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企業結合会計の基準化

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(1)

(研究 ノー ト)

企業結合会計の基準化

藤 田 昌 久

Ⅰ.はじめに

2001年5月24日に成立 した 「商法の一部 を改正す る法律 (会社分割法制)」 において‑あるいは複数の会社の営業の全部 または一部 を新 たに設立 した会 社 に承継 させ る 「新設分割」 と,‑あるいは複数の会社の営業の全部 または 一部 を既存 の会社 に承継 させ る 「吸収分割」 の制度が創設 され,2001年4月

1日か ら施行 された。 これは,1999年8月13日に公布 され10月に解禁 された

「株式交換 ・移転法制」 に続 く企業組織 の再編 を円滑 に行 うための法律環境 の整備の一環であ り,両制度 を利用す ることによ り,企業組織の再構築 を容 易 に進めることが可能 となる。た とえば,株式交換 ・移転制度 を利用 して純 粋持株会社 を設立 し,その後会社分割制度 によ り持株会社の支配下 にある会 社の営業の一部あるいは全部 を相互 に分割一 吸収 しあ うな どして,大規模 な 組織 の再構築がで きることになる。

組織 の再編成 と くに統合 を図 る場合 ,買収 いわゆる子会社化 と合併 ,餐 産 ・営業の譲渡 とい う手段があるが,連結会計 を主たる会計制度 とす るな ら ば,法的には別会社 として存在す る買収である子会社化 と法的に同一化す る 合併等 とを一緒 に扱 う会計基準 を構想す ることが可能 になる。子会社 の財務 諸表 は連結精算表 を通 じて連結財務諸表 と して合算 され,合併等 は親会社

(2)

(存続会社)の個別財務諸表 を通 じて連結財務諸表 に反映 されるか らである

この ように構想 された ものが 「企業結合会計」である。国際会計基準や米国 基準では,連結会計 (資本連結) と合併会計等 とを区別 しないで,企業結合 会計 として一括 して会計処理基準 としている

わが国においては,既存 の他 の会社 の株式 を取得 して支配 し子会社 とす る 子会社取得 と既存 の複数の会社が商法の手続 によ り一つの会社 になる合併 と は,会計上別個 の事象 として, これ らを対象 とす る子会社取得会計 と合併会 計 とは別個 の会計領域 として取 り扱 われ,その会計処理 は異 なる方法で行 わ れて きた。 しか しなが ら,平成12年3月決算期か らこれ までの個別財務諸表 中心か ら連結財務諸表 中心の財務報告制度 に変換 された ことによって,子会 社取得 と合併 とは実質的には同一 とみることが必要 にな り,子会社取得 と合 併 は法律上の形態が異 なるだけにす ぎな くなる。 さらに商法改正 による株式 交換制度,会社分割制度 の創設 は子会社取得 と合併 は実質的に同一であると い う観念が一層強 まって きた。 こうした状況が,わが国において も,子会社 取得 と合併 とを一つの会計領域 とす る企業結合会計基準 を形成す ることが必 要 となって きた。

本稿では,企業結合会計 の基本的論点,わが国の会計基準,米国会計基準, 国際会計基準の当該内容の比較,のれんの処理 について検討 してみたい。

会計処理方法の類型

企業結合会計 としては,次の三つの処理方法が論理的に存在す る

1 パ ーチェス法 2 持分 プー リング法 3 フレッシュ ・ス ター ト法

パ ーチ ェス法 は,企業結合 を 「買収企業」 (acquirer)が 「被買収企業」

(acquiree)を取得 した とみなす 「第三者 間取引」(arm'slengthtransaction)

(3)

を概念的基礎 としてお り,他の資産取得取引 と同様の処理が要求 される。結 合 によって被買収企業が保有 していた資産 ・負債の支配が買収企業へ と変更 され,その変更部分 に該当する資産 ・負債 を公正価値 によって測定 し,被買 収企業 の貸借対照表 には計上 されないブラ ン ドな どの 「潜在 的無形資産」

(hiddenassets)を識別する。その識別可能純資産額 と 「買収価額」(costof acquisition)との差額部分 は相乗効果 などを示すのれんとして処理する。

持分 プーリング法は,企業結合前 に独立 していた所有主持分が融合 し,そ のまま継続することを概念的基礎 とする。企業結合後 も結合当事企業が継続 しているとみなされるので,資産 ・負債 についての支配 も変更がないことに なる。つま り結合当事企業同士で第三者闇取引が生 じているとは考 えないで, 資産 ・負債お よび利益剰余金 をそのまま引 き継がなければならず,のれんを 新たに認識することもない。

なお,ここで注意すべ き点は,パーチェス法 における公正価値測定お よび 無形資産の認識 は,企業結合が行 われた当初認識時 に生 じる ものであって, 決算 における時価基準適用の可否の問題ではない という点である。あ くまで 資産 ・負債の当初測定額の決定すなわち原価主義会計 との整合性が問われて いる。パーチェス法では第三者闇取引の存在が前提 とされるので,買収時の 公正価値 は当該資産の取得原価 をあ らわ し,差額部分 は 「自己創設のれん」

ではな く 「買入のれん」の認識 とみなされる。一方 プー リング法では,第三 者間取引はな く結合前のすべての企業の継続が前提 とされるので,仮 に,結 合当事企業の引継純資産額 と資本増加額 との差額 を認識 した場合,その差額 は 「買入のれん」ではな く, 自動的に 「株主持分の修正」 とみなされる。

パーチェス法 とプー リング法 を比較 してみ よう。第‑ に,プー リング法は, 減価償却 を簿価ベースで行い買入のれんを認識 しないので,公正価値ベース の減価償却費やのれん償却の負担がな く,パーチェス法の期 間利益 よりも大 きくなる。 したが って,企業経営者 はプー リング法 を選択す る傾 向がある。

第二に,パーチェス法は,発行価額の うち資本金 を上回る額すべてを資本剰

(4)

余金 とするのに対 して,プー リング法は,子会社の利益剰余金 を引 き継げる ので,企業結合後の配当財源 を確保することがで きる。 こうした特徴 は,貸 借対照表資本の部の配当規制が重視 される国々においてプー リング法 を認め る原動力 となった。G4

+

1参加国における会計規制 は

,

「プー リング条件 付適用 アプローチ」(conditionbasedpoolingapproach)

,

「プー リング例外 適用 アプローチ」 (poolingexceptionapproach)お よび 「パ ーチェス限定適 用 アプローチ」 (purchaseonlyapproach)の三種類 に大別す ることがで き る。

第一のプーリング条件付適用 アプローチ とは,一定の条件 をみたす場合 に プー リング法 を強制す る規制方式 をい う。現行 の米国基準である APB16号 が該当する。数値 を工夫することにより一定の条件 をクリアーす ることも可 能であるか ら,実態 に沿わないプー リング法の適用 も可能である。 また個別 事例 ごとにプーリング法の適用が可能か どうかを厳密 に判定 しなければなら ず,SECなどを巻 き込み,大変な作業量が要求 されている。

第二のプーリング例外適用 アプローチ とは,いずれの企業が買収 したのか 判別で きない場合 にか ぎってプーリング法 を認め,それ以外 のすべての企業 結合 についてはパーチェス法 を適用する規制方式 をい う。IASCや英国が採 用 している。しか し,この会計規制で も 「調整取引」(groomingtransaction) の存在 により,プーリング法 を適用する企業が増加 しは じめている。

第三のパーチェス限定適用 アプローチ とは,企業結合 に対 してパーチェス 法のみを認める規制方式 をい う。オース トラリアで正式の基準 となっている。

この規制方式 によると,プー リング法 を適用 しようとい う企業の意図を回避 することがで きる。ただ し, どの企業が買収側であるかを必ず判別で きるこ とが規制の前提 となっているため,この前提が崩れた場合 には妥当性 をもた ない処理が適用 されることになる。

理論的には,企業結合の実態 に応 じて各会計処理 を使 い分 けるべ きである。

企業結合の典型である買収取引の存在が認め られる場合 には,パーチェス法

(5)

を適用すべ きである し,それ以外の, どの企業 も存続 しえず,いずれが買収 企業か判別で きない ような企業結合 については,プー リング法 を適用するこ とになる。 この点で,プー リング条件付適用 アプローチお よびプーリング例 外適用 アプローチが妥当性 をもつ ことになる。

しか し両 アプローチ を採用 した場合,依然 として潜脱行為が発生 し,会計 基準運営のためのコス トが生 じることになる。そこで,パーチェス法 とそれ 以外の方法 を使い分けるためのコス トを回避するためには,パーチェス限定 適用 アプローチを採用する しかないが,買収企業 を窓意的に定めるケースが どうして も生 じて しまう。G4

+

1 (1998)は, こうした各規制方式のコス トとベネフィッ トを比較考慮 した結果,最終的に,パーチェス限定適用 アプ ローチを勧告することに した。

次にパーチェス法 におけるのれんの処理 を比較 してみ よう。規則的償却法 は他の方法 に比べて期間利益が小 さくなるので,業績の開示 とい う点では企 業にとって最 も好 ましくない方法である。仮 に規則的償却法が強制 された と

して も,経営者は償却期 間をなるべ く延 ばす ことが考 えられる。減損調査法 は,償却負担 を避けることがで きるが,将来減損が生 じた場合,多額の損失 を負担する可能性がある。 これに対 して,持分控除法は買入のれんに係 る費 用 をまった く負担 しないので,業績 を良 くみせ るとい う経営者の立場か らす れば,パーチェス法のなかでは最 も有効 な方法 といえる。

のれん会計 については

,I AS

C や英国では持分控除法の適用 も認めていた が,現在では資産処理 を強制 している。 したが って,資産計上後の処理 をど うするか, とりわけ最長償却期間の設定お よび減損調査法 を認めるか どうか が残 された課題 となっている。

パーチェス法 と持分 プーリング法が制度 として存在する処理方法であるの に対 して,フレッシュ ・ス ター ト法は会計理論上でのみ主張 されて きた方法 である。 フレッシュ ・ス ター ト法の もとでは,結合前のいずれの企業 も存続 することな く,む しろその ような結合か ら新 たな企業体が生 じ,結合当事者

(6)

の資産 ・負債 に対す るすべての支配が変化すると仮定 される。 したが って, 結合当事会社の資産 ・負債の帳簿価額 は新 しい企業の資産 ・負債の評価 とは 無関係であ り,新 しい会社の出発 にあた り,資産 ・負債 はすべて公正価値で 評価 される。 また,結合当事会社の利益剰余金お よび結合 目前の利益 を引 き 継がない。

なお,のれんの資産計上 を認めるか否かでフレッシュ ・ス ター ト法はさら に二つの会計処理方法 に分類 される。のれんの資産計上 を認める方法 を 「相 互パーチェス法」 と呼び,のれんを所有主持分か ら控除するもの‑資産計上 しないでのれん評価分の資本 の増加がない方法 を 「公正価値 プー リング法」

と呼ぶ。パーチェス法,持分 プーリング法, フレッシュ ・ス ター ト法の三つ の会計処理方法お よびそれ らの背景 と概念的基礎 ない し根拠の主な相違点 を まとめると次のようになる。

1 結合当事会社すべての資産 ・負債の評価 に交換価格が反映 されるのはフ レッシュ ・ス ター ト法であ り,パーチェス法は被取得会社 (acquiree)の みに交換価格が反映 される

2 交換価格中ののれんを認識するのは,パーチェス法 とフレッシュ ・スタ ー ト法である。 より厳密 にいえば相互パーチェス法であ り,公正価値 プー

リング法では,のれんは資産 として計上 されない。

3 結合当事会社すべての留保利益 の引 き継 ぎを認め られるのは持分 プーリ ング法であ り,パーチェス法は取得会社 (acquirer)の留保利益 のみが引 き継がれる。

4 企業結合直前の当期利益 は持分 プー リング法のみが結合後 に合算 され る。

5 対価の性質 (現金か株式か といった もの)が会計 と関係があるのは持分 プー リング法である。なぜ なら,持分 プー リング法は交換価格の公正価値 が反映するような対価 (た とえば現金)の場合 には適用で きず,株式 (拷 分証券)が対価の場合 にのみ適用で きるか らである。パーチェス法 とフレ

(7)

ツシュ ・ス ター ト法 は ともに対価 の性 質 ない し種類 を選 ばない。

6 結合取引の当事者 と して結合 当事会社 が考慮 され るのはパ ーチ ェス法 と フ レッシュ ・ス ター ト法 であ り,持分 プー リング法 は株 主 のみが 当事者 と み な され る。

7 結合の結果,持分 プー リング法では当事会社すべ てが存続す る もの とさ れ,パ ーチ ェス法 で は支配会社 が存続す る とみ な され, フ レッシュ ・ス タ ー ト法 は新 しい会社 (entity)が創 出す る と想 定 され る。

8 結合 当事会社 すべ ての資産 ・負債 の一部 あ るい は全 部 に関す る支配権 が 変化 す る とされ るのが フ レッシュ ・ス ター ト法 であ り,パ ーチ ェス法 で は 被取得 会社 のそれ らに関す る支配権 が変化 す る とされ,持分 プー リング法

では何 らそれ らに関す る支配権 に変化 が生 じない と想 定 されてい る0 企 業結合会計 の処理方法 を要約す る と,次 の ようになる。

視 点 プー リング法 パ ーチ ェス法 フ レ ッ シ ュ .スター ト法 持分が継続 している とみなされる当事企業 すべての当事企業 取得企業のみ ない 適用可能 な取得対価 の

性質 株式のみ あらゆる対価 あらゆる対価

結合時 に当事企業の資産 .負債 の評価替 えを

行 うか 全 く行わない 被取得企業に限って行う すべての当事企業について行 う 資産 .負債 の評価替 えによ りのれんを認識す 認識 しない 原則として認識す 認識する方法 と認るが,認識されな 識 しない方法があ

るか い場合 もある る

当事企業の利益剰余金 すべての当事企業 取得企業に限って 全 く引き継がない を引 き継 ぐか について引き継 ぐ 引き継 ぐ

当事企業の結合 目前当 すべての当事企業についてすべて引き継 ぐ 取得企業に限って 全 く引き継がない 本表の作成に当た り,G4+1の報告書 (1998年)の一部 を参考に している。

(8)

Ⅱ 「支配」の概念

持分 プー リング法では,当事者が会社ではな く株主であ り,企業結合取引 にあた り

,

「支配」 に変化がない。パ ーチ ェス法 は,当事者が会社 であ り, 被取得会社の純資産,事業運営に関する支配が変化す る。 フレッシュ ・スタ

ー ト法 は,すべての当事者が会社であ り,すべての当事会社の純資産,事業 運営 に関する支配が変化するとい うものである。い ままで検討 して きた重要 な概念 は 「支配」である。そこで,国際会計基準 を参考 に して支配の概念 に ついて考察 してみ よう。

1998年IAS22号第8項 によると,次のように定義 している。

「取得」 とは,企業の一つ (取得企業)が他の企業 (被取得企業)の純資 産お よび経営の支配 を獲得することによって,各企業 を一つの経済的実体 に 統合することをい う。

「支配」 とは,企業活動か らの便益 を得 るために,その企業の財務お よび 経営方針 (operatingpolicy)を左右す る力である。

取得企業 を識別す るための具体的な支配の規準 として,1998年IAS22号第 10項,11項は次の ような ものを列挙 している。

1 株式の議決権の過半数所有

2 取締役会等の会社の支配機関の議決権の支配 3 支配機関の経営陣の任逸,選任権の取得

4 法令や契約 による財務お よび経営方針 を左右する権限の取得 5 現金の交付

6 公正価値で測定 した相対的規模の格差が大 きいこと

なお,持分 プーリング法の論拠である 「リスクと便益の相互分担」の例 と して,1998年nS22号第15項 は次の ものを挙げている。

1 結合前企業 の議決権付普通株式 の大多数が,交換 あるいはプール され る。

(9)

2 ‑つの企業の公正価値が,他 の企業 の公正価値 と著 しく異 な らない。

3 企業結合後 ,それぞれの株 主が結合後企業体 に対 し,相対 的 に以前 と実 質同等 の議決権 お よび持分 を維持す る。

Ⅳ わが国の会計規定

わが国で認 め られてい る主要 なM & Aの手法 を,法 的 に分類す る と次 の 三つがある。

1 子会社化 (株式取得 な ど) 2 合併 (吸収合併 ・新設合併) 3 営業譲渡 (資産取得)

日本基準 では,1については証券取引法系統 の 「改訂連結財務諸表原則」, 2については 「企業会計原則」 お よび商法が適用 され るが,3については特 別の規定が ない。企業結合会計 の基本 的処理 をわが国の規定 と照 らし合 わせ て要約す る と次 の図表の ようになる。

わが国の会計規定

連結会計 合併会計

(「改訂連結財務諸表原則」) (「企業会計原則」など)

被結合企業の資産 .負債の公正価値測定 強 制 規定なし

買入のれんの認識 強 制 容

(連結調整勘定) (営業権,のれん)

連結会計 では実質的 にパ ーチ ェス法 と同等 の処理が要求 され るが,合併会 計では資産評価 や買入 のれんの認識が容認規定 となってい る。合併 会計 につ いて商法 ・税法 の規定 を採 り上 げてみ る。

(10)

商法規定 においては,金融商品 を除いて原価基準 が原則 となってい る。パ ーチ ェス法 における公正価値測定 は各資産 の取得原価 の決定 にほかな らない ので, この商法の枠組み に反す る ものではない。 また合併 時の資本金 は承継 す る資産 ・負債 の枠 内で増加 させ ることがで き (413条 ノ 2),額面 で資本金 を計上 した場合 には,払込資本 の うち額面超過部分 となる合併差益 は原則 と して資本準備金 とされる (288条 ノ2)。合併差益 部分 の全額が資本準備金 に なるとい うことは,利益剰余金 を引 き継 げない とい うことであ り,パ ーチ ェ ス法の処理 と整合す ることになる。

しか し,合併差益 の全額 を配当不可能 な資本準備金 として しまうと,被合 併会社 の利益剰余金がすべ て消滅 して しまうため,その分 を改 めて積 み立 て ることが必要 になる。その結果,配当政策 な どに支 障 をきたす可能性 もある ので,商法 は利益準備金 お よび任 意積立金 の引 き継 ぎを認 めてい る (288条 ノ2,3項)0「企業会計原則」 もまた商法 と同様 の規定 を行 ってい る (貸借 対 照表原則三の (≡) のB,注解19)。 こう した配 当政策 を企業側 に認 め る か ぎり,パ ーチ ェス法の一貫 した適用 を強制 で きない こ とになる。

税法では,公正価値測定が行 われた場合 の合併 差益 は,資本積立金 ,利益 積立金お よび承継資産の再評価益 か ら構成 され る もの と解釈 されてい る (法 人税法施行令9条1項)。商法 ・企業会計原則 と比較 す る と次 の ように まと めることがで きる。

合併差益の内訳

税 法 商法 .企業会計原則

① 合 併 差 益

② 資 本 積 立 金 (彰 利 益 積 立 金

@ 資産の評価差額 原則 として資本準備金oただ し被合併会 社の利益剰余金 は資本準備金 としないこ

① お よび② は課税対象 とな らない資本取引であ り,③ もまた被合併 会社 で すでに一度課税 された もの なので,合併 にあた って改 めて課税 され ることは

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ない。 ここで留意 しなければな らないのは,④ の被合併会社か ら承継 した資 産の評価差額部分が課税 の対象 となる点である。 この税法規走は,公正価値 ベースで資産の費用化が行 われると,一般 に合併後の課税所得が少な くなる ので,合併時に評価差額部分 を課税することによって,課税機会 を逸 しない ことを立法趣 旨とする。 この規定 により,企業は,一般 に公正価値測定 を行 わないことになる。公正価値測定や買入のれんの認識が行 われるのは,合併 比率などの関係 により,資本金計上額 より承継純資産額が小 さ くなる場合の みである。 この場合 には,商法で も禁止 されている資本の割引発行 となるた め,被合併会社の資産 を公正価値 によって測定 し不足額 を補 う必要が生 じて

くるか らである。

このように,パーチェス法の基本的会計処理 と現行商法お よび税法 におけ る会計規定には,相反する部分がある。一方,子会社化 した場合 には,改訂 連結財務諸表原則 によりパーチェス法が適用 されるため,同一の実態 をなす

「買収」であって も,法的合併 の場合 とは会計数値が異 なることになる。 ま た,仮 に企業会計 と税法の会計規定 を分離 して,パーチェス法 を企業会計で 強制 した場合,有税の公正価値測定 を企業側 に強いることになる。

Ⅴ のれんの処理

1 正ののれんの処理 (1) 国際会計基準

1983年公表のIAS22は,正ののれん (positivegoodwill) について規則的 償却法 と持分控除法の両方 を認めていた (para.41)。 この ことは,準拠性 を 高めるために複数の代替処理 を認めていた とい うE32「財務諸表の比較可能 性」公表以前のIASの性格 を読み取 ることがで きる。 しか し,IAS22(1993)

は,買入のれんについてE32と同 じように原則 として定額法 による規則的償 却法 を適用す るもの とした (para.42)。規則的償却法が確立 した として も,

(12)

最長償却期 間を何年 とす るかが問題 となる。買入のれんは,他の償却性固定 資産 と異 な り,経済的便益が有限か どうか さえ明 らかではな く,まった く制 限がなければ作成者側の都合 により償却が行 われないか もしれない。 したが って,会計基準 においては,あ らか じめ最長償却期間を設定することが必要 となる。

IAS22 (1993)は,最長償却期 間を原則 として5年 とした (para.42).そ の理由として次の ように述べている (para.45)0

「のれんは相乗効果 もしくは個別の認識が不可能な資産か ら発生すると認 め られる将来の経済的便益 である。そのため,有効期間を見積 もる際 には困 難が生 じる場合が多い。 したがって本基準 は,会計上の償却期間について窓 意的な限度 (anarbitrarylimit)を明示 している。本基準の仮定は,のれん は通営,5年 を超 える有効期間をもたない とい うことである。」

最長償却期間の設定は人為的な仮定 にす ぎない点に留意すべ きである。 さ らに,有効期間が5年 を超 える識別可能資産 と関連する正当な理由が存在す る場合 には20年 を限度 として償却で きることも規定 している (para.41)。

その後 ものれんの会計規定は改訂 されている。IAS22 (1998)の改訂の特 徴 は次の とお りである。第‑に,無形資産お よび買入のれんは,有形固定資 産 と同様 に最善の有効期 間にわたって償却するが,原則 として20年 を最長償 却期 間 と した (para.44)。第二 に,20年 は反証可 能 な推定 (rebuttable presumption)であ り,説得的な証拠 (persuasiveevidence)があるならば, 20年以上の償却 を行 うことがで きるとした (para.50)。ただ し,無限の償却 期間は認めていないので (para.51),償却は必ず行われることになる。第三 に,無形資産 または買入のれんの償却期 間が20年 を超 える場合 には,IAS36 で規定 された減損の兆候 の有無 にかかわ らず,毎期,減損 テス トを実施 し, その理由 も開示 さなければならない とした (para.56)。

(2) 米 国 基 準

米国はのれんの資産処理 を1970年公表のAPB17号 によって,IASC に先ん

(13)

じて確立 した。他の国ではあま り認め られていない40年 とい う長期の償却 を 認めているため,

AP B1 7

号 は国内実務 において比較的安定 した支持 を得てい る。 しか し,E32以降のIASC の動向 もあって

,F AS B

は国際的調和化 とい う局面 に対応せ ざるをえないことになった。そこで

mS B( 1 9 9 9 )

は最長償 却期間を20年 とした提案 を行 っている。最長償却期間20年 とい う会計基準が 適用 された場合 には,過半数 を超 える企業がその会計戦略 を変更せ ざるをえ ないことになる。 この点 をいかに調整す るかが課題 となる。

(3) わが国の会計規定

わが国の合併会計では,企業会計原則の制定以来,買入のれんの定義 につ いては明確 な規定 はなかった。 したがって,わが国の合併会計 と

I AS

お よ び米国基準 との調和化 を図るためには,公正価値測定の強制 に加 えて買収価 蘇,さらには買入のれんの定義 を明確化する必要がある

のれんの償却方法に関する規定が設けられたのは昭和37年 (1962)の商法 改正であった。当時は繰延資産の容認 など企業会計原則 との大幅な調整が図 られることにな り,買入のれんの資産計上や償却方法 に関する規定 (取得後 5年以内に毎決算期 において均等額以上の償却)が明文化 された (285条 ノ 7)。

「企業会計原則」 も,昭和

4 9( 1 9 7 4 )

年の改正 によ り,解釈 に委ね られて いた買入のれんの資産計上 を明文化 した (注解25)。ただ し,のれんの資産 計上が強制ではな く容認規定 となっていた。

連結会計で問題 になるのは,のれんの性格 を有する 「連結調整勘定」の最 長償却期 間を何年 に設定す るかである (第四,二,2)。監査上 は,5年の 償却期 間を無条件 に合理的 と認めていたので (監査委員会報第29号),圧倒 的多数の企業が連結調整勘定 を5年で償却 している。

わが国の昭和50年設定の連結原則 は,ADR (米国預託証券)発行会社 に ついて米国基準の適用 を認めていたが (設定前文,≡, 4),かな りの企業 が連結調整勘定の償却期間を5年以上 としていた。 この規定は,わが国の米

(14)

国企業の買収 を促進する効果があったといわれている。いわゆる償却期 間を 長期化することによって利益圧縮効果 をやわ らげていたのである。

「改訂連結原則」 はIAS22(1998)と同様 に,最長償却期 間の原則 を20年 とした (第四,≡,2)。20年 とい う償却期 間は,改訂前 に比べて償却負担 を軽減で きるが,IAS22(1998)の20年は反証可能 な期 間であって,場合 に よっては20年以上の償却 も可能である点 に留意する必要がある。 さらに,20 年以上の償却 を認めるかわ りに,減損 テス トの強制や償却延長の理由を開示 するなどの会計規制 を行 っている。わが国で も巨額のM &Aが行 われた場 合 には,20年以上の償却期 間を望む企業が出て くる可能性 はあ りうる。そう した事態 に対応するためには,原則的な最長償却期 間のみな らず,減損 テス トなどの詳細 な規定 を設定する必要がある。

(4) 負ののれんの処理

買収価額 と識別可能純資産額 との差額である買入のれんは正ののれんでは な く負ののれん (negativegoodwill)が生 じる可能性 もある。買収価額 と識 別可能資産額 との差額が貸方 に生 じる場合,その差額 を負 ののれんとい う。

負ののれんが発生する原因 として二つあげることがで きよう。

第一 に

,

「割安購入」 (bargainpurchase)である。 これは,交渉当事者間 に情報格差があるために,被買収企業が知 りえない ような公正価値があった か,あるいは被買収企業が契約上,不利 な立場 にあったために,買収企業が 有利 な買物 を行 うことがで きた とみなす ものである。買収企業 は買収 によっ て,被買収企業の保有する複数の資産 を個 々に取得するよりも安価 に取得で きたことになる。

第二 に,被買収企業 にもともと付随 していた不利 な立地,未発達 な組織能 力などを事業の再構築によって埋め合わせ るために,将来生 じるであろう支 出や損失 を予測で きる場合である。本来 この部分 については再構築引当金 を 認識する必要があるが,認識基準 をみたさない もの を識別可能負債 とするこ とはで きない。つ ま り将来予測 される費用 をすべて負債 として認識す ること

(15)

は不可能であるので,それが貸方差額すなわち負ののれんに反映 していると みなすのである。

IAS22は負ののれんを①企業買収 に伴 う将来の再構築費用 の部分 と②非貨 幣性資産の割安購入部分 とに原 因分析 した後で,それに応 じた繰延利益処理

(amortizingthecredittoincome)を要求 している (paras.61‑62)0

わが国の連結会計では,貸方に生 じた連結調整勘定 を借方の場合 と同様 に,

20年以内に定額法などを用いて償却することになる。 これは実質的に繰延利 益法 と同 じである。ただ しIASの ように,償却方法 に関す る詳細 な規定 は ない。一方,合併会計では,負ののれんの概念す らも明確ではない。買収価 額お よび識別可能資産 ・負債の公正価値測定 を規定 したうえで,負ののれん の処理 を明 らかにする必要がある。

Ⅵ おわりに

国際的な動向を考慮 しなが ら日本基準の現状 を検討 して きた。わが国に企 業結合会計の基準 を導入するにあたっては,次の指摘事項 に留意すべ きであ る。

第‑に,国際的には

,

「買収」の場合 にはパーチェス法

,

「持分の結合」の 場合 には持分 プー リング法, といった企業結合の実態 に応 じて使 い分けるの が一般的であった。 しか し, この使 い分けを前提 とした会計基準 を運営する ためには多大なコス トがかかる。歴史的にみて経験豊富な米国で さえ持分 プ ーリング法 を禁止する方向に向かっている

第二に, 日本基準 には,合併会計 に関する明文化規定が存在 しないことで ある。仮 にわが国の合併会計 にパーチェス法 を導入 した場合,商法 ・税法の 規定 (配当可能利益や課税所得の計算) に反する可能性がある。 この間題の 解決策 としては,(∋証券取引法 と商法 ・税法 を統一 した基準 を設定する方法,

②三者 を分離 ・独立 させ る方法があげ られ よう。 しか し,① の場合 には,商 133

(16)

法 ・税法 との調整の困難 さが予測 される。 また,② の場合 には,合併時 に取 得 された資産の二重計算が長期 にわたって必要 になる し, と りわけ株主 と企 業間での配当をめ ぐる利害調整 に混乱 を招 く可能性がある。

第三 に,買入のれんについては,最長償却期 間を20年 とす る国際的な傾 向 がみ られるが,一方で,それ以上の期 間で費用化す る規定 も提案あるいは基 準化 されている。20年 とい う償却期 間に理論的な裏付 けはな く人為的な仮定 にす ぎないのである。 したが って,た とえば,IAS22 (1998)は20年 を反証 可能な推定期 間 としている し,英 国のFRSI

O

「のれんお よび無形資産」 で は償却 を強制 しない減損調査法 も認めている。 また本年公表 された米国基準 の改訂公 開草案 「企業結合 と無形資産‑ のれんの会計」 (FASB,2001)で ち,規則的な償却 を行 わないで減損 テス トを適用す る提案が示 されている。

第四に,IASでは,パ ーチェス法適用時の識別可能資産お よび負債 の認識 に関す る詳細 な規定 を設 けている。一方, 日本基準 には十分 な規定が ない。

特 に被買収会社の決算貸借対照表 に計上 されない資産や負債 については注意 が必要である。

参考文献

企業財務制度研究会 [2001]:わが国会計基準の国際的調和化に関する研究委員 会報告 Fわが国会計基準 と国際会計基準および米国会計基準 との比較調査』

企業財務制度研究会。

IASC [2001]:InternationalAccountingStandards2001,国際会計基準書2001, JICPA国際委員会訳,同文舘。

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