日本経済は、「失われた20年」といわれるデフレによる超低成長のなかで、政府の債 務は急ピッチで拡大しています。そのため、2012年末に登場した安倍政権は、デフレ の原因はマネーの量の不足というリフレ派の意見を取り上げ、消費者物価2%上昇を 目指す「異次元の金融緩和」によって日本の再生に取り組んでいます。 しかし、人口減少・少子高齢化の進行という現実に直面し、企業経営者は自社の将 来不安に備えるために投資は抑制気味であるうえ、消費者は長い老後の生活を意識し、 個人消費は低迷を続けており、デフレ脱却は難しい状況にあります。しかも、原油価 格の下落、英国のEU離脱、米国ファーストを掲げるトランプ大統領の保護主義政策 など海外要因によって日本経済の先行きに不透明感が漂っており、赤字法人が3分の 2を占めるという中小企業にとって厳しい経済環境が続いています。 そのため、金融機関の行職員は、新たな不良債権の発生を防ぐとともに、日本経済を 根底で支えている中小企業の潤滑油である融資を推進するためにも、決算書のみならず 法人税申告書などの十二分の理解が必要となってまいりました。 そこで、本書では、法人税申告書を構成する各種の別表をはじめとして、計算書類と その科目内訳書の仕組みや、粉飾を見破るための具体的な読み方などを事例によって 解説をいたしました。 とくに、申告書のなかで最も重要であるにもかかわらず、難解であるが故に金融機関 の行職員が苦手としています法人税申告書『別表4』や『別表5(1)』、『別表5(2)』の仕組 みをやさしく説明するとともに、融資担当者イチロー君と税理士であるK先生との日常 会話を通じて、粉飾発見の着眼点や申告書と損益計算書や貸借対照表とのチェック方法 のポイントを解説いたしました。 したがって、渉外や融資業務を通じて取引先の実態把握にかかわっている金融機関の 行職員の方々が、本書によって何か得るところがあると感じていただければ、これに過 ぎる喜びはありません。 最後になりましたが、本書の企画・編集・構成にあたってご尽力をいただきました制作 本部の石川真佐光氏、営業推進部の榊原雅文氏をはじめ経済法令研究会の皆さん、本 書の別表の作成などにご協力をいただいた税理士法人中央総研の横井彩実さんに心か らお礼申し上げます。 平成29年5月 税理士法人 中央総研 小島 興一 監査法人 東海会計社 小島 浩司
〜プロローグ〜 ………1 「決算書」と「法人税申告書」で粉飾決算を見破れ!! 別表1(1)………9 —取引先のアウトラインをつかむ— 別表2 ………21 —株主構成をつかみ、事業承継対策の提案を行う— 別表4 ………27 —所得金額の大きさとその中味がわかる— 別表5(1)………37 —税務上の純資産額の大きさがわかる— 別表5(2)………45 —税金の納付や経理処理状況がわかる— 別表6(1)………51 —法人税の前払いである所得税額がわかる— 別表6(10)………57 —儲かっている中小企業の節税意欲がわかる— 別表6(19)………61 —従業員の給与が増えたかどうかがわかる− 別表7(1)………65 —所得から差引くことができる欠損金の明細がわかる− 別表8(1)………71 —受取配当等の益金不算入額がわかる— 別表11(1)………79 —不良債権とその貸倒引当て状況がわかる— 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 法 人 税 申 告 書 c o n t e n t s
別表11(1の2)………85 —将来の貸倒れに対する備えの状況がわかる— 別表14(2)………91 —寄付金の損金不算入額がわかる− 別表14(5)………95 —100%グループ法人間の資産の売買取引の実態がわかる− 別表15 ………101 —交際費の支出額と損金不算入額がわかる— 別表16(1)………105 —定額法による償却過不足の有無がわかる— 別表16(2)………113 —定率法による償却過不足の有無がわかる— 別表16(6)………125 —繰延資産の償却過不足の有無がわかる— 別表16(7)………131 —当期に費用計上した少額減価償却資産の明細がわかる— 別表16(8)………135 —3年間の均等償却の状況がわかる— 別表16(10)………139 —資産に係る控除対象外消費税額の処理がわかる— 適用額明細書 ………143 —租税特別措置法の適用で儲けの状況がわかる— 決算報告書 ………147 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
勘定科目内訳書 ………157 —勘定科目の中味から決算書の実態をつかむ— ●預貯金等の内訳書 ………158 ●受取手形の内訳書 ………160 ●売掛金(未収入金)の内訳書 ………162 ●仮払金(前渡金)の内訳書、貸付金及び受取利息の内訳書 ………164 ●棚卸資産の内訳書 ………166 ●有価証券の内訳書 ………168 ●固定資産の内訳書 ………170 ●その他の内訳書 ………172 ●支払手形の内訳書 ………174 ●買掛金(未払金・未払費用)の内訳書 ………176 ●仮受金の内訳書、源泉所得税預り金の内訳 ………180 ●借入金及び支払利子の内訳書 ………182 ●土地の売上高等の内訳書 ………184 ●売上高等の事業所別の内訳書 ………186 ●役員報酬手当等及び人件費の内訳書 ………188 ●地代家賃等の内訳書、工業所有権等の使用料の内訳書 ………190 ●雑益、雑損失等の内訳書 ………192 勘 定 科 目 内 訳 書 c o n t e n t s 本書の内容に関する訂正等の情報 本書は内容につき精査のうえ発行しておりますが、発行後に訂正(誤記の修正)等の必 要が生じた場合には、当社ホームページ(http:// www.khk.co.jp/)に掲載いたします。
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法人税申告書別表
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─取引先のアウトラインをつかむ─ 別表1(1)の役割 この別表は、次の事項を記載するとともに法人税申告書の表 紙の役割を果たすものです。 ● この法人税申告書を作成した会社のアウトライン 申告書を作成した会社の納税地(会社の本社所在地)、法人名(会社名)、 代表者自署押印(会社の代表取締役のサインと印)、代表者住所(代表 取締役の自宅住所)、事業種目(主たる事業の業種)、資本金(期末現在 の資本金額または出資金額)、資本金1億円以下の普通法人のうち中小 法人等に該当しないもの(非中小法人等★1)、同非区分(同族会社か否 か)など会社のアウトラインが記載されています。 ● 事業年度の期間や法人税申告書の種類 いつの期の申告書であるのか、確定申告書であるのか中間申告書であ るのか、あるいは、修正申告書であるのかが明示されています。 ● 法人税額の計算過程 所得金額に対して法人税が課税されますが、当期の所得金額を基礎に 課される法人税額の計算過程とこの申告書に基づき納付すべき法人税 額、あるいは、還付金額が記載されています。 ● 地方法人税額の計算過程 住民税額とは、国税である「地方法人税額」と地方税である「都道府 県民税額」と「市町村民税額」との合計額のことです。このうち地方法 人税額は、地方公共団体間の税収格差を是正する目的で創設され、平成 26年10月1日以後に開始する事業年度から適用されていますが、その 計算過程が明示されています。 910 重要ポイント! 法人税申告書 別表
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) 税務署受付印 事 業 年 度 の 期 間 と 申 告 書 の 種 類 税 理 士 法 第 30 条 ・ 33 条 の 2 の 書 面 提 出 所 得 金 額 又 は 欠 損 金 額 法 人 税 額11 税務署受付印 法人税申告書を税務署に提出したときは、申告書が提出済みであるという証明として 会社側の控えに「税務署受付印」を税務署に捺印してもらいます。この捺印があれば、 その法人税申告書は税務署に提出した申告書と同じであるという証しになります。 ただし、電子申告をした場合には受付印はありませんが、代わりに税務署から電子申 告を受け付けたという「メール詳細」(または、電子申告終了報告書)があります。このメ ール詳細には、受付番号・受付時間・所得金額・確定法人税額が記載されていますので、 このメール詳細を入手することによって法人税申告書とチェックすることが可能です。 事業年度の期間と申告書の種類 この申告書の対象期間と、この申告書が「確定申告書★2」であるのか「中間申告書★2」 であるのか、あるいは、「修正申告書★3」であるのかがわかります。 法 人 税 申 告 書 別 表 1 ⑴ 0 1 税理士法第30条・33条の2の書面提出 法人税申告書に次の書面が添付されているか否かを明らかにするものです。 ① 税理士法第30条の書面……「税務代理権限証書」のことで、いわば納税者から税 理士に対する委任状に相当するものです。 ② 税理士法第33条の2の書面……税務書類の作成における税理士の関与や審査状況 が記載された書類のことで、税理士からみて申告内容に自信がある場合に添付され るのが一般的です。そのため、この書面の添付があれば、信頼度が高い申告書であ ると考えてもよいでしょう。 所得金額又は欠損金額(1欄) この期の所得金額または欠損金額を示します。『別表4』(28頁参照)で計算された数 字(『別表4』の47①欄に記載されている金額)が転記されたものです。この所得金額 を基礎に法人税額の計算が行われます。 法人税額(2欄) この期の所得金額に対する法人税額は、『別表1(1)』の2欄に記載されますが、そ の具体的な計算は『別表1(1)次葉』で行われます。
12 重要ポイント! 法人税申告書 別表
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)次葉 7 地方法人税額の計算 法 人 税 額 の 計 算 613 法人税額の計算(48〜55欄) 法人税額は、所得金額に税率を乗じることによって計算されますが、資本金が1億円 以下の中小法人(非中小法人★1を除く)か、その他の法人か否かによって適用税率が 次のとおり異なっています。 法 人 税 申 告 書 別 表 1 ⑴ 0 1 6 なお、法人実効税率★4は、法人税率の引下げにともなって平成27年度の32.11%から 平成28年度は29.97%に、平成30年度には29.74%になる予定です(外形標準課税適用法 人の場合〈標準税率ベース〉)。 7 法人税率 中小法人 資本金1億円以下の法人 (48〜50、52〜54欄で計算) 大 法 人 資本金1億円超の法人 (51、55欄で計算) (注1)中小法人の所得金額のうち年800万円以下の部分に対する法人税率は、平成24年4月1日から平成31年 3月31日までの間に開始する期について19%から15%に軽減されています。 (注2)内国法人の海外流出を防ぐとともに、外国法人を誘致するために平成27年4月1日以後に開始する期か ら25.5%から23.9%に、平成28年4月1日以後に開始する期から23.4%に引下げられ、さらに、平成 30年4月1日以後に開始する期から23.2%に引下げられます。 年800万円以下の部分(注1) 19%(15%) 年800万円超の部分(注2) 23.4% 所得金額すべて(注2) 23.4% 地方法人税額の計算(56〜59欄) 地方法人税額は、『別表1(1)次葉』において次のとおり計算されます。 ① 「所得金額に対する法人税額」に課税される地方法人税額 所得金額に対する法人税額(56欄)×4.4%(注3)= 『別表1(1)』の4欄から転記 ② 「課税留保金額に対する法人税額」に課税される地方法人税額 課税留保金額に対する法人税額(57欄)×4.4%(注3)= 『別表1(1)』の9欄から転記 このように『別表1(1)次葉』で計算された地方法人税額は、『別表1(1)』の32 〜37欄に転記され、中間申告分の地方法人税額を控除して「差引確定地方法人税額」 (『別表1(1)』42欄)が算出されます。 地方法人税額(58欄) 地方法人税額(59欄) (注3)現在の地方法人税率4.4%は、平成31年10月1日以後開始事業年度からは5.9ポイント引上げられ10.3% となりますが、都道府県民税率と市町村民税率の合計税率は5.9ポイント引下げられますので、法人の住 民税率の負担は変わりません。
定価はカバーに表示してあります。無断複製・転用等を禁じます。落丁・乱丁本はお取替えします。 カバーデザイン/清水裕久 イラスト/園部多恵子 制作/石川真佐光 印刷/日経印刷㈱ 営業所/東京03(3267)4812 大阪06(6261)2911 名古屋052(332)3511 福岡092(411)0805 編 者 税理士法人 中央総研 発 行 者 金 子 幸 司 発 行 所 ㈱ 経 済 法 令 研 究 会 〒162-8421 東京都新宿区市谷本村町3- 21 電話 代表 03(3267)4811 制作 03(3267)4823 2007年11月9日 初版第1刷発行 2017年6月20日 2017年度版第1刷発行 図解でわかる 提案融資に活かす「法人税申告書」の見方・読み方 2017年度版 ISBN978-4-7668-3357-7 Ⓒ Chuo-soken 2017 Printed in Japan
著者略歴 小島 興一(こじま こういち) 税理士法人中央総研 代表社員 会長 公認会計士・税理士 現在、中央総研グループとして金融機関、上場会社等約2,800社の企業顧問として実務にあたるかた わら、経営セミナー、相続税対策、法人税節税セミナーなどの講師として活躍中。 著書『コンサルティング機能強化のための決算書の見方・読み方』『ディスクロージャー時代の企業会 計と連結納税』『税金入門』『わかりやすい決算書の作り方』『法人税パーフェクト・マスター』『給与賞 与退職金の会社税務Q&A』『法人税入門』他、多数 小島 浩司(こじま こうじ) 監査法人東海会計社 代表社員 公認会計士・税理士 現在、公開支援業務、グループ企業の経営戦略コンサルティング業務、日系企業の海外進出支援・会 計税務業務等に携わるかたわら、IFRSや連結経営セミナーなどの講師として活躍中。 著書『ディスクロージャー時代の企業会計と連結納税』『給与賞与退職金の会社税務Q&A』『事例で分 かる税務調査の対応Q&A』『コンサルティング機能強化のための決算書の見方・読み方』『金融機関の ための中小企業海外展開支援実務のポイント』他 “経済法令グループメールマガジン”配信ご登録のお勧め 当社グループが取り扱う書籍,通信講座,セミナー,検定試験情報等,皆様にお役立ていただ ける情報をお届け致します。下記ホームページのトップ画面からご登録いただけます。 ☆ 経済法令研究会 http://www.khk.co.jp/ ☆