アメリカにおける企業結合会計基準の変遷 : 合併の実質とは何か
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(2) 88@ (146. 横浜経営研究. 第四巻. 審議会 (AccounlingPrincip]esBoard: APB) の 意見菩 第 16 号 ([email protected]: APBO 16) が 企業結合の会計基準とな っていたが,そこで も持分 プ一 リング法の適用に 対しては 12 の要件. が課されていた.. しかしそのような 制約にも. 第 2 ソ 3 号 (2001) する少数株主の 持分が清算される 一万,親会社. と子会社とを 合わせた経済実体にはまったく 変. 化がない. この取引の実質もそれを 株主間取引 とみなす観点と 会社 問 取引とみなす 観点のそれ ぞ ねからとらえられるのであ る.前者の観点に. かかわらず,持分プ一 リング法は経営者にとっ. ょ ればその実質は. よ. る少数株主持分の. て好ましい会計方法とみなされ 積極的に利用さ れてきた ". ところが, 1999 年 9 月に財務会計基準審議会. 取得であ るが,後者の観点に. ょ ればそれは事業. (.FinancialAccounlingSlandar.dsBoard:FASB) に. とらえられているのか ,その点を明らかにしな がら, この会計基準の - 貫性を問うことが 本稿. よって公表された 公開草案では ,企業結合の会 計万法を買収 法 に一本化すること ,つまり持分 プ一 リング法の適用を 禁止することが 提案され. た.会計方法を統一することによって 情報の比 較 可能性を高めることがその 提案の目的であ っ たが,そこでは持分. プ一 リング法の妥当,性がこ. 親会社に. に対する支配の 移転しない取引であ る. SFAS 141 ではこの取引の 実質がどのような 観点から. の 第二の課題であ る.. 2. 合併の実質とは 何か. 一 2 つの観点 一. 合併とは,会社が他の会社の株式を 100% 取. 得してその会社の 法人格を消滅させるとともに. とごとく否定され ,買収法への一本化が主張さ. その資産と負債を 包括的に承継する 取引であ. れたのであ る.そしてついに, 2001 年 6 月に公 表された財務会計基準書箱 141 号 (Slatement of. 前述のとおり ,株式交換による 合併では,合併 会社と 被 合併会社株主との 間で,合併会社の発. Financial@ Accounting@. 付 する新株と 被 合併会社株式とが 交換される。. Standards@ No , 141:@ SFAS. l4l) によって,すべての企業結合に買収 法が. る. リング法はアメリカの 会計基準から 排除された. 合併会社がその 新株と引き換えに 被 合併会社株 式を 100% 取得した結果, 被 合併会社の事業に 対する支配を 獲得するならば ,その合併の実質. が,それは同時に持分 プ一 リング法の論理あ. は ,合併会社による 被 合併会社の取得であ. る. もちろん,合併会社がいっも取得会社であ. る. 適用されることになった. これにより持分 プ一 る. いは観点が排除されたことを 意味している.買 収法への一本化は ,持分プ一 リング法の考え 方. た 以上,会計基準は買収法の考え 方にもとづ い. とはかぎらない. いわゆる逆取得 (reverse acquisition)のように, 被 合併会社が合併会社 の事業に対する 支配を獲得するケースもあ る. ただ,いずれにしても ,合併を会社間取引とみ. て矛盾なく構成されて い なければならない.そ. なしたときには ,ほとんどのケースにおいてそ. れと矛盾する 会計方法が併存していると 会計ル. の 実質は一方に. - 貫性は保たれないのであ る. そこで, 本稿では,子会社株式の 追加取得に対する 会計. ながら,ひわりる対等合併 (mergerofequals) のように,支配を 獲得した会社を 識別すること のできない合併も 存在する.つまり ,合併を会 社間 取引とみなしても ,その実質が取得とはい. を否定することによって 達成されたのであ る. ただし持分 プ一 リング法の考え 方を否定し. ールの. 処理に焦点をあ てながら, SFAS. l41 の一貫性. を検討する.親会社が 少数株主から 子会社株式. よ. る他方の取得となる. しかし. を追加取得してもそれは 企業結合とはみなされ ないが, この取引は前述した 株式交換による 合. えないケースも 存在するのであ る.. 併と本質的に 同じ問題を提起している.親会社. に合併会社株式を 取得する. 合併会社株式は ,. が 現金を対価として 少数株主から 子会社株式を 追加取得するとき ,そこでは子会社の事業に対. 合併後は,合併会社事業と 被 合併会社事業とを. さて, 被 合併会社株主はその 株式と引き換え. 合わせた事業成果に 対する請求権 であ る. した.
(3) アメリ ヵ における企業結合会計基準の. がって, 被 合併会社株主は 合併会社株主ととも に合併後の会社のリスクとべネフィットを 共有. 変遷 (大雄. 智). 147. 89. することになる・つまり , 被 合併会社株主は 合. その事業に対する 株主持分も清算される.それ らを会社間取引とみなしても 株主 問 取引とみな しても,その 実質は取得なのであ る. ところが,. 併会社株式の 所有をとおして 引き続き事業の. 株式交換による 合併や分割については ,それを. り. スク とべネフィットを 保持するのであ る. もち. 会社間取引とみなすのか ,株主間取引とみなす. ろん,株式交換によって 複合併会社株主は 合併 前に所有していた 持分の一部を 合併会社株主に 譲渡しそれと 引き換えに合併会社株主が 所有. のかといった 観点の違 い から異なる実質がとら. していた持分の 一部を取得する ,. よって, 被 合. 併会社株主の 持分の内容は 当然変化しているは ずであ る・ただし, 被 合併会社株主はその 持分 が変質してもなお. 3. 買収 法 と持分 プ一 リング 法. ,それを清算せずに 保有しつ. づけるのであ る.その意味で被合併会社の 株主 持分は合併後も 継続するといってよい ,いうま でもなく, このことは合併会社株主についても あ てはまる. したがって,合併会社株主にとっ ても 被 合併会社株主にとっても 合併はそれぞれ の 持分を結合する 取引にすぎないのであ る. この. えられることになる.次節では ,それぞれの観 点からとらえられた 合併の実質が ,それぞれど のような会計方法を 導くことになるのか 確認し ておこう.. 26 に,株式交換によ る合併では,会社. 間で事業に対する 支配が移転する 一方,各会社 の株主持分は 継続する.同じことは 会社分割に ついてもあ てはまる・会社分割では ,分割会社 が特定の事業を 承継会社に移転し 承継会社は その新株を分割会社株主に 対して割り当てる. 分割会社自体は 承継会社株式を 所有しないため ,. 分割事業に対する 支配は分割会社から 承継会社 へ移転する・ 一方,分割会社株主は 承継会社が 発行する新株を 取得する・承継会社株式は ,分 割後は,承継会社の事業と分割事業とを 合わせ た事業成果に 対する請求権 であ る. したがって ,. 分割会社株主は 承継会社株主とともに ,分割後 の承継会社のリスクとべネフィットを 共有する ことになる・つまり ,分割会社株主は承継会社 株式の所有をとおして 引き続き事業のリスク と ベネフィットを 保持するのであ る. このように,株式交換による 合併や分割にお. 前述のとおり ,合併を会社問 取引とみなせば ,. その実質は合併会社による 被 合併会社の取得で あ る・その観点にしたがった 会計万法が買収 法 であ る。, ・いま,株式交換によってⅩ社がY 社. を吸収合併するとしよう. X 社の資産の帳 簿価 額を A" 負債の帳 簿価額を L,, 資本 (拠出資 本と 留保利益の合計 ) を E, とし, Y 社の資産の 帳 簿価額を A,, 負債の帳 簿価額を L,, 資本を E. 「とする・. とすると,買収法 のもとでは, X 会社の拠出資 本がⅤだけ増加する. また, Y 社から承継する. 資産の公正価値総額を」 ボ・,負債の公正価値総 額を Ly とすると,それぞれがⅩ社の 資産と負債 に加えられる. さらに,取得コストであ 総額よりも大きければ ,. その差額がのれん. (goodWll) として資産計上される・つまり ), め れんを G とすると, G であ り, G ノ. O. 二 Ⅰァ一. (A 」. 丁. -TlL. 芥. Ⅰ. であ る場合にはそれがⅩ社の 資. 産に加えられるのであ る,・.結局, Y 社との合. 併によってⅩ社のバランスシートの 資産,負債, 資本は,それぞれ A@ , +A*y+G. 一方で,各会社の株主持分は継続する.それに 会社間で事業に 対する支配が 移転すると同時に ,. る新市覚;. の時価総額のほうが 承継した純資産の 公正価値. いては,会社間で事業に対する 支配が移転する 対して現金を 対価とする合併や 営業譲受では ,. X 社が発行する 新株の時価総額を レ,. , Lv+L@ ,, E@+V. となる.. このように,. 買りZ. 法では,合併会社の拠出資.
(4) 90. く. 148. 第 22 巻. 横浜経営研究. Ⅰ. 木 が合併にあ たって発行される 新株の時価総額. だけ増加し,. 被 合併会社の資産と 負債のそれぞ. れが公正価値に 評価替えされた. ぅ. えで合併会社. に加えられる.ただし ,合併会社の拠出資本が 新株の時価総額だけ 増加するためには ,本来そ. 第 2 ソ 3 号⑫ 001). らなかった,・.かつてはのれんの償却に よ る費 用が年度利益を 圧縮していたのであ る・ また, 前述のと おザ), 持分 プ一 リング法では 被 合併会 社の留保利益を 受け継ぐことができるが ,買収 法 ではそれができない. したがって,通常,買 収 法を適用すると 持分 プ一 リング法を適用した. れと同額の資金が 実際に調達されていなければ ならないはずであ る. よって,買収法 では,株. 場合よりも合併後の 会社の年度利益と 留保利益. 式交換による 合併が,時価発行増資による 資金. が小さくなる.その点で買収法は 経営者にとっ. 調達とその資金による 被 合併会社の取得という. て不利な会計方法なのであ る。. 2. つの取引の合成とみなされたうえで 会計処理. されていることになる.. さて,合併を 株主間取引とみなせば ,その実 質は合併会社の 株主持分 と被 合併会社の株主持. 分との結合であ った.その観点にしたがった 会 計 方法が持分 プ一 リング法であ. る. 7)・この方法. ・・. このように,買収法 と持分 プ一 リング 法 とで は合併後の会社の 利益に対する 影響が大きく 異 なる.合併の実質に対する 観点の違 いが 異なる 会計方法を導き ,それが異なる利益情報を生む のであ る.それではなぜ合併を会社間取引とみ なしたときには 買収 法が ,株主間取引とみなし. に よ ると,合併後のX 社の資産,負債,資本は ,. たときには持分 プ一 リング法が導かれるのであ. それぞれ. ろうか.次節ではその 点を,それぞれの会計方 法が共有する 原則を明らかにしながら 確認して. Av+Af4Y., Ly+Ly.., E,+E,. みたい.. となる.つまり ,持分プ一 リング法では ,合併 会社の資本が 被合併会社の 資本の帳 簿価額だけ 増加し, 被 合併会社の資産と 負債のそれぞれが 帳 簿価額のまま 合併会社に加えられる・ 拠出資 本と 留保利益の合計が 資本であ. るから,持分プ. 一 リング法では 被 合併会社の留保利益を 受け継. 4. 事業の継続性と 利益計算 現行の企業会計では ,事業用資産・ 負債は原 則として評価替えされない・ 事業の利益は ,取 得 原価べ ー スの減価償却 費 や利子費用を 実現 HX 益に対応させることによって 測定され,仮に資. ,それは事. ぐこともできる. ここで, 2 つの会計方法の 利益に対する 影響. 業の成果とはみなされない・. を比較しておこう.. る間は,事業活動によってキャッシュを. 被 合併会社から 承継される. 産に保有利得が 生じていたとしても. 事業が継続してい 獲得し. 価額べ ー スの減価償却が 継続する持分 プ一 リン. ないかぎり,企業の 利益も資本も 増加しないの であ る.それに対して ,事業を中断し,資産を 市場で売却したときには ,その資産に生じてい た保有利得が 売却益としてすべて 実現する,そ. グ法. してその時点で 初めて取得原価べ ー スの利益 計. 固定資産の公正価値がその 帳 簿価額を上回ると き,買収法を 適用した後はその 公正価値をべ ー スとした減価償却が 行われる・そのため. ,帳簿. よりもそれだけ 合併後に計上される 費用が. 大きくなる,すなわち 年度利益が小さくなる. 算も中断されることになる・このように ,事業. さらに,買収法 のもとで計上されたのれんを. の継続性と利益測定べ ー スの継続性は 原則とし. 償. 却しなければならないとすると ,その償却によ る費用も追加される. 2001 年 6 月に公表された SFAS l42 によってのれんは 償却されないこと になったが,それまでの会計基準であ る APBO 17 のもとでは 40 年以内に償却されなければな. て 対 G しているのであ る.. さて,合併を 買収 法 で処理するとき , 被 合併 会社の資産と 負債は公正価値に 評価替えされた うえで合併会社に 加えられる・ 合併にあ たって 発行された新株の 時価総額が合併会社の 拠出資.
(5) アメリカにおける 企業結合会計基準の 変遷 (大雄. 本に加えられ , 被 合併会社の留保利益が 合併会 社に受け継がれることはない. したがって, 被 合併会社の収得原価べ. ー. 智). (149@ 91. 5. 会計基準の変遷 一株主持分の 継続性と企業結合会計. スの利益計算はそこで. 中断され,合併会社のもとでフレッシュ・スタ ートすることになる ,それに対して,合併を持 分プ一 リング法で処理すると. , 被 合併会社の資. 産と負債がその 帳 簿価額のまま 合併会社に加え られる. さらに合併会社は 被合併会社の 留保利 益を受け継ぐこともできる. したがって, 被合 併 会社の取得原価べ ー スの利益計算は 合併後も 合併会社のもとで 継続するのであ る.. このように,買収法 では 被 合併会社の取得原 価べ ー スの利益計算が 中断されるのに 対し,持 分 プ一 リング法ではそれが 継続する.双者が事 業の中断を与件とした 会計処理となっているの に対し,後者は事業の継続が 与件となっている. 5. 「. 1940 年代までの合併会計 アメリ ヵ の企業結合会計に 関する学説や 実務,. 基準を考察した 諸研究, W),alt (1963), Langer (1978),武田 (198差, Rayburnand P0w.ers(1991), 伊藤 (1996: 第 5 章 ), 黒 U (1999: 第 5 章 ) による と, 1940 年代 中 ごろまでは,一般に ,合併は現 物出資あ るいは資産取得とみなされ ,買収法的 な 会計処理が適用されていたようであ る.合併 会社の拠出資本は 合併にあ たって発行する 新株 の総額だけ増加し 被 合併会社の留保利益が 合 併会社に受け 継がれることはなかった.ただし 当時は買収価格と 被 取得会社純資産の 帳 簿価額 との差額を合併直後に 資本剰余金や 留保利益に Ⅰ. 前述したとおり ,買収法は合併を 会社間取引と みなす観点から 導かれている.その観点は,会 社間での事業に 対する支配の 移転にもとづいて 合併の実質をとらえようとするものであ る.事. 法は経営者にとってとくに 不利な会計方法では. 業が株主ではなく. なかったのであ る.. 会社によって 支配されている. とみなせば,会社と 株主との取引であ る合併は 会社間取引に 還元され,事業に対する支配の 移 転が事業の中断を 意味する.買収法 はそのよう な 論理にしたがった 会計方法であ ろう. それに対して ,持分プ一 リング法は合併を 株 主間取引とみなす 観点から導かれている.その 観点は,合併当事会社の 株主持分の継続性にも. チャージして 消却することが 認められていた ,。‥. そのような処理をすれば ,合併後の利益に対す る影響は持分 プ一 リング 法 と変わらない.買収. しかし. 関係会社間の 合併のように 単に法人. 格が変化するにすぎない 合併については ,早く. から,買収法 とは異なる会計方法が 主張されて いた・そこでの 主な論点は,合併後の 会社. (存. 続会社または 新設会社 ) が合併当事会社の 留保 利益を受け継ぐことができるのかどうかという. いわば留保利益の 承継問題であ った " . 例え. とづいて合併の 実質をとらえようとするもので. ば ,共通の親会社に 支配されている 2 つの子会. あ る.事業が会社ではなく. 株主によって 支配さ れているとみなせば ,会社と株主との取引であ る合併は株主間取引に 還元され,株主持分の 継 続は事業の継続を 意味する.株主持分が清算さ. 社が合併して 新会社が設立されても ,親会社と 子会社とを合わせた 経済実体には 実質的な変化. れないかぎり 事業も継続するのであ る.持分プ. に 資本化されていたようであ る.新会社は留保. 一. リング法はそのような 論理にしたがった 会計. 方法であ ろう. では, アメリカの企業結合会計基準において. がない・それにもかかわらず , 1920 年代までは,. 合併当事会社の 留保利益は新会社の 設立ととも 利益を持って 事業を開始することはできないと いう原則にしたがっていたのであ る. ところが,. 1920 年代未ごろから ,関係会社間の合併のよう. 合併の実質はどのような 観点からとらえられて. に新しい経済実体が 形成されない 合併について. きたのであ ろうか.それを 確かめることが 次の. は ,その実質にしたがって ,合併当事会社の留. 課題であ る.. 保利益を合併後の 会社の留保利益として 受け継.
(6) 92 (150). 横浜経営研究. 第 22 巻. 第 2 / 3 ナ は001) ヰ. ぐことが認められるようになった. したがって,. でに持分 プ一 リング法に近い 会計処理が主張さ. 明らかに大規模会社が 小規模会社を 支配し ている場合には ,結合後の会社はその 大規 模会社の留保利益のみを 受け継ぐことがで きる.つまり ,小規模会社の留保利益は受. れていたのであ る.. け継がれない.. 持分 プ一 リング法が合併の 会計万法として 確立. される前に,関係会社間の 合併については ,す. ただし株式交換による 関係会社間の 合併で は,経済実体のみならず 合併当事会社の 株主持 分も継続する. したがって,それを 会社間取引 とみなしても 株主間取引とみなしても ,その実 質は事業の継続であ る.それに対して ,現金を 対価とする関係会社間の 合併では, 被 合併会社 の事業に対する 株主持分が清算される 一方,会 社間での支配の 移転はない.それは株式交換に. 3. 同一の親会社によって 完全に所有されて いる 2 つの子会社が 合併する場合には ,合. 併後の会社は. 2. つの子会社の 留保利益を受. け継ぐことができる.. 4. 親子会社間の 合併については ,合併後の 会社は親会社と 子会社の留保利益を 受け継 ぐことができる.. 5. 関係会社間の 合併であ っても,子会社に. よる合併と本質的に 同じ問題を提起している. 重要な少数株主持分があ る場合には,留保. ただし,それについては 第 6 節で検討すること. 利益の承継は 認められない.. にし以下では , 1940 年代 中 ごろ以降,合併の. これにしたがうと ,合併当事会社の相対的規 模に格差があ る場合には,その合併が大規模会 社に よ る小規模会社の 取得とみなされ ,大規模 会社の留保利益のみが 受け継がれる・それ 以外 の ケースでは,原則として ,株式交換による 合. る見解が提示されていた. しかしながら ,それ. 併であ っても関係会社間の 合併でないかぎり. でもなお,留保利益の 処理に関する 合意は形成. 合 併 当事会社の留保利益が 合併後の会社に 受け. されていなかったようであ る. そこで, werntz. 継がれることはない.独立会社間の 合併におい. (1945) は,企業結合". の実質を判断するため. て ,持分プ一 リング法的な 会計処理が適用され. の規準を示しながら 留保利益の承継問題を 再考. ることはないのであ る.株主持分の継続性にも とづいて合併の 実質をとらえようとする 観点は. している.そこでは,. 4 つの要素,すなわち. ・. 実質がどのような 観点からとらえられてきたの か明らかにしよう. 前述のとおり , 1920 年代未ごろから ,関係会 社 間の合併については ,留保利益の承継を認め. (1) 結合当事会社の 相対的規模, (2) 結合当事 会社問の関係 (affiliation) の程度, (3) 結合に よる株主持分の 変化の程度, (4) 結合前におけ. そこでは重視されていない.. る結合当事会社間の 事業関係の性質と 程度, を 考慮することによって 企業結合の実質が 判断さ. 「買収」とに 分類している.そこでは,結合当. れている. (Werntz,1945:p.380). その実質にし. たがって導かれた 会計処理を要約すると 以下の とおりであ る (Wefntz,194%p.38 ヵ・ 1. 独立会社 (unaffⅢ aledcompan@es)問の結. それに対して , Wilcox (1950) は,株主持分 の 継続性にもとづいて 企業結合を「合併」と 事会社の株主持分の 全部あ るいは実質的全部が. 合併後の会社において 継続する取引を「合併」 と定義し,一方,売却によって 所有権 が実質的 に 変化する取引を「買収」 と定義している. (Wilcox,1950:pp.l02-103). そして,前者につ. 合については ,すべての結合当事会社の 留. いては,合併当事会社の 留保利益が合併後の 会. 保利益を結合後の 会社の資本剰余金とすべ きであ る.つまり,すべての 結合当事会社. 祖: に受け継がれ. の留保利益が 受け継がれない. 2. - 万の会社の相対自. り. 規模が非常に 小さく. ,その資産と負債も帳 簿価額の まま合併後の 会社に加えられる.後者について は, 被 取得会社の純資産が 買収価額 (取得原価 ) で取得会社に 加えられる.「合併」には 持分 プ.
(7) アメリカにおける 企業結合会 計 基準の変遷. 一. リング法が「買収」には 買収 法 がそれぞれ適. 用されるといってもよい.. (大雄. (151 93. 智). 小さい会社については 事業の継続性が 認められ て 取得原価べ ー スの利益計算が 継続するのに 対. これにしたがうと ,株式交換による 合併はつ. して,株主持分の 変質が大きい 会社については. #a に「合併」とみなされ ,現金を対価とする 合. 事業の中断が 想定されてその 資産と負債が 公正. 併はつねに「買収」とみなされることになる. 価値に評価替えされるのであ る・」.. しかしながら , WiIcox 1g50) では,たとえ合 併当事会社の 株主の実質的全部が 引き続き合併. ただし,合併を 会社間取引という. よ. りはむし. 後の会社の株主となったとしても ,その持分に. ろ株主間取引とみなしその 実質を株主持分の 継続性にもとづいてとらえる 考え方は,その後. 重大な変化があ る場合には,その 合併の実質は. 公表される会計基準にも 受け継がれている.そ. 「買収」とみなされる (Wlcox.1950:p. 103) ".. つま ), 合併当事会社の 株主が合併後の 会社の リスクとべネフィットを 共有していても ,それ. こで,以下では , 1950 年代にアメリカ 会計士協 会 (AmericanInStitulteofAccountants: AIA) ". だけでは「合併」. ことにしよう. ザ. とはみなされないのであ. る. に. よって公表された 企業結合会計基準を 概観する. 株式保有にともなうリスクとべネフィットが 合 併前 と合併後で大きく 変化しないことが「合併」. 5. 2. 会計研究公報第 40 号・第 43 号・第 48 号. とみなされるための 必要条件になっているとい. 1950 年, AIA の会計手続委員会は ,会計研究. ってもよい・ただし. 前述したように ,合併後. 公報第 40 号 (AccountingRescarchBullclinsN0. ・. 40:. とを合わせた 事業成果に対する 請求権 であ る. 40) を公表した. これは AlA に よ る企業結 合会計に関する 最初の公式見解であ る.そこで. したがって, 被 合併会社株主についても 合併会. は,企業結合が持分 プ一 リングと買収という. の会社の株式は 合併会社事業と 被 合併会社事業. ARB. 2. 社株主についても 合併前と合併後では ,当然, つのタイプに 分類され,それぞれのタイプに 応 その持分の内容は 変化しているはずであ る.持 じた会計方法が 示されている. ARR 40 では, 分が変質するという 点で両者に違いはないので. 当事会社の株主持分の 全部あ るいは実質的全部. あ る. しかし仮に,合併によって 被 合併会社の. がそのまま存続会社や 新設会社のもとで 継続す. 株主持分が著しく 変質し,合併会社の株主持分. る合併を持分 プ一 リングとし,一方, 被 取得会. がそれほど変質しないとしたら ,両者を対等に. 社の株主持分の 一部あ るいは全部が 清算される. あ っ かぅ ことはできない.そこで, WilcoX(l950). 合併を買収としている. では, このような合併の 実質を, 被 合併会社の 株主持分の清算を 擬制して,「買収」とみなす. したがって, ARB 40 でも,基本的には,株 主持分の継続性にもとづいて 合併の実質がとら. のであ る. の継続性にもとづいて 合併の実質がとらえられ. えられている.合併会社の 新株が 被 合併会社の 株主に対してその 持分割合に比例して 交付され ているかぎり ,合併会社の株主持分はもちろん. ているものの ,そこでの株主持分の 継続性とい. 被 合併会社の株主持分も 継続する. しかしなが. このように, Wilcox (l950) では,株主持分. 概念は合併前の 持分と合併後の 持分との同質. (ARB40. ・. par.. 刀. ・. 性まで含意している.本稿では , これまで,合. ら,そのような 株式交換による 合併のすべてが 持分 プ一 リングとみなされるわけではない.. 併を株主間取引とみなす 観点からは持分 プ一. ARB. ぅ. ング法が. ,. リ. 40 では, 株主- 持分の継続性だけでなく. 会社間取引とみなす 観点からは買収. 合併当事会社の 相対的規模,経営者や 経営支配. 法 が導かれると 述べてきた. ところが, w Ⅱ coX. ガめ 継続性,事業の類似性や補完性といった 要. (1950) では,合併を株主間取引とみなしても. 素も考慮した. なお買収 法 が導かれている.株主持分の 変質が. とになっている. ぅ. えで合併の実質が 判断されるこ (ARB40. , par. 3). 例えば, 株.
(8) 94 (152. 横浜経営研究. 第 22 巻. 第 2/ 3 号 (2001). 式 交換による合併であ っても,合併当事会社の 1. つが他の当事会社と 比較してその 規模がきわ. めて小さい場合には ,その合併は持分 プ一 リン. グではなく買収,つまり 大規模会社による 小規 模会社の取得とみなされる.そこでは 事業に対 する支配が小規模会社から 大規模会社へ 移転し たとれなされるのであ る. また,合併当事会社 の. 1. っが 合併後の会社に 対する経営支配 力 をほ. このように, ARB. 4(@では,株主持分が継続. し,かっ会社間 での支配の移転が 明らかでな い. 合併には持分 プ一 リング法が適用され ,会社間 での支配の移転が 明らかな合併には 買収 法 が適 用される. この基本的な 考え方は,その後公表 された ARB43. や ARB48. にも受け継がれている.. 1953 年に公表された ARB 43 は, ATA が 1939 年から 53 年にかけて公表した ARB l から ARB. とんどもたない 場合にもその 合併は買収とみな. 42 のうち用語委員会によって 報告された. される.. 公報を除く 34 の公報を改訂した. つまり, ARB 4C@では,株主持分の継続性だ けでなく会社間での 支配の移転をも 考慮するこ. とによって合併の 実質をとらえようとしている.. そこでは,合併を 株主間取引とみなす. 観点と会. 社間 取引とみなす 観点とが併存しているといっ てよい.ただし 前述のとおり ,持分プ一 リン. グと買収との 区別は,基本的には,株主持分の 継続性にもとづいている.持分 プ一 リングの 本. 質は株主持分の 継続であ り,買収の本質はその 清算なのであ る. したがって, ARB 40 は, 合 併を株主間取引とみなした ぅ えで,それを持分. たものであ る. この ARB. ぅ. 8. つの. えで再編集し. 43 の第 5 章では, め. れんを合併直後に 留保利益や資本剰余金にチャ ージして消却することを 禁止している (ARB 43,chap.5,par.g). のれんは償却されるか , そ うでなければ 繰り越され,価値がなくなった 時 点で消却されることになったのであ る (ARB 43,chap.5,pars.5-8). また,第7 章 C@w7@apW 、, は , 合併が持分 プ一 リングとみなされた 場合,存続 会社は合併が 行われた期間およびその 前の期間 の 利益を合併べ ー スで表示および 付表示するよ. う求めている. (ARB43,chap.7c,par.7). その. プ一 リングと買収とに 分類しているといった ほ. 他の内容については , ARR. うがよいかもしれない. 前述のとおり ,事業が株主によって 支配され. る. ているとみなせば ,株主持分が継続しているか. は ,株主持分の継続性にもとづ い て合併の実質. ぎりその事業も 継続する.そして,事業が継続. がとらえられている (ARB48,pars.3-4).ただ し,持分プ一 リングと買収との 区別は,株主持. しているかぎり 収得原価べ ー スの利益計算も 継. 続 する.株式交換による 合併であ れば,合併会 社の株主持分も 被合併会社の 株主持分も継続す. 1957 年に公表された ARR. 4f1とほぼ同じであ 48 でも,基本的に. 分の継続性だけでなく ,経営者や経営支配力 め. 併後も継続することになる.ただし ,会社間で の 支配の移転が 明らかな場合には ,たとえ被 取 得会社の株主がその 株式と引き換えに 取得会社 株式を受け取っていても ,それは持分の継続と. 継続性,合併当事会社の相対的規模などをも 考 慮した ぅ えでなされる (ARB48,par.6) ". 相 対的規模については ,例えば,一会社の 株主が 存続会社の議決権 の 90% から 95% あ るいはそれ 以上を獲得するような 場合には,その会社が明 らかに支配会社であ ると述べられている (ARB. はみなされない.むしろ , 被 取得会社の株主が. 48,par.6).. るため,両社の取得原価べ ー スの利益計算は 合. その持分を清算したうえで 取得会社に投資した とみなされるのであ る.その擬制のもとでは ,. このように, ARB40. , ARB43,. ARB48. のい. ずれにおいても ,株主持分の継続性と会社間で の支配の移転という 2 つの観点にもとづいて 持. 被 取得会社の事業もそこで 清算されたとみなさ れる. 被 取得会社の事業についての 利益計算は. 分プ一 リングと買収とが 区別されている ,. そこでフレッシュ・スタートするのであ る.. ろが, 1970 年に会計原則審議会. とこ. (APB Ⅰによっ.
(9) アメリカにおける 企業結合会計基準の 変遷 (大雄. て 公表された意見書館 16 号 (APBO. 智). 153@ 95. @6) では, 後者の観点が 除かれている.すなわち ,合併当 事会社の相対的規模,経営者や 経営支配 力の 継. 持分の結合という 2 つの観点にもとづいて 合併,. 続性といった 要素が持分 プ一 リングと買収との. 移転という観点は 排除されている. ただし合 併が会社間取引というよりはむしろ 株主間取引 とみなされ,基本的には ,株主持分の継続性と いう観点からその 実質がとらえられている 点は. 区別にあ たって考慮されないのであ. 5. 3. 会計原則審議会意見書票「. る. "... 6 号と. 財務会計基準書票「 4] 号 APBO. @6 では,現金の支払いまたはその 他の. の実質をとらえようとしている.そこでは ,そ れまでの会計基準にみられた 会社間での支配の. それまでの基準と 変わらない. ところが, 2001 年 6 月に財務会計基準審議会. 一方,議決権付普通株式が 発行され持分の 結合. (FASB) によって公表された 基準 書 第 141 号 (SFAS @41) では,合併が株主間取引ではなく 会社間取引とみなされている (SFAS l41,par.. をともな. B39). 合併を株主間取引とみなす 持分 プ一. 資産の譲渡,負債の 引き受けをともなう 企業結 合については 買収法の考え 方が説得的であ. う. @). 企業結合については 持分 プ一 リング. リ. 法の考え方が 説得的であ ると述べられている. ング法では, 被 合併会社の資産・. (APBO 16,par.42). また,持分プ一 リング 法. 簿価額のまま 受け継がれ,合併会社と 被 合併会. によって会計処理される 企業結合の本質は 株式. 社との間で交換される 財の価値が認識されない.. 交換による議決権 付普通株式持分の 結合であ. SFAS. る. と明記されている (APBO 16,par.47). そして, 基本的には,合併会社の 発行する議決権 付普通 株式と 被 合併会社の議決権 付 普通株式の 90% 以 上 とが単一の取引によって 交換されたときに 持 分の結合が成立するとしている (APBO16,par. 47). この意味での 持分の結合が 成立しないか ぎり,持分プ一 リング法を適用することはでき ない.. いま,株式交換によってⅩ社が Y 社を吸収合 併するとしよう. ただしⅩ社はすでに Y 社株 式を保有しており ,. その持株比率を. 0(0 . 1 く. Q く l) と仮定する. このとき,Ⅹ社 株主.と Y 社. 負債がその 帳. l41 は,それを取得原価主義会計と矛盾. する会計万法とみなし 合併を株主間取引とみ る観点を否定している (SFAS l41, par.B62). ただし,前述したとおり ,合併を会社間取引と みなしても,いわゆる対等合併や真の 合併 (true mergef) のように支配獲得会社を 識別すること のできない合併も 存在しうる.そのような 合併 に対しては買収 法 以外の会計方法を 適用する 会 弛 もあ るはずだが, SFAS l41 では,そのよう な合併は事実上存在しないと 判断され,すべて の企業結合に 買収法を適用することが 規定され ている. このように, SFAS. l41 では,合併が. 株主の持分は 清算されずに 継続するが, APBO. 会社間取引とみなされ ,事実上すべてのケース において一会社から 他社へ事業に 対する支配が. 16 のいう持分の 結合は成立しない. したがっ. 移転すると考えられている. これは APRO. て, この合併に持分 プ一 リング法を適用するこ. は対照的であ る.前述のとおり , APBO. とはできないのであ る. APBO l6 によると,株 式交換の万法や 合併当事会社の 属性などについ. 会社間での支配の 移転という観点が 排除されて. てのはの要件をすべて 満たした合併にのみ 持分. 16 と 16 では. い たのであ る.. また,合併を 株主間取引ではなく 会社間取引. プ一 リング法が適用され ,その他の合併にはす. とみなすことにより , SFAS. べで買収 法 が適用される (APBOl6,parS.44 円 8). の継続性にもとづいてその 実質をとらえる 観点. この 12 の要件は,基本的には ,持分の継続と 結. が排除されている. それは ARB. 合を求めたものといってよい. このように, APBO. 16 では,持分の継続性と. l41 では株主持分 40 から APBO. l6にかけて維持されてきた 観点を否定するもの であ り,同時に,事業の 継続性に対する 考え方.
(10) 96@ (154). 横浜経営研究. を 転換するものであ. 第22 巻. る.ただし,持分 プ一 リン. グ法の考え方を 否定した以上,会計基準は 買収 法の考え方にもとづいて 矛盾なく構成されて い なければならない.それと 矛盾するような 会計. 万法が併存していると 会計ルールの 一貫性が保 ,子会社 たれないのであ る.そこで,次節では 株式の追加取得に 対する会計処理に 焦点をあ て ながら, SFAS l4K の一貫性を検討してみたい.. 6. 子会社株式の 追加取得とその 会計処理 第. 5. 節で確認したとおり ,アメリヵ の企業結. 合会計基準の 変遷を概観すると. ,かっては,基. 本的には株主持分の 継続性という 観点から合併 の実質がとらえられていたが ,近年ではその観 点が排除されていることがわかる.. そこでは,. 第 2/ 3 号 (2001). 会計基準であ る APBO. 16 では, この取引には 買. (APBO 16,par.43). それは,合併を株主 問 取引とみな し株主持分の 継続性という 観点からその 実質 をとらえようとする APBO 16の基本的な考え 方. 収 法 が適用されることになっていた. と 整合している.. 16 による会計処理を 確認して おきた い, い ま,子会社の資本を E, 取引直前 の親会社の持株比率を a(o.5 く ほく 1) とし この親会社が 少数株主の保有する 子会社株式を すべて取得するとしよう.それと 同時に子会社 ここで, APBO. の法人格が消滅すれば , この取引は親会社によ. る子会社の合併となる.親会社が 子会社株式の 対価として少数株主に 支払った現金額をⅠ とす ると,買収法 のもとでは, (l-a)E の少数株主. 事業が株主ではなく 会社によって 支配されてい. 持分が親会社の 持分となり,Ⅰ - け -. るとみなされ ,会社と株主との取引であ る合併. れんとなる.. が会社間取引に 還元される.事業に対する支配 が他社に移転したかどうかで ,その継続性が判 断 される・そのような 考え方にしたがうならば ,. 親会社と少数株主との 取引も会社間取引とみな され,会社間での 支配の移転にもとづいた 会計 処理がなされるはずであ る.ただし親会社と 子会社の取引は 経済実体内部の 取引であ り, そ れによって事業に 対する支配が 移転するわけで はない.親会社は子会社の事業に 対する支配を すでに獲得しているのであ る.そのような新し い経済実体を 形成しない取引は 企業結合とはみ なされないが ,本稿で対象としてきた 株式交換 による合併と 本質的に同じ 問題を提起している. 親会社が現金を 対価として子会社株式を 追加 取得するとき ,そこでは,子会社の 事業に対す る少数株主の 持分が清算される 一方,親会社と 子会社とを合わせた 経済実体にはまったく 変化 がな い .. この取引の実質もそれを 株主間取引と. それに対して , SFAS. ほ. )E が め. l41 の考え方にしたが. うならば,親会社による 子会社株式の 追加取得 も 会社間取引とみなされ ,会社間での支配の移 転にもとづいた 会計処理がなされるはずであ る. ただし事業に 対する支配が 移転しないこの 取 引に対して買収法を 適用することはできない. 事業が継続している 以上,事業の中断を与件と した会計方法を 適用することはできないのであ る・むしろ, この取引を親会社と 子会社とを合 わせた経済実体とその 株主との間の 資本取引と みなし,それにしたがった 会計処理を適用する べきであ ろう " .つまり,子会社株式の 追加 取得を自社株の 取得あ るいは有償減資ととらえ るのであ る.そこでは, (l-ao}E だけの少数株. -(l-a)E だけの減資差損 が生じる.少数株主に 支払った現金の 額だけ 資. 主持分が減少し ,. Ⅰ. 木 が減るのであ る. ところが, SFAS. l4T では,子会社株式の追. みなす観点と 会社間取引とみなす 観点のそれぞ れからとらえられるのであ る.前者の観点によ れば,その実質は親会社による 少数株主持分の 取得だが,後者の観点に よ れば,それは事業に. 加取得にも買収 法 が適用されることになってい る (SFAS l41,par. 14). 買収 法 とはいっても それは買収法の 観点,つまり会社間での支配の 移転にもとづいて 取引の実質をとらえようとす. 対する支配が 移転しない取引であ る, かっての. る観点とは矛盾する 会計処理であ る.会計ル一.
(11) アメリカにおける 企業結合会 計 基準の変遷. (大雄. 智). て. 155 97 Ⅰ. ルの 一貫性を保とうとするならば , この取引に. あ った. SFAS. 買収法を適用しないことにするか , あ るいは,. 考え方にしたがえば ,会社間で事業に対する支. すべての企業結合に 買収法を適用するという 結. 配が移転しないかぎり ,取得原価べー スの利益. 論を見直すしかな い のであ る.. 計算は継続する. したがって,親会社が 子会社 株式を追加取得しても ,そこで新しい資産が認. 7 . おわりに. l41 の考え方あ るいは買収法の. 識 され新たな費用計算がスタートすることはな. 本稿の第一の 課題は, アメリカにおける 企業. い はずであ る.つまり, この取引に買収法を 適. 結合会計基準の 変遷を概観することにより ,合. 用することはできないのであ る. それにもかか. 併の実質がどのような 観点からとらえられてき たのか確認することであ った.それは 同時に,. わらず, SFAS. 事業の継続性を 何によって判断するのか ,. した. がって利益測定べ ー スの継続性が 何に依存する. l41 ではそれに買収法を 適用す. るよう規定されている. この矛盾を解決するた めには,子会社株式の 追加取得に買収法を 適用 しないことにするか ,あるいは,すべての 企業. のか, を明らかにすることでもあ った. 第 5 節 で 確認したとおり , 1950 年に公表された ARB. 結合に買収法を 適用するという 考え方を修正す. 40 では,合併の実質は,基本目りには ,株主持分. , 性は保たれないのであ. るしかな い .. そ. う. しなければ会計ルールの 一貫 る. の 継続性にもとづいてとらえられていた.そこ. では,事業が会社ではなく 株主によって 支配さ れているとみなされ ,会社と株主との取引であ る合併が株主間取引に 還元される.株主持分の 継続性によって 事業の継続性が 判断され,利益. 1@. 測定べ ー スの継続性もそれに 依存するのであ る. も現金を好むかもしれない.. この基本的な 考え方は,その 後公表された ARB 43, ARB. 48, APBO. 16 にも受け継がれており. アメリカの会計基準における 支配的な考え 方で あ ったといってよい. ところが, 2001 年 6 月に 公表された SFAS l41 では,株主持分の継続性 という観点が 排除され, もっぱら会社間での 支 配の移転にもとづいて 合併の実質がとらえられ ている.そこでは,事業が会社によって 支配さ れているとみなされ ,会社と株主との取引であ る 合併が会社間取引に 還元される.事業に対す る支配が他社に 移転したかどうかでその 継続性 が判断され,利益測定べ. ー. スの継続性もそれに. 依存するのであ る. このような SFAS. (1990) をみよ. 支配とは,事業の 方針や経営を 指揮しその 事業から得られる 便益を増加させたり ,被る損. 失を制限したりする 能力であ る. 詳しくは FASB (l999a;pars.6andl0) をみ よ 3 @ もちろん, どちらの会計万法を 適用しても 企 ・. 業の ファンダメンタルズは 変わらないであ ろう. 持分 プ一 リング法を適用したからといって 株価 が上昇するわけではないのであ る. ただし,経 営者の報酬が 利益数値にもとづいて 決められて いるようなケースでは ,買収法 よりも持分 プ一 リング法のほうが 経営者にとって 好ましい会計 万法となりうる・ 詳しくは, Abo0dy, Kasznik. andW Ⅲ ams (2000) をみよ. 材 本稿では,合併会社の 新株が 被 合併会社の各. 株主に対してその 持分割合に比例して 交付され. この会計基準の 一貫性を検討することが 本稿の 第二の課題であ った.それはいいかえれば ,利. 5). 益測定べ ー スの継続性についての SFAS. 6). 考え方が,企業結合にもその 他の取引にも 矛盾 なく適用されているかどうかを 検討する作業で. これについては ,. A 而 hud,Lev,andTravlos. 2). l41 の考え方を与件として ,. l41 の. 経営者にとって 企業結合の対価は 現金のほう が好ましいのであ ろうか, それとも株式のほう が好ましいのであ ろうか. 会社に対する 支配を 維ヰ手したひと 考える経営者であ れば,株式より. るケースを前提としている. 買収法の理論白 9 根拠については , G4+l. U998:. pars.40, 48-50) を参照・ 承継した純資産の 公正価値総額が 取得コスト であ る新株の時価総額を 超過する場合には ,承 継資産 ( ただし,金融資産や 売却処分予定の 資.
(12) 98 (156. Ⅰ. 横浜経営研究. 第 22 巻. 第 2/,3 号 (2001). ってその超過額を 消去する. それでも超過額が. る (FASB,2000;pars.36-38).この提案にしたが えば, 親会社に よ る子会社株式の 追加取得は資. 残る場合には ,その残額を異常利益として 認識 する (SFASl4l,pars.44-46).. 本取引とみなされることになる (SFAS I41,par. B86).. 産などを除く ) の 公正価値を減額することによ. 7 ). 参考文献 .,R. Kasznik, and M . W"illiam s, "Pufchasc ㎎ rsusPoolingin Stock-for-Slock Acquis Ⅲ ons:Why. Ab00d),,. pars.27-29)を参照・ ただし,バランスシートに 注目すると,買収. do. 法 にも利点をみつけることができる.買収 法 で は新株の時価総額だけ 拠出資本が増加するため ,. APB. Op 由i0 れ B は 5りれ召. 、 APB. 合併の実質は「買収」とみなされる. ただし, この考え方にしたがうと ,合併によ って合併会社と 被 合併会社の双方の 株主持分が 大きく変質した 場合には,両社の事業の継続性 が断たれたと 判断され,両社の資産・負債がと もに評価替えされることになる.斎藤 (1992) および米山 (1992) では, このような会計処理 の問題点が議論されている.. 15). アメリカ公認会計士協会. (AmericanInstituteof. Certified Public Accounlants:AICPA). の前身であ. る. Sapienza (1962) では, ARB48 で設けられた 規準の実務での 有効性が検討されている. 17) ただし,公開草案の 段階では,合併当事会社 の 相対的規模が 考慮されていた. この公開草案. A m. Acco B. ぴ. Ⅰ. ルrrれ. flne. Proce. ⅡⅠ. m. S Comnb 由atio れ s,. ピじ. Ⅰ. Ru. Ⅱ f れれ. ア仰ァ. e. Accounff. lnItlnどガ0. は. Re.s. Ⅱ れ れれ ど. ド. Ⅰ. れe. R. Ⅰピロ. ピ. e乃. ト. ei らル A じこピ. ん杭乙ん. ピ. a 「, c.ん Rull. rions,Seplember. み几冗句. Accounrf. R6. は は グ. Ⅰ. ざ. l944.. BusinessCom71. R. れ B. 月. ri 托 s Ⅳ0.70. ピ. lg50.. B は lletin. トC乃. ピ Ⅰ 8%. 6%1.e れ Ⅰ㏄ れ イドピ vlslo. Ⅳひ イ ?. こ. ・. n/ Ac.c.nはれガん S Re. ごと. ・. り rc 乃. s,June l953.. , Acco. は れ. ぢぱ sl れ lc ⅠⅠ Co. 0/ Arcnun. R. tlne. ピ Ⅰ 8%rc. ・. れれ. ど R. ピご. 8%. グ. c.乃 R は. R れ li ど ,fln7ss. ん. Ⅲわ Ⅲり tlo れ s (Sup ピバ. Nn.78... Cc) A. れれⅠⅣ 0.43/,Janua y Ⅰ. p. ピメピごビんり. ァピ. rア. ど. Ⅰ. 1957. A m ihud, Y ., B . Lev,. and. N . G . Trav@hos,. "Corporate. Controland theChoiceofInveslmenlFinancing:The Case ofCorpo Ⅱate Acquisitions," r んピ /0 れ し 10/ ぱ. て. Ⅰ. Ⅰ. Fin り lnce,Vol.45 、 No.2.,June lg90,603-6l6. J. C.,A. Pr, ば ctic 乙. ビ. Ⅰ. tc.nu れわれ 9 力o Ⅰ. Ru こ庇 e タ s Cn. Ⅲみ而乙わ on!,;.. A. りれば Emれlpiグ lrcり I Cn Ⅲ用どん t, Financial. ExecutivesResearchFoundation,l970. Flnanclal. Accounhng. Standards. /R ピゾ l e リノ,. P Ⅰ opos. Ⅰ. 1999b.. う提案してい. ん Ⅳn.76.. B. NVo.24: Accn. Ⅰ. December. 案 『負債,資本,またはその両方の 特徴をもつ よ. fn/T 加れ fi うた. 血. Ⅱ ん. ACcoun. 金融商品についての 会計』では,子会社の 少数. Pro『 oAic.メ. んメ. APB Op mon7 Ⅳ0.17..In/n 加れ eib 尼且ssets,Augusl 1970c. erican Instllute of A ccountants, Com m iltee on. によると,持分プ一 リング法が適用される 合併 では,他社の3 倍を超える規模をもつ 会社が存 在してはならない・ APB (l970a;par.45) および Burton (1970 Ⅰを参照 18) FASB によって 2000 年 10 月に公表された 公開 草. 株主持分を資本として 報告する. Opinio. ・. Burton,. 16). 功力・. Ⅰ. August@970b.. 相対的規模に 大きな格差があ る場合にも, その. 14). 0れ5. ご. Acco. また, Wi@cox (1950) では,合併当事会社の. , 261-286.. COmれみ席はれ. ⅠⅠ. ・・. 業結合としてあ つかわれている ,. 13). Acco[,, ㎡,堵口 れば. 川 ㎡ oダ. は. As lcfs.February l970a.. を与えることもあ る・詳しくは , Aboody, Kaszmik. andWiI Ⅱ ams (2000 Ⅰをみよ. 10@ ARB (1944) を参照.. 1920 年代においては ,合併会計をめぐる 主な 論点は,留保利益の 承継問題であ ったよ う であ る・詳しくは , Wyall (1963;p.20) をみ 2. 12) Wernlz (l945) では,関係会社間の 合併も企. /0. Accounting Principles Board, Exposure Dr. 通常,持分プ一 リング 法 よりも自己資本が 大き くなる. よって,増加する 負債の額にも 依存す るが,買収法 が負債・資本比率に 好ましい影響. 1l). Firm s Cafe?". Eco"0,7,ics.Vol.29.N0.3,June2000. ・. 9). D. ・. 持分 プ一 リング法の理論的根拠については , G4 円 (1998;pars.39,42-47) を参照・ 8) FASB (200lb;par. 18) および APB (@970c;. れれど. ぢ招招打 叱れは・・. ち. れ傍れ. イり. は Ⅰピ. c,lり I Acco. Com れわ川切れ n れ. E ズ Do F 田しれ Cl 援. Ⅰ. E ズ posur. Ⅰ. メざ. ・・. Co. ど. Dr. 功ナⅠ. o/ Fln. 傍 n.cl 乙 /. エ. れ Ⅰ oAi メ れニ. ピメ. Fln. 切れ. cl ク. Ⅰ. P ヵフ 0 Ⅰ ピ a れみ Poficy,,February l999a.. , E 光 pos. Fl. r切れ. Board,. どイぢ1ク e 佛c れァ. Ⅰ. Ⅰ. D. /r. P. ばれれれ 9. しれメ. リグピ. ACCOut. グは. D. Ⅰれァ. グ. ド. ,Opose. メ. 5% り れ メ乙. Ⅰ. ぱ. St 乙ニピ れ m どん r n/ Ⅰ・・. し れ ど lわ ic. AJ バlets 、. 4 アt,. Pr,opo. れ fiれ g1 ご す切れば. り Ⅰぱ. Ⅰ. Rusl. ピメぢア傍 t6%6%. s.. A. 「. Cn. んピ. ⅠⅠ. September. けれわれと. ア. 0/. ノし. Ⅰ.
(13) Fz.n.a抑 cl り I I抑 si ⅠⅢれe れァ. ご. ソ庄ん. C. Ⅰ. た仰. Ⅰ. ぱ. c. Ⅰ. l れ c ご佗Ⅰ. ピん. こ. Werntz ,. Liabiities.Equ れfy.orBotわ :October2000. ,. NOo.. ⅠⅠ リア. Wi. ,ざァ仰ァ e,m7me@ziG 戸トⅤ nlは れ (;ゾ乙 IAccouunzt血 ngl ・. 力仙ぞ Ⅰ. ox , E. Mergers. ln@l 招れどこ んル A..r.<r と ね・ June. Procedu. ・. んゾピ. Senc6. % 抑ァんピ几 78. 百. 方. 0 イ Ⅰ oダ. Acco. c ん ie レ ,in5. ばれれれ 9. 戸o Ⅰ. W,yall. A. R.,A. 召 Ⅱ s 劫ピご. Com?t み 由り ffo ん s. International. Ⅰ. 、 December. SIandardsCommillee Lan. 黛. er.. トて. ・. n,. 八 ccnu け nrrnn ど. Accounting. l998.. れ Ⅰ り Ⅴ 仰 Ⅰ ル例ピわ n/ Ⅶ どド @9. dissertation , University@of@California. と・. , Arno. Press, 1978. Rav,burn,F.R. and 0. S. Pow,ers, "A Hislory,ofPooling oflnlereslsAccounlingforBusinessCombinattons lhe. U nited Stales,". アカど. Acc. Journal , Vol . 18 , No , 2 , December@. のん. ln. け Ⅱ わ啄 Ufsto. コな. Ⅰ. nls. 1991 , 155-192.. Sapienza , S R ,,Pooling@Theory@and@Practice@in@Business ・. ・. Combinations,@ No. ・. The@ Accounting@. Review,@. Vol. ・. Ⅰ. can@. AcCo. Ⅱ んァ仰れ. 37. 正. sis@ of. Accounting cⅠ,. Vo@. 89. lg50 , l02-107. め o/ Acco. ぢ/f し. は. nnr而g ガo/.BLls由ピ ss. Research. Instiute@ of@Certi i d@ PuU@@. Sludy y No.. 5. Accountants. l963. 伊藤邦雄「会計制度のダイナミズム」岩波書店.. rs,Ph.D.. , Berkeley. 川口Jo/. Cnmml わ り n仰 fions, Accounhng Ame. iWn加れ. ns:@ An@Anal. , and@ Related@. ノo ノ. C@,iガ C はⅠ ・. Ⅰ. io れ P クク er.. R ピ co 抑rrtn77 とれば はガ onls メ0 グ且 ・. 丁. ess@ComUnati. e," T 乃 c. は. , 379-387. , Purchases て. , Reorganizations. Ⅳど Ⅱwyoo 戊 Ce. け尹ピガ P は ら ffeAcrn. 7 , July@1945. D ,, "Busi. ・. (157)@99. 智). Corporate@Consolidations. ,. No.2.FebruaFY. l, Pos Co. Ⅰ. 召 Ⅰ ぱじ. ご すばれれ. 200lb. G4+. ・. Vol , 15 , No. ァ. Ⅳ0 772.. GoodW ソ iiAlは れ ば Ot. W W. and Mergers,". em/menは g戸ⅠⅤ ん a@n7ci乙 IAccouun7t血 ne S の nlメ Ⅰ ドメ Ⅰ. 41:.Ruusiれ f.。r.。7Cnm7m ら血nationls,June200la.. Ⅰ. 変遷 (大雄. ・. アメリカにおける 企業結合会計基準の. 1996. 年. 黒川 l行 治. 『合併会計選択論」中央経済社, 1999 年.. 斎藤静 樹. 「. M あ A の会計基準一考えかたの. 日米上ヒ較 「企業会計 ] 第44 巻 第 10 号.1992 年 10 月.56-61 頁 . 武田安腔『企業結合会計の 研究』白桃書房, 1982 年. 米山正樹「企業合併の 会計問題一株主持分の 継続と 承継資産の評価」『経済学研究 (東京大学Ⅱ 」. 第 35 号.1992 年 12月.61-69 頁.. 2 , April@ 1962,263-278. ( おおたかさとる. 横浜国立大学経営学部講師. コ.
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