11  2.3  単 一 規 則 入 射 波 の 分 裂 . . . . • ..  14  2.3.1  波 の 分 裂 現 象 と 分 裂 波 の 水 深 変 化 に と も な う 挙 動 .• . • • . . • ..  14  2.3.2  高周波成分波の発生と成長(水平版と不透過潜堤における分裂効果) 25  2.4  二成分入射波の分裂 . . . • • . . . .• 30  2.4.1  非 線 形 共 鳴 干 渉 . . . . • . . . • . • • • . . ..  30  2.4.2  干 渉 波 の 成 長 . . • . • . . . • . . . • . . . .• 33  2.5  多成分ランダム入射波の分裂.. . . • • ..  33  2.5.1  分 裂 波 の ス ペ ク ト ル 形 状 の 変 化 . . . . • . . • . . . • . • • . .• 33  2.5.2  分裂波の統計的性質 . . . • . . . ..  37 

2.6  む す び . . . . • . . . • . . • . • . • . . ..  41 

3 有限振幅波の定常非線形干渉に関する理論解析法 43 

3.1  まえ均三き. . . . ..  43  3.2 理 論 解 析 .. . . • . . • . . . •• 44  3.2.1  基 礎 支 配 方 程 式 .. . . • . . . • . . . • . . . ..  44  3.2.2  摂動展開.• . • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • • •. 45 

(5)

3.2.3  各領域のポテンシャル関数. . . . ..  48  3.2.4  O( 

E 2 )

のポテンシャル関数の解に関する物理的な意味. . . . . • .• 50  3.2.5  水面波形. . . . • . . . • . . . •. 52  3.2.6  連立1次方程式(選点解法による未定係数の決定) . • . . • • . • . 55  3.3  各種構造物に対する理論式の誘導.. . . • . . . • . . ..  57  3.3.1  没水水平版に関する計算式.. . . • . • • ..  57  3.3.2  矩 形 不 透 過 潜 堤 に 関 す る 計 算 式 .. . • • . . . • . . • . . . ..  64  3.3.3  無 限 長 ス ッ テ プ に 関 す る 計 算 式 .. . • . . . • . . . • • . • .• 65  3.4  数 値 計 算 の 方 法 . . . . ..  67  3.4.1  O(ε)の数値解の特性 . • . . . . • . . . • . . • . . . •• 68  3.4.2  項 数 丸+1と項数nj2)+1の関係 68  3.4.3  一次解の打ち切り項数による二次解への影響.• . . . . • . . . . ..  75  3.4.4  O( 

E 2 )

における連続性の2乗誤差と流速の鉛直分布.• . . • . . ..  76  3.5  む す び . . . . • . . . . • . . . • . . . • • ..  79 

4 波の分裂現象に関する理論解析 82 

4.1  まえがき.. . . • . . . • . . . • • .• 82  4.2  理論解析法の検証. . • . . • • . . • • . • . . • • • . . . • • . • . . . •. 82  4.2.1  理 論 的 な 検 証 . . . • • . . . • • . . . • . . • . . •. 83  4.2.2  実 験 的 な 検 証 . . . . • • . . . • • • . • . . . . • • . • • • • •. 85  4.3  波の分裂現象の理論的な考察. . . . • . . • . • . . . • • . . • 106  4.3.1  2次波の振幅の場所的な分布 • . . . . • • . . • • • . • . • . • • • . 106  4.3.2  2次 の 波 の 包 絡 線 の 特 徴 . . . . • . . • . • . • • • . • 110  4.3.3  2次波の成長の特徴 . • . . . • . . . • . • . . . • • . 113  4.4  む す び .. . . • • . • . . • . . . . • . . . • . . • • 121 

5 没水水平版による波分裂の工学的応用 123 

5.1  まえカまき. . . . • . . . • . . . • . • . . . . • • . . • • • . . • . . . • . . • • 123  5.2  没水水平版と波の線形干渉効果による消波特性と消波機構 • . . . • . • . • 124  5.2.1  版 長 と 没 水 深 お よ び 版 厚 の 影 響 . . • . • • . . . . • . • . • • • . . . 124  5.2.2  最 適 断 面 の 決 定 . . . • . • . • . . . . • . . • • . • . • • . • • . . . • 126 

(6)

5.2.3  線形干渉効果による消波機構 . . . 126  5.3  波分裂による波浪制御効果. . . . • . . . 129  5.3.1  水 理 実 験 の 方 法 と 条 件 .. . . • . . . 129  5.3.2  実 験 結 果 と 考 察 . . . . • . . . 132  5.4  水 平 版 に 作 用 す る 波 力 . . . . • . . . 141  5.4.1  各オーダーの波圧式 . . . • • . 141  5.4.2  波 力 表 示 式 . . . . . • . . . 144  5.4.3  計 算 結 果 と 考 察 . . . . 148  5.5  む す び . . . . • . . . 160 

6 結 論 162

A ポテンシャル接続法における選点解法 167 

A.1  まえがき. . . . • . . . 167  A.2  ポテンシャル接続法 . . . • . . . • 167  A.2.1  従 来 の 解 法 .. . . 169  A.2.2  連続条件の自乗誤差 . . • . . • . . . 171  A.2.3  選点解法.. . . • . • . . . . • . . . • • . • . • • 172  A.3 数値計算結果と考察 . • . . . . • . . . . • . . . . • . . . • . . . • . . 173  A.3.1  選 点 解 法 に お け る 計 算 点 の 配 置 .. . . • 174  A.3.2  選点解法の妥当性と解の精度 . . . • . • . . . • . . • 174  A.3.3  鉛直境界の長さ(浮体喫水 d)と計算点の関係 . . • . • • . . . • . 180  A.3.4  条 件 式 が 過 剰 な 場 合 の 最 小 自 乗 解 . . . . 181  A.3.5  打ち切り項数の配分による解の変動. . . • . . . • . • 181  A.3.6  打ち切り項数(計算点個数)による解の変動. . . . • . . . • . 182  A.3.7  他 の 構 造 物 へ の 選 点 解 法 の 適 用 .. . . • . • . • . . . • . 182  A.4むすび. . . . • . . . • . . . • . . . • • . • • • 184 

記 号 表

参 考 文 献 謝 辞

III 

188  194  199 

(7)

Chapter  1 

序 論

1 . 1 相 続 げ 隷

近年、沿岸域の広範囲かっ多様化した利用に対応できる波浪制御構造物の開発が望まれ ている。沿岸域では、産業・生活活動の多種多様化にともない、摂南沖で建設されている 2 4時間利用可能な海上空港や九州の五島や白島で建設中の石油の洋上備蓄基地および全 国の各地で計画されている沖合い人工島等に見られるように新しい形式の大規模開発が今 後ともますます多くなっていくことが予想される。これらの開発は、それらが持つ個々の 条件によって、既存の人間の生活活動の場から十分な距離をはなして造られる点において、

従来の沿岸域開発と異なるものといえる。このため、必然的に、構造物の設置水深が増大 することになり、これらの施設を波浪から保護するための外郭施設に膨大な波力が作用す

ることになるため波力の軽減が重要な課題となっている。

上記の産業・経済基盤施設のための沿岸域の開発とは別に、国民生活の質の向上と余暇 の時間の増加によりレクリエーション活動が盛んになるにつれ、レクリエーション活動の場 を提供する目的で沿岸域の開発がさらに活発になることが予想される。内閣広報室(1982) が行った調査によると、「レクリエーションのうち特に海洋性レクリエーションについては、

現在の活動者と比較して将来の希望者が非常に多く、海を活動の場とした利用が今後増大 する可能性が大きい。」と述べられていることからも、このことが示唆される。この沿岸域 の開発において、広大な静穏海域を経済的にかっ環境を悪化させないで創作する技術の需 要はますます高まると思われる。

このため、この様な目的で開発される大水深波浪制御構造物は、海水交換を妨げないで 環境的に、さらには景観的にも優れた機能をもつものであることが期待される。特にわが

(8)

国では、日本海に面した一部の海岸を除いては、比較的に潮位差が大きいため、天端が常 に海面上に出る構造物を造ると視野が著しく妨げられ景観上好ましくなくなるなど自然条 件がきびしい環境にある。

以上の観点から、既往の波浪制御構造物の種類や機能および、問題点についてまとめると 次のようになる。

(a)直立ケーソン式防波堤

現在、第一線の防波堤としてはほとんどこの形式の防波堤が使われている。この形式の 防波堤は、その堤体の自重により安定を保つことから設置水深が大きくなるにつれ堤体幅 も大きくする必要があるため、大水深の海域では、その建設コストが非常に大きくなって しまい、経済的に建設することが困難である。また、現在において、水深25m以深の構 造物の設計施工例は非常に少ない。さらに、堤体は不透過であるので海水の交換を完全に 阻害し、堤体内の水質の悪化を招く恐れがある。

(b)透過性ケーソン式防波堤

ケーソン式防波堤の欠点である海水交換の改善を図る目的で、ケーソン壁に縦スリット や横スリットあるいは円孔を開けて、波も若干通すが、海水交換を促す機能を持った防波 堤がこの形式である。波を部分的に通過させることから堤体に作用する波力が軽減され、

堤体をケーソン式防波堤と比べ小さくすることが可能で、大水深域の波浪構造物としては 経済的に有利である。しかし、透過性防波堤のー形式である縦スリット式防波堤の消波特 性(小島ら, 1988c)を 示 す 図 ‑1.1の通過率(KT)と反射率(KR)にみられるように、相対 水深 (hjL)の小さいつまり波長の長い波に対しては、消波効果が低下することが短所であ

る。

( c )

浮体式防波堤

この形式の防波堤は、浮体の下が流体であるので海水交換率が高いため水産養殖場等の 水質を良く保つ必要がある場所で多く使われている波浪制御構造物である。消波機能は、ポ ンツーンに代表される不透過性浮体の場合は波の反射、また古タイヤを組み合わせて作っ た透過性構造物の場合は堤体内の流体抵抗によるエネルギーの散逸と波の反射が考えられ る。いずれも波のエネルギーが水面近くに集中している短波長の波に対しては有効である が、透過性のケーソン式防波堤と同様に、長波長の波に対しては消波効果はほとんど望め ない(図‑1.2参照)。

これらの防波堤は、主として波の反射あるいは渦等の発生に伴うエネルギー損失による

(9)

E"1

0.2 E"2

0.2 81/h

0.1782/h

0.17 D/h

1.17

1.0  0.8 

。ロ71

干守宅ï~

0.6 

KT 

0.4  0.2  0.0  0.8 

0.0 

0.1 

L

' ' ' 圃 ︐

nhH

E

. ︐

20・闘 n u

n u

  0.4 

0.0  0.1 

図 ‑1.1  波の入射角度の違いによる 2列縦スリット透過壁の消波特性[(  )理論 値, (マーク)実験値

l

1 . 0  

0 . 5   0 . 6   0 . 4  

KT 

0 . 5  

h = 1 . 0  

0.0  0.0  1 . 0   kh  2 . 0   3 . 0  

図‑1.2  無次元波数 khに対する 2列固定矩形浮体の通過率[( )吉田ら (1990), 

( ・ )

Wuら(1988)]

(10)

波高の低減が主要な波浪制御機構であると考えられる。波浪制御法としてはこの他に、入 射波の波長を短くすることによりその作用を低減する方法が考えられる。すなわち、波の 進行方向にある長さの没水水平版を設けることによって強制的に波を分裂させる方法であ る。この波の分裂とは、水深の深い海域を進行する波が没水深度の浅い没水水平版に入射 するときに、それが微小振幅波であっても水深の急激な減少による自由表面条件の非線形 性によって一つの波峰がいくつもの波峰に分かれるソリトン分裂の現象が起こり、入射波 が波長の短い波に変形する現象である。波長が短くなれば、遮蔽対象の防波堤構造物に対 する波力を軽減する効果が期待される。また長波長の波に対しては遮断効果が小さいが、

短波長の波に対してはそれが大きい透過性のケーソン防波堤と併用することで、長波長の 波に対しでも有効な消波効果を期待することができる。このように、波峰の分裂を生ずる 没水水平版の機能は、波高を低減させる従来の方法とは異なった新たな波の制御方法とな りうる可能性があり、従来の防波堤と組み合わせることによりそれらの防波堤が持つ欠点 を補うことも期待される。さらに、没水水平版は、海水交換率が高く常に水面下に隠れて いるので、環境上さらに景観上優れていることから、海洋性レクリエーションに必要な広 大な静穏海域を創り出すことを可能とする波浪制御構造物であると思われる。

ここで、没水水平版が有する消波機能をまとめると次の3つが考えられる。

(1)水平版上下における流体運動の位相差に起因する干渉効果。

(2)水平版上の流体域における砕波および周辺での渦の発生等によるエネルギーの減衰 効果。

(3)水平版上の浅水域において起こる波の分裂により通過波の周波数帯が広がり個々の波 の作用が低下する効果。

これらの機能は、入射波の波形勾配や波長と水平版の版長や没水深(版上水深)との相対的 な大きさによって、ある一つの機能が卓越した形で消波効果として現れる場合、あるいは 互いに重合した形で消波効果として現れる場合が考えられる。従って、これらの機能を独 立に取り扱い、それぞれ個々の現象の把握と消波効果の定性的および定量的な理解が必要 であると考える。

本研究は、これら三つの消波機能のうち、ここで初めて取り上げる

( 3 )

の波の分裂の現 象を水理実験と理論解析により解明するものである。また、波の分裂に伴う波長の短縮に よる波浪制御効果を調べるとともに、 1次の現象である (1)の波と没水水平版の線形干渉

(11)

効果を明らかにして、現象的に複雑な砕波が起こらない場合の機能をまず理解することに より、没水水平版の新たな波浪制御構造物としての可能性を検討するものである。

1 . 2   既往¢源院

波の分裂あるいは2次波峰、すなわち波峰と波峰の聞に新たな波峰が現れる現象は、水 面波の実験者の間では以前からよく知られた現象である。この2次波峰の発生に注目して、

水理実験によりはじめてその現象を研究したのは Ma..sonand Keulegan(1944)であろう。

彼らは、一定水深あるいは一様勾配を持ったステップ(リーフ)地形の水底形状により規則 波が変形し、波峰と波峰の聞に新たな波峰が生じる multiplewavesの発生限界を次の式で 表せると提案している。

J E = 2 3 告

1'1 1EA  唱 ︐ i ︐/E

ここに、 H1とL1は入射波の波高と波長、 h2はステップ上の水深を表している。実験結 果によると上式の左辺が右辺よりも小さいと波は変形せず規則波のままで進行すると結論 づけている。同時期に、フランスの Miche(1944)は、理論的な考察より波動運動の2次近 似解を導きだし、波の谷における曲率が零であるとして、 2次波峰の発生限界を次の式で 与えている。

(札itml= 会ln川 2~h)

.tanh(

苧)

︐ ︑ J 1A hM ー ノ

ここに、 H

L

hは、それぞれ入射波の波高と波長および水深を表している。また、 2次波 (secondary waves)あるいは2次波峰という用語とその2次的な波峰を含んだ波形の例を最 初に示したのは Morisonand Crooke(1953)であろう。彼らは、 2次波峰は主峰よりも遅い 速度で進行することに気づき、よって2次波を含んだ波は定形波ではないと報告している。

わが国でも堀川 (1960)が、一定水深のリーフ地形と一様水深における詳細な実験を行 い、 2次波峰の発生限界について整理を行っている。彼の結論によると、鉛直面を持った リーフ地形によって形成される 2次波峰の発生限界は、上で示した Ma..sonand Keulegan  の関係式で表され、また Micheが提案した理論的な限界式も工学的な観点からすると妥当 であると している。同様の研究は、合田ら (1967)によっても行われており、 Micheの2次 波峰の発生限界式の妥当性を示している。また、 2次波の波速を水路内で実測し、その値

(12)

が基本波の 2倍周波数と 3倍周波数の聞にくるという結果から、 2次波は基本波の n倍の 周波数を持つ無限個の独立した進行波からなると推定した。さらに、ソリトン分裂で言わ れている再帰距離 (recnrrencedistance)と同じ現象を確認し、その距離を実験的に求めて いる。

この2次波峰現象は、その後、非線形波動場の理論的な解析が発達したことにより、ソ リトン分裂波現象と同じ現象であることが、理論的にまた実験的に明らかにされ、それ以 後、浅海域での波の非線形解析が開花することになる。その発端となった研究は、 Zabnsky and Galvinの研究(1968

1971)であろう。彼らは、 Kortewege‑deVries (KdV)方程式を 支配方程式として、水路における造波板近くの実測波形を初期条件として入力し、その方 程式を数値的に解き、 2次波峰現象を解明した。そして、量子力学等の分野において使わ れていた solitonと言う用語が彼らによって水面波においても用いられるようになった。

同様の研究は、 Long(1964)やPeregrine(1966)によっても行われているが、これらの研究 は、一定水深を仮定している。これを、一様勾配の海域に適用できるように拡張したのが、

Peregrine(1967)や Madsenand Mei(1969)および Madsen

Mei and Savage(1970)らで ある。しかし、これらの解析は、浅海域における長波の変形を取り扱ったもので、没水水 平版のような水深の深い海域から急激に浅い水域になり、再び深い海域となるような場合

には、適用できないと考えられる。

ほぼ同じ時期に、実験的にも精力的に研究が行われた。 Multer ,& Galvin(1967)や Boczar‑Karakiewicz(1972)は、一様水深の水路で soliton分裂波の特性について調べて いる。細井、石田(1970)および石田ら(1973

1975

, 

1980)の一連の研究では、周波数・波 数スペクトルや bispectrum解析を駆使して、 2次波峰(soliton分裂)の発生および進行過 程での現象の解明に取り組み、 solitonの波速や再帰距離を表す実験式を導きだし、 soliton 分裂は非線形共鳴干渉によって励起するものであるという考えを示した。石田(1984)は、

これらの研究から明らかにされた2次波略現象の一般的な性質をまとめ、さらにその現象 が漂砂現象に及ぼす影響等の海岸工学的な意義について考察している。

これら浅海域の波の非線形現象の研究とは別に、波の非線形問題として海岸構造物や海 洋構造物と有限振幅波の非線形相互干渉の研究がある。この研究は、速度ポテンシャルに 関する境界値問題として解析するもので、微小振幅波に較べると理論式の展開は格段に煩 雑で、しかも精度のよい解を得るのは難しい。この困難さは、水面境界条件の非線形性と それを適用すべき境界(水面波形〉があらかじめわからないことに起因し、これに対処す

(13)

る方法は次の二つに大別される。

(1)初期状態から時間ステップごとに水面波形を追跡して各時間ステップごとに解を求め る非定常問題としての解析法。 Green関数あるいは Greenの公式を用いる境界要素 法(境界積分法)による解析法としては、 Faltinsen(1978); Ijima and 

agata(1980);  Kim and Liu(1983);大山(1985)などがある。一方、有限要素法による解析法として は、滝川、田淵(1978,1979)の研究がある。この非定常問題としての解析法は、非線 形の水面境界条件を数値計算上で厳密に考慮することができるが、過渡的な波の問題 を取り扱うときに多く用いられる解法で、海岸構造物と有限振幅波の非線形干渉にお ける定常現象を見る場合、定常状態になるまで計算を続けなくてはならないこと、そ れにともなう計算誤差が累積すること、仮想境界面での radiation条件が確立してい ないため計算領域を大きく取らなくてはならないことなどいくつかの問題点がある。

(2)水面境界条件を摂動展開して低次の解から高次の非線形解を得る定常問題としての解 析法。これに関しては、境界要素法を用いたPotash(1971)や経塚(1980)および吉田

ら(1989)の研究がある。

いずれの方法も境界条件に関して物理量の微分値の算定が必要で、有限要素法や境界 要素などの離散化手法を用いる限り、微分値の算定は数値差分によらざるをえず、時間ス

テップごとの、あるいは高次解への差分誤差の累積が生じる。この計算誤差を避ける方法 として、線形定常問題の解析に広く用いられている解析法の一つであるポテンシャル接続 法〈例えば、井島,1971)と摂動展開法とを併用すれば、有限振幅波(Stokes波〉に関す る有用な境界値問題解析法を得ることが期待できる。この方法は、流体域が鉛直境界面に よって矩形状に分割出来る場合に適用が限られるけれども、有限要素法や境界要素法に比 べて精度が良く、物理量の微分が差分によらず理論的に得られることや、計算時間と計算 機の容量が小さくて済むこと等の利点がある。しかし、従来のポテンシャル接続法に関す る解法では、直交関数に関する積分演算をおこなうため、非線形問題への適用は理論式の 展開が恐ろしく煩雑となって実質上困難であった。したがって、適用例としては、著者が 知る限り、ステップ地形による波の変形の解析を試みた Massel(1988)の例があるに過ぎな い。また、これらの解析法の他に、特性曲線法を用いた余ら (1989)の非線形解析法がある。

没水水平板の消波効果や消波特性に関する研究は、わが国で多くなされている。ここで は、第1節の研究の背景のところで分類した3つの消波機能ごとに今までの研究について まとめる。まず、 (1)の線形の干渉効果については、井島ら (1969,1970b)が初めてポテン

(14)

シャル接続法により理論的な解析を行っている。しかし、 1枚の水平版が完全に没水して いる場合の結果はない。同じ解析法によって田測ら (1981)は、没水水平版の通過率・反射 率の周波数特性を明らかにしている。外国では、 Siewand HurleY(1977)が長波近似による 解析法を示しており、また Patarapanichは没水水平版に関する 1連の研究(1984a,1984b,  1989)によりその消波特性や波力特性を計算と実験により明らかにしている。このように 多くの研究があるにもかかわらず、実際の設計に対しては十分とは言えない。特に、水平 版が完全に没水している場合は、水面に固定されているときの消波特性とは大きく異なり、

版上水深や版長等と入射波の波長との相対的な大きさにより消波特性は著しく変化すため、

最適な断面形状を選択するための指標が必要である。

次に、

( 2 )

の砕波および渦等によるエネルギー損失の効果も考慮にいれた研究としては、

服部,松本(1977)が線形長波理論をもとに水平版上での砕波によるエネルギー逸散の効果 を砕波後の波高減衰率を指数関数と仮定してモデル化をしており、また田湖jら(1987)は線 形のポテンシャル接続法と砕波後の波高として十分に長い水平版上の実験値を用いて砕波 による効果を取り入れている。両研究は、砕波によるエネルギー逸散により、水平版の通 過・反射率の入射波長による変動の幅が小さくなると述べている。田淵らの研究は、水平 版とその背後の直立堤を組み合わせて、水平版上で砕波させることにより直立堤に作用す る波力を軽減させようとするもので、計算により最適断面や水平版と直立堤の最適距離を 求めている。また、青山ら (1988)は、非定常緩勾配方程式を基礎とした解析法を示し、こ れを没水した傾斜版に適用してその消波特性を明らかにしている。高橋ら (1989)は、この 解析法を傾斜版が静水面に突出している場合に拡張し、その版に作用する波力等の解析と 実験を行っている。実験的な研究では、高木,川崎(1988)の研究がある。彼らは、水平版 の後端で水平版下の波のエネルギーがその上のエネルギーよりも速く到着し、水面上を盛 り上げると同時にその一部が水平版上を逆流して伝搬速度の遅い版上の波と衝突して砕波 している現象を"戻り流れ砕波"と呼び、この現象によるエネルギー消散が没水水平版の 消波効果の最大要因であると結論づけている。

(3)の没水水平版による波の分裂に関する研究は、著者らの研究(1988a,1988b, 1989a,  1989b)と没水平版が長波長域の波を短波長域の波に変換することを実験的に示した高木ら (1988)の研究があるのみと思われる。

(15)

1 . 3   本有院の内容

没水水平版による波の分裂とそれに伴う波長の短縮による波浪制御法を確立し、没水水 平版を波浪制御構造物として用いるときの課題として次のことが考えられる。ただし、第

2節でも述べたように、砕波の現象に関連した問題については考慮していない。

(1)没水水平版による波の分裂現象、特に水平版上で分裂した波が再び水深の深い海域を 進行するときの挙動と多成分入射波における分裂現象の解明。

(2)有限振幅波と没水水平版の非線形干渉に関する定常問題としての高精度の解析法の開 発とそれによる波分裂現象の理論的な解明。

(3)波の没水水平版との線形干渉における消波特性と消波機構の解明 (4)波分裂に伴う波長の短縮による波浪制御効果の解明。

(5)  2次波まで考慮にいれた没水水平版に作用する波力の特性に関する解明。

本研究では、これらの課題に対して理論的および実験的に取り組み、没水水平版による波 の分裂現象を解明するとともに、没水水平版の波浪制御構造物としての可能性を究明する ことを目的としている。以下に、第2章からの本研究の内容の概略を示す。

第2章では, 2次元水理実験により、没水水平版に単一規則波から多成分ランダム波に いたる波が入射するときの波の分裂現象を明らかにする。この際、水平版上で起こる波峰 の発生現象や分裂波が再びもとの水深の海域を進行するときの挙動や水平版下部領域での 流体運動の波分裂への影響および水平版を通過した後の波群の統計的性質を調べることに なる。第2節では、水理実験の方法や条件について述べている。第3節では、単一規則波 に対する波の分裂現象、第 4節では、多成分波のうちで最も簡単な形の 2成分合成波、第 5節では、海洋波を対象としたランダム波に対する分裂現象について明らかにする。なお、

実験では、基本的に水平版上で入射波が砕波しない条件で行っている。

第3章では、没水水平版による波の分裂現象を有限振幅波の定常非線形境界値問題とし て理論的に解析する方法を導き、その計算法の詳細な解説を行う。第2節では、定常問題 におけるすべての自由波動運動と強制的な波動運動を考慮にいれた2次の速度ポテンシャ ルに関する解を導き、第 3節においてそれを没水水平版と矩形不透過潜堤および無限長ス テップ地形に適用してそれぞれの数値計算式を誘導する。第4節においてこの理論解析法 を数値的に解くときの問題点について検討する。

(16)

第4章では、第3章で提案した解析法の妥当性を水理実験により検証し、波の分裂現象 を理論的に明らかにする。第2節で計算結果を実験結果と比較することにより解析法の妥 当性を検証し、その適用限界を考察する。第3節では、没水水平版の諸元や波の条件を変 えた計算結果より没水水平版による波の分裂現象を理論的に解明する。

第5章では、没水水平版とそれによる波分裂の工学的な応用に際し、検討しておかね ばならない諸問題に関して調べる。このとき、没水水平版の波浪制御効果を調べることに なるが、それが有する制御機能のうちの波と没水水平版との線形干渉による消波効果を第 一に理解する必要がある。このため、第2節では線形計算により、版長や没水深、版厚を 変えたときの消波特性と消波機構を明らかにするとともに、最適断面の設計に対する指標 を示す。次に、第3節で、没水水平版による波の分裂とそれにともなう波長の短縮による 波浪制御効果がどの程度あるかを、二次元水路実験と線形計算により解明する。この場合、

波長を短縮することにより、構造物に作用する波力の軽減や長波長の波に対して遮断効果 の低い透過性構造物においても効果的に消波できることが期待されることから、没水水平 版と不透過壁あるいは直立透過壁とを組み合わせ、それら直立壁に及ぼす波力や長波長の 波に対する透過性防波堤の波遮断機能の改善等について検討する。第4節では、没水水平 版を実際に使うときに重要となる作用波力の特性を、 2次波まで含めた非線形計算により 明らかにする。

第6章において、以上の結論を述べている。

本論文における主な計算は、九州大学工学部水工土木学科海岸研究室所有のエプソン 社 製 PC‑386マイクロコンビュータと MSFORTRANコンパイラーを用いて行い、計算 機の容量が不足する場合や計算時聞が非常に長くかかる場合は、九州大学大型計算機セン ターの FACOMVP200スーパーコンビュータを使用した。 7j(理実験は、九州大学工学部 水工土木学科の造波水路を用いて行った。

10 

(17)

Chapter  2 

没 水 水 平 版 に よ る 波 の 分 裂 現 象 と そ の 特 徴

2 . 1   まえがき

単一規則波がたとえその振幅が微小であっても潜堤等の没水構造物に入射すると、波の 分裂が起こり 2次波峰が新たに発生することは古くから知られていた。しかし、分裂した 波が再び深い海域を進行するときの挙動やランダム波が入射するときの分裂現象について 系統的に研究されたことはいまだにないと言える。

この章では, 2次元水理実験により,没水水平版に単一規則波や2成分合成波および多 成分ランダム波が入射するときの波の分裂現象を明らかにする。この際、水平版上で起こ る波峰の発生現象や分裂波が再びもとの水深の海域を進行するときの挙動、さらに水平版 下部領域での流体運動の波分裂への影響および水平版を通過した後の波群の周期の低減率 や統計的性質を調べることになる。

第1節では、単一規則波に対する波の分裂現象、第2節では、多成分波のうちで最も簡 単な形の2成分合成波、第3節では、海洋波を対象としたランダム波に対する分裂現象に ついて明らかにする。なお、実験では、基本的に水平版上で入射波が砕波しない条件で行っ ている。

2 . 2   オ司実験の方法と条件

実験では、単一規則波、多成分波のもっとも簡単な形である一定の位相を持つ2つの 周波数の成分波が重合した合成波、および、海洋波を対象とした多成分波がでたらめな位相

11 

(18)

で重合したランダム波の3つの形式の入射波を用いてそれぞれの波分裂に関して調べた。

実験は、図‑2.1に示すような二次元水路(長さ 28m、幅0.30m、深さ 0.50m)を用い、水 深を h

0.38mとして、水平版を水路の中間点よりやや造波板側に設置した。設置水深 は 、 ん

=

10cm(hj / h = 0.263)を標準とした。用いた水平版の長さ B は、水深減少によ る波の分裂現象を調べるため水路の他端まで延ばして無限長と見なされる場合と、水平版 上で分裂した波が再び初めの水深の海域を進行するときの現象を調べることを目的として 水深の 10.50倍および5.25倍、 2.00倍とした場合の4種類である。この水路の一端に、反 射波を吸収する機能の不規則波造波装置ともう一方の端に反射率10%以下の消波装置を設 置し、多重反射の影響を極力小さくしている。

単一規則入射波については、吸収式造波機により規則波を発生させ、造波版から 2.0m (水平版前端から 8.5m)において入射波を測定し、これを基準として、次の4項目につい て測定を行った。

(1)分裂波の水平版上およびそれを通過した後の進行状態を調べるため、無限長と有限長 の水平版において相対水深川

L = 

0.070

0.100

0.137の3種類の波について水平版の始端 より波の進行方向

( x

方向)に測点間隔0.2m(ム

x/h = 

0.526)で水面変位を計測した。この 場合、多点における同時測定は実験手法の上で困難なため、 4本の波高計を台車上に 0.2m 間隔で固定し、その台車を z方向に移動して、各測点において 10‑‑15波の波形をサンプ

リング間隔 50m3で記録した。

(2)無限長の水平版上で発生するソリトンの個数を調べるため、入射波の相対水深

h/L

を 0.060 ‑‑0.235の間で変化させ、各々につき入射波高を

Ho

= 1.5 ‑‑3.5cmで変え、水平版 の始端 (x

0)より 0.20mのところから 2.50m間隔で5本の容量式波高計を設置して水 面変位を測定し、砕波や分裂波の有無およびその個数等を観測した。

( 3 )

水平版および矩形不透過潜堤による分裂波の発生と成長を調べるため、入射波の相対水 深

h/L

を0.060‑‑0.450、各々につき入射波高を

Ho = 

2.5 ‑‑6.5cmと変え、水平版の終

端より 0.20mのところから 1.0m間隔で4‑‑6本の容量式波高計を設置して水路終端の消 波面からの反射波の影響のない6‑‑10波程度の水面変位を測定した。

(4)有限長の水平版によって分裂した波が水平版をはなれた後、直立壁体に作用するとき の圧力分布を調べるため、図‑2.1(b)中の破線で示すように、水平版終端から dの距離だ け離して直立壁を設け、それに上下に 5cm間隔で設置した圧力センサーにより、相対水深

h /   L  = 

0.060 ‑‑0.235としたときの波圧を測定した。このとき、水平版の終端から直立壁

12 

(19)

ー ‑ ・ ー ‑

『 噌 ー ー

x

戸一一 X

11.5m  28.0m 

~

( a)無限長水平版と有限長水平版の実験装置図

‑ーー・ー‑

4時 一

Tr il l

l'hH

x t o ー x

hs 

'' tt tl 't il

ft s' 11 10 'a

r e 

ug   su  

. s a  

eg  

︐ .  

p ' 

11.5m  28.0m

(b)分裂波の波圧測定における実験装置図

図 ‑2.1実験水路と実験装置の概略図

13 

(20)

までの距離を 3種類変えて実験を行った。

二成分波が重合した入射波を用いて、水平版上の流体域での非線形干渉によって励起 する成分波の成長と、分裂波が再び深い海域を進行するときの各成分波の挙動等を調べた。

実験方法としては、単一規則波の(1)の実験と同じ要領で行った。また、 2成分波閣の周 波数の違いによって発生する高周波数成分波の振幅の大きさを調べるため、二成分入射波 における周波数の比を0.1毎に変えて、合計45種類の入射波に対して上述の(3)の方法で 実験を行なった。

海洋波を対象とした多成分波が重合した入射波に対する水平版の分裂機能を調べる目的 で、 0.80‑‑2.42秒までの 12種類の有義波周期で Bretschneider‑光易型スペクトルをもっ ランダム入射波における、通過波のスペクトル形状の変形や有義波周期と波高の変化、お よび波浪の非線形性を示すひずみ度と尖鋭度の変化について検討した。

以上の実験においては、通過波は水平版の後方1.0mから 0.2‑‑O.4m間隔で設置され た 6本の波高計で、反射波はその前方 2.0mから 3本の波高計で測定した。また、 0.2m間 隔で波高分布の測定も行った。これらの測定データをフーリエ解析および分離推定法(合 田ら,1976)により解析し、入射波と反射波、通過波における各々の成分波の振幅やスペク

トル形状を求めた。

2 . 3 単 一 規 肌 射 波 州 裂

2.3.1  波 の 分 裂 現 象 と 分 裂 波 の 水 深 変 化 に と も な う 挙 動

(1)時間波形の場所的変化

図 ‑2.2と2.3は、 4測点づ つ同時に測定された水面変位の記録のうちの2測点、での時 間波形η

( t ,

x)を、比較のため、各々の主峰(最大水面変位を示す波峰)の位置を横軸の零に そろえて図示したものである。各図の(a)は微小振幅の規則波(波形勾配は

Ho/L  = 

0.0066)  が無限長の水平版上を進行するときの波形の変化を表しており、 (b)は水深の5.25倍の長

さをもっ水平版(STATION NO.10まで版がある)上を同じ波が進行し再び水深九の海域 を進むときの波形の変化を表している。図‑2.2は相対水深 h/L = 0.100(h,,/ L" = 0.050、

ここに

L "

は微小振幅波理論でも求めた水平版上の水域における波長を表している。)、

図‑2.3はh/L = 0.137(h,,/ L" = 0.650)に対する結果である。

図‑2.2( a), 2.3( a)に示すように、規則波が水深んの水平版上を進行するにしたがい、

14 

(21)

30  X/h 

10  15 

pbqd'tGJW7'FhdqM1tqu7'Edq

'IQM7'E

q.U1lqdrqdqJW1'

R M E d q u a

7 a‑aa

quqJvqJvquqd4

4

41111'l14?lqd

'FHJwqu1'

mT

+

PW4nuq4

m H

.0 zz o

4トの

﹃ 訂

( a )

無 限 長 水 平 版

( b )

有 限 長 水 平 版

水路に沿う測点における水面波形の変形

( h / L  = 

0.100

,  H o /  L  = 

0.0066) 

2T  T 

30  X/h 

20 

10 

p hu

J

' t

n

J E J

J'inH

/ E J q J ' l

門司︑

/ C J

勺 ︐u'lqu

f E J

J

E d R

E d a仏 マ

AA

仏 マ

a4qJvqdqdJqJVζ44

4 1 1 1 1 1 a ' 1 1 1

n

''Edqdtl

吋王 土ム

C 2 0 2   ' t

n ‑

.0 zz o

図 ‑2.2 

( b )

有 限 長 水 平 版

水路に沿う測点における水面波形の変形

( h /L  = 

0.137

,  H o /  L  = 

0.0090) 

( a )

無 限 長 水 平 版 図 ‑2.3 

15 

(22)

波の分裂が始まり、この場合では2つの連続する主峰の聞に、

h /L 

== 0.100の場合には明 確な2つの波峰が、

h / L 

== 0.137の場合には 1つの波峰が新たに発生している。波高の 大きい主峰は、波速が速いため、第 2あるいは第 3の波峰に追いつき追い越す現象がみら れ、そのとき 2つの波峰が重なる場所での主峰の波高はその点の前後の波高よりも低くな り、また波形は波が分裂する前の形に戻る現象がみられる。これはソリトン分裂波特有の 性質であり、 Multer & Galvin(1967)あるいは Boczar‑Karakiewicz( 1972)が一様水深の水 路で観察したのと同様に、水深波長比の小さい水平版上の流体域でソリトン分裂が起こっ ていると思われる。一方、図‑2.2(b)と2.3(b)に示す有限長の水平版の場合、波が版上を 進行するときは、無限長の水平版と同様に、波峰と波峰の聞に新たな波峰が発生し波の分 裂が起こる。しかし、分裂した波が再び水深 hの深い水域を進むときは、波峰の形は進行 とともに変形し、特定の波峰を追跡することはできない。そして、第 2、第 3の波峰は場 所によっては主峰の波高とほぼ同じ程度の大きさとなり、見かけ上、入射波の周期が不規 則に短縮する様子がうかがえる。

(2)水平版上で発生する分裂波の個数

水深hの深い海域から入射してきた微小な振幅の水面波が水深の浅い無限長の水平版 上を進行するときに起こるソリトン分裂波の個数を調べた結果が図‑2.4である。これは、

横軸に X== 0.20mでの波高と水平版上の水深の比

( H / h $ )

を、縦軸に相対水深

( h $ /L $ )

を 取り、 Galvin(1972)が行った一様水深の水路で発生する波についての分類結果の上に図示し たものである。なお、

L $

は微小振幅波理論によって計算した水平版上での波長である。この とき、波の非線型性の強さを示す水平版上の水域でのアーセル数

U

R== 

(H/L$)

( L $ / h $ ) 3

の範囲は12‑‑390である。図においては、 Galvinが分裂波の発生個数を分ける境界線を示 しており、本実験で得られた結果もその分類とよく一致している。従って、水深の急変を もたらす水平版においても、その上での分裂状況は一様水深の場合とほぼ同様で、 Galvin の与えた分類に従うことが分かった。

(3)調和解析とパイスペクトル解析

波の分裂にともなう高周波数成分波の発生に関して、その振幅の場所的な変動と非線 形性の強さを調べるため、調和解析とパイスペクトル解析を行った。図‑2.2

2.3で示した 各測点で計測された時間波形η(t

, x )

を調和解析すると、各成分波の振幅

Am(x)

は、有限

16 

(23)

of 

s o l i t o n s  

2  ‑2 

2 ‑ 3  3 ‑ 3 

reaklng  down tank 

by blggest 5011 ton 

q u

' r 4

・ ¥

4 3 4

相川品部ムム↑

D I f

︒ $ 〆 一 ︑

r r  

J

n v   ‑

n u  

O .  

ω﹂

¥ω Z

£ 一

F a ω

︒ ω

2

‑ ω α

・ 伺

N o .  

0

・ロ

a A .

1 . 0   H/hs 

0 . 5   H e i g h t ‑ t o

Depth 0.01a 

R a t i o  

没 水 水 平 版 で の ソ リ ト ン 波 の 発 生 個 数 図 ‑2.4 

(2.1)  フーリエ近似を用いて次式で表せる。

N‑l 

Am(x) 

= 才玉川 X ) ∞ 仇

ここに、 m= O....̲ 

N j 2

で、 N は離散化したデータの個数、 σm= 2π

mjT

車、

T * ( =N

ムt) はデータ長である。また、二つの成分波間の二次的な非線型干渉の程度を表すパイスペク

トル

B ( σ 1

σ 2 )

は、水位変動の三次相関 R(

1

' 2 )

の フ ー リ エ 変 換 と し て 定 義 さ れ 、 次 式

(2.2)  で与えられる。

B(σ1

, 

a2) 

(2π)2

乙 乙

R(1

T2)

p {

i(σlTl +a2T2)}T2

17  ここに、

(24)

r

T

/2

R (

12)== 

)tn

j η

( t )

η

( t + 

il) .η

( t   +

'2)

d t  

工 → ∞ 1~ J‑T./2  (2.3) 

いま、任意の角周波数 σm,九をもっフーリエ成分波のパイスペクトルは、式 (2.2)より次 式のようになる。

F(

σ

m)F(

σ

n ) F (

σ

m+n) 

B (

σ1

σ2) == )}.m 

1.‑01

( 2 . 4 )  

ここに、

F(

σm)はフーリエ振幅を表し、式

( 2 . 1 )

のAmとは、

F(

σm)== AmT* 

/ 2

の 関係がある。この場合、入射波が単一周波数の規則波であれば、水平版上の浅い水域にお ける非線型干渉により生じる成分波は、基本周波数の整数倍の周波数をもっ波である。こ れより、基本角周波数 σ1==σ==2π

/ T  ( T

は入射波の周期)とその2倍角周波数 σ2==  2σ 

、 3倍角周波数 σ3==  3σ の振幅Al

A2

, 

A3をもっ 3つの成分波を考えると、パイスペクト ルの成分として存在するのは、

B (

σ?σ)と

B ( 2

σ,σ)の 2つであり、 Al'A2' A3を用いて それぞれのパイスペクトルは次のように求められる。

A~A司T・2 B(σ

σ)==

j

A 1AぅA~T.l

B ( 2

σ

σ)=A68d 

(2.5) 

(2.6) 

図 ‑2.5と2.6は、無限長水平版に関する結果で、各々の図の下段に基本周波数および その2倍、 3倍周波数の振幅 AbA2

A3の場所的な分布を、上段に主峰 (Hm)と二次波峰 のうち最も波高の高い波峰

( H $ )

の波高分布を図示したもので、波高、振幅ともそれぞれ入 射波の波高と振幅により無次元化されている。同様に、図‑2.7, 2.8に有限長水平版の結 果を示している。 なお、本実験の造波装置による入射波形の調和解析においては、基本角 周波数 σの 振 幅 に 対 し て お や 3σ の高周波の振幅は0.1倍以下で無視される程度である。

無限長水平版における結果の特徴として、前述のような主峰の追越し現象や図‑2.6に示 されているように波高と各成分波の振幅が再帰距離を波長として場所的に繰返して同じ形 になっていること

( x / h

== 0, 16, 32における

A

1の極大点と Hmの極小点が対応する)、

再帰距離の半分のところで2倍周波数の振幅が最大となり逆に基本周波数成分の振幅が最 小となる等、ソリトンの性質をよく表している。また、各成分波の振幅が場所的に変動す ることより、ソリトンが進行する過程において各成分波間でエネルギーの交換が行われて

18 

(25)

wave 

)110 

Hm

机ぷア

¥ 

2.0 

ト司

J

:z:  ω1.0 

ed 0.0 

h a /La =0.050  Ho/L=0.0066  h/し=0.100 

hs/h=0.263 

20  30  10 

/ブ‑ /  / .  

1.6 コ

伊田

1.2

%: a: 

0.8

0.4 α: 

Eコ :z 

0.0 0  X/h 

無限長水平版における波高と各成分波の振幅の場所的分布

( h / L  = 

0.100

,  h $ / h   = 

0.263

, 

Ho/ L 

0.0066) 

wave 

)110 

Hm

机ぷア

¥ 

¥ 

H m

¥ 

ha/La=0.065  Ho/し=0.0108  h/し=0.137 

hs/h=0.263 

¥、〆、し

/  '‑一、/ '¥ 

;/~"\心ふ)ム

n v n u n u a u

ι

2 1 0 1 1  

↑工

ω

H . J n

‑ z q

0.8

̲J 0.4

α =  

0.0 0  図‑2.5 

30 

無限長水平版における波高と各成分波の振幅の場所的分布

( h /L  = 

0.137

,  h $ / h   = 

0.263

, 

Ho/ L = 0.0090) 

X/h  20  10 

図 ‑2.6 

19 

(26)

Hm

J i ' ¥ v t ヌ ア

ヘ .

e' ES ' 

LH 

・ d 

2.0 

μ 1.0

od 0.0 

n u  

U

4 Q U

n u

1 1 0 0 o  

uHJιzg

MHJZZ

CZ

hs/Ls=0.050  B/h=10.50  Ho/し=0.0066

1¥  '‑‑̲̲A2

/ 一 / ー ‑ .....̲ 

h/し=0.100  hs/h=0.263 

1 l d v V  

/ / ぷ v

n u n u n u

u q 4

2 1 0 1 1  

一凶

30 

有限長水平版 (B/ h 

10.50)における波高と各成分波の振幅の場所的分布 (h/ L 0.100

h$/ h = 0.263

, 

Ho/ L = 0.0066) 

wave 

~ー

X/h  20  10 

図‑2.7 

Hm

J i ' ¥ v t ヌ ア

1 " ' ' :   /    ¥ ' ̲ 

""‑‑ーポ {¥、 ノ'¥ ¥.;/¥  /  ¥ / 、 ¥ /  ¥ / 

" 、 ' ‑

¥ ノ / J / j l

̲ 1   H

Hm 

B/h =5.25  hs/Ls=0.050 

Ho/L=0.0066  h/L=0.100 

hs/h=0.263 

30 

有限長水平版

( B / h

= 5.25)における波高と各成分波の振幅の場所的分布 (h/ L 

0.100

, 

h$/h 

0.263

, 

Ho/ L 

0.0066) 

X/h  20  10 

図‑2. 

20 

(27)

いることも示唆される。

一方、分裂した波が再び深い海域を進行すると、伊!えば、図2.7に見られるように浅 い海域の場合と異なり、各成分波の振幅はわずかの動揺を示すがほとんど一定である。と ころが主峰 Hmや二次波峰 HJ の波高は、場所に関して規則的に変動している。これら分 裂した波の各成分波がそれぞれの周波数に対応する位相速度で独立に進行し、各成分波の 位相が合う場所では主峰の波高 Hmが増大し、位相がずれるにしたがって減少するといっ た現象が起こっていることを示唆している。また図‑2.7のように、水平版通過後に 2倍 周波数の振幅 A2が 1倍の A1より大きくなることは、入射波をその波長より短波長の有 義波に変換する可能性をも示唆している。図‑2.7と2.8を 図 ‑2.5と比較すると分かるよ うに、この水平版通過後における各成分波の振幅の大きさは水平版の長さに関係しており、

水平版の終端でのそれぞれの振幅の値にほぼ等しくなっている。これによると、水平版の 長さが再帰距離のちょうど半分のとき 2倍周波数の振幅 A2が最大となり、基本周波数の 振幅 A1が逆に最小となる。この結果は、 Meiが2成分波による非線型干渉問題の理論解 析より推察したものと一致する。

図 ‑2.9

, 

2.10は、それぞれ図‑2.5と 図 ‑2.7に対応するケースにおける入射波高と 周期により無次元化したパイスペクトルの場所的な変化を示している。井本らの研究(1978)

によると、水深の大小にかかわらず位相関数σ1t‑k1X

1t‑k2X

1t‑k3X(k1

, 

k2

, 

k3  は、それぞれ各周波数σ1 2σ1

, 

3σ1に対応する波数)をもっ自由波からなる水位変動のパ イスペクトルは場所的な変化をしないが、これに波数がムk(=

ん‑

2k1)だけ異なる成分 波を加えた水位変動のパイスペクトルは場所的に変化するということを報告している。こ の結果を図‑2.9と2.10に適用すると、水平版上の分裂波には波数がムkだけ異なる成分 波が存在するが、それが水深の深い海域を進行するときには自由波のみとなり各成分波が 固有の位相速度で進行していることを示唆している。

(4)直立壁に作用する分裂波の波力分布

第2章の第3.1節で述べたように、水平版を通過した後の分裂波は、微小振幅波とし て、各成分波の周波数に対応した位相速度で独立に進行することを示唆する結果が得られ たが、このことをさらに確かめる目的で、水平版を通過した分裂波が直立壁に作用すると きの波圧の分布を測定した。 図 ‑2.11

, 

2.12は、水平版 (B= 10.5h

,ん =

0.263h)で分 裂した波が水平版からそれぞれd

2.0h5.8hのところに設置した直立壁に作用する場

21 

(28)

40T 

wave 

h/ し = 0 .1 0   h9/ し 9=  o .   0 5  

3

I N F I N I T E  P L A T E  

マ 工 1 1¥ /810σ)

B( 2a

a) 

h

, 圃

∞ 

/'" 

/、ノ m v j f ¥  

¥ f ¥  ¥ 

o  。 L 

<i's 51 S> iS si 

10  X/h  20  30

図‑2.9  無 限 長 水 平 版 に お け る パ イ ス ペ ク ト ル の 場 所 的 分 布

( h /L 

= 0.100,ん

/ h

"

。 工

〉 40 

;20

∞  J 

。 。

0.263

, 

Ho/ L = 0.0066) 

wave 

~

h/ し = 0 .1 0  

10 

h  9  / し 9=0.05 B / h = 1 0 . 5 0  

X/h  20  30 

図‑2.10  有 限 長 水 平 版

(B/h

= 10.50)に お け る パ イ ス ペ ク ト ル の 場 所 的 分 布

(h/L = 

0.100

, 

h3 / h = 0.263

, 

Ho/ L = 0.0066)  22 

(29)

Z/h  I  h/L=0 . 07  d/h=2.0 B/h=10.5  1 . 0 ↓ LP24 ・ : 1

1

0 . 8 十 / . . .

P3

・/

4 デ .

P1 

0.6t  . . . /   • / 

0 . 4 +   件, ~

0.2+  , 1 . 1     1 .

0 . 0  

h/L=0.10  d/h=2.0  B/h=10  1.0 ↓

P3

P1 P2/  P1 

J  ・  ̲  / A   ̲ 

/ 0  

0 . 8 + イ / 

今/

06+イ ・ & / /

4 ・ A

0.41~ ~ ~

0.2岬 A f

L 1  

~

0.0  0.2  0.4  0.6  0.8  1.0 

P /   pgHo 

図‑2.11直立壁に作用する波圧の鉛直分布 (Bj九 =10.5

, 

d j h 

2.0) 

23 

(30)

Z/h 

1 . 0   0 . 8   0 . 6   0 . 4   0 . 2   0.0  1 . 0   0 . 8   06 

0 . 4   f 

0 . 2   0.0 

; イ "

Py 

~

/ A   / A  

~

d/h= 5.8  B/h=10.5 

P3/ ./  P 4   P 1  

・~<Y" 1 0  

d/h=5.8 

P 1 !   P2/ 

B/h=10.5 

P

) '  

0.2  0 . 4   0.6 

P/pgH 。 0 . 8   1 . 0  

図 ‑2.12直立壁に作用する波圧の鉛直分布 (Bj九二 10.5

d j h 

5.8) 

24 

参照

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