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流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化--花王の流通システムの変革と販社営業の変化をケースとして---香川大学学術情報リポジトリ

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i l j i l t ' 香 川 大 学 経 済 論 叢 第70巻 第3号 1997年12月 141-175

流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化

一 花 王 の 流 通 シ ス テ ム の 変 革 と 販 社 営 業 の 変 化 を ケ ー ス と し て 一

藤 村 和 宏

I は じ め に 消費財メーカにおける流通システム,すなわち販売,物流およびそれらを支 援する情報にかかわるシステムが高度化するにつれて,そのメーカあるいはそ の販売会社の営業マンは定型的で付帯的な取引業務から解放されている。それ により,営業マンはより高度な知識や分析力,創造性が必要とされる非定形的 な業務により多くの時間を費やすことができるようになっているし,そうしな ければ取引ができなくなっている。その背景には,消費財メーカと流通業者と の取引が高度な情報システムを介して行われるようになり,取引が行われる世 界が義理と人情の世界から標準化とシステム化の世界へと変化していることが ある。人間関係の構築・維持だけでは営業ができなくなっている。従来の商談 においては,営業マンと流通業者との聞のつき合い方一つで受注が増減してい たが,最近では,人間関係のしがらみ以上に,商品力や提案力に基づくが小売 庖頭での販売動向がものをいうようになっている。 本稿では,このような営業の変化を流通システムの発展との関係で時系列的 に考察を行っていきたい。この目的のために,花王株式会社(1

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月まで は,花王石鹸株式会社)をケースとして取り上げたが,それは花王の流通シス テムの変革が著しししかもそれが花王の成長神話を支える重要な源泉となっ ている,ということがあるためである。さらに,営業活動を支援するために, ハードおよびソフトの両面からシステムの構築と革新が抜本的に行われてい る,ということもある。

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142 香川大学経済論叢 502 花王は,1997年 3月期に 17期連続の増収増益を果たしている。売上高は前期 比3..3%増の 6,962億 9,500万円,経常利益は 5.8%増の 574億 5,400万円,税 引利益は3.4%増の 280億 4,700万円となっている。売上構成比では,パーソナ ルケア製品(石鹸,洗顔料, シャンプー・リンス,化粧品, 歯磨き・歯ブラシ など)が34..7%,ハウスホールド製品(衣料用洗剤, 台所用洗剤,住居用洗剤, 清掃用品など)が39..0%,サニタリー製品(生理用品,紙おむつ, 入浴剤など) が12..6%と,家庭用製品の売上が全体の 9割近くを占めており,残りは油脂製 品や化成品などの工業用製品となっている。 17期連続の増収増益を果たすことで,花王には成長神話が生まれているが, その源泉は原料の調達から生産,販売,そして小売庖への物流までを自社で賄 う,自己完結的な垂直的統合システムに求めることができる。流通システムに 限れば,価格安定と安定供給を目的として, 1960年代前半から全国に設立され た「花王販社」を基幹として,企業グ'ループ全体として販売や物流を合理化・ 効率化するためのハードおよびソフトシステムが付加されたことに求めること ができる。しかも,そのシステムは固定的なものでなく,時代の外部環境変化に 応じて効果的かつ効率的に適合できるように抜本的に変革が繰り返されている。 以下では, このような花王の流通システムの発展を販社設立から時系列的に まとめることで,それとの関係で販担営業マンの役割変化を考察していきたい。 II 花王販社の設立 1 .販社設立の背景 自動車や家電などの耐久消費財から化粧品,石鹸,洗剤などの日用品に至る までの消費財産業において流通革新が一斉に図れ始めていた, 1960年代前半 に,花王でも販社設立が構想されている。 1963年 9月には,花王販社の第 1号 である「福岡花王商事」が設立されている。 これは福岡県下の代理屈・卸12軒 がそれぞれ20万円,花王が 60万円を出資することで,資本金 300万円のスー ノT一向け共同販売会社として設立されている。 1966年 3月には,東京に「多喜屋花王J,神戸に「松花荷事」が設立され,本

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-143-格的な「花王販社制度」がその第一歩を踏み出している。前者は東京の有力代 理屈・多喜屋,後者は神戸の松井商庖から花王部門を分離独立することで設立 この背景には,戦後最大と言われた

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年不況、とスーパーへ されているが, の納入競争で経営が悪化していたことがある。さらに,同年5月には「販社整 備5カ年計画」が開始され,花王製品の取扱いが30%を超える代理屈には「花 王事業部制」を採用して花王部門を分離独立させる, 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 503

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-というような働き掛けが 全国的に展開されている。その結果,

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年には,関西,九州、│を中心に販社数 は24社となっている。 その全国的拡大を急いだ背景には以下のよ 花王がこのように販社を設立し, うな3つのことカまあった。 その第一は,勃興期にあり,安売りを標梼しながら商圏を拡大していたスー この当時の卸の営業には提案型営業などなく,競争手段 ノfーへの対応である。 スーノ'¥-への納入競争は激化し は納入価格の引き下げ以外になかったために, - ﹄ } J 1 5 1 i i i i l l -k ; l p i l ていた。 そのため花王にとっては, スーノfーとの取引窓口を一本化することで ブランド内競争を回避すること が必要とされていた。すなわち,交渉力を強化し価格維持を図ることで,小売 屈を含む流通業者の適正利潤を確保し,花王製品の取扱庖を維持するとともに, スーノ Tーに対する交渉力を強化するとともに, ブランド・イメージも維持することが必要とされていた。 一方,卸にとっては,当時スーパーはまだ誕生したばかりで資本力がなく, 中には際限のない価格競争で資金繰りが悪化しているところもあったため,取 引サイトの短縮化により貸倒れのリスクを減少させることが必要とされていた。 以外の小売屈に対して価格差別の正当化を行うことなども必要とされていた。 第二は,資本自由化への対応である。

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年代前半の日用品業界では,海外 商品についてはすでに商社経由で輸入されており,石鹸,洗剤,歯磨,へアケ スキンケアなどの商品は百貨庖,専門庖,高級スーパーで売られていた。 しかし, 1ドル=360円のレートのために割高感が強く,売上は芳しくなかった ことから,世界的規摸にあった日用品メーカでは日本への進出が検討されてい スーパー さらに,販売テリトリーの整備確立による効果的かつ効率な販売や, ア,

OLIVE 香川大学学術情報リポジトリ

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144 香川大学経済論叢 504 た。しかも, 1967年7月の第1次資本自由化に始まり, 1971年9月の4次まで にわたって開放経済への移行が進められ,石鹸・洗剤も, 1970年9月の第3次 で50%,第4次で100%自由化業種となっている。 しかし,日本の各メーカは世界のビッグスリーであるプロクター・アンド・ ギャンブル (P&G),コノレゲート・パーモリーブ,ユニリーパに比べればまだ 小規模で,製品政策,チャネル政策,価格政策,広告政策なども確立されてお らず,そのまま日本進出をされれば競争不能の状況にあった。この外資に対策 する体制づくりとして,花王では,販社体制の確立が進められている。なお, 競合会社であるライオン油脂(現ライオン)では,有力卸の中に「ライオン事 業」を設置することで,販売ノレートの強化が図られている。第一工業製薬,旭 電化,ミツワ石鹸の

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社では,生産販売の共同会社「日本サンホーム」が設立 されているが,経営が悪化したことから, 1972年には, P&Gに株式50%を取 得され, rp&Gサンホーム」になっている。 第三は,卸が花王製品の販売によって得た利益を他社製品安売りのための原 資としていることへの対応である。スーパーの商圏拡大台への対策として,卸も 小売庖もコスト削減策がないままに値引き競争を展開していたが,花王はこの 状況を打破し,流通業者の適正利潤を確保することを目的として,1964年10月 に再販売価格維持契約制度を導入している。この導入が可能であったのは,1953 年

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月に改正独占禁止法が公布施行され,化粧品と染毛料に続いて,歯磨きと (l) 家庭用石鹸についても,すでに公正取引委員会から一庖ー帳合制によりメーカ (2) 指示価格による再販制が法的に認められていたためである。再販制導入に伴い, 花王は専用伝票の導入や現金割引・数量割引の制度化,さらに,それにより帳 合先小売店の実態把握や卸の指導も始めたことから,花王製品は卸の有力利益 (1) 1953年 11月 10日に告示された再販売価格維持契約指定商品は,歯磨きでは半繰り歯 磨き(潤製歯磨きを含む)と練歯磨きの 2品目,家庭用石鹸では化粧石鹸,洗濯石鹸,粉 末石鹸,鉱油系ソープレス・ソープ(=合成洗剤),高級アルコール洗剤の5品目であっ た(公正取引委員会告示第 19号)。 (2 ) 花王の再販制実施が遅れたのは,花王自体が自社製品の流通チャネルを十分に把握し ていない段階で導入しでも,その効果は期待できなかったためである。

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-145-流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 505 商品になっていた。 これらにより向上した利益が,卸によって花王製品の育成に還元さ しかし, れずに他社製品の値号│き競争の源資とされていたことから,花王が再販制を導 このことから,花王は各地の有力卸に花王製品専門 入した意味は薄れていた。 部と専門セールスの設置,別便配送の実施,社内での利益管理の区分化,花王 部門の利益の花王製品の庖頭強化への再投資などの呼び掛けを行っているが,

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ト{ この方法では効果が期待できないことから,販社設立が促進されている。 2.販社体制の確立と混乱 販社設立は当時の花王や卸が直面していた問題を解決するとともに,以後の 花王の流通システムの変革および強化において重要な役割を果たすことにな る,小売店頭情報や小売庖・卸の在庫情報を夕、イレクトに収集することを可能 にしている。 このような花王による全国的な規模での販社設立に対して,各地の 代理屈や特約庖からは「商権擁護」を掲げた反対運動が展開されている。 えば,

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月には東京地区で,都下の特約庖

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庖で「花王対策協議会」が (3) 結成され,反販社運動が展開されている。同年に京都でも,京都市内の大手卸 で「京都花王販社」が設立されたのを機に, たと しかし, 日華) 京花,鈴木, 4社(西川, 設立に参画しなかった花王卸庖

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社で「花王製品京都販売権擁護連盟」が形成 京都府政の支持まで受けている。 され, 反対運動の理由としては,販社設立に参画しない代理底・特約庖は,取引か さもなければ各地域で販社と小売屈とを結ぶ代行庖とし ら全く排除されるか, また,販社設立 ての地位に甘んじなければならなくなるということがあった。 に参画したとしても,それまで取扱い量の30%以上を占めていた花王製品の販 売,すなわち取引先小売屈の花王帳合を販社という共同販売会社に引き渡さな そのため,既得権益を犯される代理庖・ (3 ) 花王対策協議会については, 1969年 6月22日に,熱海の富士屋ホテルで解散総会が関 かれている。 ければならないということもあった。

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-146 香川大学経済論叢 506 特約屈は猛烈に反発し,結束して対抗力を強めているし, それに同調するかた ちで競合メーカは3強政策(強い卸,強い商品,強い結びつき) を打ち出し卸 流通尊重の姿勢を強調している。その結果,販社設立が本格化した1966年以降, 売上ではライオン油脂の急迫を受け, 1971年度決算(花王72年3月,ライオン 油脂71年12月) では,経常利益でライオン油脂にわず、かの差ではあったが抜 かれている。 このような状況を改善するために,花王は代理屈・特約庖に対して,販社設 立に際してはそれまでの花王製品の売上・利益に応じて出資する必要があるが, 販社の運営にあたっては常勤, もしくは非常勤のポストに就くことを提案して さらに,花王は求められない限りは出資しないし,経営者のポストも要 いる。 求しないとし,運営主体はあくまでも卸であることを強調している。このよう な提案とともに販社構想は半ば強引に推し進められ,参画する屈が増えるにつ れて,反対同盟は解散されている。 1969年までには,全国で128社が設立され,最大の販社数となっている。し かし,販社設立を急ぎすぎたあまりに,各販社のテリトリーが交錯する地区が あったり,販社の規模が小さすぎて, それらが

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つのチャネル・システムとし て機能しない,というような非効率が発生している。さらに,販社に優秀な人 材が送り込まれないという問題も発生している。優秀な幹部や社員は卸本体に 残され,販社にはそれ以外という露骨な人事配置や,経営者の卸本体と販社の 二股かけが横行している。 そのため,非効率の削減と販社能力の向上を目的と して, 1968年11月には早くも,大阪市の8販担が「大阪花王製品南部販売」と 「大阪花王製品北部販売」の

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社に統合されている。同年,販社の先駆けとなっ た松花商事も「神戸花王製品販売」となり,これを皮切りに全国的に整理・統 合が進められている。その結果,1977年には,全国の販社数は84社となり,1993 (4) 年には

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販社にまで集約されている。 (4) 販社としては 10社あるが,その中の 1社(近後花王商事)は百貨庖専門の特約庖なので, 本来の販社は9社である。この9販社で8地区(北海道,東北,東京,中部,近畿,中国, 四国,九州、1)を担当しているが,地区数より一社多いのは,九州地区では沖縄が距離的に 離れているため,沖縄にも l社設置しているためである。

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-147-この整理・統合と並行して,販社業務の統一化,販社従業員の福利厚生の向 上,販社経営管理者および販社営業マンに対する教育も推進されている。 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 507 たと えば,販社共通の統一経理基準を盛り込んだ「花王ファミリー簿記」が導入さ れ, 1967年以降,この簿記に基づいた経理方式により,経営計画書,売上勘定, 各種管理表,伝票類すべての統一化が図られている。 1970年には「販社体制 5 カ年計画」が策定され,販社の賃金や賞与水準の統一,花王本社との格差是正 さらに,-花王ファミリー」の一員としての連帯感を強化する も図られている。 ために,同年 4月には,販社の全従業員が花王健康保険組合に統合され, 1972 年10月には,花王厚生年金基金にも加入している。 このように花王では販社を基軸とした流通体制を確立していくが,販社がカ バーできない地方の小規模庖舗などは代行庖という卸に取引を委託するように なっている。代行届という用語は当時の日用品業界では使用されていなかった が,販社が直接担当するのが困難な小売庖を販社に代わって引き続きフォロー この代行屈は合併や廃屈などによって 減少傾向にあるが,現在でも 1,700届程度あり,約 30万屈の小売屈の 3分の 2 をカバーしている。しかし,その取扱いの販売量は花王全販売量の12%程度に すぎないため,代行屈は効率の悪い小規模小売届を担当していることになる。 してもらうために作られた造語である。 花王販社の近代化と物流の合理化・効率化 1 .物流センターの設置とオンライ・サプライの導入 花王販社を近代化するために様々なシステムが構築されているが, タートは物流体制の構築から始まっている。大消費地である首都圏の物流を強 化するために, 1971年 3月から「物流近代化 5カ年計画」が開始され,東京に そのス

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5カ所,神奈川に 1カ所の「物流センター(DC=

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stribution Center)Jが設置 されている。物流センターは花王が土地を手配することで物流拠点として建設 ( 5) 花王製品を取扱っている小売庖数については,正確な実態把握ができていなし〉。プラ ネットの資料では40万腐とも言われているが,この背景ーには,小売業態が多様化し,様々 な小売庖(たとえば電器底やホームセンターなど)で日用品が扱われるようになっている ことカfある。

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-148- 香川大学経済論叢 508 されているが, その

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階に販桂が入居することで,商流と物流の一体化が実現 これにより,販社は再販売価格維持を図ると同時に,物流拠点と されている。 (6) しての役割も担うようになっている。最初の物流センターである「港北流通セ ここには発足したばかりの「神奈川花王販社」 この神奈川花王販社には 1972年にミニコンビュータ(三菱電 機製メルコム 83)が導入され,花王本社一工場一販社の聞がオンライン化され ンター」は 1971年 1月に完成し, が入居している。 ている。 これ以前も,花王本社と工場の聞はすでにオンラインで結ぼれていた が,販社とはテレックスで結ぼれていたにすぎないため, これが初めてのオン ライン化の導入となり, これを機に,販売情報システムの確立が本格的に開始 されている。 さらに, 1970~80 年には I ユニット・ロード・システム」 と「オンライン・ サプライシステム (OS)Jを中軸とする物流体制「ロジスティクス・システム」 が展開されている。 1970~75 年の第 1 期では,パレチゼーションによる一貫輸 送,荷役業務の近代化,工場倉庫の自動化を軸にしたユニット・ロード・シス テムが確立され,主に物流におけるハード面の整備がなされている。 1975~80 年の第

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期では, オンライン・サプライシステムを中核にコンビュータをフノレ に活用した総合的な情報処理システム「ロジスティクス・システム」が開発さ れ,物流におけるソフト面の整備がなされている。 第1期のユニット・ロード・システムの展開は,物流センターを中心に行わ れ,庫内労働の肩荷役や手荷役からの解放だけでなく,合理化と効率化が図ら れている。具体的には, 工場からの商品はパレットのままフォークリフトで中 に運ばれてラックに収容され,小口出荷用のものはケースフローラックに収め られている。 l階から 2階へはテーブノレリフターで 2パレットずつ運ばれてい る。出荷はケース出荷か内箱出荷で行われ, フォークリフトとベルトコンベア によりプラットホームに運ばれて荷揃えされている。 ピッキングは,当初は手 (6) 1960年代後半頃から再販制の弊害が指摘されるようになり,練り歯磨き・家庭用石鹸・ 合成洗剤,化粧品(1000円以下),医薬品の一部の再販指定は, 1974年9月に取消させる が,花王ではそれ以前の同年5月にそれらの製品の再販指定を自主的に取り下げている。 その結果,販社の役割jは物流拠点としての性格が強まっている。

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509 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 ず dせ ι d , A 書き伝票を

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枚ずつ荷揃えするオー夕、ーピッキングであったが,後に伝票を集 計しての号車別ピッキングに変更されている。 さらに,プラットホームへの荷揃えまでが花王の仕事(運送会社に委託され ていたが),それから先の積み込みからは販社の仕事とされることで,商品が車 に積み込まれてプラットホームを離れると販社の商品,すなわち販社の仕入れ になるように変更されている。そして,花王本社から販社、への売上は,販社が 小売屈に商品を納品した時点で計上されるようになったために,販担は原則と して在庫を持たなくなっている。 1976年には,販社在庫の花王への買い戻しも 行われ,販社は在庫負担から解放されることで,その経営は改善されている。

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しかしながら逆に,このシステムでは販社はいくら在庫を抱えていても会計上 は無在庫であり,負担にならないために,販祉は常に過剰在庫を持とうとする 弊害も生み出されている。 第2期の,総合的な情報処理システムとしてのロジスティクス・システムの 開発は, 1974年 5月の,東京の 4販社と花王本社のホストコンピュータを結ん だオンライン・サプライシステムのテストランで開始されている。同年10月に は,物流センター併設の販社との聞で,翌75年 4月からは地方の販社との聞で オンライン化が推進されている。これにより花王では,流通段階の在庫状況や 各小売庖の販売動向を従来に比べて正確に把握できるようになっている。それ までは,各地からの受注情報が全国の販社に集められ,それが販社ごとに集計 されて,本社のホストコンビュータに送られていたために,販社ごとの販売実 績は得られでも,小売店段階の販売動向を把握できていなかった。オンライン 化で小売庖の把握まで可能になっているが,この当時はまだ,販社営業マンが 小売庖訪問で受けた注文を,事務担当者がコンピュータに入力するという処理 が必要であったため,情報伝達の効率化・迅速化は実現されていない。これら が実現されるのは, 1980年に EOS(Electronic Ordering System)が開始され, さらに1983年から,販社営業マンが携帯端末機を持って小売庖を訪問するよう になってからである。

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-150-- 香川大学経済論叢 510 いるカえ オンライン・サプライシステムとは,販社の在庫量を迅速に把握し, 販売状況に合わせて商品を自動的に補充する供給システムである。 コンビュ} タによる在庫状況の把握は,現在はリア/レタイムで行われているが, このシス テムでは

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回行われ,商品補充を行うことで,在庫レベルの常時適正化が 図られている。 このオンライン・サプライシステムには4つのサブシステム, すなわち「自動積送システムJr販社在庫管理システムJr売上自動計上システ ムJr販社オンライン・システム」が開発され, 1976年から稼働している。自動 積送システムとは,販社の売上,在庫(本社も含む),月次販売予定,輸送計画 などをコンピュータに記憶させ,この情報を基に販在が必要とする商品,輸送 量を算出し, 自動倉庫に出荷を指示するシステムである。販社在庫管理システ ムとは,販社からの毎日の売上情報,入荷情報を基に,全販社の在庫を一括管 理するシステムである。売上自動計上システムとは,販社コンビュータで集計 された小売店

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日分の売上数量がその日の夕方に本杜コンピュータに伝送され ると,販社への仕切書と締切日には請求書が自動的に作成されるシステムであ さらに,仕切書や請求書は翌朝,本社から伝送されて販社コンピュータに る。 出力され,販社が近くの取引銀行で売上代金を入金することで,銀行本庖を通 じて入金情報がオンラインで花王本社に送られるようになっている。販社オン ライン・システムとは,販売, マーケティングなど情報量の増大に対応して, 本社と販社聞の情報交換をコンピュータで処理しようとするネットワーク・シ (7) ステムである。 このオンライン・サプライシステムを中軸とするロジスティクス・システム が稼働することで,在庫圧縮による在庫金利負担の軽減,輸送コストの低減, 人件費削減,需要の創造などが実現している。たとえば在庫圧縮では,花王本 社と販社の合計在庫量がL4カ月から0,,9カ月に減少している。なお,後にこ (8) のシステムは「花王

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に発展し,原料調達, (7) 花王石鹸90周年記念出版編集委員会編『四000人の軌跡.1.214-215頁。抜粋一部加 筆。 (8 ) このシステムは,販売計闘システム,生産数量管理システム,オンライン・サプライシ ステム,ユニット・ロード・システムの4システムから構成されている。

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511 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 7i 5 7i 生産管理,販売・物流の他に売上・支払いの自動積算までが統合されたコン ピュータ・システムになっている。

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広域販社の設立と販社システムの導入 1980年代になると,大型量販店だけでなくコンビニエンス・ストアでも チェーン化と広域化が進展し,情報システムも高度化したために,花王販社で もそれらへの対応として,従来の販社を合併した,より広い地域をカバーする 広域販社を設立し,販社体制を強化することが構想されている。しかし,新設 の広域販社に対して従来の販社を地域販社と呼ぶ、ならば,当時の地域販社は花 王のマーケティング戦略の傘下にありながら,各々母体の卸が大株主であり役 員でもあったために,統合には多大な時間と労力が必要とされている。 1983年 10月に東京,神奈川の 8販社が合併することで東京花王販売が設立 され,その後,山梨,千葉,埼玉,北関東・信越地区も統合されることで,花 王の日用品売上の約 35%を占める巨大販社が成立している。その他の地域でも 同様な広域化のための合併が行われ,現在では全国

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地区に

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広域販社が設立 されており,この広域販社を本届,その地域の従来の地域販社を支店(現在, 約 90社)とする構造が形成されている。なお,従来の地域販社は支庖という位 置づけになっているが,その支庖エリア内にある取引先はすべてその管轄とさ れている。 広域販社設立によって'情報処理システムも変更され,本屈に事務センターと 大型機が設置され,各支庖には端末機が設置されている。従来は,各地域販祉 の電算室ごとに,専門の担当者によって,受注入力,伝票発行,売掛処理,各 種帳票発行,マスター管理などが行われていたが,これらの作業は本屈の事務 センターへ集約化されている。この結果,支屈での売掛金管理はなくなり,代 金回収もほとんどすべて振込(日用品取扱小売庖に多い)もしくは自動振替(化 粧品取扱い小売庖に多い)にされたために,支庖では現金の出入はなく,処理 伝票も不要になっている。なお最近では, 1997年 9月にヤオハンジャパンが会 社更生法の適用を申請し,事実上倒産したように,経営危機にある小売店が増

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-152 香川大学経済論議. 512 加していることから,再び現金回収が増える傾向にある。 さらに 1986年には,小売庖の広域化に対応するために, 9広域販社の受注情 報を集約して処理する「販在システム」が導入されている。全国が 4ブ予ロック に区分され,その中に8つの地区事務センターが設立され,小売底からの受注 情報はそこで集約化されている。その後も,コンビュータ・センターは仙台, 清澄(東京),大阪(大阪支社),福岡の4カ所に集約化され,現在はさらに集 約されて

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ブロック・

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コンピュータ・センタ一体制となっている。現在,コ ンビュータ・センターは,大阪と福岡を統合した「西日本センター(1993年)J が和歌山工場内に,仙台と清澄を統合した「東日本センター(1995年)Jがすみ (9) だ事業場内に設置されている。この2カ所に設置されている販社コンピュータ で,販社の受注,物流そして売掛金管理などの基幹業務の情報は処理されている。 3 .ロジステイクス・センターの設立 広域販社の設立と同時に,従来の物流センターを集約・廃止するかたちで「ロ ジスティクス・センター(LC))Jも設立されている。この背景には,小売業界で は競争の複雑化および激化によって,コスト削減が重要な経営課題となり,商 品回転率の向上と在庫圧縮に特に強い関心が集まっていたことがある。このた め,様々な小売業態でコンビニエンス・ストアで採用されている多頻度小口納 品を採用しようとする動きが強まり,花王でも工場から物流センターまでの流 れをさらに小売庖にまで延長させ,小売庖からの発注に基づき売れた商品を売 れたときに売れただけ送り込むジャスト・イン・タイム物流体制を構築する必 要が生じている。しかしながら,従来の体制は小売庖からの注文をある程度の 数量にまとめ,定期的(週

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回)に発送するものであったため,量販底やコン ビニエンス・ストアの要求とは対極をなすものであった。 (9) 2センターへの集約化が可能となった背景には,近距離と遠距離の通信料金格差が縮 小したことがある。遠距離の通信料金が割高の時には,全国をいくつかの地域に分けて, その中心にセンターを設置するほうがコスト的に有利であった。しかし,格差が縮小した ことで, 2センターに集中した方が,人件費をはじめ光熱費など諸経費が軽減されて,全 体としてコスト削減につながっている。

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513 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 153-また,物流センター設立とそこでのユニット・ロード・システムの確立は物 流作業の合理化とそれに伴う人件費の節約には役立つていたが,受注への対応 としては効率的なものではなかった。販社が小売庖や代行届からの発注を本社 に取次ぐために,その過程で需要のタイムラグが生じるだげでなく,不測の事 態に備えて流通の各段階で過剰に在庫されたり,楽観的観測に基づいて見込み 発注がされたりしたことで,需要情報にパイアスが生じていた。その結果とし て,販社が過剰在庫を抱えたり,あるいは過剰在庫を一掃するための小売庖へ の押し込み販売なども横行していた。 このような問題を解決するために,

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年にロジスティクス・センター構想 J がもちあがり,

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年に首都圏全域の物流拠点として「川崎ロジスティクス・ センター(旧東京物流センター )Jが,その

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年後には, ]11崎の

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倍の配送エリ アを担当する「岩槻ロジスティクス・センター」が開設されている。このロジ スティクス・センターでは,コンピュータ指示による,保管から小口(ケース 単位)のピッキング,小分け,出庫までの自動化と 24時間以内納品が可能になっ ている。また,ロジスティクス・センター設立によって,一体化していた商流 と物流の分離も図られている。商流と物流が一体化していれば,必要であれば 販社営業マンが商品を配送したり,返品を引き取ることが可能である。また, 季節商品あるいは新製品の一斉出荷時には,販柾営業マンがトラックに商品を 積み込んで小売庖舗に配荷し,販促物とともに庖頭に陳列することも可能であ るため,独立小売庖が全盛期の時代には商流と物流の一体化は非常に有効で あった。しかし,小売屈のチェーン化と情報システムの高度化が進展し,販売 と物流各々の専門化・高度化が要求されるようになるにつれて,一体化の有効 性は低下していた。取引が行われる世界が義理と人情の世界から標準化とシス テム化の世界に変化するにつれて,商流と物流を分離した方が有効性が高くな り,ロジスティクス・センター設立とともに両者は分離されている。 ロジスティクス・センター設立によって,物流システムもセンタ}直送とター ミナル経由に変更されている。センター直送はロジスティクス・センターから 小売庖へ直接配送するものであり,ターミナル経由とは従来の地域販社の物流

(14)

-154- 香川大学経済論叢 514 拠点(現在,配送を行う配送拠点は約

8

0

カ所あるが,在庫が可能な在庫拠点は

6

0

カ所以下となっている)をターミナルとして利用し, そこを経由して小売庖 あるいは代行庖に配送するものである。ターミナル経由の場合,商品はロジス ティクス・センターに集約され,午後

1

時に翌日の午前便の受注が締め切られ ることで,午後にピッキングが開始され,夜にはリレ}車でコンテナがターミ ナノレに送られている。翌朝そのコンテナが

2

トン車に載せ変えられて配送され るという流れになっている。 また,午後

5

時までの受注は翌日の午後便として 夜間にピッキングが行われ,翌日リレー車でターミナルに送られ,午後にそこ から配送されている。 さらに,ハードとソフトの両面から物流の効率化を図るために, ロジスティ クスセンターの稼働と併行して,新取引基準が導入されている。具体的には, 業態および規模ごとに発注単位が定められ, それを順守することによる「発注 単位割引J,納品目が指定され, その順守による「指定納品日割号

I

J

, さらに最 小配送金額が定められ, その順守による「配送ユニット割ヲ

I

J

が導入されてい る。 しかし, このことは小売庖(特に, 一般小売庖)側から見れば,商流と物 流が一体化していた時代のような納品の融通性が無くなったということであ り, サービス低下になりかねない危険性を苧んでいた。 また,返品の仕組みも 変更され,従来は販社営業マンが引き取っていたが,販社営業マンが庖で返品 を梱包した上でデータを送信し,配送日にドライパーが引き取るようになって いる。 このようなロジスティクス体制が確立されることで,在庫の偏在と過剰 は解消の方向に向かい,現在では, 前述の販社システムおよび生産情報システ ジャスト・イン・タイム物流が可能になっている。 ムが連動することで,

4

.

T C R活動による物流合理化の推進 るカま,

1

9

8

0

年代には,日用品市場は成熟化し,小売庖頭では価格競争が激化してい その中で花王は販売量の維持・拡大を図ったために,同社の販売管理費 は著しく増加している。売上高に占める販売管理費の比率は

1

9

8

1

3

月期の

3

2

.

.

9

%

から

1

9

9

3

3

月期には

4

5

..4%に拡大している。その中で特に伸びが大

(15)

515 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 -155-きいのは,販売目標を達成した小売店に対する奨励金や,値引き販売に対する 補填費であり,それらを賄う販売手数料の売上高比率は

8

1

年同期の

7

.

.

3

%

から 0 .0)

9

2

年同期には

1

3

.

.

1

%

と倍近くに膨らんでいる。さらに,物流コストも物流の多 頻度小口化や取引業務の煩雑化などのために増加している。 その一方で,大手 チェーン小売庖が花王製品と競合するプライベート・ブランドを積極的に発売 するようになったために,増加しているコストが吸収できるだけでなく,価格 競争力を強化できるような合理化が必要となっている。 その合理化活動として, 1986~95 年に 3 次にわたって全社的な TCR 活動が 展開され,在庫の適正化,物流コストの削減,業務の効率化などが追求されて いる。 しかし, この過程で

TCR

自体の意味は変質しており, 1986~90 年の第 l次はトータル・コスト・リダクションとして,全社的なコスト低減が目標さ れ, 1990~92 年の第 2 次はトータル・クリエイティブ・レボリューションとし て,個々の社員の仕事の省力化とより創造的な仕事の拡大が目標とされている。 さらに, 1992~95 年の第 3 次はトータル・コンシューマ・レスポンスとして, コストおよび時間の2分 の し サプライ・システムの効率化とサービス向上な どが目標とされている。 物 流 合 理 化 も 各

TCR

活 動 で 積 極 的 に 展 開 さ れ て お り , 第

1

TCR

活 動 で は,物流拠点、の立地見直しと中規模の物流拠点の統廃合が行われ r大型ロジス

ω

ティクス・センター」が構想されている。

1

9

9

4

年 11月から稼働している「坂出

(

1

0

)

運輸省の物流費算定基準によると,原材料の調達から,生産した商品の保管,取引先へ の配送までにかかる費用を指している。具体的には,包装費,輸送費,保管費,荷役費, 値札付けなどにかかる流通加工費,さらに通信費などが含まれる。 (11) 化粧品と日用品の物流分離は,

1

9

9

1

年に完了している。

1

9

8

8

年から,大阪,名古屋, 広島など 6カ所に化粧品専用の物流センターが新設されるとともに,全国

9

0

数カ所の物 流拠点が 9カ所に集約化されている。関東甲信越地区では,日用品と同じ岩槻および川崎 のロジスティクス・センターで代行されていたが,松戸市の家庭品松戸流通センターが化 粧品専用の物流センターに転用され,両ロジステイクス・センターからそこに全面的に業 務移管されたことにより,化粧品の物流体制が完成している。これにより,従来は工場か ら直接各地の流通センターへ配送されていたのが,工場からの商品は新物流センターに 出荷され,そこから各地の流通センターへ配送される方式に変更されている。このように 流通在庫を集中管理することで,流通センタ一段階での過剰在庫の削減とともに,欠品な どへの対応、の迅速化が図られている。

(16)

-156 香川大学経済論叢 516 ロジスティクス・センター」はその1つとして設置されているが,このロジス ティクス・センターは入手不足への危機感や,大手チェーン小売庖からの多頻 度小口納品要請などを背景として建設されたため,世界で初めて,商品の補給 からピツキング,コンテナへの収納までの無人化が行われている。小売店配送 用のコンテナに各種商品を詰めるパラピッキングは,ロボットが同一品種の商 品が入った段ボール箱をコンベヤーから取り上げて解梱し,小売庖単位の多様 な受注情報にしたがって自動的に仕分けることによって行われている。しかし 現在では,無人化の前提となった外部環境は逆転しており,入手不足は解消さ れ,小売底も地域物流センターを設置し,そこへの一括納品を要求するように なっている。さらに,巨i大でロボット至上主義的な最先端のロジスティクス・ センターには巨大な投資が必要とされるが,小売屈のコスト意識がますます高 まっている状況では採算が合わないことや,大型設備では物流作業手順の柔軟 な変更や作業の平準化が困難なこともあり,再び人手と情報システムを組み合 わせた中規模のロジスティクス・センターへ回帰されている。 なお,販社でも, 1989年からTCR活動が開始され,約定日配送や取扱単位 などの取引制度の標準化や,値付けや特別の請求書作成などの例外活動の排除 (あるいは有償化)が推進されている。 第2次TCR活動では, 1993年2月に「物流本部」が新設され,物流担当組 織がそれまで工場から販社までの商品の流れを監視する物流部と,販社から小 売店への配送を担当する販売部門内の物流経営支援グ、ループに分かれていたの が統合されている。さらに同年12月には,生販一体化を目的として,この物流 本部に無駄のない最適配送網を科学的に組み立てるグループや,各地域の在庫 を管理するグループが統合されて Iロジスティクス総合センター」が組織化さ れている。そして, 1993年10月からすでに開始されている「生販一体化プロ ジ、エクト」を推進する中核組織となり,販売会社とロジスティクスセンター, 複数の工場との一体化運営を可能にしている。 花王の物流システムは現在,工場からロジスティクス・センターへの「工場 物流システム」とロジスティクス・センターから小売庖までの「販社物流シス

(17)

517 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 157-テム」の

2

っから構成されているが, ロジスティクス総合センターは工場物流 システムにおいて生産,販売,物流を結ぶ、司令塔の役割を担うようになってい る(図1参照)。従来は,販社は形式上無在庫で営業できる会計制度になってお り,いくら在庫を抱えていても負担がかからないことから,常に過剰に在庫を 抱える傾向にあった。 また,各工場やロジスティクス・センター間で在庫情報 の交換が行われていなかったために, ある地域では過剰に在庫があるのに,他 の地域では, その同じ商品を必要配荷量だけ確保できないことから残業で生産 するということが起こっていた。 このような問題を解決するために, この組織 化では,全国の販社に需給在庫担当者が配置され,全社ベースで生産から販売, 物流までにかかわる情報が一元管理されるようになることで,工場物流におけ

ω

る品切れの最小化,在庫量の適正化,輸送効率の向上などが図られている。 また, もう一方の販社物流システムは,販社物流情報システムで運営されて いる。EOSあるいは販社営業マンの携帯端末機から送信される小売屈の発注情

-・

工 場 物 涜

-図1

販 社 物 流 花王における日用品の情報・物流の流れ 出所・平坂敏夫(1996),200真。一部加筆修正。 t (12) 物流の効率化を支援するシステムとして「配送スケジューリング・システム」も開発さ れ, 1995年から首都圏全域で展開されている。このシステムは, 1993年にすでに導入さ れているコンピューグ支援による運行システム

(

T

S

S

)

を発展させたもので,納期や配送 .ill,周回するコースの渋滞情報などを考慮して,最高の積載効率と最短の運行時間で済む コースを算出するものである。

(18)

-1ふB- 香川大学経済論叢 518 報は,販社システムの東西2カ所にあるポストコンビュータに蓄積され,配送 先庄舗の地域別に全国約80カ所のロジスティクス・センターへ自動的に振り分 けられるようになっている。ロジスティクス・センターでは,出荷指示に基づ いて,小売店の地域と配送時間別にパッチ編成をして,商品のピッキング作業 が行われている。なお,パラピツキングは従来は手作業で行われていたが,前 述の坂出ロジスティクス・センターのように自動化が進められている。 表1 流通システム構築の歩み 年 代 内 容 目 的 1 960 販売会社設立 価格安定と安定供給 1 9 7 0 物流センターの設立 商 物 の 体 化 物 流 効 率 化 の 基 盤 確 立 パレチゼーンヨンの導入 荷役業務、輸送効率の向上 花王 販祉関のオンライン化 市場情報の迅速な把握、取引業務の効率化 オンライン サ7ライ システム稼働 在庫の削減 1 980 販 社 小 売 庖 問 のEOS受注開始 受注業務の効率化 花王 販 社 小 売 庖 岡 の 情 報 ネyトワーク構築 市場情報の迅速な把握 広域版社とロジスティクス センターの設立 商物分離による物流の効率化 版社システムの導入 取引業務の効率化 製品アイテムの整理統合 生 産 販 売 物 流 の 効 率 化 版社首業マンの直行直帰制度の導入 販売効率の向上 携帯端末PO'Iの導入 販売効率の向上 小 売 庖 頭 支 援 シ ス テ ム の 開 発 活 用 販売効率の向上 代 金 回 収 の 自 動 振 替 振 込 化 取引業務の効率化 新取引基準の導入 配送、庫内作業の効率化 値 札 付 け 返 品 欠品などの極小化 物 流 コ ス ト の 低 減 サ ー ビ ス 強 化 1 990 情報システムの再構築 情報の共有化 ロジステイクス総合七ンターの組織化 生販一体化による在庫の最適化と輸送効率の向上 チェーン小売庖とEDIの取組 生 産 販 売 物 流 の 効 率 化 共同物流の開始 物流の効率化 プラネyトでのオンライン サプライの開始 業界全体の取引業務の効率化 出荷作業の無人化に成功 Jil1内作業の効率化、サービス強化 新配送スケジュールリング システムの導入 輸送効率の向上

(19)

519 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 -159-表

1

1

9

6

0

年代以降の物流にかかわる変革をまとめたものであるが,花王で は,外部環境変化に対応するかたちで常に既存のシステムの見直しが行われ, 必要ならば抜本的に変革が行われることで,物流の効率化・合理化が継続的に 追求されている。

I

V

クローズド・システムからオープン・システムへの転換 1. 全社的な情報システムの再構築

1

9

9

2

年から全社的な情報システムの再構築が推進され,

1

9

9

5

1

0

月にその 第

1

段階が完了し,情報システムは購買から生産,販売,物流までの定型的業 務を処理する基幹系システムと,非定型的業務を処理するエンドユーザー・コ ンピューティング

(

E

U

C

)

系システムとに分離されている(図2参照)。このよう に目的別にシステムを明確に分離し,両システムが相互補完的に機能するよう にすることで,効果と効率の同時達成が図られている。この再構築は段階的に 以後も継続されているが,後述のオープン・システムへの転換の胎動ともなっ ている。 基幹系システムではホストコンピュータの統合が行われているが,その背景 には,社内におけるハードの不統一が情報共有化の障害になっていたことがあ る。花王では

1

9

8

0

年代より積極的に

OA

化が推進され,業務の合理化が実現さ れている。しかし,各部門それぞれの判断で

OA

機器が導入され,部分修正が 重ねられてきたために,部門間での共同作業や情報共有には支障が生じていた。 ホストコンビュータは,業務内容によって

IBM

F

ACOM

UNISYS

ACOS

, DECの5種類が利用され,それぞれの上で必要な情報システムが構築されると ともに,ホストそれぞれに専用端末機があるために,業務が異なれば端末機も 変えなければならなくなっていた。そのため,このシステムでは個々の業務の 局所的な最適化は実現されていたが,業務全体としては最適なものとはなって いなかった。再構築では,ポストコンビュータは生産情報システムなど生産系 を処理する DECと,販売物流,販売・マーケティング,工場物流,購買,会計, 人事にかかわるシステムを運営する IBMの2機種に統合されている。

(20)

160ー 香川大学経済論叢 520 EUC系システムはクライアント・サーバー・システムであり,全社共有のデー ターベースを設け,基幹系システムから生データを吸い上げて保存することで, そこからすべての社員が端末機で必要な生データを自由に取出して加工できる ようにしたものである。共有データベースには, IBMのリレーショナル・デー タベースである DB2が採用されている。端末機はWindows95搭載のDOSjV パソコンで統一されるとともに,ワープロ専用機などが排除されることでハー ドとソフトの分離がなされている。このことは,必要な情報を適時検索できた としても,加工や分析が容易にできなければ情報の鮮度が低下するし,構築し た共有データベースも宝の持ち腐れになってしまうことから, LAN(構内情報 通信網)に接続でき,データの検索から加工,資料作成までを様々なアプリケー ションソフトで行えなければならない,という必要性から実施されている。 このようなEUC系システムの分離と共有データベースの設置の背景には, 従来構築されてきたホストコンピュータ中心のシステムは,定型的業務を大量, 高速,安定的に処理するのには適していたが,その専門家でなければ情報を自 由に処理できないということがあった。業務遂行に情報を必要とする社員の情 図2 花王の新情報システム EUC系システム (非定形的業務) 基幹系システム (定型的業務) 出典:平坂敏夫 (1996),22頁。一部加*

(21)

521 流通システムの高度化がもたらす営業の役割j変化 7i 6 7'4 報ニーズは極めて広いにもかかわらず,アウトプットされるのは定型の帳票 フォーマットなど,システム開発部が加工した情報だけであり,これではホワ イトカラーの生産性や創造性の向上を期待することができなかった。さらに, 市場の不透明化が進行するにつれて,マーケティング,生産,販売,物流とい う業務間それぞれの連携強化が強く求められるようになれ情報の共有化が必 要不可欠になっていることも背景にあった。情報が共有化されていないと,部 門間で断絶が起こり,非効率が発生してしまう。たとえば,過剰在庫や欠品の 多くは,販社,本社,生産部門の間で情報が断絶していることによって生じて いた。欠品は,商品が実際に物流拠点、にないことによっても生じていたが,商 品コードがメンテナンスされずに旧コードのまま受注情報として送信されるな ど,販社から本社への情報伝達が正確に行われていないことからも生じていた。 また,生産部門における生産計画は事業部の販売計画に基づいて作成されるが, 販売計画は人為的で不確定要素が多すぎるために,実際の販売量と生産量の聞 にギャップが生じ,過剰在庫が発生していた。このことから,個々の業務それ ぞれの効果と効率の向上だけではなく,業務のシームレス化によるグソレ}プ企 業全体の効率向上にも,情報の共有化は必要不可欠となっていた。 また,

1

9

9

0

年には,国内外の企業グループおよび全事業所を結ぶ企業内パソ コン通信「カスタネット

(KASTANET=KaoS

u

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Talk Network)

Jが構 築され,

1

9

9

3

1

月からは,新カスタネットが稼働している。

1

9

9

4

1

1

月に は,インターネットと接続され,

1

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9

5

年には花王のホームページ

(

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も開設されている。これによれ情報共有だけでなく,企業 グループ内外とのコミュニケーションも促進されている。しかし最近では,平 等主義・共有主義の見直しが始められており,社内では共有はあまり強調され なくなっている。それは,業務遂行のために必要な社員が必要な情報を検索・ 加工するのならば有効であるが,必要でない社員までが見てしまうことで弊害 もでてきているためである。

(22)

-162- 香川大学経済論議 522

2

.

EDIへの共同取組 取引業務の合理化を図るため,

1

9

9

3

1

0

月からは,ジャスコとの取組によっ て, EDI(電子データ交換)による商品情報システムの共同活用が開始されてい る。 EDIとはメーカと小売庖が相互に販売実績情報や在庫情報をオンラインで 共有化することで, 自動的に商品発注を行うシステムである。 これによって発 注,納品,代金請求,支払いといった取引業務がすべて伝票なしのペーパーレ ス化されるだけでなく,煩雑な検品作業も不要となることから,取引業務にか かっていた莫大なコストと時間の削減が可能になる。コストや時間の非効率は, 異なる部門聞の接点で相互作用(伝達)が展開される過程で発生することが多 しユカま, それは, その接点で業務が分断されており, その受渡し過程でロスが発 生するためである。 EDIによる情報は接点での分断をなくし,部門聞をシーム レス化することから,ロスとなっていたコストや時聞を削減することを可能に する。たとえば,花王が1年間に発行する伝票はジャスコ向けだげでも 36万 枚 にのぼるとされており, さらに,納品のたびに,納品側のドライパーと小売店 舗の荷受け担当者が立ち会い,伝票と商品を照らし合わせる検品が行われるた めに,それらには膨大なコストがかっている。また,日本では帳票類は法律上, 7年間保管することが義務づけられていることや,納品伝票が取引先ごとにほ とんど専用伝票化してたりすることも,コスト増となっている。 こうした伝票問題はEDIによって2社聞では解決され,両社の事務効率化は 向上している。ジャスコの各庖で部門別に発注情報が入力され,この情報が花 王に送られ,欠品がない場合にはそのまま花王の納品情報となっている。発注 書,納品書は廃止され,代わりにそれぞれの明細書を双方が発行して控えを保 管することで,法規上の問題は回避されている。納品は,花王で端末機から納 品明細書が発行され, これに従ってピッキングされたものがジャスコの各庖舗 へ配送され,明細書に記されたケース数の確認が行われるだけで, 立会検品や 受領書のやりとりは行われていない。なお,両社間で立会検品を廃止できたの は,花王のピッキングシステムの精度が高く,誤納率が低かったためである。 このEDIに取組むにあたっては,データ交換に必要な商品コードもジャスコ

(23)

523 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 163ー 独自の自社コードから JANコード(日本商品共通コード)に切り替えられてい る。これによって相互のコードの読み替えと煩雑なメンテナンスも不要となり, コンビュータでの商品情報の交換が簡素化されている。さらに,商品情報を共 有し,両社のノウハウを持ち寄ることで,最も効率的な棚割りを即時にコン ピュータ画面上でシュミレーションすることも可能になっている。このように,

.

J

ANコードという共通コードへの切り替えによって,ジャスコでは入手のかか る棚割り作業が不要になり,花王では売れ筋商品を必要量だけ生産することが 可能になっている。

EDI

取組のメリットとしては,さらに,商談の透明性が 高まるということもある。従来の商談では,販社営業マンと小売屈のバイヤー との聞のつき合い方一つで受注が増減していたが,

EDI

によって,人間関係の しがらみ以上に数字がものをいうようになり,取引の不透明さが解消されてい る。

1

9

9

4

3

月には,ジャスコの

2

庖舗で自動補充発注の実験が開始され,

EDI

はさらに進展している。この実験では,両社の販売実績情報から予測された販 売量に基づいてある一定の在庫水準が設定され,その水準まで庖舗在庫が減る ことで,自動的に追加発注されるようになっている。従来の商慣習では,発注 は小売庖の特権であれ最も重要な業務であるが,

EDI

によって相互に販売実 績,在庫などの主要情報がすべて共有されることで,追加発注の権限も花王に 委ねられている。このように

EDI

への取組を通じて両社が相互にオープンにな ることで,ジャスコは煩雑な発注業務から開放され,花王は生産および在庫調 整が容易になるというように,両社とも効率化されている。しかし一方で,様々 な要因によって日々変化する小売庖の売上に対応していた融通性のある受発注 の余地を狭めるという問題も発生しているが,現在では,

EDI

受注は約

3

0

社の 大手チェーン小売屈との聞にまで広げられている。 3.オープン・システムへの転換 販社設立以来の積極的な流通システムの変革と自己完結的な垂直的統合シス テムの確立は花王の成長神話の源泉の

1

つとなってきた。しかし,

1

9

9

0

年代に

(24)

164ー 香川大学経済論叢 524 入札大手チェーン小売庄の多くが自社で強大な地域物流センター(あるいは 配送センター)を設置し,メーカにそこへの一括配送を要求するようになるに つれて,成長神話の支えてきたシステムが逆に花王の弱点に転じ,成長の妨げ になり始めている。たとえば,

1

9

9

4

年にセブンイレブン・ジャパンが花王に対 して,各庖舗への配送ではなく配送センターへの一括納入を認めさせたのを機 に,夕、イエー,ファミリーマートなどでもセンターへの一括納品が実施される ようになり,一括納品はすでに全物流量の

1

割を超えている。花王は各小売店 舗まで自社で配送する体制を敷いてきたために,小売業のこのような動きに よって,花王の巨大な物流システムは稼動率低下を余儀なくされている。 さらに,小売庖頭での激しい価格競争が長期化する中で,個々の企業の合理 化努力では限界に達していることから,業界全体としてメーカから小売庖まで の全体を最適化・効率化していくための新しい仕組みの構築が必要とされるよ うになっている。 これらの要因が絡み合った結果,花王では自己完結型のクローズド・システ ムから業界協調型のオープン・システムへの転換が必要となり,

1

9

9

6

7

3

0

日にこの大転換が表明されている。そして,そのための試みとして,共同物流, 日用品業界共同VAN(付加価値通信網)会社「プラネット」への加盟, EDIの ノTッケージソフトの外販などが開始されている。 共同物流は,販社設立以来構築してきた巨大な物流システムを,同業種の日 用品メーカだけでなく食品など異業種にも開放し,参加を募ることで,参加メー カの商品を花王の物流拠点、に集め,専用車両に商品を混載してチェーン小売屈 の地域物流センターや居舗に一括配送するシステムである。つまり,卸に帳合 は残すものの,商品は卸を通さないで,各参加メーカから直接,花王の物流セ ンターに納品してもらい,小売庖に配送する仕組みである。 これを実施するために,

1

9

9

6

7

月には,物流子会社「花王システム物流」 が設立されている。この新会社の資本金は1億円で,花王が60%,花王の8販 社が40%を出資することで設立されている。事業内容は,物流にかかわる企画, 開発,営業などで,倉庫内作業や配送は「花王ロジスティクス東京J,r花王ロ

(25)

525 流通システムの高度化がもたらす営業の役割変化 -165-ジスティクス近畿」などの各地の花王の物流専門会社8社が行うようになって いる。1997年5月から,神奈川県下のイトーヨーカ堂庖舗33カ所で実験的に開 始され,同年8月からは本格的な営業も開始されている。なお,イトーヨーカ 堂との共同配送が実験的でも実現された背景。には,花王が構築してきた物流シ ステムの信頼性が高く,その誤配率はイトーヨーカ堂が委託している専門物流 業者(衣料品でO引15%,日用雑貨品で005%)に比べても低いことがあった。 しかし,この共同物流は配送機能だけとはいえ,競合メーカからすると自社の 新製品情報や販売情報が花王に流れてしまうことから,不参加や対抗手段とし ての同種の新物流システム構築などの動きも出ている。 花王によるプラネットへの加盟の申し入れは1996年7月に行われ, 1997年 2月には承認され,同年 4月から向上でのオンライン・サプライが開始されて ω) いる。プラネットは花王が独自に情報および物流システムを構築しているのに 対抗し,卸とオンライン取引を促進する目的で,卸流通を基軸とする日用品メー カによって設立されたものである。そのため長い間,日用品業界における小売 店・卸・メーカ聞をオンラインする情報システムは花王とプラネットにほぼ二 分されており,対立関係にあった。 花王がこの競合関係にあるプラネットへ加盟した背景には,代行屈の中には 花王以外のメ}カの製品も扱い,プラネットに接続している庖もあるが,この ような庖では花王製品用の情報システム端末機とプラネット用の端末機を揃 え,両者を使い分けながら受発注をしなければならない,という非効率が発生 していたことがある。さらに,共同物流やEDI標準化を進展させるには,情報 (13) プラネットは, 1985年8月に,資生堂,サンスター,ジョンソン,十傑キンパリエ ステー化学,牛乳石鹸を含む大手8社と大規模VAN会社インテックの共同出資によっ て設立されたものである。ライオンは1980年から卸146社との聞にプライベート VAN (LCMS))を構築していたが, 1984年に,ユニ・チャームがこの共同利用を申し入れ,同 年10月に両社で共同利用が発表されている。さらに, 1985年1月には,プラネット構想、 が発表されている。 1987年2月に,通信テストを経て本格的に稼働し,同年8月には出資8社と卸100社と の間で受発注オンライン・システムがスタートしている。また,1987年4月にはメーカ20 社と卸160社,同年11月にはメーカ24社と卸206庖がプラネットで受発注業務を行う ようになっている。

(26)

-166- 香川大学経済論叢 526 システムが一元化されていなければ非効率であることや,単価下落が続き,業 界全体としての効率化のための新しい枠組みづくりが必要とされていることも ある。

E

D

I

ソフトの外販では,

1

9

9

6

年7月に「花王インフォネットワーク」が設立 され,

IBM

と の 共 同 開 発 の 流 通 向 け の 統 合

EDI

パ ッ ケ ー ジ ソ フ ト

'EDIPACK

Jなど,

E

D

I

関連製品の製造,販売が開始されている。新会社の資 本金は

5

0

0

0

万円で,花王の全額出資となっている。前述のように花王は

1

9

9

3

年からジャスコと

E

D

I

に共同で取組み,流通システムの効率化と高度化を図っ ているが,この

E

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ソフト発売はそのノウハウの外販という形になっている。 クローズド・システムからオープン・システムへの大転換に向けて,流通に 関しては以上のような試みが開始されているが,これらは花王版

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-cient Consumer Response)取組の胎動と捉えることもできるかもしれない。 V 営 業 の 変 化

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.物流近代化とコンビュータ導入による変化

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年代)

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章では,販社設立から今日までにおける,花王の流通システムにおけ る変革を概観したが,本章では,それによる営業の変化を年代別に考察したい。 販社の近代化を目的として,

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年から東京に

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カ所,神奈川に

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カ所の物 流センターが設置されているが,これと併行して,固定配送と固定訪問が採用 されている。これにより午前便配送と午後便配送が可能になり, 24時間2回配 送が実現されている。午前便配送の場合,販社営業マンが

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組となること で,決められたブロックを各々が回訪し,午前11時半までに受注を行い,それ を社内の販売事務担当者に電話連絡することによって行われている。伝票は販 売事務担当者によって作成され,その中の出庫伝票が同フロアに同居している 運送会社の社員に渡されることで,ブロック別に集計され,午後にはピッキン グが開始され,翌朝に積み込んで配送されている。午後便配送の場合には,販 社営業マンが帰社してから午後のセールス受注分の伝票が作成され,翌朝午前 便が出発したあとにピツキングされ,配送されている。代金回収は,一般小売

参照

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