• 検索結果がありません。

Masao NAKAYAMA(Received February28,1991)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Masao NAKAYAMA(Received February28,1991)"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

組織的観察によるスポーツコーチング行動の         分析法について

中  山  雅  雄

(平成3年2月28日受理)

Systematic Observation Approach to

   Sport Coaching Behavior

Masao NAKAYAMA

(Received February28,1991)

目  的

 スポーツの指導は主に指導者の選手としてのスポーツ経験を中心になされることが多い。

現代社会のスポーツの高度化の勢いはすさましく,また多くの人々が多様な二一ズを持ち スポーツに参加するようになってきている。そのような中で指導者が過去の経験だけで指 導にあたることには多くの問題を持つことになる。日本体育協会や文部省なども指導者の 質的な向上を図るために指導者の資格認定事業を積極的に進めている。

 コーチ教育は様々なかたちで実施されている。その中の一つに第三者による組織的な観 察によるコーチング行動のフィードバックによってコーチの質的な向上を進めようとする ものがある。教師養成で行なわれる教育実習はこの方法が主にとられている。教師養成に 関する研究は数多くなされているが,スポーツのコーチ養成に関するものはあまり見られ ない。Wandzilakら9)はコーチが感じている自分自身のコーチング行動と第三者によって 観察されたコーチング行動は異なるものであったと報告している。このことは,コーチ自 身のコーチング行動の分析がいかに客観性を持たないものであるかをあらわしているもの であり,コーチー人の力でのコーチング能力の向上には限界があると考えられる。これら のことより,コーチング行動を観察するためのシステムを開発していく必要があると思わ

れる。

 本研究では,先行研究で用いられたコーチング行動観察インベントリーを用いて,スポー ツのコーチング行動を観察することによって,コーチング行動の観察に関する基本的問題 点を明らかにし,今後の研究をより効果的に実施するための基礎資料を得ることを目的と

する。

方  法

 1)観察インベントリーの選択

 これまでにコーチング行動や体育教師の授業を観察するために様々なインベントリーが 用いられている。それぞれに特長を持ち,研究者が観察によって何を分析しようとするの

(2)

表1.Tharp−GallimoreCoachingBehaviorObserbationlnstrument(Tharp1976)

コード  カテゴリー 内  容

l H

M+

M−

V+

V−

NV+

NV−

W

OX

  指導  掛け声

正のモデリング 負のモデリング

  賞賛   叱責

非言語的報酬 非言語的な罰 叱責/再指導

  その他

コード化できない

何をするのか、どのようにするのかの言葉による説明 以前に指導した行動を覚醒させたり強めたりするための言葉

どのように遂行するかのデモンストレーション

どのように遂行してはいけないかのデモンストレーション 言葉による賛辞、激励

不快を表す言葉

非言語的な賛辞、激励(スマイル、パッティング、ジョーク)

顔をしかめる、絶望のゼスチヤー ある行動について、明らかに叱責を含んで、

以前に指導した行動を再び指導する

例)何回言ったら分かるんだ。パスしたら走りなさい。

上記のカテゴリーに入らないもの

見たり、聞いたりすることができなかった行動

  「内容次元」の観察

  /\

「一般的内容」       「体育的内容」

      ↓

       「生徒の学習行動」の観察

「成功」

  「従事」

   ↓

従事行動の「困難度」

  ↓

「どちらとも言えない」 「敗」

「非従事」

字ラ淵

クラス2

(反応行動)

      へじぎましいパフォ マンス

畑轍

      C.誤った行動

       8)統制

 (無意  ・な㌍動)

Aゲーム状況 9)一般的な技術指導 10)一般的な激励

11)構成

B.ゲーム外

12)コミュニケーション

図1.ALT−PE観察法の手順(高橋ら 1989) 図2.TheCoachingBehaviorAssessment  System response categories (Smith  1977)

かといった目的によって工夫がなされているようである(表1,図1,2)。

 その中で本研究ではTharpR.ら7)が用いた10カテゴリーからなるインベントリー(表1)

を選択した。観察方法は行動目録法を用いたイベント記録法が用いられる。このインベン トリーはUCLAのバスケットボールのコーチであったJohn Woodenのコーチング行動 を分析するために用いられたものである。また,Darst P.ら1)はこのインベン、トリーに若干 の修正を加え,アメリカンフットボールのコーチの行動観察を行なっている。各カテゴリー は教育心理学や教育方法学において有効な情報を反映しているものである。

2)観察者

観察者は本研究者と保健体育を専攻するN大学教育学部3年生5名である。

3)観察者のトレーニング

(3)

 観察者が各カテゴリーを適切に理解するために,実際の観察に先立ち約4時間のトレー ニングを行なった。まず最初に,各カテゴリーの定義について観察者間で討議しながら学 習を進め理解を深めた。次に観察者のトレーニング用にビデオに収録したサッカー指導者 のコーチング場面を全員で観察しながら,その指導者のコーチング行動を分類した。この

トレーニングを終了して実際のコーチング行動の観察を実施した。

 4)観察対象指導者及びコーチング状況  ・N県立高校剣道部 顧問 N.G  職業は高校の保健体育の教諭である。

 観察したコーチング状況は大会終了後で基本練習がトレーニングの中心であった。

 ・N県立高校野球部 監督 S.丁

 指導者として甲子園に出場した経験を持っている。職業は高校の保健体育の教諭である。

観察したコーチング状況は大会終了後で基本練習がトレーニングの中心であった。

 本研究で用いたインベントリーではすでにバスケットボールやアメリカンフットボール のコーチ行動がすでに分析されており,それ以外の種目について行なうことにした。これ は種目が異なるコーチ行動を観察・分析するために同じインベントリーを用いてもその コーチ行動を網羅することができるかを検討するためでもある。

 5)観察方法

 それぞれのコーチング状況を指導者を中心にビデオカメラで収録した。それを再生し,

指導者の言葉を聞き取り文字にあらわした。観察者はビデオ画面と,文字で表された言葉 から,それぞれのコーチング行動をカテゴリーに分類した。コーチング行動の各カテゴリー への分類作業を3回実施し,2回目と3回目の分類の間での一致率についてS−1法に基づ いて算出した結果81.5%であり信頼性の基準を充足するものであった。

結果と考察

 1)カテゴリーへの分類

 本研究では観察によって対象となった指導者のコーチング行動を分析することが主要な 目的ではない。さらに,観察の対象となった指導者のコーチング行動を1回の練習場面だ けを取り上げ種々考察することは非常に困難である。従ってここでは簡単に結果を整理す るに留めることにする。

 剣道,野球の各コーチング行動の観察結果は図3に示した。剣道については「その他」

のカテゴリーが比較的多くなった。剣道の種目特性であるかもしれない。そのため「その 他」の内容を分析し,新しいカテゴリーを作る必要があるのではないかと考えられる。野 球では「叱責」のカテゴリーへの分類が比較的多くなった。

 また,先行研究で行なわれたバスケットボールとアメリカンフットボールのコーチの分 析結果との比較を図4に示した。これによると本研究では「正のモデリング」の割合が高

く,逆に「叱責/再指導」のカテゴリーへの割合が小さかった。

 これらの結果を各コーチの行動特性として捉えるためにはさらにデータを蓄積していか なければ明らかにできないだろう。しかし,本研究で用いたインベントリーを用いコーチ

(4)

α6

0.5

0.4

道球剣野團□

0.30.20.1

Q.O

HM+M−V+V−NV+NV・WOX

        ca量egory

図3.剣道・野球のコーチング行動のカテゴリーへの分類

0.6

0.5

0.40.3

O.2

0.1

團剣道

□野球

園 バスケットボール 目アメリカンフットボール

  0.O

    i HM+M−V+V−NV+NV−WOX

      ca量egory

      図4.コーチング行動のカテゴリーへの分類

ング行動を観察することによって,各コーチのコーチング行動の特徴をつかむことが可能 であると考えられる。

 2)観察方法に関する問題点と今後の改善

 本研究での観察過程の中でいくつかの問題点が起きている。それについて以下まとめて みる。まず第一に,イベントの区切りをどのように判断するかという問題である。特に「指 導」のカテゴリーについて問題が多かった。指導が始まると話が続きだし延々と終わらな い場合がしばしば起きた。その内容も多岐にわたるものであった。本研究では一つの関連 した内容を1イベントとして記録したが,観察者によって差がでやすいものであった。

(5)

 モデリングについての分類も非常に難しいものであった。本研究ではどの程度のデモン ストレーションをモデリングと位置づけるかを観察者間で討議しながら分類した。今後,

より多くのデータの収集・分析を実施していくにあたって,モデリングについての定義を さらに検討し,明確にしておく必要があると思われる。このことは先行研究との比較,にお いて,本研究で「正のモデリング」についての割合が高くなったことと,なんらかの関係 があるのではないかとも考えられる。

 本研究では,言語的行動に焦点があたり過ぎた傾向にあり,非言語的行動を軽視する結 果となった。そのため,非言語的行動への分類が剣道,野球については0になっている。

実際のコーチング行動をその場で観察しながら直接各カテゴリーに分類する作業を行なう ようにしていく必要があると思われる。その際に特に非言語的行動を軽視しないように注 意しなければならない。もちろん,ビデオで撮影し観察後に分類のチェックをしていく作 業を怠ってはいけないが,実際になされている状況の雰囲気を観察者が感じながら記録し ていくことを重視されるべきであると考えられる。

 スポーツの種目によってインベントリーに若干カテゴリーを加えることによって「その 他」のカテゴリーへの分類が多くならないように工夫する必要がある。しかし,基本的に は本研究で用いた10のカテゴリーで十分ではないかと思われる。カテゴリーの数を多くし 細かい分類を行なうことは,観察者の負担を多くし信頼性に問題がでてくると考えられる。

 観察者については,本研究では約4時間のトレーニングを実施し,信頼性については一 応を基準をみたすものであった。さらに信頼性を高めるために,トレーニングマニュアル 等を作成し観察者の質の向上のために努力をしていかなければならない。また同時に観察 者の人数を多くし,データ収集の量を増やしていかなければならない。本研究では1回の コーチング行動について観察者が3回分類した。しかし,今後は2人の観察者が同時に観 察する方法で実施しデータ収集の効率を上げていく予定である。

 以上のように,今回実施したコーチング行動の組織的観察による分析法についていくつ かの問題点が示された。これらを改善し,観察者の再トレーニングを行なう必要があるだ ろう。そして今後は,多くのコーチのコーチング行動を観察しデータを蓄積していかなけ ればならない。それはコーチ教育に還元されるようなものでなければならないし,コーチ の質的な向上に寄与できるものでなければならないと考えている。

引用参考文献

1)Darst,P.Richadson,D.and Krahenbuh1,G., Analyzing coaching behavior and practice time,

Motor Skills:Theory and Practice,5−1:13−22,1981.

2)Smith,R.Smoll,F.and Earlhmt., A system for the Behavioral assessment of athletic coaches,

The Research Quarterly,48−2:401−407,1977.

3)S圭nith,R.Zane,N。Smol1,F。and Coppel D., Behavioral assessment in youth sports:coaching behaviors and children s attitudes, Medcine and saience in sports and exercise,15−3:208−214,

1983.

4)シーデントップ(高橋健夫,他訳),体育の教授技術,大修館書店,1988.

5)高校健夫・岡沢祥訓・大友智「体育のALT観察法の有効性に関する検討一小学校の体育授業分析を

通して一」体育学研究,34−1:31−43,1989.

6)高橋健夫・岡沢祥訓・中井隆司「教師の『相互作用』行動が児童の学習行動及び授業成果に及ぼす

(6)

  影響について」体育学研究,34:191−200,1989.

 7)Tharp,R.andGallimore,R., What acoach canteach ateacher, Psycholo窪ytoday,January:

  75−78,1076.

 8)続有恒,他編,心理学研究法 第10巻 観察,東京大学出版会,1974.

 9)Wandzilak,T.Ansorge C.and Potter G., Comparison between selected practlce and game

  behaviors of youth sport soccer coaches, Joumal of sport behavior,11−2:78−88,1988.

参照

関連したドキュメント

 少なくとも初等教員養成において近年「目的養成」が強調 されるようになっているのは、戦前の師範教育のような国

木漏れ日があると思わず入りたくなり,面白い影には自然

という現実的な情報は,夫婦和解のあたかも総仕上げとなるかのような持ちだされ方をし ているけれど,勿論, touch

 わが国の教員養成の問題は『学校教育全書』中に極めて要領よく,次のように述べられ

 昭和31年科学技術教育の振興をモットーに従来の中学校の職業,家庭科が改められ,新

とに気付かせる。」また,5年生の内容として「魚などの活動及び,卵のかえる様子を調

特に骨格筋17)一一19)や脂肪組織19)2°)による血中からのTG除去作用の充進によって説明されてい

コーチは選手と会話をするときに,同じ立場に立って話してくれた