D05
砂質モデル斜面で発生する崩壊と安定解析(Ⅰ)
– すべり面設定下での解析と地中水流の影響 –
Shallow landslide and slope stability analysis in a model sandy slope (Ⅰ)
– An analysis considering the slip surface and the effect of subsurface flow –
寺嶋智巳
Tomomi TERAJIMA
1. はじめに
液相と固相の相境界面で生じる「流動電位」と
は、水圧差(水理ポテンシャル差)に伴う水の流
動により水中の正電荷が運搬され、自然電位が生
じる現象である。このことは、逆説的に、自然電
位計測により地下水の動態把握が可能になること
を示唆している。すなわち、降雨時の斜面崩壊は
地下水流による地盤破壊現象であることから、電
位計測は破壊をもたらす水文変動の把握に対して
有用な手法になると思われる。たとえば我々の実
験では、自然電位の計測により、浸潤前線の到達、
飽和帯の成長、崩壊発生の前兆と思われる電位の
直前変動など、「崩壊発生時刻を予測するための重
要なシグナル」を把握できている。
流動電位(
Ψ)と水圧(水理ポテンシャル差:ΔP)
の関係は、
Ψ = εζ ΔP/
K, (1)
で定義され、
ε は誘電率、ζ はゼータ電位、は粘
性係数、K は電導度である。式(1)を斜面安定解析
の視点から見ると
ΔP(すなわち、動水勾配:i)
が重要であり、この項目は浸透力(=
γwi;γwは水
の単位体積重量)で評価される。すなわち、自然
電位を崩壊発生タイミングの予測に役立てるため
には、崩壊の発生に対して浸透力が「どのように・
どの程度の影響」を及ぼすかを明らかにしておく
ことが重要となる。
そこで、プロセスベースの斜面安定解析法であ
る修正フェレニウス法を、飽和・不飽和領域での
浸透力、吸水(浸透)過程での含水量、および余
剰剪断力を考慮した解析に対応できるように改良
し、その相対的妥当性を検証した上で、浸透力を
含む各種崩壊要因が安全率の変化に及ぼす影響を
評価することとした。
2. 結果
室内降雨崩壊実験(砂層、L×H×W = 9m×4.8m
×1m、土層厚 0.7m、降雨強度 80mm/h)により、
以下のことが明らかになった。
(1) 提示した安定解析方法は、本崩壊実験の解析
に対して相対的には妥当であると判断された
(Fig.1)。
(2) 当該解析方法に基づき各種崩壊要因の影響度
を評価したところ(Fig.2)、降雨開始時には見か
けの粘着力の影響が最大、降雨継続に伴い浮力
と浸透力の影響が大きくなったが、崩壊直前で
は浸透力の影響が最大であることが示された。
以上より、自然電位の計測は、浸透力の変動を
ベースに、斜面崩壊の発生タイミングを予測する
手法として有効になり得ると判断した。
間隙水圧計
すべり面
0.7 m
1 m
P2
P3
P4
P1
P5
P6
P7
①
②
③
④
⑤
0
0.5
1
1.5
Fs=1.0
②
安全
率
崩壊
20406080 100 120
0 0
1
2
3
4
20406080 100 120
0
Fs=1.0
①
崩壊
降雨開始からの時間(分)
〃 配分あり
余剰分の配分なし
×
斜面上部
0
5
10
15
20
25
安全
率
Fs=1.0
崩壊
⑤
20406080 100 120
0 0
5
10
15
20
25
Fs=1.0
④
崩壊
20406080 100 120
0 0
0.5
1
1.5
Fs=1.0
③
崩壊
20 406080 100 120
0
降雨開始からの時間(分)
斜面中・下部
Fig.1 解析式の検証(局所安全率の変化)
×安全率(配分なし)
粘着力を考慮せず
浸透力を考慮せず
浮力(水圧)を考慮
せず
間隙水圧計
すべり面
0.7 m
1 m
P2
P3
P4
P1
P5
P6
P7
①
②
③
④
⑤
斜面上部
0
0.5
1
1.5
②
Fs=1.0
20406080 100 120
0
崩壊
安全
率
0
1
2
3
4
①
Fs=1.0
崩壊
20406080 100 120
0
降雨開始からの時間(分)
斜面中・下部
0
5
10
15
20
25
④
20406080 100 120
0
崩壊
Fs=1.0
0
0.5
1
1.5
③
20406080 100 120
0
崩壊
Fs=1.0
0
5
10
15
20
25
⑤
20406080 100 120
0
崩壊
Fs=1.0
安全率
降雨開始からの時間(分)
Fig.2 崩壊要因の影響度評価