神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第9号 2005年3月 47
社会的責任投資の 日欧米比較
"Japan‑U.S.AIGermancomparisonofSociallyResponsibleInvesting"
神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士後期課程
山 田 英、俊
EISHUNYAMADA
■キーワー ド
社会的責任投資、企業の社会的責任、企業倫理、Etische、Inves血g、技術の進歩
第
1
章 社会的責任投資の意義 1 社会的責任投資の定義企業 は営利主体である。 よ り良質のサービスを、
より安価に提供す ることによって、当該業界にお いて競争力 を発揮 し、市場調査 によって常に新 し いニーズに応 えることが要求 され る。現代 は大量 生産 ・大量消 費社会であ り、 また消費者 は新 しい 製品 ・サービスに敏感 になっている。マスメデ ィ アの発達がこれ をさらに助長 しているといえよう。
そ して こうした市場社会に対 し、企業 はその活動 によって貢献 を してい くものである。
しか し現在では、市場 に提供 され るサービスが、
どのような方法によって生み出 されているものな のか、 さらにどのような経営体制の下で生み出 さ れているものなのか とい うことが、重要 な問題 と
して社会か ら注 目されている。
例 えば、ある製品Aの製造 において、非常に環 境負荷の高い材料が用い られ、 さらに製造過程で 有害物質が発生す るとい う場合、いかに良質で安
価、且つ競争力のある製品であったとして も、そ れは社会 にとって有害 である。又、製品Aが不公 正 な労働条件や劣悪 な労働環境の下で製造 ・販売 されている場合 も、労働者の権利 を無視 してい る とい う問題 がある。 そ して最終的にそれ らは、社 会経済全体に悪影響 を及ぼす こととなるであろう。
こうした問題 に対 して研究 が進 め られているの が、「企業 の社会 的責任」】とい うもので あ る。企 業の大規模化に伴 い、社会 に対す る企業の影響力 が増大 し、‑つの不祥事によって、様 々な形で自 然 ・社会環境 に重大 な結果が引 き起 こされ るとい う事実 が、「社会 的責任」 に注 目が集 まってい る 大 きな要因であると筆者 は考 えている。資本主義 経済 システムのデメ リッ トともい うべ き事態が発 生 しているのである。 このデメ リッ トについては、
次節にて具休的に述べ ることとす る。
さて、本稿で考察対象 としてい る 「社会 的責任 投資
」 2
とは、倫理的意思決定 を推奨 し、かつ コン プライア ンス (法令遵守等) を貫徹 し、情報開示 や環境対応 な どに対 し、積極 的に取 り組 む企業、48 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第9号 2005年3月
つ ま り 「社会 的責任 の履行 に努力 している企業」
を、投資家一人一人の投資によって、長期的に支 援す る投資である。
従来の投資活動 は、企業の収益性のみ を重視 し、
投資家の投資による、投資先か らの利益享受 に関 心が強 く向け られていた。 しか しなが ら、現在で は、投資家の利益 だけではな く、投資先企業が社 会貢献 をしているかどうか といった考 え方や、投 資家 自身が行 う投資によって社会 に貢献するとい
う考 え方 が生 まれてきてい る。
こうした考 え方 に加 えて、社会 的責任 を考慮 し ている企業 は、そ うでない企業 よ りも成長性 があ るとい う考 え方 も注 目されて きている。 これ らの 考 え方 を包含 した投資概念 が、社会的責任投資で ある。即 ち、通常の財務分析等に加 え、 コンプラ イアンス、環境配慮、人権擁護、地域社会貢献 な どの取組において、社会的責任 を果た しているか 否かを基準に、当該企業への投融資判断 を行 うと い うのが社会的責任投資である。
本稿 ではこうした定義 によって社会的責任投資 を認識 し、 日本 と欧米 との間の共通点、相違点 を 導出す ることを目的 とす る。
そもそ も欧米 において発達 した社会的責任投資 が、現在では 日本 において も実施 されてい るとい
う事実 がある。
日本 は経済大国 と呼ばれ るようになって久 しく、
高度経済成長期の公害問題 を経験 したとい う歴史 は、社会的責任投資の先進国である欧米 と大差 な い。 しか しなが ら、 日本 は欧米 と比較 した場合 に
「企業の社会 的責任」 とい う点で遅れているとい う。そこで、 どの点が遅れているのか、 どの点が 共通点 として発見 され るのか とい うことを検証す ることによ り、今後の 日本 における社会 的責任投 資についての理解が可能であると筆者 は考 える。
社会 的責任投資 (SRI) は企業 のCSRと関係 が 深 い。CSRと はCorporateSociallyResponsibility の略語で、企業 の社会 的責任 とい う意味で ある。
しか しなが ら、CSRの明確 な定義 は未 だにな され ていない。 とい うのは、CSR自体の研究が遅れて いるとい う理 由ではな く、その意味す るところが
非常に広範であるためである。高巌氏他の著書 に おいて も、CSRの定義 は、「CSRとは実 際 に何 を 指すのか、何に対応 しなければな らないのか (例 : 人権、労働環境、環境保護、地域貢献など) とい
う具体的な定義 はほとん ど不可能であると考 えて い る。 なぜ な らば、CSRは、社会又 は市場 との関 係 においてその内容 が決 まって くるものだか らで あるOつ ま り、CSRの指す ところは、市場や地域 の人々 との交流や対話 を通 じて、又は相互作用 を 通 じて何 をや るかを決めてい くことで、その具体 的な実践 内容 が決 まって くるか らである
」
3と述べている。
しか し、明確 なCSRの定義 がな されていないと はいえ、CSRへの取組 を実践す ることによ り、同 氏は6つの利点 を挙 げている。即 ち、
①組織の継続的 ・安定的な成長
②社会 か らの信頼性の確保
(参グローバル市場での企業競争力の向上
④効果的なコンプライア ンス手法の提供
①地域社会 (企業市民) との協調
⑥ 社 会 的 責 任 投 資 (SRトSociallyResponsible Investment)か らの支持
である。
この中の⑥が本稿の考察対象で ある。そ して こ のSRIはCSRと密接 な関わ りを持 ってい ることが わかる。
通常の財務分析等 に加 え、 コンプ ライア ンス、
環境配慮、人権擁護、地域社会貢献 などの取組 に おいて、社会 的責任 を果 た してい るか否かを基準 に、当該企業への投融資判断 を行 うとい うのが社 会的責任投資であるとい う定義は前述の通 りであ る。 そ して このSRlは一般 的に 『①企業の環境や 社会的責任への対応 を考慮 して投資先 を選定す る
「スク リーニ ング」、⑦企業の環境や社会 的責任へ の対応 に関 して、株主 として対話 を求めた り、議 決権の行使や株主提案 を行 う 「株主行動」、そ して、
③ マイノ リテ ィや低所得者居住地城の発展 を支援 す るために低利 の融資プログ ラムの提供や投資 を 行 う 「コ ミュニテ ィ投資」 (米国及び英国が中心) の3つ に分類 され る』4が、本稿では① と② を考察
「社会的責任投資の日欧米比較」 49 対象とす る。
ではその社会的責任投資 は、 どの ような歴史的 背景の下で発生す るに至 ったのであろうか。 この 間題について、次節で企業の発達に重点 を置いて 考察す ることとす る。そ して、具体的な国別の特 徴につ いては後述す る。
2 社会的責任投資の歴史的発展
社会的責任投資はどの ような歴史的発展を遂 げ てきたのか。それは企業の発展 と密接 に関連す る ものである。
企業の社会的責任 に関連す る事例 について考 え た場合、我 々が新聞等で しば しば 目にす る 「温暖 化現象」 や 「水質汚濁」 といった単語に代表 され る、いわゆる環境汚染 とい う問題がある。環境問 題の原因 としては、 さまざまな要因が挙 げられ る が、企業の経営活動およびその結果発生する廃棄 物等は、無視 し得 ない重要 な要 因 として認識 され ている。
また、「汚職事件」や 「談合」といった政治問題 も、
企業 と政界 との癒着が原因であることが多い。そ して、 これ らの問題が自然環境や社会環境へ与 え る影響は、以前 と比較 してはるかに大 きなもの と なって きている。
企業がこれ ら社会的な問題 に与 える影響の増大 の要因 として もさまざまな ものが指摘で きるであ ろうが、筆者 は特 に技術の進歩 とい う点 を重視 し てい る。す なわち、産業革命以降成 されて きた、
様 々な領域 における劇 的な技術の進歩 に伴って、
企業が自然環境や社会環境へ与 える影響 が、より 大 きなものへ と変化 して きていると考 えている。
無論、技術の進歩によって生 じた影響の中には、
社会 にとって良い もの もある。例 えば、技術の進 歩によって、消 費者の求めるものにより合致 した 製品を開発で きるようになる。 この ことに企業規 模の拡大 とい う要因が重 なることによって、 より 多 くの消費者 が安価で高性能な製品 を手 にす るこ とがで きるよ うになった。 そ してその結果として、
消費者の生活 が向上す るとい うことは、良い影響 の代表例 として挙 げ られ るだろう。
また、技術の進歩が もた らした変化の具体的な 例 として、パ ーソナル コンピュータや携帯電話に 代表 され る情報端末5の劇 的な普及 による変化 も 指摘で きる。特 に 日本 に於 ける情報端末 の普及 に よって、企業はそれ まで と比較 して迅速 に自社製 品の情報 を消費者へ伝達す ることが可能 になった。
一方、消 費者 もそれ を受 けて、 よ り自分の要求 に 合致 した商品 を購入す ることがで きるようになっ ている。
その他の領域 に於 ける技術の進歩 による社会生 活の向上 に関 しては、交通 を例 に挙 げることがで
きるだろう。具体的には、 自動車、鉄道、航空機、
そ して現在注 目を集めている リニアモーターカー の開発などが指摘で きる。 また、交通 とい う領域 に限ったことではないが、製造業が用いる様 々な 工作機械の発達 も、見逃す ことはで きない。工作 機械の性能向上の多 くは、企業 の研究開発によっ て もた らされ るものである。 そ して、その機械 を 扱 うための新技術によって、新規 の雇用が創 出 さ れ るとい うことも考 えられ る。
次々に生み出 され る新 しい技術の中には、国家 事業 として、国 と企業 が合 同で研究 ・開発す るも の もある。 その代表的な領域 としては、航空宇宙 産業が挙 げ られ るだろう。当該産業 は様 々領域の 技術の粋 を集めた ものである。 さらに、防衛産業 とも密接 な関連性 を有す るため、国 を挙 げて熱心 に研究 がな されてい る場合 も多い。 そ して航空宇 箇産業 は、一企業 が単独で研究 を進め られ るよ う な規模の ものではな く、非常に大規模 な研究開発 が必要 な分野である。 それゆえに、国 と企業 が合 同で研究す るとい う体制が必要 となる。 この、国 家 と企業 との連携 によ り、 ます ます技術開発は進 め られ、結果 として生み出 された技術は航空宇宙 産業 に限 らず、様々な方面 に反映 され、我 々の社 会一般 に役立 ってい くもの と考 えられ る。
しか し、技術の進歩が生み出す影響は、良い影 響だけではない。当然の ことなが ら悪 い影響 もあ り、 この悪 い影響 こそが、種 々の社会 的な問題 を 引 き起 こす原 因 となっていると筆者 は考 えるので ある。
50 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第9号 2005年3月
ここで、技術の進歩が生み出す悪い影響 を、前 述の 「良い影響」で挙 げた具体例 との対比 によっ て考 えてみ よう。
パ ‑ソナル コンピュータや携帯電話 の普及 は、
情報の氾濫 と悪用 を引 き起 こ した。例 えば個人情 報が従来 よ りも簡単 に企業へ流 出 し、それが悪用 されるとい う事件 が起 きている。 これは技術の進 歩が、情報の流 出 を容易に したとい う側面 と、情 報 を扱 う人間が適切 にその情報 を扱わず、悪用す ることを容易に したとい う、問題発生 を容易にす る2つの側面 を生み出 しているとい う点に注意 し なければな らない。
技術の進歩による利便性の高 い機器の普及に関 しては、機器の使 い方か ら発生す る問題が指摘で きる。例 えば 「携帯電話の使用 ・通話禁止」 が明 記 された場所であって も携帯電話 を使用す るとい う人間 を目にす ることは、 日常茶飯事である。 ま た、携帯電話やパ ーソナル コンピュータといった 情報媒体 を通 じて行われ る詐欺的な事件、いわゆ る悪徳商法に関 して も、 これ らの機器が普及す る 以前 よ り増加 してい るとい う点が指摘で きるだろ う. これ らはメデ ィア リテ ラシーの問題 として近 年取 り上 げ られている。
交通 とい う領域では、技術の発達によって、同 じ距離であれば以前 と比較 して 目的地 までよ り短 時間で到達で きるよ うになった。 しか し、 この移 動の短時間化 を可能 とした移動速度の向上 が、逆 に事故が発生 した際の被害 を大 きくしている。 ま た、技術その もの とは直接関係 ないが、交通 とい う領域 に関連 して発生 す る社会 的な問題 と して、
鉄道路線工事 に伴 う周辺住民立 ち退 きの問題 や、
航空機の騒音振動、 自動車 による渋滞 が引 き起 こ す大気汚染 も無視す ることはで きない。
さらに、企業が営利主体であるとい うことに起 因 している問題 もある。 これは企業 が自社の利潤 を追求 しす ぎるがために、企業 自 らが社会的存在 であるとい うことを忘れ、社会 に対す る影響、特 に悪 い影響 を無視 した企業行動 をとるとい うこと を意味す る。企業 が利 潤追求 を志向す るな らば、
その活動 は社会的責任 を包含 した上で成 されなけ
ればな らない。 この ことは、企業 が社会的組織 で もある以上、当然の ことであると筆者 は考 える
以上、 さまざまな角度 か ら、企業 が関与す る社 会 的な問題 を列挙 した。上記の社会 的な問題 は、
企業 自身が引 き起 こしているもの もあれば、企業 が提供す る財 ・サービスによって引 き起 こされ る もの もある。そのいずれで あって も、問題 が既 に 顕在化 してお り、その直接 的 ・間接的原因が企業 にある以上、企業に対 して問題の解消 ・抑制 につ ながるなん らかの施策の提示 ・実行が必要である。
こ う した問題 に対 し、企 業 がいか な る手段 に よって問題 を解決 しようと努力 しているか、 もし くは解決 してい るかが問われ る。 これが 「CSR:
企業 の社会 的責任」 を果 た して い るか否 かで あ り、本稿 で考察対象 となっている社会 的責任投資 によって企業 と投資家の意思決定に影響 を与 える ものである。 そ して投資家 による投資意思決定手 段の うちに 「社会 的責任投資」が含 まれ ることに よって実践的な対応 が可能 となるのである。
3 社会的責任投資の重要性
これ までに述べて きたことか ら、企業の発展が 社会 に大 きな問題 を引 き起 こ しやす くなって きて いることがわかる。 これに伴 って個人や機 関投資 家の活動 もまた時代 とともにその重要性 が高 まっ ていると筆者 は考 えている。
投資 とい う活動に 「企業の社会的責任」 とい う ものが加 えられ ることになった要因は前節で述べ たよ うに、企業の大規模化に伴 う企業不祥事の増 加 にあると筆者 は認識 している。 そ して この こと は、投資家が 「企業の社会的責任」 とい うものに 意義 を見出す ことにつ ながった。企業不祥事が発 生 した場合 に、当該企業 の業績 は著 しく悪化 し、
投資分の回収が困難 となるためである。
では 「個人や機 関投資家の活動 もまた時代 とと もにその重要性 が高 まっている」 とい うことの論 拠 と、社会 的責任投資の重要性 とはいかなるもの なのか。
大規模化 し、社会への影響力が増大 した企業 が 反社会的な企業活動 を行わないようにす るための
「社会的責任投資の日欧米比較」 51 対策は、国家 レベル による対策、つ まり法制度の
制定が効果的である。 さらにグローバル化 してい る現代 では国家 とい う枠組み を超 えて、国際的な 取 り決 めによる対策 も大 いに効果が期待で きるこ
とであろう。
しか し、 これ ら 「制度」 には限界があり、国際 的な取 り決 めをす る場合 には、「国際的」 とい う 前提、即 ち、国家間 を超 えるとい うコンテクス ト が前提 とす る絶対的な障害、国際的合意が障害 と なる場合 が多 くある。 こうした施策考案 ・実施 に は時間がかかるものであ り、現実的には企業の発 展、技術の発展進度 に追いつかないとい う問題が 発生す ると考 えられ る。特にIT革命 と呼ばれてい る今 日では、顕著 にこの発展進度の高速化が見 ら れ、制度 によって企業不祥事 を抑制す ることは困 難であろう。
これに対 し、投資家の投資は企業 に直接的な影 響力 を及ぼす ものである。企業は所有 と経営の分 離が進んだ段階で、経営者の意思決定 と企業活動 に必要 な資源が分離 され る。 そ して企業が継続的 に活動す るためには出資者の出資が必要 となる。
確かに出資者、投資家は法律等の規制 を利用 し、
企業に対 して効果的かつ即効性のある意見具 申を す ることは難 しいが、法制度等 よりも強い 「発言 力」 となるのが、実際の出資金、即 ち、投資額 と なる。発言で もない、制度で もない強制力、それ が投資家の投資意思決定 となると考 えられ る。 こ れが社会的責任投資の もつ 「無言 の発言力」であ り、強い効力 を持つ強制力 とな りうると筆者 は考 えるのである。
企業 を取 り巻 く社会、特 に投資家 に よるアプ ローチによって企業不祥事 を防止す るといったこ とが、持続可能な社会経済 システムを構築 してい くにあたって必要不可欠である。 この要請に社会 的責任投資の もつ特性が、資本主義経済における 企業に対 して非常 に有効 な ものであ り、そこに社 会的責任投資の重要性が存在す る。
次章以下では、欧米 (アメ リカ ・ドイツ) と日 本の社会 的責任投資の実態 について述べ ることと
し、実際の動向について考察す ることとする。
第
2
章 各国 における社会的責任投資 1 米国おける社会的責任投資本節では米国における社会的責任投資の歴史的 な発展 と、 その投 資が増加 してい るのか ど うか、
そ して特徴 はどこにあるのか とい う点に焦点 を当 て考察す ることとす る。
そ もそ もSRIとい う用語 が英米語で あることか らもわかるよ うに、社会的責任投資発祥の地 は米 国であった。SRIは、米 国では酒 ・タバ コ等の健 康 を害す る恐れのある晴好品や、軍需産業への投 資 を控 えるといった運動 が始 まりである。 そ して 現在では1990年以降か ら米 国におけ るSRI資産総 額 は伸び を見せている。 まずは歴史的背景か ら見 てみ よう。
SRIの発展 は大 きく3つの区分 に大別す ること が可能である.一つめは1920年頃か らのキ リス ト 教教会 による運動、二つ めは70年代か らの公民権 運動やベ トナム戦争反戦運動、反 アパル トヘ イ ト
(人種隔離政策) に関わ る運動、 そ して三つ 目は 90年代前半か らのCSR発展に関わる運動である。
SRIの歴 史の最初 は1920年代、米 国キ リス ト教 教会 が教会 資金の運用に関 して酒、 タバ コ、ギャ ンブルに関連す る企業 を、彼 らの教義である平和 主義、禁酒、禁煙 とい う立場 によって、投資対象 か ら除外 したのが始めである。当時のキ リス ト教 教会では、彼 らの教義 に反す る企業の株式 を 「罪 ある株式 (SinStocks)」6と呼んだ。 こ うしてSRI は宗教的倫理観、教義によって運用 された教会資 金に起源 を発す る。 しか しなが ら、 この時点では まだSRlが企業 の社会 的責任 を問 う手段 と しては 考 えられていなかったのである。
こうした中で、70年代 か らベ トナム戦争に対す る反戦運動 とい った動 きがSRIを発展 させ ること になる。 そ して、いわゆ るCSRを果 た していない 企業に対 して投資家が投資 を控 えるといった行動 をとるようになった。 この時点でCSRを果 た して いない企業 を投資対象か ら除外す るとい う、現代 的なSRI投資信託 が登場す ることとなった。
そ して90年代 になって問題 となったのが南 アフ
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リカのアパル トヘ イ トである。 アパル トヘ イ トは 48年 か ら行われていたが、 アメ リカの公民権運動 によって70年代か ら90年代 にかけて問題 として取 り上 げ られ たので あ る。 この運動 の結果、「82年 には カルバ ー ト(Calvert)か ら南 ア フ リカで操 業 を行 ってい る企業 を投資対象 か ら除外す る初の sRI投 資信託 が発売
」
7され た。で は、実 際 の投 資額 は ど うな っ て い るの か。
「SIF只に よ る と、84年 にお い てSRIの総 資産 額 は 400億 ドル で あったが、86年 には2,750億 ドル、 そ して この問題 に関す る批判 が最高潮 に達 した91年 には8,250億 ドル に達 してい る。 この よ うなSRI資 産 の増加 は、90年代以降のSRIの拡大 の先鞭 をつ け る もので あった
」
9とい う。筆者 が現 在のSIFに よ る2003年 まで の投 資増 加 デ ー タ (図2‑1)を 調査 した結果、やは り増加 してい ることが判明 し た。2003年 には若干減少 してい るものの、97年 と 比較す ると979(単位億 ドル) の増加 が見 られ る。この デ ー タを見 る と、 アメ リカにおいて、SRI は強 い関心 が向け られている投資で あることがわ か る。
図2‑1
結論 と して、米国では1920年代 のキ リス ト教教 義 によってSRIが発展 した ことが理解 で き、現在 で もその投資額 は増加 しているとい うことO そ し て、 その特徴 は、社会 的に害 を及ぼす よ うな企業 に対 す る 「批判 的投 資」 と して、SRlが認識 され ているとい うことが理解で きた。では次 に欧州 に おける社会 的責任投資につ いて見 る事 とす る。
2 欧州 における社会的責任投資
欧州 におい て、社会 的責任 投 資 の 中心 は、英 国 で あ る とい うの が一般 的 な見解 で あ る。 で は こ こで は 欧州 を英 国 中心 に考 察 す るの か とい うと、 それ は違 う。筆 者 はお あ くの ドイツ語文 献 か ら欧 州 の 企 業 倫 理 を調 査 した 結 果、 英 国 よ り も ドイ ツの ほ うが企 業 倫 理、 つ ま りCSR/
UnternehmensverantwortungftirSozialも しくは、
Unternehmensethikの研究 が盛 んで あることが理 解 で きた10。sRIとCSRは切 り離せない ものである。
そ してCSRの発展 が 目覚 しい ドイツではSRIも盛 んであろうと筆者 は仮定 した。本節では、欧州 の 中で も、特 に ドイツにおける社会 的責任投資の歴
出所 :SIF http://www.socia=nvest.org/
「社会的責任投資の日欧米比較」 53 史 的な発展 と、その投資が増加 しているのか どう
か、そ して特徴はどこにあるのかとい う点に焦点 を当て考察す ることとす る。
ドイツにおける社会 的責任投資の歴史は、一般 的にかな り浅 いといわれている。 とい うの も、社 会 的責任投資が本格化 したのは、政府の関連部署 主導で1990年代後半であるためである。 ドイツで は2001年 に年金法改正 が行われたが、米国 と比較 した場合 に異 なるのは、米国が教会やベ トナ ム戦 争、公民権運動 といった民間か らの要請 によって 発展 したの に対 し、 ドイツ他EU諸 国は政府 主導 によって、法律 を含 めたSRIにつ いての制度 化が 行われてい る点である。では、 こうした事実 か ら ドイツの企業倫理や社会的責任投資は遅れて いる といえるのだろうか。答 えは否である。
CSRとSRIが密接 な関係 にあるとい うことは既 に述べた。 まず、csRについてであるが、 (ここで は、ドイツのCSR (Unternehmensethik)を、シュ タインマ ンを中心 とす る学派の、企業倫理 に 関す る学説 とす る。
シュタインマンはその著書の一節である「]Ⅲ企業 倫理の概念(EinBegriffvonUnternehmensethik)」 の中で、企業倫理 を次のように定義 している。つ ま り、「企業倫理 とは、利害関係者 との、対 話的 合意 を通 じて、根拠付 ける、 もしくは根拠付 け ら れ うるすべての実質的、過程的規範 を包含す るも のである。その規範 は、企業経営によって、、束縛 的な 自己拘束の 目標 のために発効 され るも,ので、
利潤原理の利害衝突 に関連 した影響 を、具体 的な 企業活動の指導の際に制限す るものである.。」】】と い うものである。
さて、 シュタイ ンマ ンの企業倫理の定義 か ら、
彼 の主張 について、 どのような考 えが導 き出 され るであろうか。筆者 は さしあたって二つの主 張 が 導出できると考 えている。
第‑に、企業倫理では、利害関係者 (Betrolffene) との対話 を重視 していることである。では、、ここ でい う 「対話」 とは何かO この対話 とい う滝 のは、
様 々な利害関係者 が挙げ られ る中で、それ ち利害 関係者集団 との、双方向の対話 を示す もので ある。
そ して、利潤の増大 を目指す企業経営の側 と、当 該利害関係者 との対話 を通 じて、起 こりうる利害 衝突 を調整 (Ausgleich)す ることを 目指す とい
うものである。
第二 に、利 潤原 理 (Gewinnprinzip)と企業 倫 理 との関係 について、 シュタインマ ンはその定義 に用 いてい る 「自己拘束 (Selbstbindung)」 とい う言葉にあるよ うに、利潤原理 と企業倫理 は対立 関係 にあると考 え、その上で、両者 が、ただ単に 対立 関係 にあるので はな く、企業経営 において、
企業倫理 が、利潤原理 に優先 して考 えられ るべ き であるとい うことを主張 している。つ まり、彼の 主張す る企業倫理 が、利潤原理の制限す るもので あることを認識 しつつ も、利潤原理 に対 して優位 に位置 しているとして捉 えていると考 えられ る。
そ して彼は、利潤原理 と企業倫理の対立関係 を 承認 しているその前提 において、企業倫理 とい う 考 え方 を企業内で活用 し、いかに してその対立 を
「調整」 す るか とい うことに問題意識 をもってい ると言 えよう。 こうした考 えは、1920年代 に活躍 した ドイツの経営学者H.ニ ック リッシュの学説 に通 じるものがあ り、CSRの研究 は諸外国 と比較 して遅れているとは言 えないと筆者 は考 える。 そ して、CSRと密接 に関連 しているSRIについて も、
同様に考 えている。
SRI(また は、Ethische Investing)の基 盤 と なるのは投資家の良心や道徳観 に基づ く意思決定 で あ る。 こ う した ドイツにお ける投 資家 の意 思 決定の基盤 は、古 くか ら形成 されているものであ り、それが ドイツにおけるCSRの発展 と結びつい てい ると筆者 は考 える。では実際に ドイツのSRI
(Ethischelnves血g)の状況 はどうなっているのか。
EthikAG (倫理株式合資会社)のデータによる と、倫理的信託のデ ータは次のよ うになっている。
54 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第9号 2005年3月
図2‑2
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出所 :EthikAG http://www.ethik.com/Pages/Ante日.htmI
着 目すべ き点 は"ethikplus"であるO このデー このデータか ら、 ドイツでは一時は衰退 しつつ も、
タ を見 る と、2002年9月 に1000を切 り923,87と SRIが順調 に推移 してい ると言 えるだ ろ う12。
な って お り、2003年5月 に は843,70まで下 が っ 要 す るに、 ドイツで はSRIの歴 史 が非常 に浅 い た。 しか しなが ら、 その後 は順調に増加 し、2004 とはい え、 その基盤 ・基礎 となるCSRに関す る研 年11月には1004,62に まで回復 してい る。つ ま り、 究 には熱心 で あ るため、今後SRlの成 長 が見込 ま
「社会的責任投資の日欧米比較
」
55 れ ると考 え られ るO また、 ドイツの特徴 と して、政府主導 によって、法律 を含 めたSRlにつ いての 制度化 が行われてい る点が特徴であると言 える。
しか しなが ら、政府主導 とはいえ、社会全体が企 業 の社会 的責 任やEtische lnvestingに関心 が強 い とい うことか ら、決 して制度化 による実施 を理 想 としているわけではないと筆者 は考 える。 また、
アメ リカ同様、「批判 的投資」 が中心である。 で は次節にて 日本における社会的責任投資 を考察す る。
3 日本 における社会的責任投資
日本で も投資家の意識の高 まりを背景に、エ コ ファン ドや社会貢献 ファン ドが登場す るなど、社 会的責任投資 を志向す る動 きが顕在化 し始 めてい る。 しか し、 この ような動 きはまだ始 まったばか りであ り、エ コファン ドや社会貢献 ファン ドの純 資産額 は、そのほ とんどが数億円か ら数十億円程 度 に とどまっている。 したがって、投資行動が企 業活動へ大 きな影響 を及ぼす まで発展す るにはま だ時間がかかるとい うのが現実である.その一方 で、グローバル化によって海外投資家の影響 を受 ける日本企業 にとって、社会的責任投資の動 きを 無視 で きない状況 にな りつつ ある。
そ もそ も、 日本が社会 的責任投資に関心 を向け たのは、企業不祥事の多発や、その発生 による投 資家の減益 に端 を発す る。 そ して、 日本では特に、
高度経済成長時の公害問題 などか ら、企業 に対す る監視の 目が厳 しい とい う歴史的背景がある。
昨今、新 聞紙 面 等 をう畠じてSRIとい う略語 を 目にす る機会 が増 えてい る。「2004年6月末現在、
主 と して環境 問題 ・社会 貢献 な どに積極 的に取 り組 む企業 に投資 を行 うSRIファン ドの純資産額 合計 は、国内でおよそ1,400億円 (設定本数15本) に連 している」】3とい う。SRIファン ドの先駆 け と なったのは1999年頃に設定が相次いだエコファン ドで あ るが、最近 はSRIとい う略語 が広 く使 われ るよ うにな り、大手運用会社 によるSRIファン ド の設定 も相次いでい る。
日本 に比べてSRlの概念 が普及 してい る欧米諸
国においては、軍需産業、たば こ ・酒等の有害晴 好品、ギ ャンブル など、倫理や社会的公正、環境 への配慮等 に関 し、何 らかの形で抵触す る商品や サービスを提供す る企業 を、投融資対象か ら除外 す るとい うネガテ ィブ ・チェ ック、ネガテ ィブ ・ スク リーニ ング的な用い方 が一般的であった。つ まり前述の 「批判的投資」である。
これ に対 し、 日本 のSRIフ ァン ドでは、社会 的 な貢献 に注力す る企業 を選別す るといった、積極 的なアプロ‑チ 「ポ ジテ ィブ ・スク リーニ ング」
が多いよ うである。 こうした傾向の背景 にあるの はやは り、企業不祥事 とい うものが、当該企業 に とっていかに損害 をもた らすか といったことを認 識 しているとい うことであろう。 この事実 によっ て、 日本の特徴のひ とつは 「積極 的投資」である と筆者 は考 える。
社会的責任 を問われ る不正 ・不祥事が発覚 した 場合、そ うした事象の当事者である企業への投資 を回避 したい と考 える日本の投資家は決 して少 な くない。 に もかかわ らず、現状 で、1,400億 円程 度 の 日本 のSRIフ ァ ン ド市場 は、200兆 円 を超 え るとされ る米国には到底及ばない。 しか し、昨今 の大手運用会社 による国内でのSRIファン ドの相 次 ぐ設定 によって、社会的責任投資の機会 が 日本 の投資家 に も徐々に整備 されて きているの も事実 である。ただ し、 その整備 は始 まったばか りであ
り、運用パ フォーマ ンスは低 い と考 えられてい る。
「2004年6月末現在、設定後3年 を経過 している エ コない しSRIファン ド(10本) の運用パ フォー マ ンスは、1本 を除いて全 てマイナス となってい ます。SRIとい うコ ンセプ トが、 はた して良好 な 運用パ フォーマ ンス と両立す るのか どうか、 その 真価 が問われ るのはこれか らとい えま しょう
。
」14と前川直昭氏 は述べている。運用パ フォーマ ンス の低 さとい うイメージをいかに して向上 させてい
くかは課題である。
日本の環境省では、社会 的責任投資の可能性 に ついて調査 を してい る。その中で次の図のような 結果が得 られてい る。
56 神奈川大学大学院経営学研究科 印升究年報』第9号 2005年3月
巌挽: ̲ 上段 件数
x宰 僚 髄 Q4L愈1策γ 的管轄 についての=関心i血 td :紘.守 47.I :こノ.一:.互‑J恵.iL‑‑忘%:,:I9. 畠.昏 4 .4 ;‑;きま…会'=ざ:===:=O‑̲=‑=..‑.:Y...‑.■O.:=
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O
出所 :環境省 「社会的責任投資 に関する 日米英3か国比較調査報告書
」
この調査結果 か ら、 日本 において も、米英 ほ ど では ない と して も、SRIには非常 に関心 が あると 言 えると筆者 は考 える。 また、環境省の 「社会 的
責任投資 に関する 日米英3か国比較調査報告書
」
では
、
「わが国における現状」 として、 「わが国で は、SRI型投 資信託 の一形態 と して、企業 の環境 配慮 行動 をスク リーニ ングの基準 とす る投資信託 商品が1999年8月に初 めて登場 し、現在 までに9 社か ら13種類の投資信託商品が登場 している (中 略) 我 が国 にお け るこれ までのSRI型投資信託商 品は、企業の環境配慮行動 に注 目した ものが中心 となってい る。 しか しなが ら最近 になって、環境 面 だけではな く企業 の倫理的 ・社会行動 に注 目し た ファン ドや インデ ックスを設定す る動 きが広 が りつつ ある」15と してお り、 日本 において もSRIが 定着 す ると考 えてい るよ うである。以上 の ことか ら、 日本 ではSRIの歴 史 が諸外 国 に比べて特 に浅 い とはい え、今後 その成長 が見込
まれ る可能性 は大 きい ことが理解 で きた。 また、
日本 の特徴 と して、最初 は環境配慮 とい うカテゴ リーのみ に着 目 してい たSRIが、企業 倫理、社会 的貢献 といったカテゴ リーに も範 囲 を拡大 してい る。 そ して、欧米の 「批判 的投資」 に対 して、 日 本 では 「積極 的投資」 とい う意思決定 がな されて いることも挙 げ られ た。今後 は政府 と経済界の連 携 に よって、 さらにSRIは発展 してい くことが期 待で きるとい えよ う。
3 日欧米 における共通点 と相違点
これ まで見て きた 日本、 アメ リカ、 ドイツの社 会 的責任投資に開 し、 その共通点 は どういった も のが挙 げ られ るだ ろ うか。
まず共通点 と して一番特徴 的なのは、歴史 の長 短 はあれ、 どの国の投資家 もSRIに対 して強 い関 心 を持 ってい るとい う事実 である。 そ して どの国 の投資家 もSRIを支持 してい るとい う点 で あろ う。
「社会的責任投資の日欧米比較
」
57 この ことは、企業の不祥事が、ITに代表 され る技術の進歩によって、単純 な事件で終わ らないこと が要因で もあ り、 また、投資家が企業不祥事によ る減益 もしくは、企業の社会的責任履行による増 益 に繋がるとい うことを強 く認識 しているとい う 事実に他 な らない。
そ して三つ 目の共通点 として、提示 したデータ か ら判 るよ うに、SRIが年 々増加 してい るとい う ことである。勿論、投資額は常 に一定 なものでは な く、極 めて流動的なものではあるが、それがあ る程度一定の成長 を していることは各国共通の も のであったO この ことは企業がCSR活動に積極 的 に取 り組む要因にな り、その ことで企業 をとりま く環境がよ りよい ものに改善 されてい くことに繋 が る。 この ことは、最初 に述べた、CSRへの取 り 組み を実践す ることによる6つの利点、即 ち
①組織 の継続的 ・安定的な成長
②社会 か らの信頼性の確保
① グローバル市場での企業競争力の向上
④効果的なコンプライアンス手法の提供
①地域社会 (企業市民) との協調
⑥社 会 的 責 任 投 資 (SRI:Social一yResponsible Investment)か らの支持
が促進 され るとい うことであ り、極 めて理想的な 実態で あると言 える。後述す る差異 と して、SRI が政府主導なのか、民間主導なのか とい うものが あ るが、いずれにせ よ、SRIがなん らかの形で促 進 され、 その ことに よって企業 と社会 が一体 と なって発展可能 となること、持続可能な発展が可 能 となることは、各国共通の願いであ り、人間各 人の願いで もあると筆者は考 える。
ここで共通点 をまとめると、
① どの国の投資家 もSRIに対 して強 い関心 を持 っ ている
①SRIが年々増加 しているとい うこと
③SRIの促進 ・活性化 によって持続 可能 な発展 が 世界的に注 目されていること
とい う3点が挙げ られ る。
では各国の相違点はどのよ うなものがあげ られ るであろうか。 まず アメ リカに者 目してみ よう。
アメ リカにおけるSRIの発展 は大 きく3つの区 分に大別可能であった。それは、1920年頃か らの キ リス ト教教会 による運動、70年代か らの公民権 運動やベ トナム戦争反戦運動、反アパル トヘイ ト
(人種隔離政策) に関わ る運動、 そ して三つ 目は 90年代前半か らのCSR発展 に関わ る運動である。
ここで特徴的なのは、政府主導 による発展 では な く、最初 はキ リス ト教 とい う宗教の教義 によ り 問題解決の取組 がな され、現在 まで民 間主 導 で SRlが発展 して きた とい うことで ある。 この こと を筆者 は 「株主の権限が強
い
」 といわれ るアメ リ カの特徴 として位置づ けることがで きると考 えて いる。で は ドイツでは ど うで あったのか。EUの範 囲 が拡大 してい る現在 では、 ドイツ他 ヨーロ ッパ、
EU諸国 といって も過言 ではないが、そこでは政 府 が主導 でSRJの発展 を行 っていた。 ドイツの特 徴 と して、政府主導 によって、法律 を含 めたSRI につ いての制度 化 が行 われて い る点 が特 徴 で あ る と言 える。 しか しなが ら筆者 は、政府主導 と はい え、社会 全体 が企業 の社会 的責任 やEtische lnvestingに関心が強い とい うことか ら、決 して制 度化による実施 を理想 としているわけではない と い うことを述べた。 この ことは倫理 と法制度の枠 組み を常 に考 えている ドイツな らではの発展形態 であろうと筆者 は考 えている。
そ して最後 に、我 が国 日本 は どうであろ うか。
日本 が社会 的責任投資に関心 を向けたのは、企業 不祥事の多発や、その発生 による投資家の減益 に 端 を発す る。そ して、 日本では特 に、高度経済成 長時の公害問題 などか ら、企業 に対す る監視の 目 が厳 しい とい う歴史 的背景 があることを述べた。
即 ち 日本では、アメ リカのよ うに企業への疑問か らくる監視の 目の下 「民間主導」 とい う運動 が行 われ、加 えて、環境省の調査の ように、ドイツの「政 府主導」 といった運動 も行われている。即 ち、「ア メ リカと ドイツの混合型発展形態」 と言 えるので
58 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第9号 2005年3月 はないか と筆者 は考 えている。
そ して最後に、 日本はアメ リカ ・ドイツと比較 して決定的な相違点がある。 それは、欧米が批判 的投資 を行 うのに対 し、 日本では積極 的投資が行 われ る傾向が強いとい う点である。 この点は 日本 の特徴であろう。
以上の相違点 をまとめると、
① アメリカは民間主導でSRI投資が促進 されている
⑦ ドイツは政府主導でSRI投資が促進 されている (彰日本 はアメ リカ ・ドイツ混合型 のSRI投資 が促
進 されている
とい う3点が挙げ られ る。
さらに欧米 と日本 を比較 した場合には、
(む日本では積極 的SRI投資で あるが、欧米では批 判 的SRI投資で ある (ポ ジテ ィブ ・ス ク リーニ
ングとネガテ ィブ ・スク リーニ ング)
とい う点が挙げ られ るであろう。
図3‑1
nU0nUnU0000C)ALL)AC〟.LL7L
l.SeQⅧ9
基準価額ハ円) 純梁塵(億円)
第
3
章 各 国 にお け る社 会 的責任 投 資の 事例1 日本 における社会的責任投資の事例
本節では、 日本 における社会的責任投資の事例 と して、大和言蔓券投資信託委託の ダイワSRIファ ン ドを取 り上げ る。
ダイワSRIフ ァン ドは、2004年5月20日に設定 されたSRIファン ドである。 この ファン ドは、「わ が国の証券取引上場株式 および店頭登録株式 を主 要投資対象 と し、CSR (企業の社会責任)への取 組みに着 目して、持続 的な成長 が期待 され る銘柄 に投資す ることによ り、信託財産の成長 をめ ざす
」
とい うものである。
投資対象の調査 は株式会社 インテグ レックスが 行い、評価 をす る。 そ してその調査情報 を参考に、
大和言蔓券がCSR評価の高い企業群 を抽出す る。そ の企業群の中か ら、成長性や持続性の観点か ら企 業の投資価値 を評価 し、投資対象銘柄 を選択す る。
この ファン ドの運用成果基準 (ベ ンチマーク) は東証株価指数、即 ちTOPⅨであ り、 このTOPⅨ
(04.5.19‑04.12,3耶
重
糾5.19 04.8.19 04.719 rJ4月.19 D4.9.19 94,1C.柑 04ll.19 8もtほ1奪 400
380 2
0 0
1
8 0 ‑
0
墨整備簸
1
8,147円 鍾葦産 281=億円 丁(コPlX 1:149.63期間 フP:̲}・ド TOPⅨ ほ月間 +4.02% 叫 .63%
3万月間 +4̲82% +4ー31%
6劫月間 ‑2̲40% ‑3.36%
設 定議 +1̲4ア% ÷3̲93%
出所:大和証券 http://www.daiwa‑am.co.jp/funds/report一monthJy/4858.pdf
「社会的責任投資の日欧米比較
」
59 をベ ンチマークとして、中長期的に同指数 を上回る投資成果 を目指す としてい る。2005年1月25日 現在 の基準価格 は10147円 となって お り、純 資産 の総額 は281億 円である。
で は、 この フ ァン ドは、SRIと して利 益 がみ こ めるもので あろ うか。実際にデータを見 てみ ると、
残念 なが ら基準価格 がTOPⅨ を上回 ることはな く、
常 に400円ほ ど下 回 る数値 によって推移 してい る (図3‑1)0
さらに、期 間別騰 落率 は、 1ケ月間 を見 ると、
フ ァ ン ドが+4,02% TOPⅨ が+4,63%で あ るが、6ヶ月間 を見 ると、 ファン ドが‑2,40%、 TOPⅨ が‑3,36%とな ってい る。TOPⅨ は この
フ ァ ン ドの 設 定 以 来、+3,93%で あ るの に対 し、 フ ァ ン ドは+1,47%とい う数値 を見 て も、
TOPⅨ をベ ンチマ‑クとして、中長期的に同指数 を上 回 る投資成果 を目指す とい うこの ファン ドは、
あま り利益 を見込 む ことの出来 る投資 とはいえな い と考 え られ る。
図表3‑2
ただ し、 こうした数値 は、 日本の景気減速 が要 因 となってい る もので あ る。 日本 の景気低迷 は、
大和諾券 の ファン ドマネージャーによれば、株式 市場 は悪材料 をほぼ織 り込 んだ と してお り、先高 期待 は強い としてい る。 よって、設定後間 もない フ ァン ドであることを考慮 に入れ ると、長期 的に は運用経過 が改善 されてい く可能性 が高 いだ ろ う。
2 米国 における社会的責任投資の事例
米 国 の事 例 と して、SRI大 手 のCalvertに お け るSRIの状況 を取 り上 げ ることとす る。Calvertは SRIに関 して、2004年3月に報告 書 をHPにてPDF
ファイルの形式 で公開 している。 その文書の中で、
年度別 リターングラフを提示 し、2001年 か ら2003 年 までのデータを公表 してい る (図表3‑2)0
これ らデ‑タによるとやは り2002年 までは合計 リター ンの平均値 がマイナス となってい る。具体 的 に は、2001年 で ‑14,17% 2002年 に は‑24, 68%となってい る。 しか しなが ら、2003年 には+
出所 :Calvert http://www.calvertgroup.com/pdf/pros‑csif.pdf
60 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第9号 2005年3月
29,56%となってお り、2004年にはマイナスとい うことはな さそ うである。
さ らに、 四半 期 最 成 長 率 は2003年2月 の + 16,13%、最低値 は2002年3月の‑17,76%となっ ている。
つ ま り、SRlの盛んであるアメ リカにおいて も、
2002年 までのSRI実態 は 「SRIは良好 な フ ァン ド である」 とい う認識が少なかったのではないか と 考 えられ る。 しか しなが ら、投資家や 「民間主導」
での発展 とい う発展形態が物語 るように、人々の
「企業の社会的責任」 に対す る意識が強い ことも あ り、今後 もアメ リカにおけ るSRI市場 は世界最 大のSRl市場であることは間違いな さそ うである。
ところで ドイツにおいては、筆者の仮定では、
「SRlとCSRは切 り離せ な い もの で あ る。 そ して CSRの発展 が 目覚 しい ドイツではSRJも盛んで あ ろう」 とい うものであったが、残念なが ら、 ある データによれば、SRJファン ドの ヨーロ ッパ第‑
位 はイギ リスであ り、第二位 はオ ランダであった。
ドイツはそれ らの国よりも金額 に大 きな差があ り、
上述の よ うなデータを取 ることがで きなかった。
そのため、本節では ドイツの事例 をあえて提示 し ないこととす る。 とはいえ、 ドイツにおいて も独 特 の発展形態 によってSRIが発展 してい ることは い うまで もない。
では、今後、SRl投資につ いて どの よ うな課題 と展望 が主張で きるのかを次章にて述べたい。
第4章 社会 的責任投資の課題 と展望 これ までのデ ータか ら、SRI投資は増加傾 向に あ り、各国 ともに積極 的な取組 がな されてい るこ とが理解で きた。 日本、アメ リカ、 ドイツを比較 した場合、発展形態や投資の意思決定要因に差異 はあるものの、CSRが多 くの注 目を浴びてい ると い う時流 の中で、やは りSRIも同様 に して、 その 時流 によって投資が促進 されていることが判 った。
これ らの事実 か ら、SRlに関す る今後の発展 につ いては、非常に期待で きるものであると考 えられ る。
日本では 「混合型発展形態」であると述べたが、
これ はCSRにつ いて も同様 で あ る。CSRは、SRI の基盤 となるものであ り、CSRの取組 に関 しては、
例 えば、東芝 に代表 され るよ うな企業倫理綱領や 企業行動憲章 を実行 に移す企業が存在す る。勿論 他の業種 について も同様の活動がな されているの は言 うまで もない。 また、経済界では経済団体連 合会の企業行動憲章 が存在す る。
筆者 は、CSRの全体的な枠組みは、ほぼ完成 し てい ると考 えてい る。そ して先 に例 とした東芝 は、
CSRに対 して非常 に強 い関心 を持 ってお り、加 え て具体的な活動 を実施 しているとい う点において、
筆者 は同社 を高 く評価 している。 さらに、経団連 の企業行動憲章 もまた、各国の学説研究や、実践 的企業活動か ら考案 され、企業のあ りかたを日本 の産業界 に提示 している点で、諸外国 と比較 して も、高 く評価 で きる。 日本 はCSRもSRIも政府 ・ 民間の活動が実行 されているのである。
したがって、SRIの促進 に必要不可欠 な基盤整 備 はすでに整 っていると筆者 は考 えている。 そ し て現実 にSRIの投資額 は増加 してお り、 この こと か ら、筆者 はSRIの促進 ・活性化 は既 に開始 され ていると考 える。
世界 的な観点 か らもSRI投資額 は増加 してお り、
今後様々な領域 か ら研究がな され、 それ らを包含 した理論 をSRIの発展 に応用す ると仮定す るな ら ば、sRlは主要 な金 融商品 と して認知 され、 さら なる活性化が期待で きるものであろう。
日本、アメ リカ、 ドイツを比較 したことによっ て、各国のSRl発展形態の相違が理解 で き、 さら にその形態 の中で も 「SRlに関 しては一番遅れて いる」 とい う日本の発展 は非常に興味深い もので ある。筆者 は 日本の混合型発展形態 が理想的では ないか と考 えている。 とい うのは、政府主導や民 間主導 といった形態 よりも、政府 ・民間が協働す るとい う方法 をとる方 が環境の変化に柔軟 に対応 可能であ り、 より効率的かつ良好な結果が得 られ
ると考 えるためである。
しか しなが ら、日本 において、「社会的責任投資」
の認知度 が低 い とい う調査結果が、環境省か ら出
「社会的責任投資の日欧米比較
」
61 されてい る。SRIフ ァン ドや社会 的責任投資 に関す る広報活動が未 だ効果的ではない。環境省では、
政策か らの アプローチが有効で あると してい るが、
取
組 は始 まったばか りで ある。 いかに してSRIを 社会 に浸透 させ るか とい うのが、今後の 日本 における課題で あろ う。
また、諸外国 も含めて、SRlの投 資利益率 を疑 問視す る投資家 もお り、実際に投資 した ときに利 益率 が低 い とい う場合、SRIがいか に認知 されて いよ うが、金融商品 と しては浸透 しない。「SRIの 運用パ フォーマ ンスは良好である」 とい う認識 を 確実 な ものに しないか ぎり、金融商品 と しては発 達 しない。
筆者 はSRIの将来 は明 るい もので あると考 えて いるが、 その将来 的な発展 は、現在意識 されてい る課題 を解消 す ることが前提 となると考 えている。
環境省では、SRIファン ドを 汀社会 的責任 に配慮 を行 う企業の発展 が、投資家の リター ンに も、社 会 の福祉向上 に も寄与す る」 とい うことを実証分 析 と して示 し、SRIファン ドの イメ ージ と して定 着 させ ることが、 その普 及 に は有 効 で あ ろ う』16
と してお り、現在 もイメージの向上 が課題である ことがわか る。
現代社会 の企業研究 に とって、CSR研究の動向 とともに、 それ に密接 に関連 してい るSRIの動向 につ いて も非常 に重要 な研究領域 で あるので、今 後 の動向 を注視 したい。
脚 注
1筆 者 が企 業 倫 理 と して理 解 して い る概 念 は HorstSteinmann/AlbertLoehr"Einleitung:
GrundfragenundP1‑0blembestaendeeiner Unternehmensethik"in"Unternehmense山ik"
HorstSteinmann/AlbertI.oer (HRSG)plo 1990を参照
2欧米 では一般 的にSRIと呼ばれて お り、 日本 で は 「社会責任 投 資」、「社会 的責任 投資」 と訳 語 が一定ではないが、本稿 ではSRIを社会 的責 任投資 と した
3高巌他著 『企業 の社会 的責任』pll 日本規格 協会 2004年
4高巌他著 前掲書pl13‑pl14
5最近、 当該 業界 各社 は通話 以外 の機 能 向上 に 力 をいれ て い るために社会 へ の影響 は よ り強
くなる傾 向にある
6谷本寛治編著 『SRI』plO 日本経済新 聞社 2004年
7谷本寛 治編著 『S
R I
』p15 日本経済新 聞社 2004年8 TlleSociallnvestmentForumの略語 9谷本寛治編著 『SRI』p15 日本経済新 聞社
2004年
10ドイツの企業 倫理 研究 につ いて は拙著修士 論 文 「企業倫理の独米比較」 を参照
llHorstSteinmann/AlbertLoehl‑"Einleitung:
GrundfragenundProblembestaendeeiner Untel・nehmensethik"in"Unternehmensethik"
HorstSteinmann/Alberther(HRSG)plo 1990
12参 照 した図表 は ドイツ倫理合 資株 式会 社 の倫 理 的信託 デ ー タで あ り、必ず しも ドイツを代 表 す る もので はないが、DeutscheBankな どに 図表 デ ー タ等 が公表 され て い ない ため、公表 データのあった当該企業 を参考 デ ータとした 13httpソ/www.yomiuri.co.jp/atmoney/Linfo/
f
i040813.htm
14httpノ/ww .yomiuri.co.jp/atmoney/Linfo/
f
i040813.htm
15環境省 『社会 的責任投資 に関す る 日米英3か国 比較調査報告書』plO8 2003年
16環境省 『社会 的責任投 資に関す る 日米英3か国 比較調査報告書』plO3 2003年
参考文献
谷本寛治編著 『SRI』 日本経済新 聞社 2004年 高 巌 他 著 『企 業 の社会 的責 任』日本 規 格 協会
2004年
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