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癌化学療法の問題点

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62 シンポジウム ( 東 女 医 大 誌 第55巻 第 2

)

頁 162-166 昭和60年2月 癌治療の進歩

(7)癌化学療法の問題点

東京女子医科大学第一内科学教室 ミゾ グチ 教 授 溝 口 ヒデ アキ

秀 昭

(受付昭和59年12月25日〉 はじめに 癌の化学療法による成績は大きく改善されつつ ある.なかでも急性白血病や悪性リンパ腫に代表 される血液系腫虜の化学療法の成績は, 20年前と は比べものにならぬくらい進歩した. そのような進歩の一因は種々の抗腫虜剤が開発 されたこと,また,それらを用いた多剤併用療法 が単剤による治療に比べ,良好な治療成績が得ら れることが明らかになったことである.また新し い抗生物質の大量療法や成分輪血などの利用によ る支持療法の進歩も大きな要因となっている. 本稿で、は急性白血病の治療を中心にしてこのよ うな進歩の中で残された問題点を挙げ,それらに 対して現在行なわれている解決の努力ならびに将 来の展望について述べてみたい. 1.急性白血病治療の現況 急性白血病の治療は図

1

に示すように寛解導入 療法,強化療法と維持療法の

3

段階からなってい る.寛解導入療法で完全寛解とし,強化療法でさ らに完全な完全寛解とし,維持療法でその状態を 維持する. 寛解導入療法は急性骨髄性白血病CAML)では 主に夕、、ウノルピシン CDNR),シタラピン CAra C), 6メノレカプトプリンC6MP),とプレドニソロ ン CP)による DCMP療法が用いられる(図2). 夕、、ウノルピシンのかわりに同じanthracycline系 のアクラシノマイシンAを用い, AraCのかわり にAraCの誘導体のエノシタビン(BH・AC)を用 白血病細胞数 f化学療法rAML・DCMP1012(lkg) 初発時←寛解導入療法 lALL:VP 問 問L生弗l輸血〕 完全寛解←強化療法 10. (1 g) さらに完全T 完全寛解工←維持療法 10'ー10'(l-10mg) 図 l 急 性 白 血 病 の 治 療 計 画 急性非リンパ性白血病 CMP療法 cytarabine + 6MP + prednisolone DCMP療法 daunorubicin + CMP BH-AC・DMP療法 BH-AC+daunorubicin + MP BH-AC.AMP療法 BH-AC+aclacinomycin + MP 急性リンパ性白血病 VP療法 vincristine十prednisolone DVP療法 daunorubicin + VP AdVP療法 doxorubicin + VP l-AdVP療法 l-asparaginase+ AdVP 図2 急 性 白 血 病 の 治 療 法 いたB H・A C

A M P療法が行なわれている.一方, 急性リンパ性白血病 (ALL)ではどンクリスチン とプレドニソロンを併用するVP療法あるいはこ れにダウノルピシンを加える DVP療法が広く行 なわれている このような多剤併用療法は単剤による治療に比 べ,その治療成績はよい.単剤では20%前後の完 Hideaki MIZOGUCHI, M_D_ (Department of Medicine 1, Tokyo Women's Medical College) : Problems of cancer chemotherapy_

(2)

全寛解率であるのに比し多剤併用療法を行なうと 表1に示すようにAMLでは全国平均で68%,本 学では69%の完全寛解率であり,ALLでは全国平 均で

55%

,本学では

80%

の完全寛解率である.こ のように多剤併用療法の成績が良い理由として, ①作用の増強,②副作用の分散,③耐性出現の抑 制が挙げられる. なお最近急性白血病の分類にFAB分類がなさ れている.それはフランス,アメリカ,イギリス の血液学者が集り1976年に提唱した分類で、ある. それによれば,AMLとALLの分類にベルオキシ ダーゼ、反応を用い,白血病細胞のうちベルオキシ ダーゼ反応陽性細胞が

3%

未満であればALLと する.この方法が徐々に我国でも用いられるよう になり,その結果としてこれまで我国の成人では 少ないとされたALLが欧米と同じように約

30%

を占めるようになった(表1入 11.化学療法の問題点 現在では急性白血病を化学療法で高率に完全寛 解導入が可能となった.しかし表

2

に挙げるよう ないくつかの間題点がある. 1.治療効果の予測 表1 急性白血病の完全寛解率 05-65歳〕 CR 例数(%) AML I 全 国 69(68%) 女子医 18(67%) ALL 全 国 23(55%) 女子医 12(80%) 注ALL ベノレオキシダーゼ陽性<3% 表2 化 学 療 法 の 問 題 点 1.治療効果の予測 2.不 応 例 3.長期生存率 4 支持療法 表3 治 療 効 果 の 予 測 1.ヌードマウスへの腫蕩の移植 2腫蕩コロニ一法 3.薬剤jレ セ プ タ ー 計 102 27 42 15 一 多剤併用療法は確率的には

50-80%

の例で有効 であることがわかっているが,個々の症例に有効 であるか否かは明らかでない.そこで個々の症例 で薬剤の有効性が予測できないかと表3に示すよ うな種々の方法が模索されている(表3

その一つがヌードマウスに腫蕩細胞を移植し, そこで種々の薬剤の効果を判定し有効な薬剤を治 療に用いようとする方法である1) しかしこの方 法では腫蕩細胞が移植される例は僅かであるし, 移植されても細胞が増殖するまでに数カ月かかる ので臨床的には用い難い. 次 に 最 近 開 発 さ れ た の が 腫 虜 コ ロ ニ 一 法 で あ る.腫療細胞をバラバラにし,軟寒天あるいはメ チルセノレローズの中に埋めこみ, コロニーをつく らせる.その培養系に種々の抗腫蕩剤を直接加え たり,あるいは培養前に一定時間抗腫蕩剤と腫蕩 細胞と瞬置した後に塙養し,コロニー形成に与え る薬剤の影響を観察する.その結果コロニー形成 をより抑制する薬剤を治療に用いる方法である. Parkらは腫蕩コロニ一法で有効と考えられる薬 剤をAMLに用いると15例中11例で完全寛解とな り,有効でないと考えられる薬剤を用いると15例 中2例 し か , 完 全 寛 解 に な ら な い と 報 告 し て い る2) つまり腫虜コロニ一法で有効な薬剤の予測 ができるとしている.米国ではこのような腫蕩コ ロニーを検索する検査センターがあるほどであ る. この方法の欠点は培養に7日位かかること, またコロニーを形成しないAMLも

30%

位あるこ となどである. 次に白血病細胞の薬剤レセプターの有無から, その治療効果を予測する方法である.古くから行 なわれているのはステロイドレセプターの検索で ある3) つまり,白血病細胞のステロイドレセプ ターの多い例はステロイドホルモンが有効で,少 ない例は無効であると報告されている.同様のこ とは乳癌におけるタモキシフェンレセプターの多 寡とその治療効果との関係,前立腺癌における女 性ホルモンレセプターの多寡とその治療効果との 関係が報告されている.ALLあるいは慢性骨髄性 白血病の急性転化 CCML-BC)の治療にビンカア ルカロイドとプレドニソロン併用療法

CVP

療法〉

(3)

64 がよく用いられている.我々はビンカアルカロイ ドの一種であるビンデシンと白血病細胞の結合能 から,そのレセプターの多寡を判断し,その治療 効果との関係を検討した.その結果ALL13例の うち,ビンデシンの結合能が300fmol/1Q6細胞以上 の9例 は 全 例VP療法で完全寛解となり, 300 fmol/106細胞未満の4例では2例しか完全寛解と ならなかった(図3).またCML-BC13例のうち u) 芯 900 U @ Cコ

、¥ O E 匂F 泊 600 c qz コ ..c U C u) {l300 c 〉 U

.

.

.

.

.

O 由 a

ω

B -"- -4ト Responders Nonresponders 図3 急性リンパ性白血病における白血病細胞のビン デシン結合能と VP療法の有効性

0:

VP療法有効例.・:VP療法無効例 u)

900 u @ o

-、、、

ε 、争時 'oii600 C Tコ E 4コ 由 z 的 {l300 E 〉 U 匂 -U Q) c. (/) 。 。

.

.

2

.

.

Responders Nonresponders 図4 慢性骨髄性白血病急性転化例における白血病細 胞のピンデシン結合能とVP療法の有効性

0:

VP療法有効例,・:VP療法無効例 -164 ピンデシン結合能が300fmol/106細胞以上の 7

6

例がVP療法で完全寛解となり,300fmol/106 細胞未満の6例全例がVP療法で完全寛解となら なかった(図

4

入以上の結果から明らかなように ピンデシンレセプターの多寡からVP療法の有効 性を予測できると考えられる.このレセプターの 検索は,数時間でできるので臨床的に用いること ができると考える4)5)

2

.

不応例の治療 1) 新しい治療薬の導入 現在AMLあるいはALLに対しこれまで述べ たような多剤併用療法を行なって高率に完全寛解 となる.しかし20-30%の例は寛解とはならない. そのような例に対し表 4に示したような治療法が 考えられる. まず新しい化学療法剤の導入である.現に我々 もdacarbazinを含む多剤併用療法を行ない, T 細胞性白血病リンパ腫の治療を行なった

. T

細胞 性白血病リンパ腫は従来の治療で難治とされる が,その5例をdacarbazinを含むCYVADIC療 法で加療したところ 3例で完全寛解となり 1 例で部分寛解となっている.インターフエロンは 化学療法剤ではないが,多発性骨髄腫の約20%の 例で有効である.我々も

2

例で有効で

1

例では 肝に形成された腫蕩がαーイシターフエロンの投 与で消失している. 2)従来の治療薬の使用法の改善 これまでの治療で不応とされた例あるいは再発 表4 不応例に対する治療法 1.新しい化学療法剤の導入 ① VP16 ② AMSA ③ 5-azacytidine ④ dacarbazin ⑤インターフエロン 2 従来の治療薬の使用法の改善 ① Ara C大量療法 ② Ara C大量ーl-asparaginage療法 ③ Ara C少量療法 ④ Ca代謝括抗剤の使用 3_骨髄移植 ① 自 家 骨 髄 移 植 ② 同 種 骨 髄 移 植

(4)

例に対し, AraC大量療法が行なわれ,良い成績 が報告されている.その方法はAraC 3g/m212 時間ごとに投与し, これを6日間計12回投与する 方法である.これによって50-60%の例で寛解と なることが報告されている6)7) さらにAraC大量 療法にひきつづき 1・asparaginaseを投与すると さらによい成績が得られると報告されている8) 我々も数例に試みたが満足すべき結果は得られて いない.逆にAraC 10mg/m212時間ごとに皮下 注する Arac徴量療法も報告され,前白血病状態 を改善したとされる的.Ca代謝措抗剤はビンカア ルカロイドやアンスラサイクリン系薬剤が細胞内 から出るのを抑制する作用がある10) 従ってこれ らの薬剤と共にCa代謝桔抗剤を投与すると,実 験動物における治療抵抗性の腫蕩に有効になると 報告された.現在,臨床的応用が進行中である. 3) 骨髄移植 寛解期に患者の骨髄細胞を凍結保存し,再発時 に強い化学療法を行なったあとに,その骨髄細胞 を輸注するとし、う方法がある.つまり自己骨髄移 植である.この方法の問題点は保存骨髄中に残存 する白血病細胞をいかに除くかということであ る.そのためにその白血病が

T

細胞性白血病であ れば抗

T

抗体で処理し,白血病細胞をなくす試み がなされている. また, HLA抗原のあった同胞の骨髄を採取し, 患者に放射線照射や強力な化学療法を行なった後 に輸注する方法がある.つまり同種骨髄移植であ る.この方法で化学療法抵抗時あるいは再発時に 治療すると 3年生存率は30%である.

3

.

長期生存率 急性白血病の完全寛解率はこれまで述べたよう に改善されたが,現在の化学療法だけでは3年生 存率は10-30%と低い.この点が化学療法の今後 に残された問題である.その一つの方法は寛解時 にHLAの合った同胞の骨髄を移植する方法で, それによって30歳未満のA M Lでは50%の5年生 存率を得ており11), ALLでは約40%の3年生存 率,約30%の5年生存率が得られる.ALLの成績 はあまりよくないがA M Lの成績は満足すべきも のであると思われる. 65 HLAの合った同胞のいない場合は,強力な後 期強化療法が必要のように思われる.つまり寛解 に入って1年位たったところで強力な化学療法を 行なう方法である. 免疫療法もその目的に沿う治療法である.多く の治療成績がretrospectiveなものでありその成 績を評価しがたい.我々は研究班をつくりレパミ ゾールの効果をprospectiveqこ検索した.その結 果ALLには延命効果は認められなかったが, AMLでは投与群で3年生存率が50%と投与しな い群に比し有意に高い生存率を示した. おわりに 急性白血病治療の現況と問題点,さらにそれを 今後L、かに解決すべきかについて述べた. 文 献 1)区itahara,T.: Establishment of a human leu -kemia cellline in nude mice and its application to the screening system of antileukemic agents Acta Haematol Jpn 43 1034-1040 (1980) 2) Park, C.H., et al.: Prediction of chencother -apy respons巴 inhuman leukemia using an in vitro chemotherapy sensitivity test on the leu -kemic colony-forming cells_ Blood 55 595-601 (1980) 3) 8asaki, R., et al.: Terminal deoxynu-c1eotidyl transferase activities and glucocor -ticoid receptors in leukemia_ Br J Cancer 44 63-67 (1981)

4) Totsuk:a, K., Oshimi, K. and Mizoguchi, H. : Vindesine receptors in cells of a human leu -kemia cellline_ Br J Cancer 46392-396 (1982) 5) 戸塚恭一・押味和夫・溝口秀昭:白血病細胞のピ ンデシン結合能と白血病型および治療効果.医学 のあゆみ 122 1144 -1146 (1982) 6) Willemze

R.

et al.: High dose cytosine arabinoside in the management of refractory acute leukamia_ Scand J Haematol 29 141-146 (1982) 7)Herzig

R.H.

et al.: High-dose cytosine arabinoside therapy for refractory leukemia_ Blood 62 361-369 (1983) 8) Capizzi, R.L., et al.: Treatment of poor risk acute leukemia with sequential high-dose ARA-C and asparaginase_ Blood 63 694-700

(1984)

9) Wisch, J.8., et al.: Response of preleukemic syndromes to continuous infusion of low-dose cytarabine_ New Engl J Med 309 1599-1602

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-165-66 (1983) 10) Tsuruo

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11) Grouse

L.D. and Y oung

R.区.: Bone mar町

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参照

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