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企業結合会計基準の国際的統一化について

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企業結合会計基準の国際的統一化について

Abstract

ln December 2002,1mternationalAccounting Standards Board issued its Exposure DraftED3BusinessCombiMiionsthatbroughtgreaterchangetotheaccountingforbusiness combinations,goodwillandintangibleassets.Thatis,Themainfeaturesofthedraftare thatitrequires(a)allbusinesscombinationstobeaccountedforbyapplyingthepurchase method only,(b)an acquirerto recognize separately the acquiree'sidentifiableassets, liabilitiesandcontingentliabilities,regardlessofwhethertheyhadbeenpreviouslyrecognized in theacquiree'sfinancialstatements,and (C)to prohibittheamortization ofgoodwill acquiredinabusinesscombinationandinsteadtobetestedforimpalrmentannually.

ThispaperdiscussesthesefeaturesofthedraftIFRS andexaminestheaccounting implicationsofinternationalconvergenceontheaccountingforbusinesscombinations. Keywords:businesscombination,purchasemethod,intangibleasset,goodwill

はじめに

200212,IASB,IAS22号 「企業 結合」の改訂を行 うIFRS公開草案第3号 「 業結合(1)(以下,「IFRS草案」という)を表わ し,

また これ と共 にIAS36号 「資産 の減損」

及び同第38号 「無形資産」 を改訂 す る公開草

秦 (2)を表 わ し,企業結合会計 の見直 しを提示 した。 これ らの包括的基準化 に よ り,企業結 合会計 はその会計処理方法の統一化 が図 られ る とともに,それ らを規定す る会計基準その ものの国際的統一化のプロセスが最終段階 に 達 した といえよう。

この企業結合会計の国際的統一化の経過 に 関 して い えば ,パ ー チ ェス法 と ともに持 分 プー リング法を代替的方法 として唯一認 めて いたア メ リカにおいて(3),G4+1との共 同作 業 を経 て ,FASB20016月 にSFAS 141号 「企業結合」 (4)及び 同第142号 「のれん

及 び そ の 他 の 無 形 資 産(.')を表 わ し, パ ー チ ェス法を唯一の方法 とす る等の規定改訂 を 行 った ことが,企業結合会計基準の国際的方 向性 を決定づける もの とな った。

IASBにおけ る企業結 合会計 の会計処理法 と取 得無形 資産 及 び の れ ん の認 識 ・測定 の

「国際的統一化」(̀intemational convergence') ,IASBの発足当初 か らのプ ロジ ェク トで あ った(6). 以下 分析 す るご と く,その基準鱒 は,会計処理法 またその理論 内容 において も, はばア メリカ基準 を (のれんの減損規定等を除い て)踏襲 す る もので あ り(7),近年 におけ る国 際会計基準の設定のあ り様の一 つを表 わ して いる とみ られ るのであ る。

そ こで以下,IFRS草案 を手 がか りに企業 結合会計の国際的統一化がいかな る内容にお いて基準化 されようとしているのか,またその 方向性が持つ会計的意味はなにかを検討する。

(2)

(注)

(I)IASB,ExposureDraft,ED3BusinessCombi nations,I)ecember,2002.

(2) IASB,ExposureDraft,HqposedAmendwnts to1:AS36ImpairmentofAssets,1AS38Intmgi bleAssets,December,2002.

(3)Sylvestre,∫.andG.L Prescott,Accounting for Business Combinations,The Journalof CoゆorateAccounting& Finance,p,47.

(4) FASB,Statement ofFinancialAccounting StandardsNo.141,BusinessCbmbinations,June, 2001.

(5) FASB,StatementofFinancialAccounting StandardsNo.142,GoodwillandOtherInhmgi bleAssets,June,2001.

(6) Waxman,R.N.,GoodwillConvergence,The CPA Joumal,October,2001,p.22.

(7)FASB,Statementof FinancialAccounting StandardsNo.121,AccountingforTheImpair mentofLDng‑LivedAssetsandforLong‑Lived AssetstoBeDisposedOf March,1995,para.

7,SFASNo.142,paras.1922,

IASB,ProposedAmendmentto1AS3: 6,para.

103.

1.IASB企業結合会計基準の特徴

(1) 企業結合会計の成立

IFRS草 案 は , 「企 業 結 合 とは個 別 の企 業 また企 業 の事 業 部 門 を一 つ の報 告 実 体 (reporting entity)に統合す ること」(1)と, 企業結合を結合形態の如何に関係な く一つの 報告実体に統合することとして定義する。現 行基準のIAS22は,企業結合 を 「他の企業 の純資産及び事業 を一 つの企業 に合体す る か,支配権を取得することによって,個別の 企業 を一 つの経済実体 に結合す ること」(2) 定義 した。 また,FASBSFAS141におい て 「企業結合は,企業の純資産を取得するか, 一 つないしそれ以上の他企業の持分を取得 し その企業 の支配権 を取得す るこ と」(3)と定義 した。IFRS草案は,基本的には これ らを踏

襲 しつつ,「取得」 といった企業結合の形態 を特定す る一方,「経済的実体」 を 「報告実 体」に置 き換 えるな どの修正を加え,広 く定 義 したのである。

実際に,企業結合の形態 自体は多様である。

他企業の持分を買収する場合,他企業の純資 産の全部 を買収する場合,他企業の負債を引 受ける場合,また,一つ以上の事業部門から なる他企業の純資産の一部 を買収する場合が 含まれる。また,企業結合は持分証券の発行, 現金,現金同等物その他の資産,或いはそれ

らの組合せの移転 によって行われる。そ して, この取引は企業結合に参加する企業の株主間 あるいはある企業 と他企業の株主間において 行わわ,その結果は結合当事企業あるいは移 転 された純資産を支配する新たな実体がつ く

り出される一方で,結合当事企業の一部が再 編 されることになる。

この ことか ら,「報告実体」は,取得企業 が親会社であ り被取得会社は子会社である親 会社 〜 子会社関係を含む ことに留意 す る必 要がある。 この場合,取得企業は連結財務諸 表上で この企業結合会計基準を適用すること にな り,それは持分法による場合 も含まれる ことになる。 この定義に含まれる企業結合に おいては,ある企業 による他の企業の支配権 取得をメル クマール としている(4).

ただ し,IFRS草案は,次の企業結合をそ の適用対象か ら除外 している(5)0

(a) ジ ョイン ト ・ベンチ ャーを形成するため に別個の企業または企業の事業が合体され る企業結合,及び

(b)共通の支配の もとにある企業 (または企業 の事業)を含む企業結合,がそれである。

(2)会計方法の適用

IFRS草案の会計処理上の基本的特徴はす べての企業結合をパーチ ェス法での処理 を規

(3)

27

足 した こ とであ る(6)。従来 ,企業 結合 の会計 処理 法 については,制度的 にはパーチ ェス法 と持分プー リング法の選択適用制(7)が,それ と 理論的 には新 出発法 (fresh‑startmethod)(8)

が提 唱 され て きた。 例 えば,IAS22は ,企 業結合 を持分の結合 として区分 され る結 合 に ついては持分プー リング法 を,取 得 として区 分 され る結 合 についてはパーチ ェス法 とい う 二 つ方 法 を認 め た(9)。 これ に対 してIFRS 案 は企業結合会計 の処理法 をパーチ ェス法の みに限定 したのであ る。

その論拠 はな笹 か,次の ようにい う。

(1) 一つには,同22号は,持分プー リング法の適用 については厳 しい制限を設 けたが,二つの方法を 認めることは財務諸表の比較可能性 を損ねること であ り,

(2)特に,二つの方法はかな り異なった結果を示す にもかかわ らず,実質的に同一の取引に一つの処 理法以上の方法を認めることは,望 ましい会計結 果が得 られるように結合取引を構成するとい う動 機の誘引にもな りうる。

(3) これ らの要田が,オース トラ リア,カナダ及び 7 メリカにおいて持分プー リング法 を禁止 してい ることと相侯 って,国際会計基準 としてもこれ ら の諸国に倣 って持分プー リング法の禁止で足並み を揃えることでの検討に向けさせた, と(lo

また,企業結合の大部 分 が結果 としてあ る 企業 に よる他の企業 ない し営業 の支配権 を獲 得 す るこ ととして行われ る ところか ら,大部 分の企業結合 について取得企業 を識 別で きる とし,パーチ ェス法 が企業結合会計 の処理法 として適切 であ る(1)。 す なわち,あ る企業 が 一 つない し複数 の他の企業 の支配権 を取得す るような企業結合 に とってはパーチ ェス法 が 唯一適切な方法であると結論づけたのである。

パーチ ェス法 とは企業結合を結合当事企業の うち取得企業の観点か らみる。すなわち,取得 企業 が純 資産 を買収 し,その財務諸表上 に取 得 した資産 及び引受けた負債 ・偶発債務 を, 被取 得企業 に よってそれ以前 には認識 されて

いなかったそれ らを含めて認識するのである。

一方 ,一 つの企業 が他 の結合当事企業 の支 配権 を獲得 しない ような企業結合 について も パーチ ェス法 の適用 を要求 して い る。しか し,

このケー スの企業結合 については新 出発法 を 適用 す る可能性 があ りうる こ とも示唆 してい る。新 出発 法 は企業結合の結果 として生 まれ る新実体の観点 に立 つ もので,結合当事企業 の これまで認識 されて いない資産 ・負債 を含 めて これを公正価値 で認識 ・測定 す るのであ る。 しか し,新 出発 法 は,現在 の企業結合会 計 には適 用 され て い な い こ と,IASの プ ロ ジ ェク トの狙 いは企業結合 の会計方法 の国際 的統一 を求め るこ とにあ る こ とか ら,取得企 業 を特 定 で きな い企 業 結 合 に つ いて もパ ー チ ェス法の適用 を求 め,新 出発法の適用 の可 否 に つ い て は将 来 の研 究 課 題 とした の で あ (1

では,持分 プー リング法 の排 除の論理 は如 何 な る もの か。 前 述 の ご と く,IAS22は二 つの方法 を認 めたが,持分 プー リング法 は決 して同一 の企業結合 について代替的方法 とし て認め られていたのではない。それが 「取得」

(acquisitions), す な わ ち , あ る企 業 が他 の企業或 いは営業 の支配権 を獲得 した場合 は パー チ ェス法 を適 用 し,「真正 合併」 (̀true merger') あ るい は 「持 分 の結 合」 (̀unit ingsofinterest'), す なわ ち , どの結 合 当 事 企 業 も支 配 権 を得 る に至 らな い場 合 には 持分 プー リング法 を適用 す る としていた。 だ ,IASBは後者 の場 合 について も持 分 プー リング法 に よる情報提 供 はパーチ ェス法 のそ れを超 える こ とはない として,その適用 を否 定 したのであ る(l=o

また,「真正 結 合」 の場 合 は持 分 プー リン グ法 が適切 であ る とす る根拠 は,真正結合の 場合 には所有主持分 は完全 にまた実質的 に継 承 され るこ と。 また新 しい持分 は投資 されな

(4)

いこと,資産は全 く分配 されないこと,結合 後の所有主持分は結合前のそれ と比例的であ ること,そして結合の意図する ところは事業 戦略の統合を推 し進めることにあるという主 張である。

これに対 して,IASBは, これ らの持分は 企業結合の結果変化するという。また,持分 プー リング法では,結合当事企業の全ての資 産 と負債は結合時における公正価値ではな く 結合前の帳簿価額で認識 されるから,財希諸 表の利用者は結合の結果生 じる と期待される 将来キ ャッシ ュ 。フローの性質,時期及び程 度を合理的に評価することがで きない。すな わち,持分プー リング法は,交換取引は交換 される項 目の公正価値で処理 されなければな らない とい う一般原則に対 して例外 とな る と,公正価値会計の論理が展開 されるのであ (14)0

パーチ ェス法は企業結合を取得企業の観点 か らみるのであって,取得企業は純資産 を買 収 し,被取得企業 によって以前 には認識 され ていなかった分 も含めて取得 した資産 また引 受けた負債及び偶発債務を公正価値を もって 認識 ・測定するという公正価値会計が採用 さ

れることになる。

この ことか ら,その会計手続は次の ような ステ ップを踏む ことになる。

(a)取得企業の識別 (b) 企業結合原価の測定

(C)取得時における,取得資産及び引受け た負債また偶発債務への企業結合原価の 配分

(1) IASB,EI)3BusinessCombinations,op.cit., para.4.

(2) IASC, 1AS No.22,Business Combinations, Revised1998,pwa.8.

(3) FASB,Statement of Financkll Accounting StandwdsNo.141,para.9.

(4) IASB,ED3BusinessCombinations,op.citl para.7.

(5)Ibid"para.3.

(6) Ibid.,para.13.

(7)ア メリカにおけるAPB(砂inionNo.16及びムlS No.22がその例であるo

(8)新出発法の もとでは,結合当事企業の資産,負 債はそれ らが既認識であるか否かに拘わ らず,結 合後企業の貸借対照表上,公正価値を もって計上 される。すなわち,結合後企業は企業結 合の 日を もって新実体 とみなされ,その時を もってその歴 史 が始 ま る こ とにな る (FASB,SFASNo.141, 9ayaB12.).

(9) IASC,IASNo.22,paras.17,77.

(10)IASB,Basisfor Conclusionson ED3 Busi nessCombinations,para.BC19.

(ll)Ibid.,paras.BC20,22.

(lIbidリparaS.BC23,29. (13) Ibid.,para.BC30.

(14) Ibid.,paras.BC31133.

2.企業結合の認識 と測定

(1) 取得企業の誰別

まず,取得企業 とは,結合当事企業の うち, 他の企業ないし事業を支配する企業をい う。

すなわち,パーチ ェス法は企業結合を取得企 業の観点か らみるのであ り,結合取引の当事 企業の うちの一つを取得企業 として識別でき ることを仮定するのである。

ここで,支配 力 とは,「ある企業の財務お よび事業政策あ るいは事業 その もの を統制 し,それに よって便益 を得 る力rl)であ り, 結合当事企業の うちの一つが他の企業の議決 権の過半数を取得 した時に,その所有が支配 力を構成 しないことが証明されないかぎ り, 支配 力を獲得 した とみな され る。 しか し, 議決権 の過半数所有 に達 しない場 合で も, 結合の結果,次の要件を得た場合は支配力を 獲得 した とみなされるのである(2)0

(a)他の投資家 との契約を通 じて他企業の議決権の 過半数支配権を得た場 合,

(5)

29

(b)法や契約によって他企業の財務及び営業に対す る支配権を得た場合,

(C)他の企業の取締役会或いは同等の統治検閲の役 員の過半数を指名ないし移動させる権限を得た場 合 ,

(d)他の企業の取締役会或いは同等の統治棟関にお ける投票権の過半数を采配する力を有する場合, である。

(2)企業結合原価 の測定

企業結合 会計処理 の第 1段階 は取得企業 に よる企業結合原価 の測定 であ る。企業結合原 価 は 「被取 得企業 の支配 との交換 に,交換 日 に取 得企業 に よって提供 された資産 ,負債 ま た取 得 企 業 に よって発 行 され た持 分 商 品 の 公 正 価 値 とそ の 他 の コ ス トの合 計 額 」 で あ (3)。 ただ し,企業 結合 は一 回以上 の交換取 引 に よって,すなわち段階的 に支配権 を獲得 す る場合 もあ る。 この ような場合 ,企業結合 原価 は個 々の 交 換 取 引 原価 の総 計 で あ り,

「交換 日」 とはその各交換取 引 日をいい,そ の結果 ,取得企業 が被取 得企業 の支配 を獲得

した 日を 「取 得 日」 とい う(4)0

例 えば,市場 相場のあ る持分証券 の交換 日 の発 行価額 が,稀 な場合 を除 いて,最適証拠

として用 い られ る こ とになろ う。 もし交換 日 にお け る発 行 価 額 が公 正 価 値 の指 標 として 信頼性 に欠 け,他 の証拠 及び評価方法 が よ り 信頼性 あ る測定 が得 られ るこ とが証 明で きる 場 合 は他 の方 法 を考 え る必要 が あ る とされ

る。

(3)企業結合原価の配 分

つ ぎに,企業結合原価 は,取得 日を もって, 以下 に示 す よ うな認 識 規 準 を満 た す被 取 得 企業 の資産 ,負債及び偶発債務 を認識 し,そ の時 の公正価値 を もって配分 され る。そ して, その企業結合原価 と識別可能 な資産 ,負債及 び偶 発債務 の純 公正価値 に対 す る取得企業 の

持分額 とに差異 があ る場合, これはのれん と して処理 され る(5)0

(a)無形資産を除 く資産については,取得企業に 将来経済便益をもたらす可能性が高く,かつ,そ

・の公正価値が信頼性をもって測定できること, (b)偶発債務を除 く負債については,その債務の決

済に必要な経済便益を具現する資源の流出の可能 性が高く,かつ,その公正価値が信頼性をもって 測定できること,

(C)研究開発費を含む無形資産については,それが IAS38号 「無形資産」の定義を満たすこと, (d)偶発債務については,その公正価値が信頼性を

もって測定できること。

これ ら取得 日の資産 ・負債 の評価 において 問題 とな るのは被取 得企業 に少数株主持分 が 存在 す る場合 であ る。少数株主持 分は,取 得 企 業 (親会社)が取 得 日に認 識 した識 別可 能 な資産 , 負債 及 び偶 発 債 務 (純資産)の公 正 価値 に対す る少数株主持分の比例持分 として 測定 (表示)され る。 す な わ ち少数 株主 持 分 も公正価値評 価 され, いわゆ る全面時価評価 され る。 この 点,IAS22が原 則部 分 時 価 評 価 を規定 したの に対 し,大 きな変更点 とな っ てい る(6)0

以上 の ように,原則 として取 得 日に存在 し, 上記 の認 識 規 準 を満 た す識 別 可 能 な資 産 , 負債及び偶発債務 のみが取得企業 に よる企業 結 合 原 価 の 配 分 の 構 成 要 素 とな る の で あ (7)。 ただ し,被取 得企業 の識 別可能 資産 , 負債 には被取 得企業 の財務諸表上 に認識 され ていなか った資産 ,負債 も認識規準 を満 たせ ば識 別可能資産 ・負債 として認識 され る(8)0

特 に,取得 日におけ る被取 得企業 の無形資 産 は,無形資産 の定義 (IAS38無形資産」) 満 たす場 合 において個 別 に認識 され る。物的 実体 を有 しな い非 貨幣資産 は無形資産 の定義 に合致 す る場合 に識 別可能 であ り,のれん と は別個 に認識 されねば な らない。 その識 別可 能性 規準 は (IAS38に規定する)次 の2点 を満

(6)

たす場合である(9)0

a.それがまず,譲渡可能であるか,企業か らあ る いはその他の権利義務関係か ら分離可能であるか どうかにかかわ らず,契約上ないし法的権利か ら 生 じた ものであるか,

b.分離可能 であ る (すなわち,それを企業 か ら 切 り放すか分割で き,それを売却,譲渡,認可, 貸与,或いは交換することがで きる)場合に識別 可能 とされるのである。

次に,取得企業は,被取得企業の偶発債務 について,それが信頼性 をもって認識可能な 場合には企業結合原価配分の要素 として個別 に認識することになる。 もし,その公正価値 が信頼性をもって測定で きない とすれば,結 果 としてのれんの認識額 に影響することにな るし,またその偶発債務について開示する必 要があるとされる。 さらに,当初公正価値で もって個別に認識 された偶発債務は,当初認 識以降,公正価値 をもって測定 し,その公正 価値変動は損益計算書上で認識 されねばな ら ない とした(10.

(1)(2) IASB,ED3 Business Combinations,op. cit.,para.19.

(3)Ibid"para,23, (4)laid.,para.24, (5)Ibid.,para.35.

(6) lASNo.22,para.33.武 田安 弘 「IFRS公開草 案第3号 『企業結合』 とわが国の対応『経 営学 研究』第12巻第4号,15ページ参照。

(7) IASB,ED3BusinessCombinations,op.cit.,

para.40.

(8)1bid.,para.42.

(9)1bid.,para.43.

(10)Ibid.,paras,45‑46.

3.企業結合会計 とのれん

(1)のれんの認識 と測定

企業結合におけるのれんは資産 として認識 され る。 のれんは当初原価 で,すなわち,

企業結合原価 が当初認識 された識 別可能資 産,負債及び偶発債務の純公正価値額 に対す る取得企業の持分を超 える超過額 として測定 され,その金額が資産 として認識 され る(1)0 測定が即認識を意味する。

すなわち,企業結合において取得したのれん は 「個 々には識別 も認識 もできない資産から 生 じる期待将来経済便益 への支払額」(2)を表 わ していることか ら資産 として認識 され,被 取得企業の識別可能資産,負債及び偶発債務 を認識 し,その金額を企業結合原価 か ら控除 して測定 される。 したがってまた,被取得企 業 における識別可能な資産,負債及び偶発債 務が取得 日における認識の規準を満たすかど

うかによってのれん として認識 される額 に影 響することになる。すなわち,のれんは被取 得企業の識別可能資産,負債及び偶発債務を 認識 したのちの残余の原価 に他な らない。

では,のれんの発生 自体は如何に論理づけ られるであろうか,IFRS草案はのれんは次 4つの要因から構成 されるとい う(3)0

被取得企業の 「継続企業」要素の公正価値 ; 継続企業要素は,個別に運用される純資産か ら期 待 されるより,純資産の集合によ り高い利益率を 稼得する被取得企業の能力を表わす。その価値は, 取得企業の純資産のシナジー並びに独占利益を稼 得する能力 と市場参入への障碍を含む市場の不完 全性に関連する要素の ような,その他の便益に由 来する。

被取得企業の純資産を取得企業の純資産 と結合 することにより期待されるシナジーその他の便益 の公正価値 ; これ らのシナジー その他の便益 は,それぞれ企業結合に特有の ものであ り,企業 結合によって異なるシナジー, したがって異なる 価値を生み出す。

取得企業による過払い。

企業結 合原価 または被取 得企業 の識 別可能資 産,負債及び偶発再のいずれかの公正価値の測定 と認識の誤 り,或いは会計基準が識別可能項 目を 公正価値でない金額で測定することを要求 してい ること。

これ らの うち,③ と④の要素はのれんを構

(7)

31

成せず,資産で もない とされる。①及び②が 概念的にのれんを構成 し, これを ̀コアのれ ん' と称 し,資産 としての定義を満たす もの

と位置づけたのである(4)0

(2)のれんと減損問題

のれんは当初認識以降,企業結合で取得 し たのれんの原価か ら減損累計額を控除 して測 定 される。すなわち,企業結合で取得 された のれんについては償却 を行わない。替わ りに,

もし事象ないし環境変化が減損の兆候を示す 場合 には,IAS36「資産の減損」(5)の規定 に 従い年一回ない しそれ以上に減損テス トを行

うことを規定 したのである(6)0

一方,当初認識 された識別可能資産,負債 及び偶発債務の純公正価値 に対する取得企業 の持分が企業結合原価 を超過する場合,すな わち消極のれんについては次の ように処理す るとされる(7)0

(a) 被取得企業の識別可能資産,負債及び 偶発債務の識別 と認識について,また企 業結合原価 について再評価 を行 う。

(b) その再評価を行った後にも残余額があ る場合は直ちに損益 に認識する, とされ る。

これ ら利得は次の ような要因を包含 し ているとする(8)0

(a)企業結合原価の公正価値あるいは被取得企業の 識別可能資産,負債あるいは偶発債務の公正価値 測定の誤差である。特に,被取得企業の識別可能 資産,負債あるいは偶発債務の公正価値に正確に 反映されていなかった被取得企業について将来費 用が発生する可能性が高いことがその ような誤差 の潜在的要田 となる。

(b)取得 した識別可能な純資産について会計基準が 必ず しも公正価値での測定を要請 していない場合 で も,企業結合原価の配分 目的については公正価 値 として扱われること。

(C)格安買収,がそれである。

(1)IASB,ED3BusinessCombinations,op.cit., para.50.

(2)Lbid.,para.51.

(3)IASB,Basisfor Conclusionson ED3 Busi nessCombinations,para.BC97.

(4)Zbid.,paras.BC98‑102.

(5)買収によって発生するのれんは,将来の経済便 益を期待する買収者による支払いによって表わさ れる。その将来の経済便益は,買収 された識別可 能な資産間の相乗作用から又は個 々には財務諸表 上で認識要件 を満たさない資産か ら発生する。の れんは,他の資産又は資産 グループか ら独立 して キ ャッシ ュ ・フローを発生 させない。そのために, 個別資産 としてののれんの回収可能額は算定で き ない。その結果,のれんが減損 している可能性を 示す兆候がある場合には,のれんが所属する資金 生成単位について回収可能額が算定 される。 この 金額 は,当該資金生成単位の帳簿価額 と比較 され 88項 に従 って減損 損失 があ れば認 識 され る

(IASB,IAS36,ImpairmentofAssets.para.

79.)0

(6) IASB,ED3BusinessCombinations,oP.cit., para.54.

(7)Iaid.,para.55. (8)laid.,para.56.

4.企業結合会計基準の特質

(1) 会計方法の統一化

以上,IFRS草案 を手掛 か りに企業結合会 計基準の到達点を検討 したが,その内容 とそ の理論 はア メ リカのSFAS141及び 同142 規定を踏襲 した もの となっている。 ここにま た,同草案の狙い と性質が示 されている。

この基準の特徴の第一は,企業結合の会計 方法のパーチ ェス法への一本化であ り,第二 には,取得を契機 とする取得資産 ・負債 ( び偶発債務)の公正価値評価 と無形資産の認識 拡大であ り,いま一つは,のれんの償却禁止

と減損処理への転換にある といえよう。

第一の,企業結合会計の方法の統一化 とは, また会計基準の国際的統一で もある。2001

(8)

1,FASBは二つの基準SFAS141及び同 142を表 わ したが, これ らは従来の企業結合 会計基準(1)を大 きく転換するものであった(2)0 その基本は会計処理法をパーチ ェス法のみに 限定 し,持分プー リング法を排除 した ことで あった。 このアメリカにおける転換 と軌を一 に して,その延長上に結合会計基準の国際的 統一化 の名の もとにIAS22の改訂 が図 られ ているとみ られるのである。

何故に企業結合に関 してパーチ ェス法また 持分プー リング法 という代替的方法がその会 計基準の変転 にもかかわ らず維持 されて きた のか。それは両会計方法の もつ会計効果の差 異が存在するか らに他な らない。主要にはそ の差異は,パーチ ェス法では資産の公正価値 評価による費用の拡大 と利益の過小表示に比 べ,持分 プー リング法では資産 の簿価計上 (したがって,のれんも計上されない)と,一方で の被結合企業の剰余金の継承による利益の相 対的拡大計上を特徴 とする(3)0

これに対 して,新基準は,すべての企業結 合を直接の買収 として処理すること要求する という基本的アプローチの転換を図ったので ある。 このことか ら当然の こととして,資産 は一般の取得 と同様に,取引当事者の交換価 値で処理 されねばな らない という公正価値会 計の論理が導入されたのである。

(2)無形資産認識の拡大

特徴の第二は,企業結合を契機 とする無形 資産計上の拡大である。従来,パーチ ェス法 に伴 う取得原価 と取得 された識別可能資産負 債の純公正価値の差額はのれん (消極のれん)

して一括 して認識 された。 しかし,のれんに は多分に取得無形資産が含まれている。新基 準案は,無形資産をのれんか ら分離 して認識 す る厳密 な規準 を規定 す るこ とに よって, 一方ののれんを (もはや償却の対象とならない)

不確定 の耐用年数資産 と位置づけたのであ る。

では,のれん とその他の無形資産 とは如何 に識別 されるのか。それが分離可能であるか, む しろ第一義的には契約上あるいはその他法 的権利か ら生 じた ものであるか という 「認識 可能性規準」(identifiabilitycriterion)(4) 両者を区別する特質 としたのである。 このよ うに,無形資産が契約上あるいはその他法的 権利か ら生 じたものであるとい うことが,そ れをのれん と区別する特質である。 したがっ て,企業結合において取得され, この性質を 有するものはのれん と切 り放 して資産 として 認識すべ きとしたのである(5)0

すなわち,のれん 自体は他の資産 ない し 資産 グループか ら切 り放 されて識 別可能 な キ ャッシュ ・フローを生み出さないのに対 し て,一定の無形資産は直接に識別可能なキャッ シュ ・フローを生み出す可能性が高い。 この 信頼性ある測定可能性 こそ無形資産の識別を 可能 とし,それが財務諸表の有用性 を高める と, この ようにのれん と区別される無形資産 の計上拡大を論理づけたのである(6)0

(3) のれんの減損テス トの論理

第三の特徴は,企業結合に伴 うのれんの認 識以後の会計処理の変更である。IFRS草案 は,企業結合において取得されたのれんは, 認識後は原価か ら減損累計を控除 した額で計 上されるとした。すなわち,のれんは もはや 償却は認め られず,毎期の減損テス トとして 行われなければな らない。IAS22,「のれ んは,規則的な方法でその有効期間にわたっ て償却 しなければな らないとし,有効期間 20年を超 えない範囲で償却期間の最適見積 もりを要求 した。ただし,のれんの償却期間 20年 をこえた場合は,少な くとも毎年 1回は その回収可能額を計算することと減損テス ト

参照

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