審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 易 凱 審査論文
題 名:Development of heterotopic transplantation of the testis with the epididymis to evaluate an aspect of testicular immunology in rats
(ラットにおける精巣免疫の評価のための異所性精巣・精巣上体移植法の開発)
著 者:Kai Yi, Naoyuki Hatayama, Shuichi Hirai, Ning Qu, Shogo Hayashi, Shinichi Kawata, Kenta Nagahori, Munekazu Naito and Masahiro Itoh
掲載誌:PLOS ONE (in press, 2017)
(審査論文要旨:日本語論文の場合1,000字以内・英語論文の場合500 words)
【背景と目的】
若年男性の抗がん治療による男性不妊症(精子形成障害)が、先進諸国で問題視されてい る。そこで、抗がん治療前の精巣摘出→臓器保存→抗がん治療後の自家移植の方法の模索が 求められている。また、精巣は炎症が惹起されにくい免疫特権を有する器官として知られて おり、これまでに免疫学的な研究・解析を目的として精巣細胞、精巣組織移植が実施され、
多数の報告がされている。一方で、臓器レベルにおける同所性精巣移植は、その移植技術の 難しさから、報告は少ない。そこで我々は、精巣をより簡易的に移植でき、精巣温度が上昇 しない頸部皮下への異所性精巣移植を新たに考案した。
【対象と方法】
頸部皮下への異所性精巣移植の有用性を評価するために、同所性精巣移植との手術時間お よび成功率を検討した。また、拒絶反応を起こさない同系モデル(ドナーLEW ラットの精巣 をレシピエント LEW ラットへ移植)、急性拒絶モデル(ドナーACI ラットの精巣をレシピエ ント LEW ラットへ移植)、慢性拒絶モデル(ドナーF344 ラットの精巣をレシピエント LEW ラットへ移植)の 3 群の異所性精巣移植モデルを用いて、移植から 3 日後に精巣・精巣上体 における組織学的評価を行った。さらに、サイトカイン(IFN-γ、IL-1β、IL-10)、アポトー シス(caspase3、caspase8、caspase9)などの分子生物学的評価についてもそれぞれ比較した。
【結果】
頸部皮下への異所性精巣移植は、同所性精巣移植と比較して、精巣における組織構造およ び造精機能について有意差は認められなかった。しかしながら、異所性精巣移植は有意に手 術時間を短縮し、さらに成功率を向上させた。
異所性精巣移植モデル間における組織学的評価および分子生物学的評価では、急性拒絶モ デルの精巣において、軽度の精巣炎が観察され、サイトカイン(IFN-γ、IL-1β、IL-10)お よびアポトーシス(caspase3、caspase8)関連遺伝子のmRNA発現量の増加が認められた。一 方、慢性拒絶モデルは、障害は見られず、同系モデルと有意な差は認められなかった。
【結語】
これらの結果より、我々が考案した新たな異所性精巣移植は、精巣の実験移植モデルとし て有用であることが示唆された。
東 京 医 科 大 学