高等学校における運動部活動のコーチングに関する一考察 : 生徒の目的達成とコーチの関わり方に着目して
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第60巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.60,No.1. 平成21年8月 August,2009. 高等学校における運動部活動のコーチングに関する一考察 一生徒の目的達成とコーチの関わり方に着目して−. 山本 雄介・城後 豊* 北海道教育大学大学院教育学研究科 北海道教育大学札幌枚保健体育科教育学研究室¶. ConsiderationsofCoachinginHighSchooISportTeamActivities. −FocusingontheInvoIvementofCoachesandtheAccomplishmentofStudentObjectives− YAMAMOTOYusukeandJOGOYutaka* GraduateSchoolofEducation,HokkaidoUniversityofEducation. *DepartmentofHealthandPhysicalEducationPedagogy,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation,SapporoOO2−8502. 概 要 本稿は,高等学校における運動部活動に関する課題から,生徒の目的達成とコーチとの関わりに着日し, コーチングに関する知見を得ることを目的とした。その分析の結果,生徒が運動部活動において,主体的に 目的を達成していくときに,「コーチング・スキル」や「負のコーチング・スキル」「生徒同士への働きかけ_l が影響を与えることが示唆された。. 【キーワード;運動部活動,コーチング,目的達成】. 目 的 運動部活動は1)2)3)4),生徒の「人間形成」「健. により,生徒の心身の負担を考慮しない活動や, 活動が学習に悪影響を与えてしまうことも指摘さ. れており,不適切な指導等について,コーチング. 全育成」「生涯スポーツ」など,大きな教育的意. の在り方が問われている。白鳥は5),指導に当た. 義を持ち,「生きる力」の育成に大きく貢献でき. る側のコーチが,運動部活動において「生徒がど. る活動である。. のような目的を持ち,どのような思いで活動して. さらに,今も昔も生徒たちのスポーツ活動の中. いるか」,「コーチの指導をどう感じているか」な. 心的な場であり続けている。しかし,歴史的背景. どについて,意識が低いことを指摘している。ま. や,子どもの主体性の損なわれたコーチングなど. た,野尾らは「コーチングとは,コーチと競技者. 215.
(3) 山本 雄介・城後. の関係を表す関係概念であり,コーチングには競. 豊 調査対象の属性を表−1に示した。. 技者の存在が必要不可欠である」6)と述べている。. しかし,これまでのスポーツコーチングに関する. 2.調査期間. 2007年11月13日∼12月8日. 研究は,どれもコーチの視点から捉えたものばか りである。このことから,運動部活動について生. 3.調査内容. 徒の視点から捉える必要がある。. 本研究では,質問紙による自記式無記名の調査. また,コーチの役割とは,コーチの原義からコー. チングの在り方を考えると,「プレーヤーの目的. を実施した。運動部活動に取り組む上での目的に. を尊重し,その目的達成のために最大限の尽力を. 関して,予備調査を基に30の質問項目を構成した。. 行うことである」7)と考えられる。以上のことか. また,それぞれの目的の達成度合いを調べるた. ら,運動部活動のコーチングにおいては,生徒が. め,まずその質問項目について,目的としていた. 主体的に目的を達成し,それによって豊かな人間. か否かを答えてもらい,目的としていた場合のみ,. 性や起しい心身が育まれ,さらには生涯スポーツ. その達成度合い(5段階評定)を答えてもらった。. の基盤が形成されるような,教育的意義を充たす. さらに,運動部活動において「コーチ(指導者). は自分にどう関わってくれたか」に関して,予備. 「コーチの関わり」が重要となる。. そこで本研究では,運動部活動を引退した高校. 調査を基に54の質問項目(5段階評定)を構成し. 3年生を対象としたアンケート調査から,「生徒. た。. の目的達成」と「コーチの関わり方」の関係につ いて生徒の視点から着目し,コーチングについて. 4.分析方法. 分析を行い,若干の知見を得ることにした。. (1)「運動部活動における目的」と「コーチの関 わり」の因子を明らかにするため,「目的」30 項目,「コーチの関わり」54項目についてそれ. 方 法. ぞれ因子分析・主因子法を行った。. 1.調査対象. (2)生徒が運動部活動において,多目的に取り組. 札幌市の高等学校(私立4校 205名,公立2. むことと「コーチの関わり」との関係を明らか. 校 221名)の運動部活動に選手として所属して. にするため,対象者全体において,運動部活動. おり,2007年度引退した高校3年生,計426名に. における「目的」の30項目のうち何項目を「目. 対して調査を行った。有効回答数は全体の91.8%. 的としていた」と答えたかを数え,その項目数. にあたる391名(男性284名,女性107人)であった。. の平均値より,少ない群を少目的群,多い群を. 多目的群とした。その2群において「コーチの 表−1 調査対象の属性. 関わり」の得点をt検定を用いて比較した。. 種 目 名 アーチェリー. 9. ウェイトリフティング 3 空手 弓道 剣道 硬式テニス ゴルフ. 10 16 6. 24 3. 柔道. 9. 水泳. 4. 相撲. 体操 卓球 軟式テニス. 1. 5. 9. 23. 馬術 バドミントン バトントワリング フェンシング. 硬式野球 サッカー ソフトボール チアリーディング バスケットボール バレーボール ラグビー. (3)生徒が運動部活動において,「目的」を達成 することと「コーチの関わり」の関係を明らか. 1. 1. 18 陸上 アメリカンフットボール 5. 合計・26種目. 216. 1. 36. 60 46 3. にするため,対象者全体の,運動部活動におけ. る「目的」の7つの各因子において,1つ以上 の項目を「目的としていた」と答えた者を,そ. の項目の達成度の平均値で分け,平均値より低. 6. 54 26 12 391. い群を,目的・低達成群,高い群を目的・高達. 成群とした。その2群において「コーチの関わ り」の得点をt検定を用いて比較した。.
(4) 高等学枚における運動部活動のコーチングに関する一考察. 子分析の結果を表−2,3,4,5に示す。 結果及び考察. ○第1因子は,勝利することや活躍すること,結 果を出すという内容から「競技的成功」とした。. (1)「運動部活動における目的」「コーチの関わ. ○第2因子は,有名になることや人気者になると. り方」に関する因子分析. いった他者に自分を印象付けたり,人の日を自. 「運動部活動の目的」「コーチの関わり」の因. 表−2 「運動部活動における目的」に関する設問項目の因子分析の結果(直交バリマックス回転後) 因子負荷量. 設問項 目. 第1田子 第2因子 第3因子 第4因子 第5因子 第6因子 第7因子. 16 チームの勝利に役立つこと. −0.037. 26 公式戦で結果を残すこと 9 選手として活躍すること 24 レギュラーになること. 0.721. 21勝ったときの喜びを味わうこと. 0.173. 0.073 −0.007 −0.081. 0.049. 0.134. 0.148. 0.141. 0.114. 0.181. 0.157. 0.121. 0.05. 0.114. 0.078 0.209. 0.708. 0.151. 0.676. 0.153. 0.258. −0.07. 0.038. 0.137. −0.034. 0.587. 0.007. 0.174. 0.428. 0.106. 0.122. 0.066. 23 仲間と1つの目標に向かって頑張ること. 0.555. 0.011. 0.314. 0.109. 0.362. 0.126. 0.07. 7 試合等において勝利すること 30 進学や就職に役立てること 25 人気者になること. 0.54. 0.007. 0.035. 0.586. 0.134. 0.085. 0.049. U.Uと;Z O.831. 0.093. 0.053. 0.181. −0.017. 0.112. 0.12. 0.638. 0.153. −0.016. −0.093. 0.478. 0.043. 13 有名になること. 0.182. 0.597. 0.037. 0.02. −0.075. 0.506. 0.046. 22 身体を動かしたり,汗をかいたりすること 20 学校生活を充実したものにすること 14 エネルギーを発散させること. 0.068. 0.097. 0.708. 0.046. 0.263. 0.03. −0.052. 0.007. 0.059. 0.542. 0.097. 17 健康であること 10 何かに打ち込むこと. 0.093. 0.099. 0.539. 0.198. −0.052. 0.509. 0.235. 0.144. 0.057. 27 嫌なことを忘れてリラックスすること. 0.137. 0.243. 0.469. 0.02. 0.407. 0.16. 0.18. 3 体力をつけること. −0.069. 1その競技の楽しさを味わうこと 2 達成感を得ること. 0.037. 7 そ・の競技の技能を向上させること. 0.052. 0.163. 0.67. 0.352. 0.06 0.385. 0.101. 0.368. −0.049. 0.448. 0.14. 0.211. 0.318. 0.301. 0.091. 0.322. −0.097. −0.037. 0.164. 0.121. 0.288. 0.335. −0.098. 0.148. 0.504. 0.197. 0.026. 29 精神的に強くなること. 0.152. 0.125. 0.237. 0.037. 0.748. 0.052. 6 人間的に成長すること. 0.234. −0.009. −0.085. 0.397. −0.036. 0.298. 0.103. 0.006. 0.132. 4 他者から自分を認めてもらうこと. 0.151. 0.163. 0.107. −0.047. 0.619. 0.106 0.363. 0.128. 0.206. 0.407. 0.231. 0.046. 0.074. 0.166. −0.Ml. 0.246. 0.071. 0.328. 0.067. 0.091. 0.207. 12 新しい友達と出会うこと. 0.157. 0.247. 0.128. 0.052 0.25. 8 友情を深めること. 0.179. 0.069. 0.26. 0.091. 固有値. 9.101. 2.567. 1.901. 1.336. 寄与率 α係数. 30.3%. 8.6%. 0.85. 0.73. 6.3% 0.79. 4.5%. 0.094. 0.083. 0.195. 0.148 0.097 0.285. −0.074. 0.714. 0.154. 0.018. 0.584. −0.048. 0.501 0.493. 0.238 0.2. 0.237. 719. 0.111. 1.136. 3.8%. −0.049. 0.771. 0.141. 0.55. 0.185. 0.215. 0.542. 0.058. 15 色々な事に挑戦すること 11他者と競争すること. 0.145. 0.187. 0.627. 18 人から褒められること. O.38. 0.085. 0.116. 0.405 0.171. 0.017. 28 努力して練習した成果を十分に発揮すること 5 ドキドキ感を味わうこと. 0.717. 0.033. 0.063. 716. 1.023. 3.4%. 0.68. 0.79. 0.939. 3.1% 0.73. 表−3 「運動部活動における目的」の国子 因子名 第1因子. 競技的成功. 具体的内容 「勝利」「活躍」「貢献」 「有名になる」「人気者になる」. 第3因子. 自己顕示 運動による心身への効果. 第4因子. 運動そのものの楽しさ. 「楽しさ」「技能向上」「達成感」. 第2因子. 第5因子 第6因子 第7因子. 鍛錬 挑戦と承認 親和. 「体力向上」「健康」「充実感」 「努力」「人間的成長」「精神的強さ」 「挑戦」「褒められる」「ドキドキ感」 「友情を深める」「出会い」. 217.
(5) 山本 雄介・城後 豊 表−4 「コーチの関わり方」に関する設問項目の因子分析の結果(直交バリマックス回転後) 設問項 目. 43 38 6 19 22. 35 20 46 21 4 53 12 45 52 17. 因子負荷量 第1因子 第2因子 第3因子. コーチは一生懸命選手の話を聞いてくれた コーチは選手と同じ目線や目標を持ってくれた コーチは信頼できる存在であった コーチは選手のタイプや状態,価値観をわかってくれた. −0.088 0.091 0.148 −0.092. コーチは選手のやる気を引き出してくれた. 0.012. コーチは選手の本当に言いたいことをくみ取ってくれた コーチは選手の悩みや不安をわかろうとしてくれた コーチは選手の意見や考え方を聞いてくれた コーチは選手に,目標に向かっていることを感じさせてくれた コーチは選手の感じていることを受け入れてくれた コーチは優しさを持って接してくれた コーチは選手一人一人の良いところを見てくれていた コーチは選手に相談に乗ってくれた. −0.145 −0.161 −0.165. コーチに大切にされていると感じることができた コーチは選手との会話に時間をとってくれた. −0.025 −0.02. 0.074. −0.095. −0.143. −0.023. −0.057. −0.004. −0.026. −0.006. 28. コーチはその競技を好きにさせてくれた. 0.012. −0.217. −0.048. −0.106. −0.113. −0.252. −0.105. −0.019. −0.036. −0.279. −0.059. 0.238. −0.101. 0.273. −0.012. −0.156. −0.016. 0.048. 0.004. 0.064 0.182. 0.091 −0.128. 0.06. 0.019. 0.269. 0.015. 0.171. −0.01. 0.152. −0.024. −0.001. −0.071. −0.027 −0.099 0.443 −0.043 0.461 0.277. 29 チームの目標設定は十分納得のできるものであった 1 コーチに対して自由にアイディアを話すことができた 24 コーチは選手から学んでいた. 0.009. −0.08. コーチは広い心を持っていた. コーチはユーモアがあった. −0.063 −0.015. −0.225. 32. 50. −0.076 −0.064. −0.068. −0.251. コーチは選手と会話をするときに,同じ立場に立って話してくれた コーチは選手の変化,成長,成果に気づいてくれた コーチは選手に新たな気づきをもたらすような質問や要求をしてくれた コーチは選手を平等に扱ってくれた コーチは選手がみずから動きたくなるような環境を作ってくれた コーチは選手の積極性を大切にしてくれた コーチは選手一人一人の能力を理解してくれた コーチは自分の自分の言ったことを実行していた コーチは選手の目標をはっきりとイメージさせてくれた コーチは選手の視野を広げるような質問,又は要求をしてくれた コーチは選手と一緒に喜んだり,悲しんだりしてくれた コーチは部活動以外の学校生活でもよく面倒を見てくれた コーチは自分で判断し行動する機会をくれた コーチは体の状態に気を配ってくれた コーチは目標を達成するために必要な,知識や技術を備えさせてくれた コーチは自分で考える機会をくれた コーチは情熱を持って指導してくれた コーチは選手のプレーや結果に対してすぐに振り返らせてくれた コーチは結果よりも努力などの過程を大切にしてくれた. −0.086. 0.199. 34 コーチは選手が話しやすい環境を作ってくれた 40 コーチは自分の考えを選手に押しつけることなく話を聞いてくれた 39 コーチは選手の話をさえぎらずに最後まで聞いてくれた. 25 27 10 3 11 18 8 16 13 48 33 54 7 44 9 2 37 14 42. −0.081 −0.099. 0.159 −0.013 −0.173. 0.191 −0.093 −0.002. −0.028. −0.16. 0.049. −0.072. 0.24 −0.269 −0.163. 0.188 0.078 0.101. 51 コーチは会話をするとき攻撃的な態度であった 30 コーチはイライラしていることが多かった 26 コーチは経巌や知識から,選手に一方的に考え方ややり方を押しつけてきた. −0.356. −0.075. −0.31. −0.103. −0.271. −0.013. 31 コーチは選手を必要以上にしばりつけていた 47 コーチは選手と会話をするときに心を通わせていない様子だった 5 チームでは,選手同士が自由に意見を言い合うことができた. −0.35. −0.099. −0.376. 0.00]. 0.242. 49 チームでは選手同士がお互いの意見や掟案を聞く雰囲気であった. 0.429. 15 チームでは,困ったときに選手同士がサポートし合う雰囲気であった 23 チームでは,選手同士で将来の夢や目標について語り合うことができた. 0.427 0.366. 固有値. 23.47. 寄与率. 43.5%. α係数. 0.98. 4.018. 7.4% 0.83. 1.937. 3.6% 0.77.
(6) 高等学枚における運動部活動のコーチングに関する一考察. あることから,「コーチング・スキル」8)とした。. 分に引き付けるという内容から「自己顕示」と した。. ○第2因子は,コーチの攻撃的な態度や一方的な. ○第3因子は,体力の向上や健康,充実感を得る. 押し付け,しばりつけといった「コーチング・. という内容から「運動による心身への効果」と. スキル」とは相反する内容から「負のコーチン. した。. グ・スキル」とした。. ○第4因子は,楽しさや技能向上,達成感を得る. ○第3因子は,チームメイト同士のサポートや語 り合いができる雰囲気をつくるという内容から. という内容から「運動そのものの楽しさ」とし た。. 「生徒同士への働きかけ」とした。. 因子分析の結果から,「運動部活動における目. ○第5因子は,努力や人間的成長,精神的に強く. 的」において選出された7因子を達成することは,. なるという内容から「鍛錬」とした。. 設問項目の具体的な内容から,生徒の豊かな人間. ○第6因子は,挑戦することや他者から認めても らう,褒められるという内容から「挑戦と承認」. 性,達しい心身を育み,生涯スポーツへと発展し. とした。. ていくと推察される。 また,「コーチの関わり方」においては,生徒. ○第7因子は,新しい出会いや友情を深めるとい. 一人一人との関わり方である「コーチング・スキ. う内容から「親和」とした。. ル」と「負のコーチング・スキル」,生徒全体へ の関わり方である「生徒同士への働きかけ」の3. ○第1因子は,双方向のコミュニケーションや目 標へのアプローチ,個性の尊重,自発的な行動. 因子が選出された。. の促進といった,コーチング・スキルの内容で. 表−5 運動部活動における「コーチの関わり方」因子 因 子 名 第1因子. コーチング・スキル. 具体的内容 「双方向のコミュニケーション」「目標へのアプローチ」「個性の尊重」 「自発的な行動の促進」. 第2因子 負のコーチング・スキル 「生徒から話しづらい環境」「一方的な押し付け」「イライラした態度」 第3国子 牛徒同士への働きかけ 「牛徒同士が意見し合える環境」「牛徒同士がサポートし合う環境」. (2)「運動部活動における目的」と「コーチの関. の尊重,自発的な行動の促進,生徒同士への働き. わり方」. かけを感じられるようなコーチとの関わりによっ. 対象者全体において,少目的群と多目的群の2. て,運動そのものの楽しさや心身の健康,挑戦,. 群で,「コーチの関わり」の得点を比較した結果,. 努力,友情などの目的を見出してくことができる。. 「コーチング・スキル」「生徒同士への働きかけ」. 海老原は9),運動部活動の顧問教諭は,多くの. の2因子において,多目的群が少目的群より有意. 教育的価値に重きを置いていることを報告してい. に高い値を示した(図表−1)。このことから,. る。すなわち,「コーチング・スキル」や「生徒. 生徒たちが多目的に運動部活動に取り組むとき. 同士への働きかけ」によってコーチが運動部活動. に,コーチの「コーチング・スキル」や「生徒同. を通して生徒の人間的成長を願う思いと,生徒の. 士への働きかけ」が影響を与えることが明らかと. 運動部活動に対する思いとの共通理解が深まり,. なった。. 生徒は運動部活動の中に教育的価値を充たす目的. つまり,生徒は運動部活動において,双方向の. を見川していくことが推察できる。. コミュニケーションや目標へのアプローチ,個性. 219.
(7) 山本 雄介・城後 豊 図表−1 多目的群と少目的群における「コーチの関わり」得点の比較 運動部活動における目的 少目的群 多目的群. 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. M. 3.166. 2.865. 3.522. SD. O.892. 0.97. 0.93. M. 3.597. 2.739. 3.925. SD. O.887. 1.053. t値. 1.207. −4.745. 判定. n.s. ***. 0.842 1.コーチング・. −4.486. スキ′レ. 2.負のコーチ. 3.生徒同士へ. ング・スキル の働きかけ. ***. 琳*;p<0.001n,S;nOSigni丘cant. や,自分で考えたり行動したりする機会を設ける. (3)目的達成と「コーチの関わり方」. こと,一人一人の目標へ導いてあげることなどの. 「運動部活動における目的」の7因子それぞれ で,目的・低達成群と目的・高達成群の2群で,. 関わり方を心がけていく必要がある。. 「コーチの関わり」の得点を比較した(図表−2. さらに,7因子全てで,「生徒同士への働きかけ」. において目的・高達成群が目的・低達成群より有. ∼8)。. 意に高い値を示した。西島らは11),生徒同士が. その結果,「競技的成功」「運動による心身への 効果」「運動そのものの楽しさ」「鍛錬」「挑戦と. 運動部活動において友人関係を育むことは,運動. 承認」「親和」の6因子で,「コーチング・スキル」. 部活動に熱心に取り組むことにつながることを報. において目的・高達成群が目的・低達成群より有. 告している。このことから,コーチが生徒同士の. 意に高い値を示した。これは,コーチング・スキ. 関わり合いへの働きかけを積極的に行うことで,. ルによって選手の能力が引き出され,行動につな. 友人関係が育まれ,運動部活動に熱心に取り組む. がることから10),コーチの双方向のコミュニケー. ことによって目的達成を深化させた。つまり,コー. ションや自発的な行動の促進,個性の尊重などに. チは生徒同士が積極的に関わり合える環境を整え. より,生徒の目的達成を促進した。つまり,運動. ていく必要がある。. 部活動のコーチは,生徒の話を一生懸命聞くこと. 図表−2 競技的成功の2群(高達成群/低達成群)における「コーチの関わり」得点の比較 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. 競技的成功 目的・低達成群 目的・高達成群. M. 3.213. 2.81. 3.57. SD. O.849. 0.984. 0.886. M. 3.668. 2.778. 3.984. SD. O.869. 1.047. 0.833. t値. 5.177. 判定. ***. −0.301 n.s. 4.709. 1.コーチング・ 2.負のコーチ 3.生徒同士ヘ. スキル. ング・スキル. の働きかけ. ***. 琳*;p<0.001n,S;nOSigni丘cant. 図表−3 自己顕示の2群(高達成群/低達成群)における「コーチの関わり」得点の比較 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. 自己顕示 M. 3.347. 2.781. 3.643. SD. O.872. 0.933. 0.889. M. 3.505. 2.9. 3.925. SD. O.919. 1.065. 0.837. t値. 1.397. 0.942. 2.598. 判定. n.s. n.s. 目的・低達成群 目的・高達成群. 琳;p<0.01n,S;nOSignificant. 220. **. 1.コーチング・ 2.負のコーチ 3.生徒同士ヘ. スキ′レ. ング・スキル. の働きかけ.
(8) 高等学枚における運動部活動のコーチングに関する一考察 図表−4 運動による心身への効果の2群(高達成群/低達成群)における「コーチの関わり」得点の比較 運動による心身への効果 目的・低達成群 目的・高達成群. 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. M. 3.164. 2.857. 3.521. SD. O.792. 0.922. 0.826. M. 3.646. 2.696. 3.951. SD. O.916. 1.065. 0.909. t値. 5.416. 判定. ***. −1.568 *. 4.782. 1.コーチングt 2.負のコーチ 3.生徒同士ヘ. スキル. ング・スキル. の働きかけ. ***. 琳*;p<0.001*;p<0.05. 図表−5 運動そのものの楽しさの2群(高達成群/低達成群)における「コーチの関わり」得点の比較 運動部活動その ものの楽しさ 目的・低達成群 目的・高達成群. 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. M. 3.12. 2.98. 3.356. SD. O.802. 0.954. 0.756. M. 3.696. 2.627. 3.749. SD. O.886. 1.038. 0.642. t値 判定. 6.64. −3.453. 5.52. ***. ***. ***. 1・コーチング・ 2・負のコーチ 3.生徒同士ヘ. スキ′レ. ング・スキル. の働きかけ. 琳*;p<0.001. 図表−6 鍛錬の2群(高達成群/低達成群)における「コーチの関わり」得点の比較 鍛. 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. 錬. 目的・低達成群 目的・高達成群. M. 3.194. 2.782. 3.516. SD. O.806. 0.936. 0.873. M. 3.704. 2.791. 4.057. SD. O.925. 1.097. 0.829. 5.751. 0.088. 6.18. n.s. ***. t値 判定. ***. 1.コーチング・ 2.負のコーチ 3.生徒同士ヘ. スキル. ング・スキル. の働きかけ. 琳*;p<0.001n,S;nOSigni丘cant. 図表−7 挑戦と承認の2群(高達成群/低達成群)における「コーチの関わり」得点の比較 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. 挑戦と承認 目的・低達成群 目的・高達成群. M. 3.214. 2.769. 3.488. SD. O.767. 0.965. 0.846. M. 3.606. 2.76. 3.979. SD. O.972. 1.062. 0.865. t値. 4.075. 判定. ***. −0.088 n.s. 5.344. 1.コーチング・ 2.負のコーチ 3.生徒同士ヘ. スキル. ング・スキル の働きかけ. ***. 琳*;p<0.001n,S;nOSigni丘cant. 図表−8 親和の2群(高達成群/低達成群)における「コーチの関わり」得点の比較 親. 1.コーチング 2.負のコーチング 3.生徒同士へ ・スキル ・スキル の働きかけ. 和. 目的・低達成群 目的・高達成群 t値 判定. M. 3.262. 2.779. 3.465. SD. O.848. 0.947. 0.9. M. 3.599. 2.762. 4.041. SD. O.897. 1.059. 0.753. 3.475 ***. −0.158 n.s. 6.405. 1・コーチング・2.負のコーチ 3.生徒同士ヘ. スキル. ング・スキル の働きかけ. ***. 琳*;p<0.001n,S;nOSigni丘cant. 221.
(9) 山本 雄介・城後. また,「運動による心身への効果」「運動そのも. のの楽しさ」の2つの目的因子で,「負のコーチ. 豊. を達成していくことに「コーチング・スキル」 「生徒同士への働きかけ」が影響を与える。つ. ング・スキル」において目的・低達成群が目的・. まり,生徒が7つの目的を達成し,運動部活動. 高達成群より有意に高い値を示した。この要因と. の教育的意義を充たしていくためには,コーチ. しては,生徒の負担を考慮しない過度な練習によ. の「コーチング・スキル」と「生徒同士への働. る心身への悪影響や,生徒の自主性が損なわれる. きかけ」が不可欠である。. ことによって自ら楽しめないことが考えられる。. コーチは指導者という立場から,「勝たせてあげ 引用・参考文献. たい」「強くしてあげたい」という気持ちが先行 してしまい,生徒に対して一方的に関わってしま いがちである。しかし,生徒が運動部活動におい. て楽しさや心身の健康を得るためには,あくまで 運動部活動は生徒の主体的な活動であり,そもそ もスポーツ自体「自ら楽しむ」ものであるという 認識をコーチが持ち続ける必要があるだろう。. 以上のことから,運動部活動において生徒たち が主体的に目的を達成していくためには,コーチ. 1)部活動基本問題検討委員会(2005):「部活動基本. 問題検討委員会報告書」 2)文部省(1997):「運動部活動の在り方に関する調 査研究報告書」,中学生・高校生のスポーツ活動に関す. る調査研究協力者会議 3)内海和雄(1998):「部活動改革一生徒主体への道−」, 不味堂出版,p.59. 4)石井源信(2007):「コーチングの最新心理学」,体. 育の科学,第57巻,No.2,pp.84−89. 5)白鳥直人・勝田隆(2006):「公立高校運動部の教. は一方的に関わるのではなく,双方向のコミュニ. 師の指導制と生徒の指向性に関する研究一宮城県内ラ. ケーションや個性の尊重,自発的な行動の促進な. グビー部の活動から」,仙台大学大学院スポーツ科学. ど,コーチング・スキルの備わった関わりを行う ことや,生徒同士への働きかけを行っていくこと が大切である。. 研究修士論文集,第7巻,pp.67−74. 6)野尾稔・坂井和明(2005):「コーチングスキル構. 築のための基礎的研究一体育系女子大生が描く理想的 なコーチ像を手がかりに−」,スポーツ法方学研究,第. 18巻,Nol,pp.11−22. 7)勝田隆(2002):「知的コーチングのすすめ」,大修. 結 論. 館書店,pp.7−8. 8)伊藤守(2002):「コーチングマネジメント」,βねco〃gγ,. 本研究では,高等学校における運動部活動に関 する課題から,生徒の目的達成とコーチの「コー チング・スキル」「負のコーチング・スキル」「生 徒同士への働きかけ」に着日して,調査分析を行っ た。その結果,以下の知見を得ることができた。. 1.生徒たちが,多目的に運動部活動に取り組む ときに,「コーチング・スキル」「生徒同士への. 働きかけ」が影響を与える。つまり,生徒が主 体的に「競技的成功」「自己顕示」「運動による 心身への効果」「運動そのものの楽しさ」「鍛錬」 「挑戦と承認」「親和」の7つの目的を見出し ていくためには,コーチの「コーチング・スキ ル」と「生徒同士への働きかけ」が必要である。. 2.生徒たちが運動部活動において,7つの目的. 222. pp.147−264. 9)海老原修(2004):「子どもの事情と指導者の期待. −その2−」,乃正成曙ノb〝用〟J,No.8,pp.55−59. 10)同掲載8):p.146. 11)西島央編著(2006):「部活動−その現状とこれか らのあり方−」,学事出版,p.60.. (山本 雄介 札幌校大学院生) (城後 豊 札幌校教授).
(10) 高等学枚における運動部活動のコーチングに関する一考察 資料−1 本調査アンケート用紙. 運動部活動体験者の皆様. 高等学校の運動部活動におけるコーチングに関する調査. みなさんが取り組んできた高等学校の運動部活動を振り返り,その目的達成とコーチの関わり方 についてのアンケートをお願いします。なお,ここで得られたデータは研究以外に使用することは ありません。また,データの取り扱いに関しても,細心の注意を払いますので,正直にお答えくだ さい。 <アンケートの要領>. ・アンケートをよく羨んで,自分の気持ちに正直にお答えください。よろしくお顔いします。. Ⅰ.当てはまる番号1つに○をつけて下さい。. ・性別 (1.男性. 2.女性). Ⅱ.高校で所属していた運動部活動は何ですか? 部. Ⅱ.あなたの競技歴についてお伺いします。次の中の当てはまる番号に○をつけてください。 1.一年生∼三年生まで同じ部活動に所属していた 2.始めは所属していなかったが,途中から部活動に入部し,三年生までその部活動に所属し 続けた ︶. 3.途中で部活動を変わった. 1.. ①一年生の時(. ︶ 部部部. ②二年生の時( ③三年生の時( (理由. Ⅳ.あなたの所属していた3年間での,個人やチームの大会成績をお答えください。. 全道レベルの大会参加回数 (なし 全国レベルの大会参加回数 (なし. 1∼2回 ・ 3∼4回 ・ 5回以上) 1∼2回・ 3∼4回・ 5回以上) ※あてはまるところに○をつけて下さい. Ⅴ.あなたの3年間での,大会参加経験をお答えください。 ※大会の試合に・・ほとんど出場していない→1 ときどき出場していた →2 だいたい出場していた →3. 常に出場していた. →4. ① 一年生の時・・・(1−2−3−4 ② 二年生の時・・・(1−2−3−4 ③ 三年生の時・・・(1−2−3−4 ※あてはまる数字に○をつけて下さい ※ Ⅴ(30項目),Ⅶ(55項目)と質間数が多く大変かと思いますが,あまり深く考えすぎず,質. 問をよく読み,書き忘れのないように気をつけてお答えください。よろしくお顔いいたします。. 223.
(11) 山本 雄介・城後 豊. 資料−1 本調査アンケート用紙. Ⅵ.あなたが,高校の運動部活動に取り組む上で,まず,それぞれの項目の内容を目的としていた かどうかを考えてください.目的としていなかった場合には,目的としていない(0)に○をつ けて下さい.目的としていた場合のみ,→に○をつけ,その達成度合い(1∼5)について最も あてはまる番号に○をつけて下さい. 目的達成度. ※ その項目を達成できたが,目的としていなかった場合は,目的と ていない(0)に○をつけて下さい. 昌 全 然 的 と し と. て. し て い た. い な. い. 1.その競技の楽しさを味わうこと 2.達成感を得ること 3.体力をつけること .他者から自分を認めてもらうこと 5.ドキドキ感を味わうこと 6.人間的に成長すること 7.試合等において勝利すること 8.友情を深めること 9.選手として活躍すること 10.何かに打ち込むこと 11.他者と競争すること 12.新しい友達と出会うこと 13.有名になること 14.エネルギーを発散させること 15.色々な事に挑戦すること 16.チームの勝利に役立つこと 17.健康であること 18.人から褒められること 19.その競技の技能を向上させること 20.学校生活を充実したものにすること 21.勝ったときの喜びを味わうこと 22.体を動かしたり,汗をかいたりすること 23.仲間と1つの目標に向かって頑張ること 24.レギュラーになること,またはレギュラーを維持すること 25.人気者になること 26.公式戦で結果を残すこと(全道大会,全国大会出場など) 27.嫌なことを忘れてリラックスすること 28.努力して練習した成果を十分に発揮すること 29.精神的に強くなること 30.進学や就職に役立てること. 224. た. 0 →. 2 3 4 5. 0. 2. →. ○ →. 3. 4. 5. 2 3 4 5. 0 −■ト. 2 3 4 5. 0 →. 2 3 4 5. 0. 2. →. 0 → 0. 3. 4. 5. 2 3 4 5. →. 3. 4. 5. 0 →. 2 3 4 5. 0. 2. →. 0 →. 3. 4. 5. E2 3 4 5. 0 −■l 口 2 3 4 5 0. 一→. 0 0 0 0. → → → →. 2. 2 2 2 2. 0 一■−. 3. 4. 5. 3 3 3 3. 4 4 4 4. 5 5 5 5. 2 3 4 5. 0 →. 2 3 4 5. 0. 2. →. 0 一■−. 3. 4. 5. 2 3 4 5. ○ 一◆. 2 3 4 5. 0 →. 2 3 4 5. 0. 2. →. 0 −■■. 3. 4. 5. 2 3 4 5. 0 一◆. 2 3 4 5. 0 一■l. 2 3 4 5. 0. 2. →. 0 → 0 →. 3. 4. 5. 2 3 4 5 2 3 4 5.
(12) 高等学枚における運動部活動のコーチングに関する一考察. 資料−1 本調査アンケート用紙. Ⅶ.その他に目的としていたことがあれば自由に記述してください。. Ⅶ.高校の運動部活動の中で,コーチ(指導者)が自分にどのように関わってくれたかについて,全 然あてはまらない∼大変あてはまる(1∼5)の中で最もあてはまる番号1つに○をつけて下さい。 く注意事項>. ・コーチ(指導者)とは,監督,コーチ,部長,顧問等のあなたの部活動を指導してくれた人のこと. を指します。コーチ(指導者)が複数いる場合は,あなたに僻てくれたコーチ(指導者) のことを思い浮かべて答えてください。. 享. る 芸. 225.
(13) 山本 雄介・城後 豊 資料−1 本調査アンケート用紙. 2 3 4 5. 2 3 4 5. 2 3 4 5. 2 3 4 5. Ⅸ.その他にあなたの印象に残っているコーチの関わり方があれば自由に記述してください。. Ⅹ.高校卒業後も運動・スポーツを継続していきますか?最もあてはまる番号に○をつけて下さい.. (1.必ず継続しない 2.おそらく継続しない 3.おそらく継続する 4.必ず継続する) 刃.生涯にわたって,運動・スポーツを続けていこうと思いますか?最もあてはまる番号に○をつ けて下さい・. (1.全然思わない 2.あまり思わない 3.まあまあ思う 4.とても思う ) 以上でアンケートは終了です。 ありがとうございました。. 226.
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