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博士(地球環境科学)保住建太郎 学 位 論 文 題 名 Nucleoplasmin Regulates Nucleosome Assembly and Disassembly

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Academic year: 2021

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博士(地球環境科学)保住建太郎      学 位 論 文 題 名

Nucleoplasmin Regulates Nucleosome     Assembly and Disassembly

(ヌクレオプラスミンによるヌクレオソーム再構築に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  真核生物の遺伝情報の源であるDNAはクロマチンと呼ばれる高次構造の中に折りたたま れている。クロマチンは遺伝情報を安定に保っとともに、発現の制御をおこなっている。ヌ ク レ オソ ー ム構 造はク ロマチン を形成 する最小 単位で 、2つ のH2AとH2Bの2量体 と1つ のH3とH4の4量 体 で 構成 さ れ るヒ ス ト ン8量 体 コア の ま わり を146 bpのDNAが左巻 き で1.75回転巻き付いている。このヌクレオソーム構造は非常に安定した構造をとっており、

転写 やDNAの複製の 際以外 は転写因 子がヌク レオソ ーム上のDNAと 結合することを抑制 する。一方、精子核中のDNAはヌクレオソームとは異なるさらに密な構造を取っており、

受精の際にこの構造は変換される。アフリカツメガェルの卵中から精製されたヌクレオプラ スミンは、受精時に精子核の凝集構造中のDNAをヌクレオソームヘと変化させる分子シャ ベロン蛋白質である。酸性で熱に安定な蛋白質であるヌクレオプラスミンは塩基性蛋白質で あるヒストンと結合することにより、ヌクレオソーム構造を構築するものと考えられている。

実際、ポリグルタミン酸などの酸性高分子がヌクレオソーム構造の再構築を促進することが 知られているがその詳細な分子機構はよくわかっていない。また最近、ATP依存性で効率よく ヌクレソーム構造を構築する因子の存在が示されてきており、ヌクレオソーム構造が複数の 因子によって複雑な過程を経て構成されることが示唆されてきた。本研究では、ATPを必要 としないヌクレオソーム構築因子であるヌクレオプラスミンには、酸性蛋白質であるという 他に何か特別な構造や働きを持っているものと考え、ヌクレオソーム構造に対するヌクレオ プラスミンの働きを総合的に検討した。

  第1章 で は本 論 文 の 序論 と し て、 こ れ まで の 研 究や 本 研 究の 位 置づ けを述 べた。

  第2章では、分光学的研究には従来の精製法によって得られるヌクレオプラスミンは微量 であるため、一回の精製でヌクレオプラスミンが1‑2 mg得ることができ効率的に大量の蛋 白質を高純度で得られるよう改良した精製法について述ぺた。また精製されたヌクレオプラ スミンが溶液中でどのような構造を取っているかを検討した。これまでの研究でaーヘリック ス構造をもっていると考えられてきたヌクレオプラスミンが生理的条件下では主にDシート 構造をとっていることが示唆された。また、トリフルオロエタノール溶液を加え擬似的な疎 水的環境とした場合、ヌクレオプラスミンは高度にa―ヘリックス構造をとることがわかった。

これらの結果から、ヌクレオプラスミンはa―ヘリックスとpシートという異なる二次構造を と る こ と が で き 、 そ の 働 き が 構 造 変 化 に 起 因 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。   第3章で は、ヌク レオプラスミンとヒストン及びDNAとの相互作用を螢光スペクトルを 用い て検討 した。その結果、ヌクレオプラスミンはヒストンH2A‑H282量体と特異的に結 合することがわかった。そこでさらに、ヒストンをその構成因子にまで分別し同様の検討を

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行ったところ、ヌクレオプラスミンは5種類のヒストンに親和性があるが、特にヒストンH2A ともっとも強く結合することが明らかとなった。また、これまでDNAと相互作用をおこな わないとされてきたヌクレオプラスミンであるが、螢光測定の結果ヒストンに対するものと は異なる形で相互作用をおこなうことがわかった。

  第4章では、ヌクレオソーム構造に対するヌクレオプラスミンの働きを、CDスベクトル を用いて検討した。ヌクレオプラスミンがヌクレオソーム中のヒストンに対して等量存在す るときヌクレオソーム構造が安定化されることが明らかとなった。ポリグルタミン酸を用い た対照実験でも同様な結果が得られたが、ヌクレオプラスミンの作用に比べるとその働きは 弱くヌクレオソームの安定化は酸性度だけに因らないことがわかった。さらに、ヌクレオプ ラスミンが大量に存在する系での検討を行ったところ、ヌクレオプラスミンはヌクレオソー ム構造中のヒストン及びDNAに自由度を持たせることが示唆された。アガロース電気泳動 にてDNAの挙動をみたところヌクレオプラスミンが大量に存在する系でのヌクレオソーム 中のDNAはDNA分解 酵素よっ て簡単 に断片化 されるこ とから 、大量のヌクレオプラスミ ンがヌクレオソーム構造に自由度を与えDNAとヒストンのとの強固な結合をやわらげてい ることが分かった。またSDSを用いない系での酸性緩衝液系電気泳動と等電点電気泳動では、

ヌクレオヒストンからヒストンを押し出すことが観察された。このことから、大量にヌク レオプラスミンがある場合ヌクレオソーム中のヒストンもまたDNA同様その自由度を増し ていることがわかった。ポリグルタミン酸を大量に添加した系ではヌクレオヒストンは強い パンドを1っだけ示すのに対し、ヌクレオプラスミンを添加した系ではヌクレオソーム、ヌ クレオプラスミンともにそのパンドが弱まるように広がることからお互いが相互作用をして いることが示唆された。これらの結果から、ポリグルタミン酸によるヌクレオソームの安定 化は塩基性電荷をもっヒストンに対する単なる凝集と考えられるが、ヌクレオプラスミンは ヌクレオソーム構造を安定化させるとともに、ヌクレオソームを構成するヒストン、DNAに 自由度を与えていることが明らかとなった。

  以上の結果より、ヌクレオプラスミンはヌクレオソーム構造を単に構築させるだけでなく、

DNAやヒストンにある程度の自由度を持たせつつ安定したヌクレオソームを作ることが示 唆された。これはATPを用いないでヌクレオソーム構造を構築し、核内に豊富に存在する ヌクレオプラスミンが、物理的にヌクレオソームを安定させつつ生体中で起こる様々な反応 に対して遺伝情報の源であるDNAを活性化している可能性を示唆するものである。この研 究は、分子シャベロン蛋白質としてのヌクレオプラスミンの働きを基盤としたDNAの活性 化という生体中での根幹をなす反応を解明するための第一歩になると考えられる。また、ヌ クレオソーム構造の構築・分解の段階でのDNAの制御機構の解明は様々な疾病の原因解明、

予防、治療に対して、また生体に関連した環境問題の分子レベルでの解明においても重要な 知見を与えるものである。

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学 位 論 文 審査 の 要 旨 主査   教授   西   則雄 副査   教授   坂入信夫 副査   助教授   野水基義

副査   教授   田中   勲(理学研究科)

     学位論文題名

    Nucleoplasmin Regulates Nucleosome     Assembly and Disassembly

(ヌクレオプラスミンによるヌ.クレオソーム再構築に関する研究)

   真核生物の遺伝情報の源である DNA はク口マチンと呼ばれる高次構造の中に折りたた まれている。クロマチンは遺伝情報を安定に保っとともに、発現の制御をおこなっている。

ヌクレオソーム構造はク口マチンを形成する最小単位で、ヒストン H2A ,H2B ,H3 及び H4 で 構成される ヒストン 8 量体コ アのまわり を146 bp のDNA が左 巻きで 1.75 回転巻き付 いている。このヌクレオソーム構造は非常に安定した構造をとっており、転写やDNA の 複製の際以外は転写因子がヌクレオソーム上の DNA と結合することを抑制する。一方、

精子核中の DNA はヌクレオソームとは異なるさらに密な構造を取っており、受精の際に この構造は変換される。アフリカツメガェルの卵中から精製されたヌクレオプラスミンは、

受精時に精子核の凝集構造中の DNA をヌクレオソームヘと変化させる分子シャペ口ン蛋 白質である。酸性で熱に安定な蛋白質であるヌクレオプラスミンは塩基性蛋白質であるヒ ストンと結合することにより、ヌクレオソーム構造を構築するものと考えられている。実 際、ポリグルタミン酸などの酸性高分子がヌクレオソーム構造の再構築を促進することが 知られているがその詳細な分子機構はよくわかっていない。本研究では、 ATP を必要と しないヌクレオソーム構築因子であるヌクレオプラスミンには、酸性蛋白質であるという 他に何か特別な構造や働きを持っているものとの考えのもとにヌクレオソーム構造に対す るヌクレオプラスミンの働きを総合的に検討された。

   第 1 章では本論文の序論として、これまでの研究や本研究の位置づけが述べられている。

   第 2 章で は、大量(mg 規模)のヌクレオプラスミンを高純度で得られるよう改良した 精製法について述べられている。またヌクレオプラスミンの溶液中での構造が調べられた。

これまでの研究でa ―ヘリックス構造をもっていると考えられてきたヌクレオプラスミン が生理的条件下では主にp シート構造をとっていることが示唆された。また、卜リフルオ 口エタノール溶液を加え疎水的環境とした場合、ヌクレオプラスミンは高度にa‑ ヘリッ クス構造をとることがわかった。これらの結果から、ヌクレオプラスミンは a ーヘリック スと p シートという異なる二次構造をとることができ、その働きが構造変化に起因する可 能性が示唆された。

   第 3 章で は、ヌクレオプラスミンとヒストン及びDNA との相互作用を螢光スペクトル

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を用いて検討された。その結果、ヌクレオプラスミンはヒストン H2A ―H282 量体と特異 的に結合することがわかった。そこでさらに、ヒストンをその構成因子にまで分別し同様 の検討を行ったところ、ヌクレオプラスミンは5 種類のヒストンに親和性があるが、特に ヒス トン H2A ともっ とも 強く 結合 するこ とが明らかとなった。また、これまで DNA と 相互作用しないとされてきたヌクレオプラスミンであるが、螢光測定の結果ヒストンに対 するものとは異なる形で相互作用することがわかった。

   第4 章では、ヌクレオソーム構造に対するヌクレオプラスミンの働きを、 CD スベクト ルを用いて検討されている。ヌクレオプラスミンがヌクレオソーム中のヒストンに対して 等量存在するときヌクレオソーム構造が安定化されることが明らかとなった。ポリグルタ ミン酸を用いた対照実験でも同様な結果が得られたが、ヌクレオプラスミンの作用に比べ るとその働きは弱くヌクレオソームの安定化は酸性度だけに因らないことがわかった。さ らに、ヌクレオプラスミンが大量に存在する系での検討を行ったところ、ヌクレオプラス ミンはヌクレオソーム構造中のヒストン及びDNA に自由度を持たせることが示唆された。

アガ口ース電気泳動にて‑DNA の挙動をみたところヌクレオプラスミンが大量に存在する 系で のヌク レオ ソー ム中 の DNA は DNA 分解酵素よって簡単に断片化されることから、

大量のヌクレオプラスミンがヌクレオソーム構造に自由度を与え DNA とヒストンのとの 強固な結合をやわらげていることが分かった。またSDS を用いない系での酸性緩衝液系 電気泳動と等電点電気泳動では、ヌクレオヒストンからのヒストンを押し出すことが観察 された。このことから、大量にヌクレオプラスミンがある場合ヌクレオソーム中のヒスト ンもまたDNA 同様その自由度を増していることがわかった。ポリグルタミン酸を大量に 添加した系ではヌクレオヒストンは強いパンドを1 っだけ示すのに対し、ヌクレオプラス ミンを添加した系ではヌクレオソーム、ヌクレオプラスミンともにそのパンドが弱まるよ うに広がることからお互いが相互作用をしていることが示唆された。これらの結果から、

ポリグルタミン酸によるヌクレオソームの安定化は塩基性電荷をもっヒストンに対する単 なる凝集と考えられるが、ヌクレオプラスミンはヌクレオソーム構造を安定化させるとと もに、ヌクレオソームを構成するヒストン、DNA に自由度を与えていることが明らかと なった。

   以上の結果より、ヌクレオプラスミンはヌクレオソーム構造を単に構築させるだけでな く、DNA やヒストンにある程度の自由度を持たせつつ安定したヌクレオソームを作るこ とが示唆された。これはATP を用いないでヌクレオソーム構造を構築し、核内に豊富に 存在するヌクレオプラスミンが、物理的にヌクレオソームを安定させつつ生体中で起こる 様々な反応に対して遺伝情報の源であるDNA を活性化している可能性を示唆するもので ある。この研究は、分子シャペ口ン蛋白質としてのヌクレオプラスミンの働きを基盤とし た DNA の活性化という生体中での根幹をなす反応を解明するための第一歩になると考え られる。また、ヌクレオソーム構造の構築・分解の段階での DNA の制御機構の解明は様々 な疾病の原因解明、予防、治療に対して、また生体に関連した環境問題の分子レベルでの 解明においても重要な知見を与えるものである。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や単位取得なども

併せ申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定し

た。

参照

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