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博 士 ( 理 学 ) 早 川 一 郎

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 早 川 一 郎

学 位 論 文 題 名

Study on the Dynamics of Biopolymers in an Elongational Flow Field

(伸 長流 動場中の生体高分子の動力学に関する研究)

学 位 論 文 内 容 の要 旨

  本研究 は、流 れの方向 に速度 勾配を 持つ伸 長流と いう流れを用いて、主に溶液中の高分子 の柔軟性 や形態 及びそ の変化 に関す る有益 な情報 を得る目的で始められた。これまで、伸長 流動 場 の レ オロジ ーはひ ずみ速 度が1〜3s.1程度 の流れ が対象 だった 。しか し、こ れをは るかに越 えるひ ずみ速 度(l0〜l02 S‑l)を持 つ伸長 流動場に対し溶液中の高分子は、従来の 熱や電磁 波によ る励起 では見 られな かった 応答を 示す事が見いだされている。本研究は、伸 長流動発 生装置 としてG.I.テイ ラーが液滴の形態を観察するために考案した装置を原型とし てっくら れてい るフオ ー・ロ ール・ ミルを 用いた 。そして、高分子の伸長流動場に対する応 答を、光 学計測 システ ムと組 み合わ せ、溶 液の流 動複屈折をモニターすることによって調べ た。

  伸長流 動場に 対する応 答特性 は、コ ンパク トな糸 鞠の形で存在する屈曲性高分子の場合、

伸長流動 場でコイル・ストレッチ転移を起こし伸びきりに近い状態にまで伸ぱされる。一方、

aヘリッ クスのよ うな剛 体状の 棒状分 子の場 合は、 流れの ひずみ 速度に応 じた配 向をする。

従ってこ の現象 を利用 すれば 、伸長 流動測 定によ るへりックス・コイル転移の観測が可能で ある事が 予想さ れる。 本研究 は、pH変化でへりックス・コイル転移を起こすpoly(L‑glutamic acid)(PGA)の伸 長流動 場に対す る応答 を調べ た。そ の結果、一定ひずみ速度に対する流動複 屈折 強 度 がpHの 上 昇に 対 し て 減少 す る 事 が確 認 さ れ た。 こ の 結果 をへりッ クス含 量のpH 依存 性 と し て表し たとこ ろ、ヘ リック ス含量 のpH変化 の様子 がすで に報告さ れてい る旋光 度法によ る測定 結果と 一致し た。こ れから 、伸長 流動法がへりックス・コイル転移の測定手 法になり得る事が確認された。

  こ れ まで の 研究か らヘリ ックス ・コイ ル転移 の構造 変化の 過程は 、転移の 中間状 態にへ りックス の部分とコイルの部分が混在した半屈曲性の蝶番型分子(mngedr・od)が存在すろと 考えられ ている 。この 様な分 子を伸 長流動 場にお いた場合、屈曲性分子および剛体棒状分子 とは異な った応 答が表 れるこ とが予 想され る。し かし、PGAの測定 におい ては転移の中間に おいても 棒状分 子と同 様の応 答が観 察され た。こ れは、PGAが高分 子電解 質であり、hinged rod型分子 の状態 であっ てもモノ マー間 の電気 的反発 で広が って固 いコン フォメーションを とり、伸 長流動場中では剛体棒状分子の様な振る舞いをしたためと考えられる。この事から、

電気 的 に 中 性で あ る 高 分子 のmngedrod状態 にある 分子では 、PGAの 場合と は異なっ た応答 が表れる 可能性 がある 。本研 究は、 ボリア ミノ酸 の構造変化に対する伸長流動場の応答の変 化にっい て、PGAの場合 とPGAの側 鎖にあ る解離 基を非解 離基に 置き換 えたp0り0‐lxnZyl一 L‐glutanlate)(PBLG)の場合とを比較することで、hingedrod型分子の溶液中での広がりにっい て検討し た。そ の結果 、PBLGのhjngedr・0d型 分子の場 合はひ ずみ速 度の上 昇に対して流動 複屈折が 、ある 限界ひ ずみ速 度から 徐々に 上昇し 棒状分子と同様のパターンを示す事が確認 された。 この事 は、伸 長流動 場にお いてhingedrod型分子 が丸ま った状 態から回 転楕円体状 に変 形 し て いる事 を示す ものと 考えら れる。 従って 、構造転 移の中 間状態 として 知られ る mngedrod型 分子の 構造は 、高分 子電解 質の場 合は静 止状態 で広がっ た状態 であり 、側鎖 を

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非 解離基にすることでそれが おれたたまることが明らかに なった。

  半 屈曲 性分 子と し ては 、hinged rod型分子の他に 水溶液中のファージDNA分子 が知られて い る 。DNA分 子に 関し ては 、螢 光 標識 する こと に より 光学 顕微 鏡で の 直接 観察 が可能であ り 、 近年、高分子物理の 理論の直接的な検証手段と して利用されてきている。本 研究では、

伸 長 流 動 場 に 対す るDNA分 子の 応答 を 観測 し、DNA分子 の広 がり お よび 柔軟 性に 対 する 考 察 を 行った。さらに溶媒 条件を変化させる事によっ て起こる事が知られているコ イル・グロ ビ ュ ール 転移 を観 測 し、 溶液 中のDNA分子 の分 子 物性 を調 べた 。そ の 結果 、伸 長流動場中 でDNA分子 は 連続 的に 変形 する 特 性を もち 、分 子 の縦 横比 が0.1程 度 まで 変化 する事がわ か っ た。 さら に、DNA分子 のコ イ ル・ グロ ビュ ー ル転 移に 関し ては 、 ヘリ ック ス・コイル 転 移 の測定の場合と同様 に一定ひずみ速度で溶媒の 組成を変えて複屈折の変化を 求めた。そ の 結 果を螢光顕微鏡測定 の結果と比較すると、流動 複屈折の変化は分子の広がり の変化に対 応 す ることが分かった。 これから、伸長流動法がコ イル・グロビュール転移の観 測手段にな り 得 る事が確かめられた 。また、この転移過程にお ける伸長流動場の応答の変化 に対する考 察 か ら、グロビュール状 態であると考えられた分子 が伸長流動場で変形している 事を示す応 答 が 観測 され た。 こ のた め、 コイル・グロビュール 転移の過程は、1次転移であ ると考えら れ て い た も の が 柔 軟 性 と い う 点 で は 散 漫 な 転 移 で あ る 事 が 明 ら か に な っ た 。   本 研究 では さら に 、分 子量 の異 なる フ ァー ジDNA分 子の :伸 長流 動 場に 対す る応答を比 較 す るこ とに より 、DNA分 子の 広 がり にっ いて 検 討し た。伸長流動場に対してDNA分子は、

あ る 限界ひずみ速度から 変形しはじめることがすで に確認されている。屈曲性分 子の場合で は 、 この 限界 ひず み 速度 の逆 数か ら分 子 の最 長緩 和時 間が 求 めら れた ため 、DNA分子の場 合 も 同様 にし て分 子 の最 長緩 和時 間を 求 めた 。Zimmの 理論に基づき、緩和時間 の分子量依 存 性 を調 べた とこ ろ 、DNA分子 が 素抜 け鎖 、非 素 抜け 鎖の どち らに も 当て はま らない性質 を 持 つ事 が明 らか に なっ た。 また 、複 屈 折の ひず み速 度依 存 性が いず れの 分 子量のDNA分 子 で も2段 階 に分 けら れる こと が 見出 され た。 こ れら の結果から、水溶液中のDNA分子は、

分 子 全体の凝集カよりも 少し凝集カの大きい内部構 造を内在している可能性が提 案された。

仮 に これ をブ ロッ ブ と呼 べば 、DNA分子は「ブロッ ブのっながり」とみなすこと ができる。

こ の 場合 、伸 長流 動 場に おけ るDNA分 子の 挙動 は 、ま ずブ ロッ ブ単 位 での 伸長 が起こり次 に ブ口ッブ内のモノマー単位 での伸長が起こるものと考え られる。

  以 上の 結果 から 本 研究 は、 伸長 流動 法 がポ リア ミノ 酸の へ りッ クス .コ イ ル転移やDNA 分 子 のコイル・グロビュ ール転移等、高分子の構造 転移の測定に有効である事を 示した。そ れ ぞれの構造転移の過程にお いては、伸長流動場に対する分子の応答から、(1)^リックス・

コ イ ル転移の場合、中間 状態として考えられるhinged rod型分子が、モノマーが 解離してい る 場 合 は 広 が って おり 解 離し てい ない 場合 は 収縮 した 構造 を持 つ 事、(2)DNA分 子 のコ イ ル ・ グロビュール転移に ついては、一次転移である と考えられていたものが柔軟 性の点では 散 漫 な転 移で ある 事 が明 らか にな った 。 また 、DNA分 子の 水溶 液中 の 構造 は「 ブロッブの っ な がり」としての性質 を持つ事も明らかにした。 この様に伸長流動場を用いた 研究は、溶 液 中 の高分子の流体力学 的性質や構造転移機構を明 らかにするとともに、流れに よる分子構 造 制御、更には分子操作への 道を開くものであるといえる 。

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(3)

学 位 論 文 審 査 の要 旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

引 地 長 田 山 岸 佐 々木

邦 男 義 仁 晧 彦 直 樹

     学位論文題名,

Study .ontheDyn 痂csofBiopo 畑ersinanElon 脚on 甜FlowField

( 伸 長 流 動 場 中 の 生 体 高 分 子 の 動 力 学 に 関 す る 研 究 )

   従来、溶液中の高分子の形態や柔軟性に関する研究では、剪断流 動場が用いられてきたが、剪断流動場は分子の変形とともに回転を も励起するため解析が複雑になる。これに対し、伸長流動場では分 子の変形だけが効果的におこり、更に、熱や電磁波による励起では 見られなかった応答を示すことが予測されている。申請者は、伸長 流動場を用いた、生体高分子の分子物性解析の手法を確立すること を目的とし、高分子溶液のレオロジー的研究を行った。本論文はそ の結果について述べたもので、7 章からなる。

   第1 章では、伸長流動場に対する高分子の応答に関するこれまで の理論的背景やその実証的研究を概観し、この論文の目的について 述べている。第2 章では、本研究で用いられた伸長流動場発生装置、

高分子の流動場に対する応答を調べるための流動複屈折計測システ ムについて述べている。

   溶液中でコンバクトな糸鞠の形で存在する屈曲性.高分子の場合、

伸長流動場でコイル・ストレッチ転移を起こし、伸びきりに近い状 態にまで伸ばされることが知られている。一方、ぱへりックスのよ うな剛体棒状分子は、流れのひずみ速度に応じて配向する。この応 答の違いを利用すれば、伸長流動測定によるへりックス・コイル転 移の観測が可能であることが予想される。第3 章では、伸長流動場 を用いた、ポリアミノ酸のへりックス・コイル転移の計測を試みて いる。伸長流動場に対する複屈折応答から求めた、poly (L ―glutamic acid )( PGA )のへりックス含量のpH 依存性は、 PGA についてすで に報告されている旋光度法による測定結果と一致した。これらの実 験結果から、伸長流動法がへりヅクス・コイル転移の測定手法にな り得ることを述べている。

   転移の途上にあるポリアミノ酸分子は、ヘリックスの部分とコイ

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ルの部分が混在した半屈曲性の蝶番型(hinged rod )構造をとって いると考えられている。このような分子を伸長流動場に置いた場合、

屈曲性分子及び剛体棒状分子とは異なった応答が現れることが予想 される。第4 章では、hinged rod 型分子の伸長流動場に対する応答 と分子 の柔軟性の関係を論じている。高分子電解質である PGA と 中性のpoly (ア‑benzylL ―glutamate )(PBLG )について、伸長流動場 に対す る応 答を調 べた。 PBLG の hinged rod 型分子では、典型的 な屈曲性分子や棒状分子と異なる伸長流動複屈折が観測された。前 章のPGA の結果と比較し、高分子電解質ではhinged rod 型分子が、

広がった固い状態であり、側鎖を非解離基にすることでそれが折れ たたまれ柔らかくなると考えると、伸長流動場に対する応答が説明 出来ることを述べている。

  DNA 分子は、螢光標識することにより光学顕微鏡での直接観察 が可能であり、近年、高分子物理の理論の直接的な検証手段しとて 利用さ れてきている。 DNA 分子では、溶媒条件の変化でコイル・

グ口ビュ―ル転移が起こることが報告されている。第 5 章では、こ の構造転移の伸長流動法による観測結果を述べている。溶媒組成に 対する 、流動複屈折の変化は、螢光顕微鏡による DNA 分子の広が りの変化に対応することが明らかになった。これから、伸長流動法 がコイル・グロビュール転移の測定手段として有効であることを述 べてい る。更に、転移途上の DNA 分子の複屈折応答の変化から、

グロビュ―ル状態であると考えられた分子が伸長流動場で変形して いることを見いだした。従来、コイル・グロビュ―ル転移は1 次転 移であると報告されていたが、高分子に特有な、散漫な転移である ことを結諭している。

   第 6 章では、DNA 分子の溶液中での広がりについて述べている。

伸長流動複屈折のひずみ速度依存性が2 段階に分けられることを見 いだし た。水溶液中の DNA 分子では、分子全体の凝集カよりも少 し凝集カの大きいブ口ッブ構造を内在している可能性が提案されて おり、「ブ口ッブの鎖」と見なすことができる。これに基づけば、

伸長流 動場における DNA 分子の挙動は、先ずブ口ッブ単位での伸 長が起こり次にブロヅブ内のモノマ一単位での伸長が起こる可能性 がある。このように考えると2 段階の応答が説明できることを提案 している。

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