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企業の社会的責任と社会的責任投資について

著者名(日)

浅野 裕司

雑誌名

東洋法学

47

2

ページ

69-81

発行年

2004-02-25

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000165/

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企業の社会的責任と社会的責任投資について

はじめに  企業はその事業活動に当たり、人類共通の課題である地球環境間題への取り組みをすることは当然の責務であ る。環境間題への取り組みを含む企業の社会的責任の遂行と、こうした企業に投資する社会的責任投資の拡大が 日本再生への道でもある。その中で信託の果たす役割も重要である。そこで、これらの諸点について素描を試み ることとしたい。

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   一 企業の社会的責任の問題点  企業の社会的責任︵OO∈o轟$ω09巴菊Φωε諾憲=蔓︶とは、﹁企業が社会および環境に関する配慮を企業活動 およびステークホルダーとの相互作用の中に取り入れようとする概念﹂と欧州委員会が二〇〇一年七月に公表し 69

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企業の社会的責任と社会的責任投資について         ︵−︶      ︵2︶ たグリーンペーパーで、定義されている。例えば、環境問題に熱心に取り組んでいればよい企業といえるかとい う間題がある。取り組みは当然のこととして、人権、法令遵守、従業員への配慮、積極的情報開示、事業運営の 透明性など企業の社会的責任を果たすことが重要である。  要するに、企業は経済的利益だけを追求するのではなく、社会や環境に配慮した経営を行う責任があるという ことであるが、このような考え方が有力になってきたのは、企業の活動規模が拡大かつ複雑化した現状において、 企業活動の社会に与える影響が様々な局面で大きくなり、社会の方としても企業の存在を無視できなくなったこ とが挙げられる。こうした関心の高まりの背景には、企業のグローバリゼーションの進展で、貧富の格差拡大・ 環境破壊の進行に対するNGOの途上国の懸念が拡大したこと、消費者が商品購入にあたって価格・品質以外に、 環境や人権、労働環境などへの配慮を求める傾向があること、収益性だけでなく環境や社会の面から対象企業を 決定する投資家の増加があること、海外では企業の年次報告書に環境や社会関連データの公表が義務付けられて いること、などがある。イギリスとフランスでは、年金基金の運用受託者が企業の社会的責任を評価項目に加え ているかどうかの公表が義務付けられており、これが企業の社会的責任を強く後押ししている。  わが国でも、環境問題の深刻化、企業不祥事などを契機に企業が社会的責任を果たし、情報を公開することを 求める声が高まっている。わが国は先進国の中でも、環境対策で現実に最も効果を挙げているとされている。二 酸化炭素の一人当たり排出量は非常に低いレベルにあるし、テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機のリサイクルは 二〇〇二年には一〇〇〇万台を超え、今またパソコンのリサイクルが始まっている。

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      ︵3V  国際環境管理規格一ω○に。8の認証取得企業数も日本が圧倒的に多い。欧州は制度や法律などの体制が整って いるといわれるが、わが国は環境技術でも、その活用でも世界のトップレベルにあり、環境間題対策で世界を リードできる位置にいる。  わが国の取り組みもこれで十分というわけではない。京都議定書の目標をクリアするには、産業界も消費者も 行政も、多大な努力が要求される。企業は環境負荷の軽減につながる製品や技術の開発とビジネスモデルをさら に追及しなければならない。これからの企業価値は、環境間題への対応を事業活動に取り込む形でなければ高め ていけないし、環境というキーワードを取り込んで経営モデルを作ることが二一世紀の企業に求められている。 そうでなければ、企業の社会的責任として環境間題の解決に貢献することは出来ないし、企業として生き残るこ とは出来ない。  地方公共団体による環境間題も重要である。ようやく首都圏のディーゼル車規制が実施された。また、﹁社会的 責任﹂整備を支援する企業グループも出来てきた。保険会社グループによって、企業が環境や人権、労働などに 配慮する社会的責任を重視する社内体制を整えることを総合的に支援し始めた。グループのリスクコンサルティ ング会社は専門チームを組織し、コンプライアンス︵法令遵守︶、環境、社会貢献などの対策を一括して助言する。 これまでは、環境規格の認証取得や内部告発制度の整備など、顧客からの要望を個別の部署で別々に対応してき た。それを大幅に見直し、各部門に所属する一七人のコンサルタントを、部門を横断して社長に直属する形で編 成する。独立性を高くして、顧客からの様々な要望に効率的に対応できるようにした。 71

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企業の社会的責任と社会的責任投資について  必要なことは、環境間題への取り組み強化が経済合理性にかない、 す社会的・経済的条件を整えることである。 企業価値の向上につながる好循環を生み出  ︵1︶ 谷本寛治編著﹁SRI社会的責任投資入門﹂︵日本経済新聞社 二〇〇三年︶四五頁。欧州委員会の特定分野の政   策方針に関して公表されるもので、その政策方針に係る狭義や議論のために招かれた様々な利害関係者によって作    成される。一般にグリーンペーパー公表後、ヨーロッパレベルでの協議結果を踏まえ、具体的な提案を含んだホワイ    トペーパーが公表される。  ︵2︶ 神野雅人﹁CSR概念の展開﹂︵みずほ総研論集 二〇〇三年創刊号︶九八頁。  ︵3︶ 今後のISO問題については、及川均﹁HωOO。。一とHω○置。。一システム統合の進め﹂︵国元書房 二〇〇三年︶。    二 企業の社会的責任投資について  企業の社会的責任投資︵ω8巨ぐ幻88霧置ΦHp奉馨∋Φ暮︶は、金融市場を通じて企業の社会的責任投資への 取り組みを支援する仕組みの一つであり、欧米を中心に近年急速に規模を拡大している。  ヨーロッパでは、運用会社や機関投資家が企業の中長期的成長性を判断する場合、環境や社会への配慮の程度 による判断がコンセンサスを得つつある。一般に年金基金は運用期間が長期にわたるため、企業の長期的成長を 測る尺度として企業の社会的責任投資が重視されている。  米国では、企業の不祥事や環境間題、労働・人権問題解決のために、教会関連組織や企業の社会的責任投資信 託、一部年金が企業に社会的責任を強く求めている。また、確定拠出年金︵姐K︶の投資先として企業の社会的

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責任投資に資金が流入し、さらに、個人の価値観が多様化し、社会的責任を果たしている企業を、投資を通じて 支援したいと考える投資家の増加などを背景に急速な拡大をしている。自分個人の社会的関心・価値観を投資と 結び付けたいという投資家向けにソーシャル・スクリーンを行った投資信託が登場するなど、より拡大化と行動 の態様がみられる。ただし、判例では、企業年金などの運用は、資産の拡大を図ることが最優先されなければな        ︵−︶ らず、企業の社会的責任投資は付随的便益としてのみ認められるという態度がとられ、米国の年金法である従業 員退職者所得保障法︵国B覧28勾呂おヨΦ旨日8日Φω8貫一昌︾9︶通称エリサ法を所管する省庁も、﹁他の投 資と同等︵以上︶の経済的価値を有する限り、社会的責任投資がもたらす非経済的要素の観点から︵投資の︶選 択をしても、信認義務に違反するものではない﹂という解釈通達などを出している。積極的に奨励まではしない       ︵2︶ という、やや消極的な態度がみられる。従って、米国では機関投資家の場合、単純に企業の社会的責任投資のみ を追及するのではなく、通常の運用並みのリターンが期待できるものが志向されている。  イギリスでは、年金給付を目的とする企業年金の資金運用は米国と同様、収益の最大化を目指さなければなら ず、他の投資と同程度に有利な場合に限って社会的考慮が許されるとされてきたが、二〇〇〇年七月の年金法改 正により、﹁投資銘柄の選択、保有、売却において社会、環境、倫理に関し、どの程度考慮しているか﹂を情報開       ︵3︶ 示しなければならなくなった。さらに、イギリス保険協会も二〇〇一年一〇月、同様のガイドラインを示したた ︵4︶ め、イギリスでは社会責任投資が一挙に拡大している。また、ドイツ、フランスでも同様の動きがみられる。 73

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企業の社会的責任と社会的責任投資について

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土浪修﹁社会的責任投資と企業年金の受託者責任﹂︵ニッセイ基礎研所報 ︾鑛●88<o言G 。V 土浪、前掲書、三二頁。 土浪、前掲書、四一頁。 環境省﹁社会的責任投資に関する日米英三力国比較調査報告書﹂︵二〇〇三年六月︶五〇頁。 三 企業の社会的責任投資と投資信託について 二二頁。  企業の社会的責任についての国際的な潮流にあって、金融機関はどのように寄与していくかという間題がある。 それを考える場合、大きな意味を持つのが一九九九年に登場し、一時は総資産額二、二〇〇億円を超える規模に まで成長したエコファンドがある。わが国の企業グループが様々な名称のエコファンドを発売した。投資信託は 初めてという新たな投資家層の共感・支持を得た。エコファンドの登場によって、環境間題に関心が高く、投資 判断基準として財務データ以外の基準も重視する投資家、つまりグリーンインベスターの存在が明らかになった。 企業からは、環境への取り組みが投資家から評価されて自社の株購入の可能性が高まるという見通しができた。 金融機関にとっても、投資信託という本業業務を通じての環境間題への取り組みが可能なことが実証された。エ コファンドは、企業がチャンスとして環境間題に取り組む時代にマッチした、環境と経済の好循環を生み出す仕 組みの一つといえよう。  前に触れた米国のエリサ法は、現在では米国の資産運用業全体に影響を与えているが、同法は投資理論として の現代ポートフォリオ理論を認めたものといわれている。このエリサ法にはフィデューシアリーという概念があ

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る。この概念は、いわばある人から資産運用について任されるような信認関係にある人、任されたことについて 裁量権を持つ人を指している。このフィデューシアリーの行動基準は、単に信託財産の運用や年金運用を受託し た人々だけでなく、広く資産運用に従事する人々の間で重要な指針とされている。  フィデューシアリーは注意義務と忠実義務を負うとされている。忠実義務とは、受益者の利益のためにのみ行 動するなどがその内容であるが、注意義務についてはその中に﹁プルーデントマンルール﹂といわれるものがあ る。このルールは一九世紀に信託財産の運用についての判例の中で示されたものといわれており、知り得た情報 に基づいて思慮深く短期的投機ではなく長期運用を行うというものであった。エリサ法はこれを修正して﹁プルー デントエキスパートルール﹂として運用の対象をポートフォリオ理論、つまり分散投資のルールを取り入れた。 四 銀行の社会的責任

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 投資信託を取り扱う金融機関の社会的責任も重要である。金融機関は、銀行法一条に﹁業務の公共性﹂が謳わ れているように、民間企業であっても決済システムという重要な社会的インフラを担うことなどもあり、様々な 保護を受けており、一般の企業以上に社会的責任がある。  残念なことに、わが国の銀行は社会正義を忘れ、利益追求のあまり、バブル経済期には暴力団の地上げ屋に多 額の資金を提供した。それが中小企業の倒産の要因にもなり、また、大企業の倒産について、自己保身のため、 融資先の経営者の個人資産まで取り上げるという公序良俗に反することまで行った。こうした銀行の行動は、社 75

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企業の社会的責任と社会的責任投資について 会的責任を無視したことになり、銀行経営陣の責任が厳しく間われるべきである。  一方、海外の金融機関では、温室効果ガス規制の影響が大きい業種向けのローンの比率が、ローンポートフォ        ︵−︶ リオ上のリスクとして、間題とされたり、環境破壊や人権侵害など、持続可能な発展を妨げるような計画に対す        ︵2︶ る融資が格付けに影響することが指摘されている。 ︵1︶ 谷本編、 ︵2︶ 谷本編、 前掲書、二二五頁。 前掲書、一八七頁。 五 企業の社会的責任とイギリスのシヴィック・トラスト  イギリスのシヴィック・トラストが設立されたのは一九五七年である。この時期は、第二次世界大戦後の復興 がほぼ完了し、イギリスの新しい経済活動が活発化し始めていた。こうした時期に、企業が法人会員となって、 イギリス経済界の負担において、信託の法理を応用した環境保全のための団体が設立された。これは、イギリス の社会的風土として、企業活動に伴う環境変化の責任を先取りし、企業の社会的責任という観点から、イギリス の経済界が環境問題を義務として引き受けようとするものである。これが国際的模範となったといえる。        ︵−︶  シヴィック・トラストの活動を援助するのは、この数千の法人会員である。これは、一般の会員二〇〇万人を       ︵2︶ 擁して活動しているナショナル・トラストとは性格も組織も異なるからである。

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)) ω巴暮①89①Ω<一〇↓歪ω戸↓ぽ︾8霞叶Φ9一。ミZo為旧Ω≦o↓歪ω“汐置oO暁国碧ρ一。刈“9 拙稿﹁信託法理の応用による文化遺産と自然環境の保護﹂︵東洋法学第四七巻第一号、二〇〇三年九月︶ 一〇二頁。 六 企業の社会的責任と国際標準化の問題点

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 二〇〇三年六月、エビアン・サミットで企業の社会的責任について、国際的な標準化が二〇〇七年に予定され ることとなった。ただし、これは国際的に普遍性をもたせた形で具体的に定義するのは難しい。なぜならば、企 業の社会的責任は、それぞれの社会との関係において、その内容が決められるべきだからである。しかしながら、 共通項目としては、持続的成長と企業の競争力が考えられる。仮に企業の社会的責任の具体的定義が難しいとし ても、また、企業の社会的責任を意識しないでいる経営者がいても、自らの企業の持続的成長を目指さない経営 者はいないであろう。  経営の誠実さと透明性を担保し機能させる仕組みとして、経営理念・使命を具体化するトップのコミットメン ト、効率と牽制に支えられたコーポレート・ガバナンス、社会への説明責任、企業理念実現化のための機能する 倫理・コンプライアンス体制といったものを持つ企業こそが、持続的成長のための基本的な条件を持っていると いえる。  二〇〇三年六月に、年金総合研究センターが発表した﹁コーポレート・ガバナンス・ガイドライン﹂は、企業 77

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企業の社会的責任と社会的責任投資について の社会的責任をコーポレート・ガバナンスの大前提であるとし、年金運用における企業の社会的責任の考え方を まとめた。それによれば、企業の社会的責任とは、企業があらゆるステークホルダーに対して、株式会社制度・ 法令・市場原理・倫理的責任を遵守することであり、広い意味のコンプライアンスであるとされ、企業が市場へ       ︵−︶ 参加するための最低限のルールであると位置付けられた。  米国の学説の中には、﹁倫理的カルチャーはトップの明確な目標設定によって組織全体に広がるものである。こ れに対してコンプライアンスはルールやヒエラルキー制度を扱わなければならない。利益相反や経営者の不正行 為から組織を守るためだけの目的で作成された法的行動基準では、誠実な従業員の行動を意識付けたり、取引先、 顧客、その他のステークホルダーとの良好な関係を長期にわたって維持する結果にはならないであろう﹂︵デンボ       ︵2︶ ール大学ベルシュール教授︶とするものがある。今後、わが国においても、企業の社会的責任投資が浸透してく ると思われる。そうした時代においては投資という行為を通じて企業の適者生存が進んでいくことになるのであ          ︵3︶ ろうとする意見もある。 ︵1︶ ﹁年金基金と企業との対話によるコーポレート・ガバナンス﹂に関するセミナi資料︵二〇〇三年六月、   研究センタi︶。 ︵2︶ エイミー・ドニ著 山本利明訳﹁社会的責任投資﹂︵木鐸社・二〇〇二年︶一六九頁。 ︵3︶ 秋山をね﹁企業価値におけるCSRの重要性﹂企業会計二〇〇三 洞五五、M一二一⊥二頁。

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七 米国における年金基金と投資信託による社会的責任投資

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 米国では、投資銘柄の選定基準に環境や人権などの社会的責任を盛り込んでいる米国機関投資家の資産は全運 用資産の一割に達しているとされる。こうした投資家側の動きに対応、米国大手企業も社会的責任を強く意識し た経営へ一段と方向転換しようとしている。  米国では、一九七〇年代から企業の社会的責任投資が本格化し、最近は個人マネーを集めた投資信託へ裾野を 広げている。選別投資を掲げる投資信託は、一九パーセント増の一、六二〇億ドルに拡大した。例えば、ゼネラ ル・モーターズ︵GM︶では、確定拠出年金向けに三本の社会的責任投資信託を提案、残高は一、OOO万ドル に達する。  選別基準では、酒、タバコ、兵器関連企業などへは投資しないほか、労働、環境間題が重要度を増している。 投資信託の場合、全体の六四パーセントが五つ以上の基準を持つなど多様な要件を求めている。  インターネットの普及もあり、反社会的とみなされた企業に対する消費者の不買運動が大規模に発展する例も ある。収益への打撃も無視できず、投資家も企業の社会的責任投資の考え方をより重視するようになっている。  企業側も積極的に対応する姿勢を強化している。IBMは、企業の社会的責任への取り組みをまとめた初のレ ポートを発行した。豊富なデータを盛り込み、温暖化ガスや化学物質の排出量などから支払った罰金の額まで開 示した。環境対策の投資とその効果を金額で表示する環境会計も詳述している。人権擁護や地域社会への貢献な 79

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企業の社会的責任と社会的責任投資について ども網羅的に取り上げている。わが国も教訓とすべきであろう。 むすびに  企業の社会的責任については、早くから地球環境問題として考えられてはいたが、その取り組みは進展しなか った。しかし、企業の環境責任は、持続可能な循環型経済社会を目指し、温暖化ガス排出削減やリサイクルなど 企業は規制の波を乗り越えながら、環境保全に向けた経営を目標にしなければならなくなっている。  企業の社会的責任は、国際標準化機構︵ISO︶が二〇〇七年にも規格化する方針である。国内基準を早期に 作成し、ISO規格への発言力確保を狙うため、大手八社と経団連は経済産業省と協力して環境対策や法令遵守、 人権など、企業が取り組むべき基準を作成し、日本規格として二〇〇四年六月までにまとめることとなった。  一方、企業の社会的責任投資は、欧米の機関投資家などがその取り組み具合で投資先を選ぶ傾向が強くなって きている。国際企業などの間でも専門組織を設ける動きが活発になっている。わが国でも信用できる調達先を選 ぶ基準にもなり始めており、大企業と取引のある中堅・中小企業も対応が迫られている。間題は実行力であるが、 わが国の大手銀行の社会的責任について、触れるべき勇気をもった態度が欠如していた。バブル経済期に至るま では、俗に企業に対して融資するのではなく、企業経営者の顔に金を貸すとまでいわれていた。企業経営者の個 人資産は間題にせず、何百億円ともいわれる連帯保証を形式的に求めたにもかかわらず、経営破綻後にその形式 的書類を持ち出し、債務保証の履行を求め、銀行の融資責任を一切間題にせず、企業経営者の個人資産を奪うや

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り方は社会責任として間題にすべきである。大手銀行は一行当たり一〇万件を超える不動産担保を抱えており、 工場跡地などで土壌汚染があった場合、銀行は土壌汚染対策法で浄化の義務がある。しかし、土壌調査に手をつ けていない銀行が多い。こうした点も銀行は社会的責任を果たすべきである。  企業の社会貢献は従来、コスト増要因と指摘されてきたが、数年来相次いだ破綻で、持続可能性の視点が重視 されている。米国調査機関ソーシャル・インベストメント・フォーラムによると、日本はアジア太平洋地域で オーストラリアについで潜在的に成長性の高い市場とされている。数年前に本格的な社会責任投資ファンドが登 場して以降、一〇億ドル市場に成長した。銘柄選択では、環境や人権間題に重きをおく傾向がある、と分析して いる。それならば、これから具体的な実行に移す時期にあることを企業は認識しなければならない。

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