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談話における「はい」の機能―応答詞としての「はい」からリズムとりの「はい」まで― 利用統計を見る

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(1)

い」からリズムとりの「はい」まで―

著者

三宅 和子

著者別名

Miyake Kazuko

雑誌名

東洋大学短期大学紀要

30

ページ

13-25

発行年

1998-12

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00012209/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

19981220日発行

談話における「はい」の機能

ー一応答詞としての「はい」から

リズムとりの「はい」まで

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談話における「はい」の機能

応答詞としての「はい」から

リズムとりの「はい」まで

宅 和 子

1. はじめに

本稿は、 談話上で「はい」が果たしている役割について考察する。 「はい」は応答詞として論じられたり、 あいづちの代表的な表現として論じられること が多いが、 そのほかにも多様な使われ方がある。 本稿は、 さまざまな談話に現れる「はい」の機能を体系的にとらえる試みとして、 談話 進行の過程で現れる、 応答詞でもなく、 あいづちともいい切れない「はい」に特に注目す る。 論考の手順は、 まず先行研究を「はい」を文法的観点から扱った研究と、 談話分析の 観点から扱った研究に分けて概観し、 後半ではそれらの研究では指摘されていない「はい」 の用法を、 放送談話資料を使って検討する。

2. 応答詞としての「はい」の機能

「はい」についての研究はこれまで、 大まかに分けて、 文法的観点からの分析と談話研 究の立場からの分析が行われてきたといえる。 文法的観点からの分析の例として日向(1980)、 奥津(1989)、 沖(1993) を取り上げる。 これらはいずれも「はい」の談話における機能をさぐっているが、注1「はい」は基本的には 応答詞(語)であるという、 品詞論的扱いを議論の出発点としていることから、 のちに述 べる談話分析のアプローチとは異なるものと考えられる。 日向(1980) は、「はい」と「ええ」はともに相手の発話を受ける応答語であるとする。 また、 呼びかけ語と考えてもいいような機能があるほか、「あいづちや間投声として実際 の談話に多用される」と述べている(p.215)。 また、 三宅(1959)を取り上げ、 教室での 出欠をとる際の返事「はい」は信号詞として、 応答詞の「はい」と区別することもできる という考え方を紹介している。 日向は同じ肖定応答語のなかでも、「はい」が使えて「え え」が使えない場面があることに注目し、「応答語の第一義的な機能は相手の発話を受け たという反応にある」が、「はい」が「相手の発話に対する敬意の伴う認知応答」である

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のに対し、「ええ」は「自分の気持ちの動きを甚底とした相手の発話に対する同意応答で ある」(p.216、 下線筆者)と考えた。注2 これを「はい」を中心に言い換えれば、〈応答語「はい」の第一義的機能は 相手の発 話に対する敬意を伴う認知応答であり、 同意の意味は含まれない〉ということになり、 「はい」を含む発話に同意の意味がでてくるのは、 むしろその発話の「はい」を除いた部 分の意味からであると考えることができる。 日向の論考は「はい」の根源的な機能について考察している点で注目されるが、 基本的 には応答語というカテゴリーに沿た論の開である。 そのため、 論文の最後にあいづ ちゃ間投声としての 「はい」「ええ」の方がむしろ「はいj「ええ」の本質的な機能を「う ん」とともに表しているかもしれない」(p.227)と述べ、「はい」の本質を探るには「は い」が応答語であるという認識から離れる必要性を示唆しているが、「あいづちゃ間投声」 についての論考にまでおよんでいないのは残念である。 いっぽう奥津 (1989)は分析した談話資料注3のなかで、「はい」と「いいえ」がどのよ うな機能をもち、 どれほどの頻度で現れるかを調べている(表1参照)。 奥津の場合も「は い」と「いいえ」を応答詞としてとらえ、 それが照応する先行発話との関連で16種類に分 けた。 この表によると「はい」系が圧倒的に多く、 全体の92.1バーセントを占め、「いい ぇ」系はわずか7.9バーセントである。 奥津はこの16種類のうち、 応答詞とはいえないも 表1. (奥津(1989)より抜粋) ( 単位:%) 「はい」系「いいえ」系 1. はじめの「ハイ」 2. 惑動の「イヤ」 3. そうQ 3.5 6.9 2 -*

* (100: O) ( 0: 100) (100: O)

門畠竺幻

•••• •• -:

999075-98 (-(((-( ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 4-1 5 3 _ー -0�0505-0� ー ― ― ― ― ― ― ― ― -l ― ― -_ ― ― 3 - 3 2 0-2 8-9 4 1-4 ― ― ― ― _ _ _ _ ― ― ― ― ― ― ― ― -_ _ _ ― ― _ Q _ _ う Q-Q ろ定―求 YN一ねだ否ー要 _ 一 4t-R 6i7�_& ― ― 卜 T L 9. 呼ぴかけ ---10. コメント 11. あいのて 1.4 12.8 40.5 *-'-* ー (100: 0) ( 89: 11) (100: O) 12. 惑謝 0.5 0: 100) 13. 褒め 1.3 0: 100) 14. 遠慮 0.2 0: 100) 15. 詫び 1.5 0·100) 16. 赦し 0.1 0: 100) 92.1 7.9 ( 91: 9)

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のが2種類含まれていることを認め1.の〈はじめの「ハイ」〉と、 2.の〈感動の「イヤ」〉 を非応答詞であるとした。 表116種類の機能のなかで出現率が一番多いのは 11.の〈あいのて〉であるが、 これ は以下に示した奥津の本文中の例から分かるように、 談話分析の研究ではあいづちとして 分類されているものを指す(下線は筆者。 以下同様)。 (例1) a アノ オトドケ デキレバ b ハイ a トド セテ イタダコウト オモッテ オリマス また奥津は10.のくコメント)も、 実際は11.の〈あいのて〉に入れるべきものかも知れ ないと語っているが、 これも談話分析の研究では充分にあいづちとして含められる種類の (fiJ2) a ワリアイ b エニ 0. と11.のにい」系をともにあいづちと考えれば、 扱った談話資料のなかに現れる

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いJ呆と ―いいえ」系の半数以上(53.3パーセント)を占めることになる。「はい」系 :"�-!'町でいえば57.9パーセントにあたる。「はい」系の機能のうち約6割があいづちで .... "という事実は、 応答詞としての文法的位置づけに注意を向けるだけでは「はい」の体 ノ チイサイ ケド ナカハ ヒロインダヨ 993)は、 奥津の調査を下敷きに、 独自の談話資料と比較しながらより精密に ft;. いー と ―いいえー を考察し、 その機能を体系的にとらえようとしたものである。 沖は の表(表1)に認められる体系的空白(*)のなかに偶 その結果、 奥津が認めている6種の「はい」の体系的 から用例が見つかったことを報告している。 また、 9 見つけている 。 そして、 応答詞の機能の体系を整理す 、 ③は応答が「肯定か否定か」の判断を前提とするかどう --!- .,,._応答に肯定応答詞を期待しているかどうか(「はい」

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は無判断の応答も可能)の分類である。 このような考察の仕方は、 のちにみる談話分析に も通じるものがあり、「はい」の機能体系がかなり細かに分析されているといえよう。 し かし、 沖はその論文の最後で「応答詞の研究は、談話(会話)構造、 音声言語、 運用論 (語用論)といったコンテンポラリ ーな問題を避けて通れない難しさ(おもしろさ)があ る。」と自ら述べて、 これらの考察を今後の課題として残している。 これまでみてきたように、「はい」の機能を体系的に捉えるには、 応答詞という文法カ テゴリーの枠を取り払って考えることが必要であることが示唆される。注4

3. 非応答詞としての「はい」

応答詞の論考の際にはみ出してしまう「はい」の使われ方を考える。 奥津の研究でこれ に該当するのは、 1.の〈はじめの「ハイ」〉のみである。以下に奥津の例をあげる。 (例3) ハイ、 ソレデハ キョウハ チョウゴクリョウリ デスネ! 奥津はこれを、「先行の発話なしに談話の始めに言われるもので、 つまり非応答詞であ る」(p.8)と述べている。 この使われ方は、 教室で教師が生徒に向かって指示を出す場合 のように、 談話の流れをひとつの場面から次の場面に切り変える区切りとしてよく使われ る。 石井 (1997)では談話分析の観点から以下の例をあげているが、 「教師が次の指示の ためにそれまでの流れを区切り、 注目を引きつけるという機能をもっている」(p.22)と 説明している。 (例4) はい、 今日の課題を確認します。 これに類似した機能を、 日向 (1980)では「呼びかけ語」として分析している。 日向は、 「呼びかけ語」を「談話の開始、 あるいは展開の際に聞き手の注意を喚起するよう機能す るもの」(p.220)と定義しているが、 これは奥津や石井が出している例の定義としてもあ てはまる。「呼びかけ語」は「はい」が先行文中に含まれる場合、 あるいは先行文となる 場合、「はい」に組み合わされる発話の機能との関係で大きく次の二つの役割を果たすと 日向は考えている。 ① 「はい」を伴う先行文が提示文となる場合 聞き手の注意を喚起しつつ、 ある事物、 あるいはそれ相当の内容を提示して談話場面を 開始したり展開したりする。

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(例5) (箱入りのケーキを差し出しながら)「住い、 おみやげ。」 ② 「はい」を伴う先行文が行動指示文となる場合 聞き手の注意を喚起しつつ、 聞き手にある行動をとるよう促したり、 指示したりするこ とで談話場面を開始、 あるいは展開する。 (例6) (映画の開始にあたって)「はい、 スター ト。

(看護婦が病人に)「竺ど.、 体温を計って。」 日向(1980)、 奥津(1989)、 沖(1993)のように、 文法的観点を中心に「はい」を分析 した場合、 基本になるのが応答詞というカテゴリ ーであるという点では、 各研究者が一致 している。 しかし、 それに含まれないものの種類として、「信号詞」、「呼びかけ語」、「あ いづち」、「間投声」があげられたことになる。

4. あいづちとしての「はい」の機能

いっぽう談話分析の研究では、「はい」はあいづちの論考のなかで扱われることが多い。 「はい」は「うん」「ええ」などとともにあいづちの代表的表現のひとつである。 談話分析 では、 あいづちに使われる表現の品詞を特定せずに、 それがどのような表現形式で、 誰に よって使われ、 談話のどのような位置に現れ、 どのような働きをしているか、 その機能を 分析するものが多い。 本稿は紙面の制約からあいづち研究を概観する余裕はないが、「はい」がどのように位 置づけられているかを筋単に押さえておきたい。 堀口(1997) は、 先行研究でそれぞれ考察されているあいづちの特徴を、 以下のように 筒単にまとめた。 ①あいづちが出現する位置は、 話し手の発話権のなかである ②あいづちを行使するのは、 聞き手である ③あいづちの機能は、 聞いているということを伝える、 分かったということを伝える、 話 の進行を助けるなどである ④あいづちを表す言語形式は短い また、 これまでの研究のなかでさまざまな視点から語られているあいづちの機能を、 下 記のように大きく5つに分け、 例を示しながら説明を加えた(表現の例は堀口(1997)で

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あげられていたものを筆者がまとめた)。 ①聞いているという信号(「はい、 はあ、 え、 うん」など) ②理解しているという信号(「ええ、 んん」など) ③同意の信号(「はいはいはい、 そうそうそう、 ねえ、 うん」など) ④否定の信号(「いえ、 いいえ、 いえいえ」など) ⑤感情の表出(「ほー ヘーえ 、 まじ」など) このうち、 ④の否定の信号と⑤の感情の表出は、「はい」にはあてはまらない。 したが って、 あいづちとしての「はい」の機能は、 甚本的には①、 ②、 ③を指すこととなる。

5. 談話管理における「はい」の機能

談話分析のなかでも、 談話進行上の「はい」の働きについて分析したものに、 熊取谷 (1992)、 石井(1997)、 岡本(1997)などがある。 熊取谷(1992)は電話会話の開始と終結部における「はい」に注目して分析しているが、 開始部の第一発話としての「はい」は 電話のベルによる「呼び出し」に対する直接応答 として機能する。 また、 終結部の「はい」は先行発話の内容を受け入れるだけでなく、 終 結に向けるための「談話進行の促進」という機能をもつ 、 とまとめている。 石井(1997)は教室談話のなかで現れる「はい」の機能を分析し、 以下の4点を引き出 している(T=教師、C=生徒。箪者注)。 ①教師が次の指示のためにそれまでの流れを区切り、 注目を引きつける機能 (「はい」で注意を引きつけ、「じゃあ」で次の手順を指示) (例7)(生徒が作業を続けているときベルの音がして) T009: はいじゃあ止めてください。 庄巳じゃあ、 今日のお当番の人にね、 読んでもらいます。...... ②授業の流れのなかでその生徒のターンが終わったことを示す合図 (例8)CF033: はい。わたしは「弱み」というところに線を引きました。 T022: はい一゜ CF034: 0さん。

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③内容に関してやりとりされていた文脈を「はい」によって区切り、 次のターンヘの移行 を指示 (例9) CM076: はい。「山には、 あまり人が住んでいないけど、 東京にはたくさんの人 が住んでいます。」 T048: 「いっぱいいるのよー」とじまんしているんだ。 はしヽ。 CM077: Aさん。 ④たたみかけるような「はい」で子供たちの不満を封じ込める (例10) CM093: だって、 男子をみてよ。 そしたら。 T065: 竺い、住い、Mさん、竺巳、 Tさん、 Kさん、竺い、 お願いします。 校長 先生も応援してるから。 いっぽう岡本(1997)は、 日本語母語話者と日本語学習者の電話会話を比較し、 学習者 の失敗例から、 談話管理がスムーズに行われるのに必要な言語表現を考察している。 その 結果、 談話開始部において相手認定をしたり、 終結部の移行場所において終結の意図を受 け入れたりする場合、「はい」を単独に用いても相手のメタメッセージを受け入れたこと にはならず、 単なるあいづちとして受け取られるため、 コミュニケーションが円滑に行わ れないことを明らかにした。 このように、 談話管理の視点で「はい」の機能を考察する研究も増えてきているが、 ま だ充分ではない。 次節では、 これまでの応答詞の研究、 あいづちの研究、 談話管理の研究 ではまだ触れられていない「はい」の用法を提示し、 その機能について考えてみたい。

6. 放送談話にみられる「はい」

放送談話のなかでみられる「はい」には、 これまでの分析ではとり上げられなかった 「はい」の使われ方がみられる。 これまで考察してきた談話分析は、 2人(あるいは教室談話のように複数)の対話者が 直接、 あるいは媒体メディア(電話などの)を通して相互に話を交わすという状況を分析 したものであった。 このような場面での話し手と聞き手は、 同時に情報の与え手と受け手 であることが多い。 ところが放送談話の場合、 話し手と聞き手が画面上で話を交わしてい たとしても、 最終的な情報の受け取り手は視聴者を想定している、 という特殊性がある。

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放送談話と一口にいっても、 ニューように基本的に人で視聴者に話すももあれ ば、 ドラマやバラエティ一番組のように複数の登場人物がさまざまなインターアクション を繰り広げるものもあり、 また、 スポーツ実況やワイドショーの司会のように数人の役割 分担で番組が進行するような形態もある。 ここで取り上げる放送談話は、 この最後の例の ように、 複数の人間が役割を分担して放送する種類のものである。 6-1. 解説者の「はい」:アナウンサーのコメント要求を認知し、 話順を受けとる 放送談話では、 登場する人物の番組進行上の役割がかなり明確に決まっている場合があ る。 ニュースワイド番組やスポーツ放送などがそのいい例であるが、 次の談話例はテニス の世界選手権のテレビ実況放送からのものである。 放送はアナウンサーと解説者の2 人で 行われ、 アナウンサーの役割は主に、 画面に合わせて実際に起こっている事柄を語ること と、 解説者からのさまざまなコメントを引き出すことである。 解説者には適切なポイント で適切なコメントをすることが期待されている。(例11)では、 アナウンサーの発話は平 叙文で、 試合開始直後のプレーヤーの様子を語っているが、 これは、 スポーツ実況放送の アナウンサーが慣用的に用いる解説者へのコメント要求発話である。解説者は、 そのコメ ント要求に対し、 承知した旨の認知応答として「はい」といっている。 (例11) アナ:立ち上がり、 グラフがですね、 いったんベンチに戻らずに、 そのままサー ビスの、 練習をしたまま入ってきました。 解説:はい。 あの今大会、 あのこういうシーンよく見ました。 (後略。 グラフの行動に関する説明が続く) (ウィンプルドンテニス'96女子決勝戦) 次の例も、 アナウンサーが解説者にコメントを要求するときの慣用的手段(逆接の従属 節のみを発話し、 主節を省略)を受けて、 解説は認知応答の「はい」を発話している。 (例12)アナ:井上さんはサンチェスの練習をですね、 解説: はい。 アナ:今日午前中ご覧になってましたけれども。 解説:はい、 みました。 えーまずつびっくりした. (後略。サンチェスの練習の様子が語られる) (ウィンブルドンテニス'96女子決勝戦) し

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(例11)と(例12)でアナウンサーの発話していない部分をあえて復元してみれば、「ど ういうことでしょうか」や「いかが思われました?」などの疑問詞を伴う質問となろう。 このような談話の構造と比較できる例が、 日向(1980 ; 224)にみられる。 日向は「どこ」 「いくら」などの疑問詞を伴う質問文に対して「はい」と応じる場合は、「相手の質問を確 かに聞いたという意味の認識応答である」としている。 疑問詞疑問文はYes-No疑問文と 違って応答詞「はい」「いいえ」を要求しない。 ここで使われている「はい」はしたがっ て、 相手の質問の発話を受け取ったという意味の応答である。 (例13) a 「私のかばんはどこですか。」 b 「はい。 あそこです。」 しかしながら、(例13)ではaの質問への答えbが「はい」を含まなくても文法的には十 分整合性をもつのに対し、(例11)、(例12)の場合にはそうはいかない。 アナウンサーの 発話を解説者がコメント要求の発話であると了解するには、 語用論的知識が必要である。 アナウンサーと解説者がスポツ放送を実況する場にいること、 アナウンサーは解説者の コメントを引き出す役割を担っていること、 解説者はスポーツの内容や選手に関してコメ ントする役割を担っていることなどの共通認識や、 このような場面では平叙文や従属節の みの発話もコメント要求の機能をもちえるといった知識がこれらの会話を成立させる背景 にはあるのである。 そして、 ここにみられる「はい」は、 このアナウンサーのコメント要 求発話を解説者が受け取って応答する、 という会話のつながりをより強く意識させる働き をしていると思われる。「はい」は、 相手の発話の語用論的意味を理解し、 その場面での自 分の役割を了解し、 渡された話順を受け取った、 といういわば「バトンの受け取り確認」 とでもいうべき機能をもち、 認知応答よりもさらに積極的関与を示していると思われる。 6-2. アナウンサーの「はい」:コメント続行要求 次の例は(例11)から続いている部分である。 アナウンサーからのコメント要求に、 解 説者は以下(p.22)のような第一発話で応じ、 アナウンサに次の話順を渡したが、 それ に対してアナウンサーは「はい」で応じる。 そしてそれに対して解説者はまた「はい」 と応じ、 第一発話につけ加えるべきコメントを発している。 このアナウンサの「はい」 は、 堀口(1997)のあいづちの機能のひとつである「①聞いているという信号」と考える こともできる。 しかし、 アナウンサー、 解説者の役割分担責任の所在を考慮に入れると、 ここはより積極的な、 相手のコメントを続行させるためのコメント続行要求機能をもつと 解釈することができる。 解説者がそれにつぐ発話でまた「はい」と応じているのは、 この

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アナウンサーの意図を認知し、「バトンの受け取り確認」を表明するものであるといえる。 (例14) アナ: ...そのままサービスの、 練習をしたままはいってきました。 解説:はい。 あの今大会、 あのこういうシーンよく見ました。 アナ: はしヽ。 解説:はい。 やはりあの、 ま自分からサービスを始めるという、 そういうことも あるんでしょうけれども、 ま、 からだウオーミングア、 あの、 寒いですか ら、 アナ: ぇぇ。 (ウィンブルドンテニス'96女子決勝戦) 6-3. インタビューの「はい」:コメント終了の意図表明 次は野球の試合後のインタビューの例である。 完投した投手にアナウンサーがコメント を求め、 投手はそれに答えたあと、「はい」といいながら頭を縦に振った。 インタビュー の場面でたびたびみられる局面であるが、「このことについての答えはもうこれだけです」 という、 コメントの終了の意図表明と、 結果としての話順渡しの機能をもっている。 (例15) アナ:.....西武打線を相手に3安打に封じました。 選手..も、 ぜんぜん考えなくて、 も一むちゅうで一きょうはなんかピッチングし てたって感じですね。 はい。 (日本シリーズ'98第2戦) 6-4. ペア・アナウンサーの「はい」:リズムとり ・共同責任表示 次の例は、 男女のアナウンサー ・ ペアで担当している朝の主婦向け番組からのデータで ある。 番組のかじ取り役の女性アナウンサーが当日の番組内容の紹介にはいると、 男性ア ナウンサーが援護射撃のように「はい/ええ/は一」を連発する。 これは形式としては対 面会話のあいづちと変わらないように思われるかも知れない。 しかし、 この女性アナウン サーは画面視聴者を聞き手として話しけているであり、 男性アナウンサーの方には 発話は向けられていない。 男性アナウンサーはむしろ情報の共有者である。 このような状 況で使われる「はい」はどのような働きをしているのであろうか (下の例の場合、「うん」、 「は一」は「はい」と入れ替えることができると思われるので同様に扱った)。 (例16) 1女性アナ:おはよう//ございます。(2人同時にお辞儀をする) \

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1男性アナ: おはようございます。 2女性アナ:914日月曜日の生活ほっとモーニングです。 2男性アナ: 住ど_o 3女性アナ:きのうは日曜でした=あ//したはおやすみで一す。 3男性アナ: うん。 は一 4女性アナ:という//ことで、 な一に 今週は1日多く夫がいえにいるじゃない のと、 4男性アナ:

i

フフフ!(笑ったあと女性アナをちらっと呪む) 5女性アナ:こう思っていらっしゃるかたいると思います。 5男性アナ: 住二0 (生活ほっとモーニング 98年9月14日放送) この形は、複数の放送関係者が共同して番組を進める形式の談話に現れるもので、お昼 のワイド番組やバラエティ一番組などで、番組の始めや場面や話題の切り替えのときに共 同してイントロダクションを入れる場合に起こりやすい。形態としてはあいづちにたいヘ ん近いが、機能としては少し違う。 上記のデータの場合、「はい」がつくことで、女性アナウンサの話がリズミカルに進 んでいき、リズムとりの効果をもっていることがわかる。また、男性アナウンサーが番組 の共同担当者として女性アナウンサーと同じ立場で情報を提供していることの表示の役割 もすると思われる。ただ、 この男性アナウンサーのスタンスは、「4男性アナ」の(笑った あと女性アナをちらっと院む)のところでは急に「男性(あるいは男性代表)としてのア ナウンサー個人」のスタンスに変わっている。そして次にすぐ放送の共同責任者としての スタンスに戻って 「は一」を発するのである。したがって、男性アナウンサはこの場面 で視点を変えて複数の役割を往復しながら、女性アナウンサーを助けて視聴者に情報を伝 える仕事をしている。このような、視聴者に向けてアナウンサーが話しかけるタイプの談 話の場合、談話の流れがスムーズにリズムをもって進んでいくことが重要で、同席するア ナウンサーの 「はい」はその意味で大切な役割を果たしているといえよう戸

7. 結論

本稿は、「はい」の機能をさまざまな側面から捉え、それらを体系的に説明するための 足がかりをつけようと試みたものである。 「はい」は実に多様な働きがあることが分かってきたが、これまで取り上げられてきた 談話の種類にはまだかなりの偏りがみられる。今後さまざまな種類の談話の分析を進めて、

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新たな知見を積み重ねていくことにより、 徐々に「はい」 の機能の全体像が解明されてく るのではないかと思う 。 今回は放送談話に焦点を当てたが、 ほかの特殊な談話にも「はい」 の本質をつかむ鍵を握る用法がみられるのではないかと思われる。 今後の課題として、 放 送談話のデータ数を増やし、「はい」の使われ方や機能をより厳密に定義できるよう にす ることを考えている。 本稿はまた「はい」、「いいえ」などのように日常的に頻繁に使われる言語表現が多様な 場面で多様な使われ方をすることを例証するとともに、 このような表現を掘り下げて調べ ていく ことにより、 日本語の談話の特徴をより深く理解することができる可能性を示唆し たといえよう。 [注l 1. 日向(1980)は「はい」と「ええ」の機能を探ったものだが 、 奥津(1989)と沖(1992)はとも に肯定応答詞 「はい」と否定応答詞「いいえ」を対比しながらその機能を論じたものである。 2. この説明に関して、 日向は北川(1977)を参考にしている。 3. 井出ほか編(1984)を使用したものである。 4. フランス(1988)はフランス語と 日本語を比較しながら、 興味深い考察を行っている。 すなわち 、 「はい」と「いいえ」は問いかけた相手の文の内容に対する肖定や否定ではなく、 両対話者間の一 ないし不一致を表している、 つまり、 統辞論的な 機能というより談話を進行させる機能を果たして いる、 というのである。 そして、 応答文中の「はい」 や「いいえ」も結局はあいづちの機能を果た しているのではないかと考えている。 5. アナウンサーがニュス以外の番組で単独で視聴者に話しかける形態の場合、 ィレクタがカ メラの向こうにいて、 適切なところで頷きを入れるということがあり、 それによって発話の流れが リズミカルに進むという 。 放送の実態にくわしい村松賢一氏(お茶の水大学)との私信による。 [参考文献] 石井恵理子(1997)「教室談話の複数の文脈」「日本語学」Vol.16 3 月号 明治書院 井出ほか編(1984)「「主婦の一週間の談話資料」特定研究「情報化社会における言語の標準化」報告 書J 今石幸子(1992)「電話の会話のストラテジー」「日本語学」Vol.11 9 月号 明治書院 岡本能里子(1997)「電話会話における談話管理」「世界の日本語教育J Vol.7 国際交流基金日本語 国際センター 沖久雄(1993)「肯定応答詞と否定応答詞の体系」「日本語学j Vol.12 4 月号 明治書院 奥津敬一郎(1989)「 応答詞「はい」と「いいえ」の機能」「日本語学」Vol.8 8 月号 明治書院 北川千里(1977)「「はい」と 「え>」J「日本語教育J 33号 日本語教育学会 熊取谷哲夫(1992)「電話会話の開始と終結における「はい」と 「もしもし」と 「いいえ」の機能」 「H本語学」Vol.11 9 月号 明治書院 日向茂雄(1980)「 談話における「はい」と 「ええ」の機能」「国立国語 研究所報告」65 秀英出版 し

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フランス・ ドルヌ(1988)「フランス語におけるあいづちの機能」「日本語学」Vol.7 12 月号 明治 書院 堀口純子(1997)「H本語教育と会話分析jくろしお出版 松田陽子(1988)「対話の日本語教育学」「日本語学」Vol.7 12 月号 明治書院 三宅武郎(1959)「惑動詞と応答詞」「実践国語教育J Vol.20 No.225 6 月号 実践国語教育研究所 メイナー 泉子·K (1993)「会話分析Jくろしお出版

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