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博士学位論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)2017 年 12 月 25 日. 博士学位論文審査報告書 大学名. 早稲田大学. 研究科名. スポーツ科学研究科. 申請者氏名. 植田 文也. 学位の種類. 博士(スポーツ科学). 論文題目. 選手位置情報を用いたサッカーのゲームパフォーマンス分析 Game Performance Analysis Using Positional Information of Players in Soccer Game. 論文査読委員. 主査 早稲田大学教授. 誉田 雅彰 工学博士(早稲田大学). 副査 早稲田大学教授. 堀野. 副査 早稲田大学. 広瀬 統一 博士(学術) (東京大学). 博幸. 博士(人間科学)(早稲田大学). 本研究は、サッカーを対象として、選手位置情報から集団的スポーツ技能を定量的に評 価するゲームパフォーマンス分析について論じている. 第 1 章では,ゲームパフォーマンスの評価方法に関する従来研究を述べるとともに,そ れらの問題点を指摘し,新たな定量的な分析方法の必要性を論じている.スポーツの競技 力向上において必要なことは競技パフォーマンスに影響を与える要因を探索し,それを遂 行する能力・技能を改善していくことである.個人競技におけるスポーツ技能は各種スキ ルテストによって測定・評価が行われてきた.一方でチーム全体が発揮する協調的な集団 的スポーツ技能は実際のゲームパフォーマンスから評価する方法が主流になりつつある. しかし,従来のゲームパフォーマンス分析は専門家の視認的方法に基づいており,分析者 の主観性を排除できないという課題があり,定量的な方法による集団的スポーツ技能の評 価が必要となっている.しかし,これまでの定量的な評価法では得点数, 失点数, シュ ート数などの単純なデータの分析に留まっており,複雑に各選手が入り交じって発揮され る集団的スポーツ技能を評価できていないことが指摘されてきた.そこで,本研究では現 象の成因的な視点から解釈可能な方法を開発するため,選手位置から集団的スポーツ技能 を定量的に評価する方法について検討した..

(2) 第 2 章では,優勢領域と攻撃・守備パフォーマンスの因果関係に関する研究について述 べている.大学サッカー対抗戦の 2 試合のビデオ映像から,2 次元 DLT 法を用いて全フィ ールドプレイヤーの位置を取得し,攻撃側がボールを奪取した時点における選手位置の優 勢領域を算出した.優勢領域とは試合中の各時刻において,各々の選手に対して,「だれよ りもその選手が早く到達できる点の集合」と定義される.具体的には,選手の運動モデル に基づいてフィールド上の任意の地点への選手の最小到達時間を算出し,得られた最小到 達時間が最も短い選手の属するチームがその地点を優勢領域を占めるものとして決定され る.次に,試合中における攻撃シーンを攻撃が成就した「有効攻撃群」と成就しなかった 「非有効攻撃群」に分類し,優勢領域を特徴量とした群比較を行った.分析の結果,中盤 でボールが奪われたケースにおいて,奪取(攻撃)チーム,被奪取(守備)チームともに, 非有効攻撃群よりも有効攻撃群において有意に高い値を示し,優勢領域の値が攻撃パフォ ーマンスと因果関係を有していることを明らかにした.なお,本研究の成果は,原著論文 (2013)として掲載された. 第 3 章では,隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model 以下「HMM」 )による選手 のポジショニングパタンの分析に関する研究について述べている.本研究では,第 2 章で 述べた静的な分析に留まらず,時間的に推移する選手位置を含めた動的な分析法を提案し ている.本分析法では,選手とボール位置の時系列データを確率的にモデリングし,選手 のポジショニングパタンの時間的な変化に着目して,有効攻撃と非有効攻撃との差異を確 率的に明らかにする.具体的には,有効・非有効攻撃の 2 群に関して,攻撃パタンにおけ るボールと選手位置の時間変化パタンを HMM を用いて機械学習し,攻撃パタンが有効・ 非有効攻撃に識別可能であるかを検証した.識別検証の結果,HMM の状態数を最適化する ことで,学習内・外のデータに対して,有効攻撃で 7―8 割,非有効攻撃で 7―9 割程度の 識別率が得られた.次に, HMM の各状態での選手位置の生起確率分布および状態遷移確 率に関して,有効・非有効攻撃の 2 群間の差異を検証した.その結果,2 群間において,攻 撃パタンにおいて選手配置に特徴的な差異が違あること,また攻撃の進展に伴う各選手配 置の時間変化やボールを運ぶ経路に差異があることを定量的に示した.なお,本研究の成 果は,原著論文(2017)として掲載された. 第 4 章の総括論議では,研究の成果の意義および今後の課題について述べている.本研 究によって,選手位置に基づいて算出された優勢領域という特徴量によって集団的スポー ツ技能の評価・分析が可能であることが示唆された.また, HMM によってボールと選手.

(3) 位置,またはその時間変化に関する統計的な集団的スポーツ技能分析が可能であることが 示された.HMM などの機械学習では識別器としての性能の向上に関心が向けられることが 多く,なぜ識別ができたのかということを検証することはそれほど多くない.しかし,本 研究のようなサッカーの戦術分析では現場の指導者や選手が理解できる形で分析結果がフ ィードバックされる必要がある.従って,今後の課題としては,識別性能を向上させるの みならず,指導現場に還元できるようなより有益なフィードバック方法を検討する必要が ある.そのためには,ボールと選手位置の確率分布がどのようにモデル間で異なっている のか,またそれらの時間変化パタンにどのような違いがあるのかという点をより詳細に分 析していくことが課題となる.また,HMM を用いた最適な時系列の生成手法に基づき,選 手の最適配置や選手とボールの最適な変化パタンを様々なシチュエーションごとに作成し, 選手やコーチにフィードバックするという方法の開発も今後の課題である.. 以上述べたように,本研究はサッカーを初めとする集団的スポーツの技能を定量的に評 価可能な分析方法を提案するものであり.本手法で得られる評価結果を指導現場にフィー ドバックすることにより技能向上が図られる可能性がある.また,本研究で提案された集 団的スポーツの分析方法の新規性は極めて高く,多くの集団的スポーツに適用可能な原理 を提供するものであり,博士(スポーツ科学)の学位を授与するに十分値するものと認め る.. 掲載論文 1.. Fumiya Ueda, Masaaki Honda, Hiroyuki Horino, A Study on the Causal Relationship between Dominant Region and Offense-Defense Performance – Focusing on the Time of Ball Acquisition –, 日本フットボール学会 Football Science 誌, Vol.11, pp. 1-17, 2013.. 2.. 植田文也,誉田雅彰,隠れマルコフモデルによるサッカー選手のポジショニングパタ ンの分析,日本コーチング学会コーチング学研究,Vol.31, No.1, pp.11-30, 2017..

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