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子どもの発達に関する市販ビデオ教材の分析

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Academic year: 2021

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(1)89. 子どもの発達に関する市販ビデオ教材の分析 キーワード:子どもの発達,ビデオ教材,中学校・高等学校,家庭科. 永田智子*・松村京子* (平成12年9月20日受理) I問題の所在と研究の目的 中学校の技術・家庭科および高等学校の家庭科(以下, 家庭科)では,子どもの発達に関する学習が重要な柱の 一つとなっている(文部省, 1998a:文部省, 1999)。 従来より,家庭科では,子どもの発達など家庭や保育に 関する内容の学習について,学校教育での中心的役割を 担ってきたが,今回の学習指導要領の改訂では,特に, 少子化という社会問題への考慮から,これまで以上に学 習が充実することが期待されている(文部省, 1998b: 文部省, 2000)。 しかし,核家族化・少子化が進む現在,中学・高等学 校の生徒のほとんどは子どもと直接接する機会を持つこ とがないために,言語やイラスト・写真などの静止画だ けで子どもの具体的な姿や行動の様子を理解することは 難しく,授業にも関心が持てないことが指摘されている (瀬之ロ・山下, 1965)。 子どもの心身の発達に関する理解を助ける教材の一つ に,ビデオなどの視聴覚教材がある。乳幼児体験学習な どに比べて授業での活用が比較的容易であり,理解面で も効果的な学習方法である(太田・北野, 1983:伊藤, 1987 :伊藤, 1995 :福留, 1991)。視聴覚教材の活用は, 学習者が望む学習方法の一つであり(瀬ノロ・福乱 1974),家庭科担当教諭においても導入指向は強い(武 藤, 1993)。そのため,多くの高等学校には保育に関す るビデオ教材が所有されている。しかしながら,実際に ビデオ教材が使用されることは少ないことも報告されて いる(中田・松村, 1999)。これは「指導内容にそった ものがない」 「指導部分の選択ができない」 (武藤, 1993)などビデオ教材自体の問題や, 「どこでどのよう. に導入するかという研究がたりない」 (瀬之ロ・福田・ 赤崎・鈴木・吉成, 1979)といった活用方法に関する研 究不足が原因であると考えられている。 そこで本研究では,子どもの発達に関する市販のビデ オ教材を分析し,その特徴を明らかにすることとした。 このような基礎資料を得ることによって,授業での効果 的な活用方法を提案したり,今後新たに子どもの発達に 関するビデオ教材を制作する場合の指針を得ることが可 能になると考えたためである。 Ⅱ分析の方法 1.分析対象の選定 本研究では,中学校技術・家庭科ならびに高等学校家 庭科の教科書会社の発行するビデオ教材を分析の対象と することとした。 中学校技術・家庭科ならびに高等学校家庭科の教科書 会社は全部で8社あり,そこで取り扱われるビデオ教材 のうち「発達」 「発育」といったキーワードを含むもの は全部で6本(4社)であった(1999年3月時点) その中からさらに,乳児期しか取り上げていないビデ オ教材2本を除外し,残る4本(3社)を本研究での分 析対象とすることとした(表1)0 2.分析の手順 映像の分析方法には,映像を画像と音響の情報形態に 分け,それを構成要素と提示技法で分類する方法(三尾, 1997)などが開発されている。こうした量的分析方法で は,映像教材の客観的・定量的な基礎資料を得ることは できるが,授業での活用方法に示唆を得るには充分とは. 表1分析対象のビデオ教材 番号. A. B. C. D. 題名. 幼児 の心身 の発達. 子 どもの成長 と発達. 乳幼児のか らだの発育. 乳幼児の心の発達. 出版社. X 社. Y 社. 対象. 中学校. 中 . 高等学校. 高等学校. 高等学校. 時間. 25 分. 15 3. 30 分. 30 分. ・兵庫教育大学第5部(生活・健康系教育講座). Z社.

(2) 90. いえない。 そこで,本研究では,授業での活用方法への示唆を得 る方法として,構造に着目した分析(西森, 1997:田口, 1998)を併用することとした。 構造分析の手順は以下1)-2)の通りである。 1)各ビデオ教材の構成要素を抽出する。基本的には, カットが変化する毎に1つのキ-シーンを抽出し, ナレーションを対応づけたものを一つの構成要素と する。 2)次に,時系列も配慮しながら各構成要素を構造化 し,各ビデオ教材毎の構造的特徴について考察する。 本研究では,手順の1)により抽出した構成要素を基 礎データとし,これをもとに. ①構造分析と②量的分析 を行うこととした。 また,教科書についてもビデオ教材と同様に構造分析 を行い,ビデオ教材との比較を試みることとした。 分析の対象とした教科書は,平成8年文部省検定済の 中学校「技術・家庭科」教科書2冊,平成9年もしくは 平成10年文部省検定済の高等学校「家庭一般」教科書9 冊,の乳幼児の発達に関するページである. Ⅲ分析の結果と考察 基礎デ-夕として得られた各ビデオ教材の構成要素数 は,ビデオ教材A145,ビデオ教材B123,ビデオ教材C 145,ビデオ教材D126であった。これらを用いて行った 構造分析及び量的分析の結果を以下に述べる。. 特徴的な行動項目が映し出されるという構造になってい る。身体的発達と精神発達のどちらについても取り上げ られているが,ビデオ教材Aのように,明確な発達領域 には分けられていない(図2)0. 1.各ビデオ教材の概要と構造的特徴 1 )ビデオ教材A 「幼児の心身の発達」 このビデオ教材では,子どもの発達が,身体的発達と 精神的発達の2つに大きくわけられている。身体的発達 については,さらに,食事の場面における手のはたらき, 立つこと歩くことを中心とした足の動き,体全体の動き, という3つの発達領域が設定されており,精神的発達に ついては情緒という発達領域が設定されている。つまり 発達領域を軸とした構造といえる。 さらに身体的発達に関する3つの発達領域については, それぞれ該当する行動項目が発達段階順に並んでおり, 発達過程を比較しながら追えるような構成となっている。 しかし,精神的発達の情緒については,身体的発達のよ うに発達段階州別こは構成されていない(図1)0 2)ビデオ教材B 「子どもの成長と発達」 ビデオ教材Bは,乳児期から5歳-,また,保育所, 幼稚園の年少組から年長組へ,というように発達段階を 軸にした構造になっている。それぞれの発達段階ごとに,. 図2ビデオ教材Bの構造.

(3) 子どもの発達に関する市販ビデオ教材の分析. 3)ビデオ教材C 「乳幼児のからだの発育」 ビデオ教材Cは,子どもの身体的な発育に関する数値 やグラフをふんだんに取り入れ,身体の発育と運動機能 の発達を対比させながら,身体的発達の過程を追えるよ うな内容となっている。ビデオ教材Bほど取り上げられ る発達項目が懇意的ではないが,ビデオ教材Aはど発達 領域の設定は体系的でないため,どちらかといえば発達 段階を軸とした構造といえる(図3)0. 図4ビデオ教材Dの構造 以上,各ビデオ教材の構造をみると,子どもの発達に 関する市販ビデオ教材は大きく2つの構造タイプに分類 できるといえる。本稿では,その構造の特徴から,発達 段階順ツリー構造と発達領域別ツリー構造と呼ぶことと したい。 ビデオ教材B ・ Cは,発達段階順ツリー構造といえる。 発達段階順ツリー構造とは,各構成要素が月齢や年齢と いった「発達段階」ごとにまとめられているものである。 各発達段階毎の子どもの全体的な様子を捉えやすい構造. 図3ビデオ教材Cの構造. といえる。また各発達段階は, 0歳から若齢順に構成さ れており,実際の発達の過程を追うような構造となって いる。 一方,ビデオ教材A・ Dは,発達領域別ツリ-構造と. 4)ビデオ教材D 「乳幼児の心の発達」 このビデオ教材は,ビデオ教材Cと同じ出版社から発 行されており,身体的発達を中心テーマとしたビデオ教 材Cと対をなすように,子どもの精神的発達に焦点をあ てた内容となっている。しかし,ビデオ教材Cのように 発達段階を軸とした構造ではなく,感覚,情緒,社会性, 知的活動という発達領域を軸とした構造になっている。 しかしビデオ教材Aのように,それぞれの発達領域内の 行動項目が発達段階順に構成されていることは少なく, 知能・巧緻運動についてのみ,幼稚園の年少組・年中組・ 年長組という発達段階順に構成されていた(図4)0. いえる。発達領域別ツリー構造とは,各構成要素が運動 機能や情緒といった「発達領域」ごとにまとめられてい るものである。各発達領域に焦点を絞るので変化の過程 を捉えやすい構造といえる。発達段階服ツリー構造のよ うな順序は決まっていない。 なお,ビデオ教材Aの身体的発達部分は,各発達領域 内が,さらに発達段階順に構成されていた。このように 2層のツリー構造になっている部分は,発達段階順ツリー 構造のビデオ教材よりも発達の順序性についてより詳細 に理解しやすい構造であるといえる。しかし,ビデオ教 材Aの精神的発達部分やビデオ教材Dは,各発達領域内 はほとんど発達段階順には構成されていなかった。この ことから,身体的な発達領域については発達段階順を示 しやすいが,精神的な発達領域については発達段階の存 在を表現しにくいものであることがわかる。.

(4) 92. 2.ビデオ教材の量的特微 1つの教材の中で,身体に関する発達領域と精神に関 する発達領域の両方を扱っているビデオ教材Aについて, 領域数や発達領域ごとのシーン数や時間を調べた。 分析の結果は表3の通りである。身体に関する発達領 域は「手の働き」 「足の動き」 「運動機能」と3つ取り上 げられているが,精神に関する発達領域は「情緒」のみ であった. 「その他・不明」は,主にオ-プ二ングタイ トルや保育園のイメージ映像など,どの発達領域にも分 類できないものである。 シーン数や時間においても,身体に関する発達領域の 方が精神的に関する発達領域よりも多かった。 同様に,ビデオ教材Bについても,身体的発達の方が 精神的発達に比べて多く取り上げられていた。 すなわち,子どもの発達に関するビデオ教材は,身体 的発達に関する内容が多く,精神的発達に関する内容は 少ない傾向にあることがわかった。 3.教科書との比較 (1)構造の比較から 教科書とビデオ教材を比較する前に,まず教科書分析 の結果について述べる。 構造分析の結果,数の多少に偏りが見られるものの, 教科書も発達段階順ツリ-構造のものと発達領域別ツリー 構造のものに大別でき,そのうち発達領域別ツリー構造 の方が多いことがわかった(表4)0 表4教科書の構造(敬) 発達段階頗ツリー構造 発達頗域別 ツリー構造 中学. 0. 2. 高校. 1. 8. また,どちらの構造の教科書であっても,ほとんどの 教科書が,子どもの発達にはいくつかの発達段階と発達 領域があるということがマトリクス麦などの形式でまと められていた(表5)。 表5発達段階×発達領域の表の有無(数). 無. 育. 中学. 0. 2. 高校. 2. 7. この事実とビデオ教材の構造分析結果をふまえると, 現在のビデオ教材は,身体に関する発達領域については 教科書同様に子どもの発達を発達段階と発達領域の両側 面から理解できるようになっているのに対し,精神に関 する発達領域については両方の側面から理解するには適 していない構造であったことがわかる。 (2)発達領域の比較から 同じ出版社の発行するビデオ教材と教科書で取り扱う 発達領域を比較対応させてみた(表6)。 例えば,ビデオ教材Aでは運動に関する領域が教科書 より詳細に設定されいた。このため教科書だけでは理解 しづらい子どもの異体的な姿や行動の様子が,ビデオ教 材を用いることによって,よりよく理解させることがで きるといえる。 一方,精神に関する領域については,教科書では情緒 (感情) ・社会性・知能(ことば)というように分けて 設定されているのに対し,ビデオ教材では情緒しか設定 されていなかった。これは,子どもの行動には情緒・感 情・社会性・知能といった要素が同時に現れるため,ビ. 表3ビデオ教材のAの発達領域別シーン・時間配分 時間. ン′ - 、 !′ 数 手 の働 き 体. 足 の動 き. 36 10 0. 運動機能 心. 情緒 その他 .不明 全体. 秤. %. 35. 2 4 .8 6 9 .0. 29. 2 4 .1. 冗 371. 94 6. 2 0 .0. 3 12. 2 5 .6 6 5 .4. 2 1 .6 1 8 .2. 263. 31. 31. 2 1 .4. 2 1 .4. 43 1. 4 31. 2 9 .8. 2 9 .8. 14. 14. 9 .7. 9 .7. 70. 70. 4 .8. 4 .8. 14 5. 14 5. 1 0 0 .0. 1 0 0 .0. 14 4 7. 14 4 7. 1 0 0 .0. 1 0 0 .0.

(5) 子どもの発達に関する市販ビデオ教材の分析. 表6ビデオ教材と教科書の対応. 教科書 (中学). ビデオ教材A. に充実したビデオ教材を開発すること。. 教科書 (高校). 手の働き 敬 り 上 げ ら れ て い る 発 逮 顔 域. 体. 足の動き. 運動機能 運動. 運動機能 情緒. 心. 情緒. 93. 感情. 社会性. 社会性. ことば. 知能 (ことば 含む). デオ教材としてはシーンの重複をさけるために,そのよ うになっているものと思われる。 この事実とビデオ教材の量的分析の結果をふまえると, 現在のビデオ教材は,身体に関する発達領域については 領域数・シーン数・時間が多いなど量的に充実している 一方,精神に関する発達領域については量的にも十分で はないということがわかった。 Ⅳまとめと今後の課題 子どもの発達に関する市販ビデオ教材分析ならびに教 科書との比較分析から,現在市販されているビデオ教材 の特徴を以下のようにまとめることができる。 1)子どもの発達に関する市販ビデオ教材および教科書 には,発達段階順ツリー構造のものと発達領域別ツリー 構造のものがある。また,発達領域別ツリー構造は, 身体に関する発達領域についてはさらに発達段階順の 2層構造になっている部分がある。 2)身体に関する発達領域については,構造的にも量的 にも充実しており,教科書の内容をより詳細に補いう る内容である。一方,精神に関する発達領域は,教科 書に比べると構造的・量的に充実しているとは言い難 い。. 本研究の結果より,今後の課題として以下の2点が指 摘できる。 1)市販ビデオ教材の特徴を踏まえた授業展開や視聴方 法を提案すること。 2)精神に関する発達領域に焦点をあて,構造的・量的. 引用文献 福留美奈子,生徒が主体的に取り組む保育・教育の学習 を目指して,家庭科教育, 65.5, 113-118, 1991 飯森彬彦,学校放送・多様なメディア利用の中で,放送 研究と調査B.7, 46-61, 1988 伊藤菓子,保育観に及ぼす視聴覚教材の方向性の影響, 日本家庭科教育学会誌, 30.3, 48-53, 1987 伊藤葉子, 「自分をみつめる」授業,家庭科教育, 69.13, 105-113, 1995. 三尾忠夫,映像教材の構造記述カテゴリーの開発と映像 情報の多重性の検討,日本教育工学会論文誌/日本教 育工学雑誌, 21.2, 129-141, 1997 文部省,中学校学習指導要領, 1998a 文部省,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,盲学校, 聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について (答申), 1998b 文部省,高等学校学習指導要領, 1999 文部省,少子化と教育について(中央教育審議会報告), 2000. 武藤八重子,学習目標「乳幼児に対する関心を高める」 における問題性,日本家庭科教育学会誌, 37.1, 4551, 1993. 永田智子・太古千恵美・仲島尚子・門脇千里・松村京子, 高等学校保育領域における乳幼児の発達に関するカー ド式学習法の開発,日本家庭科教育学会誌, 42.4, 2000. 中田佳代子・松村京子,乳幼児の発達に関するコンピュー タ映像教材の開発(第1報) -教材開発のプロセスと 教材の特徴-,日本家庭科教育学会誌, 42. 1, 23-28, 1999. 西森章子,映像メディアの利用による学習指導法に関す る研究,教育メディア研究, 4.1, 13-28, 1997 大路雅子・松村京子,雑誌掲載事例にみる中学・高校生 の乳幼児体験学習の効果と問題点,日本家庭科教育学 会誌, 41.1, 55-62, 1998 太田昌子・北野清美,男女共修による保育学習の試み, 日本家庭科教育学会誌, 27. 1, 66-71, 1983 瀬之ロスミ・山下公子,高等学校における保育教育の研 究I- 「家庭一般」と「保育の現状」 -,日本家庭科 教育学会誌, 8, 17-22, 1965 瀬ノロスミ・福田公子,高等学校における保育教育の研 究-保育学習への態度の再診断と生徒の意識について -,日本家庭科教育学会誌, 15, 43-50, 1974 瀬之ロスミ・福田公子・赤崎真弓・鈴木礼子・吉成ツヤ, 高等学校における保育教育の研究5-KJ法による意 見の把握-,日本家庭科教育学会誌, 22. 1, 52-60,.

(6) 94. 1979. 田口真奈,構造に着目した放送番組の分析研究-NHK 理科番組を事例として-,教育メディア研究, 5.1, 51-63, 1998.

(7) 子どもの発達に関する市販ビデオ教材の分析. 95. Analysis of Commercial Video Materials to Learn Child Development Key words : child development, video material, Junior and senior high schools, home economics. Tomoko NAGATA, Kyoko MATSUMURA The purpose of this study was featuring video materials for Junior and senior high school students to learn child development through the constructive and quantity analysis. The results were as follows :. 1. There were "the developmental stage tree-structure'and "the developmental field tree-structure" in them. And "the developmental field tree-structure had double tree-structure in the only physical developmental field. 2. The physical developmental field was rich in structure and quantity, but psychological development field was poor.. These results suggested that we must propose how to use video materials considering their constructive feature and produce new video material focusing psychological development field..

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