甲突川の河辺植生
寺 田 仁 志
甲突川は八重山(677m)麓の鹿児島市郡山町字菅牟田にある甲突池 を起点とし,河川延長26km,鹿児島市の中心部を分断するように錦江 湾に注ぎ込む。流域面積は106k㎡,鹿児島県が管理する二級河川である。
本河川には江戸期につくられた5基の石橋が架かっていたが,1993年 8月6日,降り続いた豪雨によって増水し激流となって2つの石橋を壊 して川は氾濫し,流域に多大な被害をもたらした。その後,激甚災害法 の指定を受けた補助事業で,全ての石橋を取り去って,当時の多自然型 工法,親水護岸などを導入して河川改修を行った。
かつて両岸には堆積砂や中洲もあり,その上に河辺植生が覆っていた が,有効河道断面を増加させる河川改修によって一変した。河床は浚渫 され,両岸に大岩角の石積み遊歩道高水敷がつくられ,都市型河川とな り,一時,河辺から緑が消えるほどであった。その後,時間とともに植 生が回復すると,市街地では美観が損なわれるとの理由等で高水敷遊歩 道に生えた植物は定期的に除去されている。
甲突川を管理する鹿児島地域振興局が把握している甲突川の河辺植生 についての調査報告例は無いが,筆者が河川改修直前から実施している 調査データに基づいてその概要について報告する次第である。
1 調査方法および調査期間
植生を包括的に把握するには Braun − Blanquet の全推定法が適する。
河口部から源流部までの区間を踏査し,植物相調査と特徴的な河辺植生 について134地点の植生調査を実施し,66の植生単位について確認した。
(表1)。調査は水害が起こり河川改修が計画された1995年より開始し,
2009年までの間調査は行われた。
表1 調査群落
甲突川河辺植生の調査日と調査地点 分類 群落
番号 群落名 調査地点 調査
番号 調査日
渓流辺植 物群落
1 アキカサスゲ群落
草牟田橋-原良橋 右岸 18 2004/9/12 新村橋-高速高架橋 右岸 46 2004/10/11 小浦~上常盤 中洲 78 2009/9/28 河頭浄水場近く 右岸 100 1995/11/19 若竹橋-河頭大橋 右岸 123 2008/12/12 2 セキショウ群落
新村橋-高速高架橋 右岸 47 2004/10/11 小浦~上常盤 中洲 79 2009/9/28 河頭浄水場近く 右岸 99 1995/11/19 若竹橋-河頭大橋 左岸 127 2008/12/12 3 ネコヤナギ群落 若竹橋-河頭大橋 右岸 122 2008/12/12
流 水 辺1 年生・越 年生植物 群落
4 アメリカセンダングサ-ホ ウキギク群落
鶴尾橋-草牟田橋 右岸 22 2004/9/25 田中宇都橋-お寺橋 右岸 35 2004/9/25 河頭大橋-ひまわり橋 右岸 96 1995/11/19 草牟田橋-原良橋 右岸 108 2009/10/14 5 オランダガラシ群落 小山田町馬山轟橋上流 左岸 71 2009/9/27
郡山町上常盤柴立橋 中洲 81 2009/9/28
6 ミゾソバ群落
草牟田橋-原良橋 右岸 17 2004/9/12 玉江橋-護国橋 右岸 27 2004/9/25 お寺橋-岩崎橋 右岸 34 2004/9/25 肥田橋-新村橋 右岸 42 2004/10/11 郡山町上常盤柴立橋 中洲 80 2009/9/28 若竹橋-河頭大橋 左岸 124 2008/12/12
7 ヤナギタデ群落
新上橋-平田橋 右岸 13 2004/9/12 玉江橋-護国橋 中洲 30 2004/9/25 玉江橋-護国橋 左岸 33 2004/9/25 肥田橋-新村橋 右岸 44 2004/10/11 平田橋-西田橋 右岸 102 2009/10/14 新上橋-平田橋 右岸 105 2009/10/14 若竹橋-河頭大橋 左岸 132 2008/12/12
流水辺多 年生植物 群落
8 エゾノサヤヌカグサ群落 護国橋-鶴尾橋 右岸 115 2009/10/14 9 オギ群落 護国橋-鶴尾橋 右岸 111 2009/10/14 岩崎橋-栄門橋 左岸 118 2009/10/14
10 キシュウスズメノヒエ群落
松方橋-天保山橋 左岸 6 2004/9/12 鶴尾橋-草牟田橋 右岸 23 2004/9/25 ひまわり橋-飯山橋 右岸 61 2004/10/11 河頭大橋-ひまわり橋 右岸 97 1995/11/19 若竹橋-河頭大橋 左岸 131 2008/12/12 11 クワレシダ群落 岩崎橋-栄門橋 左岸 117 2009/10/14 12 コバノウシノシッペイ群落 新村橋-高速高架橋 左岸 51 2004/10/11 13 ジュズダマ群落 郡山町上常盤柴立橋 中洲 82 2009/9/28 14 セイコノヨシ群落 ひまわり橋-飯山橋 右岸 54 2004/10/11 15 セリ-クサヨシ群落 ひまわり橋-飯山橋 右岸 56 2004/10/11 ひまわり橋-飯山橋 右岸 59 2004/10/11
16 ツルヨシ群落
草牟田橋-原良橋 右岸 16 2004/9/12 原良橋-昭和橋 右岸 19 2004/9/12 護国橋-鶴尾橋 右岸 25 2004/9/25 肥田橋-新村橋 右岸 43 2004/10/11 ひまわり橋-飯山橋 中洲 62 2004/10/11 河頭橋-若竹橋 右岸 91 1995/11/19 河頭大橋-ひまわり橋 右岸 98 1995/11/19 若竹橋-河頭大橋 左岸 128 2008/12/12
分類 群落
番号 群落名 調査地点 調査
番号 調査日 沈水植物
群落
17 エビモ群落 飯山橋-肥田橋 右岸 74 2009/9/28 18 オオカナダモ群落
飯山橋-肥田橋 右岸 37 2004/10/11 ひまわり橋-飯山橋 左岸 63 2004/10/11 小山田町馬山轟橋上流 河川中 68 2009/9/27 浮水植物
群落
19 オオフサモ群落 栄門橋-玉江橋 左岸 31 2004/9/25 20 ボタンウキクサ群落 小山田町馬山轟橋下流 右岸 67 2009/9/27 小山田町馬山轟橋上流 左岸 72 2009/9/27
挺水植物 群落
21 キショウブ群落 護国橋-鶴尾橋 右岸 114 2009/10/14 22 ヒメガマ群落 鶴尾橋-草牟田橋 右岸 109 2009/10/14 護国橋-鶴尾橋 右岸 113 2009/10/14 23 メリケンガヤツリ群落 原良橋-昭和橋 右岸 107 2009/10/14 平田橋-西田橋 右岸 103 2009/10/14 24 ヨシ群落 岩崎橋-栄門橋 左岸 116 2009/10/14
冠水草原 植 物 群 落・在来 1年 生 植 物群落
25 イボクサ群落 鶴尾橋-草牟田橋 右岸 24 2004/9/25
26 オヒシバ-メヒシバ群落
平田橋-西田橋 右岸 10 2004/9/12 飯山橋-肥田橋 右岸 39 2004/10/11 新上橋-平田橋 右岸 104 2009/10/14 お寺橋-岩崎橋 左岸 119 2009/10/14 27 カナムグラ群落 玉江橋-護国橋 右岸 28 2004/9/25
護国橋-鶴尾橋 右岸 110 2009/10/14 28 ツユクサ群落 飯山橋-肥田橋 右岸 40 2004/10/11 29 ヌカキビ群落 高速高架橋-梅ヶ淵橋 右岸 48 2004/10/11 ひまわり橋-飯山橋 右岸 60 2004/10/11
冠水草原 植 物 群 落・在来 多年生植 物群落
30 イタドリ群落
原良橋-昭和橋 右岸 20 2004/9/12 武之橋-松方橋 右岸 86 2009/10/5 若竹橋-河頭大橋 右岸 93 1995/11/19 31 イヌドクサ群落 玉江橋-護国橋 左岸 32 2004/9/25
若竹橋-河頭大橋 右岸 94 1995/11/19 32 カラムシ群落 新村橋-高速高架橋 左岸 50 2004/10/11 33 ギシギシ群落 天保山-天保山大橋 左岸 3 2004/9/12 34 ギョウギシバ群落 松方橋-天保山橋 左岸 5 2004/9/12 高麗橋-甲突橋 右岸 8 2004/9/12 35 ススキ群落 若竹橋-河頭大橋 左岸 134 2008/12/12
36 チガヤ群落
高麗橋-甲突橋 右岸 7 2004/9/12 昭和橋-新上橋 左岸 15 2004/9/12 肥田橋-新村橋 右岸 45 2004/10/11 甲突橋-武之橋 右岸 85 2009/10/5 西田橋-高見橋 左岸 101 2009/10/14
37 ヨモギ群落
飯山橋-肥田橋 右岸 38 2004/10/11 河頭大橋-ひまわり橋 右岸 57 2004/10/11 飯山橋-肥田橋 右岸 75 2009/9/28 若竹橋-河頭大橋 左岸 126 2008/12/12 冠水草原
植 物 群 落・帰化 1年 生 植 物群落
38 オオイヌタデ群落 飯山橋-肥田橋 右岸 76 2009/9/28 39 オオオナモミ群落 河頭大橋-ひまわり橋 右岸 58 2004/10/11 40 オオブタクサ群落 ひまわり橋-飯山橋 左岸 65 2004/10/11 飯山橋-肥田橋 右岸 73 2009/9/28 41 ヒメムカシヨモギ群落 田中宇都橋-お寺橋 左岸 120 2009/10/14 42 ブタクサ群落 松方橋-天保山橋 左岸 84 2009/10/5
分類 群落
番号 群落名 調査地点 調査
番号 調査日
冠水草原 植 物 群 落・帰化 多年生植 物群落
43 オオクサキビ群落 新上橋-平田橋 右岸 21 2004/9/12 昭和橋-新上橋 左岸 106 2009/10/14
44 シナダレスズメガヤ群落
平田橋-西田橋 右岸 11 2004/9/12 玉江橋-護国橋 右岸 26 2004/9/25 ひまわり橋-飯山橋 左岸 64 2004/10/11 若竹橋-河頭大橋 左岸 125 2008/12/12 45 セイタカアワダチソウ群落 お寺橋-岩崎橋 左岸 36 2004/9/25
肥田橋-新村橋 左岸 52 2004/10/11 46 セイバンモロコシ群落 梅ヶ淵橋-田中宇都橋 左岸 121 2009/10/14 47 タチスズメノヒエ群落 新上橋-平田橋 右岸 12 2004/9/12 冠水草原
低木林
48 イタチハギ群落 武之橋-松方橋 右岸 87 2009/10/5 49 ヤナギバルイラソウ群落 新上橋-平田橋 右岸 14 2004/9/12
塩沼地植 物群落
50 ナガミノオニシバ群落 松方橋-天保山橋 左岸 83 2009/10/5 51 ハイキビ群落 天保山-天保山大橋 左岸 1 2004/9/12 松方橋-天保山橋 左岸 4 2004/9/12 52 ヨシ群落 松方橋-天保山橋 右岸 89 2009/10/5 松方橋-天保山橋 右岸 90 2009/10/5 砂丘地植
物群落
53 ケカモノハシ群落 松方橋-天保山橋 右岸 88 2009/10/5 54 コウライシバ群落 天保山-天保山大橋 左岸 2 2004/9/12 55 ハマスゲ群落 松方橋-天保山橋 右岸 9 2004/9/12
崖地植物 群落
56 イタチガヤ-ホラシノブ群落 若竹橋-河頭大橋 中州 ( 凝灰
岩 ) 凝灰岩 66 2004/10/11 57 コアカソ群落 肥田橋-新村橋 右岸 41 2004/10/11 58 ハチジョウカグマ群落 小浦~上常盤 右岸 77 2009/9/28 59 ヒメツルソバ群落 高速高架橋-梅ヶ淵橋 左岸 49 2004/10/11
若竹橋-河頭大橋 左岸 133 2008/12/12
林縁植物 群落
60 クズ群落 肥田橋-新村橋 左岸 53 2004/10/11 61 ツルマメ群落 護国橋-鶴尾橋 右岸 112 2009/10/14 62 ノイバラ群落 ひまわり橋-飯山橋 右岸 55 2004/10/11 若竹橋-河頭大橋 左岸 130 2008/12/12 63 マルバアサガオ群落 玉江橋-護国橋 右岸 29 2004/9/25
竹林
64 ホウライチク群落 河頭橋-若竹橋 右岸 92 1995/11/19 若竹橋-河頭大橋 左岸 129 2008/12/12 65 マダケ群落 小山田町馬山轟橋上流 右岸 69 2009/9/27 66 メダケ群落 小山田町馬山轟橋上流 左岸 70 2009/9/27 河頭大橋-ひまわり橋 右岸 95 199511/19
※群落組成表は紙面の関係で割愛した。
2 甲突川流域の植生分布概要
甲突川は源流の甲突池から上常盤までは南に向かって流れ,上常盤か らは南東に向かって錦江湾に向かって流れ込む。上常盤までの区間はス ギ植林やアラカシ林,先駆性の落葉広葉樹林等の森林によって閉塞され 河道が見えないことも多い。河道が見えるところは溶結凝灰岩が石畳状 になり,岩隙にセキショウやアキカサスゲの群落が点在する。河川の両
端は道路辺や耕作地を除き自然護岸のところが多く,渓流辺の急崖地に はハチジョウカグマ等の優占する群落が分布する。上常盤〜小山田は河 床の傾斜が緩やかになり,川は小さく蛇行を繰り返す。この間はほとん どが二面側溝状の護岸になり盆地周辺から流水によって運ばれた礫や砂 が河川内に堆積する。
甲突川概念図
このため急激に増水しても砂礫中に根を張って地上部を支えるツルヨ シ,セイコノヨシ,ジュズダマ等の多年生植物群落や流れが緩やかに なったところではミゾソバなどの1年生の渓流辺植物群落が発達してい る。この間に郡山保育園付近で雑田川,郡山で油須木川,塚田で川田川 と合流して河川幅が大きくなっていく。流れが緩やかになった流水中に はオオカナダモの群落が発達し,さらに流速が遅くなり止水状になった ところにボタンウキクサやホテイアオイ等の小規模な群落も出現する。
塚田を過ぎると狭窄部になり山が迫った中を川は流れる。塚田と河頭 間は1993年の水害では大規模な河床洗屈が起こり,洗屈のあった区間は 河川改修の結果三面張り水路状になり,セキショウ等の渓流辺植物群落 が点在する。付近はスギ植林やマダケ林が多い。
河頭から肥田橋間は傾斜があり流速も速い。このため,ツルヨシ群落 によって広く占められている。
肥田橋から原良橋間は河床の傾斜も緩やかになり川はゆったり流れ る。このため群落種も多様になり,また養分も濃縮されセイコノヨシ,
オオブタクサ,セイタカアワダチソウ,カナムグラ,オギ等大型の植物 群落が形成される。
原良橋付近が感潮点にあたり,大潮の満潮時に海水が侵入する末端と 考えられる。このため海水に対する耐性の少ない種は河辺に少なくな り,ハイキビ群落が増加し,ナガミノオニシバ群落等も見られ,河口付 近にはヨシ群落も小規模ながら分布する。
甲突川起点の甲突池 上流部 小浦付近のスダジイ二次林
河頭橋上流の魚道とツルヨシ群落 植生豊かな飯山橋付近
植生を見つけにくい西田橋より下流域 梅ヶ淵橋近くで遊ぶ子どもたち
植生護岸としても利用された河頭のホウライチク群落 鶴尾橋付近でもしばしば観察されるアオサギ
3 植生の概要
(1)渓流辺植物群落 流れの速い主に岩隙地や大礫地に立地に成立す る植物群落。甲突川では源流域から河口部まで広い区間分布する。
1 アキカサスゲ群落 アキカサスゲは高さが80cm になるカヤツリグ サ科の多年生植物で,源流部から原良橋までの低水護岸の石垣や自然石 の岩隙地で砂や小礫のある立地に塊状の群落をつくる。
2 セキショウ群落 セキショウはサトイモ科の多年生植物でがっしり とした根茎を岩の間に侵入させる。葉が厚く流線型で急激な増水にも耐 えられる。本群落は源流部から肥田橋までの低水護岸の石垣や自然石の 岩隙地に沿ってセキショウ1種が優占する小規模な群落をつくる。
3 ネコヤナギ群落 高さ1m 前後のネコヤナギが優占する低木群 落で,河頭中学校前の右岸側で1×2㎡前後の小群落が1カ所だけ確認 された。増水時は流れの速い岩上岩角地に群落は成立していた。
(2)流水辺植物群落 緩やかな流れに沿って形成される湿生植物群落。
小礫地から砂地,泥地に成立する。
(2)-1 流水辺1年生・越年生植物群落
4 アメリカセンダングサ−ホウキギク群落 高さが1m を越えるア メリカセンダングサ(キク科)やホウキギクが優占する群落で,肥沃な 泥湿地に成立し混在する種も多い。柴立橋から新上橋間の泥湿地では一 般的な群落である。
5 オランダガラシ群落 ヨ−ロッパ,中央アジア原産のアブラナ科越 年生植物で,ミズガラシ,クレソンとも呼ばれ,緩やかな流水中に群落 をつくる。冬季から春季はミゾソバやヤナギタデ等の流水辺の植物が活 性を失うため広く分布するが,夏季から秋季は分布地が少ない。柴立橋 から鶴尾橋付近まで春季は見られるが,夏季は柴立橋から轟橋までの上 流部のやや水温が低いところに限定されているようである。
6 ミゾソバ群落 流れがやや緩やかな流水辺の泥地に80cm 前後のミ ゾソバがびっしりと優占した群落を造る。上常盤付近から新上橋まで分 布し,秋には白からピンクの花を咲かせ鮮やかである。
7 ヤナギタデ群落 高さ0.5m 前後のヤナギタデが緩やかな流路の砂 地から泥地までの立地に群落をつくる。上常盤付近から新上橋まで低水 敷や河床に分布する。晩秋には紅葉して群落全体が赤く染まり,遠方か
ら難なく見分けがつく。
(2)-2流水辺多年生植物群落
8 エゾノサヤヌカグサ群落 間接部に微少な鋭いトゲを持つエゾノサ ヤヌカグサ(イネ科)が優占する1m 程度の高さの群落で,泥湿地に 形成される。分布は鶴尾橋から護国橋間の右岸側に限定され,規模は2 m 四方程度と狭小である。
9 オギ群落 長時間の冠水に耐えるイネ科ススキ属のオギが優占する 群落で,これまで甲突川では分布が知られていなかったが,鶴尾橋から 護国橋間の右岸側,栄門橋から岩崎橋間の左岸側にいずれも2×5㎡程 度の群落を確認した。石積み高水敷上に貯まった砂地や低水敷の河原の 砂地に生える。ススキとよく似るが,成熟した花穂が純白であるのでこ の時期に遠くからでも判別ができる。
10 キシュウスズメノヒエ群落 高さ20から40cm 前後の熱帯原産のイ ネ科植物であるキシュウスズメノヒエが,地表から水面を這うように分 布する。柴立橋から天保山橋付近までの流れの緩やかな砂地から泥地に 群落をつくる。
11 クワレシダ群落 クワレシダは名の通り生食可能なシダで,日本で は鹿児島県本土だけに分布するといわれる。クワレシダ群落は高さ1m 前後のクワレシダがびっしりと生える。栄門橋から岩崎橋間の左岸側の 高水敷法面で小規模な群落を確認した。
12 コバノウシノシッペイ群落 コバノウシノシッペイ(イネ科)は湿 地に生える植物で,チゴザザやミゾソバ,イボクサ等を伴って水田放棄 地や河辺の泥湿地に群落をつくる。泥湿地の少ない甲突川では分布は少 なく,飯山橋上流の右岸側で小規模な群落を確認した。
13 ジュズダマ群落 ジュズダマ(イネ科)は東南アジア等の熱帯原産 で,かつては薬用に栽培されていたといわれる。本群落は2m 前後の ジュズダマがびっしりと優占する群落で,甲突川でも上流の柴立橋付近 の中洲や新村橋の上流左岸側の低水敷に小規模な群落をつくっている。
14 セイコノヨシ群落 セイコノヨシ(イネ科)は高さが3m 達する 植物で,湿地や湿潤な環境に出現する。甲突川では最も普通に見られる ヨシ属で河口域から上流までの流水辺に見られる。流れの速いところで は流水辺のツルヨシ群落に隣接して群落をつくっている。また,流路か
ら離れても湿潤な環境であればびっしりと繁った群落を形成する。
15 セリ−クサヨシ群落 クサヨシ(イネ科)が優占する群落で,水田 放棄地など泥湿地に群落をつくる。甲突川では湿地環境は少なくひまわ り橋や鶴尾橋近傍で散見される程度である。
16 ツルヨシ群落 高さ1m 前後のツルヨシが砂礫地や岩地の割れ目 などに根を張ってびっしりと優占する群落をつくる。源流部から下流は 新上橋付近まで流れの速いところに広範囲に分布するが,特に岩崎橋か ら上流側で大きな群落になる。
(3)沈水植物群落 植物体が完全に水没した立地に成立する植物群落 で,茎は柔らかく,地上では直立できない植物からなる。止水域が少な い小河川では群落の種も少なく発達しない。
17 エビモ群落 エビモ1種が優占する群落で肥田橋の上流で確認し た。面積は0.5㎡と狭小。
18 オオカナダモ群落 外来生物のオオカナダモ1種が優占する群落。
流速が弱く,感潮点より上流で深さが0.5m 以上の区間に形成される。
郡山から小山田間,飯山橋付近は特に密度が高い。
(4)浮水植物群落 水面に浮く植物群落で,中・下流の止水域に発達 する。甲突川では外来生物法で栽培が規制されている特定外来生物2種 の群落があるが,きわめて狭小である。
19 オオフサモ群落 南米原産の浮水生の植物で浅いところでは茎から 発根し泥地に根を伸ばす。他の植物が冬枯れの中,淡緑色の群落が目を 引く。梅ケ淵橋から原良橋間の流速の緩やかな河岸辺に点々と塊状に分 布する。
20 ボタンウキクサ群落 ボタンウキクサは南アフリカ原産と言われる 浮水性の植物でウオーターレタスとも呼ばれる。轟橋付近の水のよどん だところに生育している。規模は2m 四方前後と小さい。
(5)挺水植物群落 茎葉を水面から直立させる植物群落で養分の多く 流速の弱い止水域に発達する。
21 キショウブ群落 ヨーロッパから西アジア原産の帰化植物で,高さ 1.5m前後のキショウブが優占する群落。護国橋から鶴尾橋の右岸側で 水路状になったところに1カ所1×5㎡前後のキショウブが優占する群 落を確認した。
22 ヒメガマ群落 護国橋から草牟田橋間右岸側でごく小規模な群落を 2地点で確認した。面積は0.5×3㎡,高さは1m 前後でヒメガマが1 種が優占する。
23 メリケンガヤツリ群落 高さ1.0m 前後の南米原産のメリケンガヤ ツリが優占する群落で,泥土上に成立する。鶴尾橋から新上橋間の右岸 側で1×2㎡前後の群落を数カ所確認した。
24 ヨシ群落 ヨシは河口部の汽水域ばかりでなく,泥土の貯まった止 水域に2m 前後のヨシが優占する群落をつくる。岩崎橋から栄門橋間 の左岸側で1×2㎡の群落を1地点のみで確認した。
(6)冠水草原植物群落 増水時に定期的に冠水する立地に成立する群 落で,甲突川では中・下流部の石積み護岸の高水敷上や河岸に成立する。
(6)-1(在来1年生植物群落)
25 イボクサ群落 高さ20cm 前後のイボクサ(ツユクサ科)が泥質地 に優占する群落で小規模な群落となる。低水敷に広がり,湿地ができる ところに形成される。甲突川では護国橋から鶴尾橋間で確認された。規 模は1㎡程度と狭小。
26 オヒシバ−メヒシバ群落 高水敷上や中州上の砂地に形成される。
1年生の空き地雑草のオヒシバ,メヒシバなどが優占し,園芸種のケイ トウやポーチュラカ,ムシトリナデシコ等も混在する。
27 カナムグラ群落 河原に生える1年生ツル植物のカナムグラが他植 物に覆い被さる群落である。カナムグラの下層はツルヨシやセイコノヨ シであったり,外来のイネ科植物であったりする。春季は狭小であるが 秋口に発達する。上常盤から原良橋付近まで分布する。
28 ツユクサ群落 高さ30cm 前後のツユクサが優占する植分で,流れ の緩やかになった泥地に成立する。どの地点でも規模は1㎡程度と狭 小。
29 ヌカキビ群落 砂地から泥地に高さが1m にもなるイネ科植物の ヌカキビが優占する群落が成立する。上流部から河口部まで分布する。
(6)-2(在来多年生植物群落)
30 イタドリ群落 イタドリ(タデ科)が岩角地や河原の礫地等の乾燥 地や壌土で固められた護岸上に優占する高さ1.5m の群落をつくる。甲 突川では上流から河口域まで見られるが,いずれも狭小な群落である。
高麗橋から松方橋右岸の護岸上で幅2×5㎡程度の群落が確認された。
31 イヌドクサ群落 葉は繁らず茎に葉緑体を持つシダ植物のイヌドク サが優占する群落で植生の高さは0.5〜1m。高水敷護岸に砂あるいは 泥土が貯まったところに群落をつくる。
32 カラムシ群落 カラムシ(イラクサ科)は木質化した地下茎が発達 する植物で,石垣の間や路傍等に群落をつくる。本群落はカラムシが優 占する群落で堤防上に散見される。
33 ギシギシ群落 ギシギシ(タデ科)は好窒素性の植物で,生活排水 が流れ込む富栄養な都市型河川で,水がよどみ有機物が堆積しやすい立 地にギシギシが優占する群落が発達する。甲突川流域では下水道が完備 され,生活廃水が流れ込む部分が少なく,富栄養な立地が少ないせいか 河口域の天保山橋から新天保山橋左岸側に数カ所確認した程度である。
34 ギョウギシバ群落 ギョウギシバは乾湿の差が大きな校庭や空き地 の砂地に群落をつくる。河川では同様に堆砂地となる中流域に成立しや すいが,甲突川では石積み護岸上に貯まった砂地上に群落をつくる。河 口部の高麗橋より下流でやや規模の大きな群落が成立し,岩崎橋周辺で も小規模な群落を目にする。
35 ススキ群落 ススキ(イネ科)はススキが優占する群落で路傍植生 としては普遍的な群落で,道路辺等で年1回から数年ごとの刈取りに適 応し大きな群落をつくる。長時間の冠水には耐えられず,河川内では群 落をつくれないが,冠水後すぐに干上がるところでは群落を形成でき る。
36 チガヤ群落 チガヤ(イネ科)は刈り取りや火入れに抵抗性があ り,年間1〜2回程度であれば地上部を衰退させることなく群落を維持 する。このため刈り取りが行われる壌土護岸上や飼料として路傍で植生 を刈り取っているところでは,次第に本群落に変わっていく。甲突川で も護岸上や高水敷上でも分布し河頭付近から河口域まで分布している。
37 ヨモギ群落 高さ1m程度のヨモギが優占して生える群落で,低水 敷と高水敷の石の割れ目や土が堆まったやや湿潤な環境に形成される。
(6)-3(1年生帰化植物群落)
38 オオイヌタデ群落 乾湿の差が大きな小礫地から砂地に成立してい る群落で,オオイヌタデ,ケアリタソウ,ケナシヒメムカシヨモギなど
の1年生の帰化植物の被度が高い。ヤナギタデ群落やオオブタクサ群落 に隣接する。多年生植物も混じるが被度は70%前後と高くなく,増水後,
無植生になった立地に一年生植物が進出した群落である。
39 オオオナモミ群落 付着散布する大型種子をもつオオオナモミ(キ ク科)が優占する群落で,肥沃な泥地等に成立する。肥田橋から田中宇 都橋間に点々と分布する。2004年には護国橋から鶴尾橋間にも分布して いたが,現在はオオブタクサ群落に押され,激減している。
40 オオブタクサ群落 北米原産の4m にもなるオオブタクサ(キク 科)が優占する群落で低水敷に大きな群落をつくる。5年前の調査では 河頭大橋から岩崎橋間に点々と分布していたが,現在は下流側に広がり 新上橋までの間に両岸ともに大きな群落を形成している。セリ−クサヨ シ群落やセイコノヨシ群落が成立する広い立地に進出したものと思われ る。
41 ヒメムカシヨモギ群落 ヒメムカシヨモギやケナシヒメムカシヨモ ギ,オオアレチノギク等の北米原産のキク科植物が優占する高さ1〜2 m の群落で,遊歩道護岸上の乾燥した砂地から壌土上に群落を形成す る。田中宇都橋からお寺橋間の左岸側で確認した。
42 ブタクサ群落 高さ1m 前後のブタクサが優占する群落で,砂地 から壌土上に成立する。松方橋から天保山橋間の左岸側で確認した。
2004年の調査では岩崎橋周辺でも確認されたが,今回は,松方橋から天 保山橋間の左岸側以外では確認できなかった。
(6)-4(多年生帰化植物群落)
43 オオクサキビ群落 オオクサキビ(イネ科)は北アメリカ原産の植 物で,砂質から壌土に群落を形成する。上常盤から新天保山橋にかけて 広く分布するが新上橋周辺に広く見られる。
44 シナダレスズメガヤ群落 シナダレスズメガヤ(イネ科)は南アフ リカ原産の多年生草本で乾燥に強く,土壌の緊縛力が強い。このため道 路や造成地の法面保護のためにしばしば播種される。そこから逸出して 河川に流入し,砂地に特異的に群落を形成している。甲突川でも高水敷 上に貯まった砂地に群落を形成している。ひまわり橋から河口域までの 石積みの遊歩道上や河岸の堆砂地に群落を形成している。
45 セイタカアワダチソウ群落 セイタカアワダチソウ(キク科)は北
米原産で根から成長阻害物質を出し,他植物の生育を阻害することで,
同種が優占する群落をつくる。セイコノヨシ群落が成立する環境に進出 し,秋には河辺を黄色に染めるほど大きな群落をつくる。ひまわり橋か ら新上橋付近まで比較的大きな群落をつくっているが,近年はより湿潤 な環境を好むオオブタクサに押され分布域を狭めている。
46 セイバンモロコシ群落 セイバンモロコシ(イネ科)は地中海原産 といわれる植物で,牧草として導入されたものが逸出して路傍や河川に 群落を形成している。梅ヶ淵橋から田中宇都橋間の左岸側に2×8㎡前 後の群落を確認した程度で甲突川では現在のところ狭小である。
47 タチスズメノヒエ群落 タチスズメノヒエ(イネ科)は南米原産の 荒れ地に生える多年性の牧草として移入したものが逸出して広がり,群 落を形成している。本群落は乾湿の差が大きな立地にタチスズメノヒエ が優占する群落で,河辺では一般的な群落となっており,天保山橋より 上流の石積み遊歩道護岸上では普通に見られる。
(6)-4(低木林)
48 イタチハギ群落 イタチハギは北米・メキシコ原産の落葉低木でマ メ科の窒素固定能力に着目され,道路法面などの浸食防止のために播種 され,高さ数 m の群落をつくる。武之橋から松方橋間の右岸で大きな 群落を形成している。
49 ヤナギバルイラソウ群落 ヤナギバルイラソウ(キツネノマゴ科)
はメキシコ原産の低木で,梅雨期から夏にかけて次々と鮮やかな青紫色 の花を咲かせ結実する。種子ははじけて飛び水に触れると粘着性がま す。本群落はヤナギバルイラソウが高さが50cm 前後となって低水護岸 の岩隙地に優占する。日当たりのよい河岸だけでなく,鶴尾橋や岩崎橋 の橋脚部など日当たりの悪いところでも群落を形成している。
(7)塩沼地植生 潮の干満によって海水が侵入する汽水域に発達する 植物群落。甲突川では草牟田橋から原良橋の間に感潮点があり,河口か ら感潮点までの区間で砂地から泥地に成立している。
50 ナガミノオニシバ群落 高さ15cm 前後のナガミノオニシバがびっ しりと優占する群落で,天保山橋から新天保山橋の左岸の高水敷上で確 認した。規模は5×2㎡前後。
51 ハイキビ群落 高さ60cm になるハイキビがびっしりと優占する群
落で,武之橋より下流の両岸に多いが,特に松方橋より下流側では高水 敷上に大面積占める。
52 ヨシ群落 1m 前後のヨシが優占する群落で,河口部に泥質地が 発達しないため規模,群落の高さ等貧弱である。挺水植物群落のヨシ群 落とは構成種が少ないことで区分される。
(8)砂丘地・岩上地植生 河口域の砂丘地や石積み護岸の岩上地に形 成される植物群落。甲突川は河口部も直線上で海に向かって鋭角状に開 出するため砂丘が発達せず,群落も貧弱である。
53 ケカモノハシ群落
高さ1m 前後のケカモノハシが塊状になって優占する群落で,高水 敷上に貯まった砂の上に成立している。松方橋から天保山橋間右岸側で 確認された。規模は1×3㎡前後と狭小である。
54 コウライシバ群落 公園等から逸出した高さが3cm 前後のコウラ イシバがびっしりと優占する群落で,新天保山橋から天保山橋の両岸の 大岩角高水敷上で確認した。規模は5×2㎡前後。
55 ハマスゲ群落 高さ20cm 前後のハマスゲが優占する群落で,新天 保山橋から天保山橋の左岸の高水敷上に貯まった砂地に確認した。規模 は2×2㎡前後。
(9)崖地植物群落 シラス崖地や石積み堤防法面,中洲の岩地上に発 達する群落で源流部から上流部に多く見られる。
56 イタチガヤ−ホラシノブ群落 乾湿の差が大きな岩上崖地に高さが 20cm 前後イタチガヤ(イネ科)が優占する群落が得られた。若竹橋周 辺の溶結凝灰岩と思われる中洲の岩上地に群落は形成されていた。
57 コアカソ群落 コアカソ(イラクサ科)は木質化する多年生草本で,
岩角地に小規模な群落をつくる。甲突川では石積みの高水敷遊歩道を造 成しているため,この石の間に入り込み群落化しているものが新上橋よ り上流で散在している。
58 ハチジョウカグマ群落 ハチジョウカグマは2m にもなる大型の シダ植物で,岩錘地に群落をつくる。シラス崖が多い鹿児島では普遍的 な群落で,源流部から河頭までの湿潤な崖地では両岸にしばしば見られ る。
59 ヒメツルソバ群落 ヒメツルソバ(タデ科)はヒマラヤ原産でロッ
クガーデンに使われる綿毛植物の1つで,コンクリートの崖やその底部 の乾燥かつ貧栄養の立地に群落をつくる。新村橋から梅ケ淵橋間の左岸 側護岸上に比較的大きな群落があった。
(10)林縁植物群落 蔓植物や低木を中心とした群落で,一般に林の入 口に成立するが,河辺では上流や渓流部の林に接する区間に多く,中・
下流では冠水草原の末端部にみられる。
60 クズ群落 クズ(マメ科)は南九州に広く勢力を張る蔓植物で,成 長が速く,広いクズの葉に被われてしまうと被陰され,植物は活性を失 うため,クズの大規模な群落になることが多い。河辺は林縁と同様,ク ズにとっては勢力を拡大しやすい環境であり,肥田橋上流ではしばしば 見られるが,長時間の冠水には弱く河川内では群落はほとんどつくられ ない。
61 ツルマメ群落 ツルマメ(マメ科)はクズを小型化したような植物 で河辺内で,しばしば群落を形成する。チガヤやセイタカアワダチソウ などに巻き付き勢力を広げる。護国橋から鶴尾橋間の左岸で確認した。
62 ノイバラ群落 伐採や崩落等表土に擾乱が起こったとき蔓植物とそ れに対抗する刺植物の群落が形成される。河岸は増水によって表土の攪 乱がしばしば起こるが,そこにバラ科植物のノイバラやテリハノイバラ が優占する群落がつくられている。ひまわり橋から飯山橋間の左岸側に ある湿潤な壌土法面に群落が確認された。
63 マルバアサガオ群落 マルバアサガオ(ヒルガオ科)は熱帯アメリ カ原産で日本には観賞用として江戸時代に渡来した。近年野生化したも のが群落を形成しているといわれる。肥田橋から岩崎橋間の左岸側で確 認された。
(11)竹林 植栽された竹や自然に生えたササ等が優占する低木から亜 高木林で下記の群落の他,塚田から河頭間でモウソウチク群落,轟橋か ら郡山間でホテイチク群落も分布している
64 ホウライチク群落 ホウライチクは東南アジア原産のバンブーで,
地下茎は長く這わず叢生する。高さは8m 前後になり横に広がらず,
川の洗屈に抵抗性があるため水当たりの強いところに植栽され,鹿児島 では植生護岸として重宝してきた。塚田から河頭間の左岸側では見事な 群落が見られる。また,お寺橋から上流左岸側の石積み遊歩道の河岸側
には点々と分布(植栽)している。
65 マダケ群落 マダケは高さが15m 前後にも成長する日本原産とも 中国原産とも言われる竹で,湿潤な環境では成長が大きい。塚田から河 頭間の右岸側では大きな群落が見られる。また,轟橋上流の右岸側の水 田放棄地でも確認された。轟橋上流の群落ではマダケ以外の高木層は発 達せず,低木層や草本層の発達も貧弱であった。
66 メダケ群落 メダケは高さが5m 前後のササで,河川においては 氾濫した場所等に群落をつくる。本群落はメダケがびっしりと生え,中 にアカメガシワやエノキ等の先駆性の落葉広葉樹が混在する。自然堤防 上では普通に見られるが,甲突川では轟橋の上流左岸等で確認された。
肥田橋上流のセキショウ群落 ヌマエビ等の隠れ家にもなるミゾソバ群落
食材にもなるクワレシダ 特定外来生物のオオフサモ群落
4 甲突川の植生の特徴
表−2は鹿児島県内の5河川の植生の分布についてこれまでの調査結 果(いずれも限定区間)を一覧表にしたものである。河川にも多様な環 境があり,そこに分布する植生も多様である。甲突川の植生については 以下のように考察される。
① 河川長が短い河川ではあるが,河川水に汚濁は少なく,多様な植生 を含む。中流・下流に特徴的なオギ群落,クワレシダ群落,ヒメガマ群 落も回復しており,多様な生物の生育環境となっている。
② 都市型河川で中・下流域の川幅が狭く,しかも激特事業等で河道が 直線化しているため,止水環境が無く,止水域を生育地とする浮葉植物 群落(ヒシ群落,ジュンサイ群落など)浮水植物群落(ウキクサ群落,
タヌキモ群落など)挺水植物群落(ヨシ群落,マコモ群落,ヒメガマ群 落),河畔林(ジャヤナギ群落など)等を欠くか成立しても貧弱である。
鶴尾橋近くのオギ群落 4mにもなる肥田橋付近のオオブタクサ群落
コンクリート護岸等で増えているヒメツルソバ 近年増加したヤナギバルイラソウ群落
また,開口部に上流からの有機物を多量に含んだヘドロや粘土の堆積や 海から押し寄せる砂の堆積が少なく,塩沼地植物群落(ヨシ群落,シオ クグ群落,アイアシ群落,ハマボウ群落等)や砂丘地植物群落(コウボ ウムギ群落,ハマゴウ群落等)が未発達である。
③ 都市型河川の特徴として園芸植物や帰化植物が逸出し,帰化植物群 落を形成し群落の帰化率が高い。帰化植物群落は不安定で,例えば10年 前繁栄していた中・下流域のセイタカアワダチソウ群落は衰退し,それ に代わってその花粉がぜんそくを引き起こすといわれるオオブタクサ群 落が繁栄するなど植生は年々変化している。また,生態系に悪影響を及 ぼすため法律で移動,栽培等が禁止されている特定外来生物も生育し,
群落を形成しているものもある。
ア 逸出している園芸植物
ケイトウ,ハナスベリヒユ,シダレヤナギ,コリヤナギ,ムシトリナ デシコ,マルバアサガオ,トキワサンザシ,シロガネヨシ,ヤナギバル イラソウ,ユキヤナギ,クダモノトケイソウ,ナンキンハゼ,ヒメツル ソバ,スイフヨウ,ヤノネボンテンカ,コムラサキ,キショウブ,メラ ンポジウム,ハナウリクサ,オオキンケイギク,ナルトサワギク,ワシ ントンヤシ,カンナ,ハナカタバミ,イモカタバミなど
表2 県内河川の植生分布
群落分類 群落名 甲突川 川内川 別府川 安楽川
・前川 雄川 一湊川
渓流辺植物 群落
アキカサスゲ群集 ● ● ● ● ●
セキショウ群集 ● ● ● ●
ナルコスゲ群落 ● ●
ネコヤナギ群集 ● ● ●
ヒメタカノハウラボシ-サツキ群落 ●
フサナキリスゲ群落 ● ● ●
流 水 辺1年 生植物群落
アキノウナギツカミ群落 ● ● ● ●
アメリカセンダングサ-ホウキギク群落* ● ● ● ● ●
イヌビエ群落 ● ● ● ● ●
オランダガラシ群落* ● ● ● ● ●
カズノコグサーカワジサ群集 ●
ケアリタソウ群落* ● ●
ボントクタデ群落 ● ● ● ●
ミゾソバ群集 ● ● ● ● ●
ヤナギタデ群落 ● ● ● ● ● ●
群落分類 群落名 甲突川 川内川 別府川 安楽川
・前川 雄川 一湊川
流水辺多年 生植物群落
アシカキ群落 ● ●
オギ群集 ● ● ●
カモノハシ群落 ●
キシュウスズメノヒエーシロバナサクラタデ群落 ●
キシュウスズメノヒエ群落* ● ● ● ● ●
クサヨシークワレシダ群落* ● ●
コバノウシノシッペイ群落・キシュウスズメノヒ
エ-コバノウシノシッペイ群落 ● ● ● ●
コバノウシノシッペイ-チゴザサ群落 ● ● ● ●
ゴマクサーヤマイ群落 ●
ジュズダマ群落* ● ● ● ● ●
セイコノヨシ群落 ● ● ● ● ●
セリークサヨシ群集 ● ● ● ● ●
タコノアシ群落 ●
ツルヨシ群集 ● ● ● ● ●
テンツキーハリコウガイゼキショウ群落 ●
ドクダミ群落 ●
ハンゲショウ群落 ●
ヒロハサヤヌカグサ群落,エゾノサヤヌカグサ群落 ●
ミズハナビ群落(ヒメガヤツリ群落) ●
ヤナギタデーホウキギク群落* ● ● ●
沈水植物群 落
イトモ群落 ●
ウスカワゴロモ群落 ●
エビモ群落 ● ●
カワゴケソウ群落 ● ●
カワゴロモ群落 ●
ササバモ群落 ●
ホザキノフサモーオオカナダモ群落・オオカナダ
モ群落* ● ● ● ●
ホッスモ群落 ●
ヤクシマカワゴロモ群落 ●
ヤナギモ群落 ● ●
浮葉・浮水 植物群落
アオウキクサ群落 ● ●
オオフサモ群落* ● ● ● ●
コバノヒルムシロ群落 ●
ジュンサイ群落 ●
ヒシ群落 ● ●
ヒツジグサ群落 ●
ボタンウキクサ群落* ● ● ●
ホテイアオイ群落* ● ●
群落分類 群落名 甲突川 川内川 別府川 安楽川
・前川 雄川 一湊川
低 層 湿 原
( 挺 水 植 物 群落)
イ群落 ●
ガマ群落 ●
カンガレイ群落 ●
キショウブ群落* ●
クログワイ-ヒメカンガレイ群落 ●
サンカクイ群落 ● ●
ショウブ群落 ●
ヒメガマ群落 ● ● ● ● ●
ヒメミクリ群落 ●
マコモ群落 ●
メリケンガヤツリ群落* ●
ヨシ群落 ● ● ● ●
冠 水 草 原
( 在 来 一 年 生 植 物 群 落)
イボクサ群落 ● ●
オヒシバ-メヒシバ群落 ● ● ● ● ●
カナムグラ群落 ● ● ● ●
カワラケツメイ群落 ●
ギョウギシバーヤハズソウ群落 ● ●
ダンドボロギクーベニバナボロギク群集* ● ●
ツユクサ群落 ● ● ● ● ●
ヌカキビ群落 ● ● ● ● ●
( 在 来 多 年 生 植 物 群 落)
イタドリ群落 ● ● ●
イヌドクサ群落 ● ●
ウシハコベースギナ群落 ● ●
オオバコークサイ群落 ●
オガルカヤ群落 ●
カラムシ群落 ● ● ● ● ●
ギシギシ群落、ナガバギシギシーギシギシ群集 ● ● ●
ギョウギシバ群落 ● ● ● ● ●
ススキ群落 ● ● ● ● ●
チガヤ群落 ● ● ● ● ● ●
トダシバーシバ群落 ●
ネズミノオーカゼクサ群落 ● ● ● ● ●
メドハギートダシバ群落 ● ●
ヨモギ群落 ● ● ● ● ● ●
( 帰 化 一 年 生 植 物 群 落)
アメリカフウロ群落* ●
オオイヌタデ群落* ●
オオオナモミ群落* ● ● ● ●
オオブタクサ群落* ● ●
ヒメムカシヨモギーオオアレチノギク群落* ● ● ● ● ●
ブタクサ群落* ● ●
ホソムギーカモジグサ群落* ●
群落分類 群落名 甲突川 川内川 別府川 安楽川
・前川 雄川 一湊川
( 帰 化 多 年 生 植 物 群 落)
アフリカヒゲシバ群落* ●
オオクサキビ群落* ● ● ● ● ●
シナダレスズメガヤ群落* ● ● ● ● ● ●
セイタカアワダチソウ群落* ● ● ● ● ●
セイバンモロコシ群落* ● ● ● ● ●
タチスズメノヒエ群落* ● ● ● ● ●
ナピアグラス群落* ● ●
メリケンムグラ群落* ●
( 帰 化 低 木 群落)
イタチハギ群落* ●
クコ群落* ● ●
ヤナギバルイラソウ群落* ●
河辺林 アカメヤナギージャヤナギ群集 ●
湿生林
エノキームクノキ群集 ● ● ●
ハルニレ群落 ● ● ●
ヒメウワバミソウーケヤキ群集 ●
塩沼地植物 群落
ハマボウ群集 ●
アイアシ群集 ●
シオクグ群集 ●
シチトウイ群落 ●
ナガミノオニシバ群落 ● ●
ハイキビ群落 ● ● ● ● ● ●
ウキヤガラ群落 ●
ヨシ群落 ● ● ● ●
ヒトモトススキ群落 ●
海岸砂丘地 植物群落
コウライシバ群落 ●
エビヅル群落 ● ● ●
ケカモノハシ群落、ハマグルマ-ケカモノハシ群集 ● ● ● ●
チガヤ-ハマゴウ群集 ● ●
テリハノイバラ群落、ハマエンドウ-テリハノイバラ群落 ● ● ● ●
ツルナ群落 ●
ハチジョウススキ群落 ● ● ●
ハマグルマ-コウボウムギ群集 ● ●
ハマスゲ群落 ● ● ● ●
ハマヒルガオ-オカヒジキ群集 ●
マサキ-トベラ群集 ● ●
崖地植物群 落
イタチガヤ-ホラシノブ群落 ● ● ●
イタチガヤ-ハチジョウカグマ群落 ● ● ● ●
イワタバコ群落 ● ●
コアカソ群落 ● ● ● ● ●
ヒメツルソバ群落* ●
ヒュウガギボウシ群落 ●
ミゾシダ群落 ●