博 士 ( 医 学 ) 八 十 嶋 弘 一 学 位 論 文 題 名
ADPTATION OF RABBIT CORTICAL COLLECTING DUCT TO IN VITRO ACID II¥TCUBATION
(ウサギ皮質集合管のin vitro ac|dInCubat|Onに対する適応)
学位論文内容の要旨
腎臓はアシドーシスに反応して、近位尿細管と集合管での酸の排泄を増加する。
集合管は腎臓における酸・塩基平衡の最終調節部位である。皮質集合管cortical collecting duct( 以 下CCDと 略 す ) の 上 皮 細胞 は 間 在 細 胞 と 主 細 胞 の2種類 に大別される。
間 在 細 胞 は 、H+/HC03− の 経 上 皮 輸 送 に 関 わ る 細 胞 で 、 ウ サ ギ のCCD上 皮細胞の3596以下であり、ミトコンドリアと炭酸脱水I酵素が豊富で、細胞内pHは アル カリ 側にあ る点 で主 細胞とは異なる。間在細胞は口とロの2種類に細分類さ れ る 。n間 在 細 胞はH+分 泌 細 胞 す な わ ちHC03ー吸 収 細 胞 で 、 管 腔 側 膜 に はH+
−ATPaseを基底 側膜 にはCl―/HC03一交換系を有している。一方、ロ問在細胞は HC03 分 泌細胞 で、 管腔 側膜 にCl−/HC03― 交換 系を 、越 底側膜にはH+ーATP− aseを 有 し て い る点 でa間 在 細 胞 と 区 別 さ れ る。 ウ サ ギ のCCDに お い て は ロ間 在細胞はロ問在細胞よりも多い。組織化学的にはロ間在翁‖胞では管腔側膜にpea― nut agglutinin (PNA)が 結 合 し 、a| 出在 細 胞 では 、管腔 側膜 のendocytosis を お こ し 、acidic cytoplasmic vesiclesを 形 成 す る の が 特 徴 で あ る 。 CCDに お け るHC03― 経 上 皮 輸 送 は 動 物 の 酸 ・塩 越 平 衡 の 状 態 で 変 化 し うる こ と が 報 告さ れ て い る 。 ウ サ ギ か ら 単離 さ れ 、in vitroで 微小 瀧流さ れたCC Dは 通 常 の 状 態 ではI{C03ー を 分 泌 す る が 、in vivoで 酸 負 荷 さ れ 代 謝 性 アシ ド ー シ ス に な っ た ウ サ ギ か ら 単 離 さ れ たCCDはHC03− を 吸 収 、 す な わ ちH+
を 分 泌 す る 。Schwartzら は 、 酸 負 荷 さ れ た ウサ ギ のCCDで は 間 在 細 胞 の 総数 に変 化は 認めら れな いが 、管腔側膜のendocytosisを示すロ問在細胞の比率が増 加 し 、PNAが 結 合す るロ 間在細 胞の 比率 が減 少する こと を明 らか にした 。こ れ らの 知見 から一 部の ロ間 在細胞の機能的極性が逆転し、a間在細胞の表現型を示 す可能性が考えられた。
し か し 、 そ の 後SatlinとSchwartzはin vitroの 系 で 、 ウ サ ギ か ら 単 離 さ れ たCCDを 灌 流 し な が ら3時 間pH6.9で 培 養 す る こ と で 、間 在 細胞 の 機能 的 極 性 が逆 転 する か どう か を細 胞 レ ベル で 調べ た 。こ の 研究 か ら、CCDがin vitro で 代謝性 アシドーシ スの状態に されると、netのHC03−の分 泌が減少す ること、
さ ら に 電 顕 上 で 、p間 在 細 胞がCl− /HC03一交 換 系を 含 む管 腔 側膜 のPNA結 合 部 位のendocytosisを 引き 起 こし 、HC03−を 分 泌す る ロ間 在 細胞 のremodeling が起こることが示された。すなわち、ロ間在細胞がば間在細胞へ単純に転換しナょい ことが示唆された。
そこで 我々は、さ らに詳荊‖ な生聾H学的検討を 行うために、invitroの代謝性 ア シ ド ー シ ス の モ デ ル に お い て 、 っ ぎ の 点 を1リ ] ら かに し よう と 試み た 。 (1)CCDの適応反応が起るのに必要な酸性刺激の時間。
(2) こ の 適 応 反 応 に お い て、DNA転 写、 蛋 白生 合 成、 細 胞 骨格 機 能が ど のよ うに関与しているのか。
(3)in vitroで の 酸 性 刺 激 がHC03一 分 泌 と 吸 収 の 両 方 の 変 化 を 引 き 起 こ す のかどうか。
は じ め に 、 ウ サ ギ か ら 単 離 さ れ たCCDを 微 小 瀧 流 し な が らpH6.8(HC03− 6mM) で 、 そ れ ぞ れ1、2、3時間 培 養し 、 基 底膜 側 のCl―を 除 去す る こと で 刺 激 さ れ たHC03ー 分 泌 の 変化 を みる と 、2時 間以 内 で は有 意 差が 認 めら れ ず、3 時 間では じめて54%の有 意な減少(‑13.9土3.3か ら―6.4土1,4pmol/min. mm へn 5,p<0. 05)が 認められた 。次に、酸 負荷の時f湘を短縮し、pH6.8(HC03− 6mld),1‖ 寺 問 十pH7.4(HC03―25mM) ,2時1出 で 培 養 さ れたCCDで もpH6.8 で3時 間 培 養 さ れ た 場 合 と 同 様 に41% の 有 意 なHC03一 分 泌 の 減 少 (‑17.O土 2.4か ら ―10.0土1.9pniol/min. mmヘn二 ニ9,p<0. 001) が 認め ら れた 。 し か し 、 同 様 の 培 養 で 管腔 側 のClを除 去 する こ とで 刺 激 され たHC03― の 吸 収は変化しなかった(+5.1土0.5から+4.4土0.4pmol/min. mmへn二ニ4,p NS)。 可逆的蛋白合成阻害剤であるアニソマイシン10 11Mを全培養時間に付カI亅すると HC03一分泌の減 少はみられ なくなる( ―12.9土1.2から ―15.1土1.6pmol/min.
mmへn二ニ5,p二ニNS)。また、同様にpH6.8,1時間の培養のみにアニソマイシンを付 加 して もHC03ー分 泌 の減 少 はみ ら れない(‑15.5土1.3から ―21.1土3.0 pmol/
min. mmへn=6,p一―NS)。しかし、アニソマイシンをpfl7.4,2時間の培養のみに付 カuした場合はHC03一分泌の減少(―16..6土3.0から―9.9土2.8pmol/min. mmヘ n=6,p<0. 05)は認められる。
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DNA転 写 阻 害 剤 ア ク チ ノ マ イ シ ンD4肛MをpH 6.8で の 培 養 中 に 付 加 す る と 、HC03―分 泌 の変 化 は認 め られ な かっ た (−10.4土1.3から‑12.0土1.6 pmol/ min. mmヘn=5,p−−NS)。 ′
endocytosisに関わ るアクチン フィラメン 卜の阻害剤 であるサイトカラシンD 0.2ロMを全培養時間(―17.7土2.8から―19.1土2.9pmol/min.mmヘn 5,p NS)及びpH7.4,2時間の培養のみに付加した場合(―13.1土4.9から−14.3土 3.2pm01/min.mmへn 5,p NS)にはHC03ー分泌の変化は認められなかった。
以上の結果から、
(1)CCDに よ るHC03一 分 泌 はpH6.8のinvitr0培 養 に よ っ て 減 少 す る 。 この適応 反応はpH6.8で培 養した場合1時間以内に始まるが、有意な変化がみ られるまでにさらに.2時間以上の時間が必要となる。
(2)HC03一 分 泌の 減 少に は 酸性 刺 激中 のdenov0蛋 白生 合 成と 酸 性 刺激 後 の マ イ ク ロ フ ア ラ メ ン ト が 正 常 に 機 能 す る こ と が 必 要 で あ る 。
(3)こ の 代謝 性 アシ ド ーシ ス の モデ ル にお い てはHC03― 分泌 の 減少 はHC03 吸収の増 加を伴わな いことから、ロ間在細胞からa間在細胞への機能的極性の 逆転は認 めーられな いことが、 今回の生理 学的検討か らも明らかにされた。
学 位 論 文 審 査 の 要 旨
ADAPTATION OF RABBIT CORTICAL COLLECTING DUCT TO IN VITRO ACID INCUBATION
(ウサギ皮質集合管のin vitro acid incubationに対する適応)
腎臓はアシドーシスに反応して、近位尿細管と集合管での酸の排泄を増加 する。集合管は腎臓における酸・塩基平衡の最終調節部位である。皮質集合管 cortical collecting duct,(以下CCDと略す)の上皮細胞は間在細胞と主細 胞 の2種 類 に大 別 され る 。間 在 細胞 はaとpの2種 類 に細 分 類さ れ、a間 在 細胞はH+分泌細胞すなわちHC03一吸収細胞であり、またp間在細胞はHC03一分 泌細胞で、管腔側膜、にCIー/HC03一交換系を有している点でa間在細胞と区別さ れる。このようなCCDにおけるHC03一経上皮輸送は動物の酸・塩基平衡の状態で 変化しうることが報告されている。SatLinとSchwartzはin vitroの系で酸負 荷された動物の間在細胞の機能的極性が逆転するかどうかを細胞レベルで調 ベ、ロ間在細胞がぱ間在細胞ヘ単純に転換しないことを示唆した。そこで八 十嶋氏はさらに詳細な生理学的検討を行うために、in vitroの代謝性アシド ーシスのモデルにおいてCCDの適応反応を検討し、次の3っの所見を得た。す なわち(1)CCDによるHC03一分泌はpH6.8のin vitro培養によって減少する。
この適応反応はpH6.8で培養した場合1時間以内に始まるが、有意な変化がみ られるまでにさらに2時間以上の時間が必要となる。
(2)HC03―分泌の減少には酸性刺激中のde novo蛋白生合成と酸性刺激後のマ イ ク ロ フ イ ラ メ ン ト が 正 常 に 機 能 す る こ と が 必 要 で あ る 。
(3)この代謝性アシドーシスのモデルにおいてはHC03一分泌の減少はHC03一吸 収の増加 を伴わないこ とから、p間在 細胞からa間在細胞への機能的極性の 逆転は認められない。以上の結果は、CCDの適応反応において、DNA転写、蛋 白生合成、細胞骨格機能がどのように関与するのか、また酸性刺激がHC03一分 泌と吸収の両方の変化を引き起こすのか否か、といった従来からの課題につ いて新たな知見を提供するものであり、学位に十分値する論文であると判断 された。尚、八十嶋氏の報告に関し、副査の小池、阿部さらに生理の本間教 授からいくっかの質問が出されたが、同氏はこれらにたいしても、明解な論 旨 で 答 え を 供 し 、 そ の 点 で も こ の 研 究 の 価 値 が 認 定 さ れ た 。
三夫 厚 脩隆 和 本池 部 松小 阿 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副