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ウサギ角膜上皮再構築能を有する幹細胞および

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(1)

ウサギ角膜上皮再構築能を有する幹細胞および 前駆細胞の同定とその性状に関する研究

Identification and cellular properties of stem/progenitor cells that are capable to reconstruct corneal epithelium

in the rabbit model

亀石 統子

Sumako KAMEISHI

生命理工学専攻

分子生理学研究

2016 2

(2)

ウサギ角膜上皮再構築能を有する幹細胞および 前駆細胞の同定とその性状に関する研究

Identification and cellular properties of stem/progenitor cells that are capable to reconstruct corneal epithelium

in the rabbit model

2016 2

亀石 統子

Sumako KAMEISHI

早稲田大学大学院 先進理工学研究科 生命理工学専攻 分子生理学研究

(3)

目次

第1章 緒言

1-1.上皮組織の分類と構造 ... 1

1-2.眼組織の構造、疾患 ... 2

1-3.幹細胞研究 ... 4

1-3.上皮組織再生医療の発展... 9

1-4.本研究のねらい ... 10

第2章 角膜上皮幹細胞疲弊症モデルの作製とその評価 2-1.序章 ... 12

2-2.実験材料および方法 ... 13

2-2-1.動物 ... 13

2-2-2.角膜上皮欠損モデル(Corneal epithelial deficiency model)動物の作製方法 ... 14

2-3.実験結果、考察 ... 15

2-4.総括 ... 16

第3章 角膜上皮欠損モデルにおける上皮細胞と基底膜の再形成 3-1.序章 ... 17

3-2.実験材料および方法 ... 18

3-2-1.動物 ... 18

3-2-2.組織学的解析 ... 18

3-3.実験結果、考察 ... 21

3-3-1.角膜欠損モデル眼表面の解析 ... 21

3-3-2.上皮細胞の表現型と基底膜構成分子の関係 ... 25

3-3-348週角膜欠損モデルにおける輪部様組織の再構築 ... 30

3-3-4.組織修復過程における上皮間葉移行... 32

3-4.総括 ... 34

3-5.今後の展開 ... 37

第4章 角膜上皮幹細胞表現型同定のための輪部上皮SP 細胞研究への着手 4-1.序章 ... 38

4-2.実験材料および方法 ... 40

4-2-1.動物 ... 40

4-2-2.輪部上皮細胞の単離 ... 41

4-2-3Hoechst 33342 染色による輪部上皮SP 細胞の単離 ... 41

(4)

4-3.実験結果、考察 ... 42

4-3-1Hoechst 33342 染色濃度条件決定 ... 42

4-3-2.次世代シークエンサ解析に向けた輪部上皮SP 細胞とNSP 細胞の分取とRNA 出、逆転写、増幅の実施 ... 45

4-3-3.輪部上皮SP 細胞とNSP 細胞におけるAbcg2 の発現量比較 ... 46

4-4.総括 ... 47

第5章 ウサギ輪部上皮SP 細胞における包括的遺伝子発現解析と表現型の解明 5-1.序章 ... 49

5-2.材料と方法 ... 52

5-2-1Ion Proton を用いたシークエンス解析 ... 52

5-2-2.新規参照配列の構築 (de novo transcriptome assembly) ... 53

5-2-3.輪部上皮 SP 細胞、NSP 細胞の遺伝子発現プロファイルの作成と遺伝子発現量比 較、Gene ontology (GO) 解析 ... 53

5-2-4.定量的遺伝子発現解析 ... 54

5-2-5.シングルセルqRT-PCR解析 ... 54

5-2-6.輪部上皮SP 細胞を用いた低酸素培養 ... 54

5-3.実験結果、考察 ... 55

5-3-1Public database (NCBI) de novo transcriptome assembly を用いた遺伝子発 現プロファイルの作成 ... 55

5-3-3DAVID Bioinformatics Resources 6.7 を用いたGene ontology 解析による輪部上 SP 細胞の表現型解明 ... 57

5-3-3.血管内皮細胞マーカーにおける定量的遺伝子発現解析 ... 64

5-3-4.シングルセルqRT-PCR 解析 ... 67

5-4.総括 ... 74

第6章 多臓器間比較におけるVcam1発現細胞の解析 6-1.序章 ... 75

6-2.材料と方法 ... 76

6-3.実験結果、考察 ... 76

6-4.総括 ... 79

第7章 総括と今後の展望 7-1.本研究の総括 ... 81

7-2.結語、展望 ... 87

(5)

謝辞 ... 89

参考文献 ... 91

研究業績 ... 104

(6)

【略語一覧】

ABC Avidin-biotin complex

Abcb1 ATP-binding cassette subfamily B member 1 Abcg2 ATP binding cassette subfamily G member 2 Bmi1 BMI1 proto-oncogene, polycomb ring finger BrdU 5-bromo-20-deoxyuridine

Cdh1 E-cadherin, Cadherin 1

E-

カドヘリン)

Cdh5 Cadherin 5, VE-cadherin

VE-

カドヘリン)

Emcn Endomucin

EMT Epithelial-mesenchymal transition

(上皮間葉移行)

ES cells Embryonic stem cells

(胚性幹細胞)

Esam Endothelial cell-selective adhesion molecule

GO Gene ontology

HEPES 4-(2-HydroxyEthyl)-1-PiperazineEthaneSulfonic acid HIF1

α

Hypoxia-inducible factor 1-alpha

iPS cells Induced pluripotent stem cells

(人工多能性幹細胞)

K12 Keratin 12

(ケラチン

12

K13 Keratin 13

(ケラチン

13

K14 Keratin 14

(ケラチン

14

K19 Keratin 19

(ケラチン

19

Krt 15 Keratin 15

(ケラチン

15

MEndoT Mesenchymal-endothelial transition MET Mesenchymal-Epithelial transition

Muc5 Mucin 5AC

(ムチン

5AC

NGS Next generation sequencer

(次世代シークエンサ)

NSP non-SP

PBS Phosphate buffered saline

(リン酸緩衝生理食塩水)

Pcdh12 Protocadherin 12, VE-cadherin-2

(7)

Selp Selectin P

SP Side population

Stab1 Stabilin 1

Tek TEK tyrosine kinase, endothelial, TIE2 TGF-

β

Transforming growth factor-β

TPS-A Triptostatin-A

Vcam1 Vascular cell adhesion molecule 1

(8)

【図表一覧】

1-1.

上皮組織の構造とターンオーバー

1-2.

眼組織の構造

2-1.

角膜上皮欠損モデルの作製

2-2.

角膜上皮欠損モデルの経時的観察

3-1. 4

週角膜上皮欠損モデルにおける組織学的解析

3-2. 24

週角膜上皮欠損モデルにおける組織学的解析

3-3. 48

週角膜上皮欠損モデルにおける組織学的解析

3-4.

ウサギ角膜、輪部、結膜組織における

IV

型コラーゲンα鎖の分布

3-5.

モデル眼表面上における基底膜構成成分

IV

型コラーゲンα

5

鎖の分布

3-6.

基底膜構成成分

IV

型コラーゲンα

1, 2

鎖の分布とその変化

3-7.

正常輪部組織と

48

週角膜上皮欠損モデル境界部の比較

3-8.

正常眼組織におけるビメンチンの発現部位

3-9.

角膜上皮欠損モデル眼組織におけるビメンチンの発現部位

3-10.

上皮細胞の分化・未分化と

EMT

MET

の関連

4-1. SP

細胞、

NSP

細胞における

Hoechst 33342

色素の挙動

4-2. SP, NSP

細胞分取方法

4-3. Hoechst 33342

染色濃度決定

4-4. Hoechst 33342

濃度

2.5 µg/ml

の染色結果

4-5.

角膜上皮

SP

細胞、

NSP

細胞の形態

4-6.

増幅産物の電気泳動

4-7. SP

細胞と

NSP

細胞における

Abcg2

の遺伝子発現比較

5-1. NCBI genome database (Oryctolagus cuniculus)

を用いた遺伝子発現量 比較

5-2.

De novo transcriptome assembly を用いた遺伝子発現量比較

5-3. NCBI genome database

De novo transcriptome assembly の統合に よる新規参照配列の構築

5-4.

遺伝子発現プロファイルの性状確認

(9)

5-5.

発現量に

10

倍以上差がある遺伝子集団を用いたヒートマップ

5-6

上皮細胞マーカーにおける定量的遺伝子発現解析

5-7

血管内皮細胞マーカーにおける定量的遺伝子発現解析

5-8

血管内皮細胞

/

未分化細胞マーカーにおける定量的遺伝子発現解析

5-9

血管内皮細胞マーカー、未分化細胞マーカー、間葉系細胞マーカーにおけ

るシングルセル解析

5-10. ATP-binding cassette sub-family B (Abcb1)

の遺伝子発現解析

5-11.

低酸素誘導因子

Hypoxia-inducible factor-1a (HIF-1a)

の定量的遺伝子発 現解析

5-12.

輪部上皮

SP

細胞の低酸素培養と免疫組織化学的解析

6-1.

輪部組織と口腔粘膜組織における

Vcam1

陽性細胞の局在

6-2.

口腔粘膜上皮組織における

Vcam1

陽性細胞の解析

6-3.

小腸上皮組織における

Vcam1

陽性細胞の解析

7-1.

上皮細胞

-

間葉系細胞

-

血管内皮細胞間相互作用(既往研究)

7-2

上皮細胞

-

間葉系細胞

-

血管内皮細胞間相互作用(仮説)

1-1.

上皮幹細胞マーカーの探索研究

1-2.

上皮幹細胞の評価法と上皮幹細胞マーカーの探索研究

3-1. 1

次抗体希釈濃度

4-1

多臓器における

SP

細胞の存在頻度

4-2

SMARTer

を用いたサンプル

cDNA

の増幅

5-1.

輪部上皮

SP

細胞で発現量が

10

倍以上低い遺伝子群における

GO

解析

5-2.

輪部上皮

SP

細胞で発現量が

10

倍以上高い遺伝子群における

GO

解析

5-3.

Cell adhesion

”に含まれる遺伝子

(10)

➨㸯❶

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1

(11)

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2

(12)

基底細胞はヘミデスモソームを介して基底膜のラミニンなどを含むラミナルシ ダ

(Lamina lucida)

に接着し、さらにそれが

IV

型コラーゲンを含むラミナデン サ

(Lamina densa)

に結合している

(

真鍋ら

, 2003)

。輪部基底層に存在する角膜 上皮幹細胞は直下に存在する基底膜に接着し、増殖や分化が制御されていると 考えられている

(Schlotzer-Schrehardt et al., 2007)

。しかし、アルカリ腐蝕、酸 腐食、薬剤毒性などの外傷や、スティーブン

-

ジョンソン症候群や眼類天疱瘡な どの疾患により輪部組織が障害を受けると、角膜上皮幹細胞が失われ、角膜上 皮幹細胞疲弊症となる。スティーブン

-

ジョンソン症候群とは発熱を伴う急性の 上皮疾患であり、全身の皮膚に特徴的は多形滲出性紅斑を生じる。眼症状とし ては結膜において炎症が起きることや角膜組織においても血管新生が生じ、眼 表面全体が乾燥したような状態となる

(

真鍋ら

, 2003)

。また眼類天疱症とは慢 性の瘢痕性水疱性疾患であり、主として結膜・口腔・咽頭に症状がみられる。

角膜上皮欠損も頻発し、角膜周辺部において血管新生が生じ、最終的には高度 の眼球乾燥状態になり角膜表面は角化する

(

真鍋ら

, 2003)

。これらの外傷や疾 患は輪部組織に存在する角膜上皮幹細胞が傷害を受け、無血管組織である角膜 表面は血管を有する結膜組織に被覆されることにより角膜の混濁や視力の低下

1-2. 眼組織の構造 a) 眼組織の横断面 b) 前眼部の横断面を示している。

角膜

輪部 結膜

a b

3

(13)

が誘発される。このような角膜上皮幹細胞疲弊症に対して既存の治療法である 角膜移植が適用されているが、拒絶反応が生じ予後は不良である。またドナー 不足も深刻な問題となっている。そこでこれらの疾患に対して、自己由来の幹

/

前駆細胞を用いて根本的治療を行う再生医療に注目が集まっている。

1-3 .幹細胞研究

幹細胞は自身と同じ細胞を産生する能力(自己複製能)と多様な細胞に分化 する能力(多分化能)を併せ持つ未分化な細胞であると定義される。幹細胞に は万能性を有する胚性幹細胞

(Embryonic stem cells : ES cells)

や多能性を有す る人工多能性幹細胞

(Induced pluripotent stem cells : iPS cells)

と、成体内の複 数の組織に存在し多分化能を有する組織幹細胞

(Somatic stem cells)

に大別さ れる。組織幹細胞は成体内のあらゆる組織に存在し、未分化性を保ちながら分 裂して、前駆細胞や分化細胞を産生することで組織の恒常性を維持すると考え られている

(Knoblich, 2008)

。現在報告されている組織幹細胞は、主に造血幹細 胞

(Nakauchi et al., 1999)

、骨髄由来間葉系幹細胞

(Mabuchi et al., 2013)

、脂肪 由来間葉系幹細胞

(Crisan et al., 2008)

、神経幹細胞

(Suh et al., 2007)

、肝臓の 幹細胞

(Wang et al., 2015)

、また上皮幹細胞においては毛包幹細胞

(Blanpain et al., 2004; Snippert et al., 2010)

、小腸幹細胞

(Barker et al., 2007; Holmberg et al.,

2006)

がある。特に本研究で用いた上皮組織においては、代謝により表層から

剥がれ落ちる細胞を基底層に存在する上皮幹細胞が補い組織の恒常性が維持さ れている。上皮幹細胞はいまだ同定されていない組織幹細胞の一つであり、幹 細胞の維持機構やニッシェの解明も未解明のままであるが、これまでに様々な 取り組みがなされている。

4

(14)

幹細胞性を評価する方法としては、多組織の幹細胞と比較して基礎研究・臨 床応用ともに進められている造血幹細胞研究において新たな方法が確立され、

その方法を上皮幹細胞研究へと適用することで研究が遂行されてきた。

1967

年 には放射線照射マウスに骨髄細胞を移植し、脾臓に産生されるコロニーを計数 し、移植細胞の増殖能を

in vivo

の系で評価する方法が確立されている

(Till and McCulloch, 2012)

。さらに、

1977

年にはチミジンのアナログである

5-bromo-20-deoxyuridine (BrdU)

の投与により、

in vivo

での細胞増殖の有無や 増殖速度の評価が可能となった

(Schneider et al., 1977)

BrdU

は細胞分裂の際 にチミジンの代用として新しく合成される

DNA

鎖に取り込まれる特徴を有す ることで、

DNA

鎖を標識することができる。この手法を用いることで組織内で の幹細胞の局在部位の解明が可能になった。本手法を用いて

1985

年には放射線 照射マウスに移植した細胞のうち、膵臓内でコロニーを形成する細胞と定義さ れたマウス造血幹

/

前駆細胞(

Colony forming unit in the spleen; CFU-S

)は、増 殖をしない細胞集団と増殖が極めて遅い細胞集団の少なくとも

2

つの細胞集団 に分けられることが証明され

(Pietrzyk et al., 1985)

、幹細胞の自己複製能を評 価する方法として考案された。これらの造血幹細胞研究をもとに、上皮幹細胞 の局在も研究されている

(Bickenbach, 1981)

Bickenbach

らは、マウスに対し

BrdU

投与後、

1

時間では約

90

% の上皮基底細胞の核がラベルされているの

に対し、

10

日後の上皮基底細胞においては減少し、基底上層の細胞が標識され ることを明らかにした。さらに

72

日後には大部分の細胞において標識が消失し、

1%

の上皮基底細胞において強く発現することを明らかにした。この細胞は 分裂速度が遅いことから

“ Slow cycling cells

”と名付けられ、幹細胞と類似した 特徴を持つことが報告されている

(Braun and Watt, 2004)

。しかし、この方法の

5

(15)

欠点として、

BrdU

投与時に分裂している細胞のみを標識できることである。前 述の通り幹細胞は分裂速度が遅い細胞であることが知られており、

BrdU

投与時 にまさに分裂している幹細胞は極めて少ないことが予想される。したがって、

実際には生体内に存在する全幹細胞を標識することは困難であると考えられる。

この

BrdU

を用いた

in vivo

での評価法の課題をもとに、

in vitro

での増殖活性 により短期間で幹細胞の自己複製能を評価する方法が考案された

(Barrandon and Green, 1987)

1987

年に

Barrandon

らはヒト表皮細胞を培養し、

6

日後 に継代

(Secondary culture)

を行うと、異なる

3

種類のコロニーが形成される ことを明らかにした。コロニーのサイズが一番大きいものはホロクローン

(Holoclones)

と定義され、

“ Holo = entire”

を意味し、コロニー形成細胞のすべ てが増殖速度の高い細胞により構成されているコロニーを意味している。逆に、

ほとんど増殖しない細胞により構成されているコロニーはパラクローン

(Paraclones)

と定義された。

“ Para = beyond ”

を意味し、完全に増殖の制限さ れた細胞であり小さなコロニーを形成する集団であることが知られている。ま た、その中間に属するコロニーはメロクローン

(Meroclones; mero = partial)

で あり、増殖能の高い細胞と低い細胞の

2

種類の細胞が混在しているコロニーで あることが定義されている

(Barrandon and Green, 1987)

。増殖能が高い幹

/

前駆 細胞様の性質を持つ細胞は大きなコロニーすなわちホロクローンを形成するこ とが示唆され、上皮細胞の自己複製能を評価する新たな方法が提唱された。こ のコロニー形成能を評価法として用いた検討が行われ、

1995

Jones

らはヒト 表皮組織においてインテグリン

β1

を発現する細胞は高い増殖能を有することを 明らかにしている

(Jones et al., 1995)

。インテグリンスーパーファミリーは細 胞接着因子の一つであり、細胞外マトリックスや細胞表面抗原と結合すること

6

(16)

で細胞の分化・増殖および器官形成の調節を行うと考えられている。インテグ リンはα鎖とβ鎖のヘテロダイマーを形成し、細胞種や細胞の状況により同じ 基質に対してもレセプターとして使用されるインテグリンの種類が異なり、周 囲の環境に応じて様々な情報を細胞内へと伝達する役目を担う重要な因子であ

(

小出

et al., 2000)

。また、

2000

Kaur

らはヒト表皮組織においてインテ

グリン

α6

が上皮基底細胞に発現し、増殖能が高いことが示された

(Kaur and Li, 2000)

。さらにヒト表皮細胞において、

CD90

陽性細胞が

in vitro

また

in vivo

で のコロニー形成能が高いことが示されている

(Nakamura et al., 2006)

。これら は特定の培養環境下での増殖能を基準に分化、未分化を評価したものであるが、

幹細胞の定義である多分化能を評価することができない。したがって決定的な 上皮幹細胞マーカーを同定するためには不十分であり、さらなる検討が必要で あると考えられる。そこで、遺伝子改変マウスをもちいた上皮幹細胞研究が行 われた。⊿

Np63

欠損マウスでは、通常の重層扁平上皮の形成は困難であり、単 層の上皮が形成されることから

p63

は上皮幹細胞の維持や分化、上皮組織の重 層化に重要であることが報告されている

(Koster et al., 2005; Mills et al., 1999;

Yang et al., 1999)

(表

1-2

)。角膜上皮幹細胞マーカーの研究も行われており、

上皮細胞に発現する中間系フィラメントであるケラチン

14 (Keratin 14: K14)

K19

の発現が、幹

/

前駆細胞が局在する輪部上皮組織に発現することが報告さ れている

(Barnard et al., 2001; Wang et al., 2003)

。また、

2001

Pellegrini

ら はヒト表皮組織と角膜上皮組織の上皮前駆細胞は⊿

Np63

を発現し、これが増殖 に関与する因子であることを報告した

(Pellegrini et al., 2001)

。さらに、間葉系 細胞マーカーであるビメンチン

(Lauweryns et al., 1993)

や神経堤幹細胞マー カーである

p75 (Di Girolamo et al., 2008)

の発現もヒト輪部上皮組織に発現す

7

(17)

ることが報告されている。このように、輪部上皮細胞には上皮細胞特異的なケ ラチンや間葉系細胞マーカー、神経堤細胞マーカーなど多様な表現型を示すこ とが報告されている。しかしそれらは組織学的解析を用いて輪部上皮基底細胞 に発現することのみ示され詳細が不明瞭であることから、角膜上皮幹細胞の表 現型解明においては未だ議論の余地があるといえる。上皮幹細胞マーカーの同 定のために上記の課題を克服するため、新たに考案されたのが細胞系譜解析

(Lineage-tracing)

を用いた解析である。特定の細胞が細胞分裂を繰り返した後、

産生された細胞を

in vivo

内で追跡することができる。この手法を用いた検討に より、

BMI1 proto-oncogene, polycomb ring finger (Bmi1)

遺伝子を発現する細胞 が上皮組織を構成細胞の起源であることが明らかになった。さらに上皮組織修 復にも寄与することが示され、

Bmi1

は上皮幹細胞マーカーであることが強く示 された

(Tanaka et al., 2013)

Bmi1

は転写因子であり、セルソーターを用いた 細胞分離の際の標的分子として用いることは不可能であるが、

Bmi1

陽性の上皮 細胞を解析することにより、上皮幹細胞の正体を解明できると期待される(表

1-2

)。

8

(18)

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9

(19)

は、健常眼の角膜上皮幹

/

前駆細胞が存在する輪部上皮組織から細胞を採取・単 離した後、培養角膜上皮細胞シートを作製し移植する。しかし、スティーブン

-

ジョンソン症候群や眼類天疱瘡などの疾患は両眼性疾患であることが多く、自 身の輪部上皮組織から角膜上皮幹

/

前駆細胞を得ることは不可能である。そこで、

大阪大学医学部眼科学教室との共同研究により、角膜上皮細胞の代用として口 腔粘膜上皮細胞を細胞ソースに用いて角膜上皮組織を再建する治療法が考案さ れた。患者の口腔粘膜上皮細胞を採取し、温度応答性培養皿を用いて培養する。

温度応答性培養皿を用いることによりタンパク質分解酵素を使用することなく、

温度を

20

℃に下げるという非侵襲的な方法で細胞を回収できるため、基底膜成 分を保持したシート状の細胞を患者に移植できる。培養上皮細胞シート移植後 の角膜表面は移植

1

年後でも角膜の透明性が維持されており、視力の回復が認 められている

(Nishida et al., 2004)

。角膜上皮組織はターンオーバーを繰り返し、

2

週間で細胞が入れ替わることが知られているため、患者の体内には移植された 幹細胞が生着し、上皮組織の恒常性を維持すると推測される。しかし幹細胞マ ーカーが同定されておらず、モデル動物を用いた幹細胞の生体内挙動やニッシ ェの構築過程が未解明のままとなっている。そこで本研究では角膜組織に着目 し、角膜上皮幹

/

前駆細胞や分化角膜上皮細胞、基底膜構成分子、結合組織内の 線維芽細胞、血管内皮細胞などの側面から多角的に検討することで角膜上皮幹 細胞研究を遂行した。

1-4 .本研究のねらい

本研究では角膜上皮再生医療への貢献を目指して研究を遂行し、

in vitro

の検 討に終始することなく、生体内での観察結果をもとに仮説を立て、実証できる

10

(20)

よう取り組んだ。第

2

章、第

3

章では

in vivo

実験により組織修復過程における 分化上皮細胞や幹

/

前駆細胞の挙動や幹細胞ニッシェであると考えられている基 底膜の再編成という側面から解析した。また第

4

章、第

5

章、第

6

章ではそこ で得られた仮設をもとに上皮幹細胞の正体の解明を目指した。

11

(21)

第2章

角膜上皮幹細胞疲弊症モデルの 作製とその評価

2-1 .序章

ウサギ眼表面は

3

5

層の重層扁平上皮で構成されている

(Thoft and Friend, 1977; Wei et al., 1996; Wei et al., 1993)

。基底層に存在する未分化細胞は増殖を 通じて分化しながら表層へと移動し、最終的には脱落する。この代謝、すなわ ちターンオーバーは約

2

週間かけて行われる。角膜と結膜の境界部に存在する 輪部組織には角膜上皮幹細胞が局在しており、分裂し、分化細胞を角膜中央部 へと供給することにより、角膜上皮の恒常性が維持される

(Buck, 1985; Thoft

and Friend, 1983)

。重篤な外傷や、スティーブン

-

ジョンソン症候群や眼類天疱

瘡のような疾患により、この角膜上皮幹細胞が傷害を受けると、結膜組織が角 膜表面を被覆し、血管新生や角膜の混濁が生じて視力が低下する

(Ti et al., 2002; Tsubota et al., 1999)

。このような病理学的所見は角膜上皮幹細胞疲弊症と 呼ばれる。本疾患のモデル動物として研究されてきたのが、ウサギ角膜上皮幹 細胞疲弊症モデル

(Rabbit limbal epithelial stem cell deficiency model; LSCD model)

である。

研究対象とする動物種を選定する際、以下の事項を考慮する必要があった。

ヒトの角膜組織は、アメリカアイバンクより購入可能ではあるが、とても希少 であり入手が困難であることや

in vivo

での検討が不可能であることが大きな欠 点となっている。マウスを対象にする場合、生物資源が豊富であり、遺伝子改

12

(22)

変マウスを用いた解析や特異的抗体を用いて細胞を単離、培養することができ、

とても有用であると考えられる

(Mine et al., 2005; Vauclair et al., 2007; Yoshida

et al., 2006b)

。しかしこれは注目する因子が特定されているときのみ使用可能で

あり、外科的処置を施す検討や多くの細胞を必要とする場合、眼組織が極めて 小さいため実施が困難となる。本研究は

in vivo

での上皮細胞とそれを取り巻く 微小環境であるニッシェ構築過程の解析や、特定の細胞を単離した後、遺伝子 発現プロファイルを作成して上皮幹

/

前駆細胞マーカーを探索するといった、特 定の遺伝子やタンパクを決定するための研究である。したがってヒト角膜組織 や遺伝子改変マウスを用いることは不可能であると考えた。そこで本研究では ウサギ角膜上皮欠損モデルを作製し、解析した。分化細胞が局在する角膜上皮 と幹

/

前駆細胞が存在する輪部上皮を外科的に切除したのち、さらにヘプタノー ル処理を施すことで化学的に細胞を除去して作製した

(Ti et al., 2002)

。このモ デル眼表面では、角膜の混濁や結膜組織の浸潤、血管新生が観察され、ヒト角 膜上皮幹細胞疲弊症と類似した症状が現れることが示されている

(Ti et al.,

2002)

。本研究では、ウサギ角膜上皮幹細胞疲弊症モデル(角膜上皮欠損モデル)

を作製し、修復の過程を組織学的に解析した。まず本章では、眼表面に上皮組 織を欠損させ、そのモデルの評価を行った。

2-2 .実験材料および方法 2-2-1

.動物

成体のオスの白色家兎(

New Zealand White Rabbit

、株式会社日本医科学動物 資材研究所、体重:約

3 kg

)を飼育室に搬入後

1

週間以上飼育し、実験に用い

13

(23)

た。〔実験動物倫理委員会 審議済整理番号:

10-42

11-122

12-25

13-99

14-87

15-43

2-2-2

.角膜上皮欠損モデル(

Corneal epithelial deficiency model

)動物の 作製方法

白色家兎(

New Zealand White Rabbit

、株式会社日本医科学動物資材研究所、体 重:約

3 kg

)に対し、ケタラール

0.4 ml

、ドミトール

0.6 ml

の混合液を投与し 全身麻酔を行なった。麻酔下にあり、痛みを感じ得ない状態を保ち、眼脱臼し、

眼瞼が閉じぬよう固定後、生理食塩水で眼球をよく洗浄した。その後、ゴルフ メスにより強膜に切開線を入れ、さらに角膜中央部に向かって上皮下の結合組 織を切開し、角膜実質に到達させた。そこから眼科用剪刀を用いて輪部上皮組 織および角膜上皮組織を

1

枚のシート状の組織片として切除し、眼球に外科的 損傷を与えた(図

2-1

)。

その後、ヘプタノールを含ませたガーゼで角膜表面を覆い、

5

分間静置するこ とで化学的損傷を与えた。反応終了後、ガーゼを取り除き、残ったヘプタノー ルを完全に除去するために生理食塩水で丁寧に洗浄した。最後に眼瞼をもとの 位置に戻してリンデロンとタリビット軟膏を塗布し、処置を終了した。また、

図 2-1. 角膜上皮欠損モデルの作製

眼科用剪刀を用いて角膜および輪部上皮組織とその直下に存在する基底膜を切除し た様子を示している。

14

(24)

麻酔から覚醒しそうな場合は、適宜ケタラールとドミトールを

2

3

の割合で混 合したものを約

0.5 ml

再投与した。処置後

1

週間は炎症を抑えるためにリンデ ロンとタリビットを

1

2

回投与した。また、経過観察として、処置後

1, 2, 3,

4, 24, 48

週目に経過観察および蛍光色素(フルオレセイン)による染色を行っ

た。処置後

4

週目、

24

週目、

48

週目にソムノペンチル(共立製薬株式会社)

を用いて犠牲させ、組織学的解析に供した。

2-3 .実験結果、考察

角膜および輪部上皮組織を切除した後の経過観察の結果を図

2-2

に示した。

角膜上皮組織は表層細胞、翼細胞、基底細胞から成り、最外層の表層細胞の頂 端部には密着結合が発達している。これは隣接細胞間を密につなぐことで水溶

1 週目 4 週目 24 週目 48 週目

正常組織

図 2-2. 角膜上皮欠損モデルの経時的観察

正常組織と角膜上皮欠損モデル作製後1週目、4週目、24週目、48週目の観察結 果を経時的に示している。上段が蛍光染色前、下段が蛍光染色後の様子である。上 皮細胞が存在する部位では、細胞-細胞間に密着結合(Tight junction)が発達し、蛍 光色素の沈着を防ぐが、上皮細胞が存在せず、角膜実質(結合組織)が眼表面上に 曝されている場合、色素の沈着が起き、緑色を呈する。Kameishi et al., 2015 より引 用・改変。

15

(25)

性分子に対する障壁となるため、外来物質に対する防御機能を有する。したが って蛍光色素を点眼すると、角膜実質が露出している部位は蛍光色素が浸透し 沈着するが、上皮組織が存在する場所は密着結合により色素の浸透が妨げられ て沈着しない

(Satake et al., 2008)

。本研究では処置から

1

週間後には角膜実質 への蛍光色素の沈着が眼表面全体に観察された(図

2-2

)。これに対し、

4

週後 には角膜中央部にのみ蛍光色素が沈着していたことから、結膜側から角膜中央 部にかけて上皮組織が浸潤したことがわかった(図

2-2

)。さらに、結膜側から 角膜中央部に向けて血管新生も観察され、結膜組織が角膜中央部へと浸潤した と考えられる。また約

6

週後には上皮組織が角膜表面を完全に被覆し、

24

週、

48

週後も上皮組織は維持されていた。これらのモデル組織は正常組織と比較し て角膜が混濁し、血管新生も観察され、適切にモデルを作出できたと考えられ る。以後の上皮修復過程の解析に、本モデルを使用した。

2-4 .総括

本研究で作出したモデルの眼表面において、結膜側から上皮細胞が浸潤し、

眼表面を被覆したこと、また角膜の混濁や血管新生も観察された。これは角膜 上皮幹細胞疲弊症患者の病態に類似しており、今後の解析に有用なモデルを作 出できたことが分かった。さらに、本研究では、ヒト眼組織と大きさや細胞の 性質が類似するウサギ眼組織を用いたが、これはヒトやマウス眼組織での研究 では実施不可能である傷害モデルの作製や

in vivo

での経時的な観察、組織学的 解析が可能となる点で適切な動物モデルであると考えられる。

16

(26)

第3章

角膜上皮欠損モデルにおける 上皮細胞と基底膜の再形成

3-1 .序章

組織修復過程において、角膜上皮幹細胞は分裂して分化細胞を産生し、上皮 組織を再構築する。角膜上皮幹細胞は周囲の細胞や細胞外マトリクスなどの微 小環境(ニッシェ)との相互作用により制御されている

(Ihanamaki et al., 2004;

Li et al., 2007)

。また、体内で分泌された増殖因子や形態形成因子は特定の細胞

外マトリクスへ結合し、隣接する細胞の増殖や分化に影響を及ぼすことが報告 されている

(Saharinen et al., 1999)

。さらに、基底膜の分子組成は多様性を示 し、組織により異なることが知られている。眼組織では、分化細胞が存在する 角膜組織と未分化な幹

/

前駆細胞が存在する輪部組織において、基底膜構成成分 が異なることが報告されている

(Schlotzer-Schrehardt et al., 2007)

。以上より、

輪部組織特異的に存在する基底膜構成成分により、角膜上皮幹

/

前駆細胞の増殖 や分が制御されていると考えられる。本研究では、第

2

章で確立したウサギ角 膜上皮欠損モデルを用いて、組織の修復過程を上皮細胞と基底膜構成成分に着 目して解析を行うこととした。特に、基底膜主要構成成分である

IV

型コラーゲ ンα鎖の分布を組織学的に解析することで、上皮細胞の表現型獲得と基底膜構 成成分の関連の解明を目指した。

17

(27)

3-2 .実験材料および方法 3-2-1

.動物

成体のオスの白色家兎(

New Zealand White Rabbit

、株式会社日本医科学動 物資材研究所、体重:約

3 kg

)を飼育室に搬入後

1

週間以上飼育し、実験に用 いた。〔実験動物倫理委員会 審議済整理番号:

10-42

11-122

12-25

13-99

14-87

15-43

3-2-2

.組織学的解析

3-2-2-1.

凍結切片の作製方法

クリオスタットを用いて

5 μm

に薄切し、

MAS

コート付きスライドガラス(

Micro

Slide Galass,

松浪硝子工業株式会社)に転写した。切片を室温で

1

時間風乾さ

せた。

3-2-2-3.

ヘマトキシリン・エオジン

(HE)

染色

3.2.2

の凍結切片の作製方法に従って作製した組織切片において、リン酸緩衝生

理食塩水

(Ca, Mg

不含

)(Phosphate buffered saline; PBS(-),

ナカライテスク

)

5

分間洗浄しコンパウンドを洗い流した。

PBS(-)

をよく切り、ヘマトキシリ ン液

(

マイヤー・ヘマトキシリン

,

武蔵化学株式会社

)

2

分染色した。その後、

水道水で洗浄、色出しを行った。次にエオジン液で

3

分間染色した後、水道水 で洗浄した。染色が完了した後、

70

%、

80

%、

90

%、

100

%エタノール

(

和光純 薬株式会社

)

の順に包埋切片をエタノールにつけて脱水、キシレン

(

和光純薬株 式会社

)

で透徹し封入した。

18

(28)

3-2-2-4.

免疫組織化学的解析

a)

酵素抗体法を用いた免疫組織化学的解析

3.2.2

の凍結切片の作製方法に従って作製した組織切片において

PBS(-)

5

分間

洗浄しコンパウンドを洗い流した。内因性ペルオキシターゼを失活させるため ペルオシキダーゼ失活液

(Peroxidase Blocking Regent, Dako)

を滴下し、室温 で

5

分間反応させた。

PBS(-)

5

分間洗浄した後、非特異吸着を防ぐために

5

% ロバ血清含有

PBS(-)

を滴下し、室温で

1

時間ブロッキングを行った。次に

1

% ロバ血清含有

PBS(-)

で所定の濃度に希釈した

1

次抗体を滴下し、

4

℃で一晩反 応させた(表

3-1

)。その後、

PBS(-)

10

分、計

3

回洗浄し、

1

% ロバ血清含 有

PBS

で所定の濃度に希釈した

2

次抗体を滴下し、室温で

1

時間反応させた。

このとき、発現の少ないタンパクについてはアビジン

-

ビオチン複合体

(avidin-biotin complex : ABC)

を用いることにより検出の感度を高めた。

ABC

法 を用いる場合、

1

% ロバ血清含有

PBS(-)

で所定の濃度に希釈したビオチン標識 された

2

次抗体を滴下し、室温で

1

時間反応させた後、

PBS(-)

10

分、計

3

回洗浄した。続いて

HRP

標識されたアビジンを室温で

1

時間反応させた後、

PBS(-)

10

分、計

3

回洗浄した。発色の際は発色基質

(DAB, DAKO

)を添加 し、発色具合を見ながら

1

10

分反応させた。その後、核染色のためにヘマト キシリン液を用いて染色を行い、水道水で色出しを行った。洗浄・色出しを終 え、

70

%、

80

%、

90

%、

100

%エタノールの順にサンプルをエタノールにつけ て脱水を行い、最後にキシレンで透徹し封入を行った。

また、抗ビメンチン抗体の染色においては切片を風乾・洗浄後、ホルムアル デヒド

(10%

ホルマリン液

,

和光純薬株式会社

)

に浸し、室温で

10

分固定を行 った。またラット抗ヒト

IV

型コラーゲンα鎖抗体を用いた染色においては切片

19

(29)

を風乾させたのち、-

20

℃のアセトン

(

和光純薬株式会社

)

を用いて

10

分固定 後、塩化カリウム

-

塩酸

(KCl-HCl, pH 1.5)

溶液で酸性処理を行うことで前処理 を行い、免疫染色に用いた。

b)

蛍光色素を用いた二重染色

3.2.2

の凍結切片の作製方法に従って作製した組織切片において、

PBS(-)

5

分間洗浄しコンパウンドを洗い流した。その後、

5

% ロバ血清含有

PBS(-)

を滴 下し、室温で

1

時間ブロッキングを行った。次に、

1

% ロバ血清含有

PBS(-)

で 所定の濃度に希釈した

1

次抗体を滴下し、

4

℃で一晩反応させた(表

3-1

)。そ の後、

PBS(-)

10

分、計

3

回洗浄し、

1

% ロバ血清含有

PBS

で所定の濃度に 希釈した

2

次抗体を滴下し、室温で

1

時間反応させた。抗体反応終了後、

PBS(-)

10

分、計

3

回洗浄し、

1

% ロバ血清含有

PBS(-)

で所定の濃度に希釈した2 次抗体を滴下し、遮光しながら室温で

1

時間反応させた。抗体反応終了後、

PBS(-)

10

分、計

3

回洗浄した。同様に

2

種類目の抗体においても上記の手順で染色 を行った。最後に、

1

% ロバ血清含有

PBS(-)

で所定の濃度に希釈した

DAPI

を 滴下し、室温で

10

分反応させ、核染色を行い、封入剤

(Prolong Gold, Thermo Fisher Scientific

)を用いて封入した。

20

(30)

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21

(31)

次に

24

週モデル眼表面において組織学的解析に供したところ、角膜中央部に肥 厚した上皮層が観察された(図

b. 3-2, black bar

)。この部位を免疫組織化学的解 析に供したところ、

K13

は角膜周辺部で発現するのに対し、肥厚した上皮細胞 では

K13

の発現は観察されず(図

3-2, b black bar

)、

Muc5

を発現する結膜杯細 胞の局在も観察されなかった(図

3-2, c, black bar

)。驚いたことに、モデル作 製時に

K12

陽性細胞を除去したにも関わらず、この肥厚した上皮細胞は角膜上 皮細胞マーカーである

K12

を発現し、角膜上皮様細胞であることがわかった(図

3-2, d, black bar

)。さらにこの細胞は

K13

陽性の浸潤結膜上皮細胞に囲まれ、

角膜上皮幹

/

前駆細胞が存在する輪部組織とは隔離されており、この角膜上皮様 細胞はおよそ

2.5 mm

にわたって存在することがわかった。

図 3-1. 4週角膜上皮欠損モデルにおける組織学的解析

角膜上皮欠損モデル作製後、4週の眼組織を採取し、解析を行った。(a) ヘマトキシリ ン・エオジン染色、また(b) 結膜上皮細胞マーカーであるケラチン13 (Keratin 13:

K13)(c) 結膜上皮組織内に存在する杯細胞マーカーであるムチン5 (Mucin 5 :

Muc 5)(d) 角膜上皮細胞マーカーであるK12 の免疫染色の結果を示している。ス

ケールバーは25 μmKameishi et al., 2015 引用・改変。

HE K13

K12 Muc5

a b

c d

22

(32)

48

週角膜欠損モデル眼表面上においても、

K13

陽性の浸潤結膜上皮が存在した が(図

3-3, b

左)、

K13

を発現しない細胞も存在した(図

3-3, b

右)。この

K13

陰性細胞は

K12

を発現することがわかり(図

3-3, d

)、

Muc5

陽性細胞も含まな いことが分かった(図

3-3, c

)。したがって

48

週角膜欠損モデル眼表面上にも 角膜上皮様細胞が存在することがわかり、およそ

7.5 mm

にわたって

K12

陽性 細胞が存在することがわかった。以上より、角膜上皮欠損モデル作出時に角膜 上皮また輪部上皮を切除したにもかかわらず、長期経過観察により角膜上皮様 細胞が再び出現することが分かった。

3-2. 24週角膜上皮欠損モデルにおける組織学的解析

角膜上皮欠損モデル作製後、24週の眼組織を採取し、解析を行った。(a) ヘマ トキシリン・エオジン染色、また(b) 結膜上皮細胞マーカーであるケラチン13 (Keratin 13: K13)(c) 結膜上皮組織内に存在する杯細胞マーカーであるムチン5 (Mucin 5 : Muc 5)(d) 角膜上皮細胞マーカーであるK12 の免疫染色の結果を示 している。矢頭は境界部を、アスタリスクは血管を示している。また黒いバーは 肥厚した上皮を示している。スケールバーは25 μmKameishi et al., 2015 用・改変。

d b

c

K12 HE K13

Muc5 a

23

(33)

結膜上皮細胞は角膜上皮様細胞に分化転換することが報告されている

(Dua, 1998; Kinoshita et al., 1983)

。これは結膜上皮組織中に存在するムチンを発現す る結膜杯細胞の数が減少することにより示されている。また、これまでの結膜 上皮細胞の分化転換における既往研究は、角膜上皮細胞に発現する主要なケラ チンである

64kD

K3

を認識するモノクローナル抗体(

AE5

)を用いた研究で あり、ウサギ角膜上皮欠損モデル眼表面の解析に使用されている。しかし、

AE5

K3

を発現しないはずの結膜上皮細胞とも交差反応性を持つことが報告され

(Barbaro et al., 2010)

、結膜上皮細胞の分化転換においては議論の余地があると

されている。しかし近年、角膜上皮細胞の主要なケラチンタンパクであり、

K3

と ヘテロダイマーを形成する

K12

に対するポリクローナル抗体が作出され、角膜 上皮特異的に認識し、角膜上皮と結膜上皮を識別できるようになっている

(Boehlke et al., 2004; Kawasaki et al., 2006)

。本研究では角膜上皮細胞を特異的 に認識する抗

K12

抗体を用い、正常眼組織において結膜上皮細胞に反応せず、

3-3. 48週角膜上皮欠損モデルにおける組織学的解析

角膜上皮欠損モデル作製後、48週の眼組織を採取し、解析を行った。(a) ヘマトキ シリン・エオジン染色、また(b) 結膜上皮細胞マーカーであるケラチン13 (Keratin 13:

K13)(c) 結膜上皮組織内に存在する杯細胞マーカーであるムチン5 (Mucin 5 :

Muc 5)(d) 角膜上皮細胞マーカーであるK12 の免疫染色の結果を示している。矢

頭は境界部を、アスタリスクは血管を示している。スケールバーは25 μmKameishi et al., 2015 引用・改変。

a

d b

c

K12 K13 HE

Muc5

24

(34)

角膜上皮細胞のみ検出することを確認したのち、モデル眼表面の解析を進める ことで、角膜上皮様細胞の存在を明らかにした。

3-3-2

.上皮細胞の表現型と基底膜構成分子の関係

IV

型コラーゲンは主要な基底膜構成分子であり、

3

つの

α

鎖が集合して三重ら せん構造をとる

(Ninomiya et al., 1995; Thorner et al., 1996)

α1-α1-α2(IV)

は 生体内で広く分布が確認されており、ヒト正常角膜組織には存在せず、輪部・

結膜組織の基底膜に存在することが知られている。また、

α3-α4-α5(IV)

は角膜 組織特異的に局在し、

α5-α5-α6(IV)

は角膜・輪部・結膜組織のすべてに分布す ることが分かっている

(Guerriero et al., 2007; Schlotzer-Schrehardt et al.,

2007)

。このモノクローナル抗体は

IV

型コラーゲンの

C

末端領域を認識するこ

とが明らかになっており、

α1-5

鎖に対する抗体においてはウサギに交差性があ ることが示されている

(Ninomiya et al., 1995)

。本研究では

IV

型コラーゲン

α1

鎖、

α2

鎖、

α3

鎖、

α4

鎖、

α5

鎖に対するモノクローナル抗体(重井医学研究所 免疫部門 佐渡義一先生よりご供与)を用いてウサギ正常眼組織における基底膜 構成成分の解明を目指した。ウサギ眼組織において、

IV

型コラーゲン

α1

鎖と

α2

鎖は結膜・輪部組織基底膜に存在し、角膜組織には発現しないことがわかり、

さらに血管にも発現が見られた(図

3-4, a-f

)。

IV

型コラーゲン

α3

鎖は基底膜 に発現がみられなかったが、血管の一部に発現することが分かった(図

3-4, g-i

)。

IV

型コラーゲン

α4

鎖は輪部組織基底膜のみに弱く発現することがわかった(図

3-4, j-l

)。また

IV

型コラーゲン

α5

鎖は角膜・輪部・結膜組織すべての基底膜に

存在することがわかった(図

3-4, m-o

)。

25

(35)

3-4. ウサギ角膜、輪部、結膜組織におけるIV型コラーゲンα鎖の分布 正常眼組織におけるIV型コラーゲンα鎖の分布を免疫組織化学的解析を用いて検討 している。 IV型コラーゲン (a–c) a1(d–f) a2(g–i) a3(j–l) a4(m–o) a5 鎖の染 色結果を示している。スケールバーは25 μmKameishi et al., 2015 引用・改変。

正常組織 角膜

K12 陽性細胞)

輪部

(境界部)

結膜

K13 陽性細胞)

α5

a b c

d e f

m n o

α1

α2

α3

α4

g h i

j k l

26

(36)

これをもとに角膜上皮欠損モデル眼表面において解析を行った。

24

週、

48

週角 膜上皮欠損モデルにおいて、抗

IV

型コラーゲン

α5

鎖抗体を用いて免疫組織化 学的解析を行った。その結果、

IV

型コラーゲン

α5

鎖の発現はモデル眼表面の一 部に発現が観察され(図

3-5

)、これは角膜・輪部・結膜の眼表面全体に発現す る正常組織とは異なることがわかった((図

3-4, m-o

)。連続切片を用いて

K12

K13

の免疫染色を行った結果、驚くべきことに、モデル眼表面に再出現した

K12

陽性の角膜上皮様細胞下にのみ

IV

型コラーゲン

α5

鎖が発現し、

K13

陽性 の浸潤結膜上皮細胞下には発現しないことが分かった。

図 3-5. モデル眼表面上における基底膜構成成分IV型コラーゲンα5鎖の分布 IV型コラーゲンα5鎖の免疫組織化学的解析の結果を示している。(a-c) 24週、(d-f) 48週角膜上皮欠損モデル組織であり、(a, d) 角膜上皮様細胞、(b, e) 境界部、(c, f) 浸潤結膜上皮の染色結果である。矢頭はIV型コラーゲンα5鎖の発現部位を示して いる。スケールバーは25 μm。Kameishi et al., 2015 引用・改変。

24 モデル

48 モデル

a c

角膜上皮欠損モデル

角膜上皮様細胞

K12 陽性細胞)

浸潤結膜上皮

K13 陽性細胞)

境界部

b

d e f

27

(37)

Endo

らは羊膜上で角膜上皮と結膜上皮を培養した場合、角膜上皮培養下でのみ

IV

型コラーゲン

α5

鎖の発現が検出され、結膜上皮培養下では発現しないことを 報告している

(Endo et al., 2004)

。以上より、本研究で観察された

in vivo

での 結果と既往研究による

in vitro

の検討により、角膜上皮細胞は組織修復や培養環 境下など分裂が盛んな状況において、早期より

IV

型コラーゲン

α5

鎖を産生し 自身の周囲の環境を整え、恒常性を維持することが示唆される。これに対し、

結膜上皮においては正常組織には存在が確認されたが、組織修復後や培養環境 下では発現がみられないことから、

IV

型コラーゲン

α5

鎖の産生に直接関与する かを判断できず、直下に存在する繊維芽細胞が産生する可能性がある。

このように、上皮細胞の表現型と基底膜の構成には密接な関係があると示唆 されたため、

IV

型コラーゲン

α1, 2

鎖についても検討を行った。正常組織では 輪部上皮と結膜上皮細胞下基底膜に観察され、角膜上皮細胞下には発現しない 分子である

IV

型コラーゲン

α1, 2

鎖は(図

3-6, a-c

)、

24

週角膜欠損モデルに おいては角膜上皮様細胞下基底膜を含む眼表面全体に存在することが分かった

(図

3-6, d-f

)。これに対し、

48

週角膜欠損モデルにおいては角膜上皮様細胞下

基底膜には存在せず、境界部と浸潤結膜下に存在することが分かり、これは正 常組織における

IV

型コラーゲン

α1, 2

鎖の分布と類似することが分かった(図

3-6, g-i

)。したがって、上皮組織修復後、長期観察を行うと基底膜の構成が変動

し、正常組織と類似した上皮細胞の表現型と基底膜構成成分の関係へと近づく ことが分かった。また、

IV

型コラーゲン

α1, 2

鎖は正常組織とモデル組織の両 者において結合組織中のすべての血管に発現することが観察された(図

3-6,

ア スタリスク)。

28

(38)

図 3-6. 基底膜構成成分IV型コラーゲンα1, 2鎖の分布とその変化 正常眼組織 (a-c) 24週角膜上皮欠損モデル (d-f)48週角膜上皮欠損モデル (g-i) において、角膜上皮細胞マーカーであるケラチン12Keratin12: K12)と基底膜 の構成成分であるIV型コラーゲンα1, 2鎖の免疫組織化学的解析を行った。矢頭は IV型コラーゲンα1, 2鎖の発現部位を、アスタリスクは血管を示している。スケールバ ーは25 μm。Kameishi et al., 2015 引用・改変。

24 モデル

48 モデル

f

g h

d

角膜上皮様細胞

K12 陽性細胞)

境界部 浸潤結膜上皮

K13 陽性細胞)

e

i

正常組織

a b c

角膜

K12 陽性細胞)

輪部 結膜

K13 陽性細胞)

29

図   3-4. ウサギ角膜、輪部、結膜組織における IV 型コラーゲンα鎖の分布 正常眼組織における IV 型コラーゲンα鎖の分布を免疫組織化学的解析を用いて検討 している。   IV 型コラーゲン   (a – c) a1 、 (d – f) a2 、 (g – i) a3 、 (j – l) a4 、 (m – o) a5  鎖の染 色結果を示している。スケールバーは 25 μm 。 Kameishi et al., 2015  引用・改変。【正常組織】角膜(K12 陽性細胞)輪部(境界部)結膜(K1
図  3-6.  基底膜構成成分 IV 型コラーゲン α1, 2 鎖の分布とその変化 正常眼組織   (a-c)  と 24 週角膜上皮欠損モデル   (d-f) 、 48 週角膜上皮欠損モデル (g-i)  において、角膜上皮細胞マーカーであるケラチン 12 ( Keratin12: K12) と基底膜 の構成成分である IV 型コラーゲン α1, 2 鎖の免疫組織化学的解析を行った。矢頭は IV 型コラーゲン α1, 2 鎖の発現部位を、アスタリスクは血管を示している。スケールバ ーは 25  μm。K
表   4-1 .多臓器における SP  細胞の存在頻度
図   5-1. NCBI genome database (Oryctolagus cuniculus)  を用いた遺伝子発現量 比較
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