Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
Effect of basic fibroblast growth factor on root
resorption after delayed autotransplantation of
tooth in dogs
Author(s)
白谷, 聡
Journal
歯科学報, 112(4): 582-583
URL
http://hdl.handle.net/10130/2928
Right
論 文 内 容 の 要 旨 1.研 究 目 的 歯の移植は,移植後に歯根膜組織の治癒が得られた場合,天然歯と同様な機能を持つことができるため,歯 の欠損に対する架橋義歯やインプラント治療に代わる有用な治療法の一つとされている。しかし,移植後アン キローシスを起こすと,最終的には7∼20%が骨に置換吸収され脱落する場合がある。予知性を高める方法の 一つとして移植歯根表面に存在する歯根膜組織の細胞活性の維持が挙げられる。塩基性線維芽細胞増殖因子 (FGF-2)は血管新生能を有し,未分化間葉系細胞の増殖を促進し,歯周組織再生に関与することが報告されて いる。本研究の目的は,歯の移植後の歯根吸収に対する FGF-2 の効果について検討することである。 2.研 究 方 法 本実験には健康なビーグル犬計15頭を用いた。移植の2ヵ月前に下顎 P2,P3を抜歯して移植床を作製し た。移植1週前に下顎 P1,P4の根管治療を行い,移植時に鉗子にて回転運動で慎重に抜歯し,歯根膜組織 の活性を下げるために室温にて60分間乾燥させた。次に,移植母地である下顎 P2,P3部にインプラントド リルを用いて生理食塩水注水下に骨窩洞を形成した。実験群は0.3%FGF-2 溶液を骨窩洞内および移植歯根に 応用して移植した。対照群は実験群と同様の処置を行い,FGF-2 を応用せずに移植した。実験期間は2, 4,8週とし,各期間経過後,通法に従い標本作製を行い,H-E 染色と抗 Proliferating Cell Nuclear Antigen (PCNA)抗体を用いた免疫染色を施して光学顕微鏡で観察した。 3.研究成績および結論 術後2週では,実験群(FGF-2 応用群)は多くの毛細血管と紡錘型細胞からなる新生結合組織が移植歯根を 覆っていた。これら新生組織内には,PCNA 陽性細胞の発現を認めた。対照群では,歯根面に表面吸収およ び象牙質吸収が生じており,多核巨細胞が観察された。実験群における PCNA 陽性細胞の数は対照群と比較 して有意に多かった。術後4週では,実験群は歯根表面に沿って骨組織が進展し,セメント質と新生骨組織に コラーゲン線維が埋入しており,歯根膜様組織が認められた。また,新生骨とセメント質には,骨芽細胞様細 胞とセメント芽細胞様細胞がそれぞれみられた。対照群では,歯根吸収が広範囲に生じており,歯根面は,根 面と並走するコラーゲン線維で覆われるかまたは破骨細胞様細胞による象牙質に及ぶ吸収およびアンキローシ スが認められた。術後8週では,実験群は移植歯根全体を取り囲んで新生歯槽骨および,従来のセメント質表 氏 名(本 籍) しら たに さとる
白
谷
聡
(福岡県) 学 位 の 種 類 博 士(歯 学) 学 位 記 番 号 第 1927 号(甲第1177号) 学 位 授 与 の 日 付 平成23年9月30日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当学 位 論 文 題 目 Effect of basic fibroblast growth factor on root resorption after delayed autotransplantation of tooth in dogs
掲 載 雑 誌 名 Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, doi : 10.1016/j.0000.2011.09.012 論 文 審 査 委 員 (主査) 齋藤 淳教授 (副査) 井上 孝教授 中川 寛一教授 石原 和幸教授 歯科学報 Vol.112,No.4(2012) 582 ―126―
面に新たに再生したセメント質がみられ,骨組織と再生セメント質との間には歯根膜様組織が観察された。対 照群では,歯根膜の再生はほとんどみられず,広い範囲で歯根吸収やアンキローシスが著明に認められた。術 後2週の組織計測では,歯根吸収がすでに認められ,その発現は対照群と比較して実験群で有意に低かった。 術後4,8週の組織計測では,置換性吸収の発現は,対照群と比較して実験群で有意に低かった。対照群では 主に,乾燥による残存歯根膜の細胞活性の低下が早期の歯根吸収と関係しており,骨芽細胞による治癒が歯根 膜細胞より優位になることで4週以降の置換性吸収の発現につながったと思われる。実験群では,FGF-2 の 細胞増殖および創傷治癒の初期における破骨細胞様細胞の形成抑制やアルカリホスファターゼ活性抑制効果に より歯根吸収の発現を減少させたと考えられる。本研究から,歯の移植に対する FGF-2 の応用は歯根吸収お よびアンキローシスの発現を減少させることが示された。 論 文 審 査 の 要 旨 歯の移植の予後における大きな問題として根面吸収やアンキローシスが挙げられる。これらの発現には,移 植歯根表面に残存する歯根膜組織の活性が影響を与えると報告されている。塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF-2)は歯根膜組織由来細胞の増殖や血管新生を促進することにより歯周組織再生に寄与する growth factor とさ れているが,歯の移植における効果については明らかにされていない。そこで本研究では,歯の移植後の歯根 吸収に対する FGF-2 の影響について病理組織学的に検討した。ビーグル犬において,移植床作製後,2ヶ月 後に移植歯を抜歯した。歯根膜組織の活性を低下させる目的で,室温にて60分間乾燥させた。実験群は移植歯 根に FGF-2 を塗布後,移植し,対照群は FGF-2 を応用せず移植した。実験期間は移植後2,4,8週とし, 通法に従い標本を作製,鏡検した。移植後2週において,実験群の新生組織内には,Proliferating Cell Nu-clear Antigen(PCNA)陽性細胞が多数認められた。4週から8週にかけてセメント質や歯槽骨の新生および 新生歯根膜様組織の形成が得られた。対照群では広範囲に歯根吸収およびアンキローシスを生じていた。術後 4週から8週では,実験群における置換性吸収の発現率は対照群と比較して有意に低かった。本論文により, 歯根膜が損傷を受けた移植歯において FGF-2 の応用は歯周組織の治癒を促進し,歯根吸収およびアンキロー シスの発現を減少させることが示唆された。 本審査委員会では,1)実験条件および方法の詳細,2)移植歯の歯根膜組織の状態,3)各種根面吸収の 定義の妥当性,4)PCNA 陽性細胞の定量の必要性,5)結果に対する考察,特に FGF-2 が根面吸収の抑制 に関わるメカニズムの考察,などについての質疑ならびに討議がなされ,概ね妥当な回答が得られた。また, 考察の論理展開を含めた論文の構成や図表の表現など,改善の指摘があり,後日,修正された論文を審査委員 それぞれが再確認した。本研究で得られた知見は,歯科医学の進歩発展に寄与するところ大であり,学位授与 に値するものと判定された。 歯科学報 Vol.112,No.4(2012) 583 ―127―