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博士学位申請論文審査報告書

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Academic year: 2022

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(1)2017年12月27日. 博士学位申請論文審査報告書 大学名. 早稲田大学. 研究科名. スポーツ科学研究科. 申請者氏名. 河村. 論文題目. 酸化ストレスに及ぼす疲労困憊運動と水素摂取の影響. 拓史. Effects of exhaustive exercise and molecular hydrogen intake on oxidative stress 論文審査員. 主査. 早稲田大学教授. 村岡. 功. 博士(医学)(東京医科大学). 副査. 早稲田大学教授. 樋口. 満. 教育学博士(東京大学). 副査. 早稲田大学教授. 坂本 静男. 医学博士(聖マリアンナ医科大学). 副査. 早稲田大学教授. 鈴木 克彦. 博士(医学)(弘前大学). 一過性の持久的運動は、生体内における活性酸素種およびフリーラジカルの産生を 高めることにより、酸化ストレスを誘発することが数多く報告されている。その程度 は運動強度や運動時間によって異なることも知られているが、疲労困憊まで運動を継 続した場合の影響については必ずしも明らかとはなっていない。 運動に伴って生ずる運動誘発性酸化ストレスは、脂質、タンパク質および核酸など の生体分子に酸化的傷害を与えるだけではなく、運動パフォーマンスの低下や二次的 な筋損傷にも部分的に関与することが示唆されている。このような背景から、運動誘 発性酸化ストレスによる負の作用を軽減するための抗酸化物質摂取の効果について も、これまでに数多くの研究が行われてきた。 近年、新たな抗酸化物質として水素分子(以下、水素)に注目が集まっており、先 行研究では、がん、糖尿病、心血管疾患および神経変性疾患などの様々な疾患に対す る有効性が示されている。また、現在では、水素が抗酸化作用だけではなく、抗炎症 作用、神経保護作用および抗代謝異常作用などの様々な生理作用を併せ持つことが報 告されている。このように、疾患に対する水素の有効性やそのメカニズムについては、 数多くの報告がなされている一方で、運動誘発性酸化ストレスおよびその関連指標に 対する影響については未だ明らかにされてはいない。 そこで、本論文では、これまでに検討がなされていない疲労困憊運動の強度の違い が生体の酸化ストレスに対して如何なる影響を及ぼすのかを明らかにするとともに、 水素水の飲用あるいは水素入浴という2つの摂取方法を用いて、研究がほとんどなさ れていない運動誘発性酸化ストレスおよびその関連指標に及ぼす水素の影響について も併せて検討することとした。 本論文は4章から構成されており、以下にその概要を記す。 第1章では、研究の背景と目的について述べており、第2章では文献考証として、 安静時における酸化ストレス、運動誘発性酸化ストレス、運動誘発性酸化ストレスに. -1-.

(2) 対する抗酸化物質摂取の効果、および新たな抗酸化物質としての水素、について従来 の知見を詳細に記述している。そして、従来の研究における問題点やこれまでの研究 ではほとんど行われていない課題を浮き彫りにした上で、これらの問題を解明するた めの3つの研究課題を設定している。 第3章では、3つの研究課題、【研究課題1】強度の異なる疲労困憊運動がラット 血漿および骨格筋の酸化ストレスに及ぼす影響、【研究課題2】2週間の水素水摂取 がラットの運動誘発性酸化ストレスおよび組織グリコーゲン含量ならびに持久的パフ ォーマンスに及ぼす影響、【研究課題3】ダウンヒル運動後の酸化ストレスおよび遅 発性筋痛に及ぼす水素入浴の効果、について以下の通り詳細に記述している。 【研究課題1】 先行研究では、運動誘発性酸化ストレスは運動の強度と時間の影響を受けることが 報告されている。しかし、これらの研究では、強度の異なる運動を一定時間行わせる か、あるいは同一強度での運動を異なる時間に亘って行わせており、疲労困憊に至る まで運動を継続させていない。そこで、研究課題1では、若齢ラットを対象として、 強度の異なる疲労困憊運動がラットの血漿および骨格筋の酸化ストレスに及ぼす影響 を検討した。その結果、ラットの骨格筋における酸化ストレス指標はいずれの疲労困 憊運動においても変化しなかったものの、漸増負荷による疲労困憊運動はラットの血 漿における酸化ストレス指標(酸化傷害および抗酸化レベル)を増加させることが明 らかとなった。これらの知見から、漸増負荷による疲労困憊運動は、骨格筋の酸化ス トレス指標の変化を伴わずに血中の酸化ストレス指標を変化させることが示唆され た。(Science & Sports に掲載予定。現在印刷中) 【研究課題2】 研究課題2では、研究課題1で最も酸化ストレスへの影響が大きかった漸増負荷に よる疲労困憊運動を用いて、2週間の水素水摂取が若齢ラットの運動誘発性酸化スト レスおよび組織グリコーゲン含量ならびに持久的パフォーマンスに及ぼす影響を検討 した。その結果、2週間の水素水摂取は運動時におけるラットの筋および肝グリコー ゲンの利用を抑制することが示唆された。一方で、2週間の水素水摂取は、 運動時の ラットの血漿および骨格筋における酸化ストレス指標(酸化傷害)ならびに持久的パ フォーマンスには影響しないことが示された。これらの知見から、水素は抗酸化以外 の生理作用を介して、運動時における筋および肝グリコーゲンの利用を抑制すること が示唆された。 【研究課題3】 研究課題3では、ヒトを対象として、一般的な持久的運動(非筋損傷性運動)とは 異なる酸化ストレス応答を示す筋損傷性運動を用いて、水素摂取による影響を検討し ・. た。具体的には、健常かつ活動的な若年男性を対象に、平地走行時の 75~85% Vo2peak に相当する速度での 30 分間のダウンヒル運動(傾斜-8%)を行わせ、運動後の酸化 ストレスおよび遅発性筋痛に及ぼす1週間の水素入浴またはプラセボ入浴による影響 の違いを比較した。その結果、マグ水素を用いた1週間の水素入浴では、運動後の酸 化ストレスに対する効果は認められなかったものの、遅発性筋痛の軽減に有効である. -2-.

(3) ことが示唆された。(体力科学 65(3):297-305 に掲載) 第4章では、3つの研究課題に関する総合討論を展開するとともに、今後の課題に ついて言及している。 本論文では、一連の研究課題により、漸増負荷による疲労困憊運動は骨格筋の酸化ス. トレス指標の変化を伴わずに血中の酸化ストレス指標を変化させること、また、実験 対象、摂取方法、摂取期間および摂取タイミングなどが異なるものの、水素が運動時 の筋および肝グリコーゲン利用の抑制や、ダウンヒル運動後の遅発性筋痛の軽減に有 効であることを明らかにした。しかしながら、依然として検討すべき課題は残されて いる。 今後は、漸増負荷による疲労困憊運動が骨格筋以外の組織(血液、肝臓および心臓 など)における酸化ストレス応答に及ぼす影響を検討するとともに、それらの組織に おける酸化ストレス応答が運動強度に依存するのか否かを明らかにしていく必要があ る。また、水素摂取による組織グリコーゲン利用の抑制や遅発性筋痛の軽減がどのよ うな生理生化学的なメカニズムを介してもたらされるのかを明らかにするとともに、 水素の摂取方法の違いがこれらの結果に如何なる影響を及ぼすかについても検討して いくことが求められよう。 以上の通り、本論文において、これまでに検討がほとんどなされていなかった①運動誘 発性酸化ストレスに及ぼす疲労困憊運動の影響を明らかにした点、②水素という新たな抗 酸化物質に着目して、運動誘発性酸化ストレスおよび関連指標に及ぼす影響を明らかした 点は、オリジナリティに富む優れた研究成果であったと評価できる。これらの成果は、研 究課題のうちの一つ(これについては、現在、投稿準備中)を除き、既に以下に記した学 術雑誌に掲載あるいは掲載予定であり、関連する分野の研究者からも高い評価を得ている。 以上より、本審査委員会は、本論文が博士(スポーツ科学)の学位を授与するに十分値 するものと認める。 以上. Takuji Kawamura, Ryosuke Fujii, Li Xi, Kazuhiko Higashida and Isao Muraoka (2017) Effects of exhaustive exercises, with different intensities, on oxidative stress markers in rat plasma and skeletal muscle. Science & Sports, In press. 河村拓史, 丸藤祐子, 高橋将記, 原怜来, 鈴木克彦, 村岡功 (2016) 運動後の酸化スト レスおよび遅発性筋痛に及ぼす水素入浴剤を用いた入浴の効果. 体力科学 65(3):297-305.. -3-.

(4)

参照

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