Title
正常眼圧緑内障における視神経乳頭の眼圧レベルによる形
態的差異( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
白木, 玲子
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第625号
Issue Date
2005-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14508
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 白 木 玲 子(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 625 号 平成17 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当 正常眼圧緑内障における視神経乳頭の眼圧レベルによる形態的差異 (主査)教授 山 本 哲 也 (副査)教授 伊 藤 和 夫 教授 犬 塚 論文内容の要旨 正常眼圧緑内障(NTG)と原発開放隅角緑内障(POAG)は,その共通の特徴である緑内障性視神経症でま とめられ,一つの疾患と考えられるようになってきているが,POAGとNTGにおける視神経乳頭や視野の差異 を指摘する報告も多数あり,両病型間での病因,病態の相違が指摘されている。また最近ではNTGと診断され た症例でも眼圧の差によって,視野障害様式や乳頭形態の相違があるとの報告もなされており,NTGにおいて も眼圧レベルに応じて,病因,病態の相違が存在する可能性があると考えられる。 NTGにおけるサブタイプの存在の傍証として,今回我々はハンフリー静的視野検査の視野指標であるmean deviation(MD)が-10.00dB以上の初期から中期のNTG眼において,無治療時の眼圧レベルにより視神経乳頭形 態の相違があるか否かを,ハイデルベルグレチナトモグラフ(HRT)を用いて検討したので報告する。 [対象と方法] 1.対象 岐阜大学眼科において経過観察したNTG患者のうち,ハンフリー静的視野検査(中心30-2プログラム)のFull threshold法においてmean deviation(MD)が-10.00dB以上 屈折異常(等価球面値)が-7.5D以上,矯正視力 0.7以上,内眼手術の既往無し,を満たす症例を対象とした。選択基準を満たすNTG症例を,眼圧降下剤未使用 下で半年以上経過観察期間中に両眼の眼圧が常に14mmHg以下の症例(低眼圧群)と最高眼圧が17∼21mmHg の症例(高眼圧群)の2群に分類した。なお,最高眼圧が15∼16mmHgの症例は除外した。また,両群間の年齢, 屈折異常(等価球面値),MD,HRT乳頭パラメータのdisk areaをマッチングさせ,年齢と屈折異常,MDにつ
いてはMann-Whitney U testで,disk areaについてはBonferroni/Dunn testで両群間の有意差がないものと
した。 2.HRT検査 対象眼に対し,無治療下で視野検査とHRT検査を3か月以内に施行した。HRT検査は同一検者が無散瞳下で 画角100 の画像を3回測定し,平均画像を作成後,同検者がcontourlineを決定し,解析に用いた。なお,平均 画像ピクセルの標準偏差が30〟m以上の画像は解析から除外した。 本研究で,我々は視神経乳頭領域を,耳下側,耳側,耳上側,鼻上側,鼻側,鼻下側の6セクターに分類し, 両群のグローバルおよび各セクターにおいてのHRT主要乳頭パラメータの比較を行った。 3.統計学的解析方法 両群のグローバル及び6セクターにおけるHRT主要乳頭パラメータの比較検討をBonferroni/Dunn testを用 いて解析した。また,両群を判別するのに寄与した乳頭パラメータ(グローバル及び6セクター)についての検 討を,前述の乳頭パラメータを説明変数としてステップワイズ回帰で解析した。解析にはStatView for Windows(version5)を用い,危険率5%未満を統計学的有意差ありとした。 [結果] 正常眼圧緑内障204例のうち選択基準を満たす患者は低眼圧群で22例36眼,高眼圧群で30例40眼であった。両
群間において年齢,屈折異常(等価球面値),視野指標のMDをMann-Whitney U testで,HRT乳頭パラメータ のdisk areaをBonferroni/Dunn testで両群間の有意差がないものとした結果,低眼圧群19例19眼,高眼圧群19
例19眼が選択された。両群間において,男女比や視野指標のcorrected pattern standard deviation(CPSD)
については有意差がなかったが,無治療下での平均眼圧,最高眼圧,最低眼圧,眼圧変動幅においそ高眼圧群は 低眼圧群と比較して有意に高値を示した。
HRTグローバル解析では高眼圧群と比較して低眼圧群のcup/disk arearatio(C/D ratio)が有意に大きかっ
た。セクター解析では,耳側,耳上側,耳下側,鼻上側,鼻下側において両群間で有意差のあったパラメータは なかった。鼻側については高眼圧群と比較して低眼圧群のrim volumeが有意に小さかった。またステップワイ ズ解析で,両群の判別に寄与する乳頭パラメータとして,鼻側のrim volumeが選択された。 [考接] POAGとNTGにおける,緑内障性変化の相違については,以前から報告されている。乳頭形態に関しては, POAGと比較してNTGの視神経乳頭は,有意に陥凹が大きく,rim幅が狭いなどが指摘されており,特に下側と 耳下側でより強いrimの狭細化があったと報告もある。また,NTGとPOAGの視野進行パターンの相違も報告さ れており,POAGと比較してNTGの視野変化はより局所的で,深い感度低下を示し,固視点に近い部位の,特 に鼻上側に存在するなどが指摘されている。このようなPOAGとNTGの相違については,両者が単に眼圧が正 常か否かだけではなく,その発症機序や病態生理に違いがあるのではないかと指摘する報告が多い。 また最近ではNTGにおいても,経過中に常に低眼圧を示すものと高眼圧を示すものを比較した場合,視野障 害や乳頭形態の差異盲指摘する報告が散見される。NTGにおいて,経過中i;より高眼圧を示す群の方が,びま ん性に視野障害が進行していたとし/、う報告や,低眼圧を示す群が乳頭循環不全を現す乳頭周囲網脈絡膜萎縮が, 特に下方乳頭で有意に大きかったとする報告があり,NTGの中でも低眼圧群と高眼圧群における病因,病態の 違いを指摘している。 今回我々の結果も過去のPOAGとNTGとの比較,またはNTGの低眼圧群と高眼圧群との比較の結果と同様, 同じ視野進行病期を持っにも関わらず,より低眼圧の緑内障の方が視神経乳頭変化の進行が認められた。 今回の研究では,グローバル解析において,高眼圧群と比較して低眼圧群のC/D ratioが有意に大きく,rim
area,rim volume,Cup areaで傾向差があった。またセクター解析では,高眼圧群と比較して低眼圧群の視神 経乳頭変化が耳側ではなく,鼻側で強く生じていたこと,またそれを反映して両群を分けるのに最も敏感なパラ メータとして鼻側のrim volumeが選択されたことは興味深いことだと思われる。POAGと低眼圧緑内障 (LTG)の比較において,LTGの方が視野非障害部位における陥凹が大きかったとする報告があり,LTGには視 野障害発現に先立って陥凹が拡大する何らかの病態が,存在しているのではないかと指摘している。我々の結果 はNTGにおける低眼圧群と高眼圧群の比較であるが,NTGにおいてもより低眼圧の方が視神経乳頭陥凹拡大と rimの罪薄化が全体的に起こっており,特に鼻側に強く変化している可能性があると思われた。 今回,我々はHRTを用いて視野病期,年齢,屈折値に差がないNTGの低眼圧群と高眼圧群における視神経乳 頭の形態比較を行った。高眼圧群と比較し低眼圧群では鼻側において有意に進行しており,NTGにおいても病 態の違いを有する複数のタイプの存在が推定された。 論文の審査結果の要旨 申請者 白木玲子は,正常眼圧緑内障症例において,低眼圧群と高眼圧群の視神経乳頭の形態変化を比較し, 鼻側に変化に違いがあることを示した。この知見は正常眼圧緑内障において病態の違いを有するサブタイプの存 在が推定されるものであり,正常眼圧緑内障の病態解明に少なからず寄与するものと思われる。 [主論文公表誌] 正常眼圧緑内障における視神経乳頭の眼圧レベルによる形態的差異 日本眼科学会雑誌109,19-25(2005)