中国と日本における大学生のメンタルヘルスの実態
に関する調査研究
著者
蘇 娟玉, ?田 恭子, 堤 由美子
雑誌名
鹿児島大学医学部保健学科紀要=Bulletin of the
School of Health Sciences, Faculty of
Medicine, Kagoshima University
巻
21
ページ
1-11
別言語のタイトル
A Cross-cultural study of university student
mental health in China and Japan
【 原 著 論 文 】 鹿 児 島 大 学 医 学 部 保 健 学 科 紀 要 21:1-11,2011
中国 と日本 にお ける大学生 のメンタルヘルスの実態 に関す る調査研 究
蘇 娼 玉1),濱 田 恭 子2),堤 由 美 子2) 要 旨 中 国 と 日本 の 大 学 生 の ス トレス 状 態 とそ れ らに影 響 を 及 ば す 要 因 を把 握 す るた め に,577人(中 国: 359人,日 本:218人)を 対 象 にス トレッサ ー とス トレス反 応 の調 査 を行 っ た。 日本 語 版 とそれ を翻 訳 した 中 国 語 版 の質 問 紙 を使 用 し,統 計分 析 を行 った。 そ の 結 果,① 中 国 と 日本 の学 生 は と もに,最 も強 く実存 的 ス トレ ッ サ ー を感 じて い る② 日本 で は,実 存 的 ス トレ ッサ ー は男 性,内 向性,心 理 相 談 を受 け た人 の方 が,有 意 に 高 い ③ 「入 学 動機 」 要 因 は,中 国 で は<教 養 の 獲 得>動 機 の 人 が 最 も ス トレス反 応 が低 い④ 「学 年 」 要 因 は,中 国 で は4年 時,日 本 で は3年 時 に ス トレス 反 応 が 高 い ⑤ 「心 理 相 談 の有 無 」 要 因 で は,中 国 と 日本 共 に,心 理 相 談 を 受 け た 人 の 方 が ス トレス 反 応 が 高 い 等 が 明 らか に な った 。 以 上 か ら,青 年 期 特 有 の発 達 課 題 に基 づ くス ト レ ッサ ー は 両 国 間 で 共 通 して い るが,ス トレス に対 す る反 応 の仕 方 は社 会 的 ・文 化 的影 響 を受 け て,異 な っ た 現 れ 方 を す る こ とが 考 え られ た。 キ ー ワ ー ド:大 学 生,中 国,日 本,ス トレ ッサ ー,ス トレス反 応 I緒 言 現在 の グ ロー バ リゼ ー シ ョン,高 度 情報 化 社 会,価 値 の 多様 化 等 に よ り,こ れ か ら社 会 人 とな る 青年 期 の 人 々 に とっ て は,さ ま ざま な場 面 に お け る選 択 の 幅 が 広 が っ て き て い る。 そ の 一 方,従 来 とは 異 な る 自立 の 困難 さに 直 面 す る こ とに よる過 大 な ス トレス か ら心理 的健 康 へ の 影 響 も懸 念 され る。 中 国 の 大 学 生 を 対 象 とす る 心理 的健 康 に 関 す る調 査 に よる と,大 学 生 の 心理 的 問題 は 主 に 人 間 関係,感 情,学 業,環 境 へ の適 応,就 職 な ど と関連 す る こ とが報 告 され て い る1)。そ して,何 らか の 心理 的 問 題 を抱 え て い る 中 国 の 大 学 生 が,16.46%を 占 め て い る こ と も示 され て い る2)。 ま た,北 京 市 の16箇 所 の 主 要 大 学 に在 籍 す る 学 生 を 対象 とす る調 査 で は,休 学 と退 学 の理 由 の 第1位 は, 様 々 な 心 理 的 問題 で あ っ た と され て い る2)。 同様 に,日 本 の 文 部 科 学省 の2004年 度 統 計 に お い て も,大 学 生 の 不 登 校 の 理 由 と して,第1位 「無 気 力 」,第2位 「不 安 な ど情 緒 的 混 乱 」 とい っ た 心理 的 問題 が 上位 を 占め て い た こ とが報 告 され て い る3)。 以 上 か ら,中 国 で は,急 激 な経 済 的発 展 に よっ て,古 い価 値 と新 しい価 値 が 混在 す る状 況 が 生 じ る中 で,学 生 た ち は 自分 ら しい 生 き 方 を模 索 して い る と考 え られ る。 一方,日 本 の 大 学 生 は,物 質 的 に恵 まれ た環 境 の 中 で, 多様 な選 択 肢 の 中 か ら 自己決 定 し社 会 人 と して 自立 して い か ね ば な らな い状 況 に 直 面 して い る と考 え られ る。 こ の よ うに,両 国 の 学 生 の 生活 背 景 は 異 な る もの の,各 々 の抱 え る 自立 の 困難 さに よっ て 心理 的健 康 に影 響 を 受 け て い る こ とが推 測 され る。 そ こで,本 研 究 で は,中 国 と 日本 の 大 学 生 を対 象 と して,ス トレス状 態 を把 握 す る と と もに,そ れ らに影 響 を及 ばす 要 因 を 明 らか にす る こ と に した。 II 研 究 方 法 1.対 象 大 学 生 の 生活 実 態 を よ り反 映す る結 果 が得 られ る よ う にす るた め に,卒 業後 の就 職 先 が 非 常 に 多 岐 に わ た る学 1)中 国湖 南省 湘 潭 大 学 医 院 2)鹿 児 島 大 学 医 学部 保 健 学 科 臨床 看 護 学 講 座 連 絡 先:濱 田恭 子 鹿 児 島 市桜 ケ 丘8-35-1Tel/Fax : 099-275-6760 E-mail: [email protected]
部 で あ る 商 学 部(中 国),教 育 学 部(日 本)の 学 生 を 対象 と す る こ とに した。 中 国 の 対 象 は,1地 方 総合 大 学 の 商 学 部 に在 籍 す る1∼4年 生,日 本 の 対象 は,1地 方 総合 大 学 の 教 育 学 部 に在 籍 す る1∼4年 生 で あ っ た。 2.方 法 (1)調 査 方 法 2009年11月30日 ∼2010年1月19日 に,講 義 終 了 後,対 象 と な る 学 生 に 研 究 の 目 的 と 主 旨,倫 理 的 配 慮 に つ い て 口頭 で 説 明 し た 。 そ し て,質 問 紙 を 配 布 し,無 記 名 で 回 答 を 求 め た 。 回 答 時 間 は,10分 ∼15分 で あ り,回 収 箱 を 設 置 し て 回 答 終 了 後,回 収 し た 。 (2)調 査 内 容 ① 基 本 属 性 基 本 属 性 と し て,「 性 別 」,「年 齢 」,「専 攻 分 野 」,「入 学 動 機 」,「趣 味 」,「居 住 形 態 」,「入 学 希 望(第 一 希 望 ・ 第 二 希 望 ・第 三 希 望)」,「 学 年 」,「 兄 弟 数 」,「 出 身 地 (農 村 部 ・都 市 部)」,「 性 格(内 向 的 ・外 交 的)」,「 学 費 (足 りて い る か ど うか)」,「 心 理 相 談 の 有 無 」 に つ い て 調 査 し た 。 ② 日本 語 版 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 日 本 語 版 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 は, 嶋4)5)が,一 般 的 な 大 学 生 の 日 常 的 い ら だ ち 事 を 調 査 す る 目 的 で 開 発 し た も の で あ る 。 尺 度 は 全32項 目か ら成 り, 下 位 尺 度 と な る ス ト レ ッ サ ー は,「 実 存 的 」 「対 人 」 「大 学 ・学 業 」 「物 理 ・身 体 的 」 の4種 類(各8項 目)か ら構 成 さ れ て い る 。 本 尺 度 に つ い て は,因 子 分 析 に お け る4 因 子 モ デ ル の 適 合 度 は,GFI=0.92,AGFI=0.908で あ っ た こ と,そ し てCronbachの α 係 数 は,全 体 で は0.89, 4つ の 下 位 尺 度 別 で は,0.85∼0.72で あ っ た こ と が 報 告 され て い る 。 こ れ ら か ら,信 頼 性 ・妥 当 性 を 備 え て い る と判 断 し,ま た 大 学 生 の 心 理 的 な 生 活 実 態 を 多 方 面 か ら 調 査 で き る と 考 え,許 可 を 得 て 用 い た 。 質 問 項 目 に 対 す る 評 価 法 は,こ こ3ケ 月 以 内 に,各 ス ト レ ッ サ ー を 「経 験 し な い ・感 じ な い(0点)」 場 合 と, 経 験 し た 場 合 は そ れ が ど の 程 度 か 「ほ と ん ど気 に な ら な か っ た(1点)」 ∼ 「と て も気 に な っ た(4点)」 に つ い て 該 当 す る も の を 選 択 す る5件 法 で あ っ た 。 ③ 日本 語 版 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 日 本 語 版 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 は,尾 関 ら6)7)8) に よ っ て 開 発 さ れ た 大 学 生 用 ス ト レ ス 自 己 評 価 尺 度(ス ト レ ス 反 応 尺 度,ス ト レ ッ サ ー 尺 度,認 知 的 評 価 尺 度, コ ー ピ ン グ 尺 度,ソ ー シ ャ ル ・サ ポ ー ト尺 度,ユ ー モ ア 尺 度)の 一 部 を 成 す も の で あ る 。 質 問 項 目 は 全 体 で,35個 か ら成 り,下 位 尺 度 は 「抑 う つ(5)」 「不 安(5)」 「怒 り(5)」 「情 緒 的 反 応(5)」 「引 き こ も り(5)」 「身 体 的 疲 労 感(5)」 「自律 神 経 系 の 活 動 性 充 進 (5)」 の7因 子 で 構 成 さ れ て い る 。7つ の 下 位 尺 度 の Cronbachの α係 数 は,0.87∼0.61と 報 告 さ れ て い る 。 こ の 尺 度 は,こ れ ま で に も 大 学 生 や 看 護 学 生 を 対 象 とす る 調 査 に お い て 単 独 で 使 用 され て い る こ と が 多 く,心 身 に お け る ス ト レ ス 反 応 を 総 合 的 に 把 握 で き る と判 断 し,許 可 を 得 て 用 い た 。 評 価 法 は,こ こ1週 間 の 心 身 の 状 態 に つ い て,「 あ て は ま ら な い(0点)」 ∼ 「非 常 に あ て は ま る(3点)」 の4 段 階 自 己 評 価 法 で あ っ た 。 ④ 中 国 語 版 の 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 と 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 の 作 成 日本 語 版 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 と 日本 語 版 大 学 生 用 ス ト レ ス 自 己 評 価 尺 度 の ス ト レ ス 反 応 尺 度 の 中 国 語 版 の 作 成 に 当 た っ て は,ま ず,日 本 語 版 を 中 国 語 に 翻 訳 し た 。 そ の 後,日 本 に 留 学 し 日本 語 に 堪 能 な 中 国 人2名(う ち1名 は 日本 語 科 の4年 生,1名 は 心 身 医 療 専 門 医)に 翻 訳 の 適 切 性 に つ い て 検 討 し て も ら い,修 正 を 行 っ た も の を 用 い た 。 (3)デ ー タ の 分 析 方 法 回 収 し た 質 問 紙 の 回 答 デ ー タ を,表 計 算 ソ フ ト Microsoft Excelに 入 力 し デ ー タ セ ッ トを 作 成 し た 。 そ し て ま ず,中 国 語 版 の 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 と 大 学 生 用 ス ト レ ス 自 己 評 価 尺 度 の 妥 当 性 と信 頼 性 を 確 か め る た め に,SPSSを 用 い て 因 子 分 析(主 因 子 法 ・バ リ マ ッ ク ス 回 転)を 行 う と と も に,Cronbachの α係 数 を 求 め た 。 そ の 後,Statcelを 用 い て 要 因 別 に 比 較 分 析 を 行 っ た 。 3.倫 理 的配 慮 本 研 究 は,鹿 児 島 大 学 医 学部 倫 理 審 査 委 員 会 の倫 理 審 査 を受 け承 認 を得 た の ち,調 査 対 象 大 学 の 学部 担 当者 に 協力 依 頼 を行 い,承 諾 を得 た。 ま た,中 国 の調 査 対象 大 学 の学 生 課 に も協 力 依 頼 を行 い,調 査 の実 施 許 可 を得 た。 大 学 生 へ の調 査 を 実施 す る前 に は,研 究 の 目的,主 旨, 研 究参 加 へ の 自由意 思 の 尊 重,プ ライ バ シ ー の保 護,得 られ た情 報 は本 研 究 の み に使 用す る こ と,論 文発 表 時 に も,学 校 と個 人 が 特 定 され な い よ うにす る こ とな どを 文 書 と 口頭 で説 明 した。 研 究 参加 へ の 同意 は,回 答 後 の 質 問紙 の提 出 に よっ て確 認 した。 III 結 果 1.研 究 参 加 者 の 基 本 特 徴 本 調 査 で は,630部 の 質 問 紙 を 配 布 し,588部 を 回 収 し た(回 収 率93.3%)。 そ の う ち 有 効 回 答 は577部 で あ っ た (有 効 回 答 率98.1%)。 中 国 の 参 加 者 は,359人(男 子187 人,女 子172人)で あ り,1年 生70人,2年 生114人,3 年 生79人,4年 生96人,平 均 年 齢 は20.48(±1.48)歳 で
-2-表1中 国語 版 大学 生用 日常 生活 ス トレッサー 尺度 の因 子分析 結 果 質 問項 目 中国語 因 子1 因 子2 因 子3 因 子4 因 子5 因子6 因 子7 共通性 23.私 を 嫌 っ て い る 人 が い る 0.636 0.154 0.120 0.085 0.161 0.076 0.116 0.460 26.嫌 い な 人 と付 き 合 う 0.632 0.087 0.066 0.087 0.248 0.093 0.251 0.510 17.不 愉 快 な 知 人 0.576 0.134 0.102 0.211 0.083 0.129 0.132 0.487 31.冷 た い 態 度 を と られ る 0.516 0.463 0.050 0.212 0.101 0.130 0.195 0.570 22.進 級 の 不 安 0.434 0.166 0.106 0.184 -0.017 0.112 .118 0.330 28.不 愉 快 な 口に 合 わ され る 0.423 0.299 0.226 0.123 0.080 0.119 0.309 0.442 27.容 姿 外 見 に不 満 0.411 0.229 0.179 0.241 0.384 0.063 0.181 0.491 11.誰 か と け ん か 0.399 0.123 0.229 0.248 0.020 0.120 0.266 0.396 20.イ可を す る わ か らな い 0.012 0.666 0.319 0.078 0.245 0.113 0.034 0.577 32.空 虚 に 悩 ま さ れ る 0.197 0.665 0.166 0.073 0.180 0.106 0.109 0.544 18.退 屈 で 何 も しな い 0.108 0.530 0.385 0.070 0.267 0.041 0.114 0.532 19.大 学 の 環 境 悪 さ 0.259 0.489 0.226 0.157 0.053 0.152 0.017 0.442 2L周 開 人 の 不 理 解 0.288 0.468 0.248 0.051 0.031 0.096 0.228 0.442 30.生 活 の 大 き な 変 化 0.339 0.418 0.036 0.157 0.067 0.101 0.169 0.425 10.現 実 と理 想 ギ ャ ップ 0.108 0.369 0.322 -0.026 0.293 0.119 0.213 0.434 13.授 業 が 大 変 0.177 0.308 0.666 0.045 0.123 0.096 0.105 0.544 3.面 白 く な い 授 業 0.034 0.283 0.590 0.022 -0.009 0.135 0.165 0.434 6.試 験 勉 強 が 大 変 0.113 0.074 0.525 0.189 0.271 -0.004 0.005 0.397 5.成 績 が 良 くな い 0.112 0.165 0.512 0.086 0.238 0.096 0.117 0.411 4.体 調 が 良 くな い 0.109 0.115 0.082 0.810 0.115 0.033 0.151 0.539 7.身 体 が弱 い 0.353 0.097 0.083 0.701 0.054 0.115 0.014 0.575 12.身 体 的 な 疲 れ 0.302 0.121 0.299 0.519 0.162 0.190 0.159 0.538 16.大 き な け がや 病 気 0.431 0.084 -0.041 0.468 0.006 0.276 .147 0.476 24.就 職 の 不 安 0.089 0.206 0.190 0.089 0.723 0.072 0.044 0.586 15.将 来 に 不 安 0.120 0.119 0.273 0.038 0.723 0.229 0.107 0.618 25.性 格 が 気 に入 らな い 0.318 0.345 -0.026 0.142 0.407 0.030 0.124 0.461 8.生 活 条 件 の 悪 さ 0.107 0.214 0.047 0.203 0.107 0.790 0.113 0.560 14.衣 食 住 が な い 0.245 0.093 0.168 0.076 0.176 0.701 0.033 0.551 1.失 望 させ られ た 0.167 0.201 0.152 0.036 0.111 0.013 0.710 0.426 2.大 切 な も の 失 う 0.208 0.122 0.177 0.164 0.118 0.193 0.404 0.341 9.学 校 制 度 へ の 不 満 0.165 0.293 0.208 0.022 0.041 0.284 0.166 0.346 29.ゼ ミ準 備 が大 変 0.148 0.217 0.132 0.097 0.190 0.184 0.008 0.242 固有値 3.209 3.054 2.365 2.137 2.023 1.665 1.357 寄与率(%) 10.028 9.543 7.389 6.679 6.322 5.203 4.241 累積寄 与率(%) 10.028 19.571 26.96 33.639 39.961 45.164 49.41 あ っ た。 日本 の 参 加 者 は218人(男 子105人,女 子113人) で あ り,1年 生120人,2年 生62人,3年 生29人,4年 牛7人,平 均 年 齢 は19.59(±1.11)歳 で あ っ た. 2.中 国 語 版 の 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 と 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 の 信 頼 性 と 妥 当 性 の 検 討 (1)中 国 語 版 の 大 学 生 用 日常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 中 国 語 版 の 大 学 生 用 日常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 の 調 査 デ ー タ に つ い て,主 因 子 法,バ リ マ ッ ク ス 回 転 に よ る 因 子 分 析 した 結 果,累 積 寄 与 率49.4%で,対 人 ス ト レ ッサ ー (8項 日),実 存 的 ス トレ ッ サ ー(7項 日),学 業 ス トレ ッ サ ー(4項 目),体 調 ス ト レ ッ サ ー(4項 目),将 来 不 安 ス ト レ ッサ ー(3項 目),生 活 環 境 ス ト レ ッ サ ー(2項 目),対 象 喪 失 ス ト レ ッ サ ー(2項 目)の7因 子 が 抽 出 さ れ た(表1参 照)。Cronbachの α係 数 は,全 体 は α= 0.93で あ り,7つ の 下 位 尺 度 別 で は,α=0.84∼0.6で あ っ た(表2参 照)。 (2)中 国 語 版 の 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 中 国 語 版 の 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 の 調 査 デ ー タ に 表2中 国 語 版 大 学 生 用 日 常 生 活 ス トレ ッサ ー 尺 度 の 因 子 分 析 後 の 下 位 尺 度 を 持 つ 質 問 紙 の 内 的 整 合 性(N=316) 下 位 尺 度 項 目数 Cronbach's α 因 子1(対 人 ス ト レ ッ サ ー) 8 836 因 子2(実 存 的 ス ト レ ッ サ ー) 7 829 因 子3(学 業 ス ト レ ッ サ ー) 4 752 因 子4(体 調 ス ト レ ッ サ ー) 4 787 因子5(将 来 不 安 ス トレ ッサ ー) 3 733 因子6(生 活 環境 ス トレ ッサ ー) 2 797 因子7(対 象 喪 失 ス トレ ッサ ー) 2 556 全体 30 927 つ い て,主 因 子 法,バ リ マ ッ ク ス 回 転 に よ る 因 子 分 析 を し た 結 果,累 積 寄 与 率50.8%で,悲 嘆 反 応(11項 目), 自律 神 経 反 応(7項 目),引 き こ も り(8項 目),倦 怠 感 (5項 日),不 安(4項 日)の5つ の 因 子 が 抽 出 さ れ た (表3参 照)。Cronbachの α係 数 は,全 体 は α=0.95で あ り,5つ の 下 位 尺 度 別 で は,α=0.91∼0.78で あ っ た(表 4参 照)、, 以 上 か ら,中 国 語 版 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 3
表3中 国 語版 大学 生用 ス トレス 反応 尺度 の 因子分析 結 果 質 問項 目 中国語 因 子1 因子2 因子3 因子4 因子5 共通性 1.悲 しい 気 持 ち 0.715 0.090 0.095 0.073 0.110 0.551 2.圧 迫 感 を 感 じ る 0.699 0.112 0.130 0.248 0.190 0.603 12.不 愉 快 な 気 分 0.644 0.117 0.195 0.342 0.077 0.619 13.気 分 の 落 ち 込 み 0.611 0.099 0.406 0.280 0.094 0.603 10.心 が 暗 い 0.587 0.194 0.097 0.358 0.150 0.588 3.不 機 嫌 怒 りっ ぽ い 0.542 0.274 0.231 0.176 0.295 0.551 4.泣 き た い 気 持 ち 0.156 0.258 0.168 0.081 0.212 0.137 9.憤懣 が 募 る 0.430 0.360 0.236 -0.002 0.407 0.578 15.イ ラ イ ラ す る 0.424 0.233 0.288 0.310 0.344 0.568 6.怒 りを 感 じ る 0.423 0.381 0.295 0.041 0.404 0.619 27.呼 吸 が 苦 し い 0.127 0.625 0.281 0.298 0.084 0.600 30.脱 力 感 が あ る 0.143 0.620 0.219 0.407 0.248 0.679 31.吐 き気 が す る 0.089 0.620 0.113 0.043 0.042 0.428 23.生 き て い る の が い や だ 0.111 0.517 0.434 0.064 0.175 0.573 29.動 悸 が す る 0.182 0.506 0.224 0.299 0.216 0.562 32.動 作 が 鈍 い 0.135 0.492 0.115 0.132 0.082 0.526 35.耳 鳴 りが す る 0.093 0.465 0.460 0.159 0.037 0.495 33.胸 部 が 締 め 付 け られ 0.327 0.458 0.262 0.246 0.167 0.598 21.自 分 の 殻 に 閉 じこ も る 0.208 0.305 0.552 0.150 0.099 0.511 19.話 が 嫌 で わ ず ら わ しい 0.152 0.473 0.543 0.189 0.196 0.641 20.根 気 が な い 0.224 0.052 0.494 0.266 0.119 0.415 22.行 動 に 落 ち 着 き が な い 0.283 0.242 0.481 0.189 0.162 0.457 24.何 も 手 に つ か な い 0.198 0.285 0.465 0.208 0.189 0.507 18.話 に ま と ま りが な い 0.127 0.311 0.453 0.275 0.135 0.508 17.他 人 に 会 う の が 嫌 0.154 0.339 0.430 0.017 0.311 0.183 25.人 が 信 じ られ な い 0.387 0.365 0.348 0.092 0.142 0.468 26.体 が 疲 れ や す い 0.249 0.244 0.138 0.638 0.108 0.586 28.体 が だ る い 0.268 0.343 0.186 0.631 0.052 0.624 16.頭 の 回 転 が 鈍 い 0.122 0.170 0.326 0.521 0.238 0.496 34.頭 が 重 い 0.243 0.302 0.197 0.520 0.099 0.516 14.気 が か りで あ る 0.333 -0.087 0.167 0.466 0.250 0.468 8.び く び く し て い る 0.255 0.197 0.181 0.212 0.620 0.518 5.不 安 を 感 じ る 0.460 -0. 047 0.021 0.344 0.495 0.516 11.恐 怖 感 を 抱 く 0.253 0.262 0.263 0.293 0.483 0.557 7.寂 し い 気 持 ち 0.406 0.109 0.263 0.129 0.414 0.457 固有値 4.651 4.132 3.424 3.270 2.313 寄 与率(%) 13.290 11.807 9.783 9.344 6,623 累積 寄 与率(%) 13.290 25.096 34.879 44.223 50.85 度 と中 国語 版 大 学 生 用 ス トレス反 応 尺度 は,信 頼 性 と妥 当性 を備 えた 尺度 で あ る と判 断 し,以 下 の分 析 を行 っ た、, 3.中 国 の 大 学 生 の メ ン タ ル ヘ ル ス 状 態 (1)中 国 語 版 大 学 生 用 日常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 中 国 語 版 大 学 生 用 日常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 の 下 位 尺 度 別 項 日 平 均 得 点(0→4)は,得 点 の 高 い 順 に 実 存 的 ス ト レ ッ サ ー2.54(±1.26),学 業 ス ト レ ッ サ ー1.85(± 0.81),将 来 不 安 ス ト レ ッ サ ー1.64(±0.88),対 象 喪 失 ス ト レ ッ サ ー1.36(+0.81),生 活 環 境 ス ト レ ッ サ ー1.18 (±0.95),対 人 ス ト レ ッサ ー1.04(±0.61),体 調 ス ト レ ッ サ ー0.92(±0.70)で あ っ た 。 以 下 に 有 意 差 が 認 め ら れ た 項 目 の み を 記 述 す る 。 ① 「性 別 」 「性 別 」 と ス ト レ ッ サ ー と の 関 係 で は,女 子 よ り も 男 子 の 方 が 生 活 環 境 ス ト レ ッ サ ー 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 表4中 国語版 大 学 生用 ス トレス 反応 尺度 の 因子 分 析後 の 下位尺 度 を持 つ質 問紙 の 内的整 合性(N=346) 下 位 尺 度 項 目数 Cronbach's α 因子1(悲 嘆 反応) 因子2(自 律神 経 反 応) 因子3(引 き こも り) 因子4(倦 怠感) 因子5(不 安) 11 7 8 5 4 .906 .869 .849 .803 .775 全体 35 .953 (t=3.60,d.f.=346,p<0.001)。 ② 「学 年 」 「学 年 」 と ス ト レ ッ サ ー と の 関 係 で は,有 意 差 が 認 め ら れ(F=6.50,v1/v2=3/355,p<0.001),多 重 比 較 の 結 果, 4年 生 よ り も2,3年 生 の 方 が 学 業 ス ト レ ッ サ ー 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 4
③ 「出 身 地 」 「出 身 地 」 と ス ト レ ッ サ ー と の 関 係 で は,有 意 差 が 認 め ら れ,都 市 部 の 学 生 よ り も農 村 部 の 学 生 の 方 が 生 活 環 境 ス ト レ ッ サ ー 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=4.71,d.f.= 357,p<0.001)。 ま た 農 村 部 の 学 生 よ り も 都 市 部 の 学 生 の 方 が 体 調 ス ト レ ッ サ ー 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t= 2.26,d.f.=357,p<0.05)。 ④ 「学 費 」 「学 費 」 と ス ト レ ッ サ ー と の 関 係 で は,学 費 が 足 りて い る 学 生 よ り も 足 りな い 学 生 の 方 が,対 人 ス ト レ ッ サ ー (t=2.58,d.f.=356,p<0.05),学 業 ス ト レ ッサ ー(t=2.55, d.f.=356,p<0.05),将 来 不 安 ス ト レ ッサ ー(t=2.64,d.f. =356 ,p<0.Ol),生 活 環 境 ス ト レ ッ サ ー(t=9.99,d.f.= 174,p<0.001)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 (2)中 国 語 版 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 中 国 語 版 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 の 総 得 点 の 平 均 は 17.18(±15.55)で あ っ た 。 下 位 尺 度 別 の 項 目 平 均 得 点(0→3)は,得 点 の 高 い 順 に 悲 嘆 反 応0.52(±0.51),自 律 神 経 反 応0.33(±0.49), 引 き こ も り0.43(±0.49),倦 怠 感0.69(±0.59),不 安 0.59(±0.59)で あ っ た 。 以 下 に 有 意 差 が 認 め られ た 項 目 の み を 記 述 す る 。 ① 「性 別 」 「性 別 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,女 性 よ り も 男 性 の 方 が ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t= 2.04,d.f.=349,p<0.05)。 そ し て 下 位 尺 度 で は,男 性 の 方 が 自 律 神 経 反 応(t=3.56,d.f.=334,p<0.001),引 き こ も り(t=2.26,d.f.=353,p<0.05)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ② 「入 学 動 機 」 「入 学 動 機 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 に お い て 有 意 差 が 認 め ら れ た(F=5.24, v1/v2=3/386,p<0.01)。 〈 教 養 獲 得 〉 動 機 の 人 は,〈 職 業 的 夢 の 実 現 〉 と く そ の 他 〉 の 動 機 の 人 よ り も,悲 嘆 反 応(F=3.93,v1/v2=3/386,p<0.01),引 き こ も り(F= 4.66,v1/v2=3/386,P<0.01),倦 怠 感(F=4.14,v1/v2=-3/386,p<0.01)の 得 点 が 有 意 に 低 か っ た 。 ま た,〈 教 養 獲 得 〉 動 機 の 人 は,〈 職 業 的 夢 の 実 現 〉 動 機 の 人 よ り も,自 律 神 経 反 応(F=3.28,v1/v2=3/386,p<0.05)の 得 点 が 有 意 に 低 か っ た 。 さ ら に,〈 教 養 獲 得 〉 動 機 の 人 は,〈 そ の 他 〉 の 動 機 の 人 よ り も,不 安(F-3.94,v1/v2 =3/386 ,p<0.Ol)の 得 点 が 有 意 に 低 か っ た(図1参 照)。 ③ 「趣 味 」 「趣 味 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,「 趣 味 」 の 違 い に よ っ て ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 に 有 意 差 が 認 め ら れ た (F=5.47,v1/v2=3/396,p<0.01)。 〈 読 書 が 好 き 〉 な 学 生 よ り も〈 ゲ ー ム が 好 き 〉 な 学 生 の 方 が,悲 嘆 反 応(F =3 .30,vl/v2=3/396,p<0.05),自 律 神 経 反 応(F=6.34, 図1入 学動機 の違 いに よる 中国の 大学 生の ス トレス 反応得 点 図2学 年 の違 い によ る中国 の大 学生 のス トレス反 応得 点
-5-v1/v2=3/396,p<0.001),引 き こ も り(F=5.13,v1/v2= 3/396,P<0.01),倦 怠 感(F=3.23,vl/v2=3/396,P<0.05), 不 安(F-2.67,v1/v2=3/396,p<0.05)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ④ 「学 年 」 「学 年 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 に お け る 有 意 差 が 認 め ら れ た(F=5.61,Vl/v2= 3/355,p<0.001)。 ス ト レ ス 反 応 の 平 均 得 点 は,4年 生 は22.52(±17.75),3年 生 は16.06(±13.64),2年 生 は 15.47(±14.57),1年 生 は13.91(±14.36)で あ っ た 。 多 重 比 較 の 結 果,1,2,3年 生 よ り も4年 生 の 方 が,悲 嘆 反 応(F=5.72,v1/v2=3/355,p<0.001),自 律 神 経 反 応 (F-5.30,v1/v2=3/355,p<0.01)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ま た,2年 生 よ り も4年 生 の 方 が,引 き こ も り(F= 3.61,v1/v2=3/355,p<0.05)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 さ ら に,1,3年 生 よ り も4年 生 の 方 が,不 安(F=4.67, v1/v2=3/355,p<0.01)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(図2参 照)。 ⑤ 「出 身 地 」 「出 身 地 」 と ス ト レ ス の 反 応 と の 関 係 で は,農 村 部 の 学 生 よ り も 都 市 部 の 学 生 の 方 が,自 律 神 経 反 応 の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=2.09,d.f.=160,p<0.05)。 ⑥ 「学 費 」 「学 費 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,学 費 が 足 り な い 学 生 の 方 が 足 り て い る 学 生 よ り も ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=3.08,d.f.=186,p<0.Ol)。 下 位 尺 度 で は,学 費 が 足 り て い る 学 生 よ り も 足 り て い な い 学 生 の 方 が,悲 嘆 反 応(t=2.99,d.f.=356,p<0.01), 自 律 神 経 反 応(t=2.43,d.f.=188,p<0.05),引 き こ も り(t=2.55,d.f.=177,p<0.05),倦 怠 感(t=2.75,d.f.= 181,p<0.01),不 安(t=2.47,d.f.=356,p<0.05)に お け る 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ⑦ 「心 理 相 談 の 有 無 」 「心 理 相 談 の 有 無 」 と ス ト レ ス 反 応 の 関 係 を 検 定 し た 結 果,心 理 相 談 を 受 け た 学 生 が 受 け て い な い 学 生 よ り も, ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=2.51,d.f.= 356,p<0.01)。 下 位 尺 度 に お い て は,倦 怠 感 を 除 く そ の他 の4因 子 に お い て,心 理 相 談 を 受 け て い る学 生 の 方 が 受 けて い な い 学 生 よ りも,有 意 に 得 点 が 高 か った(表 5参 照)。 4.日 本 の 大 学 生 の メ ン タ ル ヘ ル ス 状 態 (1)日 本 語 版 大 学 生 用 日 常 生 活 ス ト レ ッ サ ー 尺 度 日本 語 版 大 学 生 用 日 常 生 活 ス トレ ッ サ ー 尺 度 の 下 位 尺 度 別 項 目 の 平 均 得 点(0→4)は,得 点 の 高 い 順 に 実 存 的 ス ト レ ッ サ ー1.61(±0.84),学 業 ス ト レ ッ サ ー1.38(± 0.69),対 人 ス ト レ ッ サ ー1.19(±0.85),物 理 ・身 体 的 ス ト レ ッ サ ー1.12(±0.71)で あ っ た 。 以 下 に 有 意 差 が 認 め られ た 項 目 の み を 記 述 す る。 ① 「性 別 」 「性 別 」 と ス ト レ ッ サ ー と の 関 係 で は,女 性 よ り も 男 性 の 方 が 実 存 的 ス ト レ ッ サ ー(t=3.34,d.f.=216,p< 0.001),物 理 ・身 体 的 ス ト レ ッ サ ー(t=3.30,d.f.=190, p<0.01)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ② 「性 格 」 「性 格 」 と ス トレ ッ サ ー と の 関 係 で は,外 交 的 学 生 よ り も 内 向 的 学 生 の 方 が,実 存 的 ス ト レ ッ サ ー 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=3.50,d.f.=215,p<0.001)。 ③ 「学 費 」 「学 費 」 と ス ト レ ッ サ ー と の 関 係 で は,学 費 が 足 り て い る 学 生 よ り も 足 りて い な い 学 生 の ほ うが 物 理 ・身 体 的 ス ト レ ッサ ー 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=4.17,d.f.=60, p<0.001)。 ④ 「心 理 相 談 の 有 無 」 「心 理 相 談 の 有 無 」 と ス トレ ッ サ ー と の 関 係 で は,心 理 相 談 を 受 け て い な い 学 生 よ り も 受 け た 学 生 の ほ うが, 対 人 ス ト レ ッ サ ー(t=2.23,d.f.=214,p<0.05),実 存 的 ス ト レ ッ サ ー(t=2.28,d.f.=214,p<0.05)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 (2)日 本 語 版 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 日本 語 版 大 学 生 用 ス ト レ ス 反 応 尺 度 の 総 得 点 の 平 均 は 17.38(±18.29)で あ っ た 。 下 位 尺 度 別 の 項 目平 均 得 点(0 →3)は ,得 点 の 高 い 順 に 抑 うつ3.21(±3.62),情 緒 的 反 応3.12(±3.32),不 安3.06(±3.37),身 体 的 疲 労 感2.70 表5心 理相 談 の有 無 と中国 の大 学生 のス トレス反 応得 点 因子 項 目 心 理 相 談 を 受 け た (11=32,9%) 心 理 相 談 を 受 け て い な い (n=326) t値 P値 悲 嘆 反 応 自律 神 経 反 応 引き こ も り 倦 怠感 不 安 8.25(±6.75) 3.41(±3.64) 4.72(±4.26) 3.97(±3.52) 3.22(±2.86) 5.40(±5.40) 2.14(±3.39) 3.28(±3.73) 3.37(±2.89) 2.24(±2.27) 2.78 1.99 2.05 1.10 2.27 0.006** 0.047* 0.041* 0,272 0.024* 全体平均値 23.56(±18.72) 16.44(±14.97) 2.51 0.013* *:p<0.05 **:p<0.01
-6-(±3.26),怒 り2.52(±3.50),引 き こ も り1.82(±2.92), 自 律 神 経 系 の 活 動 性亢 進0.94(±2.26)で あ っ た 。 以 下 に 有 意 差 が 認 め ら れ た 項 目 の み を 記 述 す る 。 ① 「入 学 動 機 」 「入 学 動 機 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,〈 そ の 他 〉 の 動 機 の 人 は,〈 職 業 的 夢 の 実 現 〉 と く 学 問 的 興 味 〉 動 機 の 人 よ り も,引 き こ も り(F=4.09,v1/v2= 3/220,p<0.01),自 律 神 経 系 の 活 動 性亢 進 の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(F=5.08,v1/v2=3/220,p<0.01)。 ② 「趣 味 」 「趣 味 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,〈 ス ポ ー ツ が 好 き 〉 な 学 生 よ り も,〈 そ の 他 〉 の 学 生 の 方 が,抑 うつ 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(F=2.83,v1/v2=3/214,p<0.05)。 ま た,〈 ス ポ ー ツ が 好 き 〉 な 学 生 よ り も,〈 ゲ ー ム が 好 き 〉 と く 読 書 が 好 き 〉 な 学 生 の 方 が,情 緒 的 反 応 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(F=3.06,v1/v2=3/214,p<0.05)。 ③ 「学 年 」 「学 年 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 に お い て 有 意 差 が 認 め られ た(F=3.14,V1/v2= 2/215,p<0.05)。 ス ト レ ス 反 応 の 平 均 得 点 は,1年 生 は 14.61(±14.46),2年 生 は21.06(±23.22),3年 生 は 22.83(±20.05),4年 生 は9.57(±9.47),3年 生 の 得 点 が 一 番 高 か っ た。 多 重 比 較 の 結 果,1年 生 よ り も2年 生 の ほ う が 情 緒 的 反 応(F=4.14,v1/v2=3/214,p<0.01)得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。1年 生 よ り も3年 生 の ほ うが 不 安 (F=5.24,v1/v2=3/214,p<0.Ol)得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ま た,4年 生 よ り も2,3年 生 の ほ うが,引 き こ も り (F=2.98,v1/v,-3/214,p<0.05)得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ④ 「性 格 」 「性 格 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 に お い て 有 意 差 が 認 め ら れ た(t=2.63,d.f.= 216,p<0.01)。 外 交 的 学 生 よ り も 内 向 的 学 生 の ほ うが, 抑 うつ(t=2.03,d.f.=215,p<0.05),不 安(t=2.66, d.f.=215,p<0.Ol),情 緒 的 反 応(t=3.45,d.f.=215, p<0.001),引 き こ も り(t=3.87,d.f.=215,p<0.001) の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た 。 ⑤ 「出 身 地 」 「出 身 地 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,農 村 部 の 学 生 よ り も都 市 部 の 学 生 の ほ うが,ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=2.08,d.f.=216,p<0.05)。 下 位 尺 度 に お い て は,農 村 部 の 学 生 よ り も都 市 部 の 学 生 の 方 が,怒 り(t=2.68,d.f.=213,p<0.01)と 自 律 神 経 系 の 活 動 性亢 進(t=2.98,d.f.=193,p<0.Ol)の 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(表6参 照)。 ⑥ 「心 理 相 談 の 有 無 」 「心 理 相 談 の 有 無 」 と ス ト レ ス 反 応 と の 関 係 で は,心 理 相 談 を 受 け た 学 生 が 受 け た こ と が な い 学 生 よ り も,ス ト レ ス 反 応 全 体 得 点 が 有 意 に 高 か っ た(t=3.51,d.f.= 214,p<0.001)。 下 位 尺 度 の 全7因 子 に お い て,心 理 相 談 を 受 け た 学 生 の 方 が 受 け た こ と が な い 学 生 よ り も,有 表6出 身地 の違 いによ る 日本 の大 学生 の ス トレス反 応得 点 因 子項 目 農村 (n=93) 都市 (n=122) t値 P値 抑 うつ 2.80 (±3.04) 3.54 (±4.01) 1.55 0,123 不安 2.72 (±3.04) 3.31 (±3.60) 1.27 0,204 怒 り 1.84 (±2.94) 3.07 (±3.83) 2.68 0.008** 情緒的反応 2.83 (±2.93) 3.27 (±3.47) 0.99 0,323 引 き こ も り 1.63 (±2.88) 1.97 (±2.97) 0.82 0,411 身体的疲労感 2.26 (±2.94) 2.98 (±3.30) 1.68 0,095 自律神経系の活動性亢進 0.45 (±1.44) 1.30 (±2.69) 2.98 0.003** 全体平均値 14.53 (±14.98) 19.50 (±20.21) 2.08 0.038* *:p<0.05**:p<0.01 表7心 理 相 談 の 有 無 と 日 本 の 大 学 生 の ス ト レ ス 反 応 得 点 因 子 項 目 心 理 相 談 を 受 けた 心 理 相 談 を 受 けた こ とが な い t値 P値 (n=17,8%) (n=199) 抑 うつ 5.65(±4.99) 3.02(±3.42) 2.13 0.048* 不安 5.29(±3.93) 2.88(±3.27) 2.87 0.004** 怒 り 4.59(±4.40) 2.37(±3.37) 2.53 0.012* 情緒 的反応 5.41(±3.91) 2.92(±3.20) 3.02 0.003** 引 き こ も り 3.47(±3.62) 1.69(±2.83) 2.44 0.016* 身体的疲 労感 5.41(±3.14) 2.50(±3.17) 3.64 0.000** 自律神経系の活動性亢進 2.24(±2.77) 0.84(±2.20) 2.46 0.015* 全体平均値 32.06(±22.87) 16.22(±17.41) 3.51 0.000** *:p<0.05 **:p<0.01
-7-意 に得 点 が 高 か っ た(表7参 照)。 IV考 察 1.ス トレ ッサ ー の 調査 結 果 に つ い て 本 研 究 で は,中 国語 版 大 学 生 用 日常 生活 ス トレ ッサ ー 尺 度 の 因 子 分 析 を行 っ た結 果(7因 子),日 本 語 版(4 因子)と は 異 な る因子 構 造 が示 され た。 因 子構 造 が異 な っ た理 由 と して,一 つ に翻 訳 の 問題 が 考 え られ る。 日本 語 版 大 学 生 用 日常 生活 ス トレ ッサ ー 尺度 の 中 国語 版 の 作成 に 当 た っ て は,ま ず,日 本 語 版 を 中 国語 に翻 訳 し,日 本 に 留 学 し 日本 語 に 堪 能 な 中 国 人2名(う ち1名 は 日本 語 科 の4年 生,1名 は 心 身 医療 専 門 医)に 翻 訳 の適 切 性 に つ い て検 討 して も らい,修 正 を行 っ た。 しか し,日 本 語 の表 現 を 十 分 に 中 国語 に翻 訳 で き て い な か っ た 可 能性 が あ る。 ま た,因 子構 造 の うち,対 人 ス トレ ッサ ー,実 存 的 ス トレ ッサ ー,学 業 ス トレ ッサ ー,体 調 ス トレ ッサ ー の4因 子 は 中 国 の学 生 と,日 本 の 学 生 で は 共 通 して い た が,将 来 不 安 ス トレ ッサ ー,生 活 環境 ス トレ ッサ ー,対 象 喪 失 ス トレ ッサ ー の3因 子 は 中 国 の 学 生 に の み認 め ら れ た。 因 子 分析 は,被 験者 の 質 問 項 目に 対 す る 無意 識 的 な反 応 の パ タ ー ン を 明 らか に す る 手 法 で あ る。 した が っ て,中 国 の 学 生 は 日本 の 学 生 とは 異 な る 質 問 項 目に 対 す る反 応 パ タ ー ン を示 した とい え る。 つ ま り,中 国 の 学 生 は 日本 の 学 生 に 比 べ,将 来 の こ と,生 活 環境,対 象 喪 失 に対 して そ れ らを ス トレ ッサー と認 識 した と考 え られ る。 この 点 に つ い て は,今 後 さ らに検 討 を 重 ね て い く必 要 が あ る。 因 子構 造 が 異 な る た め,そ れ らの結 果 を 一概 に 比較 す る こ とは で き な い。 しか し,中 国語 版 で も 日本 語 版 で も 最 も得 点 が 高 か っ た もの は,実 存 的 ス トレ ッサ ー で あ っ た。 そ して,中 国 の調 査結 果 で は,こ の 実 存 的 ス トレ ッ サ ー は性 別,学 年 な どの い ず れ の 要 因 と も有意 な 関係 は 認 め られ な か っ た が,日 本 の 学 生 で は,男 性,内 向性, 心理 相 談 を 受 け た 人 の 方 が,実 存 的 ス トレ ッサ ー が 有意 に 高 か っ た。 実 存 的 ス トレ ッサ ー とは,"自 己 の 人 格,生 き方 に 関 わ る よ うな ス トレ ッサ ー"と され る4陶 。 これ らか ら, 両 国 の 大 学 生 は,社 会 背 景 は 異 な っ て い て も,青 年 期 に あ る 人 が社 会 人 と して 自立 す る 前 に 直 面 す る 「自分 は ど の よ うな 人格 形成 を 図 る べ き か,ま た どの よ うに 生 き る べ き か 」 とい う青年 期 特 有 の発 達課 題 に 直 面 して お り, そ の こ とに ス トレス を感 じて い る とい え る。 しか し,中 国 で は性 差 な ど と関係 な く実 存 的 ス トレ ッサ ー を感 じて い る結果 だ っ た が,日 本 で は性別 に よって 実存 的 ス トレッ サ ー を感 じる程 度 に 差 が認 め られ た。 これ は,日 本 の伝 統 的 な 男 女 に よる性 役 割 の 差 異 が結 果 に反 映 して い る こ とが推 測 され る。 そ して,日 本 で は 内 向 的 で 心理 相 談 を 受 け て い る人 の 方 が,実 存 的 ス トレ ッサ ー を 強 く感 じて い た。 ま た 心理 相 談 を 受 け た 人 に 関 して は,そ うで な い 人 と比 べ て 対 人 ス トレッサ ー も強 く感 じて いた こ とか ら, 積 極 的 な他 者 との 交流 とい っ た活 動 的 対 処行 動 を 取 りに くい特 性 が 実存 的 ス トレ ッサー を強 く感 じさせ やす く し, それ が ま た精 神 的健 康 の 問題 の発 生 と も関連 す る こ とが 推 測 され た。 実存 的 ス トレ ッサ ー に続 い て,学 業 ス トレ ッサ ー が, 両 国 と もに 高 い数 値 を示 して い た。 この ス トレ ッサ ー と 関係 す る要 因 に つ い て は,中 国 で は,「 学 年 」 と 「学 費 」 の 要 因 が 有意 な 関係 と して認 め られ,4年 生 よ りも2・ 3年 生 が,そ して 学 費 が 足 りな い 学 生 の方 が 有意 に 学 業 ス トレ ッサ ー の得 点 が 高 か っ た。 一 方,日 本 で は,学 業 ス トレ ッサ ー と関係 す る要 因 は1つ も認 め られ な か っ た。 学 業 ス トレ ッサ ー は,大 学 生 で あ る以 上逃 げ られ な い ス トレ ッサ ー で あ る こ とか ら,多 くの 学 生 が 自分 の果 たす べ き役 割 を しっ か り受 け止 め な が ら,大 学 生活 を 送 っ て い る こ との証 で あ る と考 え られ る。 中 国 の 調 査 結 果 で は,「 学 費 」 の 足 りな い 学 生 は,学 業 ス トレ ッサ ー 以外 に も,対 人 ス トレ ッサ ー,将 来 不安 ス トレ ッサ ー,生 活 環 境 ス トレ ッサ ー とい っ た 多 くの も の に ス トレス を感 じて い る こ とが示 され た。 経 済 的基 盤 は,大 学 生活 を維 持 す る上 で絶 対 的 不 可欠 な もの で あ り, そ の基 盤 が 乏 しい こ とは 多 くの ス トレス を もた らす と考 え られ る。 今 回 は,学 費 の 不 足 の理 由 は調 査 しな か っ た た め,元 々 の 資金 不 足 な の か,使 い過 ぎ に よ る もの か は わ か らず,ス トレス の深 刻 度 は判 断 で き な い。 しか し, 学 費 の 足 りな い 学 生 は,様 々 な ス トレス反 応 も示 して い た こ とか ら,中 国 の 学 生 の精 神 的健 康 の 状態 把 握 を行 う 場 合 に,経 済 的基 盤 の視 点 を 取 り入 れ る こ とは 非 常 に 重 要 で あ る と考 え られ る。 2.ス トレス 反応 の 調査 結 果 日本 語 版 ス トレス反 応 尺度 が7因 子 で あ るの に 対 し, 今 回翻 訳 して 作成 した 中 国語 版 ス トレス反 応 尺度 の 因 子 分析 の結 果 で は,5因 子 が抽 出 され た。 そ の た め調 査結 果 を 単 純 に 比較 す る こ とは で き な い が,ス トレス反 応 の 多様 さ と強 さの程 度 とい う点 で は検討 可能 と考 え られ る。 「入 学 動 機 」 に 関 して は,中 国 の 学 生 で は 〈 教 養 獲 得 〉動 機 の 人 は,そ れ 以外 の入 学動 機 の 人 た ち よ りもス トレ ス 反 応 が 有 意 に 低 か っ た 。 一 方,日 本 の 学 生 は, 〈 そ の他 〉の動 機 の 学 生 の 引 き こ も りや 自律 神 経 系 の活 動亢 進 反 応 が 有意 に 高 か っ た。 これ は,中 国 の 学 生 の場 合,〈 学 問 的 興 味 〉や く職 業 的夢 の 実 現 〉 とい っ た 具 体 的動 機 に基 づ い て入 学 した場 合,現 実 と直 面 しや す くス トレス反 応 を 生 じや す い こ とが 考 え られ る。 一方,日 本
-8-の 学 生 -8-の〈 そ -8-の他 〉-8-の入 学動 機 に は,成 績 な どか ら明確 な 目的意 識 を もて な い ま ま 不本 意 入 学 して い る 可 能性 も 考 え られ,そ れ らが ス トレス反 応 を 生 じ させ る の で は な い か と考 え られ る。 次 に 「学年 」 要 因 を み る と中 国 で は,1年2年3年 よ りも4年 生 の方 が悲 嘆 反応,自 律 神 経反 応,引 き こも り, 不安 な どの反 応 が有 意 に高 か っ た。 一方,日 本 の 学 生 は, 3年 生 の 不 安 が 高 く,2年3年 の 方 が4年 生 よ りも引 き こ も り反 応 が 有意 に 高 か っ た。 これ は,日 本 の 場合,就 職 活 動 が 主 と して3年 次 に行 わ れ る た め に,4年 生 よ り も3年 生 の 方 が ス トレス反 応 を 生 じや す い こ とが 考 え ら れ る。 一 方 中 国 で は,4年 生 に な っ て か ら就 職 活 動 が本 格 化 す る た め,就 業 の プ レシ ャ ー と仕 事 の 環境 へ の適 応 の 心配 か ら精 神 的負 担 が か か るか らで あ る と推 測 され る。 中 国 と 日本 の い ず れ の学 生 も,「 心 理 相 談 」 を受 け た 学 生 の 方 が,多 様 な ス トレス反 応 を示 して い た。 本 調 査 に お け る 心理 相 談 率 は,中 国 が9%,日 本 が8%と,全 学 生 の1割 近 い 比 率 を 示 した。 しか し この 比 率 は,中 国 国 内 で 報 告 され て い る12.54%よ りもや や 低 か っ た9)。 心 理 相 談機 関 は,心 理 的 問題 の あ る 学 生 の ス トレス を緩 和 させ,自 我 調 節 の 能 力 を 向 上 させ る だ け で は な く,心 理 的 に健 康 な 人格 の発 展 も促 し,緊 張 と悩 み を解 消 で き る よ うに 支援 して い る。 した が っ て,心 理 相 談 を 受 け る こ とが,即 心理 的 問題 を 抱 え て い る 比 率 と捉 え る こ とは で き な い。 む しろ,本 調 査 に お け る 中 国 の 学 生 の 比 率 が こ れ ま で の報 告 よ りも低 か っ た の は,心 理 的健 康 を 守 る と い う保 健 意 識 と知識 の 不 足 が影 響 して い る こ と も考 え ら れ る。 例 え ば,心 理 的 問題 が な い と,心 理 相 談 の 必 要 が な い と考 え て い る た め,相 談 しな か っ た 可 能性 が あ る。 心理 的健 康 の保 持 ・増 進 の た め の 支援 を行 い,学 生 の 環 境 適 応 能 力 を 向 上 させ る た め の 大 学 の 心理 相 談機 関 の役 割10)をよ り効 果 的 に学 生 に伝 え て い く必 要 が あ る。 ま た,両 国 の 大 学 生 に お い て は,都 市 部 の 学 生 よ りも 農 村 部 の学 生 の方 が,自 律 神 経 反応 と怒 りが 有 意 に低 く, 農 村 部 の 学 生 の 方 が,精 神 的健 康 状 態 が よい こ とが 示 さ れ た。 この理 由 に つ い て は,今 後 さ らに研 究 を深 め て い く必 要 が あ る。 「性 別 」 要 因 で は,中 国 の 大 学 生 に お い て の み,男 性 の 方 が 自律 神 経反 応 と引 き こ も り得 点 が 有意 に 高 く,男 性 よ りも女性 の ほ う精 神 的健 康 状 態 が 良 い こ とが 示 され た。 この結 果 は これ ま で の調 査報 告 に お い て 女性 よ り男 性 の ほ うが 精神 的健 康 状 態 は 良 い とい う結 果 と異 な っ て い る11)12)。これ に は,専 攻 分 野,男 女 の比 率,調 査 尺 度 な どの相 違 も影 響 して い る と考 え られ る た め,さ らに調 査 を行 っ て い く必 要 が あ る。 日本 の 大 学 生 の み で,「 性 格 」 要 因 の外 向 的 学 生 よ り も内 向 的 学 生 の 方 が,抑 うつ,不 安,情 緒 的反 応,引 き こ も り とい っ た 多様 な ス トレス反 応 を抱 え て お り,精 神 的健 康 状 態 が 良 くな い こ とが示 され た。 内 向 的 学 生 は, 対 人 ス トレ ッサ ー も強 く感 じて お り,交 際 が 苦 手 で あ る こ とが 考 え られ,困 難 に 直 面 して も人 に相 談す る こ とな く 自分 一 人 で 耐 え て しま うこ とが 多 い か らで は な い か と 考 え られ る。 日本 の 大 学 生 に お い て は,「 ス ポ ー ツ が好 き 」 な学 生 の ほ うが 「他 の こ とが好 き 」 な 学 生 よ り,抑 うつ と情 緒 的反 応 の得 点 が 有 意 に低 く,「 ス ポ ー ツ が好 き 」 で あ る こ とは,精 神 的健 康 に好 影 響 を及 ぼす と考 え られ る。 こ の結 果 は,大 学 生 の精 神 的健 康 の維 持 に運 動 習慣 の確 保 が 重 要 な 一 つ の 要 因 に な る こ とを示 した これ ま で の報 告 に も一 致 して い た13)。ス ポ ー ツ を す る こ とは,ス トレス の解 消 に な り,情 緒 を安 定 させ る こ とか ら,環 境 へ の適 応 能 力 の 改 善 に役 に 立 つ。 この よ うな 正 の循 環 が,精 神 的健 康 の維 持,改 善 に貢 献す る と され て い る14)。 V研 究 の 限 界 と今 後 の 研 究 可 能 性 今 度 の調 査 は,中 国 と 日本 の 大 学 が1校 ず つ で あ り, 専攻 分 野 が 文 系 の 教 育 と経 済 に 限 定 され て い る。 ま た, 学年 の サ ンプル 数 が 一 致 して お らず,数 の 不 足す る学年 もみ られ た。 それ は研 究結 果 の代 表 性 に 多少 影 響 を 与 え る と考 え る。 今 後,研 究 の範 囲 を拡 大 し,各 学年 の サ ンプル 数 を増 や し,異 な る地域,学 校 の 文 系,理 科,工 科,芸 術 な ど の 専 門 を含 め て,総 合 的 な 大 学 生 の メ ンタル ヘ ル ス の 状 況 を把 握 して い く必 要 が あ る。 一 方,大 学 生 の メ ンタル ヘ ル ス に 関 して,異 な る国 間 で 比較 検 討 した研 究 は ま だ 非 常 に少 な く,今 回 の調 査 に お い て,青 年 期 に あ る大 学 生 と して の 普遍 的側 面 と,各 国 の社 会 背 景 に よっ て 生 じ る特徴 が 明確 に な っ た。 この よ うな 取 り組 み は,今 後 に お け る一 つ の研 究 方 向性 を示 す もの で あ る と考 え る。 謝 辞 本 研 究 は 日本 学術 振 興会 の 支援 を うけ て 実施 す る こ と が で き た。 ま た,鹿 児 島 大 学 医 学部 保 健 学科 精 神 看 護 学 研 究 室 の 皆様 に も数 多 くの支 援 を 受 け た。 そ して,研 究 実施 施 設 と しで快く 引 き 受 け て くだ さっ た 日本 の 大 学 の 教 育 学部 の 土 田教 授 と学 生 の 方 々,中 国 の 大 学 の 商 学部 の ス タ ッフ と学 生 の 方 々 か らた く さん の ご厚 意 を い た だ い た。 こ こに記 して,心 よ り感 謝 申 し上 げ る。 【引 用 文 献 】 1)楊 学 峰:大 学 生 常 見 心 理 問 題 原 因 探 析,中 華 医 護 雑 誌,2006;3(2):128-129 2)朱 国 生:大 学 生 心 理 健 康 与 身 体 素 質 関 係 的 実 験 性 研
-9-究,山 西 師 大 体 育 学 院 学 報,2004;19(1):82-84 3)厚 生 労 働 省:平 成19年 国 民 生 活 基 礎 調 査,2008 4)嶋 信 宏:大 学 生 に お け る ソ ー シ ャ ル サ ポ ー トの 日 常 生 活 ス ト レス に 対 す る 効 果,社 会 心 理 学 研 究,1992; 7:45-53 5)嶋 信 宏:大 学 生 用 日常 生 活 ス トレ ッ サ ー 尺 度 の 検 討, 中 京 大 学 社 会 学 部 紀 要,1999;14(1):69-83 6)尾 関 友 佳 子,原 口雅 浩,津 田 彰:大 学 生 の 心 理 的 ス ト レ ス 過 程 の 共 分 散 構 造 分 析,健 康 心 理 学 研 究, 1994;7:20-36 7)尾 関 友 佳 子:大 学 生 用 ス トレ ス 自己 評 価 尺 度 の 改 訂-トラ ン ス ア ク シ ョ ナ ル な 分 析 に 向 け て-,久 留 米 大 学 大 学 院 比 較 文 化 研 究 科 紀 要 年 報,1993;1:95-ll4 8)尾 関 友 佳 子,原 口雅 浩,津 田 彰:大 学 生 の ス ト レ ッ サ ー,コ ー ピ ン グ,パ ー ソナ リテ ィ と ス トレ ス 反 応, 健 康 心 理 学 研 究,1991;4:1-9 9)萢 存 欣:広 州 地 区 大 学 生 心 理 保 健 需 求 現 状 分 析,予 防 医 学 文 献 信 息,1998;4(2):108-110 10)斎 允 峰:大 学 生 心 理 健 康 教 育 実 施 途 径 的 研 究,西 安 体 育 学 院 学 報,2005;22(1):127-130 11)黄 子杰:508名 医 学 生 心 理 健 康 状 況 調 査,学 校 衛 生, 1989;10(3):17-19 12)馬 麗:高 校 大 学 生 心 理 素 質 調 査 分 析 及 心 理 保 健 与 調適 ,遼寧 工 学 院 学 報,2004;6(2):110-122 13)甲 斐 菜 津 美,山 崎 文 夫:大 学 生 に お け る運 動 に 関 す る ラ イ フ ス タ イ ル と精 神 的 健 康,産 業 医 科 大 学 雑 誌, 2009;31(1):89-95 14)王 厚 民:体 育 鍛 煉 対 大 学 生 心 理 保 健 的 作 用,合 肥 工 業 大 学 学 報,2002;16(6):128-130