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論文の内容の要旨

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

1 申 請 者

防衛医科大学校 伊藤 桂

2 論文題目

筋小胞体Ca2+ ATPase2 Cys674Ser knock-inマウスにおける心室性不整脈発生 に関する検討

3 論文の内容の要旨

(1)目的

心筋細胞において、筋小胞体 Ca2+ ATPase2(SERCA2)は収縮期に細胞質 内に放出された Ca2+を、拡張期に能動的に筋小胞体内へ取り込むことで細

胞質内 Ca2+濃度の恒常性を維持する重要な Ca2+トランスポーターである。

心不全では SERCA2 の機能が低下し、筋小胞体内 Ca2+が枯渇し、細胞内 Ca2+過負荷が起こり種々の障害をもたらす事が知られている。その一つと して細胞質内 Ca2+過負荷は撃発活動を引き起こすことで心室性不整脈の原 因となりうるが、SERCA2 の異常と心室性不整脈の関連については十分に 解明されていない。また、心不全患者で認められる SERCA2 Cystein674 の 亜硫酸化は不可逆的な SERCA2 の機能異常を起こすことが過去に報告され ている。

そ こ で 今 回 我 々 は 、SERCA2 Cystein674 を Serine674 に 変 異 さ せ た 、 SERCA2 の亜硫酸化を模倣したSERCA2 Cys674Ser knock-in(SKI)マウス を用い、アンギオテンシンⅡ(ANG II)負荷による心負荷モデルを作成し、

このマウスモデルにおける SERCA2 異常が心室性不整脈の誘発性および心 筋細胞内 Ca2+動態に与える影響について検討した。

(2)対象並びに方法

14-20 週齢の雄の野生型(control)マウスと SKI マウスに 1週間の ANG II

(3 mg/kg/日)もしくは蒸留水の持続皮下投与を行い、vehicle群と ANG II 群を作成した。収縮期血圧、マッソン・トリクローム染色による心筋線維化 の程度、心エコー図の評価を行った。また、心電図検査および不整脈の誘発、

オプティカルマッピング法による活動電位持続時間の評価、心臓の mRNA 量の測定、単離心筋細胞での Ca2+トランジェントの測定を行った。

(3)成 績

ANG II 群では controlマウス、SKI マウスで同等に血圧が上昇し、同等 の心肥大と心室の線維化を認めた。心エコー図では ANG II 群は controlマウ ス、SKI マウスとも左室壁厚の増大を認めたが、左室収縮能は 4群間で差を 認めなかった。心電図検査では SKI マウスは vehicle 群、ANG II 群ともに

controlマウスと比較し QT間隔の延長を認めた。カテコラミン投与下の不整

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脈誘発性を vehicle群で比較したところ、SKIマウスでは controlマウスと比 較し有意に高い心室性不整脈の誘発を認めた。活動電位持続時間は vehicle 群の SKI マウスにおいて有意に延長していた。カテコラミン非投与下での 誘発試験では、ANG II群の SKIマウスでのみ心室性不整脈が誘発された。

心筋の mRNA 発現は control 群の SKI マウスで Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase II (CaMK II)の発現が亢進していた。ANGII 群は control、

SKIマウスともに CaMK II、Na+/Ca2+ exchanger、ryanodine receptor(RyR) の発現が亢進していたが、SERCA2 の発現は 4群間で差を認めなかった。

Ca2+トランジェント測定では、SKI マウスは vehicle 群で収縮期のピークの Ca2+振幅(F/F0)が有意に低下し、拡張早期の主にSERCA2機能を反映すると されるCa2+の最大振幅から50%減衰までの時間(Time to 50% relaxation : RT50) が延長していた。ANG II 群では両群とも同等に F/F0 が低下したが、RT50

は ANG II 投与による変化は認めなかった。カフェイン投与による筋小胞体

からの Ca2+放出量は SKI マウスで著明に低下していた。また、SKI マウス は Ca2+スパーク頻度が有意に増加しており、特に ANG II群の SKI マウスに おいて著明な Ca2+スパークの増加を認めた。

RyR からの Ca2+リークを抑制するダントロレンを投与すると、ANG II 群の SKI マウスで認めた心室性不整脈の誘発性が有意に低下した。Ca2+トラン

ジェントにおいては低下した F/F0が改善し、カフェインによる筋小胞体 からの Ca2+放出量が増加し、Ca2+スパーク頻度が低下した。

(4)考察

SKI マウスは左室収縮能や心筋線維化に変化がないにも関わらず、カテコ ラミン急性負荷や ANG II 慢性負荷下で高い心室性不整脈の誘発を認めた。

SKI マウスは SERCA2 の機能低下により拡張期の筋小胞体への Ca2+取り込

みが低下し筋小胞体 Ca2+貯蔵の低下・細胞内 Ca2+濃度の増加を来たしてい ると考えられた。細胞内 Ca2+濃度の増加に RyR を介した Ca2+リークの増加 が報告されている。SKI マウスのRyR からの Ca2+リークは control群で増大 しており、ANG II慢性負荷下で更に増加した。ダントロレンによる RyRか らの Ca2+リークの抑制は SKI で認めた不整脈誘発性と Ca2+ハンドリング異 常を改善させた。これらの結果から、心負荷下での RyR からの Ca2+リーク

に SERCA2 の機能低下が加わることが、Ca2+ハンドリング異常による心室

性不整脈の原因になり得ると考えられた。

(5)結論

SERCA2 Cys674Ser knock-in マウスは、SERCA2の機能低下により心筋 細胞内 Ca2+ハンドリング異常を来し、ANG II による心負荷下で高い心室 性不整脈の誘発性を示した。筋小胞体の Ca2+リークの抑制は Ca2+ハンドリ ングを改善させ、本モデルにおける心室性不整脈を抑制した。心室性不整脈 に対して筋小胞体への介入は有効であると考えられ、今後、SERCA2を含め た筋小胞体の Ca2+ハンドリングを標的とすることは新たな不整脈治療戦略 になりうるものと考えられた。

参照

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