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中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

著者 藤村 亮一郎, 兵庫 将夫, 前田 勝

雑誌名 奈良教育大学教育工学センター研究報告

巻 3

ページ 29‑44

発行年 1980‑03‑08

その他のタイトル A Survey on Students' Concepts of Matter at Atomic and Molecular Levels

URL http://hdl.handle.net/10105/4658

(2)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

藤村亮一郎(物理学教室) ・兵庫将夫(大阪府立東住吉高校) 前 田  勝(大阪市立南高校)

A Survey on Students'Concepts of Matter at Atomic and Molecular Levels

Ryoitiro Huzimura {Department of Physics) Masao Hyogo {Higashisumiyoshi Senior High School ) and Masaru Maeda (Minami SeniorHigh School)

Abstract

To explain how students understand matter with atomic or molecular concepts, inquiries by paper were applied in 1979 to about 2500 students at junior and senior high school levels and college levels. It was found that their understanding of simple matter with atomic concepts developed reasonably along the course of study of science in schools. However, it seems to be hard for the greater part of the students to apply the concepts to understand several fundamental properties of matter which they have not learned at atomic levels in schools. The quantitative grip of the nature of atoms appears also weak and even the fading of the understanding of atoms is found at college levels.

Key words:

Science education Atomic concepts

I 研究員的

Johnstone及びMughollは、英国の中等学年の生徒について物理概念の把握の難易度を調査 し、物質の粒子概念は、比較的容易であり(難度指数10‑12)、電磁誘導等が困難(指数70‑

80)であるとしている。しかし物質の構成単位としての原子・分子は、電磁気的な力によって 形成されているのであるから、自然現象あるいは、物質の基本的性質を原子・分子と結びつけ て理解することは、生徒にとって必ずしも容易ではないと思われる。わが国の学校教育におけ る学習効果の実態については、有本による小・中学校の国語・算数、数学・英語の現状に関す

(3)

藤村亮一一郎・兵庫特夫・前田 勝

原 子 分 子 観 調 査

以 下 の設 問 に対 して、 解 答選 択 肢 の 中 か ら正 しい と思 うも のを 選 び、

右 側 解 答 欄 の ア ル フ ァベ ッ ト記 号 を ○ 印 で 観 ん で下 さ い 。 た だ し各 問 と も正 解 は 1 つ と は限 りませ ん 。

年   月   日

学   校   名 学年( クラス)

氏   名

( 年令、性別)

1・次の物質又は物体をつくって構成単位となっているものは、右側にあげてあるもののうちどれでしょう か。

(1I 水

(2)くぎ(釘)

(31石油

(4)食塩

α水素  ム水原子 C水分子 d蛮稟震享と g水素と酸素

〃鉄原子 ゐ晶掌ミニウムC鉄素  が警詣享と g鉄粒子 α石油原子 ∂石油分子 C炭素と水素。油粒子 g葉書贋享と

α塩素  ∂塩素原子 弓昆妄雷轟音主品嘉島撃g塩分子

2・次の物質のうち、化学反応によって合成できるものはどれですか。

α水   占酸素ガス C金   d㌫モ二ア βウラン 3・次の物質のうち、化学反応によって分解できるものはどれですか。

〃水   ムゲルマニウムC亜鉛  d奈㍑アル g鉄 4・原子の大ききを知っていますか。また、形や重きについても知っていますか。

(1I 原子の大き さは‥・

(2)水素原子の 形は…

畑 水素原子の 重さは・・・

α 1(事の1兆分の1よりも小さい ゐ 1(■の1兆分の1よりも大きい C lttの1億分の1に近い大きさである

d りんごと原子の大きさの比はおよそ地球(半経6,4(拍h)とりんごの火ききの 比ぐらいである

g りんごと原子の大きさの比はおよそ甲子園球場の大きさとりんごの人ききの比 ぐらいである

〃 ほぼ球形  あ ほは円形  C 見えないからわからないはず

α 酸素原子より軽い      ふ 酸素原子より重い

c 水1 18の重さの1兆分の1(1水1 −3の重さの1兆分の1より重い よりはるかに軽い

5.物質はすべて電子を持っていると思いますか。

(い 銅線の場合   〃 銅線が電気を通すのはその中に自由電子が大量にあることを示している ゐ・電子同志は同じ種類の電気をもっていて反発しあい狭い銅線内に入っていない r 銅原子は電気的に中性で、銅原子の集った射線も電気をもたず、電子はない

(2I 水の場合 α 水分子は電子をもっていないので、水は電子を持たない ふ 水は電気の導体でないから水は電子を持たない

C 原子はすべて電子を持っており、水も原子からできているのだから水は電子を 持っている

. α    

▼ α  

. d   I d

ハし   ′し   ′レ   一し

・・乃V  ・・ク  エ〃  ・・β

〃      

〃      

〃      

クU

.α′し

・ ・n U

α

α  ゐ  C d g

〃  ∂  仁

一1  わ  く. イ

〃  ゐ  C

〃  ム  C

(4)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

6.物質は温度によって状態が変化します。その理由を知っていますか。

(11水を冷すと   α 水分子がほとんど動かなくなるからである 氷になるの

は…

(2)鉄を熱する と軟くなる のは‥・

∂ 水素原子がほとんど動かなくなるからである r 酸素原子が激しく動き始めるからである d 水分子が固くなってしまうからである

α 鉄イオンがかなり自由に動き始めるからである

∂ 鉄のかたまりが鉄原子に分解して動き始めるからである C 鉄原子が軟くなるからである

d 鉄原子が小さく分解して動き易くなるからである

7・次の物質の硬軟の理由を知っていますか。

はI ダイヤモンド が鋼鉄よりも 硬いのは‥・

(2)ゴムが伸びや すい理由は…

α ダイヤモンドはあらゆる原子の中で最も固い康子からできているためである み ダイヤモンドをつくっている炭素原子同志の結びつきが鋼鉄をつくっている鉄

原子同志の結びつきよりも強いためである

C ダイヤモンドをつくっている原子は規則正しく並んでいるが、鋼鉄をつくって いる原子は規則正しく並んでいないからである

〃 ゴムをつくっている原子が、大きくて軟いため ゐ ゴムをつくっている分子が、大きくて変形しやすいため

C ゴムは、非常に多種薪の分子がでたらめに集まって、互に弱く結びついている からである

8・原子の性質を知っていますか

α 原子は、どのようにしてもこれを細かく分割することはできない

ゐ 原子はどれでも、正電気をもった1つの原子核と負電気をもった電子が集まっ て、できている

C 原子の中の原子核と電子は、異なる種類の電気をもっているからくっついてし まっている

d 鉄原子が酸素原子より養いのは、鉄原子の方が酸素原子よりもたくさんの電子 をもっているためだ

9.物質と光(可視光)は、どういう関係があるのでしょうか。

α 光が透明ガラスを透過するのは、ガラスをつくっている原子間のすきまが広い ためである

ム 光が透明ガラスを透過するのは、ガラスをつくっている原子分子が光を吸収し ないためである

C 赤インクが赤く見えるのは、赤インクをつくっている原子の色が赤いためであ

d ストーブやこんろのガス炎の赤い光は、主に二懐化炭素分子から放射されてい

C ストーブやこんろのガス炎の′栂、光は、炭素原子や酸素分子などから放射され ている

10.原子核のことを知っていますか

α 2つの酸素原子が化合して頼素分子になるとき、2つの酸素原子核は結合して 1つの原子核になる

占 ウラン原子は、原子核からα線、′頼、γ線などを出して鉛原子に変わる C 水分fの中には水の原子核がある

d lつの水分子の中には、2つの水素原子核と1つの酸素原子核が含まれている g 原子核は、もはやどのようにしてもこれを細かく分割することはできない

′ 太願の明るい光は、太腹表面の水素やヘリウムの原子核から放射きれている

〃  み  C d

α  ∂  c d

〃  ∂  √

α  ∂  c

α  み  C d

α  わ  C d

〃  ゐ  C d

(5)

藤村亮一郎・兵庫特夫・前田 勝

る調査2)、理科分野では、貫井による中学生の力の理解の実態調査3)等が発表されているが、原 子・分子観の実態については、これまで調査・研究は行なわれていないと思われる。

我々は、さきに昭和52・53年度文部省特定研究4)において、標記に関する予備的調査を行な ったが、今回更に2,500人に及ぶ生徒・学生に対して原子・分子観の調査を行ない、これをコン

ピューター処理して解析したのでその結果を報告する。

II 調査方法及びデーター処理

中学生、高校生、大学生にわたる広い年令層(13才〜20才)の生徒、学生に対して標記の調 査を実施するに当たり、次の4点の解明を目標として調査項目、及び設問を考ええた。

i) 自然界の構成上かつ生活体験上基本的な物質について、それが原子・分子からできて いるという認識がどの程度定着しているか。

ii) 原子・分子の基本的性質を、どのように理解しているか。

iii) 自然界の基本的物性をどの程度、原子・分子と結びっけて考えているか。

iv) 生徒、学生の原子・分子観の発達は学習年数あるいは理科教育の展開とどのように関 連しているか。

問題内容を表Iに示す。問題1、2、3は、物質の構成単位に関する問題であり、問題5、

6、7、9は、物性と原子・分子の関係を問うものであり、問題4、8、10は、原子、原子核 の性質についての問題である。問題内容は、中学、高校の標準カリキュラムに対比すれば明ら かに末学習の内容を含むが、あえて同一問題を全対象者に課すことにした。これにより、原子・

分子観形成過程への学校教育の効果を明確にすることを狙ったものである。主調査は、1979年 5〜6月に実施した。したがって学習効果が見出された場合、それは対象学年の前年度の学習 効果を意味する。

設問は、10項目、18問にわたり、多肢選択方式(総肢数77)で紙面調査(通常のペーパーテ ストと同じ形式)で回答を求めた。

主調査対象校としては、阪奈地区から中学校5校(公立4、国立1)、高校5校(普通科4、内 公立3、私立1)、工業科1)、大学4校(国立4年制2、私立短大2)を選び、協力を得た。回 答者数は、1,595名(男子873名、女子660名、性別不明62名)であり、その学年別内分けは、表

IIに示す通りである。

表II 回答対象者内訳

l

中学 1 年  中学 2 年  中 学 3 年  高 校 1 年  高 校 2 年  高 校 3 年  大 学 1 年  大 学 2 年

男 子 6 0    10 6    10 0     22 1    130   16 9       55     3 2

女 子 46     9 5     8 1     6 7     8 0    2 2      2 10     5 7

不 明 0     3 8      0      0      0     0       0      2

計 10 6     23 9    18 1    2 88     2 10   19 1     19 1     9 1

(6)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

調査結果の集計には、本学電子計算機(H工TAC−L340)を用いた。すなわち個々の回答者 に、学校別、学年別、性別にコード番号を付け、又個々の選択肢の回答を0−1(選択した場 合は1、選択しなかった場合は0)で入力した。次に、データーの処理方法として、各学年別、

性別により調査対象者を16グループ(中学1年男子、中学1年女子、等々、表一II参照)に分 け、個々のグループ別に、各々の選択肢の回答率を次式の百分率として求めた。

回答率 各グループ内で各選択肢を選択した回答者数 各グループの総人数 ×100

本報告では、学習年数との関連を明らかにするため、学年別(8グループ)についての同様 の回答率を求めた結果について以下で報告する。

又母集団の大きさによる回答率の変化を調べるため、同年9月に、新たに中学3校、高校2 校、大学2校(中学1年159名、同2年107名、同3年120名、高校1年44名、同2年44名、同3 年92名、大学1年33名、同2年130名)について追加調査し回答率の変化を調べた。その結果ほ とんどの回答率について変化は5%以下であった。

III 結果及び考察

10項目、18問の各選択肢の回答率の学年進行による変化を、図1−1−図10に示す。

1.物質の構成単位

1)水の構成単位については、選択肢C(水分子)の中学3年における減少とd(水素原子と酸 素原子)の中学3年における増加は、中学2年前半において水の電気分解を学習したことに ょる効果を示すものと考えられる。しかしe(水素と酸素)を選択した者が中学から高校にお いて30−40%あるのは、相当数の生徒が元素と原子の区別を、混同していることを現わしてい ると思われる。

図1−1 物質(物体)の構成単位

(り水

a・水 素    e.水素と酸素  C・水分子   d.水素原子と酸 b.水原子 素原子

学 年 進 行

(7)

藤村亮一郎・兵庫特夫・前田 勝 図1−2 物質(物体)の構成単位

(2)くぎ(釘)

C・鉄 素    e.鉄粒子   b.アルミニウム a.鉄原子   d.鉄イオンと自 原子       由電子

0

5

︵訳︶世紬回 大1高ユ

1

大1高1

i 1

′イ

高 l 年 進 中1 学

大1

高l

中l

大1

高l

中l

2)くぎ(釘)の構成単位については、C(鉄素)、e(鉄粒子)の中学2年から中学3年にか けての減少と、a(鉄原子)の中学2年から3年の増加は、中学2年前半での化学変化(化合 と分解)の学習効果を示し、さらに高校3年から大学1年でのa(鉄原子)の減少とd(鉄イオ ンと自由電子)の増加は、高校2年の物理における、導体と不導体についての学習や化学での 金属結合の学習などの影響であろう。

図1−3(3)石 油

C・炭素と水素 d・油粒子  b・石油分子  e.炭素原子と水 a.石油原子 素原子

学 年 進 行

3)石油の構成単位。石油は身近な物質でありながら、中学校では教材として取り扱われず、

高等学校後半で化学において総称としての炭火水素を学習するだけであり、原子・分子レベル

(8)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観珊査の分析

の説明がほとんどなされていない。このため、いずれの選択肢についても有意な変化は兄いだ しがたい。

図1−4 物質(物体)の構成単位

(4)食 塩

a・塩 素   e 塩分子  d.ナトリウム原 C.ナトリウムイ b.塩素原子 子と塩素原子   オンと塩素イ

オン

0

5

学 年 進 行

4)食塩の構成単位。e(塩分子)とd(ナトリウム原子と塩素原子)の学年進行による減少 及びC(ナトリウムイオンと塩素イオン)の増加は、中学2年前半での原子・分子の学習、中 学3年でのイオンと化学反応の学習、及び高校2年の化学の学習の効果をよく現わしている。

図2 化学反応で合成できる物質

d・アンモニア  a.水

ガス

b・酸素ガス   e.ウ ラ ン   C.全

学 年 進 行

2 化学変化で合成できる物質

元素と化合物については、中学2年以降で学習するので、d(アンモニア)、a(水)、e(ウ

(9)

藤村亮一郎・兵庫時夫・前田 勝

ラン)、C(金)等の変化は、その効果を現わしている。しかしd(酸素ガス)については、合成 反応と分解反応についての理解に混乱が見られる。

図3 化学反応によって分解できる物質

d・霊ルアルコ a・水   b・ゲルマニウム C.亜鉛 。.鉄

0

5

3.化学反応で分解できる物質

中  高  大

1  1  1

学 年 進 行

a(水)の中学2年から中学3年での急激な増加、d(メチルアルコール)の高校での大きな 増加は、それぞれ中学2年前半での水の合成、分解についての学習、及び高校の化学での炭素 化合物の学習による効果を直接示している。

図4−1 原子の性質

(り原子の大きさ

a.lcmのりじ分  b.lcmのl兆分 C.icmの1億台 のlよりも小    のIよりも大   のIに近い大

さい         きい        ささ

大1

高1

中1

大1

高1

中1

中  高  大

1  1  1

∩し.へ

原子の大きさ

d讃誓品 e・す云玩一大再

りんごの大きさ    りんごの大きさ

地球の大きさ

学 年 進 行

4.原子の性質

1)大きさについての数量的理解(選択肢a、b、C)は、中学高学年で学習し、さらに高校

(10)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

において度々学習しているにもかかわらず大きい伸びは見られない。又比喩的理解(d、e)

は中学高学年で学習するので、高校修了までに正しい理解が60%強に達している。

図4−2 原子の性質

(2)水素原子の形

a.ほぼ球形   b.ほほ円形  C.見えないから不明

中  高  大

1  1  1

学 年 進 行

2)水素原子の形については、a(ほぼ球形)という回答が、他に比べ学年進行とともに大き い伸びを示しており、こうした定性的理解は、よく定着していると思われる。

図4−3 原子の性質

(3)水素原子の重さ

a.酸素原子より  b.酸素原子より重 C.水1cmユの重さのd.水icm3の重さのl 軽い         い りじ分のIより  兆分のlより重い

軽い

学 年 進 行

3)水素原子の重さについては、中学以来度々学習しているにもかかわらず4−1(原子の大 きさ)の問題と同様に数量的理解は大きく伸びていない。選択肢a、bの酸素との比較につい ては、中学後半での原子量の学習後大きな伸びを示している。

(11)

藤村亮一郎・兵庫特夫・前田 勝

図5 物質は電子を持っているか

(日鋼  線

a.銅線が電気 b.電子同志反 C.銅原子は電

を通すのは

自由電子を 多く持っこ とを示して いる

才発し合い、

狭い銅線内 に入ってい ない

気的に中性 で、銅線も 電気を持た ず電子はな

しl

(2)水

∂.水分子は電 b.水は、導体 C.原子はすへ 子を持って

いないのて、

水は電子を 持たない

でないから、

水は電子を 持たない

て電子を持 ち水も原子 からできて いるので電 子を持つ

大  中  高

1  1  1

学 年 進 行

5.物質は、電子を持っているか

1)銅線について a(自由電子の存在)の回答が中学後半で大きく増加しているのは、電流と 電子の関係を同時期において学習していることによる効果と考えられる。

2)水については、C(原子はすべて電子を持っている)が中学3年まで減少し、その後増加 しているのは、やはり中学後半における原子構造についての学習によるものである。

6.温度による状態変化

1)氷については、中学2年で物質の三態の学習をするので、その後d(水分子が固くなる)

という考えが急激に減少し、a(水分子が動かなくなる)という答が増加する。さらに、高校 2年の物理で分子運動を学習し定着していくものと考えられる。

2)鉄についても、やはり氷と同様に中学、高校の段階でC(鉄原子の較化)、d(鉄原子の分 解)という考えは学年進行とともに減少し、a(鉄イオンの運動)が増加していく。これは、

中学での物質の三態、高校での分子運動の学習の結果であると思われる。しかし、その増加が 60%にとどまり、氷の場合の82%までの増加と比べて少ないのは、鉄イオン(金属結合)につ いての理解が1−(2)で見られたように低いためであると患われる。

7 物質の硬軟について

1)ダイヤモンドについては、原子の結合を中学高学年で学習し、さらにダイヤモンドの結合 を高校・地学、化学で学習するため、b(原子の結合)の選択肢が他に比べ著しく増加している。

2)ゴムについては、高分子化学であるためb(巨大分子である)が中学生の間は減少し、か

(12)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析 図6−1 温度による状態変化

(】)水を冷すと氷になる理由

a.水分子が動か b.水素原子が動 C.酸素原子が激 d・水分子が固く なくなるから  かなくなるか  しく動くから  なるから

大  中

1  1

学 年 進 行

図6−2 温度による状態変化

(2)鉄を熱すると軟くなる理由

a・鉄イオンが自 b・鉄のかたまり C・鉄原子が軟く d.鉄原子が分解

禁警き始め 芸票孟旨芸 なるから  霊禁㌘く

めるからから

高1

中1大1

高1中1

学 年 進 行

えってC(多種の分子が弱く結びっく)が、増加する。そして、b(巨大分子である)について は、高校2年・3年での化学の学習により増加していく傾向があるが、全体としての定着度、

理解度は低い。

(13)

藤村亮一郎・兵庫特夫・前田 勝 図7 物質の硬軟

川ダイヤモンドが鋼鉄より硬い理由      (2)ゴムが伸びやすい理由 a.最も固い原 b.C原子間緒 C.タイヤモン

子からでき

ているため 間結合が、

昆原子間結 聞結合より も強いため

ドの原子配 列は規則正 しいが鋼鉄 では不規則 だから

0

5

︵ 訳

︶   勝 地

∵ 匡

高1

車1大1

高1

中1

大1

高1

中1

a.原子が大き b.分子が大き C.多種類の分

くて軟いた    くて変形し

め        やすいため

子がでたら めに集り、

弱く結びつ いているた

大  中

1  1

学 年 進 行

図8 原子の構造

a.原子は細分割 b.原子は正電荷 C一 原子の核と電 d,鉄原子が酸素 できない

の】つの核と

負電荷の電子 からできてい

子は異種電荷   原子より重い のためくっい   のは電子数が いている      多い

大  中  高

  1  1

学 年 進 行

大1

高1

中1

大1

0

5

︵訳︶勝紬厘

(14)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

8.原子の構造

a(原子は不可分である)という考えが中学1−3年では増加している。これは、中学3年 前半まで原子というものを1っの化学的性質を持った塊りと見ているためであろう。そして、

中学3年の理科で初めて物質の構造として原子構造を学習するために、その後減少に転じてい る。b(原子には、核と電子が存在する)という選択肢が中学以降増加しているのは、イオン あるいは電流等の学習による効果と考えられ、その後高校・大学と学習する間に、より高い定 着率を示すようになる。C、dがbと全く逆の変化を示しているのは、学習によって誤った考 えが修正されていくことを示している例である。

図9 物質と光の関係

召.光が透明ガラ b・光が透明カラ C・赤インクが赤 d・ガス炎の赤い光 e・ガス炎の赤い

、l′.ユ〈( アヽ −プ⊥、.し      」_Jト P r百二乙耳つ

芸漂‡宣 旨宗芸票‡雲 孟宗COZ分子から 豊呈票芸

スを透過する のはガラスの 原子間隙間が 広いため

0

5

︵訳︶牌紬回

9.物質と光との関係

a、bは両者の選択肢の対比によって回答されたものと考えられるが、bにおいてわずかに 学年進行とともに増加していく。しかし、本調査の他の項目の変化と比較してみれば、理解度 の内容は学年によってかなり異なっているものと思われる。又d、eについては、身近な例で あるが、現在の学校教育では、扱われないため、全学年を通して回答率に顕著な変化はみられ ない。

10.原子核の性質について

化学変化(a、C、dの選択肢)によって原子核は変化しないということは、中学2、3 年で原子構造及び化学反応を学び、さらに高校において物理、化学を学習していくにしたが って定着していく。一方b(ウランの崩壊により放射線を出し、核が変化する)については、

中学高学年、高校、地学、物理で学習しているにもかかわらず50%程度の定着率しか示してい ない。e(核は不可分である)っまり核が構造を持たないという回答に対し、それを選択する

(15)

藤村亮一郎・兵庫特夫・前田 勝

図10 原子核の性質

a・酸素分子で b・ウラン原子 ct水分子の中 d.1つの水分 e.原子核は紬 f 太陽光はH

は2つの酸

素原子核は 結合してi つになる

は、核からq、

β、∂緑を出 して鉛原子 に変わる

には水の原 子核がある

子には2つ の水素核と

Iつの酸素 核

分割できな   Heの原子核 い         から

大 中  高

1 1  1

学 年 進 行

大 中  高

1 1  1

大 中  高  大

1 1  1  1

者が40%弱いるということ、又原子核が光を出すか否か、に対しても理解が混乱し、必ずしも学 習効果と結びっいてこない。これらの点については、今後さらに検討を要する。

以上の結果を総合し、正答回答率、誤答回答率の学年進行による増加あるいは減少を表Ill、

表Ⅳにまとめ、各調査項目別に示した。

正答回答率増加の項目には大学2年で回答率が75%を越えるもの、誤答回答率減少の項目は 大学2年で回答率が10%以下になっているものをあげた。さらに、学年進行による変化の少な いものと学年進行に比例しないものを、区別してかかげた。

表IIIより、学習とともに生徒の理解度が深まるものとしては、簡単な化合物や単体の合成・

分解についての認識、氷結の理由、電流と電子の関係、原子の形・構造・重さの比較など、基 本的物性の原子分子を粒子と考えての理解及び原子・原子核の性質の認識があげられる。

生徒の理解度が学習に比例しないものや高学年での学習の定着度が50%前後にとゞまるもの としては、金属結合(鉄イオンと自由電子)、水の合成、光の性質(透過・炎色・太陽光)、巨 大分子(ゴム)の性質、原子の大きさや重さの定量的理解、核変換(ウランの崩壊)等があげ られる(表Ⅳ)。又、水の合成分解、原子の大きさの比喩的表現、原子の重さ、自由電子の存在、

原子間の結合等々の問題については、大学進学後正しい認識の退行がみられ、これらが学習効 果の定着し難い分野であることを示している。

Ⅳ 結

この調査において我々は次のことを明らかにした。

(16)

中学・高校生徒及び大学生の原子分子観調査の分析

表111調査項目による回答率変化の分類−(1)

学年進行による変化

調査項目 正 答 回 答 率 ・増 加 誤 答 回 答 率 ・減 少

物 質 の 構 成 単 位

食 塩 は N a f C l ̄か ら成 る化 合 元 素 名 や 粒 子 に よ る理 解 物 の 合 成 ・分 解 化 合 物 が 単 原 子 か ら成 る 単 体 が 合 成 ・分 解 で き る

物 性 と 原 子 分 子

氷結 の 理 由 原 子 分 子 に色 、 硬 軟 が あ る 銅 線 の 電 導 と 自由 電 子 銅 線 内 に 電 子 が な い

原 子 ・原 子 核 の性 質

原 子 の 形 と構 造 原 子 の 大 き さ の 過 大 比 愉 水 素 水 素 原 子 は 酸 素 原 子 よ り軽 い 原 子 は 酸 素 原 子 よ り重 い

多 電 原 子 は重 い

原 子 の 核 と電 子 は結 合 酸 素 分 子 の 酸 素 原 子 核 結 合 H 20 に 水

の 原 子 核

表Ⅳ 調査項目による回答率の変化の分類−(2)

学年進 行によ る変化

調査項 目 変 化 の 少 い 回 答 比 例 し な い 回 答

物 質 の 構 成 単 位

水 の 構 成 単 位 と して の 水 分 子 水 の 合 成

物 性 と 原 子 ・ 分 子

光 の 透 度 炭 素 原 子 間 結 合 は 鉄 原 子 間 結 炎 光 色 と 原 子 ・分 子 合 よ り 強 い

ゴ ム の 伸 び と分 子 変 形

原 子 ・原 子 核 の 性 質

原 子 の 大 き さ 原 子 の 大 き さ の 比 喩 ウ ラ ン原

水 素 原 子 の 重 さ < 10  ̄12 9 _ 子 の 鉛 原 子 へ の 転 換

(17)

藤村亮一郎・兵庫特夫・前田 勝

1.単体や簡単な化合物の原子分子概念による理解度は、学習によって順当に高まっている。

2.簡単な物質について学習した原子分子概念を、光の性質や高分子化合物等の理解に応用 することは、相当数の生徒・学生にとって困難である。

3.原子分子の量的性質の把握には、学習効果が低い。

4・多くの基本的現象の原子分子概念による理解において、大学進学後退行が見られる。

今後の問題としては、生徒・学生の原子分子観の地域的特色や男女性別による相異点の解明 等を試み、さらに統計的解析により、各学年発達段階での正しい原子分子教育への指針を見出

して行きたい。

本調査にあたっては、出口昭(付属中学)、亀甲慶二(緑ヶ丘中)、米田正憲(葛上中)、松本 加津代(登美ヶ丘中)、丸谷謙二(斑鳩中)、松永千寿子(若草中)、吉田俊昭(桜井中)、堀田 政克(北大和高)、三室好弘(東大寺学園)、渡部勝彦(奈良工高)、高津泰彦(帝塚山学園)、

山根龍三(東商高)、中西勝三(佐保女短大)、菊野春雄(薫英女短大)、伊藤善将(奈良県立医 大)、塩見直子(奈良女大)、馬場一雄(同)、北川尚史(本学生物学教室)の諸先生の御協力を 得た。又調査結果の解析と考察には、田辺中学高橋昭夫教諭と工学センター芝崎清一君の参加 を得た。こゝに厚く謝意を表する。

参考文献

1)A.H.Johnstone,A.R.Mughol,Physics Education,11,466(1976).

2)有本良彦,国立教育研究所紀要,第93集(1977.3).

3)貫井正納,物理教育,26,3(1978).

4)藤村亮一郎,文部省特定研究報告書:理科系教育における原子分子レベルの自然認識の導入にかんする

理論的実験的研究,p.1(1979.3)

参照

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