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テキストマイニングによる中学生の 自由記述データの探索的分析

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(1)

テキストマイニングによる中学生の   自由記述データの探索的分析

一個人特性および人口学的変数との関連から一

小川一美※1・斎藤和志※1

      1.問題と目的

 近年,小,中,高等学校などで「心の教育」に関する様々な取り組みが行われるようになってき た。こうした取り組みを広く展開していこうとすると,児童や生徒,教師,保護者,そして社会に その取り組みの効果を呈示していくことが必要になる。しかし,「心の教育」のような取り組みは,

児童や生徒の心理的側面に働きかけるものであるため,効果が目にっくところに現れにくかったり,

効果が現れるまでに長い時間がかかったりするなど,測定は容易ではない。

 筆者らも,中学生の「人間・社会を考える能力を刺激する」ことを目的に,50時間の授業を考案 し実施してきた(吉田・廣岡・斎藤,2002,2005)。これは,一般的な心理学や社会心理学で用い られるような課題や知見を授業に取り入れることで,人間の行動のしくみや社会の中での相互影響 過程などについて,自ら考えようとするきっかけを生徒たちに提供するものであった。そして,授 業と平行していくっかの質問紙調査を実施し,この取り組みの効果を測定しようと試みた(小川・

斎藤・坂本・出口・小池・吉田・石田・廣岡,2001;小川・小池・出口・坂本・石田・斎藤・廣岡・

吉田,2002,2004)。具体的には,既存の尺度を中学生向けに改訂し,縦断的に調査を行うことで,

生徒の変化の記述を行った。しかし,こうした尺度得点におけるいくつかの変化をみることはでき たが,果たして取り組みの効果がその得点変化に現れているのかや,そもそもこうした取り組みの 効果を質問紙調査による得点変化で表すことが可能なのかといった疑問が残された。藤井(2005)

が,  心理学や社会福祉学のように,人の心や人と環境(社会)との相互作用に焦点を当てる領域 では,あらかじめ設定された枠組みではとらえきれない個別の部分に問題の重要な要因があると考 えられる。そのため質的研究は,人間の行動や体験,心や意識といった数量化が困難と考えられる 現象や,すでに社会的に了解されている既成概念を新たに分析・解釈したり,さらに分類類型化 再概念化することに長けている研究方法である と述べているように,量的データによる分析だけ ではなく,質的データによる分析も必要なのかもしれない。

 そこで,斎藤・小川(2005)は,他者や社会にっいての関心の高さや,それらにっいて積極的に 考える姿勢を反映する簡便な指標の開発可能性を探るため,中学生が「社会」という言葉から連想 するものを自由に記述させ,その分類を個人特性との関連で検討した。連想の分析として,思い浮 かべた対象とそれぞれの対象にっいての思考の程度という観点から,自由記述による反応を7っの

※1 コミュニケーション心理学科

(2)

カテゴリーに分類するという作業を行った。しかし,カテゴリーの設定も,さらには分類も,筆者 らの主観によるところが大きく,客観性および再現可能性という点が問題となった。

 従来,自由記述データの分析にはKJ法と呼ばれる手法が多く用いられてきたが,これも,客観 性および再現可能性という点が問題となる。KJ法に限らず質的研究では,分析や解釈が研究者の 主観によることから生じる信頼性と妥当性の問題,さらにはアカウンタビリティの問題が指摘され ている。そこで,注目されるのがテキストマイニングという手法である。テキストマイニングは質 的研究の問題点を克服する分析方法の1っであると言われている(藤井,2005)。テキストマイニ

ングでは,収集されたテキストデータが,形態素解析や構文解析などの数量化の手法によって分析 の対象とされる。そして,手作業ではないため大量のテキストデータが処理できるという利点もあ る。また,データの分析には,対応分析,因子分析,クラスター分析などを含む統計解析の手法が 用いられることも特徴である。本研究では,このテキストマイニングという手法を用いて,中学生 の自由記述による反応を探索的に分析し,量的データによる分析だけでは捉えきれない反応の分析 が可能かどうかを検討する。

 ところで,本研究ではテキスト型データ解析ソフトウエア「WordMiner」(日本電子計算株式会 社)を用いて,テキストマイニングを実施するが,このWordMinerではテキストデータの内部構 造を分析するだけでなく,他の変数との関係も検討することができる。清水(2005)も,他の変数

との関係を検討することで 知りたい構成概念にっいてだけ分析するよりも,他の変数やカテゴ リーなどと並列してデータを集めて分析するほうが効率もよいし,得られる情報も豊富になるだろ と指摘している。本研究では,以下の4っの特性尺度との関係を含めて分析を行うこととする。

簡単に4っの特性尺度にっいて述べておく。

 1っ目は「社会考慮」である。斎藤(1999)によれば,社会考慮とは,個人の生活空間を「社会」

として意識している程度,または複数の個人からなる社会というものを考えようとする態度のこと である。2っ目は,考える姿勢を重視した側面として,クリティカルシンキング(以下CTと略記)

志向性を取り上げる。CTとは,適切な基準や根拠に基づく,論理的で,偏りのない思考と定義さ れる(廣岡・元吉・小川・斎藤,2001など)。その中でも,他者の存在を想定した場面におけるCT 志向性(廣岡ら,2001)を取り上げる。さらに,Davis(1983)による情緒的共感性とパースペク ティブ・テイキング(以下PTと略記)の2つである。この2つの側面は,他者との関係を,情緒 的側面と認知的側面から検討しようとするものであり,社会考慮やCT志向性と関連する側面だと 考えられる。これらの特性尺度については,斎藤・小川(2005)で尺度構成や「社会」という言葉 からの自由連想の分析との関連などにっいて検討が行われているが,今回,改めてテキストマイニ ングという手法によるテキストデータの解析を行い,これとの関連を見ることで,新たな知見を得 ることができる可能性がある。また,性別や学年といった属性との関連にっいても検討を加える。

      皿.方 法峯2 1.調査対象者および調査期日

 国立A大学附属中学校の1年生から3年生までの各2クラスで調査を実施した。回答者の内訳は 表1に示した。調査は,2002年6月に各クラスで担当教諭によって集団で実施された。

(3)

表1 調査対象者の学年と性別(%)

1年生 2年生 3年生 合 計

男子  40(16。7)

女子  40(16.7)

38(15.9)

40 (16.7)

41 (17.2)

40(16.7)

119  (49.8)

120 (50.2)

80(33.5) 78 (32.6) 81(33.9) 239 (100.0)

2.質問紙の構成翻

①社会的場面に対する自由記述:「仲の良い友だちと意見が違った時,あなたはどう思いますか?

 また,そんな時,あなたならどうしますか」,「空きカンなどのゴミをポイ捨てしてはいけないの  はなぜだと思いますか」,「仲の良い友だちから,同じクラスだけれどあまり知らない生徒の悪い  うわさを聞いた時,あなたはどう思いますか」,「バスで席をゆずってもらえないおとしよりを見  た時,あなたはどう思いますか」という4つの質問に対して,自由に回答してもらった。ただし,

 本研究では,「バスで席をゆずってもらえないおとしよりを見た時,あなたはどう思いますか」

 という質問に対する回答のみを分析した。なお,「空きカンなどのゴミをポイ捨てしてはいけな  いのはなぜだと思いますか」に対する回答については,小川・斎藤(2005)で分析している。

②情緒的共感性尺度:他者の感情状態情動状態に対する共感性の程度,情緒的な成熟を測定する  ものである。Davis(1983)に基づいて水田(1991)が訳出した7項目を逆転項目がないように  改変し,「まったくあてはまらない」から「非常にあてはまる」までの5段階で評定を求めた。

 斎藤・小川(2005)に基づき,7項目の合計得点を算出し,情緒的共感性得点とした。

③PT尺度:自分の個人的な認知的構えから脱却し,他者の視点を共有することができるかという  認知的成熟の程度を測定するものである。情緒的共感性尺度同様に,Davis(1983)に基づいて  水田(1991)が訳出した7項目を逆転項目がないように改変し,5段階で評定を求あた。調査で  は,情緒的共感性尺度と同じ項目群の中にランダムに配置した。斎藤・小川(2005)に基づき,

 7項目の合計得点を算出し,PT得点とした。

④社会考慮尺度:「広い社会」に対する考慮を測定する13項目であった。「まったくあてはまらな  い」から「非常にあてはまる」までの5段階で評定を求めた。斎藤・小川(2005)に基づき,13  項目の合計得点を算出し,社会考慮得点とした。

⑤CT志向性尺度馴:廣岡ら(2001)が作成したCT志向性(Social Version)で抽出された,真正  性,柔軟性,脱直感,脱軽信の4因子に関しては3項目,人間多様性理解,論理的理解の2因子  に関しては4項目の計20項目を中学生用に改訂した。「あなたは,将来,以下のことができるよ  うな人になりたいかどうかを答えてください」という教示のもと,「まったくなりたくない」か  ら「とてもなりたい」までの5段階で回答を求めた。斎藤・小川(2005)に基づき,20項目の

※2 本研究のデータはいずれも斎藤・小川(2005)と同様である。

※3 質問紙の作成は,吉田俊和先生(名古屋大学)ほか,ソーシャルライフ研究会メンバーとの共同研究の  一環として行われた。

※4 項目の作成は,廣岡秀一先生(三重大学)と元吉忠寛先生(名古屋大学)との共同研究の一環として行   われた。

(4)

 合計得点を算出し,CT志向性得点とした。

⑥「社会」からの自由連想:「社会」という言葉からどのようなことを思い浮かべるかにっいて,

 自由記述で回答を求あた。

 なお,情緒的共感性尺度とPT尺度を1っの項目群として,社会考慮尺度, CT志向性尺度の3 っの項目群の順番を変えた3種類の調査用紙を作成し,ランダムに配付して,回答を求あた。

      皿.結果と考察 1.「社会」という言葉からの自由連想の分析

(1)テキストマイニングによる自由連想の解析

 「社会」という言葉からどのようなことを思い浮かべるかという問いに対する自由記述回答を,

テキスト型データ解析ソフトウエア「WordMiner」(日本電子計算株式会社)を用いて,回答文章 の分かち書き処理,そして多次元データ解析を行った。なお,分かち書き処理およびキーワード抽 出処理には,Happiness/AiBASE(株式会社平和情報センター)が採用されていた。

 まず,テキストデータをリファインする必要があった。手順としては,分かち書きのチェック

(誤字脱字のチェックなど)→分かれてほしくない言葉のチェック(分かち書き回避)→まとめた い言葉のチェック(置換辞書作成)→不要な言葉のチェック(削除辞書作成)であった。分かち書 き後に抽出された構成要素数は527,句読点,助詞,特殊記号を除いた後の要素数は489であった。

さらに,置換辞書および削除辞書を作成しデータをリファインした。出現頻度の少ない構成要素は 一般性が低いと判断し3回以上出現する構成要素のみを採用した結果,構成要素数は77になった。

なお,「構成要素」とはデータ解析上の処理単位のことである。最も出現頻度の高かったものは,

「政治」であり,57名の調査対象者から各1回ずつ計57回出現していた。その他,40回以上出現し た構成要素は「人々」「科目」であった。

(2) 「社会」に関する自由連想と特性などとの関係

 (1}で得られた「社会」に関する自由連想の構成要素と,情緒的共感性,PT,社会考慮, CT志向 性,および性別と学年の関係を検討した。各特性にっいては,平均値に基づいて調査対象者を2分 割し,各特性の「低群」「高群」を構成要素として扱えるよう変換した。さらに,性別と学年も構 成要素に変換し加え,全構成要素数90を対象に,対応分析を行った(図1)。対応分析で得られた 成分スコアをもとにクラスター分析を行った結果,9っのクラスターに分類された(表2)。なお,

クラスター間の関係は図2に示した。

 クラスター1は,社会科担当教師の名前や「授業」などといった社会科という教科に関連する言 葉,「国会」や「政治家」,「会社」や「サラリーマン」などという構成要素がまとまっていた。こ れらは,斎藤・小川(2005)の分類で「具体的社会」にまとめられたものと類似している。そして,

このクラスターに各特性の低群および男子,さらには中2や中3という学年も含まれていた。した がって,各特性の低い生徒や男子,そして高学年では,前述した構成要素を社会からの連想語とし て記述する傾向があることが示された。クラスター2は,「歴史」や「科目」という教科に関連す る言葉が分類された点はクラスター1と類似しているが,その他の「法律」や「ニュース」といっ た社会問題に関連する言葉,さらには「複雑」といったイメージも一緒にまとめられていた。クラ

(5)

   図1 構成要素変数の成分スコア布置図

(注:見やすくするために原点周辺が拡大されている)

表2 構成要素クラスター分析の結果

クラスター 構成要素   構成要素   構成要素   構成要素   構成要素   構成要素   構成要素   構成要素   構成要素 クラスター1 クラスター2 クラスター3 クラスター4 クラスター5 クラスター6 クラスター7 クラスター8 クラスター9

サイズ 19 5 5 18 15 20 3 4 1

構成要素 〈情緒的共感低〉

 〈rr低〉

〈社会考慮低〉

〈クリシン低〉

  〈男〉

 <中2>

 <中3>

  K先生   学校   授業   国会   政治家   日本

サラリーマン   会社   世の中   悪い   良い   多い

ニユース  複雑  法律  歴史  科目

うえ会き化思支社動変   まち

 まわり   環境   関係   行く

  国 思い浮かべる   事件   自然   自分  自分たち   上   人間   世界  生きる   地球  難しい   言う

かかわり みんな  協力  仕事  自立  集団  将来  場

 色々  人々 人間関係  生活

大きい  働く  福祉

〈情緒的共感高〉

 〈pm高〉

〈社会考慮高〉

〈クリシン高〉

  〈女〉

 <中1>

  家族  環境問題   金   経済   考えて   仕組み   政治   大人   大変   不安   不景気   勉強   問題   もの

政治家名  政党

M先生

ばかな 金持ち 不祥事 不正

口癖

注:〈 〉内の語は,特性尺度の高群,低群および,性別,学年を構成要素に変換したものである。

(6)

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図2 構成要素クラスターの成分スコアの布置図

スター3は,連想ではなく「社会」そのものの言葉も出てきたが,「思う」「支え」といった人々の 行動,「動き」や「変化」といった動的なイメージなどでまとまっていた。クラスター4は,「地球」

「世界」「環境」「まち」といった比較的広範な場所に関する言葉や,「自分」「生きる」などといっ た自らも含めた視点などが含まれていた。クラスター5では,「集団」「みんな」「人間関係」「人々」

など個ではなく集団に関する視点,「かかわり」「協力」といった相互協力に関する言葉,「仕事」

「働く」など労働に関する言葉などでまとまっていた。クラスター6には,各特性の高群および女 子,さらには中1が含まれていた。連想語としては,「経済」「金」「不景気」など経済状況に関す る言葉,「環境問題」「問題」といった今の社会が抱えている問題に関する言葉,さらには「不安」

という感情も含まれていた。したがって,各特性の高い生徒や女子,中1などはあまりポジティブ ではないイメージを社会に持っているのかもしれない。ただし,視点としては自分の身近なものに 対してというようりは,広い視点を持っていると考えられる。また,クラスター6の連想語は,斎 藤・小川(2005)が「抽象的社会」として分類した回答と類似していた。クラスター7は,政治関 係の言葉と社会科担当教師の名前でまとまっていた。クラスター1にも社会科担当教師の名前は出 現していたが,担当学年が異なる別の教師であることから,異なるクラスターにまとまったと考え

られる。クラスター8は,「不正」「不祥事」「ばかな」といったネガティブな意味を持っ言葉でま とまっており,ここに「金持ち」という言葉が入っていることから,金持ちに対しても否定的な印 象を持っている生徒がいることが示唆された。最後に,クラスター9が「口癖」という1語である が,これは社会科担当教師の口癖が複数記述されており,それを「口癖」として置換した構成要素 である。

 各クラスター間の関係であるが,図2の布置図から,クラスター7,8,9は他のクラスターか

(7)

ら離れて存在していることがわかる。そして,残りのクラスターは,1と2が接近しており,少し 離れて3〜6が接近していた。1と2にはいわゆる社会のしくみや人々の関係性に関する記述はな かったが,3〜6では個というよりは広い人間関係に関する記述や,広範な場所に関する言葉,社 会のしくみに関する言葉などが含まれていた。各特性の低い生徒はクラスター1に分類されており,

各特性の高い生徒はクラスター6に分類されていたことからも,特性の高さによって出現する記述 が異なり,さらに,特性の概念から理解可能な方向で記述が示されていた。なお,斎藤・小川

(2005)では,PT低群や社会考慮低群では具体的社会に関する記述がやや多く, PT高群や社会考 慮高群では抽象的社会に言及した記述が多いことが示されている。これらの結果が,クラスター1

と6に一部現れており,異なる手法による分類にも関わらず,類似した傾向が示された。

2.場面想定法による自由記述データの分析

(1}テキストマイニングによる自由記述データの解析

 自由連想以外のテキストデータを用いて,テキストマイニングによる分析を探索的に行った。用 いたデータは,「バスで席をゆずってもらえないおとしよりを見た時,あなたはどう思いますか」

という質問に対する自由記述式の回答であった。

 『1.「社会」という言葉からの自由連想の分析』と同様,テキスト型データ解析ソフトウエア

「WordMiner」を用いた。分かち書き後に抽出された構成要素数は429,置換辞書および削除辞書 を作成しデータをリファインし,2回以上出現する構成要素のみを採用した結果,最終的な構成要 素数は85になった。最も出現頻度の高かったものは,「譲る」であり,129名の調査対象者から135

回出現していた。その他,80回以上出現した構成要素は「思う」「自分」であった。

(2)自由記述データと特性などとの関係

 (1)で得られた構成要素と,情緒的共感性,PT,社会考慮, CT志向性,および性別と学年の関係 を検討した。WordMinerでは,質的変数と構成要素のクロス集計表をもとに,質的変数による構 成要素の出現頻度を用いた一種の等頻度検定を行うことができる。そこで,各特性にっいて,平均 値に基づいて調査対象者を低群と高群に2分割し,群による出現頻度の違いを検討した(表3に各 特性ごとの出現頻度を示した)。さらに,性別,学年による等頻度検定も行った。

 情緒的共感性に関しては,「思わない」「こわい」という構成要素の出現頻度に対して群による有 意な差が見られ(いずれもρ<.05),情緒的共感性の低い生徒の方が多く記述していた。また,

「席」「座っていたら」でも群による差が見られ(ρ〈.001,ρ<.10),こちらは情緒的共感性が高 い生徒の方が多く記述していた。「思わない」という語は,「何とも思わない」という記述で用いら れることが多く,情緒的共感性の低い生徒は教示された場面に対して特に何とも思わないことが示 唆され,情緒的共感性の概念からも理解できる結果である。また,「こわい」というのは,「他の人 に譲ってあげてくださいと指示をするのは怖い」という内容の記述が多く,お年寄りの心情よりも 自分の心情に焦点が当てられた記述から抽出されたと考えられる。他者の感情状態,情動状態に対 する共感性の程度である情緒的共感性が低い生徒に,このような記述が多かったことも,お年寄り という他者の感情や情動状態に対して共感しないことの現れとして理解できる。一方,情緒的共感 性が高い生徒では,「席」や「座っていたら」という記述が多かったが,これらの記述をする生徒

(8)

表3 各特性の高低群による構成要素出現頻度数  情緒的共感性

低群     高群 低群 Ivr

高群 社会考慮高群

1234567891011121314151617181920212223242526272829303132臼鈎路36373839404142434445464748495051525354555657臼59606162636465666768697071727374757677787980818283況85 あまり いれば お年寄り かわいそう こわい すごく そのまま たまに だめ つbL、

できない できる できれば どうぞ なぜ

なoて にらむ はげます みんな もし タイミング

tス マナー・モラル 哀れ

気の毒 気持ち 近くに 空き 見る 元気 官う 官えない 考える 行動 座っていたら 座っていなかr}た 座っている 座りたい 座る 最悪 最近 仕方ない 思う 思わない 自分 実際 若者 弱い 助ける 少し 乗らない 場合 状況

頗ってあげてほしい 譲らせます 餓らない 頗る 醸れない 申し訳ない 辛そう 人たち 人間 絶対 大変 誰か 恥ずかしい 当然 難しい 悲しく 疲れている 必ず 分からない 無視する 優先 立っている 立場 列和

10723421100010011053312101425121041018172301341513380120511229211594211611181232221030122150

357

126210011223522422111011110302202343411931121311500947230211131917m21116112271141111222201192

426

1022422120024010105150200151310002120924230033846360112211029295231214000101232200040122050

314

12102220102212215221392121021422336221182132132151116472310411519197632016223231131132212201292

458

117283212100301212626021015141101410011261300341513鵠11004111111212騨51217110151233100021312260

372

115141010123221320027111102132122423114112313214807441322111427157202015113171130232231010072

380

注1:等頻度検定は同一特性内の高低群間でのみ行った。

   cr. ロ 低群     高群

10622211200240112053502121625120043021115232134359領101031121n2660221nll1101141211011012050

351

1272221102211114121162110010220334130143132111145012411402311327196641020112211232021230311282

39θ

(9)

低群の方が高群よりも無感情や無関心で あったり,非援助的な思考が現れたりし ていた。ただし,この4つの特性は本来 は異なる概念であるにも関わらず,本研 究の調査対象者では,いずれも高い正の 相関関係にあったことを付記しておく

(斎藤・小川,2005。表4として再掲した)。

 さらに,性別による比較を行ったところ,

は「もし,自分が席に座っていたら自分が譲り,座っていなかったら…」というように,状況を色々 と想像し条件ごとに対処や行動を記述しているパターンが多かった。つまり,単純に譲る,譲らな いという判断だけではなく,状況にあわせて対処を考えていたようである。

 PTに関しては,「はげます」という構成要素のみで群による有意な差が見られ(p<.05),低群 の方が多く記述していた。「はげます」という記述は,複数の構成要素を置換辞書によってまとめ たものであるが,具体的には「がんばれ」「もう少しだ」など心の申でお年寄りをはげますという 意味の記述のまとまりであった。パースペクティブ・テーキングが低い生徒には,このような記述 が多かった。

 社会的考慮に関しては,「はげます」「かわいそう」「思わない」「譲れない」「譲らない」という 構成要素について,低群の方が高群よりも多く記述しており(「はげます」〜「譲れない」:ρ

〈.05,「譲らない」:ρ〈.10),「譲る」という構成要素は高群の方が多く記述していることが明ら かになった(ρ<.10)。社会考慮というのは,個人の生活空間を「社会」として意識している程度,

または複数の個人からなる社会というものを考えようとする態度のことである(斎藤,1999)。こ れが低い生徒は,何とも思わなかったり,心の中ではげますだけだったり,さらには,譲れないも しくは譲らないという考えを持っていることが示唆された。一方,社会考慮が高い生徒は「譲る」

という記述が多いことから,社会考慮の高さによって援助的な思考が対極な形で現れることがわかっ

た。

 さらに,CT志向性に関しては,「思わない」「何」という構成要素にっいて,群による有意な差 が見られ(いずれもρ<.05),低群の方が高群よりも多く記述していた。

 これら4っの特性に関してはいずれも,

       表4 尺度間の相関関係

情緒的共感性 PT 社会考慮 P    T

社会考慮 CT志向性

.576−

.453−

.555一

.596−

.600一 .546一

@p<.001

      男子で「はげます」「座る」「譲らない」が多く記述さ れており(「はげます」:p〈.001,「座る」「譲らない」:ρ〈.05),女子では「座っていたら」とい

う構成要素が多く出現していた(p〈.05)。っまり,男子では非援助的思考が現れ,女子では複数 の状況を想定し条件ごとの対処が多く記述されていた。

 そして,学年による比較では,中1で「みんな」が多く出現し(p<.05),中2で「譲れない」

「大変」が多く(いずれもρ<.05),中3では「立っている」「最悪」「奴」という記述が多かった

(いずれもp<.05)。中1では他学年より自分以外の他者に関する記述が多く,中2では非援助的思 考やお年寄りが大変そうという単なる感想などが多く現れ,中3では席を譲らない他者に関する記 述が多く現れた。

(10)

       W.総合考察

 本研究では,テキストマイニングという手法を用いて,中学生の自由記述による反応を探索的に 分析し,量的データによる分析だけでは捉えきれない反応の分析が可能であるかを検討することを 目的としていた。主に2種類の分析を試みたが,まず1っ目は構成要素をクラスターに分類すると いう対応分析であった。自由連想から抽出された構成要素の他に,特性に関する尺度得点から生徒 を2群に分類したり,性別や学年にっいても構成要素に変換し,まとめて対応分析を行った。その 結果,9つのクラスターに分かれたが,特性や人口学的変数がどのような構成要素と共に分類され たかを検討することで,特性の高さや人口学的特徴によってどのような記述をするのかについて傾 向をとらえることができた。ただし,本研究では特性間の正の相関関係がいずれも強かったため,

あまり詳細な傾向を検討することはできなかった。さらに,9つのクラスターの累積寄与率が 26.88%と非常に低かった。本研究では出現頻度が3回以上のものを分析に用いたが,もっと頻度 の高いものだけを対象に分析を行えば説明率も高くなるだろう。しかし,その一方で,藤井

(2003)も同様の指摘をしているが,多様な連想をとらえるためには出現頻度の低いものまで対象 にしておく必要があることから,分析の目的に則して構成要素の閾値を決定すべきであると考えら

れる。

 2っ目の分析として,各構成要素と特性や人口学的変数とのクロス集計表をもとに,構成要素の 出現頻度を用いた一種の等頻度検定を行った。この分析では,構成要素間の関係は詳細に検討でき ないが,特性や人口学的変数による自由記述の傾向が明確に検討できるという利点があった。ただ し,構成要素を見ただけではどのような文脈で用いられたかが判断出来ないような場合,元の自由 記述データに戻って判断をする必要があった。果たして構成要素に分解する必要があるのかという 指摘が生じるかもしれないが,構成要素に分解して,その出現頻度の傾向が検討できたからこそ,

それを手がかりに自由記述データの傾向を検討することが可能になったのである。また,藤井

(2005)は,テキストマイニングの限界について次のように指摘している。 テキストマイニング は,テキストの分析をパーフェクトに行うものだという前提で行うものではない。数量化された統 計解析では,データとして現れている数値そのものには解釈の必要はない。しかしテキストデータ はそのようなデータと同じではない。その意味で,データ自体に解釈の幅があるという暖昧さが残 されている。したがって,原文に帰り,その意味するところを常に意識しなければならないのであ

と。

 最後に,テキストマイニングという手法を今後どのように生かしていくことができるのかにっい て触れておく。本研究では,テキストデータから得られる構成要素と,特性変数や人口学的変数と の関係をもとに分析を行った。もちろん,テキストデータのみを分析対象とすることも可能である。

大量にあるテキストデータを大まかにまとめるという意味では有益な分析であるかもしれない。し かし,本研究の背景にもあるように,たとえば量的データだけではとらえられない効果測定の1手 法としてテキストマイニングを利用するような場合,個人の変化との関連性の検討が必要になるし,

そもそもどのような記述が出現すれば,どのような状態になっていると言えるのかという点にっい てあらかじめおさえておく必要がある。したがって,量的データの代替物としてテキストマイニン グを用いたテキストデータの分析が使えるかという点については疑問が残る。量的データの他に,

(11)

テキストデータでも同様の結果を示すことができるのであれば,その研究の説得力を高めることに っながるだろう。っまり,研究の目的に応じて多方法を用いて検討を加えていくという点で,この テキストマイニングが有益な手法として認められていくのではないだろうか。

引用文献

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吉田俊和・廣岡秀一・斎藤和志(編) 2005学校教育で育む「豊かな人間関係と社会性」一心理学を活用し   た新しい授業例Part 2一 明治図書

参照

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