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登校拒否症の背景に関する検討

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Academic year: 2021

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72 原 著 タ シロ 田代 〔東女医大誌 第57巻 第10号頁1178∼1181昭和62年10月〕

登校拒否症の背景に関する検討

東京女子医科大学第二病院 小児科 ヒカル タムラ コ ウメヅ リヨウジ クサカワ サンジ

光・田村まり子・梅津 亮二・草川 三治

(受付 昭和62年6月23日)

Studies on the Background of‘‘School Refusal”

Hikaru TASHIRO, Mariko TAMURA, Ryoji UMEZU and Sanji KUSAKAWA

Department of Pediatrics(Director:Prof. Sanji KUSAKAWA) Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital

Acomparative study on school refusal was conducted between sixty−three children(twenty− seven of them were admitted to our hospital)and sixty一丘ve non−school refusal children(control

group).

The following results were obtained,

(1)Their ages ranged from nine to seventeen, with a mean of fourteen years.

(2)As to their domest孟。 environment, twenty−nine percent of them had no sibillings which was higher than eleven percent for control group. And Inost of their mothers were working out. (3)In their schooHife, the major三ty of them answered had few friends or not.

(4)They usually have symptoms, for example“dif且culty for wake−up”,“wake in a fretful

mood”, which are applied to so・called“Orthostatic dysregulation−0.D.”

(5)Almost of their character were nervous, negative and precise,

Our studies suggest the typical image of school refusal and they were explained that there were overprotection, excessive interference, prematurity for their sociaty on their background.

緒 言 現在,いじめ,非行,.家庭内暴力とともに「登 校拒否」も社会的問題のひとつとしてとりあげら れている.これは昭和60年頃より散見され,増加 の一途をたどり,またその発症因として様々な要 因を挙げることができる. 今回我々は,当科における「登校拒否」を主訴 に来院した63例(うち入院27例)について,家庭 環境,学校生活さらに体質的要因,性格など患児 をとりまく背景を中心に,対照として任意抽出し た65例のコントロール群と比較検討した. 対象と方法 昭和60年11月から61年7,月までに当科に来院し た登校拒否児63例と対照群65例を対象とし,以下 1178 の内容でアンケート調査を行った. 1.家族構成 2.父親の職業 3.母親の識業の有無 4.学校生活について 友人関係・学校が楽しいかどうか・所属ク ラブの有無 5.体質的要因 6.性格 登校拒否群と対照群とで,比較し差がみられた 項目については,κ2一分布に基づき,信頼度95%で 有意差検定を行った. 結 果 1.調査対象の年齢分布(図1)

(2)

73 人 数 人 (人) 20 10 0 登校拒否群 []:男 囚:女 数 〔兄弟の数〕

910111213141516τ7

(人)歳 20 10 0 〔父親の職業〕 登校拒否群

口:男 囮・女

91011121314151617

歳 ∼ 図1 年齢分布 年齢は9歳∼17歳に及び,14歳にピークがみら れる.男女別では登校拒否群において男児29人, 女児34人とやや女児に多い傾向がみられた.ピー クである14歳では,男児5例に対し女児は1!例で あった. 2.家庭環境における比較(図2) 登校拒否群ではひとりっ子が29%を占め,対照 群の11%と比較して有意に多くなっている.また 父親の職業に関しては,両群とも会社員が第一位 を占め,社会的傾向から考えても,特に有意と判 断できる項目はない.不明という項目が登校拒否 群で11%,対照群で3%を占めているが,この中 には父親が死亡している,両親が離婚して現在母 親にひきとられている者が含まれる.母親の職業 に関しては,母親が働いている,と答えた者が登 校拒否群で60%,対照群で40%を占め,働いてい る母親が登校拒否群で有意に多くな:っている.登 校拒否群における不明5%には,母親が死亡して いる者,両親が離婚して父親あるいは祖父母にひ きとられている者が含まれる. 3.学校生活における比較(図3) 〔母親の職業の有無〕 ∫*母親が 働いていない 35%易 母親が 働いている 60% 対 照 群 4人以上 *i言頼度95%て 有意ど認めた もの 〔友人関係〕

螺難

黙黙 毒 嘉 % 会社員 66% が 犠霧ない 図2 家庭環境における比較 登校拒否群 *友人が 1 クない

友人が 多い 46% 楽蕩 〔学校生活〕 友人なし 母親が 働いている 40% 対 照 群 *学校生活は 楽しくない 98% わから 友人が:熾 雛易 友人が多い 74% 〔所属クラブの有無〕 *{言車頁度95%で 有意と認めた もの *所属なし 37% 所属あり 63% 膿 芒 図3 学校生活における比較 所属あり 93% 一1179一

(3)

74 友人関係では友人が少ないまたはなしと答えた 者が登校拒否群で合計54%と対照群の合計16%に 対し,大ぎな差がみられた.学校を楽しくないと 考えている者は登校拒否群で98%と圧倒的に高 く,また所属クラブがなしと答えた者は,37%に も及んだ. 4.体質的要因における比較(図4) 登校拒否群では,朝起きがつらい,寝起きが悪 い,などいわゆる起立性調節障害でみられる症状 を有している者が多く,全例が何らかの症状を 持っていた.一方対照群では23%に相当する者が, このような項目に該当するものがないと答えてい る. (%) 100 50 0 口:登校拒否群 匿z】:対照群 (%) lGO 50 0 竃 考 嘉 ξ 晋 ゑ 碧 聖 義 ち1 酵 蓼 峯 ε 彗 奮 図4 体質的要因における比較 [=1;登校拒否群 zコ・対照群

1籠1繧ll

図5 性格における比較 5.性格における比較(図5) 登校拒否群で神経質,消極的,几帳面をあげた ものが多く,積極的,いいかげん,気ままを選択 した者が多かった対照群とは相反する結果を得 た. 考 察 登校拒否の概念は明確にされておらず,現時点 ではその症状を述べているにすぎない.そしてそ の成因は,心理的なものから始まって体質的なも のさらに環境因子と様々であり,それらが複雑に 絡み合っていると考えられる. 1941年Johnsonら1)は,“Schooi phobia”につい て,学校や勉強が嫌いなのではなく,学校に行か なければならないというi義務感をもっている.し かし内向的,神経質などの性格および友人関係の ぎこちなさなどが加わって「学校へ行かない」状 態がおこる,と述べている.井原2)は登校拒否を分 離不安,優等生の息切れ型,甘やかされタイプと 3つに分類しており,またCoolidge3)や山本4)は基 盤に性格障害があると述べている. 登校拒否の背景については従来より様々な角度 から論じられているが,一般的に家庭的要因とし ては,平均的な中流階級が多く,患児への父親の 態度は控え目であり,権威喪失が指摘されている. 一方母親は過干渉,過保護であり不安感も強い. そして子供は「良い子」として育てられてきたが, それ故に自己抑制が強く,心理的葛藤がおきてい て,自己概念,自己理想の発達とともに,何らか の理由づけをし,登校拒否をおこす.次に学校生 活においては,年齢により多少異なるが,患児の 消極的な性格も関与し教師および生徒間の理解度 の低さにより友人関係がうまくいかないことが多 い.白橋5)は,登校拒否を児童のパーソナリティの 発達上のつまづきが学校不適応の形で発現したも のとし,その成因が児童の内的条件と家庭,学校 内の問題さらに社会文化的な背景の変遷にあると 述べている. 今回の我々の調査では,家庭においてはひと りっ子で母親が働いていることが多く,学校では 友人が少なく,性格は神経質,几帳面などと典型 的な登校拒否児の像を浮かび上がらせた.ひと 一1180一

(4)

「/b りっ子に多いという結果は,親の過干渉,過保護 あるいは分離不安を示唆し,母親が就労している 児に多いという結果に関しては,このような報告 はあまりみられないが,母子関係の稀薄さがうか がえると思われた.また本症の体質的因子につい ては今まであまり重視されていないが,起立性調 節障害(0.D.)にみられる様々な症状をもつこと が多い.阿部ら6)は,起立性調節障害と診断され, 後に登校拒否症と判別した33例について,立ちく らみ,目まい,朝起き不良など0.D.児と同様に訴 え,性格的にも内向的,非社会的である,と述べ ている.我々の調査でも,登校拒否群全例が,0. D.児にみられる諸症状をもちあわせていた. 登校拒否児は今後も増加していくと予想され る.その成因については,さらに広い視野から深 く検討し,現代社会の風潮を見直す必要があると 思われる. 結 語 登校拒否児63例(外来患者36例,入院患者27例) と対照児65例について家庭環境,学校生活,体質 的要因,性格の上から比較検討を行なった. 1)登校拒否児にはひとりっ子が多く,母親が何 らかの職業をもち,学校では友人は少なく学校を 楽しくないと考えている子供が多いという結果を 得た. 2)性格的には神経質,几帳面,消極的という性 格をもつものが多く,体質的には朝起きがつらい, 寝つきが悪い,めまい,立ちくらみを訴えるもの が多かった. 文 献

1)Johnson AM, Falstein EI, Szurek SA et a星:

School phobia. Am J Orthopsychiatry 11:

702−708, 1941

2)井原成男:登校拒否.小児科診療 49:766−768, 1986

3)Coolidge JC, Willer ML, TessmaR E et al: School phobia in adolescence, A manifestation of severe character disturbance. Am J Orthop・ sychiatry 30:599−607, 1960 , 4)山本由子:いわゆる学校恐怖症の成因について. 精ネ申経誌 66 :558−583, 1964 5)白橋宏一郎:登校拒否の背景。小児内科 14: 597−601, 1982 6)阿部忠良,立川和子,松田素子ほか:登校拒否. 小児内科 14:657−660,1982 一1181一

参照

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