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博士(歯学) 坂田美幸 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)   坂田美幸 学位論文題名

アナターゼ型二酸化チタンが光処理機能化と 骨髄由来間葉系幹細胞親和性に及ぼす影響

学 位論文内容の要旨

【緒言1

チタンインプラントは,喪失した歯列の回復だけでなく人工関節などの整形外科領域においても重要な役割 を果たしている.チタンインプラントが生体内で機能圧を負担するためには,オッセオインテグレーションが 必要である,強固なオッセオインテグレーションの早期獲得には,インプラント表面に接着した間葉系幹細 胞が増殖し,骨芽細胞へと分化し骨を形成するという一連の現象に要する時間を短縮することが重要である,

一般的にrough surfaceはsmooth surfaceと比較し,早期に骨の形成が起こることが報告されており,rough surfaceを有するチタンインプラントは臨床の現場において現在の主流となっている,しかしながら,in vitro の実験 系では骨髄由来間葉系幹細胞は,rough surfaceと比べてsmooth surface上において,より高い初期 細胞接着と細胞増殖を示すことが知られている,

  紫外 線(UV)照射 を応用 した表 面改質 では, チタンな どの骨 芽細胞 親和性 および骨親和性が向上すると 報告さ れてお り,UV照 射に伴 う光触媒作用が一因として考えられている.酸化チタンにUVを照射すると,

活性酸 素種を 生じ, 有機物 質を構 成するC―C結合 ,C―H結 合,CーN結合,C―O結合,O―H結合,N―O結 合を切断する.光触媒に使用される二酸化チタンはアナターゼ型とルチル型に分けられ,アナターゼ型は,

活性酸素種の生成量が多いことから光触媒作用が効率的に起こり,主に用いられている.今回,チタン表面 の光触媒活性を高めることで光処理機能化に伴う骨芽細胞親和性が増強されるという仮説を立てて,アナタ ーゼ型結晶体を付与することにより,光触媒活性を高めたチタン表面を作製し,表面特性の分析を行なうと ともに,新規チタン表面でのラット骨髄由来間葉系幹細胞(Bone marrow derived mesenchymal stem cell, BMSC)の挙動を調べることとした.

【材料と方法】

JIS規格第n種チタンディスクに対して,1)Polished (Pol);コロイダルシリカを用いて鏡面仕上げとした試料,

2) Acid一etched (AE); Polを ,19%フ ッ化水 素酸(HF)および66.6%濃硫酸(H2S04)にて処理した試料,

3) Anatase―coatedくAn); AE表面に光触媒コーティング剤(STーK211,石原産業)を塗布,乾燥する工程を 10回繰 り返し ,AE表面 に二酸 化チタン 結晶を 被膜化 した試料を用意した.各試料は暗所保管期間を0から 4週間 設定し, 実験に 用いた .さら に,4週 経過し た試料 に殺菌 灯を用 いて紫外 線ピーク波長250土20 nm (2.0 mW/cm2)を照射した試料を用意した,

各 試料 は ,X線 回 折 装置(XRD)およ び 顕 微 ラマ ン 分 光装置(RAMAN)を用 いて結 晶構造 の評価を 行なう と と もに メ チ レ ンブ ル ー 分 解試験 により 光触媒 活性の評 価を行 なった .水酸 基は無 水トリ フルオ ロ酢酸 (TFAA)にて 誘 導 体 化し ,X線 光 電 子分 光 装 置(XPS)を 用 いて 表 面 元 素分 析 を 行なっ た.試料 表面の 表 面ぬれ 性の評 価とし て,4 ulの水を滴下し,水滴接触角を計測した,ラット大腿骨から採取したBMSCを通 法に従 い分離,初代継代培養し,各試料表面に播種密度が2x 104 cells/cm2となるように細胞を播種し,4 時 間培 養 後 の 初期 接 着 細 胞数 の 評 価 と, 細 胞 骨 格の 制御に 関与す るCell division control protein

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42(Cdc42),Ras‑related C3 boturinum toxin substrate l(Racl),  Ras homolog gene family,member A(RhoA) およ びVinculinのcDNAの 増幅産 物を定 量し ,その 相対比 を比較 検討し た.

【結 果】

  XRDお よ びRAMANで は ,Anの み ア ナ タ ー ゼ 型 の ピ ー ク が 認 め ら れ , チ タ ン 表 面 に ア ナ タ ー ゼ 型 結 晶 が 形 成 さ れて い る こ と が 確認 さ れ た . メチ レ ン ブ ル ー分 解 試 験 で は,Anの 経 時的 な メ チ レ ンブ ルー試 験液の 吸 光度 低下 が認め られ, 照射開 始6時間後 には メチレ ンブル ーがほ ぼ分解 され た,

各 試 料 の 誘 導 体 化 後 のXPSに よ る 測 定 結 果 で は ,UV照 射 に よ り , 表 面 の 炭 化 水 素 が 減少 し ,Olsス ペ ク ト ル に お い てPol, AEは 照 射 前 と は 異 な る532.5eV付 近 に 水 酸 基 が 検 出 さ れ た が ,AnはUV照 射 前 か ら 同 部 位 に お い て 水 酸 基 が 検 出 さ れ た . 作 製 直 後 の 各 試 料 の 接 触 角 は 超 親 水 性 を 示 し ,Pol,AEは4週 間 経 過 後 に は 疎 水 性 へ と 変 化 し た が ,Anで は 超 親 水 性 を 維 持 し た . さ ら に ,4週 経 過 後 の 各 試 料 にUVを 照 射 した とこ ろ,水 滴接触 角は再 び超 親水性 となる ことも 確認し た,

す べ て の 試 料 で 試 料 作 製 か ら の 時 間 経 過 に 伴 い , 初 期 接 着 細 胞 数 が 減 少 す る 傾向 が 認 め ら れた が ,Anは 19% の減 少 で あ り ,接 着 数 は い ずれ の 時 点 に お いて もPol,AEよ り も大 きく, さらに ,UV照 射によ って作 製直 後 よ り も30% 増 加 し た , 各 遺 伝 子 発 現 はAnで 経 時 的 に 減 少 し ,UV照 射 に よ っ てRhoAは40% 程 度 の 発 現量 の増 加が認 められ た,ま た,UV照射に よる遺 伝子 発現の 増加が 認めら れた

【考 察】

  チ タ ン 表 面 ー の 炭 化 水 素 の 吸 着 は , 表 面 水 酸 基 量 の 減 少 , タ ン パ ク 質 の 吸 着 お よ び 細胞 の 接 着 を 阻 害 す る と 考え ら れ る . こ のチ タ ン 表 面 に吸 着 し た炭 化水素 を除去 する 効果的 な方法 として ,UV照 射処理 がある , こ れ は ,光 触 媒 作 用 だ けで な く , 直 接的 分 解 作 用 によ っ て も 起 こる と 考 え ら れ ,チ タ ン 表面 に吸 着した 炭化 水 素 を 除 去 す る だ け で な く , 濡 れ 性 の向 上 や 表 面 電荷 の 移 動 も 相乗 的 に 関 連 し ,強 固 な オ ッ セオ イ ン テ グ レ ー シ ョン の 早 期 獲 得 が期 待 さ れ て いる が , メ カ ニズ ム に つ い ては 明 ら か で な い. 本 研 究で は, アナタ ーゼ 型 二 酸 化 チ タ ン に 着 目 し , 光 触 媒 活 性 を 高 め た 試 料 の 上 で の 問 葉 系 幹 細 胞 の 挙動 に つ い て 検討 し た , 本 研 究 で 用 い た コ ー テ ィ ン グ 材 を 塗 布 し た 結 果 ,XRDお よ びRAMANと も に ア ナ タ ー ゼ 型 の ピ ー ク が 検 出 さ れ , メ チレ ン ブ ル ー が ほぼ 透 明 の 状 態に ま で 分 解 され て い る こ とも 確 認 で き , 非常 に 高 い光 触媒 活性を 有す る こ と が示 さ れ た . ま た, 表 面 水 酸 基量 の 変 化は ピーク の出現 した 波長か ら表面 吸着水 と考え られ ,これ によ り 親 水 性 の 維時 と 表 面 の 炭化 水 素 の 吸 着が 改 善 さ れ たと 手 筐 察 さ れ る, 初 期 接 着 細胞 数 はPol,AEと 比較 し 多 く ,UV照 射 で 試 料 作 製 直 後 以 上 の 接 着 が 認 め ら れ た . ア ナ タ ー ゼ 型 結 晶 に よ っ て 炭 化水 素 の 分 解 は 進 行 し , 光 触 媒 作 用 が 活 性 化 さ れ た 結 果,Anで は ,試 料 作 製 直 後よ り も 初 期 細胞 接 着 に 有 効で あ る こ と が 示 唆 さ れ た . 被 膜 の ア ナ タ ー ゼ 型 二 酸 化 チ タ ン の 含 有 量 は13% 程 度 で あ り , 光 触 媒 作 用 には 十 分 な ア ナ タ ー ゼ 型 二 酸 化 チ タ ン 含 有 量 で は あ る が , 試 料 表 面 に 付 着 し た 細 胞 の 接 着 ・ 伸 展に お い て は 細胞 骨 格 関 連 遺 伝 子 の 発 現 に お い て も 抑 制 的 で あ り , 必 ず し も 表 面 水 酸 基 量 の 維 持 , 超 親 水性 の 維 持 が 初期 細 胞 接 着 に お い て の 必 要 条 件 で な い こ と が 推 察さ れ た . し かし な が ら ,UV照 射 に よ る遺 伝 子 発 現 量の 回 復 お よ び 増 加 か ら ,Anが 光 処 理 機 能 化 に お いて 優 位 に 作 用 する 可 能 性 が ある . チ タ ン イン プ ラ ン ト は製 造 か ら 埋 入 ま で に 一 定期 間 が か か り ,こ の 間 に も 表面 の 生 物 学 的エ イ ジ ン グ は進 行 す る . 光 処理 機 能 化は チタ ンイン プラ ン ト の 生物 学 的 エ イ ジ ング を 解 消 す る有 効 な 手 段 であ り , 作 製 した ア ナ タ ー ゼ 型二 酸 化 チタ ン結 晶を含 む試 料 は , チタ ン の 生 物 学 的エ イ ジ ン グ の進 行 を 抑 制 させ る だ け で なく , 光 処 理 機 能化 が よ り効 果的 に起こ ると 考 え ら れ る こ と か ら , よ り 細 胞 親 和 性 の 高 い 新 規 チ タ ン 表 面 の 開 発 に 応 用 で きる 可 能 性 が 示唆 さ れ た .

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(3)

学位 論文審査の要旨 主 査    教 授    大 畑    昇 副 査    教 授    田 村 正 人 副 査    教 授    亘 理 文 夫

学 位 論 文 題 名

アナターゼ型二酸化チタンが光処理機能化と 骨髄由来間葉系幹細胞親和性に及ぼす影響

   審 査は審査 担当者が一 同に会し て約二時 間かけて 行った. まず申請 者に本論文 の 概要の説 明を求め, 口頭試問 形式で提 出論文の 内容及び 関連分野 について試 問 し た. 申 請者 は 論 文の 概 要を 以 下 のよ う に 説明 し た,

【緒言 】

   チタン インプラ ントが生 体内で機 能圧を負担するためには,オッセオインテグレ ーショ ンが必要 である. 強固なオ ッセオイ ンテグレーションの早期獲得には,イン プラン ト表面に 接着した 間葉系幹 細胞が増 殖し,骨芽細胞へと分化し骨を形成する と い う 一 連 の 現 象 に 要 す る 時 間 を 短 縮 す る こ と が 重 要 で あ る . .    紫 外 線 (UV) 照射 を 応用した表 面改質で は,チタ ンなどの 骨芽細胞 親和性お よび 骨 親和 性 が 向上 す ると報 告されて おり, UV 照 射に伴う 光触媒作 用が一因 として考 えられ ている. 光触媒に 使用され る二酸化 チタンはアナターゼ型とルチル型に分け られ, アナター ゼ型は, 活性酸素 種の生成 量が多いことから光触媒作用が効率的に 起こり ,工業製 品などに 主に用い られてい る.今回,チタン表面の光触媒活性を高 めるこ とで光処 理機能化 に伴う骨 芽細胞親 和性が増強されるという仮説を立てて,

光触媒 活性を高 めたチタ ン表面を 作製し, 表面特性の分析を行なうとともに,新規 チ タン 表 面 での ラ ット骨 髄由来間 葉系幹細 胞 (Bone marrow derived mesenchymal stem cell , BMSC) の挙 動を調べ ることと した,

【材料 と方法】

  1 )  Pol , 2 ) AE , 3 ) An の 3 種類の試料 を用意し , X 線回折 装置 (XRD) およ び顕微 ラ マン 分 光 装置 (RAMAN) を用 い て 結晶 構 造の 評 価 を行なう とともに メチレン ブル ー 分解 試 験 によ り 光触媒 活性の評 価を行な った.水 酸基は無 水トリフ ルオロ酢酸 (TFAA) に て 誘 導 体 化 し , X 線 光 電 子 分 光 装 置 (XPS) を 用 い て 表面 元 素 分析 を 行 なった .試料表 面の表面 ぬれ性の 評価とし て水滴接触角を計測した.ラット大腿骨 か ら採 取 し た BMSC を 初 代継 代 培 養し , 各試 料 表 面に播 種し,4 時 間培養後 の初期 接 着 細 胞 数 の 評 価 と , 細 胞 骨 格 の 制 御 に 関 与 す る Cdc42 , Racl , RhoA お よ ぴ Vinculin の cDNA の 増 幅 産 物 を 定 量 し , そ の 相 対 比 を 比 較 検 討 し た .

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【結果・考察】

   作製 した 試料 An に は, チタン 表面 にア ナタ ーゼ型結晶が形成され,また,光触 媒 作用 を有 する ことが確認された.XPS による測定結果では,UV 照射による表面の 炭 化水 素の 減少 と, 長期 間にお よぶ 水酸 基量 の維持が確認された.水滴接触角は Pol ,AE で経 時的 に増 大し 疎水 性へ と変 化し たが,An ではほぼO °の超親水性を維 持した.初期接着細胞数は試料作製からの時間経過に伴い,減少する傾向が認めら れ たが ,接 着数 はい ずれ の時点 にお いて もPol , AE と 比較し An に 多く ,UV 照射で 試 料 作 製 直 後 の 30 % 以 上 の 細胞数 を示 した .遺 伝子 発現 は経 時的 に減 少し ,UV 照 射 に よ っ て RhoA は 40 % 程 度の発 現量 の増 加が 認め られ た. また ,UV 照射 によ る遺伝子発現の増加が認められた.

   チタン表面への炭化水素の吸着は,細胞の接着を阻害すると考えられ,吸着した 炭 化水 素を 除去 する効果的な方法として,Uv 照射処理がある, Uv による光触媒作 用と直接的分解作用によって,濡れ性の向上や表面電荷の移動も相乗的に関連し,

強固なオッセオインテグレーションの早期獲得が期待されている.形成された被膜 の アナ ター ゼ型 二酸 化チ タンの 含有 量は 13 % 程度であったが,光触媒作用が活性 化された結果,親水性の維時と表面の炭化水素の吸着の改善が見られたと推察され る,しかしながら,細胞骨格に関連する遺伝子の発現は経時的に減少したことから,

必ずしも表面水酸基量の維持,超親水性の維持が初期細胞接着においての必要条件 でないことが推察された.

   チタンインプラントは製造から埋入までに一定期間がかかり,この問にも表面の 生物学的エイジングは進行する.光処理機能化は生物学的エイジングを解消する有 効な手段であり,作製した試料は,光処理機能化がより効果的に起こると考えられ ることから,より細胞親和性の高い新規チタン表面の開発に応用できる可能性が示 唆された.

各 審 査 委 員 が 行 っ た 主 な 質 問 は , . 以 下 の 通 り で あ る . 1 )光 処理 機能 化の 臨床 での 応用 につ いて .

2 )初 期細 胞接 着お よび 遺伝子発現の評価に設定した培養時間の意味について 3 ) 表 面 特 性 お よ び 初 期 細 胞 接 着 と 遺 伝 子 発 現 の 相 関 性 に つ い て 4 )BMSC 以 外で の細 胞反 応の 違い 及ぴ 有用 性に ついて

5 )本 研究 の今 後の 方向 性に つい て.

   これ らの 質問 に対 して ,論 文申 請者から明快な回答と説明が得られ,さらに今 後 の 研 究 の 発 展 性 に っ い て も 明 確 な 計 画 を 持 っ て い る と 判 定 し た . 審査委員は全員,本研究が学位論文として十分値し,申請者が歯学博士の学位を授 与される資格を有するものと認めた.

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参照

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