博士(工学)モハブァハメッドザノヽラン 学位論文題名
BehavlorlnShearofStee1
―COnCrete
SandWiChBeamSunderFatigueLOading
(鋼コンクリ―卜サンドイッチはりのせん断疲労性状)
学 位 論 文 内 容 の要 旨
近 年 、土 木構造 物に おい て合 成構 造の 適用 が増 加し てい る。 鋼コ ンクリ ート サン ド イ ッ チ構 造は、 合成 構造 の一 種で 新し い構 造形 式で ある 。鋼 コン クリー 卜サ ンド イッ チ部 材は 、コ アコ ンク リー ト、鋼板、せん断補強鋼板、シアコネクタからなる。
サン ドイ ッチ 部材tま、 曲げ 及び せん 断に 対し て、 強度 が大 きいばかりではなく、高 い 靭 性 を有 するも ので ある 。ま た、 サン ドイ ッチ 部材 の適 用に より 、型枠 のコ ス卜 の 削 減 及び 工期の 短縮 が可 能で あり 、現 在、 トン ネル 、地 下連 続壁 、橋床 版、 海洋 構造物等のあらゆる構造形式への実用化が図られている。
海 洋 構造 物は、 波浪 荷重 を繰 返し 受け てお り、 橋床 版も また 交通 荷重を 繰返 し受 け て い る。 荷重振 幅が 非常 に大 きい 場合 には 、繰 返し 荷重 によ るひ び割れ の進 展、
さ ら に は、 コアコ ンク リー トの 圧縮 破壊 が起 きる 。サ ンド イッ チ部 材は、 鋼板 とア ン グ ル 鋼材 との溶 接部 を数 多く 有し てお り、 疲労 荷重 下に おい ては 、この 溶接 部を 起 点 と した 疲労ひ び割 れが 発生 し、 最終 的に 鋼板 が完 全に 破断 する ことに よる 破壊 が 危 惧 され る。こ れま でに 、サ ンド イッ チ部 材の 静的 荷重 下に おけ る曲げ 及び せん 断 強 度 に関 する研 究は 多く なさ れて いる が、 疲労 荷重 下に おけ る強 度に剛 する 実験 デ ー タ は著 しく欠 如し てい る。 そこ で本 研究 は、 鋼コ ンク リー 卜サ ンドイ ッチ はり 部材 の疲 労載 荷試 験及 び非 線形 有限要素解析を通じて、鋼コンクリー、トサンドイッ チ は り 部材 の疲労 性状 及び 疲労 強度 を明 らか する こと を目 的と して 行った 。本 研究 は、以下に示す4章から構成されている。
第1章は序論であり、研究の背景と目的を述べている。
第2章 にお いて は、せ ん断 補強 鋼材 を持 たな い鋼 コン クリ ートサンドイッチはりの せ ん 断 疲労 性状の 実験 及び 解析 的な 検討 を行 って いる 。疲 労荷 重下 におい ては 、最 大作 用せ ん断 カの 大き さに より はり部材の破壊モードが異なることを明らかにレた。
す な わ ち、 静的に はせ ん断 圧縮 破壊 を起 こす はり でも 、最 大繰 返し 作用せ ん断 カが 大きい場合(本実験供試体では静的強度の65.5°/。から82.lc70)における破壊モードが、
斜 め ひ び割 れ間の コン クリ ート の圧 縮破 壊で あり 、最 大繰 返し 作用 せん断 カが 小さ
い場合(本実験供試体では静的強度の49%から63.2%)における破壊モードは、支点に おける引張鋼板の破断である。引張鋼板の疲労破断強度はせん断ひび割れ発生後に 生じる引張鋼板内の局部応カにより、気中の疲労破断強度より小さいことを明らか にした。
また、解析的に疲労強度を予測することを目的とし、主とレて静的載荷を対象と して開発された非線形有限要素解析プ口グラムに、繰返Iし回数及びコンクリートの 応力振幅の増加とともにコンクリートの圧縮強度、引張強度、剛性が低減すること を考慮に入れた構成則を組み入れ、本実験供試体の解析を行った。その結果、本解 析手法により、コンクリートが圧縮破壊する場合(せん断圧縮破壊モード)の疲労強度 を精度良く予測できることとともに、コンクリートの引張強度、ひび割れでのせん 断伝達剛性の低下がひび割れの伸展を速め、疲労強度が低下することを明らかにした。
第3章においては、せん断補強鋼材を有する鋼コンクリートサンドイッチはり部材 のせん断疲労性状の実験及び解析的な検討を行っている。疲労荷重下においては、
夕イプレートタイプのせん断補強鋼材を有するはり部材の破壊モードが、最大繰返 し作用せん断カの大きさにより異なることを明らかにした。すなわち、最大繰返し 作用せん断カが大きい場合(本実験供試体では静的強度の96.1%)における破壊モード は、コンクリートの圧縮破壊(せん断圧縮破壊モード)であり、最大作用せん断カが小 さい場合(本実験供試体では静的強度の41.8%から90.4u/o)における破壊モードは、引 張鋼板もしくはせん断補強鋼板のどちらか一方の破断である。また、はり部材中に おける引張鋼板及びタイプレー卜の疲労強度は、せん断ひび割れ発生後に急増する はりとしてのせん断変形により生ずる鋼板の局部応カにより、気中における疲労強 度より小さいことを明らか1こした。また、せん断補強材を有する鋼コンクリートサ ンドイッチはり部材においても、第2章において開発した非線形有限要素解析により、
コンクリートが圧縮破壊する場合(せん断圧縮破壊モード)の疲労強度を評価できるこ とを明らかにした。
さらに本章においては、せん断補強材を有するサンドイッチはりにおいてコンク リー卜が受け持っせん断カが60%程度であることを実験的に明らかにするとともに、
そのこと を考慮して 鉄筋コンク リ‑lはりに対する上田式を修正することにより、
繰返し荷重下におけるせん断補強鋼材の平均応カを予測できることを示した。また、
サンドイッチはりにおいて鋼板が局部的な応カを受けることを考慮に入れた疲労設 計法を構築した。
第4章 は 結 諭 で あ り 、 各 章 の 主 た る 結 果 を 取 り ま と め た も の で あ る 。
学 位 論 文 審 査の 要 旨 主 査 教 授 角 田 輿 史 雄 副 査 教 授 佐 藤 浩 一 副 査 教 授 佐 伯 昇 副 査 教 授 城 攻 副 査 助 教 授 上 田 多 門
学 位 論 文 題 名
BehavlorlnShearofStee1
ーCOnCrete
SandWiChBeamSunderFatigueLOading
(鋼.コンクリートサンドイッチはりのせん断疲労性状)
鋼コンクリートサンドイッチ 構造は、曲げおよびせん断に対して強度が大きく、高い靭 性をもつ合成構造として注目さ れ、海洋構造物、地中構造物、橋床版など幅広い応用が期 待されている。その際、波浪や 交通荷重などの繰返し荷重を受ける構造物では疲労に対す る安全性が重要な課題となるが 、サンドイッチ構造の疲労性状とくにせん断疲労性状に関 する研究は、従来ほとんど行わ れていない。本論文は、実験および非線形有限要素解析に よ る サ ン ド イ ッ チ は り の せ ん 断 疲 労 性 状 に 関 す る 研 究 に つ い て 述 べ た も ので ある 。 初めに、せん断補強鋼材を持 たないサンドイッチはりの疲労実験を行い、静的にはせん 断圧縮破壊モードで破壊するは りであっても、最大繰返し作用せん断カの大きさによって は、斜引張破壊または引張補強 鋼板の破断による疲労破壊も起こり得ることを明らかにし ている。
また、繰返し回数の増加に伴 ってコンクリートの圧縮強度、引張強度および剛性が低下 することを考慮レた非線形有限 要素解析法を開発し、それによりせん断圧縮破壊モードに よ る 疲 労 寿 命 を 精 度 良 く 予 測 で き る こ と を 、 実 験 結 果 と の 比 較 に よ り 示 して いる 。 さらに、サンドイッチはりか ら引張補強鋼板のみを取り出した気中供試体の一軸引張疲 労実験を行い、サンドイッチは りの引張補強鋼板の疲労強度は、気巾供試体の疲労強度よ りもかなり低いことを1リJらか にするとともに、その原囚がサンドイッチはりにおける引張 袖強鋼板の局部1‖Hナおよびせ ん断伝述による二次応カにあることを実験および解析的に示 している。
次に、せん断袖強鋼板を有す るサンドイッチはりの疲労実験を行い、静的にはせん断圧 縮破壊モ―ドで破壊するはりで あっても、引張補強鋼板またはせん断補強鋼板の破断によ る疲労破壊も起こり得ることを1リ]らかにするとともに、上述の非線形有限要素解析法が、
せん断補強鋼板を有するサンド イッチはりに対しても、せん断圧縮破壊モードの疲労寿命 の楕度良い予測に適用できるこ とを示している。
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また、サンドイッチはりにおいてコンクリートが受け持っせん断カは、荷重の繰返し回 数にfヤって減少し、せん断補強鋼板の負担が増加すること、およびコンクリートが受け持 っせん断カは、鉄筋コンクリートはりの場合の約60%であることを明らかにするとともに、
鉄筋コンクリートはりに対する上田式を修正することにより、サンドイッチはりの繰返し 荷 重 下 に お け る せ ん 断 補 強 鋼 板 の 平 均 引 張 応 カ の 算 定 法 を 提 案 し て い る 。 さらに、サンドイッチはりからせん断補強鋼板のみを取り出した気中供試体の一軸引張 疲労実験を行い、サンドイッチはりのせん断補強鋼板の疲労強度は、気中供試体に比べて かなり低いことを明らかにするとともに、その原因がはりとしてのせん断変形に伴う二次 応カにあることを示している。
以上の知見に基づいて、サンドイッチはりの引張補強鋼板およびせん断補強鋼板の二次 応カを考慮した疲労設計法を提案している。
これを要するに、著者.は、従来ほとんど解明されていなかった鋼コンクリートサンドイ ッチ構造のせん断疲労に関する基本的性状を明らかにするとともに、起こり得る各種破壊 モードを考慮した疲労設計法を提案したもので、構造工学の発展に貢献するところ大なる ものがある。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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